(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131225
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】光パルス試験器
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20240920BHJP
H04B 10/071 20130101ALI20240920BHJP
【FI】
G01M11/00 R
H04B10/071
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041352
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】小久保 宰
(72)【発明者】
【氏名】太田 克志
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 明
【テーマコード(参考)】
2G086
5K102
【Fターム(参考)】
2G086CC03
5K102KA16
5K102KA42
5K102LA06
5K102LA15
5K102LA22
5K102MB09
5K102MC11
5K102MD03
5K102MH03
5K102MH15
5K102MH22
5K102PB01
5K102PH15
5K102PH31
5K102PH42
5K102PH49
5K102RD05
(57)【要約】
【課題】OTDR測定において光強度の大きい反射光を受光してもOTDR波形の劣化を低減する。
【解決手段】本開示に係る光パルス試験器10は、光ファイバ1の状態を測定可能なOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)として機能する。光パルス試験器10は、光ファイバ1に入射する光パルスを生成するレーザ素子121と、光ファイバ1からの反射光を検出する受光器123と、光パルス及び反射光の光強度を調整可能な光強度調整部13と、光強度調整部13を制御する制御部16と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの状態を測定可能なOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)として機能する光パルス試験器であって、
前記光ファイバに入射する光パルスを生成するレーザ素子と、
前記光ファイバからの反射光を検出する受光器と、
前記光パルス及び前記反射光の光強度を調整可能な光強度調整部と、
前記光強度調整部を制御する制御部と、
を備える、光パルス試験器。
【請求項2】
請求項1に記載の光パルス試験器において、
前記光強度調整部は、前記光パルス及び前記反射光の光強度を調整可能な可変光減衰器を備える、光パルス試験器。
【請求項3】
請求項2に記載の光パルス試験器において、
前記制御部は、前記受光器が検出した前記反射光のOTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合、前記可変光減衰器の減衰量を所定量だけ増やし、前記反射光を再度測定する、光パルス試験器。
【請求項4】
請求項3に記載の光パルス試験器において、
前記制御部は、前記可変光減衰器の減衰量を所定量だけ増やした場合、複数の異なる減衰量で測定した前記反射光の複数のOTDR波形を合成して、合成OTDR波形を生成する、光パルス試験器。
【請求項5】
請求項4に記載の光パルス試験器において、
表示部をさらに備え、
前記制御部は、前記合成OTDR波形を前記表示部に表示させる、光パルス試験器。
【請求項6】
請求項1に記載の光パルス試験器において、
前記光強度調整部は、前記光パルス及び前記反射光の光強度を調整可能な可変光増幅器を備える、光パルス試験器。
【請求項7】
請求項6に記載の光パルス試験器において、
前記制御部は、前記受光器が検出した前記反射光のOTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合、前記可変光増幅器の増幅量を所定量だけ減らし、前記反射光を再度測定する、光パルス試験器。
【請求項8】
請求項7に記載の光パルス試験器において、
前記制御部は、前記可変光増幅器の増幅量を所定量だけ減らした場合、複数の異なる増幅量で測定した前記反射光の複数のOTDR波形を合成して、合成OTDR波形を生成する、光パルス試験器。
【請求項9】
請求項8に記載の光パルス試験器において、
表示部をさらに備え、
前記制御部は、前記合成OTDR波形を前記表示部に表示させる、光パルス試験器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光パルス試験器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバの状態を測定可能な装置として、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)が知られている。例えば、特許文献1は、光ファイバの終端近傍における破断などを検出可能なOTDR測定装置を開示している。
【0003】
OTDRは、測定対象の光ファイバに光パルスを繰り返し入射し、光ファイバからの反射光の光強度と、光ファイバから反射光を受光する時間とに基づいて、光ファイバの破断及び損失などのような光ファイバの状態を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定対象の光ファイバに破断点がある場合、破断点において反射された反射光は、光ファイバのレイリー散乱光によって反射された反射光よりも光強度が大きい。光強度が所定のレベルより大きいと、反射光を検出する受光器の後段の増幅器に過大な光電流が供給され、増幅器の出力が飽和してしまう場合がある。
【0006】
増幅器の出力が飽和すると、増幅器の応答速度が低下し、OTDRで測定したOTDR波形が理想波形から劣化してしまう。なお、本明細書において、「OTDR波形」とは、OTDR測定をすることによって得られる、横軸が距離、縦軸が光強度の波形を意味することとする。「距離」は、光パルスを入射してから反射光が戻ってくるまでの時間に対応する。「光強度」は、反射光の光強度に対応する。
【0007】
図5に、従来のOTDRで測定したOTDR波形の一例を示す。
図5を参照すると、反射光の光強度が大きい部分において、実際に測定したOTDR波形501は、増幅器の出力が飽和したことによって、理想のOTDR波形502から劣化している。
【0008】
そこで、本開示は、OTDR測定において光強度の大きい反射光を受光してもOTDR波形の劣化を低減することが可能な光パルス試験器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
幾つかの実施形態に係る光パルス試験器は、光ファイバの状態を測定可能なOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)として機能する光パルス試験器であって、前記光ファイバに入射する光パルスを生成するレーザ素子と、前記光ファイバからの反射光を検出する受光器と、前記光パルス及び前記反射光の光強度を調整可能な光強度調整部と、前記光強度調整部を制御する制御部と、を備える。このような光パルス試験器によれば、OTDR測定において光強度の大きい反射光を受光してもOTDR波形の劣化を低減することが可能である。
【0010】
一実施形態に係る光パルス試験器において、前記光強度調整部は、前記光パルス及び前記反射光の光強度を調整可能な可変光減衰器を備えていてもよい。これにより、光パルス及び反射光の光強度を調整することができる。
【0011】
一実施形態に係る光パルス試験器において、前記制御部は、前記受光器が検出した前記反射光のOTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合、前記可変光減衰器の減衰量を所定量だけ増やし、前記反射光を再度測定してもよい。これにより、増幅器の出力が飽和しない状態で測定することができる。
【0012】
一実施形態に係る光パルス試験器において、前記制御部は、前記可変光減衰器の減衰量を所定量だけ増やした場合、複数の異なる減衰量で測定した前記反射光の複数のOTDR波形を合成して、合成OTDR波形を生成してもよい。これにより、光強度が大きい部分については、大きい減衰量で測定したOTDR波形のデータを採用し、光強度が小さい部分については、小さい減衰量で測定したOTDR波形のデータを採用して合成したOTDR波形を生成することができる。
【0013】
一実施形態に係る光パルス試験器において、表示部をさらに備え、前記制御部は、前記合成OTDR波形を前記表示部に表示させてもよい。これにより、ユーザは、合成OTDR波形を確認することができる。
【0014】
一実施形態に係る光パルス試験器において、前記光強度調整部は、前記光パルス及び前記反射光の光強度を調整可能な可変光増幅器を備えていてもよい。これにより、光パルス及び反射光の光強度を調整することができる。
【0015】
一実施形態に係る光パルス試験器において、前記制御部は、前記受光器が検出した前記反射光のOTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合、前記可変光増幅器の増幅量を所定量だけ減らし、前記反射光を再度測定してもよい。これにより、増幅器の出力が飽和しない状態で測定することができる。
【0016】
一実施形態に係る光パルス試験器において、前記制御部は、前記可変光増幅器の増幅量を所定量だけ減らした場合、複数の異なる増幅量で測定した前記反射光の複数のOTDR波形を合成して、合成OTDR波形を生成してもよい。これにより、光強度が大きい部分については、小さい増幅量で測定したOTDR波形のデータを採用し、光強度が小さい部分については、大きい増幅量で測定したOTDR波形のデータを採用して合成したOTDR波形を生成することができる。
【0017】
一実施形態に係る光パルス試験器において、表示部をさらに備え、前記制御部は、前記合成OTDR波形を前記表示部に表示させてもよい。これにより、ユーザは、合成OTDR波形を確認することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、OTDR測定において光強度の大きい反射光を受光してもOTDR波形の劣化を低減することが可能な光パルス試験器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係る光パルス試験器の概略構成を示す図である。
【
図2A】減衰量が小さいときのOTDR波形の一例を示す図である。
【
図2B】減衰量が大きいときのOTDR波形の一例を示す図である。
【
図3】変形例に係る光パルス試験器の概略構成を示す図である。
【
図4】比較例に係る光パルス試験器の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、一実施形態に係る光パルス試験器10の概略構成を示す図である。
図1を参照して、一実施形態に係る光パルス試験器10の構成及び機能について説明する。
【0021】
光パルス試験器10は、光ファイバ1の状態を測定可能なOTDRとして機能する測定器である。光パルス試験器10は、測定対象である光ファイバ1について、破断及び損失などのような光ファイバ1の状態を測定することができる。光パルス試験器10は、例えば、光ファイバ1を敷設する際及び光ファイバ1を保守点検する際などに用いることができる。
【0022】
測定対象である光ファイバ1は、例えば、光信号によるデータ通信などを行う光通信システムにおいて用いられている光ファイバであってよい。
【0023】
光パルス試験器10は、光ファイバ1に光パルスを入射し、光ファイバ1からの反射光の光強度を測定することによって、横軸を距離、縦軸を光強度とするOTDR波形を生成することができる。横軸の「距離」は、光パルスを入射してから反射光が戻ってくるまでの時間に対応する。縦軸の「光強度」は、反射光の光強度に対応する。
【0024】
光ファイバ1の破断点において反射された反射光は、レイリー散乱などによって反射された反射光よりも光強度が大きい。光パルス試験器10によってOTDR波形を生成すると、どの距離において光強度が大きいかを把握することができる。これにより、光パルス試験器10は、光ファイバ1の破断点を測定することができる。
【0025】
光パルス試験器10は、レーザ駆動部11と、光モジュール12と、光強度調整部13と、増幅器14と、サンプリング部15と、制御部16と、表示部17とを備える。
【0026】
レーザ駆動部11は、光モジュール12が備えるレーザ素子121を駆動する駆動部である。レーザ駆動部11は、制御部16からの指令に応じてレーザ素子121を駆動し、レーザ素子121に光パルスを生成させることができる。
【0027】
光モジュール12は、レーザ素子121と、ハーフミラー122と、受光器123とを備える。光モジュール12は、同一のケース内に、レーザ素子121、ハーフミラー122及び受光器123を収容していてよい。
【0028】
レーザ素子121は、所定の波長のレーザ光を生成する。レーザ素子121は、一定の光強度のレーザ光を生成できればよい。すなわち、レーザ素子121は、光強度を可変とすることを必要としない。レーザ素子121は、レーザ駆動部11によって駆動されることによって、光ファイバ1に入射する光パルスを生成する。
【0029】
ハーフミラー122は、レーザ素子121から入射される光パルスを透過し、光強度調整部13に供給する。ハーフミラー122は、光強度調整部13から入射される反射光を反射し、受光器123に供給する。
【0030】
ここで、反射光は、測定対象である光ファイバ1が、光パルス試験器10から入射された光パルスを反射した光である。反射光は、光ファイバ1の破断点において反射された光、光ファイバ1がレイリー散乱によって反射した光などを含む。
【0031】
受光器123は、ハーフミラー122から入射された反射光を検出し、反射光の光強度に応じた電流信号を、増幅器14に供給する。受光器123は、例えば、アバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photodiode)であってよい。
【0032】
光強度調整部13は、光モジュール12のハーフミラー122から入射される光パルスの光強度を調整可能である。光強度調整部13は、光ファイバ1から入射される反射光の光強度を調整可能である。
【0033】
光強度調整部13は、可変光減衰器131と、減衰器駆動部132とを備える。
【0034】
可変光減衰器131は、光モジュール12のハーフミラー122から入射される光パルスの光強度を調整可能である。可変光減衰器131は、光ファイバ1から入射される反射光の光強度を調整可能である。可変光減衰器131は、減衰器駆動部132によって減衰量が設定される。
【0035】
減衰器駆動部132は、制御部16からの指令に応じて、可変光減衰器131の減衰量を設定する。
【0036】
増幅器14は、光モジュール12の受光器123から供給された電流信号を電圧信号に変換し、変換した電圧信号を増幅する。増幅器14は、電圧信号をサンプリング部15に出力する。
【0037】
サンプリング部15は、増幅器14から供給された電圧信号を所定の時間間隔でサンプリングする。サンプリング部15は、サンプリングした信号を制御部16に出力する。
【0038】
制御部16は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。制御部16は、光パルス試験器10の各部を制御しながら、光パルス試験器10の動作に関わる処理を実行する。
【0039】
制御部16は、光強度調整部13を制御し、可変光減衰器131の減衰量を設定する。これにより、制御部16は、光モジュール12のハーフミラー122から入射される光パルスの光強度を調整することができる。また、制御部16は、光ファイバ1から入射される反射光の光強度を調整することができる。
【0040】
制御部16の動作の詳細については後述する。
【0041】
表示部17は、情報を表示する1つ以上の出力用インタフェースを含む。表示部17は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescent)ディスプレイなどを含んでいてよい。
【0042】
表示部17は、制御部16が生成したOTDR波形を表示することができる。
【0043】
(光パルス試験器の動作)
続いて、光パルス試験器10の動作について説明する。
【0044】
制御部16は、レーザ駆動部11を制御して、レーザ素子121に光パルスを生成させる。レーザ素子121が生成した光パルスは、ハーフミラー122及び可変光減衰器131を介して、光ファイバ1に入射される。
【0045】
この際、制御部16は、減衰器駆動部132を制御して、可変光減衰器131の減衰量を所定の減衰量に設定している。これにより、可変光減衰器131は、制御部16によって設定されている減衰量で光パルスの光強度を減衰させる。
【0046】
光ファイバ1に光パルスが入射されると、光ファイバ1の破断点において反射された反射光、光ファイバ1のレイリー散乱によって反射された反射光などが光パルス試験器10に戻ってくる。
【0047】
光ファイバ1から光パルス試験器10に入射された反射光は、可変光減衰器131及びハーフミラー122を介して、受光器123に検出される。この際、可変光減衰器131は、制御部16によって設定されている減衰量で反射光の光強度を減衰させる。
【0048】
受光器123は、反射光の光強度に応じた電流信号を、増幅器14に供給する。増幅器14は、光モジュール12の受光器123から供給された電流信号を電圧信号に変換し、変換した電圧信号を増幅する。サンプリング部15は、増幅器14から供給された電圧信号を所定の時間間隔でサンプリングする。サンプリング部15は、サンプリングした信号を制御部16に出力する。
【0049】
制御部16は、サンプリング部15から取得した電圧信号を信号処理して、OTDR波形を生成する。OTDR波形は、上述のように、横軸が「距離」、縦軸が「光強度」である波形である。横軸の「距離」は、光パルスを光ファイバ1に入射してから反射光が戻ってくるまでの時間に対応する。縦軸の「光強度」は、反射光の光強度に対応する。
【0050】
制御部16は、受光器123が検出した反射光に基づいて生成したOTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合、可変光減衰器131の減衰量を所定量だけ増やし、反射光を再度測定する。
【0051】
閾値は、増幅器14における信号処理において電圧信号の飽和が発生すると想定される光強度に基づいて設定された値であってよい。すなわち、OTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合、増幅器14における信号処理において電圧信号の飽和が発生している可能性がある。
【0052】
所定量は、予め設定された量であってよい。所定量は、例えば、数dB~10数dB程度であってよい。
【0053】
制御部16は、生成したOTDR波形が閾値以上の光強度を含まないようになるまで、可変光減衰器131の減衰量を所定量だけ増やして反射光を再度測定する処理を繰り返す。
【0054】
制御部16は、可変光減衰器131の減衰量を所定量だけ増やして反射光を再度測定した場合、それぞれの減衰量で測定した反射光に基づいて生成した複数のOTDR波形を合成して、合成OTDR波形を生成する。なお、本実施形態において、複数のOTDR波形を合成して生成した波形について、「合成OTDR波形」という用語を使用する。
【0055】
図2A~
図2Cを参照して、合成OTDRを生成する処理について説明する。
図2Aは、可変光減衰器131の減衰量が小さいときのOTDR波形の一例を示す図である。
図2Bは、可変光減衰器131の減衰量が大きいときのOTDR波形の一例を示す図である。
図2Cは、
図2Aに示すOTDR波形と
図2Bに示すOTDR波形とを合成した合成OTDR波形の一例を示す図である。
【0056】
図2Aに示すOTDR波形Aを参照すると、光強度が大きい部分であるピーク201において、先端部が平坦になっている。これは、増幅器14に入力される信号が大きく、増幅器14の出力が飽和していることを示している。
【0057】
図2Aに示すOTDR波形AのようなOTDR波形を生成した場合、制御部16は、可変光減衰器131の減衰量を所定量だけ増やして反射光を再度測定する。減衰量が大きい状態において再度測定した反射光に基づいて生成したOTDR波形が、
図2Bに示すOTDR波形Bである。
【0058】
図2Bに示すOTDR波形Bを参照すると、光強度が大きい部分であるピーク203において、先端部に鋭いピークを有している。これは、増幅器14に入力される信号が小さくなり、増幅器14の出力が飽和しなくなったことを示している。
【0059】
また、
図2Aに示すOTDR波形Aのピーク201の幅w1と、
図2Bに示すOTDR波形Bのピーク203の幅w2を比較すると、幅w1は幅w2よりも広い。これは、増幅器14の出力が飽和しているOTDR波形Aにおいては、増幅器14の応答速度が低下し、ピーク201の幅w1が広がったことを示している。
【0060】
このように、可変光減衰器131の減衰量を増やすことにより、制御部16は、
図2Bに示すように、光強度が大きい部分において、鋭いピークを有し幅の狭いピーク203を含むようなOTDR波形Bを生成することができる。
【0061】
一方、
図2Aに示すOTDR波形Aの光強度が小さい部分である小信号部分202と、
図2Bに示すOTDR波形Bの光強度が小さい部分である小信号部分204とを比較すると、小信号部分202は高い信号対雑音比で測定できているのに対し、小信号部分204は信号対雑音比が小さくなっている。小信号部分202及び小信号部分204は、破断点において反射された反射光のような光強度が大きい反射光がなく、レイリー散乱などによる反射光のみがある部分である。
【0062】
すなわち、光強度が小さい部分においては、減衰量が小さい状態で測定した方が、高い信号対雑音比を実現できるため望ましい。
【0063】
制御部16は、
図2Aに示す減衰量が小さい状態で生成したOTDR波形Aと、
図2Bに示す減衰量が大きい状態で生成したOTDR波形Bとを合成して、
図2Cに示すようなOTDR波形Cを生成する。OTDR波形Cは、合成OTDR波形である。
【0064】
図2Cに示すように、OTDR波形Cは、光強度が大きい部分についてはOTDR波形Bの波形のデータを採用し、光強度が小さい部分についてはOTDR波形Aのデータを採用して合成した波形である。
【0065】
制御部6は、
図2Cに示すような合成OTDR波形を生成すると、合成OTDR波形を表示部17に表示させる。
【0066】
以上のような一実施形態に係る光パルス試験器10によれば、OTDR測定において光強度の大きい反射光を受光してもOTDR波形の劣化を低減することができる。より具体的には、光パルス試験器10は、光パルス及び反射光の光強度を調整可能な光強度調整部13と、光強度調整部13を制御する制御部16とを備えている。OTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合、制御部16は、光強度調整部13を制御して光パルス及び反射光の光強度を減衰させることができる。これにより、一実施形態に係る光パルス試験器10は、光パルス及び反射光の光強度が大きいことによって増幅器14の出力が飽和することを防ぐことができるため、光強度の大きい反射光を受光してもOTDR波形の劣化を低減することができる。
【0067】
(変形例)
図3は、変形例に係る光パルス試験器10aの概略構成を示す図である。
図3を参照して、変形例に係る光パルス試験器10aについて説明する。
【0068】
変形例に係る光パルス試験器10aは、レーザ駆動部11と、光モジュール12と、光強度調整部18と、増幅器14と、サンプリング部15と、制御部16と、表示部17とを備える。
【0069】
変形例に係る光パルス試験器10aは、
図1に示した光パルス試験器10と比較すると、光強度調整部13の代わりに光強度調整部18を備えているという点で、
図1に示した光パルス試験器10と相違する。
【0070】
変形例に係る光パルス試験器10aについては、
図1に示した光パルス試験器10との相違点について主に説明し、
図1に示した光パルス試験器10と共通及び類似する点については、適宜説明を省略する。
【0071】
光強度調整部18は、可変光増幅器181と、増幅器駆動部182とを備える。
【0072】
可変光増幅器181は、光モジュール12のハーフミラー122から入射される光パルスの光強度を調整可能である。可変光増幅器181は、光ファイバ1から入射される反射光の光強度を調整可能である。可変光増幅器181は、増幅器駆動部182によって増幅量が設定される。
【0073】
このように、
図1に示した光パルス試験器10の可変光減衰器131が減衰量の設定により光強度を調整可能であるのに対し、比較例に係る光パルス試験器10aの可変光増幅器181は、増幅量の設定により光強度を調整可能である。
【0074】
可変光増幅器181は、例えば、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)であってよい。
【0075】
増幅器駆動部182は、制御部16からの指令に応じて、可変光増幅器181の増幅量を設定する。
【0076】
制御部16は、受光器123が検出した反射光に基づいて生成したOTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合、可変光増幅器181の増幅量を所定量だけ減らし、反射光を再度測定する。
【0077】
制御部16は、生成したOTDR波形が閾値以上の光強度を含まないようになるまで、可変光増幅器181の増幅量を所定量だけ減らして反射光を再度測定する処理を繰り返す。
【0078】
制御部16は、可変光増幅器181の増幅量を所定量だけ減らして反射光を再度測定した場合、それぞれの増幅量で測定した反射光に基づいて生成した複数のOTDR波形を合成して、合成OTDR波形を生成する。
【0079】
制御部16は、合成OTDR波形を生成すると、合成OTDR波形を表示部17に表示させる。
【0080】
このように、変形例に係る光パルス試験器10aは、OTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合、制御部16が、可変光増幅器181の増幅量を所定量だけ減らす。そのため、変形例に係る光パルス試験器10aは、
図1に示した光パルス試験器10と同様に、増幅器14の出力が飽和することを防ぐことができるため、光強度の大きい反射光を受光してもOTDR波形の劣化を低減することができる。
【0081】
また、変形例に係る光パルス試験器10aは、可変光増幅器181を備え、光モジュール12のハーフミラー122から入射される光パルスを増幅することができる。したがって、OTDR波形のダイナミックレンジを向上させることができる。また、レーザ素子121が生成する光パルスは低パワーでよいため、レーザ素子121は、高パワーの光パルスを生成可能である必要はない。したがって、比較例に係る光パルス試験器10aは、レーザ素子121の選択肢を広げることができる。
【0082】
(比較例)
図4は、比較例に係る光パルス試験器200の概略構成を示す図である。
図4を参照して、比較例に係る光パルス試験器200について説明する。
【0083】
比較例に係る光パルス試験器200は、レーザ駆動部11と、光モジュール12と、増幅器14と、サンプリング部15と、制御部16と、表示部17とを備える。
【0084】
比較例に係る光パルス試験器200は、光強度調整部13を備えていないという点で、
図1に示した光パルス試験器10と相違する。
【0085】
比較例に係る光パルス試験器200は、光強度調整部13を備えていないため、受光器123が検出した反射光に基づいて生成したOTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合、増幅器14の増幅度を小さく設定し、且つ、レーザ素子121が生成する光パルスの光強度を小さく設定して、OTDR波形を再度測定する。
【0086】
比較例に係る光パルス試験器200には、以下に示す課題1~4のような課題がある。
【0087】
<課題1>
OTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合に、増幅器14の増幅度を小さく設定しても、受光器123から増幅器14に過大な電流信号が供給されると、増幅器14の出力は飽和して応答速度が低下してしまう。増幅器14の出力が飽和すると、
図5に示したOTDR波形501のような波形となり、理想のOTDR波形502から劣化する。したがって、比較例に係る光パルス試験器200においては、波形再現性が劣化し、また、デッドゾーン性能も劣化する。
【0088】
<課題2>
OTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合に、レーザ素子121が生成する光パルスの光強度を小さくすると、光パルスの中心波長がずれてしまう。
【0089】
<課題3>
比較例に係る光パルス試験器200は、反射光の光強度に応じて増幅器14の増幅度を調整するため、信号対雑音比が低下してしまう場合がある。
【0090】
<課題4>
OTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合に、増幅器14の増幅度と、レーザ素子121が生成する光パルスの光強度という2つのパラメータを調整するため、調整に時間がかかる。
【0091】
図1に示した光パルス試験器10は、比較例に係る光パルス試験器200の上述の課題1~4を解消することができる。
【0092】
課題1に対しては、
図1に示した光パルス試験器10は、OTDR測定において光強度の大きい反射光がある場合、可変光減衰器131によって、光パルスの光強度及び反射光の光強度を減衰させることができる。したがって、増幅器14に供給される電流信号の大きさを低減し、増幅器14の出力が飽和することを防ぐことができるため、
図1に示した光パルス試験器10は、波形再現性を向上させることができる。
【0093】
課題2に対しては、
図1に示した光パルス試験器10は、OTDR測定において光強度の大きい反射光を受光しても、レーザ素子121が生成する光パルスの光強度を小さくする必要がなく、レーザ素子121が生成する光パルスの光強度を一定に保つことができる。したがって、
図1に示した光パルス試験器10は、レーザ素子121が生成する光パルスの中心波長がずれることを防ぐことができる。
【0094】
課題3に対しては、
図1に示した光パルス試験器10は、反射光の光強度に関わらず、増幅器14の増幅度を一定の増幅度に設定することができるため、信号対雑音比を所望のレベルに保つことができる。
【0095】
課題4に対しては、
図1に示した光パルス試験器10は、OTDR測定において光強度の大きい反射光がある場合、光強度調整部13のみを調整すればよいため、調整に要する時間を低減することができる。
【0096】
本開示は、その理念又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。従って、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含される。
【0097】
例えば、上述した各構成部の配置及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の配置及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0098】
例えば、上述した実施形態において、光モジュール12が、レーザ素子121、ハーフミラー122及び受光器123を備える構成を説明したが、光モジュール12は、さらに、光パルスをコリメート光にするためのレンズを備えていてもよい。
【0099】
例えば、上述した変形例に係る光パルス試験器10aの説明において、OTDR波形が閾値以上の光強度を含む場合、制御部16が、可変光増幅器181の増幅量を所定量だけ減らし、反射光を再度測定するとして説明した。しかしながら、変形例に係る光パルス試験器10aは、このように増幅量を所定量ずつ減らすのではなく、増幅量を所定量ずつ増やす動作を実行してもよい。この場合、制御部16は、初期値としては可変光増幅器181の増幅量を小さい値に設定し、OTDR波形が閾値以上の光強度を含むようになるまで、増幅量を所定量ずつ増やして、反射光を再度測定する。
【符号の説明】
【0100】
1 光ファイバ
10、10a 光パルス試験器
11 レーザ駆動部
12 光モジュール
13 光強度調整部
14 増幅器
15 サンプリング部
16 制御部
17 表示部
18 光強度調整部
121 レーザ素子
122 ハーフミラー
123 受光器
131 可変光減衰器
132 減衰器駆動部
181 可変光増幅器
182 増幅器駆動部
200 光パルス試験器