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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131229
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B41J2/165 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041359
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 弘良
(72)【発明者】
【氏名】山辺 勝利
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FA10
2C056FD20
2C056JB02
2C056JB04
2C056JB08
(57)【要約】
【課題】ノズル面のインクを適切に払拭する。
【解決手段】ワイパユニットは、インクを噴射するノズルが形成されたノズル面を有する噴射ヘッドのノズル面を払拭する払拭部と、ノズル面に沿った払拭方向に払拭部を移動させる駆動部とを備え、払拭部は、払拭方向に並んで配置され硬度が異なる2つの払拭部材と、2つの払拭部材を一体で保持する保持部とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを噴射するノズルが所定の間隔で複数連なって形成されているノズル面を有する噴射ヘッドと、
前記ノズル面を払拭する払拭部と、
前記ノズル面と前記払拭部とを相対的に移動させる駆動部と
を備え、
前記噴射ヘッドは、予め設定された主走査方向に移動しつつ印刷領域に載置される印刷対象に前記インクを噴射し、
前記払拭部は、前記ノズル面又は前記払拭部が移動する方向に並んで配置され硬度が異なる2つの払拭部材と、2つの前記払拭部材を一体で保持する保持部とを有する
印刷装置。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記噴射ヘッドを予め設定された前記主走査方向に移動させる第1駆動機構と、
前記払拭部を前記ノズル面に対して相対的に移動させる第2駆動機構を有する
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
2つの前記払拭部材は、前記ノズル面又は前記払拭部が移動する方向において前記駆動部により一方側に配置される第1払拭部材と、前記ノズル面又は前記払拭部が移動する方向において他方側に配置され前記第1払拭部材よりも硬度が低い第2払拭部材とを有する
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第2払拭部材は、前記第1払拭部材よりも前記保持部から前記ノズル面側に突出している
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記駆動部は、前記ノズル面に直交する昇降方向に前記払拭部を移動可能である
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記ノズル面に直交する昇降方向に前記噴射ヘッドを移動可能であり、前記昇降方向に前記噴射ヘッドを移動させることで、前記第2払拭部材が弾性変形した状態で前記第1払拭部材及び前記第2払拭部材が接触する位置に前記ノズル面を配置可能である
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記駆動部は、前記昇降方向に前記払拭部を移動させて、前記第2払拭部材が弾性変形した状態で前記第1払拭部材及び前記第2払拭部材が前記ノズル面に接触する位置に配置可能である
請求項5または請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記払拭部は、前記主走査方向の延長線上の少なくとも1ヶ所の所定の位置において、前記噴射ヘッドの前記ノズル面が対向するように配置される
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記噴射ヘッドが前記主走査方向において前記インクを噴射した後に前記払拭部に対向する位置に到達するまでの時間を最低噴射時間とし、
前記インクは、前記ノズル面に付着した前記インクの液滴が少なくとも前記最低噴射時間中に固形化するインクである
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記第1払拭部材は、ヤング率が400MPa~800MPaであるプラスチック製または樹脂性材料を用いて形成され、
前記第2払拭部材は、ヤング率が0.5MPa~100MPaである弾性材料を用いて形成される
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記第1払拭部材は、非吸水性材料を用いて形成され、
前記第2払拭部材は、吸水性弾性材料を用いて形成される
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記噴射ヘッドは、前記ノズル面のうち前記ノズルが形成されたノズル領域を囲うように配置されるノズルプレートを更に有し、
前記ノズル面と前記ノズルプレートとの間には、前記ノズルプレートの厚さ分の段差が形成される
請求項1に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズル面に形成されたノズルからインクを噴射する噴射ヘッドを有する印刷装置においては、噴射ヘッドのノズル面に付着したインクを払拭するワイパユニットが設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5740431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなワイパユニットにおいては、ゴム材等のような弾性変形可能な払拭部材を用いてノズル面を払拭する場合、乾燥又は固化したインクを十分に除去できない可能性がある。一方、乾燥又は固化したインクを除去するために硬度の高い払拭部材を用いてノズル面を払拭する場合、インクを除去することは可能であるが、乾燥又は固化していないインクのミスト又は液滴については十分に除去できない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ノズル面のインクを適切に除去することが可能な印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置は、インクを噴射するノズルが所定の間隔で複数連なって形成されているノズル面を有する噴射ヘッドと、前記ノズル面を払拭する払拭部と、前記ノズル面と前記払拭部とを相対的に移動させる駆動部とを備え、前記噴射ヘッドは、予め設定された主走査方向に移動しつつ印刷領域に載置される印刷対象に前記インクを噴射し、前記払拭部は、前記ノズル面又は前記払拭部が移動する方向に並んで配置され硬度が異なる2つの払拭部材と、2つの前記払拭部材を一体で保持する保持部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ノズル面のインクを適切に払拭することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る印刷装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、ワイパユニットの払拭部の一例を示す図である。
図3図3は、ワイパユニットの払拭部の一例を示す図である。
図4図4は、ワイパユニットによるワイピング動作の一例を示す図である。
図5図5は、ワイパユニットによるワイピング動作の一例を示す図である。
図6図6は、ワイパユニットによるワイピング動作の一例を示す図である。
図7図7は、ワイパユニットによるワイピング動作の一例を示す図である。
図8図8は、ワイパユニットによるワイピング動作の一例を示す図である。
図9図9は、ワイパユニットによるワイピング動作の一例を示す図である。
図10図10は、ワイパユニットによるワイピング動作の一例を示す図である。
図11図11は、ワイパユニットによるワイピング動作の一例を示す図である。
図12図12は、ワイパユニットによるワイピング動作の一例を示す図である。
図13図13は、噴射ヘッドの他の例を示す図である。
図14図14は、図13に示す噴射ヘッドに対して上記のワイパユニットでワイピングを行う場合の一例を示す図である。
図15図15は、図13に示す噴射ヘッドに対して上記のワイパユニットでワイピングを行う場合の一例を示す図である。
図16図16は、図13に示す噴射ヘッドに対して上記のワイパユニットでワイピングを行う場合の一例を示す図である。
図17図17は、図13に示す噴射ヘッドに対して、他の構成に係るワイパユニットでワイピングを行う場合の一例を示す図である。
図18図18は、図13に示す噴射ヘッドに対して、他の構成に係るワイパユニットでワイピングを行う場合の一例を示す図である。
図19図19は、図13に示す噴射ヘッドに対して、他の構成に係るワイパユニットでワイピングを行う場合の一例を示す図である。
図20図20は、図13に示す噴射ヘッドに対して、他の構成に係るワイパユニットでワイピングを行う場合の一例を示す図である。
図21図21は、図13に示す噴射ヘッドに対して、他の構成に係るワイパユニットでワイピングを行う場合の一例を示す図である。
図22図22は、他の構成に係る印刷装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る印刷装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
本実施形態では、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。当該XYZ座標系においては、インクジェットプリンタを載置する床面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面において、後述する記録媒体2の搬送方向をX方向と表記し、XY平面上でX方向に直交する方向をY方向と表記する。また、XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が-方向であるものとして説明する。なお、本実施形態において、+Z方向を上方と表記する場合がある。
【0011】
図1は、本実施形態に係る印刷装置の一例を模式的に示す斜視図である。図1に示す印刷装置100は、メディアMに対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタである。印刷装置100は、キャリッジ10と、ガイド機構20と、ワイパユニット30とを備える。
【0012】
キャリッジ10は、ガイド機構20に案内されてY方向(主走査方向)に往復移動可能である。キャリッジ10は、噴射ヘッド11と、光照射装置12とが設けられる。
【0013】
噴射ヘッド11は、印刷領域PAのメディアMへ向けてインクを吐出する。なお、メディアMは、印刷領域PAにおいて、プラテン16に配置される。噴射ヘッド11は、ノズル面13を有する。ノズル面13は、例えば平面状であり、インクを噴射するノズル14が形成される。ノズル面13は、ノズル14におけるインクのメニスカスを確保するため、撥水加工が施されている。ノズル14は、例えば所定方向に複数並んだ状態で設けられる。インクとしては、例えば紫外線硬化型インクが挙げられる。紫外線硬化インクの種類としては、例えば、メディアMに形成する画像の色彩等に応じて、白色インク、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)及び黒色(K)等の着色インク、透明インク等を適宜用いることができる。紫外線硬化型インク以外のインクの場合であっても、ラテックスインク等、インクの乾燥・硬化によってノズル面に固形物が付着しやすいインクにも適宜用いることができる。例えば、噴射ヘッド11が主走査方向(Y方向)においてインクを噴射した後に払拭部31に対向する位置に到達するまでの時間を最低噴射時間とすると、インクとしては、例えばノズル面13に付着したインクの液滴が少なくとも当該最低噴射時間中に固形化するインクを用いることができる。
【0014】
光照射装置12は、メディアMに吐出された紫外線硬化インクに対して紫外線を照射する。光照射装置12は、例えば、紫外線を照射可能なLEDモジュール等により構成される。光照射装置12は、キャリッジ10の移動により、噴射ヘッド11と一体で主走査方向に往復移動する。
【0015】
ガイド機構20は、キャリッジ10をY方向に案内する。ガイド機構20は、ガイドレール21を有する。ガイドレール21は、Y方向に沿って延びている。ガイド機構20は、キャリッジ10をY方向に移動させる第1駆動機構22を有する。第1駆動機構22は、例えばモータ等の駆動源と、伝達機構とを含む構成である。第1駆動機構22の駆動源で発生する駆動力により、キャリッジ10がガイドレール21に沿ってY方向に移動する。第1駆動機構22は、後述する第2駆動機構32と共に駆動部40を構成する。駆動部40は、ノズル面13と払拭部31とを相対的に移動させる。
【0016】
ワイパユニット30は、印刷装置100のメンテナンス領域MAに設けられる。メンテナンス領域MAは、印刷領域PAに対してY方向の外側に配置される。ワイパユニット30は、噴射ヘッド11のノズル面13を払拭する。ワイパユニット30は、払拭部31と、第2駆動機構32とを有する。払拭部31は、主走査方向であるY方向の延長線上の少なくとも1箇所、本実施形態では例えばプラテン16の+Y側の1箇所の所定の位置において、噴射ヘッド11のノズル面13が対向するように配置される。
【0017】
図2及び図3は、ワイパユニット30の払拭部31の一例を示す図である。図2は斜視図、図3(A)はX方向から見た図、図3(B)はY方向から見た図をそれぞれ示している。なお、図2では、第1払拭部材33及び第2払拭部材34の分解斜視図を併せて示している。図2及び図3に示すように、払拭部31は、硬度が異なる2つの払拭部材である第1払拭部材33及び第2払拭部材34と、これら2つの払拭部材を保持する保持部35とを有する。
【0018】
第1払拭部材33よりも第2払拭部材34の方が、硬度が低い。換言すると、第1払拭部材33は、第2払拭部材34に比べて硬度が高い。ここで、硬度とは、例えば払拭方向の力に対する変形しにくさとすることができる。第1払拭部材33は、例えばヤング率が400MPa~800MPaの範囲となるように形成される。第2払拭部材34は、例えばヤング率が0.5MPa~100MPaの範囲となるように形成される。本実施形態において、第1払拭部材33は、例えばポリプロピレン等のプラスチック材料を用いて形成される。第2払拭部材34は、例えばエチレンプロピレンゴム等のゴム材料を用いて形成される。
【0019】
第1払拭部材33及び第2払拭部材34は、払拭方向に並んで配置される。第1払拭部材33は、払拭方向の前側に配置される。第2払拭部材34は、払拭方向の後側に配置される。
【0020】
第1払拭部材33は、例えば厚さ(払拭方向の寸法)が0.35mm程度である。第1払拭部材33は、上面33fが平面状である。第1払拭部材33は、払拭方向について上面33fの両側に角部33p、33qを有する構成である。角部33p、33qを有することにより、払拭部31が払拭方向に移動する際、第1払拭部材33がノズル面13に対してエッジを効かせた状態で払拭することが可能となっている。なお、第1払拭部材33は、角部33pよりも角部33qの方がZ方向の高さが高くなるように形成されてもよい。この場合、上面33fは、角部33pから角部33qにかけて上方に傾いた構成となる。
【0021】
第2払拭部材34は、例えば厚さが2mm程度である。第2払拭部材34は、上面34fが平面状である。第2払拭部材34は、払拭方向について上面34fの両側に角部34p、34qを有する構成である。角部34p、34qを有することにより、払拭部31が払拭方向に移動する際、第2払拭部材34がノズル面13に対してエッジを効かせた状態で払拭することが可能となっている。なお、第2払拭部材34は、角部34pよりも角部34qの方がZ方向の高さが高くなるように形成されてもよい。この場合、上面34fは、角部34pから角部34qにかけて上方に傾いた構成となる。
【0022】
第1払拭部材33のY方向の寸法は、噴射ヘッド11のY方向の寸法と同様又は噴射ヘッド11のY方向の寸法より大きい。また、第2払拭部材34のY方向の寸法は、噴射ヘッド11のノズル面13のY方向の寸法と同様又は噴射ヘッド11のノズル面13のY方向の寸法よりも大きい。したがって、第1払拭部材33及び第2払拭部材34により、噴射ヘッド11のノズル面13のY方向の全領域を払拭することができる。
【0023】
第2払拭部材34は、第1払拭部材33よりも保持部35からノズル面13側に突出している。このため、払拭部31をノズル面13側に上昇させた場合、第2払拭部材34から先にノズル面13に接触する。また、第1払拭部材33がノズル面13に接触するまで払拭部31を上昇させた場合、第2払拭部材34が上下方向に弾性変形した状態となる。
【0024】
保持部25は、第1払拭部材33及び第2払拭部材34を一体で保持する。保持部25は、第1払拭部材33及び第2払拭部材34を着脱可能に保持する。
【0025】
第2駆動機構32は、払拭部31をX方向(副走査方向)に往復移動させる。払拭部31の移動方向であるX方向(副走査方向)が、本実施形態に係る払拭部31の払拭方向となる。払拭方向は、X方向の往復方向であってもよいし、片道方向であってもよい。
【0026】
また、第2駆動機構32は、払拭部31をZ方向(昇降方向)に往復移動させる。第2駆動機構32が払拭部31をZ方向に移動させることにより、第1払拭部材33及び第2払拭部材34をノズル面13に接触させる又は接触を解除することが可能となっている。第2駆動機構32が第1払拭部材33及び第2払拭部材34をノズル面13に接触させた状態で払拭部31をX方向に移動させることにより、払拭部31によるノズル面13の払拭を行うことができる。
【0027】
次に、上記のように構成された印刷装置100のワイピング動作について説明する。図4から図12は、ワイパユニット30によるワイピング動作の一例を示す図である。ワイピング動作を行う場合、噴射ヘッド11をワイパユニット30のワイパユニット30の上方に移動させる。この状態から、図4に示すように、第2駆動機構32は、噴射ヘッド11のノズル面13に向けて払拭部31を上昇させる。払拭部31の上昇により、まず第2払拭部材34がノズル面13に接触する。払拭部31を更に上昇させることにより、第1払拭部材33がノズル面13に接触し、第2払拭部材34が弾性変形した状態となる。
【0028】
第1払拭部材33及び第2払拭部材34がノズル面13に接触した状態から、図5に示すように、第2駆動機構32は、払拭部31を払拭方向に移動させる。払拭部31は、第1払拭部材33が払拭方向の前側、第2払拭部材34が払拭方向の後側に位置した状態でノズル面13を払拭する。払拭部31が払拭方向に移動することにより、第1払拭部材33及び第2払拭部材34は、それぞれ上端側が後方に撓んだ状態で角部33p、34pがノズル面13に接触した状態となる。このため、第1払拭部材33及び第2払拭部材34は、ノズル面13に対してエッジを効かせた状態で払拭することができる。なお、第1払拭部材33よりも第2払拭部材34の方が硬度が低いため、後方への撓みが大きくなる。
【0029】
図6及び図7に示すように、払拭部31の移動により、プラスチック材料を用いて形成された第1払拭部材33は、ノズル面13に付着して乾燥又は固化したインクQ1を掻き取ることができる。
【0030】
図8から図10に示すように、払拭部31の移動により、ゴム材料を用いて形成された第2払拭部材34は、ノズル面13に付着した液滴状又はミスト状のインクQ2を掻き取ることができる。ここで、図9に示すように、第1払拭部材33は、乾燥又は固化したインクQ1を除去することが可能であるが、乾燥又は固化していない液滴状又はミスト状のインクQ2については十分に除去できない場合がある。この場合、インクQ2の一部がノズル面13に残った状態となる。
【0031】
これに対して、本実施形態では、第1払拭部材33よりも硬度が低い第2払拭部材34が設けられるため、図10に示すように、ノズル面13に残ったインクQ2を第2払拭部材34によって除去することができる。従って、払拭部31の1回の払拭方向への移動により、乾燥又は固化したインクQ1及び液滴状又はミスト状のインクQ2の両方を適切に除去することができる。
【0032】
なお、ノズル面13に付着したインクが液滴状又はミスト状のインクQ2である場合、図11及び図12に示すように、第2払拭部材34が払拭方向の前方となるように払拭部31を移動させてもよい。この場合、第2払拭部材34によりインクQ2を適切に除去することができる。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る印刷装置100は、インクを噴射するノズル14が所定の間隔で複数連なって形成されているノズル面13を有する噴射ヘッド11と、ノズル面13を払拭する払拭部31と、ノズル面13と払拭部31とを相対的に移動させる駆動部40とを備え、噴射ヘッド11は、予め設定された主走査方向に移動しつつ印刷領域に載置されるメディアMにインクを噴射し、払拭部31は、ノズル面13又は払拭部31が移動する方向に並んで配置され硬度が異なる第1払拭部材33及び第2払拭部材34と、第1払拭部材33及び第2払拭部材34を一体で保持する保持部35とを有する。
【0034】
この構成によれば、払拭部31において硬度が異なる第1払拭部材33及び第2払拭部材34が一体で保持されるため、第1払拭部材33及び第2払拭部材34をノズル面13に接触させて払拭部31を払拭方向に移動させた場合、1回の移動で、乾燥又は固化したインク及びミスト又は液滴状のインクの両方について適切に除去することができる。
【0035】
本実施形態に係る印刷装置100において、駆動部40は、噴射ヘッド11を予め設定された主走査方向に移動させる第1駆動機構22と、払拭部31をノズル面13に対して相対的に移動させる第2駆動機構32を有する。この構成によれば、駆動部40が第1駆動機構22及び第2駆動機構32を有するため、噴射ヘッド11及び払拭部31をそれぞれ別個に移動させる。
【0036】
本実施形態に係る印刷装置100において、第1払拭部材33は、ノズル面13又は払拭部31が移動する方向において駆動部40により一方側に配置され、第2払拭部材34は、ノズル面13又は払拭部31が移動する方向において他方側に配置され第1払拭部材33よりも硬度が低い。この構成によれば、払拭方向の前側の第1払拭部材33により、乾燥又は固化した状態でノズル面13に付着したインクを適切に除去することができる。また、払拭方向の後側の第2払拭部材34により、ノズル面13に付着したミスト状又は液滴状のインクを適切に除去することができる。この場合、第2払拭部材34は、第1払拭部材33において除去しきれないミスト状又は液滴状のインクについても適切に除去することができる。
【0037】
本実施形態に係る印刷装置100において、第2払拭部材34は、第1払拭部材33よりも保持部からノズル面13側に突出している。この構成によれば、第1払拭部材33をノズル面13に接触させた状態で第2払拭部材34を弾性変形させることができる。
【0038】
本実施形態に係る印刷装置100において、第2駆動機構32は、ノズル面13に直交する昇降方向に払拭部31を移動可能である。この構成によれば、第2駆動機構32の駆動により、第1払拭部材33及び第2払拭部材34をノズル面13に適切に接触させることができる。
【0039】
本実施形態に係る印刷装置100において、第2駆動機構32は、昇降方向に払拭部31を移動させて、第2払拭部材34が弾性変形した状態で第1払拭部材33及び第2払拭部材34がノズル面13に接触する位置に配置可能である。この構成によれば、第2駆動機構32の駆動により、第1払拭部材33及び第2払拭部材34をノズル面13に適切に接触させた状態でノズル面13を払拭させることができる。
【0040】
本実施形態に係る印刷装置100において、払拭部31は、主走査方向の延長線上の少なくとも1ヶ所の所定の位置において、噴射ヘッド11のノズル面13が対向するように配置される。この構成によれば、噴射ヘッド11を主走査方向の延長方向に移動させることで、ノズル面13を払拭部31に対向させることができる。
【0041】
本実施形態に係る印刷装置100において、噴射ヘッド11が主走査方向(Y方向)においてインクを噴射した後に払拭部31に対向する位置に到達するまでの時間を最低噴射時間とすると、インクとしては、例えばノズル面13に付着したインクの液滴が少なくとも当該最低噴射時間中に固形化するインクを用いることができる。これにより、噴射ヘッド11がインクを噴射した後に主走査方向への移動中にインクが固化した場合に、払拭部31により適切にインクを払拭することができる。
【0042】
本実施形態に係る印刷装置100において、第1払拭部材33は、非吸水性材料を用いて形成され、第2払拭部材34は、吸水性弾性材料を用いて形成される。この構成によれば、第1払拭部材33及び第2払拭部材34を、それぞれインクを適切に除去可能な硬度に形成することができる。例えば、インクが固化した固形物を第1払拭部材33により払拭することができ、液体状態のインクを第2払拭部材34で払拭することができる。
【0043】
本実施形態に係る印刷装置100は、インクを噴射するノズル14が形成されたノズル面13を有する噴射ヘッド11と、噴射ヘッド11のノズル面13を払拭するワイパユニットとを備え、ワイパユニットとして、上記のワイパユニット30が用いられる。この構成によれば、1回の移動で、乾燥又は固化したインク及びミスト又は液滴状のインクの両方について適切に除去することが可能なワイパユニット30を備えるため、硬度の高い払拭部材によりノズル面13を必要以上に払拭することを抑制することができ、ノズル面13の撥水加工の劣化を抑制できる。これにより、噴射ヘッド11の長寿命化を図ることができる。
【0044】
本実施形態に係る印刷装置100において、インクは、紫外線硬化型インクである。したがって、紫外線硬化型インクを噴射する噴射ヘッド11では、乾燥又は硬化した状態のインク及びミスト状又は液滴状のインクがノズル面13に混在した状態となりやすい。本実施形態によれば、払拭部31の1回の移動により、乾燥又は固化したインク及びミスト又は液滴状のインクの両方について適切に除去することができる。
【0045】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。図13は、噴射ヘッドの他の例を示す図である。図13に示すように、噴射ヘッド11Aは、ノズル面13上にノズルプレート15が配置された構成である。ノズルプレート15は、ノズル面13のうち複数のノズル14が形成されたノズル領域13Rを囲うように形成される。このため、ノズル面13には、ノズル領域13Rと、ノズルプレート15の表面15Rとの間に段差が形成される。段差は、例えばノズルプレート15の厚さ分だけ形成される。
【0046】
図14から図16は、図13に示す噴射ヘッド11Aに対して上記のワイパユニット30でワイピングを行う場合の一例を示す図である。図14に示すように、ノズル面13に段差が形成される場合においても同様に、第2駆動機構32は、払拭部31を上昇させる。払拭部31の上昇により、図14に示すように、まず第2払拭部材34がノズルプレート15の表面15Rに接触する。
【0047】
この状態から、第2駆動機構32が更に払拭部31を上昇させることにより、図15に示すように、第1払拭部材33がノズルプレート15の表面15Rに接触する。また、第2払拭部材34の一部が弾性変形して段差部分に入り込み、ノズル面13のノズル領域13Rに接触する。
【0048】
この状態から、第2駆動機構32が払拭部31を払拭方向に移動させることにより、図16に示すように、第1払拭部材33がノズルプレート15の表面15Rを払拭し、段差部分に入り込んだ第2払拭部材34の一部がノズル領域13Rを払拭する。これにより、ノズル面13に段差を有する噴射ヘッド11Aに対して適切にノズル面13のノズル領域13R及びノズルプレート15の表面15Rに付着したインクを除去することができる。
【0049】
図17及び図18は、図13に示す噴射ヘッド11Aに対して、他の構成に係るワイパユニット30Aでワイピングを行う場合の一例を示す図である。図17及び図18に示すように、ワイパユニット30Aは、払拭部31Aに設けられる第2払拭部材34AのY方向(幅方向)の寸法が、ノズル領域13RのY方向の寸法とほぼ一致した構成である。なお、第1払拭部材33Aについては上記の払拭部31の第1払拭部材33と同様の構成である。
【0050】
このようなワイパユニット30Aでワイピングを行う場合、第2駆動機構32は、払拭部31Aを上昇させる。払拭部31Aの上昇により、図17に示すように、まず第2払拭部材34Aがノズル面13の段差部分に入り込み、ノズル面13のノズル領域13Rに接触する。この状態から第2駆動機構32が更に払拭部31を上昇させることにより、図18に示すように、第1払拭部材33がノズルプレート15の表面15Rに接触する。なお、第2払拭部材34は、段差部分に入り込んでノズル領域13Rに接触した状態で弾性変形する。
【0051】
この状態から、第2駆動機構32が払拭部31Aを払拭方向に移動させることにより、第1払拭部材33Aがノズルプレート15の表面15Rを払拭し、段差部分に入り込んだ第2払拭部材34Aがノズル領域13Rを払拭する。これにより、ノズル面13に段差を有する噴射ヘッド11Aに対してノズル面13のノズル領域13R及びノズルプレート15の表面15Rに付着したインクを適切に除去することができる。
【0052】
図19から図21は、図13に示す噴射ヘッド11Aに対して、他の構成に係るワイパユニット30Bでワイピングを行う場合の一例を示す図である。図19及び図20に示すように、ワイパユニット30Bは、払拭部31Aに設けられる第1払拭部材33BのY方向(幅方向)の寸法が、ノズル領域13RのY方向の寸法とほぼ一致した構成である。なお、第2払拭部材34Bについては、上記の払拭部31の第2払拭部材34と同様の構成である。
【0053】
このようなワイパユニット30Bでワイピングを行う場合、第2駆動機構32は、払拭部31Bを上昇させる。払拭部31Bの上昇により、図20に示すように、第1払拭部材33Bがノズル面13の段差部分に入り込む。この状態から第2駆動機構32Bが更に払拭部31Bを上昇させることにより、第2払拭部材34Bがノズルプレート15の表面15Rに接触する。また、更に払拭部31Bを上昇させることにより、図20に示すように、第1払拭部材33Bがノズル面13のノズル領域13Rに接触する。また、第2払拭部材34Bは、ノズルプレート15の表面15Rに接触した状態で弾性変形する。
【0054】
この状態から、第2駆動機構32Bが払拭部31Bを払拭方向に移動させることにより、図21に示すように、第1払拭部材33Bが段差部分においてノズル面13のノズル領域13Rを払拭し、第2払拭部材34Bがノズルプレート15の表面15Rを払拭する。これにより、ノズル面13に段差を有する噴射ヘッド11Aに対して、ノズル面13のノズル領域13R及びノズルプレート15の表面15Rに付着したインクを適切に除去することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、第1払拭部材としてプラスチック材料、第2払拭部材としてゴム材料を用いた場合を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。例えば、第2払拭部材として、ゴム材料に代えてスポンジ等の多孔質材料を用いてもよい。
【0056】
また、上記実施形態の構成に加えて、ワイパユニットによるワイピングの洗浄効率を高めるため、第1払拭部材及び第2払拭部材に洗浄液を適宜供給可能な構成としてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、駆動部40である第2駆動機構32が払拭部31を昇降させることで払拭部31を昇降方向に移動させる構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。例えば、駆動部40である第1駆動機構22が、ノズル面13に直交する昇降方向に噴射ヘッド11を移動可能であってもよい。この場合、第1駆動機構22は、昇降方向に噴射ヘッド11を移動させることで、第2払拭部材34が弾性変形した状態で第1払拭部材33及び第2払拭部材34が接触する位置にノズル面13を配置可能な構成であってもよい。これにより、第1駆動機構22の駆動により、第1払拭部材33及び第2払拭部材34をノズル面13に適切に接触させることができる。
【0058】
図22は、他の構成に係る印刷装置100Cの一例を示す図である。図22に示す印刷装置100Cにおいては、ワイパユニット30がプラテン16の+Y側に配置された構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。図22に示すように、ワイパユニット30は、プラテン16の+Y側及び-Y側の両方に配置されてもよい。この場合、払拭部31は、主走査方向であるY方向の延長線上、すなわちプラテン16の+Y側及び-Y側の2箇所の所定の位置において、噴射ヘッド11のノズル面13が対向するように配置されることになる。
【符号の説明】
【0059】
M…メディア、Q1,Q2…インク、2…記録媒体、10…キャリッジ、11,11A…噴射ヘッド、12…光照射装置、13…ノズル面、13R…ノズル領域、14…ノズル、15…ノズルプレート、15R…表面、16…プラテン、20…ガイド機構、21…ガイドレール、22…第1駆動機構、30,30A,30B…ワイパユニット、31,31A,31B…払拭部、32,32B…第2駆動機構、33,33A,33B…第1払拭部材、33f,34f…上面、33p,33q,34p,34q…角部、34,34A,34B…第2払拭部材、35…保持部、40…駆動部、100…印刷装置
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