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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131249
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】バラスト水処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/147 20060101AFI20240920BHJP
   B01D 33/06 20060101ALI20240920BHJP
   B01D 35/143 20060101ALI20240920BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240920BHJP
   B63B 13/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01D35/14 101
B01D33/06 D
B01D35/14 102
C02F1/32
B63B13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041389
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】丹下 智陽
(72)【発明者】
【氏名】炭蔵 久和
(72)【発明者】
【氏名】大谷 英彦
【テーマコード(参考)】
4D037
4D116
【Fターム(参考)】
4D037AA01
4D037AA05
4D037AA06
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
4D037CA03
4D116AA02
4D116BB14
4D116BC27
4D116BC45
4D116BC46
4D116BC47
4D116DD06
4D116FF18B
4D116KK04
4D116QA13C
4D116QA13G
4D116QA14C
4D116QA14D
4D116QA14E
4D116QA14G
4D116QA17C
4D116QA17D
4D116QA17E
4D116QA17G
4D116QA43C
4D116QA43E
4D116QA43G
4D116QA44C
4D116QA44E
4D116QA44G
4D116QC02B
4D116QC04A
4D116QC04B
4D116QC22A
4D116QC23A
4D116QC23B
4D116QC25
4D116RR01
4D116RR04
4D116RR14
4D116RR26
4D116VV07
4D116VV10
4D116VV30
(57)【要約】
【課題】初期通水時におけるフィルタへの負荷を低減することの可能なバラスト水処理装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、バラスト水を浄化処理するバラスト水処理装置1であって、濾過装置2と、浄化ラインL2,L3,L5と、差圧検知手段27と、制御手段4とを備えており、濾過装置2は、フィルタ21により水を浄化するよう構成され、浄化ラインL2,L3,L5は、濾過装置2を通るラインであり、差圧検知手段27は、フィルタ21の一次圧と二次圧の差圧ΔPを検知するよう構成され、制御手段4は、浄化ラインL2,L3,L5への通水を開始した初期に実行する初期通水モードM2と、当該初期通水モードM2の後に実行する通常通水モードM3とを切り替えて実行するよう構成され、制御手段4は、通常通水モードM3では、差圧ΔPが通常差圧閾値P3以上となった場合に異常と判断し、初期通水モードM2では、差圧ΔPが通常差圧閾値P3よりも小さい初期差圧閾値P2以上となった場合に異常と判断する、バラスト水処理装置1が提供される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト水を浄化処理するバラスト水処理装置であって、
濾過装置と、浄化ラインと、差圧検知手段と、制御手段とを備えており、
前記濾過装置は、フィルタにより水を浄化するよう構成され、
前記浄化ラインは、前記濾過装置を通るラインであり、
前記差圧検知手段は、前記フィルタの一次圧と二次圧の差圧を検知するよう構成され、
前記制御手段は、前記浄化ラインへの通水を開始した初期に実行する初期通水モードと、当該初期通水モードの後に実行する通常通水モードとを切り替えて実行するよう構成され、
前記制御手段は、前記通常通水モードでは、前記差圧が通常差圧閾値以上となった場合に異常と判断し、前記初期通水モードでは、前記差圧が前記通常差圧閾値よりも小さい初期差圧閾値以上となった場合に異常と判断する、バラスト水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバラスト水処理装置であって、
前記制御手段は、前記初期通水モードと前記通常通水モードに加え、前記フィルタを保護するための異常時モードを実行するよう構成され、
前記制御手段は、前記通常通水モードでは、前記差圧が前記通常差圧閾値以上となった場合に前記異常時モードに切り替え、前記初期通水モードでは、前記差圧が前記初期差圧閾値以上となった場合に前記異常時モードに切り替える、バラスト水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバラスト水処理装置であって、
前記浄化ラインに開度調整弁をさらに備え、
前記制御手段は、前記初期通水モードにおいて、前記開度調整弁の開度を段階的に上げる制御を行う、水処理装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のバラスト水処理装置であって、
前記制御手段は、予め設定した時間の経過後、前記初期通水モードから前記通常通水モードに切り替える、バラスト水処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載のバラスト水処理装置であって、
前記予め設定した時間は変更可能とされる、バラスト水処理装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のバラスト水処理装置であって、
前記通常差圧閾値及び前記初期差圧閾値は変更可能とされる、バラスト水処理装置。
【請求項7】
請求項2に記載のバラスト水処理装置であって、
バイパスラインと、浄化弁と、バイパス弁とをさらに備え、
前記バイパスラインは、前記濾過装置をバイパスするラインであり、
前記浄化弁は、前記浄化ラインへのバラスト水の流通を切り替える弁であり、
前記バイパス弁は、前記バイパスラインへのバラスト水の流通を切り替える弁であって、
前記制御手段は、前記異常時モードにおいて、前記浄化弁を閉じるとともに前記バイパス弁を開くことで、バラスト水が前記バイパスラインを流通するよう制御する、バラスト水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタを有するバラスト水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカー等の船舶は、積み荷の原油等を降ろした後、再度目的地に向けて航行する際、航行中の船舶のバランスを取るため、通常、バラスト水と呼ばれる水をバラストタンク内に貯留する。このような船舶には、バラスト水の注排水による生態系の破壊を防ぐため、バラスト水を浄化処理するバラスト水処理装置が設けられている。
【0003】
バラスト水処理装置の一種として、円筒状のフィルタをケーシング内に配置することでバラスト水を濾過処理するものがある。例えば、特許文献1には、濾過前後のバラスト水の差圧を計測することで、濾過膜(フィルタ)の目詰まりを検出することの可能なバラスト水処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-34002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フィルタへの通水を開始した直後におけるフィルタの異常への対応が遅れ、フィルタに不具合が生じるおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、初期通水時におけるフィルタの異常を検知することの可能なバラスト水処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]バラスト水を浄化処理するバラスト水処理装置であって、濾過装置と、浄化ラインと、差圧検知手段と、制御手段とを備えており、前記濾過装置は、フィルタにより水を浄化するよう構成され、前記浄化ラインは、前記濾過装置を通るラインであり、前記差圧検知手段は、前記フィルタの一次圧と二次圧の差圧を検知するよう構成され、前記制御手段は、前記浄化ラインへの通水を開始した初期に実行する初期通水モードと、当該初期通水モードの後に実行する通常通水モードとを切り替えて実行するよう構成され、前記制御手段は、前記通常通水モードでは、前記差圧が通常差圧閾値以上となった場合に異常と判断し、前記初期通水モードでは、前記差圧が前記通常差圧閾値よりも小さい初期差圧閾値以上となった場合に異常と判断する、バラスト水処理装置。
[2][1]に記載のバラスト水処理装置であって、前記制御手段は、前記初期通水モードと前記通常通水モードに加え、前記フィルタを保護するための異常時モードを実行するよう構成され、前記制御手段は、前記通常通水モードでは、前記差圧が前記通常差圧閾値以上となった場合に前記異常時モードに切り替え、前記初期通水モードでは、前記差圧が前記初期差圧閾値以上となった場合に前記異常時モードに切り替える、バラスト水処理装置。
[3][1]又は[2]に記載のバラスト水処理装置であって、前記浄化ラインに開度調整弁をさらに備え、前記制御手段は、前記初期通水モードにおいて、前記開度調整弁の開度を段階的に上げる制御を行う、水処理装置。
[4][1]~[3]のいずれかに記載のバラスト水処理装置であって、前記制御手段は、予め設定した時間の経過後、前記初期通水モードから前記通常通水モードに切り替える、バラスト水処理装置。
[5][4]に記載のバラスト水処理装置であって、前記予め設定した時間は変更可能とされる、バラスト水処理装置。
[6][1]~[5]のいずれかに記載のバラスト水処理装置であって、前記通常差圧閾値及び前記初期差圧閾値は変更可能とされる、バラスト水処理装置。
[7][2]に記載のバラスト水処理装置であって、バイパスラインと、浄化弁と、バイパス弁とをさらに備え、前記バイパスラインは、前記濾過装置をバイパスするラインであり、前記浄化弁は、前記浄化ラインへのバラスト水の流通を切り替える弁であり、前記バイパス弁は、前記バイパスラインへのバラスト水の流通を切り替える弁であって、前記制御手段は、前記異常時モードにおいて、前記浄化弁を閉じるとともに前記バイパス弁を開くことで、バラスト水が前記バイパスラインを流通するよう制御する、バラスト水処理装置。
【0008】
本発明によれば、初期通水時(初期通水モード)の差圧の閾値を通常時(通常通水モード)における差圧よりも小さく設定することで、初期通水時におけるフィルタの異常を早期に検知することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るバラスト水処理装置1を船舶のバラスト装置に導入した状態を示す概略図である。
図2図1のバラスト水処理装置1の構成を示す図である。
図3図1のバラスト水処理装置1において、制御手段4が起動モードM1を実行したときのバラスト水の流路を示す図である。
図4図1のバラスト水処理装置1において、制御手段4が初期通水モードM2を実行したときのバラスト水の流路を示す図である。
図5図1のバラスト水処理装置1において、制御手段4が通常通水モードM3を実行したときのバラスト水の流路を示す図である。
図6図1のバラスト水処理装置1の制御手段4による初期通水モードM2、通常通水モードM3及び異常時モードM4の切り替えについて示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0011】
1.バラスト装置100の構成
図1は、本発明の実施形態に係るバラスト水処理装置1を、船舶のバラスト装置100に導入した様子を示す概略図である。本願のバラスト装置100は、バラストタンク101及びバラストポンプ102を備え、バラストポンプ102によりバラストタンク101に対してバラスト水の注排水を行うものである。なお、海水等の船外の水をシーチェストSC1から船内に取り込んで複数のバラストタンク101に注水を行う動作をバラスト動作、バラストタンク101に貯留されたバラスト水を船外排出口SC2から排水する動作をデバラスト動作と呼ぶ。また、本明細書における「バラスト水」について、バラストタンク101に導入(流入)される前又はバラストタンク101から排出(流出)された後に拘わらず、船内に取り込まれた水を全て「バラスト水」と表現する。また、船内に取り込むバラスト水には、海水、淡水、汽水等が含まれるものとする。
【0012】
図1に示すように、バラスト装置100は、各構成要素を接続してバラスト水を流通させるラインLa~ラインLeと、これらのライン上に設けられる開閉弁Va~開閉弁Vfとを備える。ここで、「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0013】
各ラインの接続関係を具体的に説明すると、ラインLaは、シーチェストSC1とバラストポンプ102を接続するラインであり、開閉弁Vaを有する。ラインLb及びラインLcは、バラストポンプ102とバラストタンク101を接続するラインである。バラスト水処理装置1がバラストポンプ102とバラストタンク101の間に配置されるため、バラスト水処理装置1よりも上流側をラインLb、バラスト水処理装置1よりも下流側をラインLcとしている。ラインLbは、開閉弁Vbを有し、ラインLcは、開閉弁Vc及び開閉弁Vdを有する。ラインLa~ラインLcを合わせて、バラストラインとも称する。
【0014】
ラインLdは、一端が開閉弁Vaとバラストポンプ102の間の位置においてラインLaと接続され、他端が開閉弁Vcよりもバラストタンク101側においてラインLcと接続される。ラインLdには、開閉弁Veが設置される。ラインLdは、デバラスト動作時に使用されるラインであり、デバラストラインとも称する。ラインLeは、一端がバラスト水処理装置1と開閉弁Vcの間の位置においてラインLcと接続され、他端は船外排出口SC2と接続される。ラインLeには、開閉弁Vfが設置される。
【0015】
なお、上述したバラスト装置100の構成は、本発明に係るバラスト水処理装置1を導入する対象であるバラスト装置の一例を示したに過ぎず、以下に説明するバラスト水処理装置1は、任意の構成のバラスト装置に適用することが可能である。
【0016】
2.バラスト水処理装置1の構成
次に、バラスト水処理装置1の構成を説明する。バラスト水処理装置1は、船内に取り込むバラスト水及び船内から排出するバラスト水を処理してバラスト水中に含まれる微生物・異物の含有量を低減するために導入されるものである。本実施形態のバラスト水処理装置1は、図1に示すように、バラストポンプ102とバラストタンク101(あるいは船外排出口SC2)の間に設けられる。ここで、バラスト水処理装置1の流路について、ラインLbと接続されるバラストポンプ102側の接続部を上流側接続部X1、ラインLcと接続されるバラストタンク101側の接続部を下流側接続部X2とする。
【0017】
本実施形態のバラスト水処理装置1は、図1に示すように、浄化手段として、フィルタ21によりバラスト水を濾過処理する濾過装置2と、バラスト水に紫外線を照射して微生物を殺菌処理するUVリアクタ3と、制御手段4とを備える。
【0018】
また、バラスト水処理装置1は、図1に示すように、各構成要素を接続してバラスト水を流通させる第1ラインL1~第5ラインL5と、これらに設置される開閉弁V1~V4と、開度調整の可能な第1開度調整弁FCV1(特許請求の範囲における開度調整弁)及び第2開度調整弁FCV2とを備える。なお、バラスト水処理装置1の第1ラインL1について、一部の管路として船舶に既存のラインを用いてもよい。また、第2ラインL2~第5ラインL5について部分的に船舶に既存のラインを用いることも可能である。加えて、開閉弁V1~開閉弁V4、第1開度調整弁FCV1及び第2開度調整弁FCV2の少なくとも1つとして、船舶に既存のラインに設けられた弁を用いることも可能である。
【0019】
具体的には、第1ラインL1は、浄化手段(濾過装置2及びUVリアクタ3)をバイパスして上流側接続部X1と下流側接続部X2を接続するライン(バイパスラインL1とも称する、図3参照)であり、開閉弁V1(バイパス弁V1とも称する)を有する。第2ラインL2は、第1ラインL1と濾過装置2とを接続するラインであり、開閉弁V2を有する。第3ラインL3は、濾過装置2とUVリアクタ3とを接続するラインであり、開閉弁V3を有する。また、第4ラインL4は、一端が第1ラインL1の第2ラインL2との接続位置よりも下流側の位置であって開閉弁V1よりは上流側の位置に接続され、他端が第3ラインL3の開閉弁V3よりも下流側の位置に接続される。第4ラインL4は開閉弁V4を有する。第5ラインL5は、一端がUVリアクタ3に接続され、他端が第1ラインL1の開閉弁V1よりも下流側の位置に接続される。濾過装置2及びUVリアクタ3において浄化処理を行う際にバラスト水が流通するライン(図4参照)である第1ラインL1の一部、第2ラインL2、第3ラインL3及び第5ラインL5をあわせて浄化ラインとも称する。第5ラインL5には、流量計FMが設けられる。
【0020】
加えて、第1ラインL1の第2ラインL2との接続位置、すなわち、浄化ラインとバイパスラインL1の分岐位置よりも上流側の位置には、第1開度調整弁FCV1が設けられる。また、第5ラインL5の流量計FMよりも下流側の位置には、第2開度調整弁FCV2が設けられる。なお、開閉弁V2、開閉弁V3及び第2開度調整弁FCV2は浄化ラインへのバラスト水の流通を切り替える弁であり、合わせて浄化弁とも称する。
【0021】
濾過装置2は、具体的には、図2に示すように、円筒状のケーシング20と、円筒状のフィルタ21と、フィルタ回転手段22とを備える。円筒状のフィルタ21は、その中心軸が鉛直方向と一致するようケーシング20内部に配置される。フィルタ21は、内部(一次側)に流入した海水等の濾過処理前のバラスト水を濾過して外部(二次側)へ流出させる。フィルタ回転手段22は、フィルタ21をその軸心を中心に回転させる。
【0022】
また、濾過装置2は、フィルタ21の洗浄のため、フィルタ21の一次側のバラスト水を排出する逆洗浄手段23と、フィルタ21の二次側に設けられ、フィルタ21に向かって洗浄液を噴出する洗浄液噴出手段24とを備える。
【0023】
さらに、濾過装置2は、ケーシング20内部のバラスト水排出後のフィルタ21の洗浄(以下、空間洗浄と呼ぶ)のため、ケーシング20内部に圧縮ガスを供給(パージ)する圧縮ガス供給手段25と、ケーシング20内部のバラスト水を排出する排出手段26と、フィルタ21の一次側の圧力(一次圧)及び二次側の圧力(二次圧)を検出する差圧検知手段27を備える。
【0024】
ケーシング20は、円筒状に形成され、上部開口部が蓋部20aで、下部開口部が底部20bで密閉されている。ケーシング20内部に配置された円筒状のフィルタ21は、その上部開口部が上閉止部21aで密閉され、下部開口部が下閉止部21bで閉止される。これらの構成により、フィルタ21内部(一次側)が、ケーシング20とフィルタ21の間(二次側)と隔てられている。フィルタ21は、例えば、多数の貫通孔が形成された金属板を円筒状に曲げ加工すると共に、円筒状の軸方向に延びる一対の側縁部を溶接することにより形成される。
【0025】
ケーシング20の下部には、濾過処理前のバラスト水をフィルタ21の内部に導入する導入口28が設けられる。導入口28には、第2ラインL2(図1も参照)が接続される。また、ケーシング20の側部には、フィルタ21を通過した濾過処理後のバラスト水が流出する流出口29が設けられる。流出口29には、第3ラインL3(図1も参照)が接続される。第2ラインL2を流れ導入口28から導入されたバラスト水は、下部回転軸部材22bを通ってフィルタ21内に入る。その後、バラスト水は、フィルタ21を通過し濾過処理されてケーシング20とフィルタ21の間に形成される空間に入り、流出口29から流出する。
【0026】
フィルタ回転手段22は、上部回転軸部材22aと、下部回転軸部材22bと、モータ22cとを備える。上部回転軸部材22aは、フィルタ21の上閉止部21aを保持し、下部回転軸部材22bは、下閉止部21bを保持する。モータ22cは、上部回転軸部材22aを回転させる。また、上部回転軸部材22aは、ケーシング20の蓋部20aを貫通し、シーリングされた軸受部材22dを介して蓋部20aに回転自在に且つ液密に支持される。下部回転軸部材22bは、ケーシング20の底部20bを貫通し、シーリングされた軸受部材22eを介して底部20bに回転自在に且つ液密に支持される。下部回転軸部材22bは、フィルタ21内と連通するとともにケーシング20の底部20bからケーシング20の外に突出する管状体となっている。
【0027】
逆洗浄手段23は、複数のノズル23aと、複数のノズルパイプ23bと、集合管23cと、排出管23dとを備える。逆洗浄手段23は、濾過処理中にフィルタ21に付着した異物をバラスト水とともに濃縮水(逆洗水)としてケーシング20の外部へと排出するために用いられる。
【0028】
ノズル23aは、その先端部がフィルタ21の内周面(一次側面)に向かってスリット状に開口し、フィルタ21に対向するよう配置される。ノズル23aの基端部は、円筒形状となっており、ノズルパイプ23bに接続される。ノズルパイプ23bは、先端側がノズル23aに接続され、基端側が集合管23cに接続される円筒状の部材である。本実施形態において、ノズル23a及びノズルパイプ23bは、周方向に90度間隔で4列、それぞれ上下方向に3本づつ、合計12本設けられる(図1では、右方向に延びるもの以外を省略している)。
【0029】
集合管23cは、フィルタ21の内部に配置される。より具体的には、集合管23cは、フィルタ21の中心軸に一致する位置に配置され、上端部が閉鎖し下端部が開口している。集合管23cの上端部は、フィルタ21の上部回転軸部材22aの中央に設けられた孔に挿入されて支持されている。集合管23cには、ノズル23a及びノズルパイプ23bを流通したバラスト水及び異物が集合して流通する。
【0030】
排出管23dは、集合管23cの下端部に接続され、下部回転軸部材22bの内部を、フィルタ21の回転を妨げないように下方に延びる。排出管23dの下端側は、屈曲して延びており、導入口28の周面を貫通している。排出管23dは、集合管23cを流通したバラスト水及び異物をケーシング20(濾過装置2)の外部へと排出する。また、本実施形態の排出管23dには、開度調整が可能な調整弁(逆洗弁、図示せず)が設けられている。
【0031】
洗浄液噴出手段24は、複数の噴出ノズル24aと、洗浄液ライン24bと、洗浄液ポンプ24cとを備える。噴出ノズル24aは、ケーシング20の側部に設けられており、先端部がケーシング20内部、特にフィルタ21の外周面に向かって開口している。これらの構成により、洗浄液噴出手段24は、フィルタ21に向けて高圧の洗浄液を噴出可能となっている。
洗浄液ライン24bは、各噴出ノズル24aと接続され、洗浄液ポンプ24cによって圧送される清水等の洗浄液を各噴出ノズル24aに供給する。洗浄液ライン24bにはまた、開閉弁24dが設けられている。洗浄液ライン24bの上流側は、洗浄液供給源(図示せず)に接続される。
【0032】
圧縮ガス供給手段25は、ケーシング20内部に圧縮ガスを供給するため、圧縮ガス供給口25aと、圧縮ガス供給ライン25bと、開閉弁25cとを備える。圧縮ガス供給口25aは、ケーシング20の導入口28の側部に設けられ、導入口28の周面を貫通している。圧縮ガス供給口25aには、圧縮ガス供給ライン25bが接続される。圧縮ガス供給ライン25bには、開閉弁25cが設けられる。圧縮ガス供給ライン25bの上流側には、圧縮ガス供給源(図示せず)が接続される。
【0033】
排出手段26は、排出口26aと、排出ライン26bと、排出弁26cとを備える。排出口26aは、ケーシング20の底部20bに設けられ、底部20bを貫通している。排出口26aには、排出ライン26bが接続される。排出ライン26bには、排出弁26cが設けられる。排出手段26は、ケーシング20の内部に収容されたバラスト水をフィルタ21の二次側からケーシング20(濾過装置2)の外部へと排出する際に用いられる。
【0034】
差圧検知手段27は、差圧センサ27aと、一次側ライン27bと、二次側ライン27cとを備える。差圧センサ27aは、2つの側面間の圧力の差を検知するセンサである。本実施形態の差圧センサ27aは、水圧の差及び気圧の差を共に検知可能である。
【0035】
一次側ライン27bは、フィルタ21の一次側と、差圧センサ27aの一方の側面とを接続する。「フィルタ21の一次側」の具体的な位置としては例えば、フィルタ21の内部や導入口28内部、また、第2ラインL2上が挙げられる。ただし、これらの位置に限定されるものではない。二次側ライン27cは、フィルタ21の二次側と、差圧センサ27aの他方の側面とを接続する。「フィルタ21の二次側」の具体的な位置としては例えば、ケーシング20とフィルタ21との間の空間(ケーシング20にソケットを設置するものを含む)や流出口29内部、また、第3ラインL3上が挙げられる。ただし、これらの位置に限定されるものではない。このような接続関係により、差圧検知手段27は、フィルタ21の圧力損失によって生じる、フィルタ21の一次圧と二次圧の差圧ΔPを検知することが可能となっている。
【0036】
一方、UVリアクタ3は、図示はしないが、処理槽の内部にUVランプが配置されて構成される。UVリアクタ3は、処理槽内を流通するバラスト水に対し、UVランプにより紫外線を照射して微生物を殺菌処理するものである。本実施形態において、UVリアクタ3には既知の任意の構成が用いられる。
【0037】
流量計FMは、UVリアクタ3を流通するバラスト水の流量を計測するものである。本実施形態において、流量計FMは第5ラインL5に設けられているが、UVリアクタ3による殺滅処理を行う際のバラスト水の流路上であれば、他の位置に設けられていても良い。流量計FM及び上述した第2開度調整弁FCV2の開度調整により、バラスト水処理装置1の浄化手段(濾過装置2及びUVリアクタ3)を流通するバラスト水の流量(以下、処理流量と呼ぶ)を調整することが可能となる。
【0038】
制御手段4は、差圧検知手段27や流量計FM等の検知信号及び経過時間等に基づき、上述した各構成を制御する。具体的には、制御手段4は、開閉弁V1~V4及び第1開度調整弁FCV1、第2開度調整弁FCV2の開閉を制御することにより、バラスト水処理装置1内を流通するバラスト水の流量を調整する。また、制御手段4は、濾過装置2におけるモータ22c、洗浄液ポンプ24c、開閉弁24d、開閉弁25c、排出弁26c等や、UVリアクタ3の点灯/消灯を制御する。また、制御手段4が、バラスト装置100のバラストポンプ102や開閉弁Va~Vfを制御できるようにしても良い。制御手段4は、後述するように、所定の手順(プログラム)に従い、バラスト水処理装置1の動作を制御する。ただし、以下で制御手段4の制御として説明する一部の動作を、船員等が手動で行うことも可能である。
【0039】
なお、上記構成の制御手段4は、具体的には例えば、CPU、メモリ(例えばフラッシュメモリ)、入力部及び出力部を備えた情報処理装置により構成することができる。そして、情報処理装置により構成された制御手段4の上述した各構成要素による処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することで行われる。情報処理装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ、PLC(プログラマラブルロジックコントローラ)あるいはマイコンが用いられる。ただし、制御手段4の一部の機能を、任意の通信手段により接続されたクラウド上で実行されるよう構成しても良い。
【0040】
3.バラスト水処理装置1の動作
以下、本実施形態のバラスト水処理装置1の動作について説明する。本実施形態のバラスト水処理装置1において、制御手段4は、起動モードM1と、初期通水モードM2と、通常通水モードM3と、異常時モードM4とを切り替えて実行するよう構成される。以下、図3図5のバラスト水の流路を示す図と、図4のフローチャートとを用いて、各モードにおける動作及び各モードの切り替えについて詳細に説明する。
【0041】
<起動モードM1>
起動モードM1は、バラスト水処理装置1が停止し、バラスト水が流通していない状態から、バラスト水処理装置1を起動させ、水処理を開始する際のモードである。起動モードM1において、制御手段4は、開閉弁V2~V4及び第2開度調整弁FCV2を閉じた状態でバイパス弁V1を開き、さらに第1開度調整弁FCV1を開く。この状態でバラスト装置100の開閉弁Va,Vbが開かれ、バラストポンプ102が駆動を開始すると、図3に示すように、バラスト水がバイパスラインL1を流通する。バラスト水処理装置1を流通したバラスト水は、開閉弁Vfを開き、開閉弁Vc~Veを閉じておくことで、船外排出口SC2から船外へ排出される。これにより、バラストライン(ラインLa~ラインLc)に繁殖・残留していた微生物・異物を船外へ排出することができる。なお、状況に応じて、起動モードM1は省略することも可能である。
【0042】
<初期通水モードM2>
初期通水モードM2は、バラスト水処理装置1の運転開始後(本実施形態では起動モードM1を所定時間実行した後)、浄化ライン(L2,L3,L5)への通水を開始した初期に実行するモードである。初期通水モードM2において、制御手段4は、まず、第1開度調整弁FCV1の開度を最小開度にするとともに、浄化弁(V2,V3,FCV2)を開く。これにより、バラスト水はバイパスラインL1と浄化ライン(L2,L3,L5)に分岐して流通することになる。ここで、第2開度調整弁FCV2の開度は任意であるが、濾過装置2及びUVリアクタ3に定格流量以上のバラスト水が流れないよう調整される。また、この際、濾過装置2の排出管23dに設けられた逆洗弁を開くとともにモータ22cを駆動させてフィルタ21を回転させることで、逆洗浄手段23によるフィルタ21の洗浄動作(逆洗浄)も開始する。具体的には、逆洗浄手段23内部の圧力はフィルタ21の二次圧よりも低いため、排出管23dに設置される逆洗弁を開いておくことで、フィルタ21に付着した異物がフィルタ21の二次側にある濾過後のバラスト水(濃縮水)と一緒にノズル23aの開口から吸引され、ノズルパイプ23b、集合管23c及び排出管23dを通って外部へ排出されるようになっている。なお、この逆洗浄動作は、初期通水モードM2及び次の通常通水モードM3において連続あるいは間欠的に実行される。
【0043】
次に、制御手段4は、第2開度調整弁FCV2の開度を最小開度にするとともにバイパス弁V1を閉じる。これにより、図4に示すように、バラスト水は流量が抑えられた状態で全て浄化ライン(L2,L3,L5)を流通し、濾過装置2及びUVリアクタ3を流通するようになる。そして、制御手段4は、最小開度であった第1開度調整弁FCV1及び第2開度調整弁FCV2の開度を段階的に上げていき、各開度が予め設定した開度まで上がったところでUVリアクタ3の起動命令を出力する。以上の制御により、濾過装置2及びUVリアクタ3による浄化処理が開始される。
【0044】
なお、初期通水モードM2では、バラスト装置100の開閉弁Vfは引き続き開いておき、開閉弁Vc~Veは閉じておく。これにより、バラスト水処理装置1を流通したバラスト水は、バラストタンク101に貯留されることなく、引き続き船外排出口SC2から船外へ排出される。これは、UVリアクタ3のUVランプ(図示せず)が点灯して暖機し、正常に殺滅処理を行えるようになるまでには時間がかかるからである。
【0045】
また、初期通水モードM2及び次に説明する通常通水モードM3において、制御手段4は、流通するバラスト水の流量を流量計FMから取得し、この流量が概ね一定の所定流量となるよう、第2開度調整弁FCV2の開度調整を行うようになっている。ここで、所定流量は、濾過装置2が濾過処理可能な定格流量と、UVリアクタ3が微生物を殺滅処理できる定格流量のうち、小さいほうの定格流量に設定される。ただし、第1開度調整弁FCV1及び第2開度調整弁FCV2の開度については、上記の例に限られず、濾過装置2及びUVリアクタ3の定格流量及びこれら濾過装置2及びUVリアクタ3への負荷を考慮して適宜調整される。
【0046】
<通常通水モードM3>
通常通水モードM3は、初期通水モードM2の後に実行するモードである。通常通水モードM3において、制御手段4は、初期通水モードM2から引き続いて開閉弁V2~V4、第1開度調整弁FCV1及び第2開度調整弁FCV2を開き、開閉弁V1を閉じておき、バラスト水を濾過装置2及びUVリアクタ3に流通させ、これらの浄化手段による浄化処理を実行させる。また、通常通水モードM3では、図5に示すように、バラスト装置100の開閉弁Vfが閉じられ、開閉弁Vc,Vdが開かれる。これにより、浄化手段により浄化されたバラスト水がバラストタンク101に貯留される。
【0047】
ここで、上述した浄化処理において、濾過装置2では、バラスト水が第2ラインL2を通って導入口28から流入してフィルタ21内に入り、フィルタ21を通過し濾過処理される。この際、制御手段4は、フィルタ回転手段22を駆動してフィルタ21を回転させる。これにより、フィルタ21は逆洗浄手段23に対し相対回転することになる。そして、バラスト水は、ケーシング20とフィルタ21の間に形成される空間に入り、流出口29から第3ラインL3へと流出する。
【0048】
なお、
通常通水モードM3における濾過処理中において、制御手段4は、差圧検知手段27により検出される差圧ΔPを常に取得し、差圧ΔPに応じてフィルタ21の汚れ具合を判断している。すなわち、差圧ΔPが小さい場合はフィルタ21が初期状態に近い状態であると判断し、差圧ΔPが大きい場合はフィルタ21への異物の堆積量が多くなっていると判断する。そして、制御手段4は、差圧ΔPが大きくなり洗浄開始閾値P1を超えた場合には、洗浄液噴出手段24の開閉弁24dを開くとともに洗浄液ポンプ24cを駆動することで、フィルタ21に対して洗浄液を噴出させる。これにより、フィルタ21に付着した異物がフィルタ21から剥離し、ノズル23aから効果的に除去される。
【0049】
<異常時モードM4>
異常時モードM4は、濾過装置2、特にそのフィルタ21を保護するためのモードである。異常時モードM4において、制御手段4は、開閉弁V2~V4及び第2開度調整弁FCV2を閉じ、開閉弁V1を開く。これにより、バラスト水は、図3に示すように第1ラインL1(バイパスラインL1)を流通する。なお、異常時モードM4に切り替わった際、バラスト水は、開閉弁Vfを開き、開閉弁Vc~Veを閉じることで、船外排出口SC2から船外へ排出される。異常時モードM4では、バラスト水がフィルタ21を流通しないようにすることで、フィルタ21が保護される。なお、異常時モードM4に切り替わった際には、船員等に対し、ランプ等の表示や音声等により、異常の発生を報知することが好ましい。また、異常時モードM4に切り替わるタイミングで、開閉弁Vfを開き、開閉弁Vc~Veを閉じる制御を自動的に実行することも好適である。これにより、バイパスラインL1を流通したバラスト水が確実に船外排出口SC2から船外へ排出されることになる。
【0050】
<初期通水モードM2、通常通水モードM3及び異常時モードM4の切り替え>
次に、図6のフローチャートを用いて、制御手段4が上記説明した初期通水モードM2、通常通水モードM3及び異常時モードM4を切り替える制御について説明する。なお、バラスト水処理装置1の運転開始直後に実行される起動モードM1から初期通水モードM2への切り替えは、運転開始から所定時間後に行われる。
【0051】
まず、ステップS1において初期通水モードM2が開始されると、制御手段4は、経過時間Tのカウントを開始する。そして、制御手段4は、ステップS2において、差圧検知手段27が検知するフィルタ21の一次圧と二次圧の差圧ΔPが初期差圧閾値P2未満であるか否かを判定する。ここで、初期差圧閾値P2は、後述する通常通水モードM3における通常差圧閾値P3よりも小さい値とされる。
【0052】
そして、制御手段4は、差圧ΔPが初期差圧閾値P2未満であれば次のステップS3に進み、経過時間Tが予め設定した初期通水完了時間T1となったか否かを判定する。経過時間Tが予め設定した初期通水完了時間T1となるまではステップS2に戻って差圧ΔPの判定を繰り返す。そして、経過時間Tが初期通水完了時間T1を経過すると、制御手段4は、初期通水モードM2を終了し、次のステップS4に移行して通常通水モードM3に切り替える。
【0053】
なお、本実施形態において、初期通水完了時間T1は、UVリアクタ3のUVランプ(図示せず)が点灯して暖機し、正常に殺滅処理を行えるようになるまでの時間と一致するよう設定される。また、上述したように、初期通水モードM2において制御手段4は、最小開度であった第1開度調整弁FCV1及び第2開度調整弁FCV2の開度を段階的に上げてゆく制御を行うが、UVランプ(図示せず)は、これらの開度が目標開度となった後に点灯するようになっている。
【0054】
一方、ステップS2において、差圧ΔPが初期差圧閾値P2以上となった場合、制御手段4は、フィルタ21に異常があると判断して、ステップS7に移行して異常時モードM4に切り替える。
【0055】
通常通水モードM3の実行中、制御手段4は、ステップS5において、差圧ΔPが通常差圧閾値P3未満であるか否かを判定する。そして、制御手段4は、差圧ΔPが通常差圧閾値P3未満であれば次のステップS6に進み、浄化処理を終了するかどうかを判定する。船員等から浄化処理を終了する指示があった場合は、浄化処理を終了する。浄化処理を終了する指示がない場合は、ステップS5に戻って差圧ΔPの判定を繰り返す。なお、通常差圧閾値P3は、洗浄液噴出手段24による洗浄を開始する洗浄開始閾値P1より大きい値とされる。
【0056】
一方、ステップS5において、差圧ΔPが通常差圧閾値P3以上となった場合も、制御手段4は、フィルタ21に異常があると判断して、ステップS7に移行して異常時モードM4に切り替える。
【0057】
4.作用効果
(1)濾過装置2(フィルタ21)を有するバラスト水処理装置1においては、装置を起動して濾過装置2への通水を開始した直後の初期通水時には、特に浄化対象のバラスト水が汚れている場合に、差圧ΔPが急激に上昇することで、異常への対応が遅れるおそれがあった。この点、本実施形態に係るバラスト水処理装置1において、制御手段4は、起動モードM1の実行後、通常通水モードM3に移行する前に、初期通水モードM2を実行するようになっている。そして、初期通水モードM2では、フィルタ21の異常と判断して異常時モードM4に切り替えるための差圧ΔPの閾値(初期差圧閾値P2)を、通常通水モードM3における閾値(通常差圧閾値P3)より小さく設定している。これにより、初期通水時におけるフィルタ21の異常を早期に検知し、不具合を回避することが可能となっている。
【0058】
また、初期通水時には、空気と水との二相流の発生やフィルタ21の一部の濾過面への流量の集中等が生じることでフィルタ21に通常の濾過処理時以上の大きな負荷がかかり、フィルタ21に不具合が生じるおそれがあった。このような初期通水時におけるフィルタ21への負荷についても、初期差圧閾値P2を通常差圧閾値P3より小さく設定することで、低減することが可能となっている。
【0059】
(2)本実施形態のバラスト水処理装置1では、初期通水モードM2において、制御手段4は、最小開度であった第1開度調整弁FCV1及び第2開度調整弁FCV2の開度を段階的に上げるようになっている。これにより、浄化ライン(L2,L3,L5)への通水を開始した初期におけるバラスト水流量及び圧力の急激な変動を抑制し、フィルタ21への負荷をさらに低減することが可能となっている。
【0060】
(3)本実施形態のバラスト水処理装置1では、UVリアクタ3の暖機が完了する時間を初期通水完了時間T1とし、当該時間の経過時に初期通水モードM2から通常通水モードM3に切り替えて、異常時モードM4に切り替えるための閾値を初期差圧閾値P2から通常差圧閾値P3に変更するとともに、バラスト水のバラストタンク101への貯留を開始するようになっている。このように、本実施形態では、UVリアクタ3の暖機が完了するタイミング、異常時モードM4に切り替えるための閾値を切り替えるタイミング、バラスト水のバラストタンク101への貯留開始のタイミングを一致させることで、制御手段4による制御の複雑化を避けることが可能となっている。
【0061】
また、本実施形態では、初期通水モードM2において制御手段4がUVリアクタ3の起動命令を出力するタイミングは、最小開度であった第1開度調整弁FCV1及び第2開度調整弁FCV2の開度を段階的に上げ、各開度が予め設定した開度まで上がった後のタイミングとされる。これにより、仮に第1開度調整弁FCV1及び第2開度調整弁FCV2の開度を上げていく途中で異常時モードM4に切り替わった場合でも、UVリアクタ3のUVランプは点灯前であるため、UVランプの冷却が不要となり、すぐに装置を再起動することが可能となっている。
【0062】
(4)本実施形態のバラスト水処理装置1において、制御手段4は、異常時モードM4において、浄化弁(V2,V3,FCV2)を閉じるとともにバイパス弁V1を開くことで、バラスト水がバイパスラインL1を流通するよう制御するようになっている。これにより、バラスト水が濾過装置2に流入してフィルタ21に負荷がかかることを防止し、フィルタ21を保護することが可能となっている。
【0063】
5.変形例
なお、本発明は、以下の形態でも実施することができる。
【0064】
上記実施形態において、初期通水モードM2では、制御手段4は、UVリアクタ3の暖機が十分でないとして、浄化手段(濾過装置2及びUVリアクタ3)を流通したバラスト水はバラストタンク101に貯留せず、船外排出口SC2から船外へ排出するようにしていた。しかしながら、UVリアクタ3の状態によっては、初期通水モードM2において浄化手段を流通したバラスト水もバラストタンク101に貯留するようにしても良い。また、初期通水モードM2の途中で、バラスト水をバラストタンク101に貯留するよう切り替えても良い。
【0065】
上記実施形態では、初期通水モードM2において、制御手段4は、第1開度調整弁FCV1の開度を、初期通水完了時間T1となったタイミングで目標開度となるよう制御していた。しかしながら、第1開度調整弁FCV1の開度は、初期通水完了時間T1を経過した後、通常通水モードM3に切り替わってから目標開度に達するようにしても良い。また、同開度を、初期通水完了時間T1が経過する前に目標開度に達するようにしても良い。さらに、制御手段4は、第1開度調整弁FCV1の開度を段階的に上げる制御を行わず、初期通水モードM2においてすぐに目標開度になるよう制御しても良い。ただし、この場合、第1開度調整弁FCV1を設けること自体も必須ではない。
【0066】
上記実施形態において、差圧検知手段27は、一次側ライン27b及び二次側ライン27cが接続された差圧センサ27aにより差圧ΔPを検知する構成であった。しかしながら、差圧検知手段として、フィルタ21の一次側と二次側にそれぞれ圧力センサを設け、制御手段4が各圧力センサから取得したフィルタ21の一次側の圧力とフィルタ21の二次側の圧力を取得して、差圧ΔPを算出(検知)する構成とすることも可能である。
【0067】
上記実施形態において、通常差圧閾値P3及び初期差圧閾値P2はそれぞれ予め定められた一定の値であった。しかしながら、通常差圧閾値P3及び初期差圧閾値P2は、それぞれ流量等の運転条件に応じて変更することも可能である。例えば、流量が少ない場合は、通常差圧閾値P3及び初期差圧閾値P2をそれぞれ通常の流量時よりも低い値とすることが考えられる。流量が少ない場合の閾値を低く設定することで、バラスト水の水質が悪い場合であってもフィルタ21への負荷を低減し、意図せず閾値を超えてしまうことを抑制することが可能となる。
【0068】
上記実施形態では、初期通水モードM2又は通常通水モードM3から異常時モードM4に切り替わった際に、異常の発生を報知するよう構成されていた。しかしながら、異常発生の報知は、異常時モードM4に切り替わるタイミングではなくても良い。すなわち、異常発生を報知する閾値を別途設け、差圧ΔPが初期差圧閾値P2又は通常差圧閾値P3に達する前に異常の発生を報知するようにすることも好適である。また、異常時モードM4に切り替わる前に、差圧に応じて第2開度調整弁FCV2の開度を制御し、流量を制限する制御を行うことも好適である。流量を低下させることでも、フィルタ21への負荷を低減することが可能である。
【0069】
上記実施形態において、制御手段4は、異常時モードM4において、浄化弁(V2,V3,FCV2)を閉じるとともにバイパス弁V1を開くことでバラスト水がバイパスラインL1を流通するよう制御していた。しかしながら、異常時モードM4においてフィルタ21を保護するための動作はこれに限定されない。例えば、フィルタ21の上流側に設けられた第1開度調整弁FCV1の開度を下げる制御を実行することも可能である。
【0070】
上記実施形態では、浄化ライン(L2,L3,L5)における浄化手段(濾過装置2及びUVリアクタ3)の上流側の位置に第1開度調整弁FCV1が設けられ、下流側の位置に第2開度調整弁FCV2が設けられており、初期通水モードM2において、制御手段4がこれらの開度を段階的に上げていくよう構成されていた。しかしながら、初期通水モードM2において、第1開度調整弁FCV1及び第2開度調整弁FCV2の開度を段階的に上げていく制御は必須ではなく、起動モードM1の段階で予め定めた開度とすることも可能である。さらに、第1開度調整弁FCV1に代えて、開度調整ができない開閉弁を用いることも可能である。つまり、本発明において、第1開度調整弁FCV1及びその開度調整は必須ではない。
【0071】
上記実施形態では、制御手段4は、通常通水モードM3と初期通水モードM2に加え、フィルタ21を保護するための異常時モードM4を実行するよう構成されていた。しかしながら、制御手段4は、異常と判断した場合に、異常時モードM4を実行することなく装置停止する構成とすることや、浄化処理を継続しつつ、音声やランプ等で異常を通知する構成とすることも可能である。
【0072】
上記実施形態では、バラスト水をバラストタンク101に貯留する動作(バラスト動作)において通常通水モードM3の前に初期通水モードM2を実行する制御について説明した。しかしながら、本発明は、バラスト水をバラストタンク101から排出する動作(デバラスト動作)において浄化処理を行う場合に適用することが可能である。つまり、デバラスト動作においてバラスト水を濾過装置2により再度浄化する場合に、当該浄化処理の開始時に初期通水モードM2を実行し、その後通常通水モードM3を実行することで、初期通水時におけるフィルタ21への負荷を低減することが可能である。
【0073】
上記実施形態のバラスト水処理装置1は、浄化手段として濾過装置2に加えてUVリアクタ3を備えていたが、UVリアクタ3は必須構成ではなく、本発明は、濾過装置2(フィルタ21)を備えたバラスト水処理装置1に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 :バラスト水処理装置
2 :濾過装置
3 :UVリアクタ
4 :制御手段
20 :ケーシング
20a :蓋部
20b :底部
21 :フィルタ
21a :上閉止部
21b :下閉止部
22 :フィルタ回転手段
22a :上部回転軸部材
22b :下部回転軸部材
22c :モータ
22d :軸受部材
22e :軸受部材
23 :逆洗浄手段
23a :ノズル
23b :ノズルパイプ
23c :集合管
23d :排出管
24 :洗浄液噴出手段
24a :噴出ノズル
24b :洗浄液ライン
24c :洗浄液ポンプ
24d :開閉弁
25 :圧縮ガス供給手段
25a :圧縮ガス供給口
25b :圧縮ガス供給ライン
25c :開閉弁
26 :排出手段
26a :排出口
26b :排出ライン
26c :排出弁
27 :差圧検知手段
27a :差圧センサ
27b :一次側ライン
27c :二次側ライン
28 :導入口
29 :流出口
100 :バラスト装置
101 :バラストタンク
102 :バラストポンプ
FCV1 :第1開度調整弁
FCV2 :第2開度調整弁
FM :流量計
L1 :第1ライン(バイパスライン)
L2 :第2ライン(浄化ライン)
L3 :第3ライン
L4 :第4ライン(浄化ライン)
L5 :第5ライン(浄化ライン)
La~Le :ライン
M1 :起動モード
M2 :初期通水モード
M3 :通常通水モード
M4 :異常時モード
P1 :洗浄開始閾値
P2 :初期差圧閾値
P3 :通常差圧閾値
SC1 :シーチェスト
SC2 :船外排出口
T :経過時間
T1 :初期通水完了時間
V1 :バイパス弁
V1~V4 :開閉弁
Va~Vf :開閉弁
X1 :上流側接続部
X2 :下流側接続部
ΔP :差圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6