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特開2024-131257スチレン系樹脂組成物及びその成形品、フィルム、シート及び発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131257
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂組成物及びその成形品、フィルム、シート及び発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20240920BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20240920BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L25/04
C08L1/02
C08J5/18 CET
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041414
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 和也
(72)【発明者】
【氏名】蔵田 利春
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA09
4F071AA12X
4F071AA22
4F071AA70
4F071AA71
4F071AA88
4F071AE01
4F071AE17
4F071AF53
4F071BA01
4F071BB05
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC03
4J002AB01X
4J002AH00X
4J002BC03W
4J002BN14W
4J002FD01X
4J002GC00
4J002GG01
4J002GG02
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】色相や耐熱性に優れ、バイオマス原料としておからを含むことで環境負荷の少ない樹脂組成物、および前記樹脂組成物から得られる成形品、フィルム、シート及び発泡体を提供する。
【解決手段】スチレン系樹脂(A)とおから(B)を含む樹脂組成物であり、上記スチレン系樹脂(A)と上記おから(B)の合計を100質量部としたとき、上記スチレン系樹脂(A)25~97質量部と上記おから(B)3~75質量部を含有し、上記おから(B)のメタノール可溶分が7~25質量%であることを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂(A)とおから(B)を含む樹脂組成物であり、前記スチレン系樹脂(A)と前記おから(B)の合計を100質量部としたとき、前記スチレン系樹脂(A)25~97質量部と前記おから(B)3~75質量部を含有し、前記おから(B)のメタノール可溶分が7~25質量%であることを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記スチレン系樹脂(A)が、ゴム含有スチレン系樹脂である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂(A)の、200℃、49Nで測定したメルトマスフローレートが3g/10min以上である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの項に記載のスチレン系樹脂組成物からなる成形品。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかの項に記載のスチレン系樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかの項に記載のスチレン系樹脂組成物からなるシート。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかの項に記載のスチレン系樹脂組成物からなる発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おからと複合化しつつ、色相及び耐熱性に優れた樹脂組成物、ならびに樹脂組成物から得られる成形品、フィルム及び発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な豆乳及び豆腐製造において、豆から豆乳を搾った後に残る残渣である「おから」は、原料豆の約1.5倍量発生する。近年、地球温暖化の問題から二酸化炭素の低減が求められており、二酸化炭素を排出しない「カーボンニュートラル」な材料として、バイオマス由来の材料が注目されているが、生じた「おから」は、その一部は食品として利用されているものの、その多くは産業廃棄物として処理され、バイオマスとしての利用が進んでいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-017426
【特許文献2】特開2007-076160
【特許文献3】特開2003-335886
【特許文献4】特開2000-167857
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、色相や耐熱性に優れ、バイオマス原料としておからを含むことで環境負荷の少ない樹脂組成物、及び前記樹脂組成物から得られる成形品、フィルム、シート及び発泡体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1).スチレン系樹脂(A)とおから(B)を含む樹脂組成物であり、上記スチレン系樹脂(A)と上記おから(B)の合計を100質量部としたとき、上記スチレン系樹脂(A)25~97質量部と上記おから(B)3~75質量部を含有し、上記おから(B)のメタノール可溶分が7~25質量%であることを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
(2).上記スチレン系樹脂(A)が、ゴム含有スチレン系樹脂である、(1)に記載のスチレン系樹脂組成物。
(3).上記スチレン系樹脂(A)の、200℃、49Nで測定したメルトマスフローレートが3g/10min以上である、(1)又は(2)に記載のスチレン系樹脂組成物。
(4).(1)~(3)のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂組成物からなる成形品。
(5).(1)~(3)のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂組成物からなるフィルム。
(6).(1)~(3)のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂組成物からなるシート。
(7).(1)~(3)のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂組成物からなる発泡体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂組成物およびそれからなる成形品、フィルム、シート及び発泡体は、低環境負荷であり、加工性、色相、耐熱性及び剛性に優れるため、食品容器・包装、OA機器、家電部品、雑貨等の用途で有利に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0008】
1.スチレン系樹脂組成物
本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)と、おから(B)を含む。
スチレン系樹脂(A)とおから(B)の合計を100質量部としたとき、スチレン系樹脂(A)の含有量は、25~97質量部であり、70~90質量部であることが好ましい。具体的には、例えば、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、95及び97質量部のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。なお、スチレン系樹脂(A)は、種々のスチレン系樹脂(A)を併用してもよく、種々のスチレン系樹脂(A)を併用する場合には、スチレン系樹脂(A)の使用量は、併用するスチレン系樹脂(A)の合計量を意味する。
【0009】
スチレン系樹脂(A)とおから(B)の合計を100質量部としたとき、おから(B)の含有量は、3~75質量部であり、10~30質量部であることが好ましい。具体的には、例えば、3、5、10、20、30、40、45、50、60、70及び75質量部のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。なお、おから(B)は、種々のおから(B)を併用してもよく、種々のおから(B)を併用する場合には、おから(B)の使用量は、併用するおから(B)の合計量を意味する。
【0010】
おから(B)中のメタノール可溶分は7~25質量%であり、11~19質量%であることが好ましい。メタノール可溶分が7質量%未満であると、スチレン系樹脂組成物の押出安定性及びペレット色相が低下し、メタノール可溶分が25質量%を超えた場合、スチレン系樹脂組成物のビカット軟化点温度が低下する。なお、このメタノール可溶分は7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25質量%のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
【0011】
<スチレン系樹脂(A)>
スチレン系樹脂(A)は、芳香族ビニル化合物系単量体(a1)をラジカル重合して得られるものであり、必要に応じて共役ジエン系ゴム状重合体などのゴム重合体を加えてゴム変性されたゴム含有スチレン系樹脂であってもよい。重合方法としては公知の方法、例えば、塊状重合法、塊状・懸濁二段重合法、溶液重合法等により製造することができる。芳香族ビニル化合物系単量体は、単環又は多環の芳香族ビニル系モノマーであり、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルベンセン(α-メチルスチレン)、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等の単独または2種以上の混合物であり、好ましくは、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレンの単独または2種以上の混合物であり、より好ましくは、スチレンである。また、これらの芳香族ビニル化合物系単量体と共重合可能なアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の単量体も、スチレン系樹脂組成物の性能を損なわない範囲で含有しても良い。さらに本発明ではジビニルベンゼン等の架橋剤をスチレン系単量体に対し添加して重合したものであっても差し支えない。
【0012】
本発明のスチレン系樹脂(A)のゴム変性に用いる共役ジエン系ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンのランダム又はブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン-イソプレンのランダム、ブロック又はグラフト共重合体、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴムなどが挙げられるが、特にポリブタジエン、スチレン-ブタジエンのランダム、ブロック又はグラフト共重合体が好ましい。また、これらは一部水素添加されていてもよく、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
本実施形態にかかるスチレン系樹脂(A)100質量部中のゴム状重合体の含有量は、強度と剛性の観点から1.0~25.0質量部が好ましく、5.0~20.0質量部がさらに好ましい。ゴム状重合体の含有量がこの範囲にあることで、衝撃強度と剛性のバランスが良いため好ましい。なお、ゴム状重合体の含有量は1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0、12.0、13.0、14.0、15.0、16.0、17.0、18.0、19.0、20.0、21.0、22.0、23.0、24.0、25.0質量部のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。なお、ゴム状重合体を併用する場合には、ゴム状重合体の使用量は、併用するゴム状重合体の合計量を意味する。
【0014】
ゴム状重合体の含有量は、例えば、次のようにして測定できる。
試料をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、15質量%のヨウ化カリウム溶液と純水50mlを加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から算出する。
【0015】
スチレン系樹脂(A)中のゴム状重合体の体積平均粒子径は、強度と剛性の観点から2.0~8.0μmが好ましく、特に好ましくは2.3~7.0μmが好ましい。体積中位粒子径がこの範囲にある事で、衝撃強度と剛性のバランスが良いため好ましい。なお、この体積平均粒子径は2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。ゴム状重合体を併用する場合には、ゴム状重合体の体積平均粒子径は、併用するゴム状重合体全体での体積平均粒子径を意味する。
【0016】
ゴム状重合体の体積平均粒子径は、例えば、次のようにして測定できる。
試料をジメチルホルムアミドに溶解させ、レーザー回析方式粒度分布装置(ベックマン・コールター社製レーザー回析方式粒子アナライザー「LS-230型」)にて測定する。
【0017】
スチレン系樹脂(A)の分子量は、流動性と耐熱性の観点から、質量平均分子量(Mw)で1万~50万が好ましく、より好ましくは3万~40万である。具体的には例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってよい。このような範囲とすることで、流動性と耐熱性のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物が得られる。スチレン系樹脂(A)の質量平均分子量は、重合工程の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。
【0018】
本実施形態のスチレン系樹脂(A)のZ平均分子量(Mz)は20万以上であり、好ましくは26万以上である。Mzがこの範囲にある事で、衝撃強度が優れるため好ましい。スチレン系樹脂(A)のMzは、重合工程の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量によって調整することができる。
【0019】
質量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定できる。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
本発明の分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
【0020】
スチレン系樹脂(A)のうち、ゴム変性したスチレン系樹脂(ゴム含有スチレン系樹脂)については、ポリスチレン樹脂のマトリクス相にゴム状分散粒子が分散した形態であり、分子量はマトリクス相の分子量を意味する。そのため分子量測定に用いる試料は50%メチルエチルケトン/50%アセトン混合溶液にスチレン系樹脂(A)を溶解させ、遠心分離機(コクサン社製H-2000B(ローター:H))にてゴム状分散粒子を除去し、メタノールに再沈殿させたポリマー物を使用する。
GPC機種:昭和電工株式会社製 Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 5μm MIXED-C
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
本発明の分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
【0021】
スチレン系樹脂(A)の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知のスチレン重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
【0022】
連続重合の場合、まず重合工程にて公知の完全混合槽型攪拌槽や塔型反応器等を用い、目標の分子量、分子量分布、反応転化率となるよう、重合温度調整等により重合反応が制御される。重合工程を出た重合体を含む重合溶液は、脱揮工程に移送され、未反応の単量体及び重合溶媒が除去される。脱揮工程は加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機などで構成される。脱揮工程を出た溶融状態の重合体は造粒工程へ移送される。造粒工程では、多孔ダイよりストランド状に溶融樹脂を押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工される。
【0023】
スチレン系樹脂(A)の重合時に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ジ(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、N,N'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、N,N'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、N,N'-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。
【0024】
スチレン系樹脂(A)は、200℃、49Nで測定したMFR(メルトマスフローレート)が、3g/10min以上であることが好ましい。MFRの上限は特に制限されないが、例えば、35.0g/10min以下とすることができ、場合によっては32.0g/10min未満とすることができる。MFR(メルトマスフローレート)は、例えば、3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,6.0,7.0,8.0,9.0,10.0,11.0,12.0,13.0,14.0,14.5,16.0,17.0,18.0,19.0,20.0,21.0、22.0,23.0,24.0,25.0,26.0,27.0,28.0,29.0,30.0,31.0,32.0,33.0,34.0,35.0g/10minとでき、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
スチレン系樹脂(A)のMFRはJIS K 7210に基づき測定することができる。
【0025】
<おから(B)>
本実施形態にかかるおから(B)とは、豆から豆乳を搾った後に残る残渣を意味する。本実施形態にかかる豆は、豆の種類は問わないが、例えば、大豆、エンドウ豆、ひよこ豆、いんげん豆、そら豆、ピーナッツを挙げることができる。おから(B)は、必要に応じて、加油処理、脱脂処理及び乾燥処理を施してもよい。おから(B)の水分量は、加工性や成形品外観の観点から0から20%であり、0.5%から18%であることが好ましい。おから(B)の水分量がこの範囲にあることで、加熱時に発泡や製品の外観不良を抑えられるため好ましい。具体的には、例えば、0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、2.6、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20%のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
【0026】
おから(B)の粒子径(メディアン径)は、500μm以下のものが好ましく、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下である。おから(B)の粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いた粒子径解析-レーザ回折・散乱法(ISO13320、ISO9276、JISZ8825:2013)により測定することができる。おから(B)の粒子径がこの範囲にあることで、樹脂への分散性が良好となるため好ましい。おから(B)の粒子径は、原材料の違いや化学的または物理的な変性、及び化学分解変性、酵素変性、物理的変性の条件によって制御することができる。
【0027】
<他の成分>
本発明の目的を損なわない範囲で他の添加剤、例えば可塑剤、展着剤、溶剤、紫外線吸収剤、光安定剤、安定剤、帯電防止剤、着色剤、染顔料、有機系充填剤、着色防止剤、補強剤、相溶化剤、結晶化促進剤、難燃剤、難燃助剤、等を添加することができる。ある実施形態において、本発明に係るスチレン系樹脂組成物は、おから以外の天然由来の材料をバイオマスとして含んでも良い。
【0028】
本実施形態におけるバイオマスとは、再生可能な、生物由来の有機性および無機性の資源で化石資源を除いたものを意味する。バイオマスは、有機系バイオマス及び/又は無機系バイオマスを含む。有機系バイオマスは、植物由来の固形成分及び/又は藻類由来の固形成分を主体とするバイオマスである。無機系バイオマスは、生体における無機物質(炭酸カルシウムなど)の集合体を由来の固形成分を主体とするバイオマスである。「固形成分を主体とするバイオマス」とは、水分含有量が30、25、20、15、10、5又は1質量%以下のバイオマスである。本実施形態における有機系バイオマスは、特段限定されるものではないが、例えば、木粉、竹粉、紙粉、炭類、籾柄、お茶柄、古米粉、米ぬか、ふすま、酒・焼酎・ビール・ワイン・醤油の絞り滓、澱粉、蒟蒻副産物、果樹類の皮若しくは実の絞り滓、稲・麦・蕎麦を含む草類、海草若しくは藻類、綿繊維、パーム繊維、あるいはそれらの混合物等を好適に用いることができる。また、植物由来のセルロースやヘミセルロース、リグニン等もバイオマスとして用いることができる。分散性の観点から、竹粉、木粉が好ましい。本実施形態における無機系バイオマスは、特段限定されるものではないが、例えば、骨、卵殻、貝殻を好適に用いることができる。
【0029】
ある実施形態において、おから以外のバイオマスは、スチレン系樹脂組成物に対して25、20、15、10、5又は1質量%以下含まれている。別の実施形態において、本発明に係るスチレン系樹脂組成物は、おから以外のバイオマスを含まない。
【0030】
これらの添加方法は、特に限定されず、公知の方法で添加すれば良い。スチレン系樹脂(A)またはおから(B)の製造時の原料の仕込工程、重合工程、仕上工程で添加する方法や、押出機や成形機を用いて樹脂組成物を混合する工程で添加する方法を適用することができる。
【0031】
本発明に係る樹脂組成物は、一実施形態において、無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーとしては、例えば、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、アスベスト、クレー、シリカ粉、微粉ケイ酸、珪藻土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白、亜鉛華、鉛白、塩基性硫酸鉛、リトボン、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、ミネラルブラック、アニリンブラック、シアニンブラックBX、黄鉛、亜黄鉛、クロム酸バリウム、カドミウムエロー、黄色酸化鉄、黄土、チタン黄、鉛シアナミド、鉛酸カルシウム、赤口黄鉛、クロムバーミリオン、酸化鉄、アンバー、べんがら、鉛丹、銀朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、コバルト紫、マンガン紫、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、呉須、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ビリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン、硫化亜鉛、珪酸亜鉛、硫化亜鉛カドミウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウム、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、鉛粉、亜鉛末が挙げられる。無機フィラーの含有量は、樹脂組成物100質量部に対し1質量部未満であることが好ましく、0.5質量部未満であることがさらに好ましい。
【0032】
<メタノール可溶分>
おから(B)中のメタノール可溶分とは、おから中のメタノールに可溶な成分を指す。メタノール可溶分はおから1.00gを精秤し(P)、メチルエチルケトン40ミリリットルを加えて溶解し、メタノール400ミリリットルを急激に加えて、メタノール不溶分(樹脂成分)を析出、沈殿させる。約10分間静置した後、ガラスフィルターで徐々にろ過してメタノール可溶分を分離し、真空乾燥機にて125℃で2時間減圧乾燥した後、デシケータ内で25分間放冷し、乾燥したメタノール不溶分の質量Nを測定して、次のように求めることができる。
メタノール可溶分(質量%)=(P-N)/P×100
【0033】
おから(B)中の水分量は、おから25.00gを精秤し(Q)、110℃の乾燥機で2時間加熱した後、デシケータ内で30分放冷し、乾燥したおからの質量Mを測定して、次のように求めることが出来る。
水分量(質量%)=(Q-M)/Q×100
【0034】
<非石油由来の成分>
非石油由来の成分は、樹脂組成物中に含まれるおからである。非石油由来の成分は、次のように求めることができる。
非石油由来の成分(%)=Xo(質量%)/(Xs(質量%)+Xo(質量%))×100
スチレン系樹脂(A)の質量分率Xs
おから(B)の質量分率Xo
【0035】
樹脂組成物中におから及びおから以外のバイオマスが含まれる場合、非石油由来の成分は、次のように求めることができる。
非石油由来の成分(%)=(Xo(質量%)+Xb(質量%))/(Xs(質量%)+Xo(質量%)+Xb(質量%))×100
スチレン系樹脂(A)の質量分率Xs
おから(B)の質量分率Xo
おから以外のバイオマスの質量分率Xb
【0036】
非石油由来の成分は、1~60%であることが好ましく、10~51%であることが好ましい。非石油来の成分がこの範囲にある事で、環境負荷低減効果と加工安定性のバランスに優れるため好ましい。具体的には、例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55及び60%のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
【0037】
<製造方法>
次に本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0038】
本発明の樹脂組成物の混合方法は、特に限定されず、公知の混合技術を適用することが出来る。例えば、ミキサー型混合機、V型ブレンダー、及びタンブラー型混合機等の混合装置を用いて、各種原料を予め混合しておき、その混合物を溶融混練することによって、均一な樹脂組成物を製造することが出来る。溶融混練装置も、特に限定されないが、例えばバンバリー型ミキサー、ニーダー、ロール、単軸押出機、特殊単軸押出機、及び二軸押出機等が挙げられる。更に、押出機等の溶融混練装置の途中から他の添加剤を別途添加する方法もある。
【0039】
本発明の樹脂組成物から成形品、フィルム、シート及び発泡体を得る成形法には特に制限は無くカレンダ成形、中空成形、押出発泡成形、異形押出成形、ラミネート成形、インフレーション成形、Tダイフィルム成形、シート成形、真空成形、圧空成形などの押出成形法や、射出成形、RIM成形、射出発泡成形などの射出成形法といった公知の成形法を好適に用いることが出来る。
【実施例0040】
以下に本発明を実施例及び比較例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
【0042】
〔スチレン系樹脂(A)〕
(A-1)HIPS(ポリブタジエンゴムで変性したポリスチレン樹脂、分子量(Mw)15万、樹脂100質量%中のゴム状重合体の含有量8質量%、体積平均粒子径2.5μm、MFR11g/10min)
(A-2)HIPS(ポリブタジエンゴムで変性したポリスチレン樹脂、分子量(Mw)17万、樹脂100質量%中のゴム状重合体の含有量10質量%、体積平均粒子径2.9μm、MFR5g/10min)
(A-3)HIPS(ポリブタジエンゴムで変性したポリスチレン樹脂、分子量(Mw)23万、樹脂100質量%中のゴム状重合体の含有量6質量%、体積平均粒子径2.7μm、MFR3g/10min)
(A-4)GPPS(ポリスチレン樹脂、分子量(Mw)17万、MFR31g/10min)
【0043】
〔おから(B)〕
(B-1)金のおから(水分量11%)(50's社製)
(B-2)乾燥おから(水分量4%)(相模屋食料社製)
(B-3)脱脂おから(水分量2.6%)
(B-4)加脂おから(水分量4%)
【0044】
(B-3)脱脂おからは、(B-2)乾燥おからを脱脂処理して製造した。(B-4)加脂おからは、(B-2)乾燥おからに大豆油を添加して製造した。
【0045】
(B-3)脱脂おからは、以下の方法で製造した。ステンレスビーカーとメカニカルスターラーを用いて、(B-2)乾燥おから1kgとヘキサン5kgを混合し、ろ過によりろ物を得た。さらに上記の方法で、ろ物とメタノール5kgを用いて混合し、ろ過によりろ物を得て、ろ物を真空乾燥機にて80℃で12時間の条件で乾燥することで、(B-3)脱脂おからを得た。
【0046】
(B-4)加脂おからは、以下の方法で製造した。(B-2)乾燥おから5kgと大豆油(富士フィルム和光純薬社製 和光一級)650gを、ヘンシェルミキサー(三井三池化工社製、FM20B)で混合し、(B-4)加脂おからを製造した。
【0047】
(実施例1~7、比較例1~4)
各成分を表1及び2に示す配合量で、ヘンシェルミキサー(三井三池化工社製、FM20B)にて予備混合し、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)に供給して、シリンダー温度180℃、供給量25kg/hの条件にてストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。得られたペレットを射出成形して、各種特性の評価を行った結果を表1及び2に示す。
【0048】
〔MFRの測定〕
スチレン系樹脂(A)のMFR(メルトマスフローレイト)は、200℃、49N荷重の条件で、JIS K 7210に基づき測定した。
【0049】
〔メタノール可溶分〕
メタノール可溶分はおから(B)1.00gを精秤し(P)、メチルエチルケトン40ミリリットルを加えて溶解し、メタノール400ミリリットルを急激に加えて、メタノール不溶分(樹脂成分)を析出、沈殿させた。約10分間静置した後、ガラスフィルターで徐々にろ過してメタノール可溶分を分離し、真空乾燥機にて125℃で2時間減圧乾燥した後、デシケータ内で25分間放冷し、乾燥したメタノール不溶分の質量Nを測定して、次のように求めた。
メタノール可溶分(質量%)=(P-N)/P×100
【0050】
〔非石油由来の成分〕
非石油由来の成分は、以下の計算式を使用して算出した。
非石油由来の成分 = Xo(質量%)/(Xs(質量%)+Xo(質量%))×100
スチレン系樹脂(A)の質量分率Xs
おから(B)の質量分率Xo
【0051】
〔押出安定性〕
押出安定性は、以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:ストランド化し、継続的にペレタイズ出来る
〇:ストランド化し、断続的にペレタイズ出来る
×:ストランド化できない
【0052】
〔ペレット色相〕
ペレット色相は、二軸押出によって得られたストランドを、ペレタイザーにてペレット化し、その外観を目視にて、以下の基準で評価した。なお、以下に示すヤケとは、おからの焦げを示し、ヤケが発生した場合はペレット外観が黒色となる。
◎:ヤケは無く、色相は良好である
〇:ヤケは無いが、色相に変色がある
×:ヤケが発生している
【0053】
〔ビカット軟化温度の測定〕
ビカット軟化温度の測定は JIS K 7206に準拠し、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nで求めた。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1の実施例より本発明の樹脂組成物は、押出安定性及びペレット色相に優れ、またビカット軟化温度が高い事がわかった。一方、表2の比較例より本発明の規定を満足しない樹脂組成物は押出安定性及びペレット色相が劣り、ビカット軟化温度が低い事がわかった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明にかかるスチレン系樹脂とおからとを含有するスチレン系樹脂組成物は、環境負荷が少なく、色相に優れ、また耐熱性に優れている。本発明にかかるスチレン系樹脂組成物は、成形品やフィルム、シート、発泡体として好適に用いることができ、産業上の利用可能性を有する。