(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131259
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/14 20060101AFI20240920BHJP
E06B 1/04 20060101ALI20240920BHJP
E06B 9/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E06B7/14
E06B1/04 Z
E06B9/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041416
(22)【出願日】2023-03-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行日 令和5年2月6日 刊行物名 エピソードII 業務用カタログ ウェブサイトの掲載日 令和5年2月6日 ウェブサイトのアドレス https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/CatalogDetail.do?method=initial_screen&volumeID=YKKAPDC1&parentCategoryID=4146490000&categoryID=4147090000&catalogID=11174550000&type=c&position=3&sortKey=CatalogMain2210000&sortOrder=ASC&designID=pro
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 輝久
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 純
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 岳宏
(72)【発明者】
【氏名】外村 幸大
【テーマコード(参考)】
2E020
2E036
【Fターム(参考)】
2E020HA01
2E020HA02
2E020HA03
2E020HB03
2E020JA01
2E036RA08
2E036RB01
2E036RC02
2E036TA01
2E036TB01
(57)【要約】
【課題】排水効率の低下を抑制することができる建具を提供する。
【解決手段】建具は、上枠と下枠の間で障子をスライド可能に支持する建具であって、前記下枠は、枠内側見込み面から起立し、前記障子が走行するレールと、前記枠内側見込み面の下に設けられた中空部と、前記中空部よりも室外側に設けられた溝部と、前記溝部の室外側で起立する立ち上がり片と、前記枠内側見込み面と前記中空部とを連通する連通孔と、前記中空部の室外側見付け面を形成する壁部に設けられ、前記連通孔を通して前記中空部に流入した水を前記溝部側へと排出可能な排水孔と、を備え、前記排水孔には、排水弁が装着され、前記排水弁は、前記立ち上がり片の上端よりも高い位置にある。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠と下枠の間で障子をスライド可能に支持する建具であって、
前記下枠は、
枠内側見込み面から起立し、前記障子が走行するレールと、
前記枠内側見込み面の下に設けられた中空部と、
前記中空部よりも室外側に設けられた溝部と、
前記溝部の室外側で起立する立ち上がり片と、
前記枠内側見込み面と前記中空部とを連通する連通孔と、
前記中空部の室外側見付け面を形成する壁部に設けられ、前記連通孔を通して前記中空部に流入した水を前記溝部側へと排出可能な排水孔と、
を備え、
前記排水孔には、排水弁が装着され、
前記排水弁は、前記立ち上がり片の上端よりも高い位置にある
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
さらに、前記障子の室外側で前記上枠と前記下枠との間をスライド可能な雨戸を備え、
前記溝部は、前記雨戸が走行可能である
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建具であって、
前記中空部は、仕切り壁によって上下に分割された上段の中空部と、下段の中空部とを含み、
前記排水孔は、前記上段の中空部の室外側見付け面を形成する壁部に設けられ、前記上段の中空部内を仕切り壁に沿って流れる水を排出可能である
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項3に記載の建具であって、
前記仕切り壁は、前記立ち上がり片の上端よりも高い位置にある
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下枠を備える建具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の窓に用いる建具には、上枠と下枠との間で障子をスライド可能に支持した引違い窓や片引き窓等の建具がある。例えば特許文献1には、引違い窓の建具において、下枠に設けた中空部の室外側見付け面に排水孔を形成し、ここに排水弁を装着した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような建具の下枠は、障子のレールよりも室外側に、雨戸が走行し、或いは面格子等を保持するための溝部を設ける場合がある。下枠にこのような溝部を設けた場合、大雨時等に溝部からの排水が間に合わず、溝部に雨水が溜まることが想定される。上記特許文献1のような構成の下枠は、このような溝部を設けた場合、溝部に溜まった水によって排水弁が詰まり、その結果、排水孔からの排水が阻害されて効率的な排水ができなくなる恐れがあることが分かってきた。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、排水効率の低下を抑制することができる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る建具は、上枠と下枠の間で障子をスライド可能に支持する建具であって、前記下枠は、枠内側見込み面から起立し、前記障子が走行するレールと、前記枠内側見込み面の下に設けられた中空部と、前記中空部よりも室外側に設けられた溝部と、前記溝部の室外側で起立する立ち上がり片と、前記枠内側見込み面と前記中空部とを連通する連通孔と、前記中空部の室外側見付け面を形成する壁部に設けられ、前記連通孔を通して前記中空部に流入した水を前記溝部側へと排出可能な排水孔と、を備え、前記排水孔には、排水弁が装着され、前記排水弁は、前記立ち上がり片の上端よりも高い位置にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、排水効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る建具について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る建具10は、建物躯体の開口部に固定される開口枠12の内側で外障子14、内障子15、網戸16、及び雨戸17をスライド可能に支持したものである。本実施形態では、障子14,15を左右にスライドさせることにより開口枠12の内側に形成した開口部を開閉可能な引違い窓の室外側に雨戸17を設けた構成を例示する。障子14,15は、一方が開口枠12にはめ殺され、他方のみがスライドする片引き窓であってもよい。障子の設置枚数は3枚以上であってもよい。
【0011】
先ず、建具10の全体構成を説明する。
【0012】
開口枠12は、上枠12a、下枠12b、及び縦枠12c,12dを四周枠組みすることで矩形の開口部を形成したものである。各枠12a~12dは、それぞれアルミニウム合金等の金属材料の押出形材である。各枠12a~12dの枠内側見込み面の室内側端部には、それぞれ塩化ビニル樹脂(PVC)等で形成された樹脂製のアタッチメント部材18が装着されている。
【0013】
本出願において、見込み方向とは建具10の室内外方向、つまり室内側から室外側に向かう方向又はその逆方向(図中に矢印Zで示す方向)をいい、見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な縦枠12c等の場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な上枠12a等の場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Yで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。枠内側とは、枠状部材である開口枠12等の内側部分をいう。枠外側とは、枠状部材である開口枠12等の外側部分をいう。枠内方向とは、枠状部材の枠外側から枠内側に向かう方向をいう。枠外方向とは、枠状部材の枠内側から枠外側に向かう方向をいう。
【0014】
図1に示すように、上枠12aは、枠内側見込み面13aから下向きに突出する外レール20、内レール21及び網戸レール22と、室外側端部で下向きに開口する開口溝24とを有する。上枠12aは、取付片19a,19bがねじ26を用いて建物躯体に固定される。アタッチメント部材18は、上枠12aに係合されると共に、一部がねじ26を用いて取付片19bと共締めされ、室内側端部がねじ26を用いて建物躯体に固定される。
【0015】
外レール20は、外障子14をスライド可能に案内するガイドレールである。内レール21は、外レール20の室内側に並設され、内障子15をスライド可能に案内するガイドレールである。内レール21の室内側見付け面は、アタッチメント部材18で覆われている。網戸レール22は、外レール20の室外側に並設され、網戸16をスライド可能に案内するガイドレールである。
【0016】
開口溝24は、網戸レール22より室外側に設けられている。開口溝24は、雨戸17の上端部17aがスライド可能に挿入される。上枠12aは、各レール20~22が形成された枠内側見込み面13aの裏側に中空部27を有する。開口溝24は、中空部27の高さ分だけ枠内側見込み面13aから上方にオフセットした位置にある。開口溝24の内側には外れ止め部品28が設けられているが、詳細は後述する。
【0017】
下枠12bは、枠内側見込み面13bから上向きに起立する外レール30、内レール31及び網戸レール32と、室外側端部で上向きに開口する溝部34とを有する。下枠12bは、取付片23がねじ26を用いて建物躯体に固定される。アタッチメント部材18は、下枠12bに係合されると共に、室内側端部がねじ26を用いて建物躯体に固定される。
【0018】
外レール30は、外障子14をスライド可能に案内するガイドレールである。内レール31は、外レール30の室内側に並設され、内障子15をスライド可能に案内するガイドレールである。網戸レール32は、外レール30の室外側に並設され、網戸16をスライド可能に案内するガイドレールである。
【0019】
溝部34は、網戸レール32より室外側に設けられている。溝部34は、雨戸17の下端部17bがスライド可能に挿入される。下枠12bは、レール30,31が形成された枠内側見込み面13bの裏側に、仕切り壁35で仕切られた上下2段の中空部36,37を有する。溝部34は、中空部36,37の高さ分だけ枠内側見込み面13bから下方にオフセットした位置にある。
【0020】
図1中の参照符号33は、レール30,31間の段差を埋める樹脂製のカバー部材である。
図2中の参照符号39は、枠内側見込み面13bに設置され、障子14,15の召合せ框47d,50d間の下部で室内外を仕切る風止め板である。
【0021】
図2に示すように、縦枠12cは、全閉位置にある外障子14の戸先側に配置される。縦枠12cは、枠内側見込み面13cから枠内方向に突出するヒレ部40,41を有する。縦枠12cは、取付片25a,25bがねじ26を用いて建物躯体に固定される。アタッチメント部材18は、縦枠12cに係合されると共に、一部がねじ26を用いて取付片25bと共締めされ、室内側端部がねじ26を用いて建物躯体に固定される。ヒレ部40は、全閉位置にある外障子14の戸先框47cを保持するガイド片である。ヒレ部41は、外障子14側の領域で全閉位置とされた網戸16の縦框55cを保持するガイド片である。縦枠12cの室外側には開口枠12の枠内への雨戸17の出入口42が設けられている。
【0022】
縦枠12dは、全閉位置にある内障子15の戸先側に配置される。縦枠12dは、枠内側見込み面13dから枠内方向に突出するヒレ部44,45を有する。縦枠12dは、取付片29a,29bがねじ26を用いて建物躯体に固定される。アタッチメント部材18は、縦枠12dに係合されると共に、一部がねじ26を用いて取付片29bと共締めされ、室内側端部がねじ26を用いて建物躯体に固定される。ヒレ部44は、全閉位置にある内障子15の戸先框50cを保持するガイド片である。ヒレ部45は、内障子15側の領域で全閉位置とされた網戸16の縦框55dを保持するガイド片である。縦枠12dには、開口溝24及び溝部34の出入口42とは反対側の端部を閉塞し、雨戸17の全閉時の停止位置になる戸当たり材43が連結されている。雨戸17の戸袋は縦枠12d側に設置してもよく、この場合、出入口42は縦枠12dに設け、縦枠12cに戸当たり材43を設ければよい。
【0023】
図1及び
図2に示すように、外障子14は、面材46と、面材46の四周を囲む上框47a、下框47b、戸先框47c及び召合せ框47dとを備える。
【0024】
面材46は、例えば相互間にスペーサを挟んで一対の板ガラスを対面させた2層の複層ガラスである。面材46は、1層でもよいし、3層以上の構造でもよい。各框47a~47dはそれぞれ、例えばアルミニウム合金等の金属材料の押出形材で形成された金属框材の室内側に塩化ビニル樹脂(PVC)等で形成された樹脂形材の押縁を装着した構成である。各框47a~47dは枠内側を向いて開口する障子保持溝で面材46の外周縁部を保持している。
図2では、戸先框47c及び召合せ框47dの詳細な図示を省略しているが、これら框47c,47dは
図1に示す上框47aと略同様な断面構造とすることができる。
【0025】
上框47aの枠外側見込み面に設けられた溝には、上枠12aの外レール20がスライド可能に挿入される。下框47bの枠外側見込み面に設けられた溝には、下枠12bの外レール30を転動する戸車48が設置されている。これにより外障子14は、上枠12aと下枠12bとでスライド可能に支持される。
【0026】
内障子15は、面材49と、面材49の四周を囲む上框50a、下框50b、戸先框50c及び召合せ框50dとを備える。
【0027】
面材49は、上記した面材46と同様な構成でよいため、詳細な説明は省略する。框50a~50dもそれぞれ上記した框47a~47dと同様な構成でよいため、詳細な説明は省略する。上框50aの枠外側見込み面に設けられた溝には、上枠12aの内レール21がスライド可能に挿入される。下框50bの枠外側見込み面に設けられた溝には、下枠12bの内レール31を転動する戸車51が設置されている。これにより内障子15は、上枠12aと下枠12bとでスライド可能に支持される。
【0028】
網戸16は、網54の四周縁部を上框55a、下框55b及び左右一対の縦框55c,55dで保持したものである。
【0029】
網54は、樹脂や金属等の線材で形成されたシート状のメッシュである。各框55a~55dはそれぞれ、例えばアルミニウム合金等の金属材料の押出形材で形成されている。上框55aの枠外側見込み面に設けられた溝には、上枠12aの網戸レール22がスライド可能に挿入される。下框55bの枠外側見込み面に設けられた溝には、下枠12bの網戸レール32を転動する戸車56が設置されている。これにより網戸16は、上枠12aと下枠12bとでスライド可能に支持される。
図2では、縦框55c,55dの詳細な図示を省略しているが、これら縦框55c,55dは
図1に示す上框55aと略同様な断面構造とすることができる。網戸16は省略されてもよく、この場合は網戸レール22,32及びヒレ部41,45も省略するとよい。
【0030】
雨戸17は、例えば左右に延在し、上下に複数枚並べられた帯板状の戸板を框体で保持した構成である。雨戸17は、非使用時は縦枠12cの枠外側に設置される戸袋に収容される。雨戸17は、使用時には戸袋から引き出し、出入口42を通して上枠12aの開口溝24と下枠12bの溝部34との間にスライドさせることで、障子14,15及び網戸16を閉塞することができる。上記したように、雨戸17の戸袋は縦枠12d側に設置してもよい。下枠12bの溝部34には、雨戸17が走行する雨戸レール58が立設されている。雨戸レール58は省略されてもよい。
【0031】
次に、下枠12bの排水構造を説明する。
【0032】
図3~
図5に示すように、下枠12bは、枠内側見込み面13bとその下の中空部36とを連通する連通孔60と、中空部36内に流入した雨水等を室外側に排出する排水孔62とを備える。
【0033】
連通孔60は、外レール30と内レール31の間で枠内側見込み面13bを形成する壁部に形成された貫通孔である。連通孔60は、例えば下枠12bの長手方向に沿って複数並列されている(
図3参照)。連通孔60は、全閉位置にある外障子14の室内側に面する位置、つまり枠内側見込み面13bの縦枠12c側に設けられている(
図2~
図4参照)。これにより建具10では、障子14,15の室外側表面からレール30,31間に流れ落ちた雨水等が連通孔60を通して中空部36へと円滑に排水される。なお、連通孔60は、通常はカバー部材33で隠されているため、建具10の外観には露出しない。連通孔60の配置や設置数は上記に限定されないことは勿論である。
【0034】
排水孔62は、中空部36の室外側見付け面36aを形成する壁部36bに設けられている。排水孔62は、例えば矩形状の貫通孔であり、中空部36と室外とを連通する。排水孔62は、例えば下枠12bの長手方向で左右両端付近にそれぞれ設けられている。これにより排水孔62は、連通孔60を通して中空部36に流入した雨水等を室外側(溝部34側)へと円滑に排出することができる。
【0035】
排水孔62には排水弁64が装着されている。排水弁64は、排水孔62の内周縁部に対して室外側から装着される枠状のハウジング64aと、ハウジング64aの枠内開口を開閉可能な弁体64bとを有する。弁体64bは、例えば矩形状のプレートであり、上端部がハウジング64aに軸支され、下端部が室外側に移動可能な外開きの逆止弁である。これにより排水弁64は、中空部36内の雨水等を室外側へと排出可能であり、一方、室外から中空部36内への水や風の流入は防止できる。
【0036】
下枠12bは、さらに、網戸レール32に設けられた網戸側排水孔66を有する。網戸側排水孔66は、網戸レール32に形成された貫通孔である。網戸側排水孔66は、例えば網戸レール32の長手方向で左右両端付近にそれぞれ設けられている。網戸側排水孔66は、網戸レール32と外レール30との間に流入した雨水等を室外側(溝部34側)へと排水するものである。
【0037】
図3及び
図5に示すように、雨戸17が走行する溝部34は、上段の中空部36の壁部36bよりも室外側であって、排水孔62及び排水弁64よりも下に設けられている。溝部34は、見込み方向の略中央に雨戸レール58が立設された底壁34aと、底壁34aの室外側で起立した立ち上がり片34bと、底壁34aの室内側で起立した壁部34cとで構成されている。
【0038】
底壁34aには、溝部34に流入した雨水等を排出するための底面排水孔68が貫通形成されている。底面排水孔68は、例えば3~6個を1組として、溝部34の長手方向で左右両端付近及び中央付近にそれぞれ設けられている(
図2及び
図3参照)。溝部34は、底面排水孔68への円滑な排水を実現するため、例えば雨戸レール58の左右両端部に切欠部58aを有し、雨水等が円滑に流通するように構成されている。
【0039】
従って、このような下枠12bでは、枠内側見込み面13bに流れ落ちた雨水等は、連通孔60から中空部36へと流入し、仕切り壁35の上面を流れつつ排水孔62及び排水弁64から室外側へと排出される(
図5中に1点鎖線で示す矢印W参照)。そして、排水弁64からの排水は、溝部34の底面排水孔68を通して外部に排出される(
図5中に1点鎖線で示す矢印W1参照)。
【0040】
一方、例えば建具10が大雨等の多量の降水を受けた場合には、底面排水孔68からの排水が間に合わず、溝部34内に一杯まで水が溜まる可能性もある。このような場合、溝部34に溜まった水は、室外側の立ち上がり片34bの上端34dを越えて溢れ(
図5中に1点鎖線で示す矢印W2参照)、これにより室外へと排出される。
【0041】
ところで、仮に排水孔62及び排水弁64が溝部34の室内側の壁部34cに設けられた構成において、溝部34が満水となるような状況を考えてみる。なお、この場合は、中空部36,37が仕切り壁35で仕切られないか、又は仕切られても中空部36,37間を連通する孔部を形成しておくことが想定される。この状況では、溝部34に溜まった水の水圧で弁体64bが詰まり、排水孔62からの排水が阻害され、下枠12bの排水効率が低下する懸念がある。
【0042】
この点、本実施形態の建具10では、排水孔62及び排水弁64は、溝部34の室外側壁部を構成する立ち上がり片34bの上端34dよりも高い位置にある(
図5参照)。より具体的には、少なくとも排水弁64の弁体64bの下端が立ち上がり片34bの上端34dよりも高い位置にある。このため、当該建具10は、仮に大雨時等に溝部34が満水になった場合でも、この水は立ち上がり片34bを越えて室外に溢れ、排水弁64までは届かない。その結果、建具10は、弁体64bが詰まることがなく、下枠12bでの排水効率の低下が抑制される。
【0043】
特に、本実施形態の下枠12bは、連通孔60の下の中空部を仕切り壁35で上下に仕切ると共に、上段の中空部36の室外側見付け面36aを形成する壁部36bに排水孔62及び排水弁64を設けている。このため、建具10は、排水孔62を下枠12bの最下部ではなく、中ほどの高さ位置に設けた構成でありながらも、連通孔60から排水孔62へと仕切り壁35を利用した円滑な排水経路が構築でき、排水効率が一層向上する。言い換えれば、仕切り壁35は、立ち上がり片34bの上端34dよりも高い位置にあることが好ましい。そうすると、溝部34内に溜まる水よりも、中空部36に溜まる水が常に高位置となり、効率的な排水が可能となるためである。
【0044】
下枠12bの中空部は、必ずしも上下2段である必要はなく、上下に3段以上分割されてもよい。この場合も立ち上がり片34bより上部にある中空部の壁部に排水孔62及び排水弁64を設ければよい。なお、最下段の中空部37は、中空構造ではなく、下向きに開口した溝形状であってもよい。
【0045】
このような下枠12bの排水構造は、雨戸17を持たない建具に対しても適用できる。この場合、溝部34は、例えば面格子等の設置用に設けられている場合が想定され、このような構成でも下枠12bの排水効率の低下を抑制できる。但し、溝部34は、特に雨戸17の走行用であると、例えば台風等による大雨が多い地域等で、雨戸17の需要の高い地域等で用いる建具に対して高い排水性能を付与できるため、一層効果的である。
【0046】
次に、上枠12aに設けられる外れ止め部品28及びその周辺部の構成を説明する。
【0047】
図6及び
図7に示すように、上枠12aは、雨戸17が走行する開口溝24に外れ止め部品28が設けられている。本実施形態の建具10において、雨戸17は、開口溝24と下枠12bの溝部34との間に室外側からケンドン式で設置される。具体的には、雨戸17は、斜め姿勢で上端部17aを開口溝24の奥まで挿入した後、下端部17bを溝部34に落とし込んで設置される。このため、雨戸17の上端部17aと開口溝24の底面(天面)24aとの間には、ケンドン時に必要な広い隙間Gが形成されている(
図7参照)。外れ止め部品28は、この隙間Gを埋め、雨戸17が開口溝24から外れることを防ぐための部品である。
【0048】
外れ止め部品28は、例えば1枚の雨戸17について1個設置される、X方向に短尺なピースの部品である。外れ止め部品28は、雨戸17の設置前はケンドンの邪魔にならない位置で開口溝24に仮固定されている。外れ止め部品28は、雨戸17のケンドン後に所定位置、例えば隣接する雨戸17同士の突合せ部の上部に移動させ、ここに固定される。
【0049】
外れ止め部品28は、開口溝24の底面24aに対向配置されるベース板28aと、ベース板28aのZ方向両端から屈曲されて下方に突出する突当片28b,28cとを有し、X方向からの正面視で略逆U字状に形成された金属部品である。
【0050】
ベース板28aのX方向両縁部には、屈曲されて下方に突出する錠受板28dがそれぞれ設けられている。錠受板28dは、突当片28b,28cよりも短尺な板片である。錠受板28dは、雨戸17の上端部17aから上方に出没可能に設置される錠部材70を受け止めるものである。雨戸17は、全閉位置で錠部材70を上方に突き出したロック位置とすることで、錠部材70が錠受板28dに係止され、これにより開動作不能にロックすることができる。つまり外れ止め部品28は、雨戸17の外れ止め機能に加えて、錠受部品としての機能も有する。なお、雨戸17は、下端部17bにも錠部材70と同様な錠部材が出没可能に設けられ、この錠部材は溝部34に設けられた金属製の錠受部品71に係脱可能である(
図3参照)。
【0051】
ここで、外れ止め部品28の上枠12aに対する固定構造について説明する。
【0052】
ベース板28aの中央部には、内周面に雌ねじが形成されたねじ孔28eが貫通形成されている。ねじ孔28eには、ねじ72がベース板28aの下面側から上向きに螺合される。また、各突当片28b,28cは、開口溝24の室内外の両壁部の下部から内側に突出した凸部24b,24cの上面に当接配置される。なお、凸部24b,24cは、例えば雨戸17の室内外表面にそれぞれ摺接するタイト材或いはモヘア等の気密材74が装着されるポケット部である。
【0053】
外れ止め部品28は、ねじ孔28eに締め付けられたねじ72の先端が開口溝24の底面24aに突き当てられることで全体として下向きの押圧力を受ける。そして、この押圧力を受けた突当片28b,28cが凸部24b,24cを下向きに押圧する。これにより外れ止め部品28は、底面24aと凸部24b,24cとの間で突っ張り、上枠12aに対して固定される。
【0054】
このように外れ止め部品28は、ねじ72を上枠12aの底面24aに突き当てることで上枠12aに固定される。ところで、外れ止め部品28の固定は、通常、建具10の施工現場で雨戸17をケンドンした後に行われる。このため、ねじ72の締め付けトルクの管理が難しく、作業者の技能等によってはトルクが過大となる可能性がある。そうすると、ねじ当接面である底面24aは、ねじ72によって強く押圧され、その裏側にある外面(枠外側見込み面)76に変形を生じたり、或いは薄く引き伸ばされて白ぼけ等と呼ばれる変色を生じたりする懸念がある。外面76は、建具10の意匠面であって外部から視認できるため、このような問題の発生は建具10の外観品質を低下させる。
【0055】
そこで、本実施形態の建具10は、上枠12aの外面76に凹凸形状部76aを設けている。凹凸形状部76aは、例えば見込み方向に並んだ3本の筋で形成された筋模様である。この筋は、例えば幅0.5~1mm程度、相互間に2mm程度の隙間を設けて並んだスリット状の浅い溝である。凹凸形状部76aは、少なくともねじ72と上下にオーバーラップする領域に設けることが好ましい。これにより、建具10は、仮にねじ72の突き当てによって外面76に変形や変色を生じる場合であっても、凹凸形状部76aが光を乱反射することで当該変形や変色が目立ち難くなるカムフラージュ効果が得られ、外観品質の低下が抑制される。
【0056】
凹凸形状部76aを構成する筋の本数は1本、2本、又は4本以上でもよい。但し、筋の本数が少なすぎると外面76の変形や変色に対するカムフラージュ効果が低下し、本数が多すぎると外面76の意匠性をかえって損なう可能性もある。そこで、凹凸形状部76aは、例えば2~5本の筋を並列したものであると、カムフラージュ効果と外面76の意匠性のバランスが良好となる。勿論、凹凸形状部76aを形成する筋の本数はこれに限られない。
【0057】
本実施形態の凹凸形状部76aは、上枠12aの長手方向に沿って延在している。上記したように、凹凸形状部76aは少なくともねじ72と上下にオーバーラップする領域に設ければよい。但し、凹凸形状部76aは、外面76の全長に設けることで、上枠12a全体のまとまりがよくなり、外観品質が一層向上する。しかも上枠12aは、押出形材であるため、全長に亘る凹凸形状部76aは押出成形時に一体に成形することができ、製造効率も高い。凹凸形状部76aは、上枠12aの押出成形後に後加工で形成してもよい。但し、後加工では均等な凹凸形状の形成は難しい場合もあり、上記した製造効率等も考慮すると押出時に一体成形することが好ましい。凹凸形状部76aは、溝状の筋模様以外でもよく、例えば溝に代えて凸条で形成した筋模様やエッチング加工等で外面76を粗面としたものでもよい。要は、凹凸形状部76aは外面76の意匠性を損なわず、且つねじ72の突き当てによって生じる変形や変色を目立たなくできるものであればよい。
【0058】
以上のように、本発明の一態様に係る建具は、上枠と下枠の間で障子をスライド可能に支持する建具であって、前記下枠は、枠内側見込み面から起立し、前記障子が走行するレールと、前記枠内側見込み面の下に設けられた中空部と、前記中空部よりも室外側に設けられた溝部と、前記溝部の室外側で起立する立ち上がり片と、前記枠内側見込み面と前記中空部とを連通する連通孔と、前記中空部の室外側見付け面を形成する壁部に設けられ、前記連通孔を通して前記中空部に流入した水を前記溝部側へと排出可能な排水孔と、を備え、前記排水孔には、排水弁が装着され、前記排水弁は、前記立ち上がり片の上端よりも高い位置にある。このような構成によれば、例えば大雨時等に溝部に水が溜まった場合であっても、この溜まった水は立ち上がり片を越えて外部に排出され、これより高位置にある排水弁を詰まらせることがないため、下枠での排水効率の低下が抑制される。
【0059】
さらに、前記障子の室外側で前記上枠と前記下枠との間をスライド可能な雨戸を備え、前記溝部は、前記雨戸が走行可能であってもよい。そうすると、特に下枠の室外側の下部に設置される雨戸の走行用の溝部の影響で排水弁が詰まることを抑制でき、大雨時等での排水性能の向上効果が高い。
【0060】
前記中空部は、仕切り壁によって上下に分割された上段の中空部と、下段の中空部とを含み、前記排水孔は、前記上段の中空部の室外側見付け面を形成する壁部に設けられ、前記上段の中空部内を仕切り壁に沿って流れる水を排出可能であってもよい。そうすると、排水孔を下枠の最下部ではなく、それよりも高位置にある上段の中空部に設けた構成でありながらも、連通孔から排水孔へと仕切り壁を利用した円滑な排水経路が構築でき、排水効率が一層向上する。
【0061】
前記仕切り壁は、前記立ち上がり片の上端よりも高い位置にあってもよい。そうすると、溝部に溜まる水よりも、中空部に溜まる水が常に高位置となり、一層効率的な排水が可能となる。
【0062】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
10 建具、12 開口枠、12a 上枠、12b 下枠、14 外障子、15 内障子、17 雨戸、20,30 外レール、21,31 内レール、24 開口溝、24a 底面、26,72 ねじ、27,36,37 中空部、28 外れ止め部品、34 溝部、34b 立ち上がり片、35 仕切り壁、60 連通孔、62 排水孔、64 排水弁、76 外面、76a 凹凸形状部