(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131260
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】磁気回路及びこれを備えるスピーカ
(51)【国際特許分類】
H04R 9/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H04R9/02 102C
H04R9/02 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041419
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田端 孝行
【テーマコード(参考)】
5D012
【Fターム(参考)】
5D012BB03
5D012BB04
5D012BB07
5D012FA08
5D012GA01
(57)【要約】
【課題】反発マグネットを備える磁気回路において、反発マグネットのパーミアンス係数を向上させることができる磁気回路を提供する。
【解決手段】磁気回路40は、第一マグネット46と第二マグネット42と中間磁性部材41と第一磁性部材47と第二磁性部材43とを備える。中間磁性部材41の外周面41bと、第二磁性部材43の筒部43bの内周面43b1との間に径方向の磁気ギャップG1が形成されている。第一磁性部材47は、第一マグネット46の軸方向一方側に接合された一般部47aと、一般部47aの外周部から軸方向他方側に延びる筒部47bと、を有する。第一磁性部材47の筒部47bの外径は、中間磁性部材41の外径よりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に着磁された第一マグネットと、
軸方向であって前記第一マグネットとは反対方向に着磁された第二マグネットと、
前記第一マグネットの軸方向他方側かつ前記第二マグネットの軸方向一方側に配置された中間磁性部材と、
前記第一マグネットの軸方向一方側に配置された第一磁性部材と、
前記第二マグネットの軸方向他方側に配置された第二磁性部材と、を備える磁気回路であって、
前記第二磁性部材は、
前記第二マグネットの軸方向他方側に接合された底部と、
前記底部の外周部から軸方向一方側に延びる筒部と、を有し、
前記中間磁性部材の外周面と、前記第二磁性部材の前記筒部の内周面との間に径方向の磁気ギャップが形成されており、
前記第一磁性部材は、
前記第一マグネットの軸方向一方側に接合された一般部と、
前記一般部の外周部から軸方向他方側に延びる筒部と、を有し、
前記第一磁性部材の前記筒部の外径は、前記中間磁性部材の外径と同じ又は小さい、
磁気回路。
【請求項2】
前記磁気回路は、
前記第二磁性部材の軸方向他方側に配置される第三マグネットと、
前記第三マグネットの軸方向他方側に接合されると共に、前記第二磁性部材との間に他の磁気ギャップを形成する第三磁性部材と、
を更に備える、
請求項1に記載の磁気回路。
【請求項3】
前記第三マグネットは、軸方向であって前記第二マグネットとは反対方向に着磁される、
請求項2に記載の磁気回路。
【請求項4】
前記第三マグネットは、軸方向であって前記第二マグネットと同じ方向に着磁される、
請求項2に記載の磁気回路。
【請求項5】
前記第一磁性部材の前記筒部と前記中間磁性部材との軸方向の距離は、前記磁気ギャップと略同一である、
請求項1に記載の磁気回路。
【請求項6】
前記第一磁性部材の前記筒部と前記中間磁性部材とは、接触している、
請求項1に記載の磁気回路。
【請求項7】
請求項1に記載の磁気回路を備えるスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気回路及びこれを備えるスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主マグネットと、当該主マグネットとは反対方向に着磁された反発マグネットと、を備える磁気回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術には、反発マグネットのパーミアンス係数を向上させる点において改善の余地がある。
【0005】
本開示の1つの目的は、反発マグネット(第一マグネット)を備える磁気回路において、反発マグネットのパーミアンス係数を向上させることができる磁気回路及びこれを備えるスピーカを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る磁気回路は、軸方向に着磁された第一マグネットと、軸方向であって前記第一マグネットとは反対方向に着磁された第二マグネットと、前記第一マグネットの軸方向他方側かつ前記第二マグネットの軸方向一方側に配置された中間磁性部材と、前記第一マグネットの軸方向一方側に配置された第一磁性部材と、前記第二マグネットの軸方向他方側に配置された第二磁性部材と、を備える磁気回路であって、前記第二磁性部材は、前記第二マグネットの軸方向他方側に接合された底部と、前記底部の外周部から軸方向一方側に延びる筒部と、を有し、前記中間磁性部材の外周面と、前記第二磁性部材の前記筒部の内周面との間に径方向の磁気ギャップが形成されており、前記第一磁性部材は、前記第一マグネットの軸方向一方側に接合された一般部と、前記一般部の外周部から軸方向他方側に延びる筒部と、を有し、前記第一磁性部材の前記筒部の外径は、前記中間磁性部材の外径と同じ又は小さい。
【0007】
本態様では、磁気回路は、第一マグネットと第二マグネットと中間磁性部材と第一磁性部材と第二磁性部材とを備える。
中間磁性部材は、第一マグネットの軸方向他方側かつ第二マグネットの軸方向一方側に配置されており、第一磁性部材は、第一マグネットの軸方向一方側に配置されており、第二磁性部材は、第二マグネットの軸方向他方側に配置されている。第二磁性部材は、第二マグネットの軸方向他方側に接合された底部と、底部の外周部から軸方向一方側に延びる筒部と、を有する。中間磁性部材の外周面と、第二磁性部材の筒部の内周面との間に径方向の磁気ギャップが形成されている。
第一マグネットは、軸方向に着磁されており、第二マグネットは、軸方向であって第一マグネットとは反対方向に着磁されている。このため、反発磁気回路が形成されており、磁気ギャップにおける磁束を向上させることができる。
【0008】
また、本態様では、第一磁性部材は、第一マグネットの軸方向一方側に接合された一般部と、一般部の外周部から軸方向他方側に延びる筒部と、を有する。
このため、第一磁性部材と中間磁性部材との間の磁気抵抗を低減でき、その結果、第一マグネットのパーミアンス係数を向上させることができる。
【0009】
また、本態様では、第一磁性部材の筒部の外径は、中間磁性部材の外径と同じ又は小さい。
このため、第一磁性部材の筒部の外径が中間磁性部材の外径よりも大きい態様と比較して、より一層、第一マグネットのパーミアンス係数を向上させることができる。
【0010】
第2の態様に係る磁気回路は、第1の態様において、前記磁気回路は、前記第二磁性部材の軸方向他方側に配置される第三マグネットと、前記第三マグネットの軸方向他方側に接合されると共に、前記第二磁性部材との間に他の磁気ギャップを形成する第三磁性部材と、を更に備える。
【0011】
本態様では、磁気回路は、第三マグネットと、第三磁性部材と、を更に備える。第三マグネットは、第二磁性部材の軸方向他方側に配置される。第三磁性部材は、第三マグネットの軸方向他方側に接合されると共に、第二磁性部材との間に他の磁気ギャップを形成する。
このため、一体に形成された磁気回路によって、磁気ギャップ(第一磁気ギャップ)と他の磁気ギャップ(第二磁気ギャップ)を備えた構造とすることができる。
【0012】
第3の態様に係る磁気回路は、第2の態様において、前記第三マグネットは、軸方向であって前記第二マグネットとは反対方向に着磁される。
【0013】
本態様では、第三マグネットは、軸方向であって第二マグネットとは反対方向に着磁される。
このため、第三マグネットが第二マグネットの反発マグネットとなり、他の磁気ギャップ(第二磁気ギャップ)における磁束を向上させることができる。
【0014】
第4の態様に係る磁気回路は、第2の態様において、前記第三マグネットは、軸方向であって前記第二マグネットと同じ方向に着磁される。
【0015】
本態様では、第三マグネットは、軸方向であって第二マグネットと同じ方向に着磁される。
このため、第三マグネットを第二マグネットの反発マグネットとする態様と比較して、マグネットの反発力の影響を受けないで組付をすることができ、組付性が向上する。
【0016】
第5の態様に係る磁気回路は、第1~第4の何れかの態様において、前記第一磁性部材の前記筒部と前記中間磁性部材との軸方向の距離は、前記磁気ギャップと略同一である。
【0017】
本態様では、第一磁性部材の筒部と中間磁性部材との軸方向の距離は、磁気ギャップと略同一である。
このため、第一マグネットのパーミアンス係数と磁気ギャップの磁束密度とを共に適切な値に調整することができる。
なお、ここで「略同一」とは、第一磁性部材の筒部と中間磁性部材との軸方向の距離が、磁気ギャップの95~105%の範囲にあることを意味する。
【0018】
第6の態様に係る磁気回路は、第1~第4の何れかの態様において、前記第一磁性部材の前記筒部と前記中間磁性部材とは、接触している。
【0019】
本態様では、第一磁性部材の筒部と中間磁性部材とは、接触している。
このため、第一マグネットのパーミアンス係数を大きく向上させることができる。
【0020】
第7の態様に係るスピーカは、第1~第6の何れかの態様に係る磁気回路を備えるスピーカ。
【0021】
本態様では、スピーカは、第1~第6の何れかの態様に係る磁気回路を備えるので、熱に強いスピーカを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】スピーカの中心軸を通る平面における断面図である。
【
図2】スピーカが備える磁気回路の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1~
図2を用いて、本開示の磁気回路及びこれを備えるスピーカの好適な実施形態について説明する。
【0024】
(スピーカ10)
図1は、実施形態に係るスピーカ10の断面図である。
【0025】
スピーカ10の主要部分の構造は、中心軸AXに対して軸対称である。
【0026】
スピーカ10は、高音域の音を出すための第一振動部20と、低音域の音を出すための第二振動部30と、磁気回路40と、これらを支持するフレーム50と、を有する。
【0027】
以下の説明では、中心軸AXに平行な方向を軸方向という。軸方向のうち、音を出る側の方向を軸方向一方側又は前方向という。また、中心軸AXに垂直な方向を径方向という。
【0028】
(フレーム50)
フレーム50は、第一振動部20を支持する第一フレーム51と、第二振動部30を支持する第二フレーム52と、を有する。
【0029】
第一フレーム51は、磁気回路40によって支持される。
第二フレーム52は、第二振動部30及び磁気回路40を支持する。第二フレーム52は、磁気回路40を介して第一フレーム51を支持するともいえる。
第二フレーム52は、図示しない筐体などによって支持される。
【0030】
(第一振動部20)
第一振動部20は、第一ボビン21、第一コイル22、第一ダンパ25、第一振動板23及び第一エッジ24を有する。
【0031】
第一ボビン21は、中心軸AXと同軸の円筒形状を有する。第一コイル22は、第一ボビン21の後端部における外周面に巻回されて形成される。
【0032】
第一ダンパ25は、第一ボビン21を、フレーム50の第一フレーム51に対して軸方向に振動可能に支持する。
第一ダンパ25は、第一ボビン21の径方向外側かつ第一エッジ24の後方に配置される。
【0033】
第一振動板23は、ドーム型であり、第一ボビン21の内側の空間を前方から覆うように設けられる。第一振動板23の外縁部は、第一ボビン21の外周面に接合される。第一振動板23は、第一エッジ24によって、フレーム50の第一フレーム51と連結される。
【0034】
第一振動部20の第一コイル22は、磁気回路40の第一磁気ギャップG1に配置される。第一コイル22は伝送経路と接続されており、当該伝送経路からの電気信号と第一磁気ギャップG1の磁界の作用によって、第一コイル22と共に第一ボビン21が振動し、その結果、第一振動部20が振動する。
【0035】
(第二振動部30)
第二振動部30は、第二ボビン31、第二コイル32、第二ダンパ35、第二振動板33及び第二エッジ34を有する。
【0036】
第二ボビン31は、中心軸AXと同軸の円筒形状を有する。第二コイル32は、第二ボビン31の後端部における外周面に巻回されて形成される。
第二ボビン31は、第一ボビン21よりも直径が大きい。第二ボビン31の内側には、第一フレーム51及び第一振動部20が配置される。
図1に示す非作動状態(スピーカ10が作動していない状態)では、第一振動部20の第一ボビン21は、第二ボビン31の内側の空間に完全に収まっている。
【0037】
第二ダンパ35は、第二ボビン31を、フレーム50の第二フレーム52に対して軸方向に振動可能に支持する。
第二ダンパ35は、第二ボビン31の径方向外側かつ第二振動板33の後方に配置される。
第二ダンパ35は、一枚の弾性体35Aから構成される。弾性体35Aは、中央に中心軸AXと同軸の円孔を有し、当該円孔を形成する内縁部から径方向外側に延びる環状円板形状をなす弾性体であり、波形の形状(具体的には、径方向の位置に応じて前後に波打つ形状)を有する。
弾性体35Aの内縁部は、第二ボビン31の外周面に接合され、弾性体35Aの外縁部は、第二フレーム52に接合される。
【0038】
第二振動板33は、コーン型である。具体的には、第二振動板33は、中央に中心軸AXと同軸の円孔を有し、当該円孔を形成する内縁部から径方向外側かつ前方向に延びる形状を有する。第二振動板33の内縁部は、第二ボビン31の外周面に接合される。
第二振動板33の外縁部は、第二エッジ34によって、フレーム50の第二フレーム52と連結される。
【0039】
第二振動部30の第二コイル32は、磁気回路40の第二磁気ギャップG2に配置される。第二コイル32は伝送経路に接続されており、当該伝送経路からの電気信号と第二磁気ギャップG2の磁界の作用によって、第二コイル32と共に第二ボビン31が振動し、その結果、第二振動部30が振動する。
【0040】
(磁気回路40)
図2は、磁気回路40を拡大して示す。
【0041】
磁気回路40は、第一磁性部材47と、第一マグネット46と、中間磁性部材41と、第二マグネット42と、第二磁性部材43と、を有する。
【0042】
第一マグネット46は、軸方向に着磁される。
第二マグネット42は、軸方向であって、第一マグネット46の着磁方向とは反対方向に着磁される。つまり、第二マグネット42は、第一マグネット46の反発マグネットとなる。
中間磁性部材41は、軸方向において、第一マグネット46と第二マグネット42との間に配置される。
第一磁性部材47は、第一マグネット46の前面に接合される。
第二磁性部材43は、第二マグネット42の後面に接合されると共に、中間磁性部材41との間に第一磁気ギャップG1を形成する。換言すると、第二磁性部材43は、第二マグネット42の後面に接合される底部43aと、中間磁性部材41との間に第一磁気ギャップG1を形成する筒部43bと、を有する。第二磁性部材43の筒部43bの前端は、中間磁性部材41の前面41aよりも前方に位置する。
【0043】
第二磁性部材43の筒部43bの内側には、環状の間隙が形成される。この間隙は、第一コイル22が収容される第一収容空間として機能する。
第一収容空間のうち、中間磁性部材41と、第二磁性部材43の筒部43bとの間に形成される第一磁気ギャップG1には、周方向に略均一な磁界が発生する。
【0044】
以下、各部材の構成についてより詳細に説明する。
【0045】
第一マグネット46、中間磁性部材41及び第二マグネット42は、いずれも円柱形状である。
中間磁性部材41は、第一マグネット46及び第二マグネット42のいずれよりも大きい直径を有する。第二マグネット42は、第一マグネット46よりも大きい直径を有する。
【0046】
第一磁性部材47は、第一マグネット46の前面に接合される一般部47aと、一般部47aの外周部から後方に延びる筒部47bと、を有する。
一般部47aは、板厚方向を前後方向に向ける平板状である。筒部47bは、板厚方向を径方向に向ける。
筒部47bの外径(つまり第一磁性部材47の外径)は、中間磁性部材41の外径よりも小さい。これにより、筒部47bの先端(後端)と中間磁性部材41の前面41aとは、前後方向で対向する。第一磁性部材47の筒部47bの先端と、中間磁性部材41の前面との前後方向の距離は、第一磁気ギャップG1の距離と略同一である。
【0047】
第二磁性部材43の底部43a及び筒部43bは、互いに別体として形成される。互いに別体として形成された底部43aと筒部43bとが一体化されることで第二磁性部材43が形成される。具体的には、筒部43bに対して後方側から底部43aが圧入されることで、第二磁性部材43が形成される。
第二磁性部材43の底部43aは、円柱形状である。本実施形態では第二磁性部材43の底部43aの中央には貫通孔が形成されるので、第二磁性部材43の底部43aはドーナツ形状であるともいえる。第二磁性部材43の底部43aは、第二マグネット42よりも大きい直径を有する。
【0048】
第二磁性部材43の底部43aは、第二マグネット42が接合される接合面43a1を有する。接合面43a1は、軸方向一方側を向く平面である。
第二磁性部材43の底部43aは、第一収容空間の底面を構成する底面構成面43a2を有する。底面構成面43a2は、軸方向一方側を向く平面である。底面構成面43a2は、接合面43a1と同一平面上に位置する。
【0049】
第二磁性部材43の筒部43bは、第一収容空間の径方向外側面を構成する内周面43b1を有する。筒部43bの内周面43b1は、軸方向一方側に向かって径方向内側に傾斜している。筒部43bの内周面43b1の軸方向に対する傾斜角度は、例えば1~3度である。これにより、第一コイル22と第二磁性部材43の筒部43bとの干渉が抑制されると共に、筒部43bの内周面43b1を軸方向他方側に抜く金型により形成することが容易となる。
【0050】
第二磁性部材43には、後述する第二磁気ギャップG2に対応する位置に、外側突出部43b2が形成される。外側突出部43b2の径方向外側への突出量を調整することで、第二磁気ギャップG2の間隔を狭めて、第二磁気ギャップG2を通過する磁束を増加させることができ、漏れ磁束を減らすことができる。外側突出部43b2は、第二磁性部材43の筒部43bに形成される。
【0051】
更に、磁気回路40は、第三マグネット44と、第三磁性部材45と、を有する。
第三マグネット44は、第二磁性部材43の後面に接合される。
第三磁性部材45は、第三マグネット44の後面に接合される底部43aと、第二磁性部材43との間に第二磁気ギャップG2を形成する筒部43bと、を有する。
【0052】
第三磁性部材45の筒部45bの内側には、環状の間隙が形成される。この間隙は、第二コイル32が収容される第二収容空間として機能する。
第二収容空間のうち、第二磁性部材43と、第三磁性部材45の筒部45bとの間に形成される第二磁気ギャップG2には、周方向に略均一な磁界が発生する。
【0053】
以下、各部材の構成についてより詳細に説明する。
【0054】
第三マグネット44は、円柱形状である。本実施形態では第三マグネット44の中央には貫通孔が形成されるので、第三マグネット44はドーナツ形状であるともいえる。第三マグネット44は、第二マグネット42及び第二磁性部材43の底部43aのいずれよりも大きい直径を有する。
【0055】
第三磁性部材45の底部45a及び筒部45bは、互いに別体として形成される。互いに別体として形成された底部45aと筒部45bとが一体化されることで第三磁性部材45が形成される。具体的には、筒部45bに対して後方側から底部45aが圧入されることで、第三磁性部材45が形成される。
第三磁性部材45の底部45aの中央には貫通孔が形成される。第三磁性部材45の底部45は、第三マグネット44よりも大きい直径を有する。
【0056】
第三磁性部材45の底部45aは、第三マグネット44が接合される接合面45a1を有する。接合面45a1は、軸方向一方側を向く平面である。
【0057】
第三磁性部材45の底部45aは、第二収容空間の底面を構成する底面構成面45a2を有する。底面構成面45a2は、接合面45a1よりも後方側に位置する。底面構成面45a2と接合面45a1とは、接続面45a3によって接続される。
底面構成面45a2は、前方を向く平面である。接続面45a3は、前方及び径方向外側の斜め方向を向く。
【0058】
第三磁性部材45の筒部45bは、第二収容空間の径方向外側面を構成する内周面45b1を有する。第三磁性部材45の筒部45bの内周面45b1は、軸方向一方側に向かって径方向内側に傾斜している。筒部45bの内周面45b1の軸方向に対する傾斜角度は、例えば1~3度である。これにより、第二コイル32と第三磁性部材45の筒部45bとの干渉が抑制されると共に、第三磁性部材45の筒部45bの内周面45b1を軸方向他方側に抜く金型により形成することが容易となる。
【0059】
第三磁性部材45の筒部45bは、径方向外側に突出する取付フランジ45b2を有する。取付フランジ45b2は、フレーム50に取り付けられる。
【0060】
以上のように、本実施形態では、第一振動部20及び第二振動部30のそれぞれに対応する磁気回路が1つの磁気回路40で構成される。
【0061】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0062】
本実施形態では、磁気回路40は、第一マグネット46と第二マグネット42と中間磁性部材41と第一磁性部材47と第二磁性部材43とを備える。
中間磁性部材41は、第一マグネット46の軸方向他方側かつ第二マグネット42の軸方向一方側に配置されており、第一磁性部材47は、第一マグネット46の軸方向一方側に配置されており、第二磁性部材43は、第二マグネット42の軸方向他方側に配置されている。第二磁性部材43は、第二マグネット42の軸方向他方側に接合された底部43aと、底部43aの外周部から軸方向一方側に延びる筒部43bと、を有する。中間磁性部材41の外周面41bと、第二磁性部材43の筒部43bの内周面43b1との間に径方向の磁気ギャップG1が形成されている。
第一マグネット46は、軸方向に着磁されており、第二マグネット42は、軸方向であって第一マグネット46とは反対方向に着磁されている。このため、反発磁気回路が形成されており、磁気ギャップG1における磁束を向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、第一磁性部材47は、第一マグネット46の軸方向一方側に接合された一般部47aと、一般部47aの外周部から軸方向他方側に延びる筒部47bと、を有する。
このため、第一磁性部材47と中間磁性部材41との間で磁気ループを形成することができ、その結果、第一マグネット46のパーミアンス係数を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、第一磁性部材47の筒部47bの外径は、中間磁性部材41の外径よりも小さい。
このため、第一磁性部材47の筒部47bの外径が中間磁性部材41の外径よりも大きい態様と比較して、より一層、第一マグネット46のパーミアンス係数を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、磁気回路40は、第三マグネット44と、第三磁性部材45と、を更に備える。第三マグネット44は、第二磁性部材43の軸方向他方側に配置される。第三磁性部材45は、第三マグネット44の軸方向他方側に接合されると共に、第二磁性部材43との間に他の磁気ギャップG2を形成する。
このため、一体に形成された磁気回路40によって、磁気ギャップG1(第一磁気ギャップG1)と他の磁気ギャップG2(第二磁気ギャップG2)を備えた構造とすることができる。
【0066】
また、本実施形態では、第三マグネット44は、軸方向であって第二マグネット42とは反対方向に着磁されてもよい。
この場合、第三マグネットが第二マグネットの反発マグネットとなり、他の磁気ギャップ(第二磁気ギャップ)における磁束を向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、第三マグネット44は、軸方向であって第二マグネット42と同じ方向に着磁されてもよい。
この場合、第三マグネット44を第二マグネット42の反発マグネットとする態様と比較して、マグネットの反発力の影響を受けないで組付をすることができ、組付性が向上する。
【0068】
また、本実施形態では、第一磁性部材47の筒部47bと中間磁性部材41との軸方向の距離は、磁気ギャップG1と略同一である。
このため、第一マグネット46のパーミアンス係数と磁気ギャップG1の磁束密度とを共に適切な値に調整することができる。
【0069】
また、本実施形態の構成に代えて、第一磁性部材47の筒部47bと中間磁性部材41とが、接触している構成に変更してもよい。
この場合、第一マグネット46のパーミアンス係数を大きく向上させることができる。
【0070】
また、本実施形態のスピーカ10は、磁気回路40を備える。
このため、熱に強いスピーカ10を実現することができる。
【0071】
〔補足説明〕
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。以下、念のため補足する。
【0072】
上記実施形態では、スピーカ10が有する第一振動部20及び第二振動部30が、共に音を出すための振動部である例を説明したが、本開示の第一振動部及び第二振動部はこれに限定されない。例えば、一方の振動部は、音を出す機能以外の機能を有するものとしてもよい。
【0073】
上記実施形態では、スピーカ10が第一振動部20及び第二振動部30を有する例を説明したが、本開示のスピーカはこれに限定されない。スピーカが有する振動部は一つであってもよい。
【0074】
上記実施形態では、磁気回路40が、第三マグネット44と、第三磁性部材45と、を有する例を説明したが、本開示の磁気回路はこれに限定されない。磁気回路は、第三マグネット及び第三磁性部材を有しなくてもよい。
【0075】
上記実施形態では、第二ダンパ35が、一枚の弾性体35Aから構成される例を説明したが、本開示の第二ダンパはこれに限定されない。第二ダンパは、二枚以上の弾性体から構成されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 スピーカ
20 第一振動部
30 第二振動部
40 磁気回路
41 中間磁性部材
41a 前面
41b 外周面
42 第二マグネット
43 第二磁性部材
43a 底部
43a1 接合面
43a2 底面構成面
43b 筒部
43b1 内周面
43b2 外側突出部
44 第三マグネット
45 第三磁性部材
45a 底部
45a1 接合面
45a2 底面構成面
45a3 接続面
45b 筒部
45b1 内周面
45b2 取付フランジ
46 第一マグネット
47 第一磁性部材
47a 一般部
47b 筒部
50 フレーム
51 第一フレーム
52 第二フレーム
G1 第一磁気ギャップ(磁気ギャップ)
G2 第二磁気ギャップ(他の磁気ギャップ)