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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131261
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】磁気回路
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H04R9/02 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041420
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田端 孝行
【テーマコード(参考)】
5D012
【Fターム(参考)】
5D012BB03
5D012BB04
5D012FA10
(57)【要約】
【課題】製造コストを抑えることができる構造を有する磁気回路を提供する。
【解決手段】磁気回路40は、マグネット42と第一磁性部材41と第二磁性部材43とを備える。第二磁性部材43の筒部43bの内側には、軸方向一方側に開放されるコイル収容空間49が形成される。第二磁性部材43は、互いに別体として形成された第一構成部材43bと第二構成部材43aとが一体化されることで構成される。コイル収容空間49の外周面43b1は、第一構成部材43bに形成され、コイル収容空間49の底面43a2は、第二構成部材43aに形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットと、
前記マグネットの軸方向一方側に接合される第一磁性部材と、
底部及び筒部を有し、前記底部において前記マグネットの軸方向他方側に接合される第二磁性部材と、を備え、
軸方向一方側に開放されるコイル収容空間が前記筒部の内側に形成される磁気回路であって、
前記第二磁性部材は、互いに別体として形成された第一構成部材と第二構成部材とが一体化されることで構成され、
前記コイル収容空間の外周面は、前記第一構成部材に形成され、
前記コイル収容空間の底面は、前記第二構成部材に形成される、
磁気回路。
【請求項2】
前記コイル収容空間の前記外周面は、
前記第一磁性部材と径方向で対向する第一面と、
前記第一面の軸方向他方側に形成される第二面と、を有し、
前記第二面は、前記第一面よりも径方向外側に位置する、
請求項1に記載の磁気回路。
【請求項3】
前記第二面は、軸方向他方側に向かって径方向外側に傾斜している、
請求項2に記載の磁気回路。
【請求項4】
前記第一面は、軸方向他方側に向かって径方向外側に傾斜しており、
軸方向に対する前記第一面の傾斜角度は、軸方向に対する前記第二面の傾斜角度以下である、
請求項3に記載の磁気回路。
【請求項5】
軸方向に対する前記第一面の傾斜角度は、軸方向に対する前記第二面の傾斜角度と同じである、
請求項4に記載の磁気回路。
【請求項6】
前記第一面は、軸方向に平行に延びる、
請求項3に記載の磁気回路。
【請求項7】
前記第一構成部材は、前記第二構成部材が圧入される圧入面であって、径方向内側を向く圧入面を有する、
請求項1に記載の磁気回路。
【請求項8】
前記第一構成部材は、当該第一構成部材に対する前記第二構成部材の圧入限界を規定する規定面を有する、
請求項1に記載の磁気回路。
【請求項9】
前記第二構成部材は、前記マグネットと接合される接合面を有し、
前記接合面は、前記コイル収容空間の前記底面よりも軸方向一方側に位置する、
請求項1に記載の磁気回路。
【請求項10】
前記第一面は、軸方向一方側に向かって径方向外側に傾斜している、
請求項3に記載の磁気回路。
【請求項11】
請求項1に記載の磁気回路を備えるスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(第3図)には、スピーカのボイスコイルがローリングを起こした場合でも、ボイスコイルとヨークとの干渉を抑制する構造の磁気回路が開示されている。この磁気回路では、ヨークのうち磁気ギャップを形成する部分よりも下側部分の内径を、ヨークのうち磁気ギャップを形成する部分の内径よりも大きくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60-167309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の磁気回路の製造においては、ヨークのうち磁気ギャップを形成する部分よりも下側部分を切削する必要がある。
【0005】
本開示の1つの目的は、製造コストを抑えることができる構造を有する磁気回路及びこれを備えるスピーカを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る磁気回路は、マグネットと、前記マグネットの軸方向一方側に接合される第一磁性部材と、底部及び筒部を有し、前記底部において前記マグネットの軸方向他方側に接合される第二磁性部材と、を備え、軸方向一方側に開放されるコイル収容空間が前記筒部の内側に形成される磁気回路であって、前記第二磁性部材は、互いに別体として形成された第一構成部材と第二構成部材とが一体化されることで構成され、前記コイル収容空間の外周面は、前記第一構成部材に形成され、前記コイル収容空間の底面は、前記第二構成部材に形成される。
【0007】
本態様では、磁気回路は、マグネットと第一磁性部材と第二磁性部材とを備える。第一磁性部材は、マグネットの軸方向一方側に接合される。第二磁性部材は、底部及び筒部を有する。第二磁性部材は、底部においてマグネットの軸方向他方側に接合される。第二磁性部材の筒部の内側には、軸方向一方側に開放されるコイル収容空間が形成される。
【0008】
また、本態様では、第二磁性部材は、互いに別体として形成された第一構成部材と第二構成部材とが一体化されることで構成される。そして、コイル収容空間の外周面は、第一構成部材に形成され、コイル収容空間の底面は、第二構成部材に形成される。
このため、コイル収容空間の外周面を、軸方向他方側に抜く成形金型により形成することができる。そのため、コイル収容空間の外周面を、コイルとの干渉を抑制する形状に形成しやすい。その結果、製造コストを抑えることができる。
【0009】
第2の態様に係る磁気回路は、第1の態様において、前記コイル収容空間の前記外周面は、前記第一磁性部材と径方向で対向する第一面と、前記第一面の軸方向他方側に形成される第二面と、を有し、前記第二面は、前記第一面よりも径方向外側に位置する。
【0010】
本態様では、コイル収容空間の外周面は、第一磁性部材と径方向で対向する第一面と、第一面の軸方向他方側に形成される第二面と、を有する。そして、第二面は、第一面よりも径方向外側に位置する。
このため、第二磁性部材とコイルとの干渉を抑制することができる。
【0011】
第3の態様に係る磁気回路は、第2の態様において、前記第二面は、軸方向他方側に向かって径方向外側に傾斜している。
【0012】
本態様では、第二面は、軸方向他方側に向かって径方向外側に傾斜している。
このため、軸方向他方側に抜く成形金型により、第二面を形成しやすい。
【0013】
第4の態様に係る磁気回路は、第3の態様において、前記第一面は、軸方向他方側に向かって径方向外側に傾斜しており、軸方向に対する前記第一面の傾斜角度は、軸方向に対する前記第二面の傾斜角度以下である。
【0014】
本態様では、第一面は、軸方向他方側に向かって径方向外側に傾斜している。このため、軸方向他方側に抜く成形金型により、第一面を形成しやすい。
また、本態様では、軸方向に対する第一面の傾斜角度は、軸方向に対する第二面の傾斜角度以下である。このため、第一磁性部材と第一面との間の磁束密度を軸方向で均一化しやすい。
【0015】
第5の態様に係る磁気回路は、第4の態様において、軸方向に対する前記第一面の傾斜角度は、軸方向に対する前記第二面の傾斜角度と同じである。
【0016】
本態様では、軸方向に対する第一面の傾斜角度は、軸方向に対する第二面の傾斜角度と同じである。
このため、第一面と第二面とを単純な成形金型により形成できる。
なお、ここでいう「同じ」とは、±0.3度以内であることを意味する。
【0017】
第6の態様に係る磁気回路は、第3の態様において、前記第一面は、軸方向に平行に延びる。
【0018】
本態様では、第一面は、軸方向に平行に延びる。
このため、磁気ギャップにおける磁束密度を軸方向において均一化しやすい。
なお、第一面が軸方向に平行に延びるとは、軸方向に対する第一面の傾斜角度が0.3度以下である場合を含む。
【0019】
第7の態様に係る磁気回路は、第1~第6の何れかの態様において、前記第一構成部材は、前記第二構成部材が圧入される圧入面であって、径方向内側を向く圧入面を有する。
【0020】
本態様では、第一構成部材は、第二構成部材が圧入される圧入面であって、径方向内側を向く圧入面を有する。
このため、第一構成部材に形成される圧入面が径方向外側を向く態様と比較して、第二構成部材に形状を単純化できる。
【0021】
第8の態様に係る磁気回路は、第1~第7の何れかの態様において、前記第一構成部材は、当該第一構成部材に対する前記第二構成部材の圧入限界を規定する規定面を有する。
【0022】
本態様では、第一構成部材は、当該第一構成部材に対する第二構成部材の圧入限界を規定する規定面を有する。
このため、規定面が設けられない態様と比較して、第一構成部材に対する第二構成部材の圧入工程が容易である。
【0023】
第9の態様に係る磁気回路は、第1~第8の何れかの態様において、前記第二構成部材は、前記マグネットと接合される接合面を有し、前記接合面は、前記コイル収容空間の前記底面よりも軸方向一方側に位置する。
【0024】
本態様では、第二構成部材は、マグネットと接合される接合面を有する。接合面は、コイル収容空間の底面よりも軸方向一方側に位置する。
このため、マグネットの体積を減少させることができる。
【0025】
第10の態様に係る磁気回路は、第3の態様において、前記第一面は、軸方向一方側に向かって径方向外側に傾斜している。
【0026】
本態様では、第一面は、軸方向一方側に向かって径方向外側に傾斜している。
このため、巻幅が広いコイルを使用したときでも、コイルが、第二磁性部材の筒部の前端の角部に接触し難くすることができる。
【0027】
第11の態様に係るスピーカは、第1~第10の何れかの態様に係る磁気回路を備える。
【0028】
本態様に係るスピーカは、第1~第10の何れかの態様に係る磁気回路を備えるので、スピーカの製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係るスピーカの断面図である。
図2】実施形態に係る磁気回路の断面図である。
図3】磁気回路の分解断面図である。
図4】第二磁性部材の分解断面図である。
図5】第一変形例に係る第二磁性部材の分解断面図である。
図6】第二変形例に係る第二磁性部材の分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の磁気回路及びこれを備えるスピーカの好適な実施形態について説明する。
【0031】
(スピーカ10)
図1は、本実施形態に係るスピーカ10の断面図である。
【0032】
スピーカ10の主要部分の構造は、中心軸AXに対して軸対称である。
【0033】
スピーカ10は、音を出すための振動部20と、磁気回路40と、これらを支持するフレーム50と、を有する。
【0034】
以下の説明では、中心軸AXに平行な方向を軸方向という。軸方向のうち、音を出る側の方向を軸方向一方側又は前方向という。また、中心軸AXに垂直な方向を径方向という。
【0035】
(振動部20)
振動部20は、ボビン21、コイル22、ダンパ25、振動板23及びエッジ24を有する。
【0036】
ボビン21は、中心軸AXと同軸の円筒形状を有する。コイル22は、ボビン21の後端部における外周面に巻回されて形成される。
【0037】
ダンパ25は、ボビン21を、フレーム50に対して軸方向に振動可能に支持する。ダンパ25は、ボビン21の径方向外側かつ振動板23の後方に配置される。
ダンパ25は、一枚の弾性体35Aから構成される。弾性体35Aは、中央に中心軸AXと同軸の円孔を有し、当該円孔を形成する内縁部から径方向外側に延びる環状円板形状をなす弾性体であり、波形の形状(具体的には、径方向の位置に応じて前後に波打つ形状)を有する。弾性体35Aの内縁部は、ボビン21の外周面に接合され、弾性体35Aの外縁部は、フレーム50に接合される。
【0038】
振動板23は、コーン型である。具体的には、振動板23は、中央に中心軸AXと同軸の円孔を有し、当該円孔を形成する内縁部から径方向外側かつ前方向に延びる形状を有する。振動板23の内縁部は、ボビン21の外周面に接合される。振動板23の外縁部は、エッジ24によって、フレーム50と連結される。
【0039】
キャップ26は、ボビン21の内側の空間を前方から覆うように設けられる。キャップ26の外縁部は、振動板23に接合される。
【0040】
振動部20のコイル22は、磁気回路40の後述する磁気ギャップGに配置される。コイル22は伝送経路に接続されており、当該伝送経路からの電気信号と磁気ギャップGの磁界の作用によって、コイル22と共にボビン21が振動し、その結果、振動部20の振動板23及びキャップ26が振動して音が出る。
【0041】
(磁気回路40)
図2図3は、磁気回路40を拡大して示す。
【0042】
磁気回路40は、第一磁性部材41と、マグネット42と、第二磁性部材43と、を有する。
【0043】
マグネット42は、軸方向に着磁される。
第一磁性部材41は、マグネット42の前面に接合される。
第二磁性部材43は、マグネット42の後面に接合されると共に、第一磁性部材41との間に磁気ギャップGを形成する。換言すると、第二磁性部材43は、マグネット42の後面に接合される底部43aと、第一磁性部材41との間に磁気ギャップGを形成する筒部43bと、を有する。
【0044】
第二磁性部材43の筒部43bの内側には、環状の間隙が形成される。この間隙は、コイル22が収容されるコイル収容空間49として機能する。コイル収容空間49のうち、第一磁性部材41の磁気ギャップ面41aと、第二磁性部材43の筒部43bの内周面43b1との間に形成される磁気ギャップGには、周方向に略均一な磁界が発生する。
【0045】
以下、各部材の構成についてより詳細に説明する。
【0046】
第一磁性部材41は、略円柱形状である。第一磁性部材41は、径方向外側を向く面である磁気ギャップ面41aを有する。磁気ギャップ面41aの前端は、第一磁性部材41の前面と前後方向の位置が一致する。磁気ギャップ面41aの後端は、第一磁性部材41の後面よりも前方に位置する。
マグネット42は、円柱形状である。マグネット42は、第一磁性部材41よりも小さい直径を有する。
【0047】
第二磁性部材43の底部43a及び筒部43bは、互いに別体として形成される。互いに別体として形成された底部43aと筒部43bとが一体化されることで第二磁性部材43が形成される。具体的には、筒部43bに対して後方側から底部43aが圧入されることで、第二磁性部材43が形成される。
以下、第二磁性部材43のうち筒部43bを構成する部材を第一構成部材43bといい、第二磁性部材43のうち底部43aを構成する部材を第二構成部材43aということがある。つまり、第二磁性部材43は、第一構成部材43bと第二構成部材43aとが一体化されることで形成される。
【0048】
なお、第二構成部材43aの外縁部分に後方側へ開放された溝を形成し、当該溝に楔を打ち込むことで、圧入した第二構成部材43aが第一構成部材43bから抜けないようにしてもよい。
【0049】
第二磁性部材43の底部43aは、マグネット42が接合される接合面43a1を有する。接合面43a1は、軸方向一方側を向く平面である。
また、第二磁性部材43の底部43aは、コイル収容空間49の底面を構成する底面構成面43a2を有する。底面構成面43a2は、軸方向一方側を向く平面である。底面構成面43a2は、接合面43a1よりも後方側に位置する。
底面構成面43a2と接合面43a1とは、接続面43a3によって接続される。接続面43a3は、前方かつ径方向外側の斜め方向を向く面である。
以下、底面構成面43a2を、コイル収容空間49の底面43a2ということがある。
【0050】
第二磁性部材43の筒部43bは、コイル収容空間49の外周面(径方向外側の面)を構成する内周面43b1を有する。筒部43bの内周面43b1は、軸方向一方側に向かって径方向内側に一定の角度で傾斜している。筒部43bの内周面43b1の軸方向に対する傾斜角度は、例えば1~3度である。これにより、コイル22と第二磁性部材43の筒部43bとの干渉が抑制される。
【0051】
以下では、コイル収容空間49の径方向外側の面を構成する内周面43b1を、コイル収容空間49の外周面43b1ということがある。また、コイル収容空間49の外周面43b1のうち、第一磁性部材41と径方向で対向する面を第一面43b11といい、第一面43b11の軸方向他方側に形成される第二面43b12という。第一面43b11は、第一磁性部材41の磁気ギャップ面41aとの間に磁気ギャップGを形成する面といえる。
なお、本実施形態では、第一面43b11及び第二面43b12の軸方向に対する傾斜角度が同一であるため、第一面43b11と第二面43b12との境界位置は、明確に定まらない。
【0052】
第二磁性部材43の筒部43bは、径方向外側に突出する被取付部43b2を有する。被取付部43b2は、フレーム50に取り付けられる。
【0053】
図4に示すように、第一構成部材43bは、第二構成部材43aが圧入される圧入面43b3を有する。圧入面43b3は、径方向内側を向く面である。圧入面43b3の径方向内側に第二構成部材43aが圧入される。
【0054】
第一構成部材43bは、圧入限界を規定する規定面43b4を有する。規定面43b4は、圧入面43b3と第二面43b12とを接続する。規定面43b4は、圧入面43b3と第二面43b12との間に段差を形成する。
【0055】
第一構成部材43bは、型鍛造により作られる。
具体的には、第一構成部材43bの内側の面である第一面43b11、第二面43b12、規定面43b4及び圧入面43b3は、軸方向他方側に抜く成形金型により形成される。第一構成部材43bの外側の面のうち、被取付部43b2よりも軸方向一方側の面は、軸方向一方側に抜く成形金型により形成され、被取付部43b2よりも軸方向他方側の面は、軸方向他方側に抜く成形金型により形成される。
【0056】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0057】
本実施形態では、図2に示すように、磁気回路40は、マグネット42と第一磁性部材41と第二磁性部材43とを備える。第一磁性部材41は、マグネット42の軸方向一方側に接合される。第二磁性部材43は、底部43a及び筒部43bを有する。第二磁性部材43は、底部43aにおいてマグネット42の軸方向他方側に接合される。第二磁性部材43の筒部43bの内側には、軸方向一方側に開放されるコイル収容空間49が形成される。
【0058】
また、本実施形態では、図3図4に示すように、第二磁性部材43は、互いに別体として形成された第一構成部材43bと第二構成部材43aとが一体化されることで構成される。そして、コイル収容空間49の外周面43b1は、第一構成部材43bに形成され、コイル収容空間49の底面43a2は、第二構成部材43aに形成される。
このため、コイル収容空間49の外周面43b1を、軸方向他方側に抜く成形金型により形成することができる。そのため、コイル収容空間49の外周面43b1をコイル22の外周側に(径方向外側に)傾斜させることで、コイル22との干渉を抑制する形状に形成しやすい。
【0059】
また、本実施形態では、図2に示すように、コイル収容空間49の外周面43b1は、第一磁性部材41と径方向で対向する第一面43b11と、第一面43b11の軸方向他方側に形成される第二面43b12と、を有する。そして、第二面43b12は、第一面43b11よりも径方向外側に位置する。
このため、第二磁性部材43とコイル22との干渉を抑制することができる。
【0060】
すなわち、第二磁性部材43が一体的に形成されるものであると、コイル22との干渉を抑制するような外周面43b1を形成するためには、切削加工等が必要となる。また、第二磁性部材43が2つの部材で構成されていても、外周面43b1を下型(軸方向他方側に抜く成形金型)により形成できないと、外周面43b1を形成するために切削加工等が必要となる。
そこで、本実施形態では、コイル収容空間49の外周面43b1を有する第一構成部材43bと、コイル収容空間49の底面43a2を有する第二構成部材43aと、に分けて、それぞれ別に形成するようにしている。そして、第一構成部材43bは、少なくとも第二面43b12を下型により形成できる構造を有する。
このため、外周面43b1を切削加工等により形成する必要がなくなるか、又は切削加工等が僅かで済むので、製造コストを低減できる。
【0061】
また、本実施形態では、図4に示すように、第二面43b12は、軸方向他方側に向かって径方向外側に傾斜している。
このため、軸方向他方側に抜く成形金型により、第二面43b12を形成しやすい。
【0062】
また、本実施形態では、図4に示すように、第一面43b11は、軸方向他方側に向かって径方向外側に傾斜している。このため、軸方向他方側に抜く成形金型により、第一面43b11を形成しやすい。
【0063】
また、本実施形態では、図4に示すように、軸方向に対する第一面43b11の傾斜角度は、軸方向に対する第二面43b12の傾斜角度と同じである。
このため、第一面と第二面とを単純な成形金型により形成できる。
【0064】
また、本実施形態では、図4に示すように、第一構成部材43bは、第二構成部材43aが圧入される圧入面43b3であって、径方向内側を向く圧入面43b3を有する。
このため、第一構成部材43bに形成される圧入面43b3が径方向外側を向く態様と比較して、第二構成部材43aに形状を単純化できる。また、圧入後にカシメして、圧入強度を容易に向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、図4に示すように、第一構成部材43bは、当該第一構成部材43bに対する第二構成部材43aの圧入限界を規定する規定面43b4を有する。
このため、規定面43b4が設けられない態様と比較して、第一構成部材43bに対する第二構成部材43aの圧入工程が容易である。
【0066】
また、本実施形態では、図2に示すように、第二構成部材43aは、マグネット42と接合される接合面43a1を有する。接合面43a1は、コイル収容空間49の底面43a2よりも軸方向一方側に位置する。
このため、マグネット42の体積を減少させることで、部材コストを削減できる。また、底面43a2よりも軸方向一方側に位置する接合面43a1を、切削をすることなく形成することができ、製造コストを低減できる。
【0067】
また、本実施形態に係るスピーカ10は、図1に示すように、本実施形態に係る磁気回路40を備える。
このため、スピーカ10の製造コストを低減することができる。
【0068】
<第一変形例>
図5は、第一変形例に係る第二磁性部材の第一構成部材143bを示す。
【0069】
第一構成部材143bの第一面43b11は、上記実施形態と異なり、軸方向に平行に延びる。一方、第二面43b12は、上記実施形態と同様、軸方向に対して傾斜している。
【0070】
第一変形例では、第一面43b11が軸方向に平行に延びるので、磁気ギャップGにおける磁束密度を軸方向において均一化しやすい。第一面43b11が軸方向に平行に延びる構成は、コイル22の軸方向寸法が大きい場合(例えば10mm以上)の場合に特に有効である。
【0071】
<第二変形例>
図6は、第二変形例に係る第二磁性部材の第一構成部材243bを示す。
【0072】
第一構成部材143bの第一面43b11は、上記実施形態及び第一変形例と異なり、軸方向一方側に向かって径方向外側に傾斜している。一方、第二面43b12は、上記実施形態及び第一変形例と同様、軸方向他方側に向かって径方向外側に傾斜している。
【0073】
第二変形例では、第一面43b11が、軸方向一方側に向かって径方向外側に傾斜しているので、巻幅が広いコイル22を使用したときでも、コイル22が、第二磁性部材の筒部23bの前端の角部に接触し難くすることができる。
【0074】
〔補足説明〕
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。以下、念のため補足する。
【0075】
上記実施形態では、軸方向に対する第一面43b11の傾斜角度が、軸方向に対する第二面43b12の傾斜角度と同じである例を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、軸方向に対する第一面の傾斜角度は、軸方向に対する第二面の傾斜角度よりも小さくてもよい。この場合、第一磁性部材と第一面との間の磁束密度(つまり磁気ギャップの磁束密度)を軸方向で均一化しやすい。
【0076】
上記実施形態では、第一構成部材43bの圧入面が、径方向内側を向く例を説明したが、本開示はこれに限定されない。第一構成部材の圧入面は、径方向外側を向いていてもよい。つまり、第二構成部材に第一構成部材を圧入する構成にしてもよい。
【0077】
上記実施形態では、第一構成部材43bが、型鋳造により作られる例を説明したが、本開示の第一構成部材はこれに限定されない。第一構成部材は、型鋳造により全体が形成された後、一部(例えば圧入面等)に切削加工が施されることで作られてもよい。
【0078】
上記実施形態では、底面構成面43a2と接合面43a1とを接続する接続面43a3が、前方かつ径方向外側の斜め方向を向く面である例を説明したが、本開示の接続面はこれに限定されない。接続面は、径方向外側を向く面であってもよい。
【0079】
上記実施形態では、コイル収容空間49の外周面43b1が、第一面43b11及び第二面43b12のみで構成される例を説明したが、本開示のコイル収容空間の外周面はこれに限定されない。コイル収容空間の外周面は、第一面と第二面との間に形成される段差面を有してもよい。
また、上記実施形態では、第二面43b12が、軸方向に対して傾斜している例を説明したが、本開示の第二面はこれに限定されない。第二面は、軸方向に平行であってもよい。第一面と第二面との間に段差面を形成することで、第二面を軸方向に平行に形成しても、コイルと第二面との干渉を抑制することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 スピーカ
40 磁気回路
41 第一磁性部材
42 マグネット
43 第二磁性部材
43a 底部(第二構成部材)
43a1 接合面
43a2 底面構成面(コイル収容空間の底面)
43b 筒部(第一構成部材)
43b1 内周面(コイル収容空間の外周面)
43b11 第一面
43b12 第二面
43b2 被取付部
43b3 圧入面
43b4 規定面
49 コイル収容空間
143b 第一構成部材
243b 第一構成部材
G 磁気ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6