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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131266
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】青果物調製機
(51)【国際特許分類】
   A23N 15/08 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A23N15/08
A23N15/08 A
A23N15/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041429
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】505467672
【氏名又は名称】渡辺精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100224007
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 潮
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 好見
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 圭佑
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061AA05
4B061BA03
4B061BB07
4B061BB12
4B061BB13
4B061CB02
4B061CB05
4B061CB12
4B061CB16
4B061CB22
4B061CB23
(57)【要約】
【課題】ユーザのニーズに応える処理能力を有しつつ、設置空間を抑えることができる青果物調製機を提供すること。
【解決手段】青果物Aに対して第1処理を施す第1処理部2と、第1処理が施された青果物Aに対して第2処理を施す第2処理部5と、第1処理部2により処置された青果物Aを第2処理部5に受け渡す受渡空間S3と、を備え、第1処理部2は、青果物Aを把持可能な第1把持部26が周縁部に複数設けられ、第1回転軸22回りで回転可能な第1回転体20と、第1把持部26に把持された青果物Aを切削する切削手段30,40とを備え、第2処理部5は、青果物Aを把持可能な第2把持部56が周縁部に複数設けられ、第2回転軸回りで回転可能な第2回転体50と、第2把持部56により把持されている青果物Aに流体を吐出する流体吐出ノズル61とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物に対して第1処理を施す第1処理部と、
前記第1処理部において前記第1処理が施された前記青果物に対して第2処理を施す第2処理部と、
前記第1処理部により処置された前記青果物を前記第2処理部に受け渡す受渡空間と、を備え、
前記第1処理部は、
前記青果物を把持可能な第1把持部が周縁部に複数設けられ、第1回転軸回りで回転可能な第1回転体と、
前記第1把持部により把持されている前記青果物における非把持領域の少なくとも一部を切削する切削手段と、を備え、
前記第2処理部は、
前記切削手段により処理された前記青果物を把持可能な第2把持部が周縁部に複数設けられ、第2回転軸回りで前記第1回転体に同期して回転可能な第2回転体と、
前記第2把持部により把持されている前記青果物に対して流体を吹き付ける流体吐出ノズルと、を備える
ことを特徴とする青果物調製機。
【請求項2】
前記第2把持部は、前記第2回転体の回転方向に直交する方向に配設され、対向する2方向から前記青果物を押さえて把持する一対の青果押え部を備え、
前記第2処理部は、前記第2回転軸に平行な、前記青果押え部の中心軸回りで、前記第2把持部に把持された前記青果物を自転させる青果物自転機構を備え、
前記流体吐出ノズルは、前記第2回転軸回りで公転しながら、前記中心軸回りで自転する前記青果物に対して、前記流体を吹き付ける
ことを特徴とする請求項1に記載の青果物調製機。
【請求項3】
前記青果物自転機構は、前記第2回転体を回転させる駆動力によって、前記青果物を自転させることを特徴とする請求項2に記載の青果物調製機。
【請求項4】
前記青果物自転機構は、前記青果押え部の前記中心軸に固定され、前記第2回転軸回りで公転するピニオンと、前記第2回転軸を支持する枠体に固定され、前記ピニオンが噛み合って移動するラックと、を備え、
前記一対の青果押え部は、前記ピニオンが前記ラックに噛み合って移動することによって、前記中心軸回りで自転し、
前記一対の青果押え部に把持された前記青果物は、前記一対の青果押え部と共に前記中心軸回りで自転する
ことを特徴とする請求項3に記載の青果物調製機。
【請求項5】
前記流体吐出ノズルは、前記複数の第2把持部のそれぞれに対応させて、前記第2回転体の周縁部に複数設けられている
ことを特徴とする請求項請求項1乃至4のいずれか1項記載の青果物調製機。
【請求項6】
前記第1把持部は、前記第1回転体の回転方向に沿って配設され、前記青果物を把持可能な一対の指部を備え、
前記一対の指部の指の先端は、前記把持状態において離隔されており、
前記第1処理部は、前記切削手段として、前記把持状態の前記青果物における前記一対の指部の間の非把持領域の表面に切込みを付ける切込み刃を備える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の青果物調製機。
【請求項7】
開閉自在の扉を有し、前記第1処理部及び前記第2処理部を収容する筐体をさらに備え、
前記扉は、当該扉を閉じた状態で前記筐体の外部から前記第1把持部に前記青果物を投入可能な開口を備え、
前記切込み刃は、前記扉に設けられている
ことを特徴とする請求項6に記載の青果物調製機。
【請求項8】
前記流体吐出ノズルは、前記切込みに流体を作用させることによって、前記第2把持部に把持されている前記青果物の表皮を剥がす
ことを特徴とする請求項6に記載の青果物調製機。
【請求項9】
前記第1把持部は、前記青果物における端部を把持せず、
前記第1処理部は、前記切削手段として、前記第1把持部に把持されている前記青果物における非把持領域である前記端部を切断する切断刃を備える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の青果物調製機。
【請求項10】
前記受渡空間を通過した前記第2把持部が所定時間後に通過する解放空間をさらに備え、
前記第2把持部は、前記端部が前記切断刃によって切断された前記青果物の切断面に当接する当接面を備え、
前記第2処理部は、把持していた前記青果物を前記解放空間において解放した前記第2把持部の前記当接面を洗浄する洗浄手段を備える
ことを特徴とする請求項9に記載の青果物調製機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉ねぎ等の鱗茎菜類を含む青果物に対して複数の処理を順次施す青果物調製機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の青果物調製機として、特許文献1には、鱗茎菜類に分類される玉ねぎの皮むき装置が開示されている。この特許文献1に記載の従来装置は、上下の縦方向に設置されたコンベヤと、そのコンベヤの後ろに設置された一対の回転ローラと、それらの回転ローラの側方位置に設置された圧縮空気吹付手段と、を有している。この特許文献1に記載の装置においては、コンベヤによって玉ねぎを下から上へ搬送し、その搬送中において切込刃によって玉ねぎの表面に切込みを付ける。
【0003】
その後、切込みが付けられた玉ねぎを一対の回転ローラの上に落とし、回転ローラによって玉ねぎを回転させながら、圧縮空気吹付手段によって玉ねぎに圧縮空気を吹き付けることで玉ねぎの表皮を玉ねぎ本体から吹き飛ばす。これにより、玉ねぎの皮むきが行なわれる。
【0004】
また、従来技術として、特許文献2に開示された玉ねぎの皮むき装置がある。この特許文献2に開示された皮むき装置においては、緩い傾斜で傾いており略横方向配置のコンベヤによって玉ねぎを搬送しながらその玉ねぎに対して両端部の切断を行い、さらに表面への切込みを行い、その後、コンベヤの後ろに設置された一対の回転ローラによって玉ねぎを回転させながら、空気吹付けノズルによって玉ねぎに空気を吹き付けることによって玉ねぎの皮むきを行うようにしている。
【0005】
しかしながら、上記の従来の皮むき装置においては、一対の回転ローラによって玉ねぎを回転させながら、圧縮空気を玉ねぎに吹き付けるだけであったので、1つの玉ねぎに対して短時間に十分な皮むきを行うことが難しかった。また、短時間に多量の玉ねぎに対して皮むきを行うことが難しかった。
【0006】
そこで、本願の発明者は、青果物調製機として、特許文献3に記載の玉ねぎ等の皮むき装置を発明した。この特許文献3に記載の皮むき装置は、玉ねぎ等を下から上の縦方向へ搬送するコンベヤと、当該コンベヤの後方位置に設けられており自らの中心線を中心として水平面内で回転移動するターンテーブルと、当該ターンテーブルの周方向に沿って設けられており玉ねぎ等を収容できる複数の筒状部材と、当該複数の筒状部材の内部へ空気を吹き付ける空気吹付手段と、を有しており、ターンテーブルはコンベヤの頂端部分の下方位置に水平状態で設けられており、複数の筒状部材はコンベヤの頂端部分から降下する玉ねぎ等を収容するようにターンテーブルと共に回転移動する。
【0007】
特許文献3に記載の皮むき装置によれば、ベルトコンベヤの頂端部分からターンテーブルへ向けて玉ねぎ等を降下させるので、玉ねぎ等の降下速度を有効に活用して、ベルトコンベヤからターンテーブルへ玉ねぎ等を安定して移送できる。また、この皮むき装置は、ベルトコンベヤが縦方向に立てて設けられているため、ターンテーブルの下方に広いスペースが確保され、必要に応じてこのスペースに、品質チェック用のコンベヤ等の必要な機器を設置できるという作用・効果も奏する(特許文献3の段落[0064]を参照)。また、この皮むき装置は、ベルトコンベヤが水平に又は低角で斜めに配置された皮むき装置(例えば、特許文献2を参照)に比べて、設置面積を抑えることができる。
【0008】
しかしながら、今般、品質チェック等を別所で行うために青果物調製機自体の設置空間はできるだけ抑えたいという小規模ユーザのニーズがあり、青果物調製機の更なるコンパクト化を図ることが求められている。その一方で、青果物調製機には、ユーザのニーズに応えることが可能な十分な処理能力を有することも必要とされている。そのため、これらコンパクト化と処理能力の確保との両立を図ることが可能な青果物調製機の開発が必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-089115号公報
【特許文献2】特公昭61-13794号公報
【特許文献3】特開2022-074602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザのニーズに応える処理能力を有しつつ、装置のコンパクト化により設置空間を抑えることができる青果物調製機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る青果物調製機(1)は、青果物(A)に対して第1処理を施す第1処理部(2)と、前記第1処理部(2)において前記第1処理が施された前記青果物(A)に対して第2処理を施す第2処理部(5)と、前記第1処理部(2)により処置された前記青果物(A)を前記第2処理部(5)に受け渡す受渡空間(S3)と、を備え、前記第1処理部(2)は、前記青果物(A)を把持可能な第1把持部(26)が周縁部(F)に複数設けられ、第1回転軸(22)回りで回転可能な第1回転体(20)と、前記第1把持部(26)により把持されている前記青果物(A)における非把持領域(UG)の少なくとも一部を切削する切削手段(30,40)と、を備え、前記第2処理部(5)は、前記切削手段(30,40)により処理された前記青果物(A)を把持可能な第2把持部(56)が周縁部(F)に複数設けられ、第2回転軸(52)回りで前記第1回転体(20)に同期して回転可能な第2回転体(50)と、前記第2把持部(56)により把持されている前記青果物(A)に対して流体を吹き付ける流体吐出ノズル(61)と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る青果物調製機によれば、ユーザのニーズに応える処理能力を有しつつ、装置のコンパクト化により設置空間を抑えることができる。
【0013】
また、本発明に係る青果物調製機(1)は、前記第2把持部(56)は、前記第2回転体(50)の回転方向に直交する方向に配設され、対向する2方向から前記青果物(A)を押さえて把持する一対の青果押え部(56a,56b)を備え、前記第2処理部(5)は、前記第2回転軸(52)に平行な、前記青果押え部(56a,56b)の中心軸(58)回りで、前記第2把持部(56)に把持された前記青果物(A)を自転させる青果物自転機構(65)を備え、前記流体吐出ノズル(61)は、前記第2回転軸(52)回りで公転しながら、前記中心軸(58)回りで自転する前記青果物(A)に対して、前記流体を吹き付けることが好ましい。このように構成すると、第2処理部において、第2把持部に把持された青果物の全周に対して、繰り返し流体を吹き付けることができる。また、前記青果物自転機構(65)は、前記第2回転体(50)を回転させる駆動力によって、前記青果物(A)を自転させることは、青果物(A)自転させるための追加のモータが不要であるので、より好ましい。また、前記第2回転体(50)を回転させる駆動力によって、前記青果物(A)を自転させるための好ましい構成は、前記青果物自転機構(65)は、前記青果押え部(56a)の前記中心軸(58a)に固定され、前記第2回転軸(52)回りで公転するピニオン(62)と、前記第2回転軸(52)を支持する枠体(16)に固定され、前記ピニオン(62)が噛み合って移動するラック(63)と、を備え、前記一対の青果押え部(56a,56b)は、前記ピニオン(62)が前記ラック(63)に噛み合って移動することによって、前記中心軸(58a)回りで自転し、前記一対の青果押え部(56a,56b)に把持された前記青果物(A)は、前記一対の青果押え部(56a,56b)と共に前記中心軸(58)回りで自転する構成である。
【0014】
また、本発明に係る青果物調製機は、前記流体吐出ノズル(61)は、前記複数の第2把持部(56)のそれぞれに対応させて、前記第2回転体(50)の周縁部(F)に複数設けられていることが好ましい。このように構成すると、青果物に対して流体を吹き付ける時間を長くすることができる。
【0015】
また、本発明に係る青果物調製機は、前記第1把持部(26)は、前記第1回転体(20)の回転方向に沿って配設され、前記青果物(A)を把持可能な一対の指部(26a,26b)を備え、前記一対の指部(26a,26b)の指の先端(28a,28b)は、前記把持状態において離隔されており、前記第1処理部(2)は、前記切削手段(30,40)として、前記把持状態の前記青果物(A)における前記一対の指部(26a,26b)の間の非把持領域(UG)の表面に切込み(B)を付ける切込み刃(32a)を備えることが好ましい。このように構成すると、青果物を確実に把持しつつ、皮むきを容易にする切込みを青果物に形成することができる。
【0016】
また、本発明に係る青果物調製機(1)は、開閉自在の扉(12)を有し、前記第1処理部(2)及び前記第2処理部(5)を収容する筐体(10)をさらに備え、前記扉(12)は、当該扉(12)を閉じた状態で前記筐体(10)の外部から前記第1把持部(26)に前記青果物(A)を投入可能な開口(12c)を備え、前記切込み刃(32a)は、前記扉(12)に設けられていることがより好ましい。このように構成すると、扉を閉じた状態で第1回転体の周辺に配置される切込み刃は、扉を開くことによって第1回転体から離れた位置に配置することができる。したがって、扉を開くことによって、第1回転体及び切込み刃の保守が容易になる。
【0017】
また、本発明に係る青果物調製機(A)は、前記流体吐出ノズル(61)は、前記切込み(B)に流体を作用させることによって、前記第2把持部(56)に把持されている前記青果物(A)の表皮を剥がすことが好ましい。このように構成することによって、切込みを起点に効果的に表皮を剥がすことができる。
【0018】
また、本発明に係る青果物調製機(1)は、前記第1把持部(26)は、前記青果物(A)における端部(AL,AR)を把持せず、前記第1処理部(2)は、前記切削手段(40)として、前記第1把持部(26)に把持されている前記青果物(A)における非把持領域(UG)である前記端部(AL,AR)を切断する切断刃(46)を備えることが好ましい。このように構成すると、青果物調製機は端部を切断除去する機能を備えることができる。端部が切断除去された青果物は、皮むきが容易になる。
【0019】
また、本発明に係る青果物調製機(1)は、前記受渡空間(S3)を通過した前記第2把持部(56)が所定時間後に通過する解放空間(S5)をさらに備え、前記第2把持部(56)は、前記端部(AL,AR)が前記切断刃(46)によって切断された前記青果物(A)の切断面に当接する当接面(57)を備え、前記第2処理部は、把持していた前記青果物(A)を前記解放空間(S5)において解放した前記第2把持部(56)の前記当接面(57)を洗浄する洗浄手段(66)を備えることが好ましい。このように構成すると、一対の青果押え部の当接面に付着した、青果物の切断面から染み出る汁を、把持していた青果物を解放するたびに洗い流すので、この当接面を清潔に保つことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る青果物調製機によれば、ユーザのニーズに応える処理能力を有しつつ、装置のコンパクト化により設置空間を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る青果物調製機の斜視図である。
図2】青果物調製機の背面図である。
図3】青果物調製機の主要部の左側面図である。
図4】青果物調製機の主要部の正面図である。
図5】青果物調製機の主要部の上面図である。
図6】青果物調製機の主要部の背面図である。
図7】青果物調製機の主要部の下面図である。
図8】青果物調製機における青果搬送手段の主要部を示す説明図である。
図9】青果物調製機における青果搬送手段が有する第1回転体の回転体本体の斜視図である。
図10】青果物調製機における青果搬送手段が有する第2回転体の回転体本体の斜視図である。
図11】青果物調製機における青果搬送手段が有する第1回転体の把持部の斜視図である。
図12】青果物調製機における青果搬送手段が有する第2回転体の把持ユニットの斜視図である。
図13】青果物調製機における青果搬送手段が有する第2回転体の把持部の青果物自転機構の斜視図である。
図14】青果物の一例である鱗茎菜類の玉ねぎの説明図である。
図15】青果物調製機の正面扉の内部構造の説明図である。
図16】青果物調製機の第1処理部が有する切込みユニットの正面図である。
図17】青果物調製機の第1処理部が有する端部切除ユニットの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において、「青果物」は、生鮮野菜と果実類の総称として用いている。また、本明細書において、「鱗茎」とは、地下茎の一種であり、短縮した茎の周囲に養分を貯えて厚くなった葉が多数重なって球形、楕円形、又は卵側をしたものをいう。また、「鱗茎菜」、「鱗茎菜類」、「鱗茎野菜」とは、「鱗茎」を食用とする野菜であって、例えば、玉ねぎ、ラッキョウ、ユリ根などをいう。また、本明細書において、「調製」とは、収穫した青果物を食するために行う処理の少なくとも一部をいう。また、「調製機」とは、収穫した青果物を食するために行う処理の少なくとも一部を自動で行う装置をいう。また、本明細書において、「回転体」とは、水車や観覧車を模した中心軸回りで回転する回転体であって、周縁に沿って複数の収容部を設けたものをいう。また、「二連回転体」又は「多連回転体」とは、「二連水車」又は「多連水車」を模したものであって、前段の「回転体」の収容部に収容されたものを後段の「回転体」に受け渡すことができるように、2つ又は複数の「回転体」を隣接して配置したものをいう。また、本明細書において、「切削」とは、刃物又は刃部を有する工具によって青果物を処理することであって、青果物に切込み又は溝等を形成すること、青果物の一部を切除すること、及び青果物を切り分けることなどをいう。
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明に係る青果物調製機の一実施形態の斜視図である。また、図2は、青果物調製機の背面図である。また、図3は、青果物調製機の主要部の左側面図である。図4は、青果物調製機の主要部の正面図である。図5は、青果物調製機の主要部の上面図である。図6は、青果物調製機の主要部の背面図である。図7は、青果物調製機の主要部の下面図である。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために、実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合、及び構成要素のうち後方の構成要素を割愛して示す場合がある。
【0024】
図1に示す青果物調製機1は、鱗茎菜類としての玉ねぎAの皮を剥がすことを主たる目的としている。この青果物調製機1は、玉ねぎAに対して切込み・端部切除を行う第1処理部2と、玉ねぎAの表皮を剥がす第2処理部5と、筐体10とを備える。
【0025】
筐体10は、第1処理部2と第2処理部5を内部に収容する筐体本体11と、筐体本体11の下方で筐体本体11を支持する脚部17を有する。筐体本体11の下方の脚部17で囲まれた下部スペース18は、筐体本体11の内部空間と連通している。したがって、この下部スペース18には、筐体本体11の内部空間から落下する切り屑などを回収する箱を置くことができる。また、この下部スペース18は、未処理又は処理済みの青果物を入れるための箱等の仮置き場とすることができる。
【0026】
図3及び図8に示すように、青果物調製機1において玉ねぎAを搬送する青果搬送手段Tは、2つの回転体からなる、二連水車を模した二連回転体である。図3及び図8における円弧の矢印は玉ねぎAの移動経路を示す。また、図3及び図8における破線の囲みは玉ねぎAの処理空間を示す。すなわち、受入空間S0で投入された玉ねぎAは、円弧の矢印で示す移動経路に沿って搬送されながら、S1~S4の処理空間において処理され、解放空間S5で解放され、青果物調製機1の外部に放出される。2つの回転体の回転速度は、電動モータ91の設定値により設定できる。例えば、2つの回転体は、12回転/分(5秒/1回転)の速度で同期して回転するように設定できる。図3において右側に、図8において左側に示す前段の回転体は、第1処理部2が有する回転体20(第1回転体)である。図3において左側に、図8において右側に示す後段の回転体は、第2処理部5が有する回転体50(第2回転体)である。
【0027】
青果物調製機1の主要部の左側面を示す図3を参照して、青果搬送手段Tの駆動系を説明する。回転体50の中心を貫通して設けられ、枠体16に回転可能に支持された回転軸52にギア53が設けられている。また、回転体20の中心を貫通して設けられ、枠体16に回転可能に支持された回転軸22にギア23が設けられている。青果搬送手段Tは、天面カバー14上に配置された電動モータ91を駆動源として回転する。電動モータ91の駆動力は、ギア92、チェーン93、及びギア94を介して、ギア53を回転させる。これによって、回転体50は、回転軸52回りで時計回りに回転する。電動モータ91の駆動力は、さらに、ギア53、ギア95、チェーン96を介して、ギア23を回転させる。これによって、回転体20は、回転軸22回りで反時計回りに回転する。
【0028】
図8に示すように、回転体20及び回転体50は、それぞれ、側面視が正五角形の回転体本体21及び回転体本体51を備える。回転体本体21は、図9に示すように、正五角形の各辺(周縁)に支持固定部(周縁部)Fを備える2枚の板状体21a,21bと、両板状体21a,21bを接続する所定の長さの5本の柱状体21cとを備える。同様に、回転体本体51は、図10に示すように、2枚の板状体51a,51bと、5本の柱状体51cとを備える。
【0029】
回転体20及び回転体50は、玉ねぎAを把持して搬送するために、それぞれ、把持部26(第1把持部)及び把持部56(第2把持部)を備える。把持部26及び把持部56は、それぞれ、所定の周回軌道(円軌道)を移動する。図11に示す把持部26は、回転体本体21の各辺の支持固定部Fに固定され、両板状体21a,21bに橋掛けするように配設されている。各把持部56は、流体吐出ノズル61及び傾斜板59(詳細は後述する)と共に一体化され、図12に示す把持ユニット55を構成する。把持ユニット55は、回転体本体51の各辺の支持固定部Fに固定され、両板状体51a,51bに橋掛けするように配設されている。
【0030】
把持ユニット55において、把持部56、流体吐出ノズル61、及び傾斜板59は、相互の配置及び配向が最適化されている。また、把持部56が有する青果押え部56aの中心軸58aの一端には、ピニオン62が設けられている。ピニオン62は、枠体16に固定された円弧状のラック63(図3図13を)と共に、把持部56に把持された玉ねぎAを自転させる青果物自転機構65を構成する。また、把持部26及び把持ユニット55の詳細は、それぞれ、第1処理部2及び第2処理部5の説明において述べる。
【0031】
図1に示すように、青果物調製機1の正面には、始動ボタン81a及び停止ボタン81bが設けられている。青果物調製機1では、メカニカルバルブ82及びメカニカルバルブ85によって、第1処理部2及び第2処理部5の動作を制御している。青果物の処理装置が設置される環境は、通常、清浄な環境ではない。また、処理される青果物は、土等が付着していることもある。また、青果物の処理装置は、放水によって内部を水洗できることが望ましい。このような事情を考慮して、青果物調製機1は、電子的制御ではなく、メカニカルバルブによる制御を採用している。
【0032】
第1処理部2の動作を制御するメカニカルバルブ82は、回転体20の回転軸22の一端に固定されている(図4図5図7を参照)。したがって、メカニカルバルブ82は、回転体20とともに回転する。メカニカルバルブ82は、回転体20の各把持部26に対応する複数の送気制御バルブを有する。各送気制御バルブは、各把持部26を駆動させるエアシリンダ83(図8を参照)への圧縮空気の送気を制御する。各送気制御バルブは、対応する把持部26の周回軌道上の位置に応じて開閉されるように構成されている。具体的には、把持部26の周回軌道上の位置に対応させて設けられた押圧部材(不図示)が送気制御バルブの作動部(不図示)を押し込むことによって、送気制御バルブは開く。また、押圧部材が作用しない位置まで把持部26が回転すると、送気制御バルブは閉じる。
【0033】
第2処理部5の動作を制御するメカニカルバルブ85は、回転体50の回転軸52の一端に固定されている(図4図7を参照)。したがって、メカニカルバルブ85は、回転体50とともに回転する。メカニカルバルブ85は、回転体50の各把持ユニット55に対応する複数の2種の送気制御バルブと、洗浄ノズル66への送液を制御する送液制御バルブを有する。
【0034】
一方の各送気制御バルブは、各把持ユニット55が有する把持部56を駆動させるエアシリンダ(不図示)への圧縮空気の送気を制御する。他方の各送気制御バルブは、各把持ユニット55が有する流体吐出ノズル61への圧縮空気の送気を制御する。各送気制御バルブは、対応する把持ユニット55の周回軌道上に位置に応じて開閉されるように構成されている。各把持ユニット55に対応する送気制御バルブの具体的な構成は、各把持部26に対応する送気制御バルブと同様である。
【0035】
洗浄ノズル66は、玉ねぎAを解放した把持部56の当接面57に向けて水を吐出する。したがって、洗浄ノズル66への送液を制御する送液制御バルブは、いずれかの把持部56が洗浄ノズル66による洗浄空間に到来するタイミングに合わせて開閉するように構成されている。
【0036】
青果物調製機1は、作業者が投入した玉ねぎAを、上記のように構成された青果搬送手段Tにより搬送しながら、玉ねぎAに対して、切込みの形成、端部の切除、及び表皮の剥離の処理を施す。切込みの形成及び端部の切除は、第1処理部2において行われる。、図14に示すように、玉ねぎAの表面に切込みBが形成され、切断線Cに沿って葉側端部AL及び根側端部AR(両端部)が切除される。後述するように、円盤カッタ46の間隔、すなわち、切断線Cの位置は、玉ねぎAの寸法に応じて自動的に調節される。
【0037】
次に、筐体本体11、第1処理部2、及び第2処理部5の詳細を順次説明する。
【0038】
[筐体本体]
まず、図1及び図2を参照して、筐体本体の具体例について説明する。筐体本体11は、開閉自在の正面扉12と、着脱自在の左右の側面カバー13と、天面カバー14と、開閉自在の背面扉15と、枠体16とを備える。図1及び図2において、枠体16は、表出している部分のみが示されている。枠体16には、正面扉12、側面カバー13、天面カバー14、及び背面扉15が支持、固定されるとともに、第1処理部2及び第2処理部5が有する部材が支持、固定される。
【0039】
筐体本体11の正面扉12は、開閉自在に筐体本体11の枠体16に設けられている。すなわち、正面扉12の左右端のいずれか一方は蝶番によって枠体16に接続され、他方はスナップ錠によって枠体16に接続されている。また、正面扉12は、未処理の玉ねぎAを青果物調製機1に作業者が投入するための開口12cを有する。また、正面扉12は、上部膨出部12a及び下部膨出部12bを有する。作業者は、投入部12d(下部膨出部12bにおける開口12c)において未処理の玉ねぎAを投入することができる。上部膨出部12aは、下部膨出部12bよりも手前に膨出しており、この内部(内側)に玉ねぎAに切込みを形成する切込みユニット30が設けられている(図15を参照)。後述するように、切込みユニット30は、青果物の切込み・端部切除(切削)を行う第1処理部2の一部を構成する。
【0040】
筐体本体11の背面扉15は、開閉自在に筐体本体11の枠体16に設けられている。すなわち、背面扉の左右端のいずれか一方は蝶番によって枠体16に接続され、他方はスナップ錠によって枠体16に接続されている。また、背面扉15は、第2処理部5で処理された青果物を放出するための放出口15aと、放出口15aに接続されたシュータ15bを備える。シュータ15bは、処理済みの玉ねぎAを青果物調製機1近傍に配置する回収容器に案内するための案内手段である。シュータ15bは、直接回収容器に玉ねぎAを回収した場合に、玉ねぎAがダメージがほぼ生じない程度の高さに設けられている。また、シュータ15bは、回収容器に案内するための別のシュータをシュータ15bに接続した場合に、玉ねぎAが自重で転げ落ちることができる程度の高さに設けられている。
【0041】
筐体本体11の底面には、カバーが設けられていない。したがって、筐体本体11内の第1処理部2及び第2処理部5に注水し水洗する場合、水は筐体本体11内に溜まることなく底面から放出される。したがって、第1処理部2及び第2処理部5の水洗及び水洗後の乾燥が容易に行え、第1処理部2及び第2処理部5を清潔に保つことができる。筐体本体11の底面にカバーを設けてもよいが、その場合は第1処理部2及び第2処理部5の水洗水が容易に放出できるように、カバーに排水ユニットを設ける。
【0042】
[第1処理部]
次に、図3図9図11、及び図14図17を参照して、第1処理部2の具体例について説明する。第1処理部2は、第1処理部2内での処理のために玉ねぎAを搬送する第1回転体20と、玉ねぎAの少なくとも一部を切削する切削手段を備える。第1処理部2が備える具体的な切削手段は、玉ねぎAの表面に切込みBを付ける切込みユニット30と、玉ねぎAの両端部AL,AR(図14を参照)を切除する端部切除ユニット40である。第1回転体20、切込みユニット30、及び端部切除ユニット40の具体例を順次説明する。
【0043】
〔第1処理部の回転体〕
回転体20は、皮むき処理の対象である玉ねぎAを、第1処理部2内での処理のために搬送する。図9に示すように、回転体20は、側面視が正五角形の回転体本体21を備える。回転体20は、水車や観覧車を模した、中心軸回りで回転する回転体である。回転体本体21は、図9に示すように、正五角形の各辺に支持固定部Fを備える2枚の板状体21a,21bと、両板状体21a,21bを接続する所定の長さの5本の柱状体21cとを備える。
【0044】
回転体20は、玉ねぎAを把持して搬送するために、把持部26を備える。図11に示す把持部26は、回転体本体21の各辺の支持固定部Fに固定され、両板状体21a,21bに橋掛けするように配設されている。すなわち、図8に示すように、回転体20は、その周縁に沿って5つの把持部26が等間隔に設けられている。
【0045】
青果物調製機1の主要部の左側面を示す図3を参照して、回転体20の駆動を説明する。枠体16に回転可能に支持された回転軸22は、両板状体21a,21bの中心を貫通して、回転体本体21に接続されている。回転軸22には、回転軸22を回転させる駆動力を伝達するためのギア23が設けられている。電動モータ91からの駆動力は、ギア92、チェーン93及びギア94を介して、回転体50の回転軸52に設けたギア53を時計回りに回転させる。そして、電動モータ91の駆動力は、さらに、ギア53、ギア95、チェーン96を介して、回転体20の回転軸22に設けたギア23を回転させる。これによって、回転体20は、回転体50と同期して回転軸22回りで反時計回りに回転する。
【0046】
各把持部26は、回転体本体21の回転方向に沿って、玉ねぎAを把持可能な一対の指部26a,26bを備える。図8及び図11を参照して把持部26の細部を説明する。指部26a,26bは、指の基端27(27a,27b)が回転軸22の近位に、指の先端28(28a,28b)が回転軸22の遠位になるように設けられている。指部26aは、エアシリンダ83(図8を参照)によって、基端27aにおいて固定軸29a回りで枢動される。エアシリンダ83は、これへの空気の供給を制御するメカニカルバルブ82によって制御される。指部26aの基端27aに設けられたギア27cは、指部26bの基端27bに設けられたギア27dと噛み合うように構成されている。したがって、指部26aの基端27aが固定軸29a回りで回転すると、指部26bの基端27bは固定軸29b回りで、基端27aとは逆方向に回転する。指の先端28a,28bの間隔が縮小する方向に両指部26a,26bが枢動することによって、指部26a,26bは玉ねぎAを把持することができる。また、指の先端28a,28bの間隔が拡大する方向に両指部26a,26bが枢動することによって、指部26a,26bは把持している玉ねぎAを解放することができる。作業者が未処理の玉ねぎAを投入することができる正面扉12の開口12cに対向する空間(「受入空間S0」)を通過するとき、指の先端28a,28bの間隔が最大の状態(「全開状態」)になるように、両指部26a,26bは枢動する。
【0047】
指部26aは、互いに平行に離隔して配置された2つの指26,26を有する。作業者は、全開状態で受入空間S0を移動する指部26aの2つの指26,26に未処理の玉ねぎAを載置することによって、未処理の玉ねぎAを投入できる。作業者は、玉ねぎAの両端部AL,ARが回転体20の左右方向(回転軸22に平行な方向)になるように、指部26aに玉ねぎAを載置する。そして、把持部26は、受入空間S0通過後に、指部26a及び指部26bの両指の先端28a,28bの間隔を縮小させることによって、玉ねぎAを把持する。把持部26は、玉ねぎAを把持しているとき、指26、指26、及び指26によって玉ねぎAを3点支持する。把持部26に把持されている玉ねぎAの表面には、指部26a及び指部26bの両指の先端28の間に、把持されない領域(「非把持領域UG」)が存在する。
【0048】
回転体本体21が回転することによって、5つの把持部26は、受入空間S0、切込み空間S1、端部切除空間S2、及び受渡空間S3を経由する周回軌道(円軌道)を移動する。5秒で1回転するように、回転体本体21の回転速度が設定された場合、受入空間S0には把持部26が1回/秒の頻度で到来する。切込み空間S1には、上部膨出部12aの内側に切込みユニット30を有する正面扉12(図15を参照。)が完全に閉じられることによって、玉ねぎAに切込みBを形成する切込みユニット30が配置される(図3図5を参照)。端部切除空間S2には、玉ねぎAの端部を切断する端部切除ユニット40が配設されている(図3図5を参照)。受渡空間S3では、第1処理部2による処置が完了した玉ねぎAが第2処理部5に受け渡される。装置稼働中、各把持部26はこの周回軌道上の移動を繰り返す。各把持部26の周回軌道の内、受入空間S0から受渡空間S3の間の円弧経路が、回転体20による玉ねぎAの移動経路となる。
【0049】
回転体20の各把持部26は、回転体50の対応する1つの把持部56と同期して、受渡空間S3を通過する。受渡空間S3では、把持部26が把持していた玉ねぎAを解放するのとほぼ同時に、第2把持部56が玉ねぎAを把持する。これによって、玉ねぎAは把持部26から第2把持部56に受け渡される。そして、玉ねぎAを解放した把持部26は、受入空間S0に至るまでに全開状態になる。
【0050】
〔切込みユニット〕
図3~5、図8図11、及び図14図16を参照して、切込みユニット30を説明する。切込みユニット30は、切込み空間S1に移動してきた玉ねぎAに、図14に示す切込みBを形成する。切込みユニット30は、図15に示すように、正面扉12の上部膨出部12aの内部(内側)に設けられている。切込みユニット30は、正面扉12を完全に閉じた状態で、回転体20による玉ねぎAの移動経路上の切込み空間S1に配置される。
【0051】
切込みユニット30を図15及び図16に示す。切込みユニット30は、3つの切込み機構31(左切込み機構31a、右切込み機構31b、及び中央切込み機構31c)を有している。各切込み機構31は、アーム先端32bに切込み刃32aを有するアーム32を備える。アーム32は、アーム基端32cにおいて枢動可能に回転軸33に軸支されている(図15を参照)。
【0052】
左切込み機構31a及び右切込み機構31bは、左右対称の構成を有している。左切込み機構31a及び右切込み機構31bは、正面扉12を完全に閉じた状態で、図4及び図5に示すように、回転体20の中央線CLを境に対称に配置される。左切込み機構31a及び右切込み機構31bのアーム基端32cは、回転体20の左右方向の外側に配置される。一方、中央切込み機構31cは、アーム32が中央線CLに沿うように配置される。図4図5、及び図16に示す動作前の状態では、3つの切込み機構31のアーム先端32bは、互いに最も近接して配置される。また、左切込み機構31a及び右切込み機構31bの切込み刃32aは、回転体20の中央線CLを境に隣接するように、配置される。
【0053】
アーム32は、回転体20の回転方向に押圧されると、動作前の状態から押圧に応じて枢動する。また、アーム32は、動作前の状態に復帰するように、バネ34によって付勢されている。したがって、3つの切込み機構31のアーム32は、バネ34による付勢力を上回る押圧力で回転体20の回転方向に押圧されると、押圧に応じて枢動する。この枢動によって、左切込み機構31a及び右切込み機構31bのアーム先端32bは、中央線CLから遠ざかるように左右に移動する。また、中央切込み機構31cのアーム先端32bは、中央線CLに沿って回転方向に移動する。
【0054】
把持部26は、切込み空間S1において、3つの切込み機構31と対向する玉ねぎAの表面領域が把持されないように(非把持領域UGとなるように)、玉ねぎAを把持する。回転する回転体20に把持された玉ねぎAが、バネ34による付勢力に抗して、左切込み機構31a及び右切込み機構31bのアーム先端32bを押圧すると、アーム先端32bが有する切込み刃32aは、玉ねぎAの表面に沿って、中央線CLから遠ざかるように左右に移動する。アーム32がバネ34によって付勢されているので、左右に移動する切込み刃32aは、玉ねぎAの非把持領域UGの表面に、中央線CLに直交する方向に、中央線CLを境に対称の切込みBを形成する。一方、中央切込み機構31cのアーム先端32bの切込み刃32aは、中央線CLに沿って回転方向に移動するので、中央線CLに沿った切込みBを非把持領域UGの表面に形成する。
【0055】
回転体20がさらに回転し、玉ねぎAによるアーム32に対する第1回転方向の押圧力が減衰し、バネ34による付勢力を下回ると、アーム32は動作前の状態に戻るように枢動する。アーム32は動作前の状態に戻る過程ではアーム32が有する切込み刃32aは、玉ねぎAの表面に当接しない。したがって、切込みユニット30によって玉ねぎAの表面に形成される切込みBは、図14に図示したようなものになる。
【0056】
以上で説明したように、3つの切込み機構31は、これ自体にモータ等の駆動源を有しない。したがって、切込みユニット30は、正面扉12の上部膨出部12aの内部(内側)にコンパクトに配置できる。そして、装置の稼働時において3つの切込み機構31の奥側に配置される部材は、正面扉12を全開すれば切込みユニット30に邪魔されることなく、容易にアクセスできるので、保守が容易である。
【0057】
また、切込み刃32aによって、玉ねぎAの非把持領域UGの表面に、切込みBが形成される。切込みBが形成された玉ねぎAは、回転体本体21の回転軸22回りで公転しながら、回転体20によって受渡空間S3に搬送される。受渡空間S3において、切込みBが所定方向に配向した状態の玉ねぎAが第2処置部5の回転体50に引き渡される。回転体50に引き渡された玉ねぎAは、後述するように、流体吐出空間S4において、中央線CLに沿って公転しながら、把持部56が有する一対の青果押え部56a,56bの中心軸58回りで約6回自転する。一方、回転体50に設けた流体吐出ノズル61の先端は中央線CLに沿って公転する。したがって、中央線CLを境に対称の切込みBは、少なくとも5回、流体吐出ノズル61からの圧縮空気が吹き付けられる。また、圧縮空気の吹き付けによって切込みBが伸展した場合、切込みBの進展した部分にも圧縮空気が吹き付けられる。したがって、流体吐出空間S4において、流体吐出ノズル61から吐出された圧縮空気(流体)は、切込みBに向けて効果的に吹き付けられる。
【0058】
〔端部切除ユニット〕
図3図5図8図11図14、及び図17を参照して、端部切除ユニット40について説明する。玉ねぎAの移動経路上の端部切除空間S2に、端部切除ユニット40が設けられている。端部切除ユニット40は、図5において、回転体20の中央線CLを境として左右2つの切除機構41(41a,41b)を有している。図17(端部切除ユニット40の上面図)に示すように、これらの切除機構41aと切除機構41bは、左右対称の構成を有しており、構成部品は互いに同じである。
【0059】
切除機構41は可動フレーム42を有している。可動フレーム42は、筐体本体11の枠体16に固定された直線ガイド43に沿って左右方向へ所定の範囲で平行移動可能である。また、左右の可動フレーム42は、それぞれ、端部切除空間S2内を移動する玉ねぎAの移動経路上に設けられ、移動する玉ねぎAと当接する板状の当接部42aを有する。左右の当接部42aは、円盤カッタ46側に行くほど互いの距離が縮まるように設けられている。また、図17に示すように可動フレーム42にはバネ44の一方端が接続されている。バネ44の他方端は枠体16に接続されている。これにより、左右の可動フレーム42は、中央線CLへ向かう方向、すなわち互いに近づく方向へ付勢されている。
【0060】
したがって、端部切除空間S2内の玉ねぎAの移動によって、当接部42aが回転方向に押圧されると、左右の可動フレーム42は、互いの間隔を拡大する方向に左右に押圧される。左右の可動フレーム42に対する押圧力がバネ44による付勢力を上回っている間、可動フレーム42は、互いの間隔を拡大するように平行移動する。すなわち、可動フレーム42は、玉ねぎAの両端方向の大きさに応じて平行移動する。
【0061】
図17において、カッタ主軸45は、自身の中心軸線を中心として回転自在に可動フレーム42に支持されている。カッタ主軸45の先端に切断刃としての円盤カッタ46が取付けられている。円盤カッタ46は硬質で薄い金属製のカッタである。カッタ主軸45はギヤ列47を介して電動モータ48と連結されている。これにより、電動モータ48が回転すると、ギヤ列47を介して動力が円盤カッタ46へ伝えられ、円盤カッタ46が反時計回りに回転する。
【0062】
図17において、円盤カッタ46の回転中心は上方から見て、玉ねぎAの中心よりも前方に位置している。従って、回転する回転体20に把持された玉ねぎAの一端が円盤カッタ46に到来するまでの間に、可動フレーム42に支持されている円盤カッタ46は、可動フレーム42の平行移動に連動して、平行移動する。このとき、左右の円盤カッタ46は、玉ねぎAの両端部AL,AR以外を残すように移動する。玉ねぎAが円盤カッタ46に到来すると、図14に示すように、玉ねぎAの両端部AL,ARが円盤カッタ46によって切断線Cに沿って切断される。円盤カッタ46が両端部AL,ARを切断している間は、可動フレーム42は移動しない。
【0063】
玉ねぎAは、回転体20の回転によって、回転する円盤カッタ46に対して押し付けられながら切断される状態となる。このとき、玉ねぎAは、指部26aが有する2つの指と、指部26bが有する1つの指によって3点支持されているので、円盤カッタ46に対して安定して押し付けられる。
【0064】
円盤カッタ46が両端部AL,ARの切断を終えると、円盤カッタ46に対する押圧力がなくなる。したがって、左右の円盤カッタ46及び可動フレーム42は、玉ねぎAの両端を切断する前の位置に復帰する。
【0065】
筐体本体11の下方の脚部17で囲まれた下部スペース18は、筐体本体11の内部空間と連通している。したがって、下部スペース18に回収箱を設置することによって、玉ねぎAの切断された両端部AL,ARは、回収箱に落下し回収される。
【0066】
以上で説明したように、端部切除空間S2内の玉ねぎAの移動によって、左右の可動フレーム42の間隔が拡大し、これに連動して、左右の円盤カッタ46の間隔も拡大する。左右の可動フレーム42は、玉ねぎAの大きさに応じて、間隔を拡大するので、玉ねぎAの大きさが変化する場合でも、切断線Cよりも外側の切除幅を一定に揃えることができる。
【0067】
[第2処理部]
次に、図2~3、図5図8図10、及び図12図14を参照して、第2処理部5の具体例について説明する。第2処理部5は、第2処理部5内での処理のために玉ねぎAを搬送する回転体50と、ピニオン62及びラック63からなる、把持部56の青果物自転機構65(図13を参照)と、第1処理部2で処理された玉ねぎAに流体を作用させる流体吐出機構60を備える。回転体50、青果物自転機構65、及び流体吐出機構60の具体例を順次説明する。
【0068】
〔第2処理部の回転体〕
回転体50は、皮むき処理の対象である玉ねぎAを、第2処理部5内での処理のために搬送する。図8に示すように、回転体50は、側面視が正五角形の回転体本体51を備える。回転体50は、水車や観覧車を模した中心軸回りで回転する回転体である。回転体50は、回転体本体51(第2回転体本体)と、把持部ユニット55(図12図13を参照)を備える。回転体本体51は、図10に示すように、正五角形の各辺(周縁)に支持固定部Fを備える正五角形の2枚の板状体51a,51bと、両板状体51a,51bを接続する所定の長さの5本の柱状体51cとを備える
【0069】
回転体50は、玉ねぎAを把持して搬送するために、把持部56を有する把持ユニット55を備える。図12及び図13に示す把持ユニット55は、把持部56と、これに対応する傾斜板59及び流体吐出ノズル61と、を一体化したものである。把持ユニット55は、回転体本体51の各辺の支持固定部Fに固定され、両板状体51a,51bに橋掛けするように配設されている。すなわち、図8に示すように、回転体50は、その周縁に沿って5つの把持ユニット55が等間隔に設けられている。
【0070】
把持ユニット55において、把持部56と、これに対応する流体吐出ノズル61及び傾斜板59の相互の配置及び配向が、支持固定部Fに取り付けられる前に最適化されている(図12を参照)。傾斜板59と流体吐出ノズル61の間に把持部56が配置されている。把持ユニット55は、回転体本体51の回転軸52の回りで公転する。また、把持部56が有する一対の青果押え部56a,56bは、その中心軸58(58a,58b)回りで自転する。把持部56、流体吐出ノズル61、及び傾斜板59は、ユニットとなっているので、保守の際の取付け、取外しが簡単に行える。
【0071】
各把持ユニット55が有する把持部56は、回転体本体51の回転軸52に平行に、玉ねぎAを把持可能な一対の青果押え部56a,56bを備える。図12に示すように、青果押え部56a及び青果押え部56bは、それぞれ、玉ねぎAと当接する当接面57を有する。青果押え部56a及び青果押え部56bは、それぞれの当接面57が対向するように、回転体50の中央線CLを境に左右対称に設けられている(図6を参照)。両当接面57の間隔が縮小することによって、把持部56は玉ねぎAを把持することができる。また、両当接面57の間隔が拡大することによって、把持部56は把持している玉ねぎAを解放することができる。両当接面57の間隔の拡大及び縮小は、エアシリンダ(不図示)が青果押え部56a,56bを進退させることによって行われる。このエアシリンダは、エアシリンダへの空気の供給を制御するメカニカルバルブ85によって制御される。
【0072】
また、青果押え部56a及び青果押え部56bは、それぞれ、複数の軸受58cによって支持された中心軸58a及び中心軸58bを有する(図12図13を参照)。すなわち、青果押え部56a及び青果押え部56bは、それぞれ、中心軸58a及び中心軸58b回りで、複数の軸受58cによって、回転自在(自転可能)に支持されている。そして、把持部56が玉ねぎAを把持した状態では、青果押え部56a及び青果押え部56bは、中心軸58a及び中心軸58b回りで、共に回転する。中心軸58aはピニオン62を有する。ピニオン62は、流体吐出空間S4において玉ねぎAを自転させる青果物自転機構65の一部を構成する。すなわち、把持部56の青果押え部56a,56bは、流体吐出空間S4を玉ねぎAを把持した状態で移動すると、青果物自転機構65によって中心軸58回りで自転する。
【0073】
各把持ユニット55が有する傾斜板59は、対応する把持部56から、回転体50の回転方向とは逆方向に所定距離離隔して設けられている。各傾斜板59は、把持部56と一体化されているので、把持部56が移動する周回軌道を、把持部56に追従して移動する。第2処理部5による処置が完了した玉ねぎAが解放空間S5において把持部56から解放されると、解放された玉ねぎAは、傾斜板59上に落下し、転がって、背面扉15の放出口15aに案内される。回転体50に設けられた傾斜板59を経て、シュータ15bが設けられた放出口15aに案内されるので、青果物調製機1から放出される際の玉ねぎAに対するダメージは、抑えられる。また、玉ねぎAに対するダメージを一層抑えるために、回収容器に案内する別のシュータをシュータ15bに接続することもできる。シュータ15bは、別のシュータにおいて玉ねぎAが自重で転げ落ちることができる程度の高さに設けられている。
【0074】
青果物調製機1の主要部の左側面を示す図3を用いて、回転体20の駆動を説明する。枠体16に回転可能に支持された回転軸52が、回転体本体51の中心を貫通して接続されている。回転軸52には、回転軸52を回転させる駆動力を伝達するためのギア53が設けられている。電動モータ91からの駆動力は、ギア92、チェーン93及びギア94を介して、回転体50の回転軸52に設けたギア53を時計回りに回転させる。そして、電動モータ91の駆動力は、さらに、ギア53、ギア95、チェーン96を介して、回転体20の回転軸22に設けたギア23を回転させる。これによって、回転体20は、回転体50と同期して、回転軸22回りで反時計回りに回転する。
【0075】
回転体本体51が回転することによって、各把持部56は、受渡空間S3、流体吐出空間S4、及び解放空間S5を経由する周回軌道(円軌道)を移動する。5秒で1回転するように回転体本体51の回転速度が設定された場合、解放空間S5には把持部56が1回/秒の頻度で到来する。流体吐出空間S4では、把持部56に引き渡された玉ねぎAに、流体吐出ノズル61から圧縮空気が吹き付けられる。装置稼働中、各把持部56はこの周回軌道上の移動を繰り返す。各把持部56の周回軌道の内、受渡空間S3から解放空間S5の間の円弧経路が、回転体50による玉ねぎAの移動経路となる。また、回転体50の各把持部56は、回転体20の対応する1つの把持部26と同期して、受渡空間S3を通過する。
【0076】
解放空間S5を通過するとき、各把持部56の両当接面57の間隔が最大の状態(「全開状態」)になるように、両青果押え部56a,56bが後退する。両当接面57の間隔が全開状態になることによって、第2処理部5による処置が完了した玉ねぎAが把持部56から解放される。解放された玉ねぎAは、把持部56から周方向に所定距離離隔して設けられている傾斜板59に落下し、傾斜板59を転がって、背面扉15の放出口15aから青果物調製機1の外部に放出される。
【0077】
全開状態の把持部56は、受渡空間S3において、第1処理部2による処置が完了した玉ねぎAを、把持部26が解放するのとほぼ同時に把持する。このとき、把持部56は、両端部AL,ARが切除された玉ねぎAの両切断面に両当接面57を当接させ、2方向から押圧することによって、玉ねぎAを把持する。把持部56に引き渡された玉ねぎAの表面には、両当接面57の間に、把持されない領域(「非把持領域UG」)が存在する。玉ねぎAの表面には、この非把持領域UGに剥がされるべき表皮が残っている。この表皮は、玉ねぎAが解放空間S5に達するまでに(流体吐出空間S4を移動する間に)、流体吐出ノズル61から吹き付けられる圧縮空気によって剥がされる。
【0078】
〔青果物自転機構〕
図3図6図8図12、及び図13を参照して、青果物自転機構65について説明する。青果物自転機構65は、流体吐出空間S4において、一対の青果押え部56a,56bの中心軸58回りで玉ねぎAを自転させるために設けられている。青果物自転機構65は、ピニオン62、ラック63、及び噛合せ調節機構64から構成されている。
【0079】
把持部56を構成する青果押え部56aが有する中心軸58aは、複数の軸受58cによって、回転自在に支持されている。把持部56の一部である中心軸58aは、回転体50の回転によって、回転軸52回りで公転する。ピニオン62は、その回転中心が中心軸58aの回転中心に一致するように、中心軸58aに設けられている。したがって、ピニオン62は、回転体50の回転によって、すなわち、回転体50を回転させる駆動力によって、回転軸52回りで公転するとともに、中心軸58a回りで回転する(自転する)。
【0080】
ラック63は、流体吐出空間S4に沿って配設されるように、枠体16に固定されている。ラック63の一方端は流体吐出空間S4の始点(受渡空間S3側)に配設され、他方端は流体吐出空間S4の終点(解放空間S5側)に配設されている。すなわち、ラック63は、流体吐出空間S4においてのみ青果物が自転するように、円弧状である(図3を参照)。ラック63の外周縁に歯部が設けられている。ラック63は、円弧の中心がピニオン62の公転の中心と一致している。また、ラック63の曲率及び歯部のピッチは、公転するピニオン62の歯部と噛み合うように、調整されている。また、図7に示すように、ラック63の幅がピニオン62の厚み(幅)に比べて十分に大きい。玉ねぎAの寸法に応じて、青果押え部56aの中心軸58方向の位置が変動し、ピニオン62の位置が変動しても、ピニオン62はラック63上を移動することができる。したがって、回転軸52回りで公転するピニオン62は、ラック63上を自転しながら移動する。
【0081】
ピニオン62が自転することによって、中心軸58aを共通する青果押え部56aも自転する。把持部56が玉ねぎAを把持した状態では、青果押え部56a及び青果押え部56bは、中心軸58a及び中心軸58b回りで、共に回転する。したがって、流体吐出空間S4を移動する把持部56に把持された玉ねぎAは、回転体50の回転によって、すなわち、回転体50を回転させる駆動力によって、回転軸52回りで公転するとともに中心軸58回りで自転する。ラック63の外周の長さは、ピニオン62の外周の長さの約6倍である。したがって、把持部56に把持された玉ねぎAは、流体吐出空間S4を移動する間に約6回自転する。
【0082】
流体吐出空間S4の始点に到来したときのピニオン62の各歯の向きによっては、ピニオン62がラック63に噛み合い難い場合がある。場合によっては、ピニオン62又はラック63の歯部が噛み合いの不整合によって損傷する虞がある。この問題を解消するために、青果物自転機構65は、噛合せ調節機構64を備える。ラック63の一方端付近の曲率及び歯部のピッチは、ピニオン62の歯が噛み合い易いように、噛合せ調節機構64によって調節される。図3及び図13を参照して噛合せ調節機構64を説明する。
【0083】
噛合せ調節機構64は、被引張部64aと、バネ64bと、バネ64bの両端を係止する2つの係止部64cを有する。被引張部64aは、ラック63の一方端付近の内周縁側に接続されている。被引張部64aは、ラック63の外周縁にほぼ沿って配置された辺と、この辺に対して傾斜した辺を有する。一方の係止部64cは、被引張部64aに設けられている。他方の係止部64cは、ラック63の一方端から所定距離離隔された位置に設けられている。
【0084】
バネ64bは、被引張部64aに張力を付与するように、2つの係止部64cに係止されている。ラック63において、被引張部64aが接続された部分は、バネ64bによって引っ張られる。その結果、被引張部64aが接続された部分の曲率は他の部分よりも小さくなる。また、この部分の歯部のピッチは、歯がラック63の一端側に傾くように、広がる。したがって、流体吐出空間S4の始点に到来したときのピニオン62の各歯の向きに依らず、ラック63はピニオン62を受け入れることができる。
【0085】
〔流体吐出機構〕
図3図6図8、及び図12を参照して、流体吐出機構60について説明する。流体吐出機構60は、各把持ユニット55が有する流体吐出ノズル61と、青果押え部56a,56bの当接面57を洗浄する洗浄ノズル66を備える。
【0086】
把持ユニット55において、流体吐出ノズル61の基端は、対応する把持部56から、回転体50の回転方向に所定距離離隔して設けられている(図8を参照)。また、流体吐出ノズル61は、その先端が対応する把持部56に向くように、斜めに設置されている(図8及び図12を参照)。各流体吐出ノズル61は、把持部56が移動する周回軌道を、把持部56と共に移動する。
【0087】
各流体吐出ノズル61は、図8に示すように、流体吐出空間S4を移動するとき、その先端が下方又は斜め下方に配向するように把持ユニット55に設けられている。回転体50に引き渡された玉ねぎAは、流体吐出空間S4において、中央線CLに沿って回転軸52回りで公転しながら、把持部56の中心軸58回りで約6回自転する。一方、回転体50に設けた流体吐出ノズル61の先端は中央線CLに沿って公転する。したがって、中央線CLを境に対称の切込みBは、少なくとも5回、流体吐出ノズル61からの圧縮空気が吹き付けられる。また、圧縮空気の吹き付けによって切込みBが伸展した場合、切込みBの伸展した部分にも圧縮空気が吹き付けられる。したがって、流体吐出ノズル61は、流体吐出空間S4を搬送される玉ねぎAの切込みBに向けて、効果的に圧縮空気を吹き付ける。切込みBに吹き付けられた圧縮空気は、切込みBを起点に玉ねぎAの表皮を剥がす。
【0088】
流体吐出空間S4において、流体吐出ノズル61は、その先端が下方又は斜め下方に配向する。また、流体吐出空間S4は、図8に示すように、筐体本体11の下部の空間である。そして、筐体本体11の下部は、筐体本体11の下方の脚部17で囲まれた下部スペース18と直接連通している。したがって、下部スペース18に回収箱を配置することによって、玉ねぎAの剥がされた表皮は、回収箱に落下し効果的に回収される。すなわち、剥がされた表皮の青果物調製機1周辺への飛散を抑えられる。
【0089】
洗浄ノズル66は、解放空間S5において玉ねぎAを解放した青果押え部56a,56bの両当接面57を洗浄するために設けられている。洗浄ノズル66は、図6の主要部背面図に示すように、回転体50の中央線CLを境に左右対称に2つ設けられている。洗浄ノズル66は、水等の洗浄液を両当接面57に吹き付けることによって、両当接面57を洗浄する。両当接面57は、両端部AL,ARが切除された玉ねぎAの両切断面に当接され、押圧されるので、切断面から染み出る汁が付着する。洗浄ノズル66が玉ねぎAを解放した直後の両当接面57に洗浄液を吹き付けて、玉ねぎAの汁などを洗い流すので、両当接面57は清潔に保たれる。
【0090】
流体吐出ノズル61及び洗浄ノズル66からの流体の吐出は、メカニカルバルブ85によって制御される。メカニカルバルブ85は、回転体50を貫通して延在する回転軸52に接続されているので、回転軸52の回りで、回転体50と同期して回転する。
【0091】
メカニカルバルブ85が有する各送気制御バルブは、対応する把持ユニット55の周回軌道上の位置に応じて開閉されるように構成されている。各把持ユニット55が流体吐出空間S4を移動するとき、対応する送気制御バルブが開くことによって、把持ユニット55が有する流体吐出ノズル61に圧縮空気が送られる。流体吐出ノズル61から吐出される圧縮空気は、自転しながら移動する玉ねぎAに吹き付けられる。
【0092】
メカニカルバルブ85が有する送液制御バルブは、いずれかの把持ユニット55が洗浄ノズル66による洗浄空間に到来するタイミングに合わせて開閉するように構成されている。解放空間S5において玉ねぎAを解放した把持部56が洗浄空間に到来すると、送液制御バルブが開き、水が洗浄ノズル66に送られる。洗浄ノズル66から吐出される水は、洗浄空間を通過する把持部56の当接面57に吹き付けられる。
【0093】
[青果物調製機の動作]
作業者は、青果物調製機1の正面扉12に向かい合わせに待機する。作業者が始動ボタン81aを操作すると、青果搬送手段Tが始動するとともに、圧縮空気及び水がメカニカルバルブ82,85に供給される。青果搬送手段Tの前段を構成する回転体20は、正面扉12側から見て下から上に動く。青果搬送手段Tの後段を構成する回転体50は、背面扉15側から見て下から上に動く。
【0094】
作業者は、投入部12dから、受入空間S0を移動する把持部26の指部26aに1つの未処理の玉ねぎAを載せる。このとき、作業者は、玉ねぎAの両端部AL,ARが回転体20の左右方向になるようにする。把持部26が1回/秒の頻度で受入空間S0に到来するように、回転体20及び回転体50の回転速度が設定された場合、最大で3600個/時の玉ねぎAが青果物調製機1に投入可能である。玉ねぎAが載置された把持部26は、受入空間S0通過後に、指部26a及び指部26bの指の先端28の間隔を縮小させることによって、玉ねぎAを把持する。
【0095】
玉ねぎAは、図8において、時計回りに回転する回転体20によって搬送され、切込みユニット30が配置された切込み空間S1に到来する。切込み空間S1において、玉ねぎAは、その非把持領域UGを3つの切込み機構31のアーム先端32bに対向させて、アーム先端32bの相互の間隔を押し広げながら移動する。アーム32が動作前の状態に復帰するようにバネ34によって付勢されているので、玉ねぎAの表面には、アーム先端32bの切込み刃32aによって、図14に示すように、切込みBが形成される。玉ねぎAが切込み空間S1を通り抜けると、アーム32は、3つの切込み機構31のアーム先端32bが互いに最も近接して配置される動作前の状態に復帰する。
【0096】
切込みBが形成された玉ねぎAは、回転体20によって搬送され、端部切除ユニット40が配置された端部切除空間S2に到来する。端部切除空間S2において、玉ねぎAは、左右の切除機構41a,41bの可動フレーム42の相互の間隔を押し広げながら移動する。左右の可動フレーム42は、玉ねぎAの両端方向の寸法に応じて平行移動する。左右の可動フレーム42には、それぞれ、左右の円盤カッタ46のカッタ主軸45が、回転自在に支持されている。したがって、左右の円盤カッタ46の間隔は、玉ねぎAの両端部AL,AR以外を残すように調節される。そして、間隔が調節された左右の円盤カッタ46によって、玉ねぎAの両端部AL,ARが切断される。
【0097】
両端部AL,ARが切断された玉ねぎAは、回転体20によって搬送され、受渡空間S3に到来する。回転体20の把持部26が受渡空間S3に到来するタイミングに合わせて、第2処理部5の回転体50の把持部56の1つが全開状態で受渡空間S3に到来する。この把持部56は、受渡空間S3において、把持部26が玉ねぎAを解放するのとほぼ同時に把持する。このとき、把持部56は、玉ねぎAの両端の切断面に、青果押え部56a及び青果押え部56bの両当接面57を押し当てることによって、玉ねぎAを把持する。このようにして、第1処理部2による処置が完了した玉ねぎAは、第2処理部5に受け渡される。
【0098】
受渡空間S3において受け渡された玉ねぎAは、回転体50によって搬送され、流体吐出空間S4に到来する。この玉ねぎAの表面には、非把持領域UGに剥がされるべき表皮が残っている。この玉ねぎAは、流体吐出空間S4を移動している間、把持部56の中心軸58回りで約6回自転する。自転している玉ねぎAには、流体吐出ノズル61から圧縮空気が吐出される。玉ねぎAの切込みBには、流体吐出ノズル61から吐出された圧縮空気が繰り返し吹き付けられる。切込みBに吹き付けられた圧縮空気は、切込みBを起点に玉ねぎAの表皮を剥がす。
【0099】
流体吐出空間S4において表皮が剥がされた玉ねぎAは、回転体50によって搬送され、解放空間S5に到来する。解放空間S5に到来すると、把持部56は把持していた玉ねぎAを解放する。解放された玉ねぎAは、把持部56に対応する傾斜板59上に落下し、転がって、背面扉の放出口15aに案内される。そして、この玉ねぎAは、背面扉15の放出口15aから放出され、シュータ15bによって青果物調製機1近傍に配置される回収容器に案内される。把持部26が1回/秒の頻度で受入空間S0に到来するように、回転体20及び回転体50の回転速度が設定された場合、玉ねぎAは、正面扉12の投入部12dから投入されてから約7秒経過後に放出口15aから放出される。
【0100】
解放空間S5において把持部56が玉ねぎAを解放すると、この把持部56の両当接面57に向けて洗浄ノズル66が水を吹き付ける。これによって、両当接面57に付着した玉ねぎAの汁などを洗い流される。両当接面57は、玉ねぎAを解放するたびに洗浄されるので、清潔に保たれる。両当接面57が洗浄された把持部56は、再び、受渡空間S3に移動する。
【0101】
[その他の実施形態]
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0102】
例えば、青果物は玉ねぎに限られない。他の鱗茎菜類の表皮を剥くこと、又は両端部もしくは一端部を切断することを目的とする場合は、実施形態で示した青果物調製機をそのままで、或いは鱗茎菜類の寸法に応じた適宜の調節又は改良を行うことで使用できる。また、根菜類の両端部もしくは一端部を切断することを目的とする場合も、青果物調製機1をそのままで、或いは根菜類の寸法に応じた適宜の調節又は改良を行うことで使用できる。
【0103】
また、例えば、青果搬送手段は、二連回転体に限らず、青果物に対する処理の数に応じて、3つ以上の回転体を連動させる多連回転体とすることができる。
【0104】
また、例えば、切込み形成は、中央切込み機構を省き、左右の切込み機構のみとすることができる。中央切込み機構に形成される切込みによって、圧縮空気の吹き付け時間が短くても表皮を確実に剥がすことができるので、中央切込み機構を設けることは望ましい。しかしながら、左右の切込み機構のみでも、回転体の回転速度を遅くして圧縮空気の吹き付け時間を長くすれば、表皮を確実に剥がすことができる。
【0105】
また、例えば、切込み形成と端部切除の順序は、逆にしてもよい。その場合、切込みユニット及び端部切除ユニットは、両者を第1処理部に設けてもよいし、切込みユニットを第2処理部に設けてもよい。切込み形成を先に行うことによって切込みユニットを正面扉に設置することが可能になる。切込みユニットを正面扉に設置することによって、青果物調製機のコンパクトが図れることは、上述のとおりである。また、切込みユニット及び端部切除ユニットは、いずれか一方又は両方を省いてもよい。また、切込みユニット及び端部切除ユニットに代えて、他の処理が可能なユニットを第1処理部に設けてもよい。
【0106】
また、例えば、流体吐出ノズルから吐出する流体は、圧縮空気等のガスに限らない。吐出する流体は、水にしてもよい。青果物が表皮を剥くことが不要なもの(例えば、ユリ根)である場合、流体吐出ノズルから水を吐出して、青果物の表面を水洗するようにしてもよい。
【0107】
また、例えば、青果物自転機構は省くことができる。青果物自転機構を省いても、回転体の回転速度を遅くすれば、青果物自転機構を設けたときと同等の時間、青果物に流体を吹き付けることができる。
【0108】
また、例えば、円弧状のラックに代えて、リング状のラックを用いることができる。この場合、一対の青果押え部は、流体吐出ノズルからの流体の吐出の有無に係わらず自転することになる。
【0109】
また、青果物自転機構は、ラックとピニオンの組合わせに代えて、一対の青果押え部の中心軸を回転させる他の機構を用いることができる。他の機構としては、第2回転体を回転させる駆動力を用いる機構、又は追加の電動モータを用いる機構を採用することができる。第2回転体を回転させる駆動力を用いる他の機構としては、例えば、第2回転の回転軸に設けたプーリーと、青果押え部の中心軸に設けたプーリーとに無端ベルトを掛けた構成を採用できる。また、追加の電動モータを用いる機構としては、例えば、一対の青果押え部の中心軸に直結した追加の電動モータや、追加の電動モータとその駆動力を伝達する手段(プーリー、ギア、無端ベルトなどを含む)からなる構成を採用できる。
【0110】
例えば、回転体本体は、側面視が正五角形のものに限らない。正五角形のものに代えて、円形、又は他の正多角形のものを用いることができる。正多角形のものは、支持固定部を平坦面にでき、把持部等の取付が行い易くなるので、好ましい。また、正多角形は、処理空間の数に応じた辺を有するものを選択することが好ましい。このような正多角形を選択すると、処理に係わらない把持部の数を最小限にとどめることができる。処理に係わらない把持部の数を最小限にとどめると、回転体の大きさを最小にすることができ、青果物調製機のコンパクト化を図ることができる。
【0111】
例えば、青果物調製機の制御は、メカニカルバルブに代えて、電子制御システムによって行うこともできる。電子制御システムは、例えば、コンピュータやシーケンサなどの電子制御部と、各把持部の位置などを検出するための複数のセンサと、電子制御部からの指示に応答するバルブ等から構成される。電子制御システムを採用する場合、青果物調製機の設置環境や扱う青果物によっては、防塵対策や汚損対策を施すことが望ましい。
【0112】
また、例えば、青果物の投入頻度に応じて円盤カッタを駆動させる電動モータの動作を変更できるようにしてもよい。高頻度(例えば、1~2秒に1個の頻度)で青果物を投入する場合には、円盤カッタを駆動させる電動モータは、青果物調製機の稼働中常時回転させる。一方、低頻度(例えば、5秒に1個の頻度)で青果物を投入する場合には、消費電力を抑えるために、青果物が端部切除空間に到来したときに、円盤カッタを駆動させる電動モータを回転させる。また、投入できる青果物の最大量が少ない青果物調製機では、青果物が端部切除空間に到来したときのみに、円盤カッタを駆動させる電動モータを回転させるように構成することもできる。
【0113】
また、例えば、回転体の把持部は、エアシリンダにより動作するものに限らず、電動モータなどで動作するものでもよい。また、把持ユニットは、傾斜板を備えなくてもよい。その場合、解放空間の位置は、筐体本体の下部空間に青果物を放出可能な設けることが好ましい。また、把持ユニットに設ける流体吐出ノズルは、1つに限らず、複数でもよい。
【0114】
また、例えば、貯留部に収容された青果物を正面扉の投入部に自動的に供給する自動供給機構を設けることができる。自動供給機構は、青果物の配向を調節する手段と、投入部への青果物の供給タイミングを、投入部への把持部の到来に同期させる供給タイミング調節手段を備えることが望ましい。
【0115】
また、例えば、青果物における切断面を把持する把持部において、青果物の滑り落ちを防ぐために、当接面に突起が設けてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 青果物調製機
2 第1処理部
5 第2処理部
10 筐体
11 筐体本体
12 正面扉
12a 上部膨出部
12b 下部膨出部
12c 開口
12d 投入部
13 側面カバー
14 天面カバー
15 背面扉
15a 放出口
15b シュータ
16 枠体
17 脚部
18 下部スペース
20,50 回転体
21,51 回転体本体
21a,21b,51a,51b 板状体
21c,51c 柱状体
22,29a,29b,33,52 回転軸
23,27c,27d,53,92,94,95 ギア
26,56 把持部
26a,26b 指部
27,27a,27b 指の基端
28,28a,28b 指の先端
30 切込みユニット
31 切込み機構
31a 左切込み機構
31b 右切込み機構
31c 中央切込み機構
32 アーム
32a 切込み刃
32b アーム先端
32c アーム基端
34,44,64b バネ
40 端部切除ユニット
41,41a,41b 切除機構
42 可動フレーム
43 直線ガイド
45 カッタ主軸
46 円盤カッタ(切断刃)
47 ギヤ列
48,91 電動モータ
55 把持ユニット
56a,56b 青果押え部
57 当接面
58,58a,58b 中心軸
58c 軸受
59 傾斜板
60 流体吐出機構
61 流体吐出ノズル
62 ピニオン
63 ラック
64 噛合せ調節機構
64a 被引張部
64c 係止部
65 青果物自転機構
66 洗浄ノズル(洗浄手段)
81a 始動ボタン
81b 停止ボタン
82,85 メカニカルバルブ
83 エアシリンダ
93,96 チェーン
A 玉ねぎ(青果物)
AL 葉側端部(端部)
AR 根側端部(端部)
B 切込み
C 切断線
CL 中央線
F 支持固定部(周縁部)
S0 受入空間
S1 切込み空間
S2 端部切除空間
S3 受渡空間
S4 流体吐出空間
S5 解放空間
T 青果搬送手段
UG 非把持領域
図1
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