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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131268
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】オートバイ用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B62J 27/20 20200101AFI20240920BHJP
   B60R 21/16 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B62J27/20
B60R21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041433
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】夫馬 真
(72)【発明者】
【氏名】土生 優
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 公史
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA07
3D054AA08
3D054AA12
3D054CC03
3D054EE19
3D054EE30
(57)【要約】
【課題】オートバイの乗員の拘束性能を向上させることができる、オートバイ用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、オートバイに搭載されるエアバッグ装置であって、膨張ガスを発生するガス発生器と;前記膨張ガスによって膨張展開することで、乗員の前方への移動を拘束するエアバッグクッションと;を備える。そして、前記エアバッグクッションは、乗員の下肢を拘束する下肢保護用クッションを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートバイに搭載されるエアバッグ装置であって、
膨張ガスを発生するガス発生器と;
前記膨張ガスによって膨張展開することで、乗員の前方への移動を拘束するエアバッグクッションと;を備え、
前記エアバッグクッションは、乗員の下肢を拘束する下肢保護用クッションを含むことを特徴とするオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記下肢保護用クッションは、少なくとも乗員の膝部を拘束するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記下肢保護用クッションは、主に乗員の右膝周辺を拘束する右チャンバと、主に乗員の左膝周辺を拘束する左チャンバとを含むことを特徴とする請求項2に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記右チャンバと前記左チャンバは、左右に離れて設けられることを特徴とする請求項3に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記下肢保護用クッションは、シートの高さと概ね一致する高さに設けられ、乗員の脚部に向かって膨張展開するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグクッションは、乗員の頭部を保護する頭部保護用クッションを含むことを特徴とする請求項1乃至5何れか1項に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項7】
前記下肢保護用クッションは、前記頭部保護用クッションよりも早く膨張展開を開始するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項8】
前記頭部保護用クッションは、オートバイのハンドル近傍から上方に向かって膨張展開するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項9】
前記下肢保護用クッションと前記頭部保護用クッションは、各々独立して膨張展開するように構成され、
前記ガス発生器は、前記下肢保護用クッションと前記頭部保護用クッションとで、別々に設けられていることを特徴とする請求項7に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項10】
前記エアバッグクッションは、前記下肢保護用クッションと前記頭部保護用クッションとを連結するダクトを含み、
当該ダクトを介して、前記下肢保護用クッションと前記頭部保護用クッションの一方から他方にガスが流れ込むように構成されていることを特徴とする請求項7に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項11】
前記下肢保護用クッションと、前記頭部保護用クッションと、前記ダクトとは、一体的に形成されていることを特徴とする請求項10に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項12】
前記ガス発生器は、前記下肢用クッションの内部に配置されることを特徴とする請求項11に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項13】
前記ダクトと前記下肢保護用クッションとの境界部の近傍と、前記ダクトと前記頭部保護用クッションとの境界部の近傍の少なくとも一方には、ガスの逆流を防止する逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項11に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項14】
前記逆止弁は、前記下肢保護用クッションから前記頭部保護用クッションへのガスの流入を許容するが、前記頭部保護用クッションから前記下肢保護用クッションへのガスの流入を阻止するように構成されていることを特徴とする請求項13に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【請求項15】
前記オートバイは、乗員が足を揃えて乗ることができるスクータータイプであることを特徴とする請求項1に記載のオートバイ用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートバイに搭載されるオートバイ用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車(4輪)においては、事故発生時に乗員を保護するために、1つまたは複数のエアバッグを装備することは標準的になりつつある。同様に、オートバイ(2輪車)にエアバッグ装置を搭載することが、提案され、実用化されている。
【0003】
自動車に搭載されるエアバッグ装置においては、ステアリングホイールやインストルメントパネル等を展開したエアバッグの支持面(反力面)として利用することができるため、エアバッグの展開挙動及び展開姿勢を安定させることが比較的容易である。
【0004】
他方、オートバイに搭載されるエアバッグは、展開したエアバッグを支持する部分が少なく、エアバッグの展開挙動、展開姿勢を安定させることが課題である。また、通常オートバイの乗員は、シートベルトのような手段によって車体に拘束させず、衝突の形態や乗車姿勢によって乗員が投げ出される方向が不規則となる。このため、オートバイの乗員を適切に拘束、保護することが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、オートバイの乗員の拘束性能を向上させることができる、オートバイ用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、オートバイに搭載されるエアバッグ装置であって、膨張ガスを発生するガス発生器と;前記膨張ガスによって膨張展開することで、乗員の前方への移動を拘束するエアバッグクッションと;を備える。そして、前記エアバッグクッションは、乗員の下肢を拘束する下肢保護用クッションを含む。
【0007】
本発明は、あらゆるタイプのオートバイに適用可能である。例えば、スクーター、アドベンチャー、ツアラー、スポーツツアラー、スクラブラー、クラシック(レトロ)、アメリカン(クルーザー)、ネイキッド、ストリートファイター、オフロード・スーパーモタード、スーパースポーツ、ストリート、ミニバイク等が含まれる。特に、スクータータイプのオートバイに最適である。
【0008】
前記下肢保護用クッションは、少なくとも乗員の膝部を拘束するように形成することが好ましい。
【0009】
オートバイが正面衝突した場合、乗員が前方に投げ出されるように移動するが、下肢に着目すると、膝部分が最も前方に突出しているため、下肢保護用クッションによって乗員の膝をいち早く拘束することができる。
【0010】
前記下肢保護用クッションは、主に乗員の右膝周辺を拘束する右チャンバと、主に乗員の左膝周辺を拘束する左チャンバとを含むことができる。
【0011】
前記右チャンバと前記左チャンバは、左右に離れて配置・形成することができる。
【0012】
前記下肢保護用クッションは、シートの高さと概ね一致する高さに設けられ、乗員の脚部に向かって膨張展開する構成とすることができる。通常、オートバイに乗っている乗員の膝は、シートの高さと概ね一致する高さに位置するためである。
【0013】
前記エアバッグクッションは、乗員の頭部を保護する頭部保護用クッションを含むことができる。
【0014】
前記下肢保護用クッションは、前記頭部保護用クッションよりも早く膨張展開を開始する構造とすることが好ましい。
【0015】
オートバイが衝突すると、最初に乗員の膝が前に移動した後、少し遅れて頭部が前方に投げ出されるように移動する。このため、下肢保護用クッションに加えて、頭部保護用クッションを設けることにより、衝突初期の段階で乗員の下肢を速やかに拘束するとともに、乗員の頭部を適切に拘束することができる。
【0016】
前記頭部保護用クッションは、オートバイのハンドル近傍から上方に向かって膨張展開する構造とすることができる。
【0017】
前記下肢保護用クッションと前記頭部保護用クッションは、各々独立して膨張展開するように構成され、前記ガス発生器は、前記下肢保護用クッションと前記頭部保護用クッションとで、別々に設けることができる。
【0018】
下肢保護用クッションと頭部保護用クッションとを別々に展開させることにより、展開速度、展開挙動を最適に制御することが可能となる。
【0019】
前記エアバッグクッションは、前記下肢保護用クッションと前記頭部保護用クッションとを連結するダクトを含み、当該ダクトを介して、前記下肢保護用クッションと前記頭部保護用クッションの一方から他方にガスが流れ込むように構成することができる。
【0020】
前記下肢保護用クッションと、前記頭部保護用クッションと、前記ダクトとは、一体的に形成することができる。
【0021】
前記ガス発生器は、前記頭部保護用クッション又は下肢保護用クッションの内部に配置することができる。頭部保護用クッションの内部にガス発生器を配置した場合には、比較的容量の大きな頭部保護用クッションに対して多くのガスを速やかに流し込むことができる。一方、下肢保護用クッションの内部にガス発生器を配置した場合には、より早く下肢保護用クッションを展開させることができる。
【0022】
前記ダクトと前記下肢保護用クッションとの境界部の近傍と、前記ダクトと前記頭部保護用クッションとの境界部の近傍の少なくとも一方には、ガスの逆流を防止する逆止弁を設けることができる。
【0023】
前記逆止弁は、前記下肢保護用クッションから前記頭部保護用クッションへのガスの流入を許容するが、前記頭部保護用クッションから前記下肢保護用クッションへのガスの流入を阻止するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1実施例に係るオートバイ用エアバッグ装置を搭載したオートバイを示す側面図である。
図2図2は、本発明の第1実施例に係るエアバッグのパネル形状を示す平面図である。
図3図3は、本発明の第1実施例に係るエアバッグが展開した状態を示す正面図であり、(A)が2つのエアバッグを別々に示し、(B)が実際に乗員側から観察した様子をる。
図4図4(A),(B)は、本発明の第1実施例に係るエアバッグが展開した状態を示す側面図であり、(A)が衝突直後(展開初期)、(B)がその後(展開後期)の状態を示す。
図5図5は、本発明の第2実施例に係るオートバイ用エアバッグ装置を搭載したオートバイを示す側面図である。
図6図6は、本発明の第2実施例に係るエアバッグのパネル形状を示す平面図である。
図7図7(A)は、本発明の第2実施例に係るエアバッグが展開した状態を示す正面図であり、(B)が変形例である。
図8図8(A),(B)は、本発明の第2実施例に係るエアバッグが展開した状態を示す側面図であり、(A)が衝突初期、(B)が衝突中期の状態を示す。
図9図9は、本発明の第2実施例に係るエアバッグが展開した状態を示す側面図であり、衝突後期の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るオートバイ用エアバッグ装置について、添付図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明において、オートバイの進行方向を「前方」、その反対方向を「後方」と称し、座標の軸を示すときは「前後方向」と言う。また、進行方向に対して右側を「右方向」、左側を「左方向」と称し、座標の軸を示すときは「左右方向」と言う。更に、垂直上方を「上方」、垂直下方を「下方」と称し、座標の軸を示すときは「上下方向」と言う。
【0026】
(第1実施例)
図1は、本発明の第1実施例に係るオートバイ用エアバッグ装置を搭載したオートバイを示す側面図である。図2は、本発明の第1実施例に係るエアバッグのパネル形状を示す平面図である。図3は、本発明の第1実施例に係るエアバッグが展開した状態を示す正面図であり、(A)が2つのエアバッグを別々に示し、(B)が実際に乗員側から観察した様子を示す。
【0027】
本実施例に係るエアバッグ装置(12,14)は、膨張ガスを発生するガス発生器12b,14bと;膨張ガスによって膨張展開することで、乗員Rの前方への移動を拘束するエアバッグクッション12a,14aと;を備える。エアバッグクッション12a,14aは、主に乗員Rの下肢を拘束する下肢保護用クッション12aと、主に乗員Rの頭部を拘束する頭部保護用クッション14aを含む。なお、図1において符号16は風防(ウィンドシールド、カウリングを含む)を示し、符号20はハンドルを示す。
【0028】
図1に示すように、下肢保護用エアバッグユニット12は、オートバイ10のシートと概ね同一の高さ又は若干下側に配置され、車体構造部の内部に収容される。一方、頭部保護用エアバッグユニット14は、車体の前端部近傍に収容され、頭部保護用クッション14aが上方に向かって展開するように構成されている。
【0029】
図2に示すように、下肢保護用クッション12aは、同一形状の2枚のパネル22a,22bの外縁を縫製することによって形成される。乗員R側のパネル22aの上縁近傍には、インフレータ12b(図3)を挿入するための開口である挿入口22cが形成されている。パネル22a,22bは、下方の幅が広くなるような形状であり、少なくとも乗員Rの左右の膝を受け止めるに十分な面積を有するように形成される。なお、2枚のパネル22a,22bの間には、複数(例えば、3枚)のテザーを設け、前後方向の展開幅を規制することができる。
【0030】
頭部保護用クッション14aは、同一形状の2枚のパネル24a,24bの外縁を縫製することによって形成される。乗員R側のパネル24aの下端近傍には、インフレータ14b(図3)を挿入するための開口である挿入口24cが形成されている。パネル24a,24bは、上方に向かって徐々に幅が広くなるような、団扇のような形状であり、乗員Rの頭部を確実に受け止めるに十分な面積を有するように形成される。なお、2枚のパネル24a,24bの間には、複数(例えば、3枚)のテザーを設け、前後方向の展開幅を規制することができる。
【0031】
図3(A)は、下肢保護用クッション12aと頭部保護用クッション14aとを便宜上分離して示しているが、実際の位置関係とは異なる。乗員Rから見ると下肢保護用クッション12aと頭部保護用クッション14aは、図3(B)のようになる。図3(B)において、オートバイ10の構造部については省略して示すものとする。
【0032】
図3(B)において、下肢保護用クッション12aの符号Ln,Rnは、乗員Rの左右の膝が接すると想定される箇所を示す。また、頭部保護用クッション14aの符号HD、乗員Rの頭部が接すると想定される箇所を示す。
【0033】
図4(A),(B)は、本発明の第1実施例に係るエアバッグが展開した状態を示す側面図であり、(A)が衝突直後(展開初期)、(B)がその後(展開後期)の状態を示す。
【0034】
本実施例に係るオートバイ10が、壁に対して正面衝突した場合を考える。衝突が発生した時、又は衝突の可能性が検知された時、インフレータ12b,14bから膨張ガスが、それぞれ、下肢保護用クッション12aと頭部保護用クッション14aに供給される。この時、下肢保護用クッション12aの方が頭部保護用クッション14aよりも容量が小さいため、下肢保護用クッション12aが先に展開することになる。なお、下肢保護用エアバッグユニット12のインフレータ12bを、頭部保護用エアバッグユニット14のインフレータ14bよりも早く作動させるような制御を行うことで、より確実に下肢保護用クッション12aを先行して展開させることが可能となる。
【0035】
衝突初期の段階では、図4(A)に示すように、乗員Rが慣性によって前方に移動を開始し、最初に膝が下肢保護用クッション12aに拘束される。仮に、オートバイ10がエアバッグを備えていない場合、乗員Rの下肢が車体に衝突するタイミングは約40msであるため、それより早く下肢保護用クッション12aが展開する必要がある。
【0036】
続いて、図4(B)に示すように、乗員Rが前方にダイブするように移動すると、乗員Rの頭部は頭部保護用クッション14aによって拘束・保護される。頭部保護用クッション14aは、衝突後約80msよりも早い時期にフル展開することが好ましい。
【0037】
本実施例においては、衝突発生初期の段階で下肢保護用クッション12aによって乗員Rの膝部周辺を拘束するため、下肢傷害値を低減できる。また、下肢保護用クッション12aによって乗員Rの運動エネルギーを吸収することができ、乗員Rの頭部が頭部保護用クッション14aに進入した時に、乗員頭部の移動速度が低減されていることとなる。その結果、乗員Rの頭部傷害値を効率よく低減させることが可能となる。
【0038】
(第2実施例)
図5は、本発明の第2実施例に係るオートバイ用エアバッグ装置を搭載したオートバイを示す側面図である。図6は、本発明の第2実施例に係るエアバッグのパネル形状を示す平面図である。図7(A)は、本発明の第2実施例に係るエアバッグが展開した状態を示す正面図であり、(B)が変形例である。
【0039】
本実施例は、上述した第1実施例と共通する部分多いため、対応する構成要素には同一の参照符号を付し、重複した説明は省略する。本実施例に係るエアバッグ装置112の特徴は、頭部保護用クッションと下肢保護用クッションとを一体的に形成したことである。
【0040】
図6に示すように、エアバッグクッション120は2枚の同一形状のパネル122a,122bの外縁を縫製によって連結することで形成される。図6に加えて、図7及び図8を参照すると分りやすいが、エアバッグクッション120をチャンバ単位で見ると、乗員Rの下肢を保護する下肢保護用クッション124と、乗員Rの頭部を保護する頭部保護用クッション126と、これら下肢保護用クッション124と頭部保護用クッション126とを連結するダクト128とを含んでいる。
【0041】
パネル122aの下部領域124aとパネル122bの下部領域124bとによって、下肢保護用クッション124が形成される。パネル122aの上部126aとパネル122bの上部126とによって、頭部保護用クッション26が形成される。また、パネル122aの中間領域128aとパネル122bの中間領域128bとによって、ダクト128が形成される。
【0042】
ダクト128の頭部保護用クッション126寄りの位置には、インフレータ132を挿入するための開口としての挿入口122cが形成されている。インフレータ132は、この挿入口122cから、ダクト128の内部に挿入され、固定される。なお、挿入口122cを下肢保護用クッション124よりに形成し、インフレータを下肢保護用クッション124の内部に配置することもできる。
【0043】
頭部保護用クッション126とダクト128との境界近傍には、逆止弁130が設けられている。逆止弁130は、パネル122aの弁パネル130aとパネル122bの弁パネル130bを縫製によって連結することで形成される。逆止弁130は、下肢保護用クッション124から頭部保護用クッション126の方向へのガスの流入を許容し、逆に頭部保護用クッション126から下肢保護用クッション124の方向へはガスの流入(逆流)は阻止するように構成されている。なお、逆止弁130は、ダクト128の中間位置や、下肢保護用クッション124とダクト128との境界部分の近傍に配置することもできる。
【0044】
図7(B)に示すように、下肢保護用クッション224は、左右に分割された右チャンバ224Rと、左チャンバ224Lとを有する形状とすることができる。なお、このような変形例は、上述した第1実施例にも適用可能である。このように、下肢保護用クッション224を分離したチャンバ224R,224Lで構成することで、同じ容量のクッションで左右の拘束範囲を広くすることができる。また、好ましい位置にクッションを配置することができるというメリットがある。特に、両脚を揃えて乗るスクータータイプではなく、燃料タンクを両脚の間に挟んで乗るようなタイプのオートバイにおいては、乗員Rの両膝の間隔が広くなるため有効となる。
【0045】
図8(A),(B)は、本発明の第2実施例に係るエアバッグが展開した状態を示す側面図であり、(A)が衝突初期、(B)が衝突中期の状態を示す。図9は、本発明の第2実施例に係るエアバッグが展開した状態を示す側面図であり、衝突後期の状態を示す。
【0046】
本実施例に係るオートバイ10が、壁に対して正面衝突した場合を考える。衝突が発生した時、又は衝突の可能性が検知された時、図8(A)に示すように、インフレータから膨張ガスが、頭部保護用クッション126に供給されると同時に、ダクト128を介して下肢保護用クッション124に供給される。この時、下肢保護用クッション124の方が頭部保護用クッション126よりも容量が小さいため、下肢保護用クッション124が先に展開することになる。
【0047】
衝突中期の段階では、図8(B)に示すように、乗員Rが慣性によって前方に移動を開始し、最初に膝が下肢保護用クッション124に拘束される。仮に、オートバイ10がエアバッグを備えていない場合、乗員Rの下肢が車体に衝突するタイミングは約40msであるため、それより早く下肢保護用クッション124が展開する必要がある。このとき、エアバッグ内部の逆止弁130は開いた状態であり、下肢保護用クッション124から頭部保護用クッション126にガスが流入し、頭部保護用クッション126が速やかに展開できるようになっている。頭部保護用クッション126は、衝突後約80msよりも早い時期にフル展開することが好ましい。
【0048】
続いて、図9に示すように、乗員Rが前方にダイブするように移動すると、乗員Rの頭部は頭部保護用クッション126によって拘束・保護される。ここで、乗員Rの頭部が頭部保護用クッション126に進入すると、頭部保護用クッション126の内圧が高くなり、逆止弁130が閉じた状態となり、頭部保護用クッション126から下肢保護用クッション124へのガスの逆流が防止される。そのため、頭部保護用クッション126の内圧の低下が阻止され、当該クッション126の内圧を高い状態に維持することができる。
【0049】
本実施例よれば、エアバッグクッションが一体構造であり、インフレータも単一のものを使用することができるため、上述した第1実施例の効果に加えて、装置構成の簡素化、低コスト化が期待される。
【0050】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9