(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131270
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20240920BHJP
E02F 3/36 20060101ALI20240920BHJP
B05B 3/02 20060101ALI20240920BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20240920BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
E02F3/36 A
B05B3/02 Z
B05B12/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041438
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】新開 光
(72)【発明者】
【氏名】木村 正樹
【テーマコード(参考)】
2D012
2E176
4F033
4F035
【Fターム(参考)】
2D012DA02
2E176DD64
4F033PA04
4F033PB09
4F033PD01
4F033PD02
4F035AA01
4F035BA21
4F035BB32
4F035BC01
(57)【要約】
【課題】放水ノズルの向きを容易に変更することができる作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、走行体1と、走行体1の上側に旋回可能に設けられた旋回体2と、旋回体2の前側に連結された作業装置3と、作業装置3に配置された放水ノズル18と、放水ノズル18の回動を指示するノズル操作装置26と、ノズル操作装置26の指示に応じて放水ノズル18を回動するノズルモータ23とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、互いに回動可能に連結された少なくとも1つの連結部材及びアタッチメントを有し、前記車体に連結された作業装置と、前記作業装置に配置された放水ノズルとを備えた作業機械において、
前記放水ノズルの回動を指示するノズル操作装置と、
前記ノズル操作装置の指示に応じて前記放水ノズルを回動するノズルモータとを備えたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記連結部材の回動角を検出する第1の回動角センサと、
前記放水ノズルの回動角を検出する第2の回動角センサと、
前記ノズルモータを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記ノズル操作装置の指示がない場合に、前記第1及び第2の回動角センサの検出結果に基づき、前記アタッチメントの水平位置での前記放水ノズルから放出された水の放水先の鉛直位置が変化しないように、前記ノズルモータを制御することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放水ノズルを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、高所の解体作業(詳細には、建造物を破砕装置で破砕する作業)が行える作業機械を開示する。この作業機械は、走行可能な走行体と、走行体の上側に旋回可能に設けられた旋回体と、旋回体の前側に連結された作業装置とを備える。作業装置は、旋回体の前部に回動可能に連結されたブームと、ブームを回動するブームシリンダと、ブームの先端部に回動可能に連結されたセカンドブームと、セカンドブームを回動するセカンドブームシリンダと、セカンドブームの先端部に回動可能に連結されたアームと、アームを回動するアームシリンダと、アームの先端部に回動可能に連結された破砕装置と、リンク機構を介し破砕装置を回動するシリンダとを備える。
【0003】
特許文献1の作業機械は、水を拡散するように放出する放水ノズルを更に備える。放水ノズルは、上述したリンク機構に配置されているので、破砕装置の回動に連動して回動する。すなわち、放水ノズルの向きが破砕装置の向きに追従する。放水ノズルから破砕装置に向けて水を放出することにより、破砕装置の位置で生じた粉塵が飛散するのを抑えることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、作業機械の作業を中断して、リンク機構に対する放水ノズルの取付角度を変更すれば、放水ノズルの向きを変更可能である。しかし、作業機械の作業中、放水ノズルの向きを容易に変更することができない。
【0006】
作業機械の作業中、破砕装置の位置だけでなく、その下方の位置でも、例えば破砕装置の破砕によって生じた瓦礫が落下することにより、粉塵が生じる。また、周囲環境(例えば風向き)の変化により、粉塵が生じやすい位置や、粉塵が飛散するのを抑えるべき位置も変化する。そのため、作業機械の作業中、放水ノズルの向きを容易に変更したいという要望がある。
【0007】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、放水ノズルの向きを容易に変更することができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、車体と、互いに回動可能に連結された少なくとも1つの連結部材及びアタッチメントを有し、前記車体に連結された作業装置と、前記作業装置に配置された放水ノズルとを備えた作業機械において、前記放水ノズルの回動を指示するノズル操作装置と、前記ノズル操作装置の指示に応じて前記放水ノズルを回動するノズルモータとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放水ノズルの向きを容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態における作業機械を表す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態における作業機械の作業装置のアームに配置された放水ノズル及びカメラを表す図である。
【
図3】本発明の一実施形態における作業機械の作業装置のアームに配置された放水ノズル及びノズルモータを表す図である。
【
図4】本発明の一実施形態における作業機械のキャブ内に配置されたモニタ等を表す図である。
【
図5】本発明の一実施形態における制御装置及び関連機器を表すブロック図である。
【
図6】本発明の一実施形態における制御装置の処理手順を表すフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態における制御装置で演算された放水先の鉛直位置等を示す側面図である。
【
図8】本発明の第1の変形例における作業機械を表す側面図である。
【
図9】本発明の第2の変形例における作業機械を表す側面図である。
【
図10】本発明の第3の変形例における制御装置及び関連機器を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態における作業機械を表す側面図である。
図2は、本実施形態における作業機械の作業装置のアームに配置された放水ノズル及びカメラを表す図である。
図3は、本実施形態における作業機械の作業装置のアームに配置された放水ノズル及びノズルモータを表す図である。
図4は、本実施形態における作業機械のキャブ内に配置されたモニタ等を表す図である。
図5は、本実施形態における制御装置及び関連機器を表すブロック図である。
【0013】
本実施形態の作業機械は、走行可能な走行体1と、走行体1の上側に旋回可能に設けられた旋回体2とを備える。走行体1及び旋回体2は、車体を構成する。走行体1は、走行モータ(図示せず)の回転によって走行し、旋回体2は、旋回モータ(図示せず)の回転によって旋回する。
【0014】
作業機械は、旋回体2の前側(
図1の左側)に連結された作業装置3を更に備える。作業装置3は、旋回体2に回動可能に連結されたブーム4(連結部材)と、ブーム4の先端部に回動可能に連結されたミドルアーム5(連結部材)と、ミドルアーム5の先端部に回動可能に連結されたアーム6(連結部材)と、アーム6の先端部に回動可能に連結されたアタッチメント7(本実施形態では破砕装置)とを有する。ブーム4は、ブームシリンダ8の伸縮によって回動し、ミドルアーム5は、ミドルアームシリンダ9の伸縮によって回動し、アーム6は、アームシリンダ10の伸縮によって回動し、アタッチメント7は、アタッチメントシリンダ11の伸縮によって回動する。
【0015】
作業装置3は、旋回体2に対するブーム4の回動角αを検出する回動角センサ12A(
図5参照)と、ブーム4に対するミドルアーム5の回動角βを検出する回動角センサ12B(
図5参照)と、ミドルアーム5に対するアーム6の回動角γを検出する回動角センサ12C(
図5参照)とを更に有する。作業装置3は、アタッチメント7の周囲を撮影するカメラ13を更に有する。
【0016】
旋回体2は、オペレータが搭乗可能なキャブ(運転室)14を有する。キャブ14内には、オペレータの操作によって走行体1の動作を指示する走行操作装置15や、オペレータの操作によって旋回体2の動作及び作業装置3の動作を指示する作業操作装置16A,16Bが設けられている。また、キャブ14内には、カメラ13で撮影された画像を表示するモニタ17が設けられている。
【0017】
作業機械は、作業装置3のアーム6に配置された放水ノズル18と、水を貯える水タンク19と、水タンク19で貯えられた水を放水ノズル18へ配管21を介し供給するポンプ20とを更に備える。放水ノズル18は、例えば、水を拡散するように放出するものである。なお、本実施形態では、水タンク19及びポンプ20は、地上に配置されているものの、旋回体2に搭載されてもよい。
【0018】
作業機機械は、減速ギア22(本実施形態ではウォームギア)を介し放水ノズル18を回動するノズルモータ23と、アーム6に対する放水ノズル18の回動角θを検出する回動角センサ24と、旋回体2に搭載され、ノズルモータ23を制御する制御装置25(
図5参照)と、旋回体2のキャブ14内に配置されたノズル操作装置26(
図5参照)とを更に備える。そして、放水ノズル18の回動角θを変更することで、放水ノズル18から放水される水の放出方向、放出先(目標)を変更することができる。
【0019】
ノズル操作装置26は、例えば、オペレータの操作によって放水ノズル18の一方側の回動を指示する回動ボタンと、オペレータの操作によって放水ノズル18の反対側の回動を指示する回動ボタンとで構成されており、その指示(信号)を制御装置25へ出力する。
【0020】
制御装置25は、プログラムに従って処理を実行するプロセッサと、プログラムやデータを記憶するメモリ等を有するものである。制御装置25は、ノズル操作装置26の指示に応じてノズルモータ23を制御する第1の機能と、ノズル操作装置26の指示がないときに、放水先の鉛直位置が変化しないようにノズルモータ23を制御する第2の機能とを有する。その詳細を、
図6を用いて説明する。
【0021】
図6は、本実施形態における制御装置の処理手順を表すフローチャートである。
【0022】
ステップS1にて、制御装置25は、ノズル操作装置26の指示があるかどうかを判定する。ノズル操作装置26の指示がある場合、ステップS2及びS3に移る。ステップS2にて、制御装置25は、演算フラグF=0に初期化する。ステップS3にて、制御装置25は、ノズル操作装置26の指示に応じてノズルモータ23を制御する。ステップS2及びS3の終了後、ステップS1に戻る。
【0023】
ステップS1にて、ノズル操作装置26の指示がない場合、ステップS4に移る。ステップS4にて、制御装置25は、演算フラグF=0であるかどうかを判定する。最初は、演算フラグF=0であるから、ステップS5及びS6に移る。
【0024】
ステップS5にて、制御装置25は、旋回体2及び作業装置3の各部位の寸法や、回動角センサ12A、12B、12C、24の検出結果に基づき、旋回体2の旋回中心を基準としたアタッチメント7の水平位置X1(
図7参照)を演算する。ステップS6にて、制御装置25は、旋回体2及び作業装置3の各部位の寸法や、回動角センサ12A、12B、12C、24の検出結果に基づき、旋回体2の旋回中心を基準とした放水ノズル18の水平位置X2を演算する。また、旋回体2及び作業装置3の各部位の寸法や、回動角センサ12A、12B、12C、24の検出結果に基づき、地面を基準とした放水ノズル18の鉛直位置Z2を演算する。
【0025】
ステップS5及びS6の終了後、ステップS7に移る。ステップS7にて、制御装置25は、上述したアタッチメント7の水平位置X1と、上述した放水ノズルの水平位置X2及び鉛直位置Z2と、回動角センサ12A、12B、12C、24の検出結果とに基づき、放水先の鉛直位置Z1(詳細には、アタッチメント7の水平位置X1での放水ノズル18から放出された水の放水先の鉛直位置)を演算する。その後、ステップS8に進み、制御装置25は、演算フラグF=1に変更する。
【0026】
その後、ステップS9に進み、制御装置25は、放水先の鉛直位置Z1が変化しないように、ノズルモータ23を制御する。詳しく説明すると、ブーム4の回動角α、ミドルアーム5の回動角β、及びアーム6の回動角γのうちのいずれかが変化したときに、放水先の鉛直位置Z1’を再演算し、放水先の鉛直位置の変化量(Z1’-Z1)を演算する。そして、放水先の鉛直位置の変化量(Z1’-Z1)を無くすための放水ノズル18の回動角の目標値を演算し、これに基づいてノズルモータ23を制御する。ステップS9の終了後、ステップS1に戻る。
【0027】
ステップS4にて演算フラグF=1であれば、ステップS9に移り、制御装置25は、上述した処理を行う。
【0028】
以上のように本実施形態においては、作業機械のキャブ14内のオペレータがノズル操作装置26を操作すれば、制御装置25がノズルモータ23を制御して、放水ノズル18を回動させる。そのため、放水ノズル18の向きを容易に変更することができる。一方、作業機械のキャブ14内のオペレータがノズル操作装置26を操作しなければ、制御装置25がノズルモータ23を制御して、放水先の鉛直位置が変化しないように放水ノズル18を回動させる。そのため、作業装置3が動作しても、放水先の鉛直位置を固定することができる。
【0029】
なお、上記一実施形態において、放水ノズル18は、作業装置3のアーム6に配置された場合を例にとって説明したが、これに限られない。
図8で示す第1の変形例のように、放水ノズル18は、作業装置3のミドルアーム5に配置されてもよい。制御装置25は、上記一実施形態と同様の制御を行う。但し、制御装置25は、旋回体2及び作業装置3の各部位の寸法や、回動角センサ12A、12B、24の検出結果に基づき、旋回体2の旋回中心を基準とした放水ノズル18の水平位置X2を演算する。また、旋回体2及び作業装置3の各部位の寸法や、回動角センサ12A、12B、24の検出結果に基づき、地面を基準とした放水ノズル18の鉛直位置Z2を演算する。本変形例においても、上記一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0030】
あるいは、
図9で示す第2の変形例のように、放水ノズル18は、作業装置3のブーム4に配置されてもよい。制御装置25は、上記一実施形態と同様の制御を行う。但し、制御装置25は、旋回体2及び作業装置3の各部位の寸法や、回動角センサ12A、24の検出結果に基づき、旋回体2の旋回中心を基準とした放水ノズル18の水平位置X2を演算する。また、旋回体2及び作業装置3の各部位の寸法や、回動角センサ12A、24の検出結果に基づき、地面を基準とした放水ノズル18の鉛直位置Z2を演算する。本変形例においても、上記一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0031】
なお、上記一実施形態及び変形例において、制御装置25は、ノズル操作装置26の指示がないとき、回動角センサ12A、12B、12C、24の検出結果に基づき、放水先の鉛直位置Z2を演算し、その後、放水先の鉛直位置が変化しないように、ノズルモータ23を制御する場合を例にとって説明したが、これに限られない。制御装置25は、例えば、放水先の鉛直位置が変化しない条件でブーム4の回動角α、ミドルアーム5の回動角β、アーム6の回動角γ、及び定数をパラメータとして放水ノズル18の回動角の目標値を演算する関数を用いてもよい。すなわち、制御装置25は、ノズル操作装置26の指示がないとき、回動角センサ12A、12B、12C、24の検出結果に基づき、上述した定数を演算し、その後、上述した関数を用いて放水ノズル18の回動角の目標値を演算し、これに応じてノズルモータ23を制御してもよい。
【0032】
また、上記一実施形態及び変形例において、作業装置3は、3つの連結部材(詳細には、ブーム4、ミドルアーム5、及びアーム6)を有する場合を例にとって説明したが、これに限られない。作業装置3は、1つ、2つ、又は4つ以上の連結部材を有してもよい。また、上記一実施形態及び変形例において、作業装置3のアタッチメント7は、破砕装置である場合を例にとって説明したが、これに限られない。作業装置3のアタッチメント7は、例えばバケットであってもよい。
【0033】
また、上記一実施形態及び変形例において、ノズル操作装置26は、作業機械のキャブ14内に配置された場合を例にとって説明したが、これに限られない。
図10で示す第3の変形例のように、ノズル操作装置26は、作業機械の外側に配置され、制御装置25との間で無線通信(又は有線通信)可能なものでもよい。
【0034】
また、上記一実施形態及び変形例において、制御装置25は、ノズル操作装置26の指示に応じてノズルモータ23を制御する第1の機能と、ノズル操作装置26の指示がないときに、放水先の鉛直位置が変化しないようにノズルモータ23を制御する第2の機能とを有する場合を例にとって説明したが、これに限られない。制御装置25は、第1の機能を有するものの、第2の機能を有しなくてもよい。また、作業機械は、制御装置25に代えて、ノズル操作装置26の信号によってノズルモータ23を制御する回路を備えてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 走行体(車体)
2 旋回体(車体)
3 作業装置
4 ブーム(連結部材)
5 ミドルアーム(連結部材)
6 アーム(連結部材)
7 アタッチメント
12A 回動角センサ(第1の回動角センサ)
12B 回動角センサ(第1の回動角センサ)
12C 回動角センサ(第1の回動角センサ)
18 放水ノズル
23 ノズルモータ
24 回動角センサ(第2の回動角センサ)
25 制御装置
26 ノズル操作装置