(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131273
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体発光素子、および半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/24 20100101AFI20240920BHJP
H01L 33/04 20100101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L33/24
H01L33/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041444
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】曽根 直樹
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA03
5F241AA21
5F241CA05
5F241CA08
5F241CA10
5F241CA12
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA73
5F241CA74
5F241CA88
5F241CB11
(57)【要約】
【課題】p型の半導体層からの水素離脱を効率的に行うことが可能な半導体発光素子、および半導体発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】成長基板(11)と、成長基板(11)の主面に対し垂直方向に立設されたn型コア層(15)、およびn型コア層(15)の外周に配置された活性層(16)を含む複数の柱状半導体層と、柱状半導体層の外周に配置され、相互に接続されて一体化された複数のp型半導体層(17)と、一体化された複数のp型半導体層(17)の一部が除去された除去領域と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長基板と、
前記成長基板の主面に対し垂直方向に立設されたn型コア層、および前記n型コア層の外周に配置された活性層を含む複数の柱状半導体層と、
前記柱状半導体層の外周に配置され、相互に接続されて一体化された複数のp型半導体層と、
一体化された前記複数のp型半導体層の一部が除去された除去領域と、を備えることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体発光素子であって、
前記複数のp型半導体層の各々は、前記垂直方向下方に広がる錐状体をなし、前記複数のp型半導体層同士は前記錐状体の下部で接続されていることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体発光素子であって、
前記成長基板上に形成され前記n型コア層と連続している下地層と、
前記p型半導体層同士が接続された接続部で囲まれた開口部と、をさら備え、
前記開口部に前記p型半導体層が配置されていないことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体発光素子であって、
前記p型半導体層の外周に配置された埋込半導体層をさらに備え、
前記除去領域では前記埋込半導体層の上面から前記下地層に至る層が除去されており、
前記除去領域から前記p型半導体層の端面が露出していることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体発光素子であって、
前記p型半導体層と前記埋込半導体層の間に配置されたトンネル接合層をさらに備え、
前記除去領域から前記トンネル接合層の端面がさらに露出していることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項6】
成長基板上に複数の開口部を有するマスクを形成するマスク形成工程と、
選択成長を用いて前記開口部にn型コア層を形成し、前記n型コア層の外周に活性層を形成して柱状半導体層を形成する柱状半導体層形成工程と、
前記柱状半導体層の外周にp型半導体層を形成するp型半導体層形成工程と、
前記p型半導体層を埋め込むように前記成長基板上に埋込半導体層を形成する埋込半導体層形成工程と、
前記p型半導体層の一部および前記埋込半導体層の一部を除去して前記p型半導体層を露出させる除去領域形成工程と、
全体をアニールして前記p型半導体層を活性化させる活性化工程と、を含むことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体発光素子の製造方法であって、
前記p型半導体層の外周にトンネル接合層を形成するトンネル接合層形成工程をさらに含み、
前記埋込半導体層は前記トンネル接合層を埋め込むように形成され、
前記除去領域形成工程で前記トンネル接合層をさらに露出させ、
前記活性化工程で前記トンネル接合層をさらに活性化させることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子、および半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、活性層において正孔と電子とが再結合することにより発光する。従来、活性層として平坦なシート状の井戸層が用いられてきた。これに対し近年では、3次元ナノ構造を有する半導体発光素子の開発が活発化している。特許文献1には、このような構造を有する半導体発光素子の一例が開示されている。
【0003】
特許文献1に係る半導体発光素子の本体部は、ナノワイヤと呼ばれる細線構造体によって形成されている。
図8は特許文献1に係る半導体発光素子を簡略化した従来技術に係る半導体発光素子50を示した図であり、
図8(a)は縦断面図を、
図8(b)は横断面図を各々示している。
図8(a)に示すように半導体発光素子50は、成長基板51、下地層52、マスク53、六角柱形状に成長させたn型コア層54、n型コア層54の周囲に形成された活性層(発光層)55、活性層55の周囲に形成されたp型半導体層56、p型半導体層56の周囲に形成されたトンネル接合層57、および埋込半導体層58を備えている。n型コア層54、活性層55、p型半導体層56、およびトンネル接合層57で構成された部分が一般にナノワイヤと称されている。埋込半導体層58はそのナノワイヤを埋め込んでいる。このような構造によれば、発光層への均一な電流注入が可能となる。また、埋込半導体層58によって複数のナノワイヤが連結され、強度が確保される。
【0004】
ここで、半導体発光素子50のp型半導体層56およびトンネル接合層57のp+層(以下両者を併せて「p型の半導体層」という場合がある)は、水素を離脱させ活性化する必要がある。p型の半導体層に含まれるドーパントであるMg(マグネシウム)は、水素によるパッシベーションにより不活性化している。そのため、熱処理を行って水素を離脱させ、Mgを活性化させる必要がある。そのために、工程の途中でp型の半導体層を露出させて、アニール処理を施す。しかしながら、p型の半導体層はn型の埋込半導体層58とトンネル接合層57のn+層で覆われているため、効果的に水素を離脱させることができず、従って十分な活性化ができない。活性化が不十分だとこの層が高抵抗となり、半導体発光素子50の素子効率が低下する。この点特許文献1に係る半導体発光素子では、半導体発光素子上部に、p型の半導体層を露出させる除去領域を設け、この除去領域から水素を離脱させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1に係る半導体発光素子およびその製造方法では、p型の半導体層の上部を露出させてアニール処理している。その際ナノワイヤは各々独立しているため、すべてのナノワイヤのp型の半導体層の上部を露出させる必要がある。この方法では水素が上部から離脱する。しかしながらナノワイヤ構造の露出面積が小さいので、ナノワイヤ構造の下部まで十分に活性化処理を行うためには、アニール処理が長時間化してしまう傾向があった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、p型の半導体層からの水素離脱を効率的に行うことが可能な半導体発光素子、および半導体発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の半導体発光素子は、成長基板と、前記成長基板の主面に対し垂直方向に立設されたn型コア層、および前記n型コア層の外周に配置された活性層を含む複数の柱状半導体層と、前記柱状半導体層の外周に配置され、相互に接続されて一体化された複数のp型半導体層と、一体化された前記複数のp型半導体層の一部が除去された除去領域と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このような本発明の半導体発光素子では、柱状半導体層の外周に配置され、相互に接続されて一体化された複数のp型半導体層の一部が除去された除去領域を備えているため、p型の半導体層からの水素離脱を効率的に行うことが可能となる。
【0010】
また本発明の一態様では、前記複数のp型半導体層の各々は、前記垂直方向下方に広がる錐状体をなし、前記複数のp型半導体層同士は前記錐状体の下部で接続されていることを特徴とする。
【0011】
また本発明の一態様では、前記成長基板上に形成され前記n型コア層と連続している下地層と、前記p型半導体層同士が接続された接続部で囲まれた開口部と、をさらに備え、前記開口部に前記p型半導体層が配置されていないことを特徴とする。
【0012】
また本発明の一態様では、前記p型半導体層の外周に配置された埋込半導体層をさらに備え、前記除去領域では前記埋込半導体層の上面から前記下地層に至る層が除去されており、前記除去領域から前記p型半導体層の端面が露出していることを特徴とする。
【0013】
また本発明の一態様では、前記p型半導体層と前記埋込半導体層の間に配置されたトンネル接合層をさらに備え、前記除去領域から前記トンネル接合層の端面がさらに露出していることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の半導体発光素子の製造方法は、成長基板上に複数の開口部を有するマスクを形成するマスク形成工程と、選択成長を用いて前記開口部にn型コア層を形成し、前記n型コア層の外周に活性層を形成して柱状半導体層を形成する柱状半導体層形成工程と、前記柱状半導体層の外周にp型半導体層を形成するp型半導体層形成工程と、前記p型半導体層を埋め込むように前記成長基板上に埋込半導体層を形成する埋込半導体層形成工程と、前記p型半導体層の一部および前記埋込半導体層の一部を除去して前記p型半導体層を露出させる除去領域形成工程と、全体をアニールして前記p型半導体層を活性化させる活性化工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また本発明の一態様では、前記p型半導体層の外周にトンネル接合層を形成するトンネル接合層形成工程をさらに含み、前記埋込半導体層は前記トンネル接合層を埋め込むように形成され、前記除去領域形成工程で前記トンネル接合層をさらに露出させ、前記活性化工程で前記トンネル接合層をさらに活性化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、p型の半導体層からの水素離脱を効率的に行うことが可能な半導体発光素子、および半導体発光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る半導体発光素子の、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る半導体発光素子の、(a)は平面図、(b)は縦断面図、(c)は横断面図、(d)は縦断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る半導体発光素子の製造方法における、(a)は下地層形成工程、(b)はマスク形成工程、(c)は開口部形成工程、(d)は柱状半導体層形成工程、(e)はp型半導体層/トンネル接合層形成工程を示す縦断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る半導体発光素子の製造方法における、(a)は埋込半導体層形成工程、(b)は除去領域形成/活性化工程、(c)は電極形成工程を示す縦断面図である。
【
図5】第1実施形態に係るウェハを示す平面図である。
【
図6】第1実施形態に係る半導体発光素子のp型半導体層のSEM像を示す、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【
図7】第2実施形態に係る半導体発光素子の、(a)は平面図、(b)は縦断面図、(c)は横断面図、(d)は縦断面図である。
【
図8】従来技術に係る半導体発光素子の、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。また、以下の説明で挙げた材料、および数値はあくまで一例であって、これに限定されるものではない。
【0019】
(第1実施形態)
図1から
図6を参照して、本実施形態に係る半導体発光素子、および半導体発光素子の製造方法について説明する。
図1(a)は、本実施形態に係る半導体発光素子10の平面図であり、
図1(b)は(a)に示す切断線A-Aに沿って切断した縦断面図である。
図1(a)に示すように、半導体発光素子10は、下地層13、埋込半導体層19、カソード電極20、アノード電極21を備えている。カソード電極20は下地層13の上部に形成され、アノード電極21は埋込半導体層19の上部に形成されている。
【0020】
図1(b)に示すように、半導体発光素子10は、成長基板11、バッファ層12、下地層13、マスク14、n型コア層15、活性層16、p型半導体層17、トンネル接合層18、埋込半導体層19、カソード電極20、およびアノード電極21を備えている。マスク14には、開口部14aが形成されている。
【0021】
成長基板11は、半導体材料を結晶成長可能な材料で構成された略平板状の部材である。成長基板11としては特に限定されないが、本実施形態では単結晶のc面サファイア基板としている。成長基板11は、後述のバッファ層12を介して半導体単結晶層を成長させるための材料から構成される単結晶の基板であればよく、半導体発光素子10を窒化物系半導体で構成する場合にはc面サファイア基板が好ましい。しかしながらこれに限らず、Si等の他の異種基板であってもよい。
【0022】
バッファ層12は、成長基板11と後述する下地層13の間に形成されて両者の格子不整合を緩和するための層である。バッファ層12の材料は、成長基板11としてc面サファイア基板を用いる場合にはノンドープのGaNを用いることが好ましい。しかしながらこれに限らず、AlNやAlGaNなどを用いてもよい。なお、成長基板11は、バッファ層12を形成せず単一の材料で構成してもよい。
【0023】
下地層13は、成長基板11あるいはバッファ層12上に形成された単結晶の半導体層であり、ノンドープのGaNを数μmの厚さで形成し、その上にn型コンタクト層等のn型半導体層(図示省略)を備えた複数層で構成することが好ましい。n型コンタクト層は、n型不純物がドープされた半導体層であり、例えばSiドープしたn型Al0.05Ga0.95N等が挙げられる。
【0024】
マスク14は、下地層13の表面に形成された誘電体材料からなる層である。マスク14を構成する材料としては、マスク14からは半導体の結晶成長が困難なものを選択し、例えばSiO2やSiNxやAl2O3などが好適である。マスク14には開口部14aが複数形成されており、開口部14aから部分的に露出した下地層13から半導体層が成長可能とされている。
【0025】
n型コア層15は、マスク14の開口部14aから露出した下地層13上に選択成長された六角柱形状の半導体層であり、例えばn型不純物がドープされたGaNから構成されている。
【0026】
活性層(発光層)16は、n型コア層15の外周に成長された半導体層であり、例えば厚さ5nmのGaInN量子井戸層と厚さ10nmのGaN障壁層を5周期重ねた多重量子井戸活性層が挙げられる。ここでは多重量子井戸活性層を挙げたが、単一量子井戸構造であってもよく、バルク活性層であってもよい。活性層16がn型コア層15の側面および上面に形成されているため、活性層16の面積を確保することができる。なお、本実施形態では、n型コア層15、および活性層16で構成される部分を「柱状半導体層」と称する。
【0027】
p型半導体層17は、活性層16の外周に成長された半導体層であり、例えばp型不純物がドープされたGaNから構成されている。p型半導体層17は活性層16の側面および上面を覆い、
図1(b)に示すように、縦断面視で台形形状(以下、この形状を「錐状体」という)をなすように形成されている。換言すればp型半導体層17は個々の柱状半導体層を覆って形成されている。なお、本実施形態では錐状体の頂部が平坦である形態を例示して説明するが、後述するように頂部は尖っていてもよい。そして、柱状半導体層ごとのp型半導体層17同士は、その下部において部分的に接続されている。すなわち、複数に分割されたp型半導体層17は、その下部において連結し一体化するように裾を広げて形成されている。n型コア層15と活性層16とp型半導体層17でダブルヘテロ構造が構成され、キャリアを活性層16に良好に閉じ込めて発光再結合の確率を向上させることができる。
【0028】
ここで、
図8(a)に示すように、従来技術に係る半導体発光素子50ではp型半導体層56がナノワイヤごとに分離されていたが、本実施形態に係る半導体発光素子10のp型半導体層17は上記のように、p型半導体層17同士が連結して一体的に形成されている。このことにより本実施形態に係る半導体発光素子10では、ある柱状半導体層のp型半導体層17の中の水素は、隣接する柱状半導体層のp型半導体層17へ移動することができる。従って、一体化されたp型半導体層17の一部の領域を露出させてアニール処理すれば、p型半導体層17の全体について活性化処理することができる。この点については後述するトンネル接合層18のp+層についても同様である。p型半導体層17の構造の詳細については後述する。
【0029】
トンネル接合層18は、p型半導体層17の外周に成長された半導体層であり、例えば内側にp型不純物が高濃度にドープされたp+層と、外側にn型不純物が高濃度にドープされたn+層とが順に成長された二層構造を有している。p+層は、p型不純物が高濃度にドープされた半導体層であり、例えば厚さ5nmでMg濃度が2×1020cm-3のGaNを用いることができる。n+層は、例えば厚さ10nmでSi濃度が2×1020cm-3のGaNを用いることができる。これらp+層とn+層によりトンネル接合が形成される。すなわち、本実施形態に係るトンネル接合層18は、p+層とn+層の二層によって構成されている。上述したように、トンネル接合層18のp+層も活性化することが好ましい。
【0030】
埋込半導体層19は、トンネル接合層18の上面および側面を覆って形成された半導体層である。埋込半導体層19の材料は、例えばn型のGaNである。
【0031】
図1(b)に示すカソード電極20は、半導体発光素子10に電流を供給するための負極である。
図1に示すように、カソード電極20は露出したn型の下地層13上に形成されている。より具体的には、露出した下地層13とオーミック接触する金属材料とパッド電極の積層構造で構成されている。アノード電極21は、半導体発光素子10に電流を供給するための正極である。アノード電極21は、埋込半導体層19上の一部に形成されており、埋込半導体層19の最表面とオーミック接触する金属材料とパッド電極の積層構造で構成されている。なお、アノード電極21は、埋込半導体層19のほぼ全体を覆うように延伸された透明電極としてもよい。また必要に応じ、半導体発光素子10の所定の表面を覆う絶縁保護膜(パッシベーション膜)を設けてもよい。絶縁保護膜は半導体発光素子10を湿気等の外部環境から保護する。
【0032】
図2を参照して、本実施形態に係る半導体発光素子10のp型半導体層17の構造上の特徴について、より詳細に説明する。
図2(a)は半導体発光素子10の平面図、
図2(b)は(a)に示す切断線B-Bに沿って切断した縦断面図、
図2(c)は(b)に示す位置P1に相当する部分で切断した横断面図、
図2(d)は(a)に示す切断線C-Cに沿って切断した縦断面図である。
【0033】
図2(a)に示すように、半導体発光素子10の表面は埋込半導体層19で覆われている。
図2(a)にはトンネル接合層18の外形も示している。p型半導体層17の外形は、このトンネル接合層18の外形とほぼ同様である。
図2(b)に示すように、半導体発光素子10を柱状半導体層(n型コア層15、および活性層16)の配列方向に切断すると、p型半導体層17は連続して一体的に形成されている。
【0034】
図2(c)は、柱状半導体層を高さ方向の途中で切断した横断面図である。
図2(c)に示すように、n型コア層15を活性層16が囲み、活性層16の周囲はp型半導体層17で覆われている。p型半導体層17の周囲はトンネル接合層18で囲まれている。p型半導体層17の外形は、六角柱形状であるn型コア層15の形状を反映して略六角形となっている。ここで、本実施形態では、平面視での柱状半導体層の配置形態を三角格子状としている。そのため、
図2(c)に示すように、ある列の柱状半導体層の位置が隣接する柱状半導体の位置と半個分ずれて配置されている。
【0035】
p型半導体層17は柱状半導体層を中心として成長するため、隣接するp型半導体層17同士が結合する。三角格子状の配置では、隣接する柱状半導体層のp型半導体層17の頂点同士が結合する。その際、
図2(c)に示すようにp型半導体層17に開口部22a、および接続部23aが形成される。開口部22aでは埋込半導体層19が上面からマスク14に至るまで形成されている。開口部22aではアノード電極21から注入された電流が直接マスク14まで達するので、開口部22aの周囲においては活性層16への電流注入がより効率的になる。接続部23aは、隣接するp型半導体層17同士が接触した部分をいう。開口部22aおよび接続部23aを縦断面図で見たのが
図2(d)である。
【0036】
図3から
図5を参照して、本実施形態に係る半導体発光素子10の製造方法について説明する。
図3(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)は各々、下地層形成工程、マスク形成工程、開口部形成工程、柱状半導体層形成工程、およびp型半導体層/トンネル接合層形成工程を示す縦断面図である。
図4(a)、(b)、および(c)は各々、埋込半導体層形成工程、除去領域形成/活性化工程、および電極形成工程を示す縦断面図である。なお、半導体発光素子10は複数の素子形成領域が配置された半導体ウェハの状態で製造されるが、以下の説明ではその内の1つの素子形成領域に着目して説明する。
【0037】
まず
図3(a)に示す下地層形成工程では、一例としてサファイア単結晶からなる成長基板11上に有機金属化合物気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて、GaNからなるバッファ層12、GaNおよびAlGaNからなる下地層13を成長させる。なお、上述したように、成長基板11としては単一材料、例えばn型GaNからなる基板を用いてもよい。
【0038】
次に
図3(b)に示すマスク形成工程では、下地層13上にスパッタ法でSiO
2からなるマスク14を膜厚30nm程度で堆積させる。
【0039】
次に
図3(c)に示す開口部形成工程では、ナノインプリンティングリソグラフィのような微細パターン形成方法を用いて、直径150nm程度の開口部14aを形成する。
【0040】
次に
図3(d)に示す柱状半導体層形成工程では、まずMOCVD法による選択成長により、開口部14aから露出した下地層13上にGaNからなるn型コア層15を成長させる。n型コア層15の成長条件としては、例えば原料ガスとしてTMGおよびアンモニアを用い、成長温度が1050℃、V/III比が10、水素をキャリアガスとして圧力900hPaである。
【0041】
次にMOCVD法を用いてn型コア層15の側面および上面に、厚さ5nmのGaInN量子井戸層と厚さ10nmのGaN障壁層を5周期重ねた活性層16を形成する。活性層16の成長条件としては、例えば成長温度が800℃、V/III比が3000、窒素をキャリアガスとして圧力1000hPaで、原料ガスとしてTMG、TMI(TriMethyl Indium)およびアンモニアを用いる。
【0042】
次に
図3(e)に示すp型半導体層/トンネル接合層形成工程のp型半導体層形成工程では、p型不純物をドープしたGaNからなるp型半導体層17を形成する。上述したように、本実施形態に係る半導体発光素子10のp型半導体層17は、下方に向かって広がる錐状体をなすように形成される。当該錐状体の横断面の形状は六角形であることが好ましい。
【0043】
当該錐状体は、上部から底部にかけてp型半導体層を徐々に厚くすることによって形成する。より具体的には以下のようにして錐状体を形成する。すなわち
図8(a)に示す六角柱形状のp型半導体層56の成長条件に対し、相対的に低温、低V/III比にして形成する。p型半導体層56の成長条件は例えば、成長温度約950℃、V/III比約1000である。その場合p型半導体層17の成長条件は、例えば成長温度約850℃から900℃程度、V/III比500から800程度とする。その際の圧力は水素をキャリアガスとして300hPa程度とし、原料ガスとしてTMG、Cp2Mg(bisCycropentadienyl Magnesium)およびアンモニアを用いる。錐状体の頂部は平坦なc面であってもよいし、面がなく尖っていてもよい。p型半導体層17を錐状にすることにより、後述するトンネル接合層18と埋込半導体層19とを、ボイドの発生を抑制しつつ形成することができる。
【0044】
次にトンネル接合層形成工程では、p型半導体層17の側面および上面を覆って、トンネル接合層18を形成する。トンネル接合層18の成長条件としては、例えば成長温度が800℃、V/III比が3000、窒素をキャリアガスとして圧力500hPaである。トンネル接合層形成工程では、厚さ5nmでMg濃度が2×1020cm-3のGaNからなるp+層と、厚さ10nmでSi濃度が2×1020cm-3のGaNからなるn+層とを含むトンネル接合層18を順次成長させる。
【0045】
次に
図4(a)に示す埋込半導体層形成工程では、n型GaNからなる埋込半導体層19を成長させ、トンネル接合層18の外周および上面を埋込半導体層19で埋める。埋込半導体層19の成長では、原料ガスとしてTMG、シランおよびアンモニアを用いる。なお図示の都合上
図4(a)ではp型半導体層17が両端面から露出しているように表しているが、実際はp型半導体層17の周囲は埋込半導体層19で覆われている。
【0046】
次に
図4(b)に示す除去領域形成/活性化工程の除去領域形成工程では、埋込半導体層19の上面から下地層13の上面までを選択的にエッチングして、下地層13を露出させるように除去領域Xを形成する。その際除去後の端面には露出部Yが形成される。露出部Yにおいては、マスク14、p型半導体層17、トンネル接合層18が露出している。本工程のエッチングとしては、例えばドライエッチングを用いる。
図4(b)では積層された半導体層の一部を除去する形態を例示しているがこれに限らず、半導体層の全周にわたって除去領域を形成し、下地層13上にメサ状の半導体層を形成してもよい。このようにすれば、後述するアニール処理をより効率的に行うことができる。
【0047】
除去領域Xを形成した後に活性化工程を実施し、露出部から露出するp型半導体層17、およびトンネル接合層18のp+層から水素を離脱させて活性化処理を行う。ここで、活性化処理の方法は限定されないが、一例として、大気雰囲気中における600℃での熱処理(アニール)が挙げられる。本実施形態では大気雰囲気中での熱処理を例示したが、p型の半導体層を活性化でき、かつ原子状水素の存在しない雰囲気での熱処理であれば、いずれの熱処理でもよい。
【0048】
次に
図4(c)に示す電極形成工程では、除去領域Xにおいて露出した下地層13の表面にカソード電極20を形成し、埋込半導体層19上にアノード電極21を形成する。本実施形態では、埋込半導体層19上の一部にアノード電極21を形成する形態を例示して説明するが、上述したように、埋込半導体層19の上面のほぼ全面に、ITO等を用いた電極を形成する形態としてもよい。
【0049】
図5は、製造が完了した半導体ウェハ30を示している。半導体ウェハの外形は一般に円形であるが、
図5では矩形の場合を例示している。
図5に示すように、半導体ウェハ30上には複数の半導体発光素子10が形成されている。半導体発光素10を平面視すると、埋込半導体層19、カソード電極20、およびアノード電極21が見える。半導体ウェハ30は半導体発光素子10の間に設けられたスクライブライン(図示省略)に沿って切断し、個々の半導体発光素子10に個片化(素子分割)する。分割後のチップサイズは、例えば0.5mm×0.5mmである。半導体発光素子10は必要に応じパッケージ等に搭載し、実用に供する。
【0050】
本実施形態の半導体発光素子10では、カソード電極20とアノード電極21の間に電圧を印加すると、アノード電極21→埋込半導体層19→トンネル接合層18→p型半導体層17→活性層16→n型コア層15→下地層13→カソード電極20の順に電流が流れ、活性層16での発光再結合により発光する。活性層16で発生した光は、半導体発光素子10の外部に取り出される。
【0051】
本実施形態の半導体発光素子10では、活性層16がn型コア層15の外周に形成され、さらにその外周にp型半導体層17、トンネル接合層18が形成され、さらに埋込半導体層19で埋め込まれている。したがって、アノード電極21から注入された電流は、埋込半導体層19からトンネル接合層18を経由してトンネル電流としてp型半導体層17の側壁から活性層16に注入される。トンネル接合層18を介したトンネル電流による電流注入は抵抗が小さく、良好に電流注入を行うことができる。また、n型の半導体層である埋込半導体層19はp型の半導体層よりも電流が拡散しやすいため、トンネル接合層18全体から電流注入を行うことができる。このことにより、アノード電極21から注入された電流は、活性層16の上面だけではなく側面全体から活性層16に注入される。その結果、活性層16に対して良好に電流注入され高電流密度を実現するとともに、外部量子効率を向上させることが可能となる。
【0052】
図6を参照して、本実施形態に係る半導体発光素子10の実施例について説明する。
図6は実際に途中まで製造した半導体発光素子10のSEM(Scanning Electron Microscope)像であり、
図6(a)は錐状体のp型半導体層17の平面図、
図6(b)は斜視図である。ただし、トンネル接合層18、および埋込半導体層19は形成していない。
図6(a)に示すように、複数のp型半導体層17は接続部23aで接続され、3つの接続部23aに囲まれて開口部22aが形成されている。上述したように、開口部22aからは下地層13が露出している。
【0053】
図6(a)に示す、錐状体のp型半導体層17の斜面Sには半極性面(101-1)が現れる。上記製造工程においてp型半導体層17の成長時間を長くしていくと、当該半極性面の現出を維持したまま、錐状体の直径と高さが大きくなっていく。また、錐状体の頂部Tにおいては、最初c面が現れるが、成長時間を長くしていくと、c面が縮小していき、最終的には頂部Tが尖る。つまり、c面が消失し上記半極性面のみとなる。
【0054】
以上詳述したように、本実施形態に係る半導体発光素子、および半導体発光素子の製造方法によれば、p型の半導体層からの水素離脱を効率的に行うことが可能な半導体発光素子、および半導体発光素子の製造方法を提供することができる。
【0055】
(第2実施形態)
図7を参照して、本実施形態に係る半導体発光素子10Aについて説明する。
図7(a)は半導体発光素子10Aの平面図、
図7(b)は(a)に示す切断線D-Dに沿って切断した縦断面図、
図7(c)は(b)に示す位置P2に相当する部分で切断した横断面図、
図7(d)は(a)に示す切断線E-Eに沿って切断した縦断面図である。
図7(a)に示すように、半導体発光素子10Aの表面は埋込半導体層19で覆われている。
図7(a)にはトンネル接合層18の外形も示している。p型半導体層17の外形は、このトンネル接合層18の外形とほぼ同様である。
【0056】
半導体発光素子10Aは、半導体発光素子10において、柱状半導体層の配列形態を変えた形態である。すなわち半導体発光素子10では柱状半導体層の配列形態を三角格子状配列としていたが(
図2参照)、半導体発光素子10Aではこれを四角格子状配列としている。
【0057】
図7(b)に示すように、半導体発光素子10Aを柱状半導体層の配列方向に切断すると、p型半導体層17は連続して一体的に形成されている。
【0058】
図7(c)は、柱状半導体層(n型コア層15、および活性層16)を高さ方向の途中で切断した横断面図である。横断面図で見ると、n型コア層15を活性層16が囲み、活性層16の周囲はp型半導体層17で覆われている。p型半導体層17の周囲はトンネル接合層18で囲まれている。ここで、上述したように、半導体発光素子10Aでは平面視での柱状半導体層の配置形態を四角格子状としている。そのため、
図7(c)に示すように、隣接する柱状半導体層の列のp型半導体層17が同じ位置に配置され、半導体発光素子10のようにずれていない。
【0059】
p型半導体層17は柱状半導体層を中心として成長するため、隣接するp型半導体層17が結合する。四角格子状配置では隣接するp型半導体層17の辺同士、頂点同士が結合する。そのため
図7(c)に示すように、p型半導体層17に開口部22b、および接続部23bが形成される。開口部22bでは埋込半導体層19が上面からマスク14に至るまで形成されている。開口部22bではアノード電極21から注入された電流が直接マスク14まで達するので、開口部22bの周囲においては活性層16への電流注入がより効率的になる。接続部23bは、隣接するp型半導体層17同士が接触した領域をいう。開口部22bおよび接続部23bを縦断面図で見たのが
図7(d)である。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る半導体発光素子、および半導体発光素子の製造方法によっても、p型の半導体層からの水素離脱を効率的に行うことが可能な半導体発光素子、および半導体発光素子の製造方法を提供することができる。
【0061】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
10、10A…半導体発光素子
11…成長基板
12…バッファ層
13…下地層
14…マスク
14a…開口部
15…n型コア層
16…活性層
17…p型半導体層
18…トンネル接合層
19…埋込半導体層
20…カソード電極
21…アノード電極
22a、22b…開口部
23a、23b…接続部
30…半導体ウェハ
50…半導体発光素子
51…成長基板
52…下地層
53…マスク
54…n型コア層
55…活性層
56…p型半導体層
57…トンネル接合層
58…埋込半導体層
P1、P2…位置
S…斜面
T…頂部
X…除去領域
Y…露出部