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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131275
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】トイレ用換気機構
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240920BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20240920BHJP
   E06B 7/02 20060101ALI20240920BHJP
   F24F 13/068 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F24F7/06 B
F24F7/06 L
F24F7/007 B
E06B7/02
F24F13/068 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041446
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】518455686
【氏名又は名称】瀬山 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100129986
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓生
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 彰
【テーマコード(参考)】
2E036
3L056
3L058
【Fターム(参考)】
2E036JA02
2E036KA01
2E036LA01
3L056BF01
3L058BE04
(57)【要約】
【課題】
トイレ室において、汚物が溜まる汚物溜まりからの臭気を過度に上昇させることなく効率的に室内換気することで、使用者に汚物溜まりの汚物の臭気を感じさせにくいものとし、かつ室内外の美観や体裁を保つことができる換気構造を提供する。
【解決手段】
トイレ室の扉(1)の上部三分の一の範囲内の所定の高さに唯一設けた、室外空気の給気口(11)と、トイレ室内であって、前記流し器(3)の汚物溜まり(30)の上縁高さ(30F)よりも低い位置に設けた、室内空気の排気口(21)と、トイレ室外にて、前記排気口(21)に連通した排気装置(2)と、を具備する。排気装置(2)の排気運転に伴い、扉(1)上部の給気口(11)からトイレ室下部の排気口(21)へ向かう斜め下方の気流が発生することによって、流し器(3)の汚物溜まり(30)上部の室内空気を巻き込んで換気する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物溜まり付きの流し器を設置したトイレ室の換気構造であって、
トイレ室の扉の上部三分の一の範囲内の所定の高さに設けた、室外空気の給気口と、
トイレ室内であって、前記流し器の汚物溜まりの上縁高さよりも低い位置に設けた、室内空気の排気口と、
トイレ室外にて、前記排気口に連通した排気装置と、を具備してなり、
排気装置の排気運転に伴い、扉上部の給気口からトイレ室下部の排気口へ向かう斜め下方の室内気流が生じ、
この室内気流によって、流し器の汚物溜まり上部の室内空気を巻き込んで換気することを特徴とする、トイレ室の換気構造。
【請求項2】
汚物溜まりを有する流し器を室内の奥壁寄りに設置したトイレの換気構造であって、
トイレ室の扉の上部に設けられ、常時開口して室内に自然給気する給気口と、
トイレ室内の下部に設けられた排気口を有する、排気口付きの排気装置とから構成され、
前記扉はトイレ室内に設置された流し器の正面方向または側面方向の先に設けられ、
前記給気口は、扉を閉じた状態のトイレ室外と自然通気する唯一の換気用開口であって、所定高さの横長矩形の口形状からなると共に、扉内面の開口形状の図心が、扉の幅方向中央であってトイレ室の床から所定の高さとなるように設定され、
前記排気口は、所定径の円形または所定幅の矩形の口形状からなると共に、開口形状の図心が、流し器の片側方または/および後方の床上又は壁上であって、扉内面から奥壁への真直後方へ所定の後方距離を開けた位置となるように設定され、
トイレ室内の正面視または側面視にて、扉内面の給気口の前記所定高さの下端・上端と排気口の前記所定径又は所定幅の前端・後端とをそれぞれ直線的に結んで形成される中心気流領域を仮想設定したとき、正面視または側面視の少なくともいずれかにて、この中心気流領域の少なくとも一部が、流し器の汚物溜まりの一部と交わることを特徴とする、請求項1に記載のトイレ室の換気構造。
【請求項3】
前記給気口は、水平方向の下辺と、これに平行な上辺とを等間隔で有した横長水平かつ所定の代表幅の口形状からなるものであって、前記扉の設置壁面視におけるトイレ室幅の三分の一以上を前記開口の所定代表幅として、扉の幅方向中央に設けられることを特徴とする、請求項1に記載のトイレ室の換気構造。
【請求項4】
前記給気口は、扉の上辺と平行な切り欠き面とその両端の傾斜面とで断面多角形状に切り欠いた切り欠き部と、扉の上枠とによって組み合わせ構成してなることを特徴とする、請求項3に記載のトイレ室の換気構造。
【請求項5】
前記扉は開き扉であり、かつ、扉の開閉中に排気装置が運転中となるよう制御されることを特徴とする、請求項4に記載のトイレ室の換気構造。
【請求項6】
前記排気装置は、排気口からトイレ室外に連通されるとともに、他の居室から連通された共有ファンからなることを特徴とする、請求項1に記載のトイレ室の換気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流し器(便器、汚物流し)を設置したトイレ室(トイレ、バスルーム、洗面室を含む)内を換気する換気機構であって、特に流し器(便器、汚物流し)の汚物による臭いの脱臭ないし防臭機能を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の室内の空気を換気する換気機能を備えた扉として、例えば特許文献1(実開昭61-085687)の考案による換気式の通気部を有した扉が開示される。同文献によれば、第一形態の扉(1)の下端部に二連の略矩形をした通気部(3)が設けられ、第2形態の扉は上端部に二連の略矩形、下端部に円弧形が、第3形態の扉は上端部に略矩形、下端部にM形が、第4形態の扉は中央鏡板の下部2箇所に表裏面に連通ずるルーバ格子を嵌めこんだ通気部(3)が設けられている、とされる。
【0003】
また特許文献2(特登-04570158)にも、換気構造付き扉が開示される。同文献によれば、図6の第2実施形態に開示された換気構造付き扉のように、住宅内に設けられるドア枠上部とドア上端の隙間が小さい場合にも、上記切り欠き部12により十分な通気性を確保できる、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61-085687
【特許文献2】特登-04570158
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1、2の構成には以下のような問題があるため、実用性に欠けるものであった。
【0006】
すなわち上記特許文献1の構成は、上部及び下部から室内へ新鮮空気を供給するため、室内空気が上昇気流を含む多層気流によって排気されるため、換気中に使用者が汚物の臭気を感じやすいという問題があった。
【0007】
また上記特許文献2の構成は、特殊な扉の構造からなり、メンテナンスと運転制御の面から効率的な換気とはいえず、また、室内外の美観や体裁を保つことが困難であった。
【0008】
そこで本発明は、大便器や汚物流しの設置されたトイレ室において、汚物が溜まる汚物溜まりからの臭気を過度に上昇させることなく効率的に室内換気することで、使用者に汚物溜まりの汚物の臭気を感じさせにくいものとし、かつ室内外の美観や体裁を保つことができる換気構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のトイレの換気構造は下記を特徴とする。なお各構成名称に続けて記載される括弧内数字ないしアルファベットは、実施例として示す図面を参酌して理解するために便宜的に付した符号であり、それ自体が意味や概念を持つものではない。
【0010】
[1]汚物溜まり(30)付きの流し器(3)(大便器又は汚物流し器)を設置したトイレ室(トイレ、バスルーム、洗面室)の、第三種換気の換気構造であって、
トイレ室の扉(1)の上部三分の一の範囲内(少なくとも立位の使用者の鼻腔の基準高さ以上、かつ扉の上端以下の範囲内)の所定の高さに唯一設けた、室外空気の給気口(11)と、
トイレ室内であって、前記流し器(3)の汚物溜まり(30)の上縁高さ(30F)よりも低い位置に設けた、室内空気の排気口(21)と、
トイレ室外にて、前記排気口(21)に連通した排気装置(2)と、を具備してなり、
排気装置(2)の排気運転に伴い、扉(1)上部の給気口(11)からトイレ室下部の排気口(21)へ向かう斜め下方の室内気流が発生する。
【0011】
そして、この室内気流によって、流し器(3)の汚物溜まり(30)上部の室内空気を巻き込んで換気することを特徴とする。
【0012】
扉を閉じた状態では、扉の上部をトイレ室内への唯一の給気口(11)とするため、扉(1)上部の給気口(11)から給気された室外空気は、トイレ室内で上方から斜め下方へ向かう下方気流を形成し、汚物溜まり(30)から発生する臭気を含む室内空気を巻き込んで下部の排気口(21)へ排気される。これにより、流し器(3)の汚物溜まり(30)の汚物による臭気を、使用者が感知する位置まで上昇させることなく室外排気する。そして、汚物の臭気を使用者に感じさせないようにしつつ、室内空気を効率的に換気することができる。
【0013】
また、新鮮空気の給気口を備えた扉を開閉させることで、下方気流の方向性を大きく変えることなく室内への給気位置と給気面積が変わる。これによって室内空気のよどみ部を発生させずに効率的に換気することができる。
【0014】
[2]汚物溜まり(30)を有する流し器(1)を室内の奥壁寄りに設置したトイレの換気構造であって、
トイレ室の扉(1)の上部に設けられ、常時開口して室内に自然給気する給気口(11)と、
トイレ室内の下部に設けられた排気口(21)を有する、排気口付きの排気装置(2)とから構成される。
前記扉(1)はトイレ室内に設置された流し器(3)の正面方向または側面方向の先に設けられ、
前記給気口(11)は、所定高さの横長矩形の口形状からなると共に、口形状の図心(中心)が、扉の幅方向中央であってトイレ室の床から所定の高さ(110HC)となるように設定され、
前記排気口(2)は、所定径の円形または所定幅の矩形の口形状からなると共に、口形状の図心(中心)が、流し器(3)の片側方または/および後方の床上又は壁上であって、扉内面から奥壁への真直後方へ所定の後方距離(210D)を開けた位置となるように設定され、
トイレ室内の正面または側面視にて、扉(1)内面の給気口(11)の前記所定高さの下端・上端と排気口の前記所定幅の前後端とをそれぞれ直線的に結んで形成される中心気流領域(A20)の少なくとも一部が、流し器(3)の汚物溜まり(30)の一部と交わるように設定されることを特徴とする。
【0015】
[3]前記給気口(11)は、水平方向の下辺と、これに平行な上辺と等間隔で有した横長水平の所定代表幅の口形状からなるものであって、前記扉(1)の設置壁面視におけるトイレ室幅の三分の一以上を前記開口の所定代表幅として、扉の幅方向中央に設けられることを特徴とする。
【0016】
[4]前記給気口(11)は、扉の上辺と平行な切り欠き面(11B)とその両端の傾斜面(11S)とで断面多角形状に切り欠いた切り欠き部(11B,11S)と、扉の上枠12Tとによって組み合わせ構成されることを特徴とする。
【0017】
[5]前記いずれかのトイレの換気構造において、扉は室外へ開く開き扉であり、かつ、扉の開閉中に排気装置が運転中となるよう制御されることを特徴とする。
【0018】
[6]前記排気装置(2)は、排気口からトイレ室外に連通されるとともに、他の居室から連通された共有ファンからなることを特徴とするトイレの換気構造。
【発明の効果】
【0019】
本発明は中心気流領域を主な領域とした斜め方向の下方気流が生じて室内空気が換気されるところ、室内の側面視又は正面視の少なくともいずれかにて、汚物が溜まる汚物溜まりの領域と、この中心気流領域とが互いの一部分で交わることで、汚物溜まりの汚物の臭気を過度に上昇させることなく効率的に室内換気することができるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】正面視における扉と扉枠の外観およびトイレ室の透視図
図2】正面視におけるトイレ室内の換気構造の説明図
図3図1の給気口の拡大図
図4】側面視におけるトイレ室内の換気構造の説明図
図5図4の部分拡大図
図6】平面視におけるトイレ室内の換気構造の説明図
図7】開口状態におけるトイレ室内の換気構造の説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の形態例について、実施例1~7の各図として示す図面と共に説明する。
本発明は、流し器である大便器または汚物流しが室内に一機またはそれ以上設置されたトイレ室(トイレ、バスルーム、洗面室を含む)内を換気する換気機構であって、
扉の上部をトイレ室内の唯一の給気口(11)とする給気口つきの扉(1)と、
トイレ室内に備えた排気口(21)によって室外排気する排気装置(2)と
トイレ室の一の壁寄りに設置された、汚物溜まり(30)を有する流し器(3)と、を備える。
【0022】
前記扉(1)はトイレ室内に設置された流し器(3)の側方又は正面前方に設けられ、前記給気口(11)は扉(1)の所定の高さ又は扉の上部に、有効な換気開口としてひとつだけ設けられ、それ以外に常時開口した換気開口は有さない(換気機能を果たさない扉枠との当たり部などのすき間を除く)。給気口はファンなどに接続されておらず、自然給気される。
【0023】
一方、排気口(21)は室内の所定高さ以下の壁面(但し、扉の接地面を除く)又は床面であって、流し器の正面、側面又は平面視投影領域を除く領域内に設けられ、ダクト接続されて、排気装置であるファンと接続され、その先側が排気連通される。排気装置の運転により、扉の給気口から取り入れられた室外の空気から室内の排気口へ向かう中心換気領域が形成され、この中心換気領域によって斜め下方へ向かう室内気流が発生することで、室内の空気が換気される。
【0024】
前記流し器(3)は、汚物を一時的に溜めるための汚物溜まり(30)を有する水洗流し可能な排出器(便器を含む)からなる。
【0025】
以下、各構成について定義または概念、各構成に必要な内容とその意味、並びに機能と作用について説明する。
【0026】
(トイレ室)
トイレ室は、室内に流し器を1つ以上設置した半密閉式のトイレ室の換気構造室、すなわち扉を閉じることで自然通気の給気口、機械排気の排気口以外に排気設備を有さない換気構造室を言い、トイレ、バスルーム、洗面室が含まれる。ただし厳密な密閉構造を指すものではなく、唯一設けた給気口以外に、扉を閉めた状態で扉と扉枠との間の隙間を有するものも含まれる。
【0027】
また、トイレ室の扉(1)は室内外の出入り用の開き扉であり、前記扉はトイレ室内に設置された流し器の正面方向または側面方向の先に設けられる。扉を開けた場合は扉と扉枠との間に隙間が生じ、扉の開閉動作をもって室内気流に変化が生じる。この室内気流の変化を生じた状態で排気口と連通する排気装置が排気運転を開始または継続することが好ましい。例えば、通常の換気スイッチのオン検知に加えて、扉の開閉や室内の点灯のいずれかの検知により、排気装置の排気運転を開始するように制御する。あるいは、流し器の使用や水洗の使用、室内の消灯のいずれかの検知により、排気装置の排気運転の停止タイマーを動作させるように制御する。扉の開閉によって室内気流が可変することを利用して、扉の開閉時又はその前後のタイミングで排気運転を行うよう制御することで、トイレ室内をより効率的に換気できる。
【0028】
流し器(3)は、汚物排出用の汚物溜まり(30)を有した、排出便器又は汚水系統の流し器を言い、大便器、汚物流し、オストメイト流しが含まれる。汚物溜まりは、排出された汚物を一時的に溜める器部を言い、水洗の大便器の場合は汚物溜まりの上縁高さ(30F)が所定の水平ラインに設定されて所定の平面形状で拡がり形成される。汚物溜まりの上縁高さ(30F)の水平ラインとは、汚物溜まりの周部の最も水平に近い面の所定の高さをいう。水洗の大便器の場合、汚物溜まりの上縁高さ(30F)の水平ライン又はその付近は、封止及び流し用の水溜まりとなっている。
給気口(11)は扉に唯一設けられた室内給気用の換気口であり、室外から自然給気する。排気口(21)は室内空気の排出用の換気口であり、排気装置であるファンにダクト連通される。
【0029】
(給気口(11)と排気口(21)の特徴)
給気口(11)は、所定高さの横長の口形状からなり、トイレ室の床から所定の高さ(110Hc)の扉の幅方向中央位置にのみ設けられる。給気口(11)は、扉を閉じた状態のトイレ室外と自然通気する唯一の換気用開口であって、一定高さの水平の横長口形状からなると共に、扉内面での開口形状の図心が、扉の幅方向中央であってトイレ室の床から所定の高さとなるように設定される。扉内面での開口の代表幅(上下位置によって差を設けた場合は平均幅をいう。)は、部屋の幅の三分の一以上となるように設定される。
【0030】
(給気口(11)の位置)
室外空気の給気口(11)の高さ及び設置数は、トイレ室の扉(1)の上部三分の一の範囲内の所定の高さ、さらに好ましくは上部四分の一範囲内の所定の高さとされ、トイレ室の扉に唯一設けられる。なおここでいう所定の高さとは換気口である給気口の口形状の図心をいう。矩形の場合対角線の交点が図心となり、この図心の室内床面からの高さが所定の高さとなる。
【0031】
扉の上部三分の一の範囲内、さらに好ましくは四分の一の範囲内とは、扉の上端又は上端から扉の高さの三分の一範囲だけ下がった位置までの範囲内に口形状の図心の高さが設定されることを意味する。扉は使用者の身長を基準に余長分を加えて設定されるところ、扉の上部三分の一の範囲内、さらに好ましくは四分の一の範囲内の高さであれば、臭いをかじる使用者の鼻腔の高さよりも高く、立位の使用者に汚物溜まりからのにおいを感じさせにくい中心気流領域を、より確実に設定することができる。
【0032】
また、給気口の前記所定の高さは、トイレ室の使用者の身長によって規定することもできる。この場合、少なくとも使用者の平均身長から10センチメートルを差し引いた、鼻腔の基準高さが基準となる。例えば使用者が女性の場合は、平均身長から10センチメートル小さい女性148センチメートル以上、使用者が男性のみの場合は平均身長から10センチメートル小さい160センチメートルとして設定される。
【0033】
さらに給気口(11)は、扉内に設定されることで。扉の開閉時の室内気流の変化を促すことで、室内に残った臭気を感じさせにくいものとなる。
【0034】
排気口(21)は、所定径の円形または所定幅の矩形の口形状からなり、流し器(3)の少なくとも片側の側部後方であって、扉内面から奥壁への真直後方へ所定の後方距離(210Dv)の床位置にのみ設けられる。具体的には、排気口(21)の開口形状の図心が、流し器の片側方または/および後方の床上又は壁上であって、扉内面から奥壁への真直後方へ所定の後方距離を開けた位置となるように設定される。
【0035】
(排気口(21)の位置)
排気口(21)は、扉を除いた室内の壁面又は床面であって、流し器の汚物溜まりの上縁高さよりも低い位置、かつ、流し器の正面、側面又は平面視投影領域を除く領域内に設けられる。汚物溜まりの上縁高さ(30F)の水平ラインを規定したとき、この水平ラインよりも低い側壁又は奥壁の壁面であって、流し器の側面視又は正面視の投影領域を除く領域内に設けられる。例えば図にて十字模様を付した領域(A20)の面内または面上に設けられる。或いは、床面の室内の奥壁寄りの領域であって、流し器の平面視の投影領域を除く領域内に設けられる。
また、中心換気領域による斜め下方の室内気流を発生させるため、扉の内面から所定の水平距離だけ奥壁寄りへ離れた後方位置に設けられることが好ましい。給気口と床面の排気口とによって、汚物の臭気が上昇することなく効率的に室内換気できる。
【0036】
(中心気流領域の設定)
扉の所定高さの位置に設けた給気口と、トイレ室内の汚物溜まりよりも下方の壁面またな床面に設けた排気口とによって、トイレ室内にて、斜め下方の気流からなる中心気流領域が概念設定され、この中心気流領域の一部が、側面視又は正面視のいずれかにおいて、流し器の汚物溜まりの一部と交わるように設定されることを特徴とする。中心気流領域を主な領域として気流が生じて室内空気が換気されるところ、この室内の気流が、汚物溜まりの汚物の臭気が汚物溜まりから不要に上昇することなく効率的に室内換気され、特に脱臭ないし防臭機能を有する。
【0037】
トイレ室内の側面視にて、扉(1)内面の給気口(11)の前記所定高さの下端・上端と排気口の前記所定幅の前後端とをそれぞれ直線的に結んで形成される中心気流領域(A20)の少なくとも一部が、流し器(3)の前記汚物溜まり部(30)の後方距離と交わるように設定されることを特徴とする。
【0038】
(側面視における中心気流領域)
ここで、側面視における本発明の中心気流領域(A20)について説明する。
【0039】
中心気流領域(A20)とは、トイレ室内を側面視でみたときに、給気口(11)の所定高さの下端・上端と排気口の前記所定幅の前後端とをそれぞれ直線的に結ぶことで概念される矩形の空間領域をいう。例えば図4図5にてドットで示す、直線で区画される領域をいう。給気口11から自然給気された室外空気がトイレ室内の排気口から室外へ強制換気される第三種換気構造において、トイレ室内から見た給気口11の上下高さと、排気口21の前後幅とを互いに結んでできる側面視領域が直接的な排気ラインの領域として概念したものである。
【0040】
図4図5に示すように、トイレ室内の側面視でみると、この中央換気領域の少なくとも一部、望ましくは全部が、流し器の汚物溜まりの前後領域と交わるように、給気口の高さと排気口の位置が設定される。図4では特に、中央換気領域の前後幅の全部が、流し器の汚物溜まりの前後領域内に位置している。このことは、流し器の汚物溜まりの上方ないし前方の室内空気が室内下方へ強制換気されることを意味する。
【0041】
幅方向よりも前後方向のほうが長いトイレ室では、奥壁よりに流し器が設置された場合、トイレの使用者は、流し器の正面側の扉からトイレ室に入り、流し器の汚物溜まりの上方に起立又は着座するところ、扉上部の唯一の給気口から排気口へ向かう、側面視斜め下方の略矩形の中心気流領域で室外排気することで、汚物溜まりから上方への臭気の上昇を効率的に抑えることができる。
【0042】
(平面視における中心気流領域)
図6,7に示すようなトイレ室内の平面視にて、扉(1)内面の給気口(11)の所定幅の左右端と排気口の所定幅の左右端とをそれぞれ直線的に結んで形成される中心気流領域(A20)の少なくとも一部は、流し器(3)の汚物溜まり部(30)の幅方向の一部と交わるように設定されることを特徴とする。
【0043】
(正面視における中心気流領域)
図2に示すようなトイレ室内の正面視にて、扉(1)内面の給気口(11)の所定幅の左右端と排気口の所定幅の左右端とをそれぞれ直線的に結んで形成される中心気流領域(A20)の少なくとも一部は、流し器(3)の汚物溜まり部(30)の幅方向の一部と交わるように設定されることを特徴とする。
【0044】
また、流し器の汚物溜まり部よりも下方の床寄りの空気は、排気口に近いため、平面視にて前方の扉から室内後方へ向かう排気気流によって効率的に室外排気される。
【0045】
図7に示すように扉を開いた状態でも、扉の開口幅と排気口の開口幅を結んだ中央領域(Z22)から排気口の設置側の側部領域(Z3)までは排気効率が特に高い。このため、その反対側の側部領域(Z21)まで床寄りの空気は効率的に排気され、臭気が汚物溜まり部よりも上方へ向かいにくいものとなっている。
【0046】
これは、人糞のニオイの主成分インドールは空気の4倍程度重く、床付近に大便の臭気がたまるという性質を利用したものである。また、体裁を保つとともに汚物の臭気を過度に感じさせない効率的な換気が可能となっている。
【0047】
室内の側面視又は正面視の少なくともいずれかにて、汚物溜まりの水平領域と、この中心気流領域とが互いの一部分で交わるように、給気口、排気口の室内における位置及び高さ、並びに各口の口形状と大きさを設定している。このことで、汚物溜まりの汚物の臭気を過度に上昇させることなく効率的に室内換気することができる。
【0048】
(給気口の形状)
給気口(11)は、上下辺が等距離のまま横方向に伸びた横長水平形状、かつ上辺と下辺の間で穴幅を可変させた平行2辺付きの横長多角形形状水平方向の下辺と、これに平行な上辺とを等間隔で有した横長の口形状からなるものであって、前記扉(1)の上部中央にのみ設けられる。
【0049】
さらに好ましくは、上辺を下辺よりも長くした多角形形状、中でも横長の倒立台形形状またはこれに近似した形状からなる。実施例の給気口(11)のように所定高さの「下辺よりも上辺が長い台形」の室内開口形状とし、上辺を下辺よりも長くすることで、給気口内の高部、低部それぞれで給気流速にわずかな差が生じる。これにより、トイレ室内の空気の効率的な換気が可能となる。
【0050】
より具体的には、給気口は扉上部にて上下の給気流速に差を設けて設置される。一方、排気口はトイレ室内の奥壁寄りに設置されるため、室内の側面視において、流し器の汚物溜まり部の上方及び前方付近の空気は、これによりもさらに上方及び後方付近の空気よりも効率的に排気される。室内で給気気流の流速差が生じることで、不要な空気たまり(死に領域)が生じず、これによってトイレ室内を効率的に排気できる。
【0051】
給気口の口形状の幅は、扉の内面にて所定の代表幅(上下の角部でわずかに変化する場合または上下で異なる場合は平均幅を代表幅とする。)からなるものであって、前記扉の設置壁面視におけるトイレ室幅の三分の一以上を前記開口の所定代表幅として、扉の幅方向中央に設けられる。
【0052】
また実施例の給気口(11)は、扉の上辺と平行な切り欠き面(11B)を含む多面形状に切り欠いた切り欠き部(11B,11S)と、切り欠き面の近傍に対向する扉の上枠(12T)とによって、扉の開閉時に分離可能に組み合わせ構成される。
【0053】
切り欠き部と扉の上枠との組み合わせによって給気口を構成することで、比較的大きい一塊の給気口による給気流量を確保しつつ、体裁がよく視界の遮蔽性にも優れたトイレ用扉とすることができる。
【0054】
また、切り欠き面は水平面からなり、その両端をそれぞれ、平面又は曲面の傾斜面(11S)で構成してなる。給気口(11)が上方から下方に向かって小さい幅となるよう、両端の傾斜面(11S)は、対水平比にて所定の傾斜角度11θで上方へ向かって外傾斜してなる。傾斜面の水平比の傾斜角度は、少なくとも30度から60度の間、好ましくは30度から45度の間に設定されることで、開口幅の変化による上下非対称の気流状態を確保することができる。
【0055】
実施例の給気口は、扉の上辺部で上方開口する傾斜面を有して、上方へ広い幅となるように両端を約45度の傾斜角度で切り欠いた所定幅の切り欠き部と、これに対向する扉の上枠とによって組み合わせ構成し、扉の開閉に伴って上下に分離する。特に扉が開き扉からなる場合、扉の開閉によって給気口上辺寄りの開口幅が拡がる可変幅のように拡がって上枠と分離することで、扉の開閉時に室内気流を変化させ、或いは室内に乱流を生じさせる。これにより、トイレ室内空気のより効率的な換気が可能となる。
【0056】
切欠き面の両端の傾斜面(11S)は、水平比30度~60度の範囲内の傾斜角度で斜め上外側方へ傾斜した直線辺又は曲線辺からなることを特徴とする。
【0057】
トイレ室と共に他の居室を備えた家屋の換気構造におけるトイレ室の換気構造であって、排気装置(2)は、トイレ室の排気口とダクト連通されるとともに、他の一又は複数の居室の各排気口からもダクト連通された共有ファンからなることを特徴とする。つまり、共有ファンからなる排気装置(2)は、トイレ室の換気構造だけでなく、一又は複数の、他の居室の換気構造を兼ねた、家屋全体の排気装置からなる。家屋のトイレ及び各居室に設けた各排気口と並列接続され、トイレ室及び各居室の室内空気を機械排気する。

共有ファンである排気装置の運転は、トイレ室の使用(例えば消灯ないし点灯)の検知だけでなく、他の居室の使用状態(例えば消灯ないし点灯)の検知によって制御される。
【0058】
斜めの下方気流を室内の中心気流領域として強制排気の中心気流を生じさせることで、室内空気のうち汚物溜まり上空の臭気を不要に上昇させず、室内を効率的に換気する。
【0059】
(実施例1)
以下、実施例の形態について実施例として示す図面とともに説明する。
【0060】
図1~7に示す実施例のトイレ室は、流し器である大便器を一機設置したトイレ室の換気構造の説明図である。
【0061】
このトイレ室は、扉の給気口以外に外気との自然通気口を有さず、給気口からの自然給気と、排気装置(2)による排気口からの機械排気とによって排気される、トイレ室単体で見た場合に第三種換気の換気構造である。ただし、家屋全体で室内に通じる機械給気設備を備える場合もトイレ室単体で見た場合は第三種換気となる。前記第三種換気の換気構造とは、家屋全体の第一種換気設備を除く趣旨ではない。
【0062】
トイレ室の基本構成として、
扉の上部をトイレ室内の唯一の給気口(11)を扉上端に備えた扉(1)と、
トイレ室内に備えた排気口(21)によって室外排気する排気装置(2)と
トイレ室の奥壁寄りに設置された、汚物溜まり(30)を有する流し器(3)と、を備える。
【0063】
実施例のトイレ室は幅方向よりも奥行き方向が比較的長い室内平面形状であり、室内の正面に開き式の扉(1)が設けられ、室内の奥壁寄りに流し器(3)が設置される。つまり、流し器(3)の正面前方に扉(1)が設けられる。
【0064】
給気口(11)は、扉の上端にて扉の上枠との間に設けられた所定の一定高さの横長の口形状からなり、トイレ室の床から所定の高さ(110Hc)の扉位置として扉の幅方向中央に、所定の平均口幅で設けられる。
【0065】
前記排気口(2)は、所定幅の円形または矩形の口形状からなり、流し器(3)の少なくとも片側の側部後方であって、扉内面から奥壁への真直後方へ所定の後方距離(210D)だけ離れた床位置にのみ設けられる。
【0066】
そして、図4図5に示すように、トイレ室内の側面視にて、扉(1)内面の給気口(11)の前記所定高さの下端・上端と排気口の前記所定幅の前後端とをそれぞれ直線的に結んで形成される中心気流領域(A20)の少なくとも一部が、流し器(3)の前記汚物溜まり(30)の水平仮想線(水平ライン30F)と交わるように設定されることを特徴とする。
【0067】
実施例ではさらに、部屋の前方正面の扉に設けた、横長倒立台形の上下非対称の口形状からなる給気口と、部屋の後方寄りの位置に設けた、床面の点対称の口形状からなる排気口とによって、汚物の臭気が上昇することなく効率的に室内換気できることを特徴とする。
【0068】
但し、扉を開く動作中及び開いた状態では、給気口の位置が変わるとともに、入り口開口が換気用の給気口として機能するとともに、室内の中心気流領域を主とする下方気流の方向を大きく変えることなく新鮮空気の取り込み位置を可変させることで、室内空気を効率的に換気する。
【0069】
また実施例では、給気口(11)が上方から下方に向かって小さい幅となるよう、切り欠き面の両端を、所定水平比傾斜角11SAの傾斜面(11S)で左右対称に構成している。
【0070】
前記切欠き面の両端の傾斜面は、少なくとも30度~60度の範囲内の傾斜角度で傾斜した直線辺又は曲線辺からなることが好ましい。
【0071】
切り欠き面を構成する水平面又は傾斜面は、平面に限らず、扉の厚さ方向に沿って少なくとも一部が湾曲する曲面で構成してもよい。
【0072】
扉が開き扉からなり、排気装置の運転中に開閉されることで、開き扉の開閉に伴い室内乱流が発生し、かつ室内の換気気流に変化を与えることで効率的に換気できる。
【0073】
大便器側部後方寄りの床面又は壁面に設けた排気口から室外排気することで、室内の設置物に影響されず効率的に換気することができる。
【0074】
また実施例では、トイレだけ独立のパイプファンではなく、シロッコファンを使っている家全体の換気システムに連動させて排気している。これは、高気密住宅は負圧になりやすく、負圧になった状態でパイプランファンを回しても、パイプファンの静圧(パワー)が弱いという状況を回避するものである。
【0075】
上記の共有ファンとして静圧の比較的強いシロッコファンを用いれば、負圧に負けることなく計画通り換気ができる。
【0076】
トイレ室の換気量は、例えば30~40m/h、あるいは7.5~10回/hとする。設計上は、6~8分でトイレ内の空気が入れ替わる換気量に設定し、かつ、扉の開閉中に換気が継続するよう排気装置を運転継続させるように制御される。
【0077】
扉面からの室内上部給気と、汚物溜まりよりも低い位置の下部排気とを組み合わせることにより、悪臭が鼻の前を通過しにくくすることでニオイを感じにくくすることができる。これは、人糞のニオイの主成分インドールは空気の4倍程度重いので、床付近にたまるという性質をうまく使った換気構造となっている。なお尿のニオイの主成分アンモニアは、空気より軽いものの、巻き込み流で上部空気も換気することとで臭気を感じさせないようにしている。
【0078】
さらに、吸気口の幅すなわち切欠き部のカットの長さを口形状の上下位置で可変させることによって部屋中央の流量が部屋端よりも少し増える。これにより上下に換気気流の流速差が生じ、斜め下方向の中心換気気流の上側よりも下側、つまり汚物溜まりに面した側の室内領域がより、排気効率の高いものとなる。
【0079】
本発明の実施形態は以上に説明した構成や形状、寸法に限定されることなく、種々の変更または部分的な要素の抽出、分離構成或いは組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 扉(開き扉)
11 給気口
110HC 給気口の設置高さ
11B 11S 切り欠き面、傾斜面
12T 扉の上枠
2 排気装置
21 排気口
210D 排気口の設置後方距離
30 汚物溜まり
30F 汚物溜まり上縁の高さ
31F 汚物溜まり位置の高さ
3 流し器(大便器又は汚物流し器)
EH 立位使用者の鼻腔基準高さ
RS 室床
RW1,RW2,RW3 室壁
RC 天井
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7