(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131276
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】衣類処理装置
(51)【国際特許分類】
D06F 35/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
D06F35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041448
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】大村 秋彦
(72)【発明者】
【氏名】池水 麦平
(72)【発明者】
【氏名】奥田 裕暁
(72)【発明者】
【氏名】筒井 慎治
(72)【発明者】
【氏名】松井 英史
【テーマコード(参考)】
3B168
【Fターム(参考)】
3B168AE01
3B168AE07
3B168BA10
3B168BA59
3B168WA18
(57)【要約】
【課題】本開示は、ヘッドユニットの向きを安定させ、吸引管における汚水の逆流を抑制する衣類処理装置を提供する。
【解決手段】本開示の衣類処理装置100は、噴出口46を有し水分を処理対象物Cに供給する水分供給装置4と、吸引口53を有し処理対象物Cに付着する水分を吸引する吸引装置5と、噴出口46および吸引口53が上下に隣接して設けられるヘッドユニット2と、ヘッドユニット2を保持して移動させる移動装置7と、を備え、ヘッドユニット2内の吸引流路55aは、吸引口53から吸引方向に沿って下り傾斜で形成され、吸引管55は、ヘッドユニット2が移動しても吸引口53より低い位置に保たれるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を懸下または縦方向に係止する係止部と、
噴出口を有し水分を前記処理対象物に供給する水分供給装置と、
吸引口を有し前記処理対象物に付着する水分を吸引する吸引装置と、
前記噴出口および前記吸引口が上下に隣接して設けられるヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを保持して移動させる移動装置と、を備え、
前記水分供給装置は、供給する水分を貯蔵する給水タンクと、前記噴出口に連通し、前記給水タンクの水分を供給する供給管および給水ポンプと、を有し、
前記吸引装置は、吸引される水分を貯蔵する排水タンクと、前記吸引口に連通し、前記排水タンクに水分とともに空気を誘導する吸引管および吸引ファンと、を有し、
前記ヘッドユニット内の吸引流路は、前記吸引口から吸引方向に沿って下り傾斜で形成され、
前記吸引管は、前記ヘッドユニットが移動しても前記吸引口より低い位置に保たれるように構成される、
衣類処理装置。
【請求項2】
前記吸引口は前記噴出口の上方に設けられ、
前記水分供給装置の水分供給動作および前記吸引装置の吸引動作が、前記ヘッドユニットが下方に移動するときに同時に行われるように構成される、
請求項1に記載の衣類処理装置。
【請求項3】
前記ヘッドユニット内において、前記吸引流路は前記吸引口から噴出流路の側面側に導かれて下向きに形成され、
その下向き部分は、噴出流路と並行に構成される、
請求項1又2に記載の衣類処理装置。
【請求項4】
前記噴出流路は、前記ヘッドユニット内で前記噴出口に対して実質的に水平方向に直線的に形成されるとともに、前記吸引流路の下向き部分を貫通して連通接続される、
請求項1又は2に記載の衣類処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、衣類等の処理対象物の汚れなどを除去する衣類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、高温のスチームにより衣類等の処理対象物に付着した水溶性の汚れおよび油溶性の汚れに対し、高温のスチームの噴出と吸引を同一方向から同時に行うことにより、汚れを除去する衣類処理装置を開示する。この衣類処理装置は、処理対象物に水分の供給を行う水分供給装置と、処理対象物に付着する水分とともに空気の吸引を行う吸引装置と、を備え、吸引装置は、水分とともに吸引が行われた空気から水分を分離するトラップとなる排水タンクと、吸引装置内への処理対象物の引き込みを抑制する引き込み抑制部と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、高温のスチームにより衣類等の処理対象物に付着した水溶性の汚れおよび油溶性の汚れを除去できる。しかし、特許文献1の構成では、使用者がヘッドユニットを手で保持しながら衣類処理を行うため、使い方次第でヘッドユニットが傾き、吸引流路に上向きの傾斜が生じることで、汚れが溶解した汚水が吸引流路を逆流し、衣類に汚れが再付着する恐れがある。
【0005】
本開示は、処理対象衣類を懸下し、衣類に当接するヘッドユニットが移動しながらスチームの噴出と吸引を行う衣類処理装置において、ヘッドユニットの向きを安定させ、かつヘッドユニット内の吸引流路が下り傾斜で形成され、吸引管は常に吸引口より低い位置に保たれることで汚水の逆流を抑制する衣類処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における衣類処理装置は、処理対象物を懸下または縦方向に係止する係止部と、噴出口を有し水分を処理対象物に供給する水分供給装置と、吸引口を有し処理対象物に付着する水分を吸引する吸引装置と、噴出口および吸引口が上下に隣接して設けられるヘッドユニットと、ヘッドユニットを保持して移動させる移動装置と、を備え、水分供給装置は、供給する水分を貯蔵する給水タンクと、噴出口に連通し、給水タンクの水分を供給する供給管および給水ポンプと、を有し、吸引装置は、吸引される水分を貯蔵する排水タンクと、吸引口に連通し、排水タンクに水分とともに空気を誘導する吸引管および吸引部と、を有し、ヘッドユニット内の吸引流路は、吸引口から吸引方向に沿って下り傾斜で形成され、吸引管は、ヘッドユニットが移動しても吸引口より低い位置に保たれるように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示における衣類処理装置は、汚水が滞留することなくスムーズに吸引され、吸引口から汚水が逆流して衣類へ再付着することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1における衣類処理装置の概略構成図
【
図2】実施の形態1における衣類処理装置の基部ユニットの概略構成図
【
図3】実施の形態1における衣類処理装置のヘッドユニットの概略構成図
【
図4】実施の形態1における衣類処理装置の他のヘッドユニットの概略構成図
【
図5A】実施の形態1における衣類処理装置のヘッドユニットの流路の概略側面図
【
図5B】実施の形態1における衣類処理装置のヘッドユニットの流路の概略正面図
【
図6A】実施の形態1における衣類処理装置の他のヘッドユニットの流路の概略側面図
【
図6B】実施の形態1における衣類処理装置の他のヘッドユニットの流路の概略正面図
【
図7A】実施の形態1における衣類処理装置の他のヘッドユニットの流路の概略側面図
【
図7B】実施の形態1における衣類処理装置の他のヘッドユニットの流路の概略正面図
【
図8A】実施の形態1における衣類処理装置の他のヘッドユニットの流路の概略側面図
【
図8B】実施の形態1における衣類処理装置の他のヘッドユニットの流路の概略正面図
【
図9】実施の形態1における衣類処理装置のヘッドユニットの操作の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、スチーマは、衣類の皺を伸ばすことが主な機能であり、衣類の汚れの除去については限られていた。例えば、スチーマが空気を吸引するクリーナ構成を備え、布の表面に付着した粒子状の汚れを一緒に吸引して除去する技術があった。また、蒸気クリーナのように、床およびカーペットなどに染み付いた水分または油分に蒸気を噴出して吸引除去する技術があった。しかし、これらの技術では、衣類の一部に染み付いた汚れを手軽に除去することができないことから、特許文献1のように、高温のスチームにより衣類等の処理対象物に付着した水溶性の汚れおよび油溶性の汚れを除去する技術が開示された。しかし、特許文献1の構成では、使用者がヘッドユニットを手で保持しながら衣類処理を行うため、使い方次第でヘッドユニットが傾き、吸引流路に上向きの傾斜が生じることで、汚れが溶解した汚水が吸引流路を逆流し、衣類に汚れが再付着する恐れがある、という課題を発明者らは発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0010】
そこで、本開示は、処理対象物に接触するヘッドユニットに汚水が滞留することなくスムーズに吸引され、吸引口から汚水が逆流して衣類へ再付着することを抑制できる衣類処理装置を提供する。
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより本開示の主題を限定することを意図していない。
【0013】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図9を用いて、本開示における衣類処理装置の一例として、実施の形態1における衣類処理装置100を説明する。なお、衣類処理装置100で処理される処理対象物Cは、主に衣類などの布製品であり、スカーフ、ハンカチ、タオルおよびシーツなど
も含まれ、この類の軽くて柔らかい変形物であれば特に限定されない。
【0014】
[1-1.構成]
本実施の形態で説明する衣類処理装置100は、スチーマ機能、クリーナ機能およびスチームクリーナ機能を有し、ユーザがこれらの機能を使い分けられるように構成される。ここで、スチーマ機能とは、水蒸気を噴出して処理対象物Cを湿らせ、皺を伸ばしたり汚れを溶解したりする機能である。クリーナ機能とは、処理対象物Cの表面に付着した埃および水分などを吸引する機能である。スチームクリーナ機能とは、処理対象物Cに染み込んだ汚れに水蒸気を噴射して溶解させ、汚れを水分とともに吸引する機能である。
【0015】
衣類処理装置100の構成を、
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、衣類処理装置100の概略構成図である。
図2は、衣類処理装置100の基部ユニット1の概略構成図である。
図3は、衣類処理装置100のヘッドユニット2の概略構成図である。なお、
図1に示すように、処理対象物Cを基準に左右(X方向)、上下(Y方向)および前後(Z方向)を規定する。
【0016】
衣類処理装置100は、基部ユニット1と、処理対象物Cに接触する接触面2aを有するヘッドユニット2と、基部ユニット1とヘッドユニット2とを接続する柔軟な接続管3と、ヘッドユニット2を保持して移動を支える移動装置7と、を備える。水分供給装置4、吸引装置5および制御装置6の主要部分が、基部ユニット1、ヘッドユニット2および接続管3の内部に設けられる。すなわち、衣類処理装置100は、水分供給装置4と吸引装置5とを備える。移動装置7が基部ユニット1の上部に設けられ、ヘッドユニット2を保持する。なお、衣類処理装置100は、ハンガ8などに掛けられた処理対象物Cを係止する係止部9を有する。また、係止された処理対象物Cおよび移動装置7などを収容するキャビネット10を備えてもよいし、キャビネット10がない開放的な構成でもよい。
【0017】
まず、移動装置7の構成を、
図1を用いて説明する。移動装置7は、ヘッドユニット2を保持して移動させる保持部71、および、保持部71が自在に移動するための左右レール72、上下レール73、前後レール74を含む。左右レール72は、2本のレールがXZ面上X方向に平行に基部ユニット1に固定される。前後レール74は、2本の左右レール72に跨って設けられ、左右(X方向)に平行移動する。上下レール73は、前後レール74に垂直に設けられ、前後(Z方向)に平行移動する。
【0018】
保持部71は、上下レール73に移動可能に設けられ、ヘッドユニット2の向きがXYZの3方向すべての軸回りに対して不安定にならないように保持する。そして、ヘッドユニット2は、これらのレールの動きを複合することにより、処理対象物Cに対して、左右(X方向)、上下(Y方向)および前後(Z方向)に自在に移動できる。保持部71および上下レール73、前後レール74は、モータおよびギア等の組み合わせによる駆動部を備えて制御装置6によりヘッドユニット2の移動が自動制御されるように構成されてもよい。また、移動装置7は、ヘッドユニット2の向きが変わらないように保持しつつ、前後および上下左右方向に使用者が任意に手で動かせるようにフリーの状態にも構成されてもよい。
【0019】
なお、吸引管55を内包する接続管3は、ヘッドユニット2が移動しても吸引口53より低い位置に保たれるように構成される。つまり、吸引管55は、ヘッドユニット2が移動しても吸引口53より低い位置に保たれるように構成される。
【0020】
次に、水分供給装置4の構成を、
図2および
図3を用いて説明する。水分供給装置4は、給水タンク41、給水ポンプ42、ヒータ44を有する蒸気発生部43、供給管45、噴出流路45aおよび噴出口46を含む。水分供給装置4は、基部ユニット1からヘッド
ユニット2に蒸気等の水分を供給し、噴出口46から蒸気を噴射する。具体的には、
図2に示すように、給水タンク41、給水ポンプ42および蒸気発生部43が、基部ユニット1に設けられる。給水タンク41は、着脱可能に構成される。蒸気発生部43の構成は、特に限定されないが、ヒータ44はシーズヒータなどで構成されてもよい。
【0021】
そして、
図3に示すように、蒸気発生部43で加熱された水が水蒸気になって噴出する噴出口46がヘッドユニット2の接触面2aに設けられる。接触面2aは、ヘッドユニット2が処理対象物Cに触れる先端面である。供給管45は、蒸気発生部43と噴出口46とを連通接続する。供給管45は、接続管3内に収容され、ヘッドユニット2内の噴出流路45aを含む。
【0022】
なお、ヘッドユニット2内の噴出流路45aに蒸気発生部43から供給される蒸気を加熱する補助加熱部47が設けられてもよい。これにより、噴射される蒸気を再加熱することができる。
【0023】
なお、衣類処理装置100は、
図4に示されるように、蒸気発生部43がヘッドユニット2内に設けられるように変形されてもよい。この場合、変形に係る衣類処理装置は、基部ユニット1に設けられる給水ポンプ42から供給管45を通じて、給水タンク41内の水がヘッドユニット2内の蒸気発生部43に送られる構成となる。
【0024】
次に、吸引装置5の構成を、
図2および
図3を用いて説明する。吸引装置5は、排水タンク51、吸引ファン52、吸引口53、引き込み抑制部54、吸引管55、吸引流路55aおよび排気口56を含む。吸引装置5は、負圧を発生させることで、処理対象物Cに付着する水分を空気とともに吸引する。具体的には、
図2に示すように、排水タンク51および吸引ファン52が、基部ユニット1に設けられる。
【0025】
そして、
図3に示すように、吸引口53がヘッドユニット2の接触面2aに設けられる。吸引口53は、ヘッドユニット2の移動方向に対して、噴出口46の後方となるように配置される。つまり、噴出口46および吸引口53が上下に隣接して吸引口53が噴出口46の上方になるようにヘッドユニット2に設けられる。吸引管55は、吸引口53と排水タンク51とを連通接続する。吸引管55は、接続管3内に収容され、ヘッドユニット2内の吸引流路55aを含む。
【0026】
また、吸引装置5内への処理対象物Cの吸込み(引き込み)を抑制する引き込み抑制部54が吸引流路55aに設けられる。引き込み抑制部54は、処理対象物Cを吸い込まない程度の粗いメッシュで構成される。
【0027】
基部ユニット1に設けられる排水タンク51は、着脱可能に構成される。排水タンク51は、水分とともに吸引される空気から水分を分離するトラップ機能を有する。このため、排水タンク51の内部には、吸引された空気から水分を効率よく分離する邪魔板51aが設けられてもよい。邪魔板51aの構成は、特に限定されないが、
図2に示すように、排水タンク51に流入する空気が衝突して乱流が発生するように設けられるとよい。また、例えば、排水タンク51の入口近傍に疎水性フィルタが設けられてもよい。
【0028】
そして、水分が分離された空気を吸引する吸引ファン52が、排水タンク51に連通して設けられる。吸引ファン52を通過した空気を排出する排気口56が、基部ユニット1の側面に設けられる。吸引空気に交じって流入した埃を捕捉するフィルタ57が、排気口56に設けられる。
【0029】
ここで、ヘッドユニット2内における供給管45である噴出流路45a、および、吸引
管55である吸引流路55aの構成を4種類例示し、ヘッドユニット201~204として
図5A,B~
図8A,Bを用いて説明する。これらの図面番号において、末尾Aはヘッドユニットを側面から見た概略構成図であり、末尾Bはこのヘッドユニットを正面から見た概略構成図である。
【0030】
図5Aおよび
図5Bに示すヘッドユニット201は、上下に配置された噴出口46および吸引口53に対して、噴出流路45aおよび吸引流路55aは、それぞれ後方にゆくに従って僅かに下り傾斜となるように連通接続される。つまり、吸引流路55aは、吸引口53から吸引方向に沿って下り傾斜となるように形成される。そして、それぞれの流路は下向きになるように形成され、噴出流路45aが前側に、吸引流路55aが後側になるようにして、2本が前後に並行して配置される。この配置により、ヘッドユニット201の前後の寸法Dが比較的大きくなるが、噴出口46および吸引口53での空気の流れは整流されて概ね均等になる。そして、汚水が吸引流路55aで滞留することなくスムーズに吸引され、吸引口53から汚水が逆流して衣類へ再付着することを抑制できる。
【0031】
図6Aおよび
図6Bに示すヘッドユニット202は、上下に配置された噴出口46および吸引口53に対して、噴出流路45aおよび吸引流路55aは、それぞれ後方にゆくに従って僅かに下り傾斜となるように連通接続される。つまり、吸引流路55aは、吸引口53から吸引方向に沿って下り傾斜となるように形成される。そして、それぞれの流路は下向きになるように形成され、噴出流路45aは正面視で右側に偏り、吸引流路55aは正面視で左側に偏るように形成されて、2本が左右に並行して配置される。この配置により、噴出口46および吸引口53での空気の流れが偏り気味になる可能性があるが、ヘッドユニット202の寸法Dは比較的小さくなる。そして、汚水が吸引流路55aで滞留することなくスムーズに吸引され、吸引口53から汚水が逆流して衣類へ再付着することを抑制できる。
【0032】
図7Aおよび
図7Bに示すヘッドユニット203は、上下に配置された噴出口46および吸引口53に対して、噴出流路45aは噴出口46に向かって実質的に水平に直線的に形成され、吸引流路55aは後方にゆくに従って僅かに下り傾斜となるとともに、噴出流路45aを避けるように湾曲して形成されて連通接続される。つまり、吸引流路55aは、吸引口53から吸引方向に沿って下り傾斜となるように形成される。そして、それぞれの流路は下向きになるように形成され、噴出流路45aが後側に、吸引流路55aが前側になるようにして、2本が前後に並行して配置される。この配置により、吸引流路55aの形状が複雑になるとともに、ヘッドユニット203の寸法Dが比較的大きくなるが、噴出口46および吸引口53での空気の流れは概ね均等になり、特に、噴出流路45aにおいて噴出口46の上下における空気の流れがより均等になる。そして、吸引流路55aにおいて汚水が滞留することなくスムーズに吸引され、吸引口53から汚水が逆流して衣類へ再付着することを抑制できる。
【0033】
つまり、
図6A,Bおよび
図7A,Bでは、ヘッドユニット2内において、吸引流路55aは吸引口53から噴出流路45aの側面側に導かれて下向きに形成され、その下向き部分は、噴出流路45aと並行に構成される。吸引口53が噴出口46の上方に配置される場合、噴出流路45aおよび吸引流路55aがそのまま下方へ屈曲すると噴出流路45aの外周側に吸引流路55aが構成されるため、ヘッドユニット2の奥行方向長さが長くなる。しかし、この構成により、ヘッドユニット2の奥行き方向長さを比較的短縮でき、省スペースとなり、衣類処理装置100の小型化あるいは処理対象物C領域の拡大が可能となる。
【0034】
図8Aおよび
図8Bに示すヘッドユニット204は、上下に配置された噴出口46および吸引口53に対して、吸引流路55aは後方にゆくに従って僅かに下り傾斜に連通接続
され、噴出流路45aは噴出口46に向かって水平に直線的に形成され、吸引流路55aの下向き部分を貫通して連通接続される。つまり、吸引流路55aは、吸引口53から吸引方向に沿って下り傾斜となるように形成される。そして、それぞれの流路は下向きになるように形成され、噴出流路45aが後側に、吸引流路55aが前側になるようにして、2本が前後に並行して配置される。この配置により、吸引流路55aの形状が複雑になるとともに、ヘッドユニット204の寸法Dが比較的大きくなるが、噴出口46および吸引口53での空気の流れが整流されて全体的により均等になり、より均一に洗浄できる。そして、吸引流路55aで汚水が滞留することなくスムーズに吸引され、吸引口53から汚水が逆流して衣類へ再付着することを抑制できる。
【0035】
なお、上記で説明した吸引流路55aの吸引方向に沿った下り傾斜について、少なくとも流路の底面が下り傾斜になっていればよい。つまり、吸引された汚水が吸引口53に逆流しないように形成されていればよく、流路の断面積変化等に伴う下面以外の形状は限定されない。
【0036】
次に、制御装置6の構成を、
図2および
図3を用いて説明する。制御装置6は、制御部61、接続線64、電源スイッチ65、機能設定スイッチ66および手元スイッチ67を含む。制御装置6は、例えば、移動装置7、給水ポンプ42、蒸気発生部43および吸引ファン52を制御し、衣類処理装置100の運転を実行する。
【0037】
制御装置6は、電源スイッチ65および機能設定スイッチ66などが基部ユニット1に設けられる。ヘッドユニット2の手動操作を考慮して、動作を一時的にON/OFFさせる手元スイッチ67がヘッドユニット2に設けられてもよい。機能設定スイッチ66は、スチーマ機能、クリーナ機能およびスチームクリーナ機能のうち、ユーザが使用したい機能に切り換えられるように構成され、例えば、4段階に動作を切り替えられるように構成されてもよい。具体的には、1段目は動作をOFFにする。2段目はスチーマ機能として、ヘッドユニット2の噴出口46から水蒸気と高温水を噴出させる水分供給動作だけを行う。3段目はクリーナ機能として、吸引口53から空気および水分を吸い込む吸引動作だけを行う。4段目はスチームクリーナ機能として、水分供給動作および吸引動作を同時に行う。
【0038】
[1-2.動作]
以上のように構成された衣類処理装置100について、以下その動作、作用を説明する。なお、本実施の形態では、衣類処理装置100がスチームクリーナ機能に設定される場合を例に説明する。
【0039】
[1-2-1.衣類処理装置の動作]
ユーザの操作によって、電源スイッチ65がONになり、機能設定スイッチ66がスチームクリーナ機能に設定されると、制御部61は、水分供給装置4および吸引装置5を制御する。まず、制御部61は、水分供給装置4を制御し、水分供給装置4の給水ポンプ42を駆動させ、給水タンク41内の水を蒸気発生部43に供給する。そして、蒸気発生部43に通電してヒータ44を加熱する。蒸気発生部43は、供給された水を加熱して水蒸気を発生させる。衣類処理装置100は、供給される水を瞬間的に水蒸気にして噴出できる程度に蒸気発生部43が加熱されると、使用可能になる。発生した水蒸気は、体積が一気に膨張し、供給管45を経由してヘッドユニット2の噴出口46から勢いよく噴出され、処理対象物Cに高温の水分として供給される。
【0040】
噴出した水分は、処理対象物Cに付着する。処理対象物Cに人の汗の塩分または食品の色素、タンパク質などの水溶性の汚れが付着している場合、これらは付着した水分に溶解する。また、水蒸気は高温であり、処理対象物Cの表面で凝結する。これにより処理対象
物Cに水分が供給されるとともに、凝結熱により処理対象物Cの温度が上昇する。処理対象物Cに人の皮脂などの油分が付着している場合、処理対象物Cの温度が37℃以上に上昇することにより、皮脂成分は付着した水分に溶解して分散する。このようにして、処理対象物Cに付着した汚れは、供給された水分に溶解し、処理対象物Cから除去されやすくなる。
【0041】
また、制御部61は、吸引装置5を制御し、吸引ファン52を駆動させて吸引動作を行う。吸引ファン52は、ヘッドユニット2の吸引口53を負圧にして水分および空気を吸い込む。吸い込まれた水分および空気は、吸引管55を通って排水タンク51に流入する。排水タンク51では、邪魔板51aにより吸引された空気から水分が分離され、水分は汚れ成分とともに排水タンク51内に貯留される。水分を分離された空気は、吸引ファン52を介して排気口56から排出される。水分を含まずに排気口56に到達した埃は、フィルタ57に補足される。
【0042】
このようにして、供給された水分に溶解し、処理対象物Cから除去されやすくなった汚れは、水分とともに吸引される。これにより、衣類処理装置100は、処理対象物Cに付着した水溶性の汚れおよび油溶性の汚れなどを除去できる。
【0043】
このように、スチームクリーナ機能であれば、制御部61は、水分供給装置4および吸引装置5を制御し、上記した水分供給動作および吸引動作を同時に行う。制御部61は、水分の供給と吸引を同時に行うことにより、処理対象物Cに噴出口46が接触したのち、吸引口53が接触することで、1回の処理で処理対象物Cを洗浄できる。また、処理対象物Cが濡れた状態で長時間放置されないため、汚れの広がりを抑制できる。さらに、処理対象物Cがハンガ8に掛けられた状態の場合、濡れた重みで型崩れすることを抑制できる。なお、「水分供給動作および吸引動作を同時に行う」には、処理対象物Cが濡れた状態で長時間放置されない程度に、水分供給動作の開始に遅れて吸引動作が開始される場合、すなわち、水分供給動作の開始から終了までの間に吸引動作が開始される場合が含まれる。つまり、本実施の形態では、衣類処理装置100は、スチームクリーナ機能において水分供給装置4による水分の供給中に、吸引装置5による水分の吸引が行われるように構成される。
【0044】
[1-2-2.ヘッドユニットの操作]
ユーザは、処理対象物Cを衣類処理装置100にセットし、給水タンク41に水を充填して、給水タンク41を基部ユニット1に装着し、電源スイッチ65をONにし、機能設定スイッチ66をスチームクリーナ機能に合わせる。制御部61は、蒸気発生部43の準備が整って使用可能になる前に、移動装置7を制御してヘッドユニット2を処理対象物Cの所定の位置に移動させる。
【0045】
蒸気発生部43の準備が整うと、制御部61は移動装置7を制御し、まず、
図9に示すように、ヘッドユニット2を矢印A1方向に移動させ、処理対象物Cの処理したい部分にヘッドユニット2の接触面2aを密着させて、あるいは近接させて、噴出口46から水蒸気および水分を付着させる。そして、水蒸気および水分が付着した部分に吸引口53が来るように、ヘッドユニット2を処理対象物Cに密着させながら矢印A2で示す下方向に滑らせるようにして移動させる。つまり、吸引口53は噴出口46の上方に設けられ、水分供給装置4の水分供給動作および吸引装置5の吸引動作が、ヘッドユニット2が下方に移動するときに同時に行われる。これにより、水蒸気が処理対象物Cに付着した汚れを溶解し、溶解された汚れは水分とともに吸引され、汚れを含む水分は吸引管55を通って排水タンク51に貯留される。このようにして、衣類処理装置100は処理対象物Cを洗浄できる。
【0046】
また、噴出口46に引き続いて吸引口53が連続して接触することで、処理対象物Cが濡れている時間を短くすることができる。これにより、衣類処理装置100は、処理対象物Cの色落ち、色移りおよび汚れの広がりなどを抑制できる。また、吸引動作がヘッドユニット2の下方移動時に実施されることで、懸架された処理対象物Cが乱れたりハンガ8から落下したりすることなく洗浄できる。
【0047】
このとき、ヘッドユニット2は保持部71で傾かないように保持されて移動するため、吸引口53から下り傾斜になっている吸引流路55aの角度が変化しない。これにより、ヘッドユニット2において、汚水が吸引流路55aに滞留することなくスムーズに吸引され、吸引口53から汚水が逆流して処理対象物Cへ再付着することを抑制できる。また、吸引管55は、ヘッドユニット2が移動しても吸引口53より低い位置に保たれるように構成されており、吸引管55も概ね下り傾斜にすることができる。このため、汚水回収のために吸引力を必要以上に高めることがないため、吸引ファン52を小型化できるとともに、処理対象物Cの損傷が抑制される。
【0048】
ユーザが、例えば、ハンガ8に掛けられたジャケットの全体を処理する場合、機能設定スイッチ66を4段目のスチームクリーナ機能により水分供給動作と吸引動作を同時に行うよう設定する。そして、衣類処理装置100が自動運転に設定されることにより、移動装置7は、ヘッドユニット2の接触面2aをジャケットに密着させながらジャケットの上端から下端まで移動させては上方に戻り、少し横に移動して再度、接触面2aをジャケットに密着させながらジャケットの上端から下端まで移動させることを繰り返す。なお、ヘッドユニット2が上方に戻るときには水分供給動作と吸引動作を停止する。
【0049】
これらの動作において、制御装置6は、図示しないセンサまたはカメラなどを備え、ジャケットの位置および大きさを検知してもよい。また、ジャケットの背面の洗浄が完了すれば、ユーザは、ジャケットが係止される前後の向きを変えて、前面を洗浄するようにしてもよい。これにより、ジャケットの全面を洗浄することができる。
【0050】
なお、ユーザは、衣類処理装置100のスチームクリーナ機能を使用する場合、先行して吸引動作またはクリーナ機能により簡単に除去できる埃などを吸引しておいてもよい。
【0051】
あるいは、ユーザが、例えば、汚れがひどい一部分を処理する場合、ユーザはその部分を手動で繰り返し処理してもよい。また、機能設定スイッチ66を2段目のスチーム機能にして水分供給動作だけで水蒸気と水分とを汚れ部分に集中的に噴射し、汚れが溶解したことを見計らって、機能設定スイッチ66を3段目のクリーナ機能にして吸引動作によって汚れた水分を吸引してもよい。
【0052】
制御装置6は、設定されたスチームクリーナ機能としての動作を完了すると、衣類処理装置100の運転を終了する。なお、ユーザは、その後に排水タンク51に貯留された排水を廃棄し、内部を洗浄して基部ユニット1に装着してもよい。
【0053】
[1-3.効果]
以上のように、本実施の形態において、衣類処理装置100は、処理対象物Cを懸下または縦方向に係止する係止部9と、噴出口46を有し水分を処理対象物Cに供給する水分供給装置4と、吸引口53を有し処理対象物Cに付着する水分を吸引する吸引装置5と、噴出口46および吸引口53が上下に隣接して設けられるヘッドユニット2と、ヘッドユニット2を保持して移動させる移動装置7と、を備え、水分供給装置4は、供給する水分を貯蔵する給水タンク41と、噴出口46に連通し、給水タンク41の水分を供給する供給管45および給水ポンプ42と、を有し、吸引装置5は、吸引される水分を貯蔵する排水タンク51と、吸引口53に連通し、排水タンク51に水分とともに空気を誘導する吸
引管55および吸引ファン52と、を有し、ヘッドユニット2内の吸引流路55aは、吸引口53から吸引方向に沿って下り傾斜で形成され、吸引管55は、ヘッドユニット2が移動しても吸引口53より低い位置に保たれるように構成される。
【0054】
この構成により、ヘッドユニット2において、汚水が吸引流路55aに滞留することなくスムーズに吸引され、吸引口53から汚水が逆流して処理対象物Cへ再付着することを抑制できる。また、吸引管55もヘッドユニット2より低い位置で概ね下り傾斜にすることができる。このため、汚水回収のために吸引力を必要以上に高めることがないため、吸引ファン52を小型化できるとともに、処理対象物Cの損傷が抑制される。
【0055】
また、上述の構成において、衣類処理装置100は、吸引口53は噴出口46の上方に設けられ、水分供給装置4の水分供給動作および吸引装置5の吸引動作が、ヘッドユニット2が下方に移動するときに同時に行われるように構成されてもよい。
【0056】
この構成により、噴出口46に引き続いて吸引口53が連続して接触することで、処理対象物Cが濡れている時間を短くすることができる。これにより、衣類処理装置100は、処理対象物Cの色落ち、色移りおよび汚れの広がりなどを抑制できる。また、吸引動作がヘッドユニット2の下方移動時に実施されることで、懸架された処理対象物Cが乱れたりハンガ8から落下したりすることなく洗浄できる。
【0057】
また、上述のいずれかの構成において、衣類処理装置100は、ヘッドユニット2内において、吸引流路55aは吸引口53から噴出流路45aの側面側に導かれて下向きに形成され、その下向き部分は、噴出流路45aと並行に構成されてもよい。
【0058】
吸引口53が噴出口46の上方に配置される場合、
図5A,Bのように、噴出流路45aおよび吸引流路55aがそのまま下方へ屈曲すると噴出流路45aの外周側に吸引流路55aが構成されるため、ヘッドユニット2の奥行方向長さが長くなる。しかし、この構成により、ヘッドユニット2の奥行き方向長さを比較的短縮でき、省スペースとなり、衣類処理装置100の小型化あるいは処理対象物C領域の拡大が可能となる。
【0059】
また、上述のいずれかの構成において、衣類処理装置100は、噴出流路45aがヘッドユニット2内で噴出口46に対して実質的に水平方向に直線的に形成されるとともに、吸引流路55aの下向き部分を貫通して連通接続されてもよい。
【0060】
この構成により、噴出流路45aが後側に、吸引流路55aが前側になるようにして、2本が前後に並行して配置される。この配置により、噴出口46および吸引口53での空気の流れが整流されて全体的により均等になり、より均一に洗浄できる。そして、吸引流路55aで汚水が滞留することなくスムーズに吸引され、吸引口53から汚水が逆流して衣類へ再付着することを抑制できる。
【0061】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0062】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0063】
実施の形態1では、本開示における衣類処理装置の一例として、基部ユニット1とヘッドユニット2とに分離される構成を有する衣類処理装置100を説明した。しかしながら
、これに限られず、基部ユニット1およびヘッドユニット2が一体で構成されてもよい。これにより、衣類処理装置全体を小型軽量化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示は、衣類等の処理対象物の汚れなどを除去する衣類処理装置として有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 基部ユニット
2 ヘッドユニット
2a 接触面
3 接続管
4 水分供給装置
5 吸引装置
6 制御装置
7 移動装置
8 ハンガ
9 係止部
10 キャビネット
41 給水タンク
42 給水ポンプ
43 蒸気発生部
44 ヒータ
45 供給管
45a 噴出流路
46 噴出口
47 補助加熱部
51 排水タンク
51a 邪魔板
52 吸引ファン
53 吸引口
54 引き込み抑制部
55 吸引管
55a 吸引流路
56 排気口
57 フィルタ
61 制御部
64 接続線
65 電源スイッチ
66 機能設定スイッチ
67 手元スイッチ
71 保持部
72 左右レール
73 上下レール
74 前後レール
100 衣類処理装置
201 ヘッドユニット
202 ヘッドユニット
203 ヘッドユニット
204 ヘッドユニット
A1 矢印
A2 矢印
C 処理対象物
D 寸法