(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131278
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ストレス状態分布推定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20240920BHJP
A61B 5/332 20210101ALI20240920BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61B5/16 110
A61B5/332
A61B5/00 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041451
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】小池 理紗子
(72)【発明者】
【氏名】須藤 良太
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
4C127
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PQ00
4C038PS01
4C117XA07
4C117XB02
4C117XB07
4C117XC12
4C117XD15
4C117XE17
4C117XE54
4C117XH12
4C117XQ18
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4C117XR18
4C127AA02
4C127BB03
4C127GG05
4C127GG11
4C127GG15
4C127KK03
4C127KK05
(57)【要約】
【課題】対象空間のエリアごとのストレス状態の分布を推定可能なストレス状態分布推定システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示のストレス状態分布推定システム100は、複数のエリアを含む対象空間内の複数の対象者1の心電情報と位置情報とを取得する検知ユニット2と、検知ユニット2で取得された心電情報と位置情報に基づいて、複数の対象者1それぞれのストレス指標値と、複数の対象者1のストレス指標値の平均値である全体平均値と、各エリア内に位置する対象者1のストレス指標値の平均値であるエリア平均値と、を求めるストレス推定部32と、エリア平均値と全体平均値とに基づいて各エリアのストレス状態を推定するストレス状態推定部33と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエリアを含む対象空間内の複数の対象者の心電情報と位置情報とを取得する検知ユニットと、
前記検知ユニットで取得された前記心電情報と前記位置情報に基づいて、前記複数の対象者それぞれのストレス指標値と、前記複数の対象者の前記ストレス指標値の平均値である全体平均値と、前記各エリア内に位置する前記対象者の前記ストレス指標値の平均値であるエリア平均値と、を求めるストレス推定部と、
前記エリア平均値と前記全体平均値とに基づいて前記各エリアのストレス状態を推定するストレス状態推定部と、
を備える、ストレス状態分布推定システム。
【請求項2】
前記ストレス状態推定部で推定された前記ストレス状態を表示する表示部をさらに備える、請求項1に記載のストレス状態分布推定システム。
【請求項3】
前記ストレス状態推定部は、前記エリア平均値が、前記全体平均値よりも低い第1レベルと、前記全体平均値よりも高い第2レベルとの間に設定された基準範囲内にある場合は、前記ストレス状態は基準ストレス状態と判定し、前記エリア平均値が前記基準範囲よりも高い場合は、前記ストレス状態は高ストレス状態と判定し、前記エリア平均値が前記基準範囲よりも低い場合は、前記ストレス状態は低ストレス状態と判定する、請求項1に記載のストレス状態分布推定システム。
【請求項4】
前記各対象者に所定の情報を通知する通知部をさらに備え、
前記通知部は、高ストレス状態と判定されたエリアに位置する前記対象者の前記ストレス指標値が前記基準範囲よりも高い状態が所定期間継続した場合に、当該対象者に通知をする、請求項3に記載のストレス状態分布推定システム。
【請求項5】
前記通知部は、高ストレス状態と判定されたエリアに位置する前記対象者の前記ストレス指標値が前記全体平均値よりも高く、且つ、予め設定されたストレス基準値を超える状態が所定期間継続した場合に、当該対象者に通知を行い、前記ストレス指標値が前記ストレス基準値を超える状態が所定期間継続しない場合には、通知をしない、請求項3に記載のストレス状態分布推定システム。
【請求項6】
前記対象空間には、前記対象者の前記ストレス指標値を緩和するための複数の緩和機器が設けられ、
前記ストレス状態推定部によって高ストレス状態と判定されたエリアがある場合、前記複数の緩和機器のうち当該エリアに影響を与える緩和機器を選択的に動作させる、請求項3に記載のストレス状態分布推定システム。
【請求項7】
前記対象空間は、第1対象空間と、前記第1対象空間とは別の第2対象空間を含み、
前記ストレス状態推定部は、前記第1対象空間内に位置する前記対象者の前記ストレス指標値の平均値である第1対象空間平均値と、前記全体平均値とに基づいて前記第1対象空間のストレス状態を推定し、前記第2対象空間内に位置する前記対象者の前記ストレス指標値の平均値である第2対象空間平均値と、前記全体平均値とに基づいて前記第2対象空間のストレス状態を推定する、請求項1に記載のストレス状態分布推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ストレス状態分布推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の心身状態を把握するシステムが知られている。例えば、特許文献1には、対象人物の集中度あるいは対象人物のストレスを判定する心身状態認識システムが記載されている。このシステムは、対象空間に設置される撮影機器で撮影した画像に含まれる対象人物を抽出し、抽出された対象人物の集中度を判定し、その判定の結果に基づいて対象人物のストレスを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の心身状態認識システムは、個人の心身状態の測定、データ蓄積、及び人物特徴等の学習を行う。このシステムでは、個人の心身状態を把握することはできるが、対象空間のエリアごとのストレス値の高低差分布は把握できない。そのため、個人最適への利用は可能であるとしても対象空間のエリアごとの最適化をすることは出来ないという問題がある。
【0005】
本開示の目的は、対象空間のエリアごとのストレス状態の分布を推定可能なストレス状態分布推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様のストレス状態分布推定システムは、複数のエリアを含む対象空間内の複数の対象者の心電情報と位置情報とを取得する検知ユニットと、検知ユニットで取得された心電情報と位置情報に基づいて、複数の対象者それぞれのストレス指標値と、複数の対象者のストレス指標値の平均値である全体平均値と、各エリア内に位置する対象者のストレス指標値の平均値であるエリア平均値と、を求めるストレス推定部と、エリア平均値と全体平均値とに基づいて各エリアのストレス状態を推定するストレス状態推定部と、を備える。
【0007】
なお、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、又はコンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、対象空間のエリアごとのストレス状態の分布を推定可能なストレス状態分布推定システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例に係るストレス状態分布推定システムの一例を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1のストレス状態分布推定システムが適用される対象空間を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2の対象空間のストレス状態分布の表示の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、対象空間が複数フロアの空間を含む例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4の対象空間のストレス状態分布の表示の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、心拍変動の時系列データの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6の心拍変動の時系列データの周波数解析図である。
【
図8】
図8は、
図1のストレス状態分布推定システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、ストレス状態分布推定システムが適用される別の対象空間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。実施例及び変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施例を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0012】
[実施例]
図面を参照して本開示の実施例に係るストレス状態分布推定システム100(以下、「推定システム100」ということがある)を説明する。
図1は、推定システム100の一例を示すブロック図である。
図2は、推定システム100が適用される対象空間10の一例を示す図である。推定システム100は、対象空間10に位置する複数の対象者1の心電情報C(バイタル情報と称されることがある)と位置情報Pとを用いて、対象空間10を複数のエリア11、12、13、14に区画した場合の各エリアのストレス状態Jをマップ状にして表示部42(ディスプレイモニタ)に表示できる。対象空間10のエリア数は、複数であればよく、3以下であってもよいし、5以上であってもよい。各エリアは、長方形であってもよいし、円形等の長方形以外の形状であってもよい。また、対象空間10の区切りは、フロアではなく部署ごとに区切りされてもよく、この場合、従業員意識調査EOS(Employee Opinion Survey)等への活用が期待できる。
【0013】
図3は、表示部42の表示の一例を示す図である。この表示は、対象空間10を4つのエリア11、12、13、14に区画し、各エリアのストレス状態Jをマップ状に示すグラフィックである。また、この表示では、例えば、上側を「北」、下側を「南」、右側を「東」、左側を「西」としている。このストレス状態Jは、各エリアの対象者1のストレス指標値Kの平均値(エリア平均値B)から特定された指標である。対象空間10全体の対象者1のストレス指標値Kの平均値(全体平均値A)を求め、全体平均値Aとエリア平均値Bとの比較結果に基づいてストレス状態Jを推定できる。以下、対象者1のストレス指標値Kを対象者1のデータということがある。
【0014】
推定システム100は、対象者1から取得した心電情報Cを用いて、対象者1のストレス指標値Kを推定できる。実施例では、複数の対象者1それぞれが腕に心電情報Cを取得可能な検知ユニット2を装着する。検知ユニット2は、スマートウオッチ等のウェアラブル端末であってもよく、対象者1の心電情報Cを情報処理部3に送信できる。情報処理部3は、心電情報Cからストレス指標値K、全体平均値A、エリア平均値B、及びストレス状態J等を特定できる。
【0015】
心電情報Cの取得方法はウェアラブル端末に限定されない。例えば、対象者1に所定の電波を照射し、その電波の反射・吸収状態から、対象者1の呼吸及び心拍数を心電情報Cとして検知する方法であってもよい。また、ウェアラブル端末以外に、心電情報Cとしてバイタルデータを検出可能な非接触センサを用いてもよい。また、検知ユニット2は、検知結果を個人のスマートホンあるいはPC(Personal Computer)に表示可能なものであってもよい。
【0016】
ストレス状態Jの推定方法の一例を説明する。例えば、エリア平均値Bが、全体平均値Aを含む所定の基準範囲R内の場合は、ストレス状態Jは「基準ストレス状態」と推定できる。基準範囲Rは、複数の被験者について予め取得されたストレス状態の分布から、標準的なストレス状態と考えられる範囲として設定されてもよい。エリア平均値Bが基準範囲Rよりも高い場合は、ストレス状態Jは「高ストレス状態」と推定できる。エリア平均値Bが基準範囲Rよりも低い場合は、ストレス状態Jは「低ストレス状態」と推定できる。
【0017】
図3の例では、エリア12(北東エリア)は、エリア平均値Bが基準範囲R内にあり、「基準ストレス状態」と表示される。エリア11(北西エリア)と、エリア14(南東エリア)は、エリア平均値Bが基準範囲Rよりも低く、「低ストレス状態」と表示される。エリア13(南西エリア)は、エリア平均値Bが基準範囲Rよりも高く、「高ストレス状態」と表示される。このように表示することにより、対象空間10のストレス状態の高低差分布を可視化できる。それにより、ストレス低減対策を重点的に行うエリアの明確化あるいは活動エリアの選択等に活用できる。
【0018】
エリア内の個人が特定されないよう、3人以上の対象者1のデータがないエリアについては、ストレス状態Jを表示しないことも可能である。この場合にも、ストレス状態Jを表示しないエリアに位置する対象者1のデータを全体平均値Aの算出に用いてもよい。
【0019】
対象空間10は、複数の対象者1が活動する空間であればよく、実施例では多人数が活動する一体的な単一空間である。実施例の対象空間10は、
図2に示すように、破線で示す矩形のエリア11、12、13、14を含むオフィス空間である。エリア11、13、14には矩形のデスクが置かれ、エリア12には、丸テーブルが置かれ、出入口15が設けられている。
【0020】
対象空間10は、一体的な単一空間だけでなく、互いに区画された複数の空間であってもよいし、複数階に設けられた複数フロアの空間であってもよいし、複数建物に設けられた複数の空間であってもよい。
図4は、対象空間10が複数フロアの空間16、17、18を含む例を模式的に示している。
図5は、
図4の対象空間10のストレス状態分布の表示の一例を示している。空間16、17、18は対象空間10の複数のエリアを例示している。
【0021】
図1に戻る。推定システム100の構成を説明する。実施例の推定システム100は、検知ユニット2と、情報処理部3と、表示ユニット4と、外部機器5と、緩和機器6とを主に備える。推定システム100は、これらのすべてを備えることは必須ではなく、用途に応じて任意の構成で使用され得る。
図1に示す各機能ブロックは、CPU(Central Processing Unit)等のハードウエア及びコンピュータプログラム等のソフトウエアにより実現できる。
【0022】
検知ユニット2は、心電情報取得部22と、位置情報取得部23と、通知部26と、通信部28とを備える。心電情報取得部22は、対象者1の心電情報Cを取得する。実施例の心電情報Cは、呼吸と心拍数の少なくとも1つを含む。位置情報取得部23は、対象空間10における対象者1の位置情報Pを取得する。位置情報取得部23は、GPS(Global Positioning System)等の公知の位置検出技術を用いて実現できる。通信部28は、情報処理部3に心電情報C等の情報を送信し、情報処理部3から情報を受信する。通信部28は、インターネット等の情報ネットワークを介して情報通信できる。
【0023】
実施例では、通知部26がウェアラブル端末である検知ユニット2に設けられる例を示したが、通知部26は、通知先の対象者1のPCあるいはスマートホンなどの情報端末に通知してもよい。
【0024】
相対値的に高ストレス状態にある対象者1には、その旨を通知することが望ましい。そこで、実施例の通知部26は、「高ストレス状態」と判定されたエリアに位置する対象者1のストレス指標値Kが基準範囲Rよりも高い状態が所定期間継続した場合に、当該対象者1にアラート情報等の所定情報を通知する。
【0025】
絶対値的に高ストレス状態にある対象者1には、その旨を通知することが望ましい。そこで、実施例の通知部26は、「高ストレス状態」と判定されたエリアに位置する対象者1のストレス指標値Kが全体平均値Aよりも高く、且つ、予め設定されたストレス基準値Eを超える状態が所定期間継続した場合に、当該対象者1にアラート情報等の所定情報の通知を行う。また、通知部26は、ストレス指標値Kがストレス基準値Eを超える状態が所定期間継続しない場合には、当該通知を行わない。一例として、ストレス基準値Eには、後述するLF/HF(Low Frequency band power/High Frequency band power)値を採用可能である。例えば、通知部26は、LF/HF値が「3」を超える状態が所定期間継続した場合に、上記通知をするように構成されてもよい。
【0026】
情報処理部3は、ストレス推定部32と、対象者位置特定部34と、ストレス状態推定部33と、記憶部35と、制御部36と、通信部38とを備える。情報処理部3は、インターネットなどのネットワークで連携するクラウドサーバ上に設けられてもよいし、その他のサーバ上に設けられてもよい。
【0027】
ストレス推定部32は、心電情報Cに基づいて、対象者1それぞれのストレス指標値Kを推定する。実施例のストレス推定部32は、心拍変動に基づいてストレス指標値Kを推定する。ストレス指標値Kの推定方法は限定されないが、一例を以下に示す。
【0028】
図6及び
図7を参照して、実施例のストレス推定部32によるストレス指標値Kの推定方法を説明する。
図6は、心拍間隔時間の時系列データの一例を示す図であり、心拍間隔時間の変動を時間軸で示している。
図7は、
図6の心拍変動の時系列データの周波数解析図であり、心拍間隔時間の変動を周波数軸で示している。
図7に示すように、心拍変動の時系列データは、周波数範囲が0.05Hz~0.15Hzの低周波成分LFと、周波数範囲が0.15Hz~0.4Hzの高周波成分HFとに分けられる。
【0029】
低周波成分LFは、血圧変動に起因する低周波数成分であり、交感神経と副交感神経を反映している。高周波成分HFは、呼吸変動に起因する高周波数成分であり、副交感神経を反映している。発明者らは、ストレス指標値Kとして、低周波成分LFを高周波成分HFで除算した結果であるLF/HF値を用いることに着目した。特に、LF/HF値が「3未満」の場合、対象者1は快適と感じ、LF/HF値が「3以上」の場合、対象者1は不快と感じていることが判明した。
【0030】
図1に戻る。対象者位置特定部34は、位置情報Pに基づいて、対象者1が複数のエリア11、12、13、14のいずれに位置するかを特定する。ストレス推定部32は、対象空間10にいる複数の対象者1のストレス指標値Kの平均値である全体平均値Aを算出する。
【0031】
ストレス推定部32は、対象者位置特定部34において特定されたエリアそれぞれに位置する対象者1のストレス指標値Kの平均値となるエリア平均値Bを算出する。ストレス状態推定部33は、全体平均値Aと、エリア平均値Bとに基づいて、エリアそれぞれにおける対象者1のストレス状態J1を推定する。
【0032】
通信部38は、検知ユニット2の通信部28及び表示ユニット4の通信部48と通信する。通信部38は、検知ユニット2から対象者1の心電情報C位置情報Pを受信し、検知ユニット2の通知部26に通知する情報を送信する。通信部38は、表示ユニット4に表示情報を送信する。
【0033】
記憶部35は、通信部38で受信した対象者1の心電情報C及び位置情報Pを時系列的に記憶する。記憶部35は、ストレス指標値K、全体平均値A、エリア平均値B、ストレス状態J、基準範囲R、及びストレス基準値Eを時系列的に記憶する。
【0034】
制御部36は、複数の緩和機器6を制御する。特に、複数の緩和機器6のうち「高ストレス状態」と判定されたエリアに影響を与える緩和機器6を選択的に動作させる。
【0035】
表示ユニット4は、表示部42と通信部48とを含む。通信部48は、情報処理部3から表示情報を受信する。表示部42は、通信部48で受信した表示情報を表示するモニタディスプレイである。表示部42は、表示情報を表示するWebページであってもよく、この場合、特定の人だけがアクセスできるようにしてもよい。
【0036】
外部機器5は、対象空間10に関連する者(例えば、オフィス管理者等)の使用する情報端末である。外部機器5は、PCであってもよいし、スマートホン等の携帯端末であってもよい。情報処理部3は、通信部38を介してストレス状態推定部33で推定されたストレス状態Jを外部機器5に送信する。情報処理部3は、各対象者1のストレス指標値K、エリア平均値B、及び全体平均値Aの少なくとも1つを外部機器5に送信してもよい。情報処理部3は、通知部26が高ストレス状態の対象者1に通知を行う場合に、その通知を外部機器5に送信してもよい。
【0037】
複数の緩和機器6は、対象空間10に設けられる。緩和機器6は、制御部36に制御され、対象空間10の室内環境を制御する室内環境制御ユニットとして機能する。実施例では、各エリア11、12、13、14に対応する位置に緩和機器6A、6B、6C、6Dが設けられている。緩和機器6は、エリアの区分とは関連しない位置に設けられてもよい。
【0038】
緩和機器6は、対象者1のストレスを緩和するために、対象空間10の温度を調整する温調装置62、対象空間10の湿度を調整する調湿装置63、対象空間10の照度を調整する照明装置64及び遮光装置65、対象空間10に送風する送風装置66、並びに、対象空間10に香気を提供する香り発生装置67を含んでもよい。緩和機器6は、これらの装置を全て含むことは必須ではなく、これらの装置の少なくとも1つを含めばよい。
【0039】
一例として、緩和機器6は、ストレス緩和のために以下の動作をしてもよい。
(1)温調装置62は、夏期は室温を1℃下げ、冬期は室温を1℃上げる。
(2)調湿装置63は、夏期は除湿し、冬期は加湿する。
(3)照明装置64は、照度を上げ、暖色系の色味にする。
(4)遮光装置65は、夏期はブラインドを下げ、冬期はブラインドを上げる。
(5)送風装置66は、リフレッシュ系のゆらぎ気流を出す。
(6)香り発生装置67は、柑橘系のアロマを香らせる。
【0040】
図1~
図4、及び
図8を参照して推定システム100の動作プロセスの一例を説明する。
図8は、推定システム100の動作プロセスS110を示すフローチャートである。プロセスS110は、管理者の操作等により推定システム100が動作を開始したときに開始される。
【0041】
プロセスS110が開始すると、検知ユニット2は、各対象者1の心電情報Cと位置情報Pを取得する(ステップS111)。取得された心電情報Cと位置情報Pは、情報処理部3に送信され、記憶部35に時系列的に記憶される。
【0042】
次に、情報処理部3は、心電情報Cと位置情報Pとに基づいて、各対象者1のストレス指標値Kを推定する(ステップS112)。このステップで、ストレス推定部32は、検知ユニット2で取得された心電情報Cと位置情報Pとに基づいて、複数の対象者1それぞれのストレス指標値Kを算出する(
図6、
図7及びその説明も参照)。推定されたストレス指標値Kは、記憶部35に時系列的に記憶される。
【0043】
次に、情報処理部3は、心電情報Cと位置情報Pとに基づいて、全体平均値Aとエリア平均値Bとを算出する(ステップS113)。このステップで、ストレス推定部32は、複数の対象者1のストレス指標値Kの平均値である全体平均値Aと、各エリア内に位置する対象者1のストレス指標値Kの平均値であるエリア平均値Bとを算出する。算出された全体平均値Aとエリア平均値Bは記憶部35に時系列的に記憶される。
【0044】
次に、情報処理部3は、エリア平均値Bと全体平均値Aとに基づいて各エリアのストレス状態Jを推定する(ステップS114)。このステップで、ストレス状態推定部33は、エリア11、12、13、14それぞれについて、エリア平均値Bと全体平均値Aとに基づいて各エリアのストレス状態Jを推定する。
【0045】
具体的には、情報処理部3は、ストレス状態Jの推定のために、基準範囲Rを用いて各エリアのストレス状態Jのレベルを判定する。この基準範囲Rは、全体平均値Aよりも低い第1レベルと、全体平均値Aよりも高い第2レベルとの間に設定される。例えば、第1レベル及び第2レベルは、事前に収集された人間のストレスに関するデータを統計的に分析し、その標準偏差を使用することによって設定され得る。
【0046】
このステップで、ストレス状態推定部33は、エリア11、12、13、14それぞれについて、エリア平均値Bが基準範囲R内にある場合は、ストレス状態Jは「基準ストレス状態」と判定し、エリア平均値Bが基準範囲Rよりも高い場合は、ストレス状態Jは「高ストレス状態」と判定し、エリア平均値Bが基準範囲Rよりも低い場合は、ストレス状態Jは「高低ストレス状態」と判定する。
図3の例では、エリア11、14は、「低ストレス状態」と判定し、エリア12は、「標準ストレス状態」と判定し、エリア13は、「高ストレス状態」と判定される。各エリアのストレス状態Jは記憶部35に時系列的に記憶される。
【0047】
次に、表示部42は、ストレス状態推定部33で推定されたストレス状態Jを表示する(ステップS115)。このステップで、表示ユニット4は、情報処理部3から表示情報を受信して表示部42に表示する(
図3、
図4及びその説明も参照)。
【0048】
次に、情報処理部3は、高ストレス状態の対象者1(以下、「高ストレス者」という)がいるか否かを判定する(ステップS116)。このステップで、高ストレス者を判定する条件として以下の第1または第2の例を採用できる。
【0049】
第1の例では、ストレス状態推定部33は、「高ストレス状態」と判定されたエリア13に位置する対象者1のストレス指標値Kが基準範囲Rよりも高い状態が所定期間継続した場合に、当該対象者1を高ストレス者と判定する。
【0050】
第2の例では、ストレス状態推定部33は、高ストレス状態と判定されたエリア13に位置する対象者1のストレス指標値Kが全体平均値Aよりも高く、且つ、予め設定されたストレス基準値Eを超える状態が所定期間継続した場合に、当該対象者1を高ストレス者と判定する。第1の例及び第2の例の所定期間は、人間のストレスの継続性に関する事前に収集されたデータによって設定されてもよく、例えば、1分、5分、10分、30分などである。なお、ストレス指標値Kがストレス基準値Eを超える状態が所定期間継続しない場合には通知をしない。
【0051】
高ストレス者がいる場合(ステップS116のY)、通知部26は、該当する対象者1に通知する(ステップS117)。このステップで、通知部26は、高ストレス者に対して高ストレス状態であり、何らかの対応をとるべきことを報知する。ステップS117を実行後及び高ストレス者がない場合(ステップS116のN)、プロセスS110はステップS118に進む。
【0052】
次に、情報処理部3は、「高ストレス状態」と判定されたエリアがあるか否かを判定する(ステップS118)。「高ストレス状態」と判定されたエリアがある場合(ステップS118のY)、情報処理部3の制御部36は、複数の緩和機器6のうち「高ストレス状態」と判定されたエリアに影響を与える緩和機器6Cを選択的に動作させる(ステップS119)。例えば、「高ストレス状態」と判定されたエリアがエリア13の場合には、当該エリア13に影響を与える緩和機器6Cを選択的に動作させる。当該エリア13が南西向きであり、気温が高く日光の差し込みがストレスの要因と判断された場合、制御部36は、緩和機器6Cの温調装置62及び遮光装置65を、ストレス指標値Kを緩和するように制御してもよい。例えば、制御部36は、温調装置62により冷房を強化し、遮光装置65によってブラインドを閉じてもよい。
【0053】
ステップS119を実行後及び「高ストレス状態」のエリアがない場合(ステップS118のN)、プロセスS110は終了する。プロセスS110の各ステップは、例示であり、各種の変形が可能である。プロセスS110は繰り返し実行されてもよい。
【0054】
図1及び
図9を参照して、対象空間10が、互いに別フロアに設けられた第1対象空間19及び第2対象空間20を含む例を説明する。
図9は、第1対象空間19及び第2対象空間20を含む対象空間10を示す図である。前述したように、
図1の推定システム100は、互いにフロア違いあるいは拠点違いの第1対象空間と第2対象空間を含む対象空間10にも適用できる。
【0055】
図9の例では、ストレス状態推定部33は、1階の第1対象空間19内に位置する対象者1のストレス指標値Kの平均値である第1対象空間平均値と、全体平均値Aとに基づいて第1対象空間19のストレス状態を推定する。また、ストレス状態推定部33は、2階の第2対象空間20内に位置する対象者1のストレス指標値Kの平均値である第2対象空間平均値と、全体平均値Aとに基づいて第2対象空間20のストレス状態を推定する。
【0056】
図9の例では、推定システム100は、第1対象空間19のストレス状態と第2対象空間20のストレス状態との比較結果を取得できる。推定システム100は、比較結果をグラフィックデータとして表示できる。推定システム100は、比較結果に基づいて、第1対象空間19の緩和機器6E及び第2対象空間20の緩和機器6Fとの動作の優先度を判断できる。
【0057】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のストレス状態分布推定システム(100)は、複数のエリア(11、12、13、14)を含む対象空間(10)内の複数の対象者(1)の心電情報(C)と位置情報(P)とを取得する検知ユニット(2)と、検知ユニット(2)で取得された心電情報(C)と位置情報(P)に基づいて、複数の対象者(1)それぞれのストレス指標値(K)と、複数の対象者(1)のストレス指標値(K)の平均値である全体平均値(A)と、各エリア(11、12、13、14)内に位置する対象者(1)のストレス指標値(K)の平均値であるエリア平均値(B)と、を求めるストレス推定部(32)と、エリア平均値(B)と全体平均値(A)とに基づいて各エリア(11、12、13、14)のストレス状態Jを推定するストレス状態推定部(33)と、を備える。
【0058】
この構成によれば、ストレス状態Jによりストレスマップを作成可能で、ストレス分布を容易に把握できる。また、必要な場合に個人の心身状態の把握も可能である。これらにより、対象空間のエリアごとの最適化を図れる。ストレス緩和対策を重点的に行うエリアを明確化できる。活動エリアを選択する場合にストレスを考慮した選択が可能になる。
【0059】
ストレス状態分布推定システム(100)は、ストレス状態推定部(33)で推定されたストレス状態(J)を表示する表示部(42)をさらに備える。この場合、対象空間でのストレス状態の高低差分布を視覚化できる。
【0060】
ストレス状態推定部(33)は、エリア平均値(B)が、全体平均値(A)よりも低い第1レベルと、全体平均値(A)よりも高い第2レベルとの間に設定された基準範囲(R)内にある場合は、ストレス状態(J)は基準ストレス状態と判定し、エリア平均値(B)が基準範囲(R)よりも高い場合は、ストレス状態(J)は高ストレス状態と判定し、エリア平均値(B)が基準範囲(R)よりも低い場合は、ストレス状態(J)は低ストレス状態と判定する。この場合、対象空間のエリアごとのストレス状態を区分することにより、ストレス状態を容易に理解できる。
【0061】
ストレス状態分布推定システム(100)は、各対象者(1)に所定の情報を通知する通知部(26)をさらに備え、通知部(26)は、高ストレス状態と判定されたエリアに位置する対象者(1)のストレス指標値(K)が基準範囲(R)よりも高い状態が所定期間継続した場合に、当該対象者(1)に通知をする。この場合、基準範囲を用いて相対的に高ストレス状態を示す人にアラートを通知できる。
【0062】
通知部(26)は、高ストレス状態と判定されたエリアに位置する対象者(1)のストレス指標値(K)が全体平均値(A)よりも高く、且つ、予め設定されたストレス基準値(E)を超える状態が所定期間継続した場合に、当該対象者(1)に通知を行い、ストレス指標値(K)がストレス基準値Eを超える状態が所定期間継続しない場合には、通知をしない。この場合、基準範囲を用いずに絶対値に高ストレス状態を示す人にアラートを通知できる。
【0063】
対象空間(10)には、対象者(1)のストレス指標値(K)を緩和するための複数の緩和機器(6)が設けられ、ストレス状態推定部(33)によって高ストレス状態と判定されたエリアがある場合、複数の緩和機器(6)のうち当該エリアに影響を与える緩和機器(6)を選択的に動作させる。この場合、高ストレスエリアの機器を選択的に動作させることによって、高ストレスエリアのストレス状態を緩和できる。ストレス緩和対策の重点化により低消費電力化を図れる。基準ストレスエリア及び低ストレスエリアへの影響を抑制できる。
【0064】
対象空間(10)は、第1対象空間(19)と、第1対象空間(19)とは別の第2対象空間(20)を含み、ストレス状態推定部(33)は、第1対象空間(19)内に位置する対象者(1)のストレス指標値(K)の平均値である第1対象空間平均値と、全体平均値(A)とに基づいて第1対象空間(19)のストレス状態を推定し、第2対象空間(20)内に位置する対象者(1)のストレス指標値(K)の平均値である第2対象空間平均値と、全体平均値(A)とに基づいて第2対象空間(20)のストレス状態を推定する。この場合、互いにフロア違いあるいは拠点違いの第1対象空間と第2対象空間について、第1、第2対象空間の間でストレス状態を比較可能なストレスマップを作成できる。ストレス緩和対策を重点的に行う対象空間を明確化できる。活動空間を選択する場合にストレスを考慮した選択が可能になる。
【0065】
以上、本開示を、実施例をもとに詳細に説明した。上述した実施例は、いずれも本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施例の内容は、請求の範囲に規定された思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。上述の説明では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施例の」「実施例では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容にも設計変更が許容される。
【0066】
実施例では、通知部26は、相対値的に高ストレス状態にある対象者1あるいは絶対値的に高ストレス状態にある対象者1に対して、その旨を通知することが望ましいとしたが、これに限られない。例えば、通知部26は、対象者1が予め設定した場合には、対象者1自身のストレス状態を常に通知するようにしてもよい。つまり、通知部26は、「高ストレス状態」以外のストレス状態であっても、通知先の対象者1のPCあるいはスマートホンなどの情報端末あるいは外部機器に通知するようにしてもよい。このようにすることで、対象者1は、自分自身のストレス状態を常に把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示のシステムは、対象空間のエリアごとのストレス状態の分布を表示可能なシステムとして利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 対象者、 2 検知ユニット、 3 情報処理部、 4 表示ユニット、 5 外部機器、 6 緩和機器、 10 対象空間、 11、12、13、14 エリア、 15 出入口、 22 心電情報取得部、 23 位置情報取得部、 26 通知部、 28 通信部、 32 ストレス推定部、 33 ストレス状態推定部、 34 対象者位置特定部、 35 記憶部、 36 制御部、 38 通信部、 42 表示部、 48 通信部、 60、60A、60C 緩和機器、 62 温調装置、 63 調湿装置、 64 照明装置、 65 遮光装置、 66 送風装置、 67 発生装置、 100 ストレス状態分布推定システム。