(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131279
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/08 20060101AFI20240920BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20240920BHJP
F24F 3/044 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F24F7/08 101J
F24F7/007 B
F24F3/044
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041452
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】重森 正宏
(72)【発明者】
【氏名】岸本 如水
【テーマコード(参考)】
3L053
3L056
【Fターム(参考)】
3L053BC08
3L056BD02
(57)【要約】
【課題】消費電力を抑制することが可能な空調システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の空調システム100は、屋外の屋外空気F1を空調屋内空間81へ搬送する給気風路部21と、空調屋内空間81の屋内空気F2を搬送する排気風路部22と、屋外空気F1と屋内空気F2との間で熱交換する熱交換装置24と、空調屋内空間81を空調する空調装置26と、を備える。空調システム100は、熱交換装置24で熱交換された後の屋内空気F2を交換後空気F3として、隔壁85を介して空調屋内空間81に隣接する隣接屋内空間82に排出する第1モードを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外の屋外空気を空調屋内空間へ搬送する給気風路部と、
前記空調屋内空間の屋内空気を搬送する排気風路部と、
前記屋外空気と前記屋内空気との間で熱交換する熱交換装置と、
前記空調屋内空間を空調する空調装置と、
を備え、
前記熱交換装置で熱交換された後の前記屋内空気を交換後空気として、隔壁を介して前記空調屋内空間に隣接する隣接屋内空間に排出する第1モードを有する空調システム。
【請求項2】
前記隣接屋内空間の空気を屋外に排出する強制排気手段をさらに備える、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記交換後空気を屋外に排出する第2モードを有し、
前記交換後空気の温度と、前記隣接屋内空間の温度との比較結果に基づいて前記第1モードと前記第2モードとを切り替えるモード切替部をさらに備える、請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記モード切替部は、前記交換後空気の温度と、前記隣接屋内空間の温度との間の温度差が閾値以上の場合に前記第1モードに切り替え、前記温度差が前記閾値未満の場合に前記第2モードに切り替える、請求項3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記交換後空気を、前記隔壁に向けて吹き出す吹出部を有する、請求項1に記載の空調システム。
【請求項6】
前記隣接屋内空間の空気を屋外に排出する強制排気手段をさらに備え、
前記強制排気手段は、前記吹出部よりも高位置に配置される、請求項5に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内空間を空調する空調システムが知られている。例えば、特許文献1には、室内の空気と屋外の空気を換気する際に熱交換する全熱交換型の換気装置が記載されている。この装置は、熱交換するための全熱交換素子と、給気ファンモータと、排気ファンモータとを備え、室内の換気負荷に応じて、本体の給気ファンモータと排気ファンモータの回転数を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、空調システムについて以下の認識を得た。外気温が上がる夏期の場合、天井裏空間は、建物への日射及び外気温からの熱移動によって温度上昇する。天井裏空間が温度上昇すると、天井材を介して階下に隣接する居室に熱移動する。このため、居室空間では、居室空間自体の要因による温度上昇に天井裏空間からの熱移動による温度上昇が加わり、トータルの温度上昇が大きくなる。したがって、居室を空調する空調システムは、天井裏空間からの熱移動に応じて室温を下げるための熱負荷が増え、消費電力が増加する。
【0005】
一方、外気温が下がる冬期の場合、天井裏空間は空調された居室空間よりも低温になるので、居室空間は、天井裏空間からマイナスの熱移動を受け、トータルの温度低下が大きくなる。したがって、空調システムは、天井裏空間からの熱移動に応じて室温を上げるための熱負荷が増え、消費電力が増加する。
これらのことから、発明者らは、空調システムには消費電力を抑制する観点から改善すべき課題があることを認識した。
【0006】
本開示の目的は、消費電力を抑制することが可能な空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の空調システムは、屋外の屋外空気を空調屋内空間へ搬送する給気風路部と、空調屋内空間の屋内空気を搬送する排気風路部と、屋外空気と屋内空気との間で熱交換する熱交換装置と、空調屋内空間を空調する空調装置と、を備える。熱交換装置で熱交換された後の屋内空気を交換後空気として、隔壁を介して空調屋内空間に隣接する隣接屋内空間に排出する第1モードを有する。
【0008】
なお、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、消費電力を抑制することが可能な空調システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例に係る空調システムの第1モードを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の空調システムの第2モードを模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、
図1の空調システムの第1モードの空気の流れを模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、
図1の空調システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、建物の熱移動を説明する模式図である。
【
図6】
図6は、建物の熱移動を説明する別の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に建物の熱移動について説明する。
図5及び
図6は、建物9の熱移動を模式的に示す図である。
図5に示す建物9は、天井材91の下側に設けられた居室空間92と、天井材91の上側に設けられた天井裏空間93とを有する。居室空間92は空調装置94により空調され、天井裏空間93は空調されていない。居室空間92を空調居室空間ということがある。
【0012】
外気温が上がる夏期の場合、建物9への日射による熱移動と、屋外と天井裏空間93の温度差による熱移動とにより天井裏空間93の温度は上昇する。天井裏空間93の温度が上昇すると、天井材91の温度も上昇する。この結果、天井材91を介して天井裏空間93から階下の居室空間92に熱移動する。特に、天井裏空間93と居室空間92との温度差が大きい場合、居室空間92への熱移動量は大きくなる。
【0013】
天井裏空間93からの熱移動量が大きい場合、居室空間92自体の要因による温度上昇に熱移動による温度上昇が加わり、居室空間92のトータルの温度上昇が大きくなる。このため、居室空間92を空調する空調装置94は、天井裏空間93からの熱移動に応じて室温を下げるための熱負荷が増え、空調装置94の消費電力が増加する。
【0014】
図6に示す建物9は、天井裏空間93の天井材96の上側に設けられた非空調居室空間97をさらに有する。この場合、非空調居室空間97からの熱移動で天井裏空間93が温度上昇し、天井裏空間93からの熱移動で居室空間92が温度上昇する。この結果、熱移動に応じて気温を下げるための熱負荷が増え、空調装置94の消費電力が増加する。
【0015】
一方、外気温が下がる冬期の場合、天井裏空間93は空調された居室空間92よりも低温になるので、居室空間92は、天井裏空間93からマイナスの熱移動を受け、トータルの温度低下が大きくなる。したがって、空調装置94は、天井裏空間93からの熱移動に応じて室温を上げるための熱負荷が増え、消費電力が増加する。
【0016】
発明者は、天井裏空間93からの熱移動量を低減するために、居室空間92から熱交換装置を通じて排出される空調空気を天井裏空間93に排出することを着想した。空調空気を天井裏空間93に排出することにより、天井裏空間93と居室空間92との温度差を小さくして熱移動量を低減できる。このことにより、空調装置94の熱負荷が減り、消費電力が低減される。以下、実施例を通じて本開示の内容を説明する。
【0017】
以下、本開示を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。実施例及び変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施例を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0018】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0019】
[実施例]
図1~
図4を参照して本開示の実施例に係る空調システム100を説明する。まず、空調システム100の全体構成を説明する。
図1は、空調システム100の第1モードを模式的に示す図である。
図2は、空調システム100の第2モードを模式的に示す図である。空調システム100は、空調屋内空間81と隣接屋内空間82とを有する建物8に設けられる。建物8に制限はなく、木造建物であってもよいし、コンクリート造りの建物であってもよいし、その他の種類の構造の建物であってもよい。建物8には、給湯室及び洗面所などの非居室空間83が設けられてもよい。非居室空間83には、ドア下の隙間等の通気開口を通じて、空調された空調屋内空間81の空気が供給されてもよい。
【0020】
空調屋内空間81は、空調が施される屋内空間であればよく、実施例では、事務室等のオフィス空間である。空調が施される屋内空間としては、リビングルーム等の住宅居室、商業空間、体育館等の運動空間、及び倉庫等の保管空間等も挙げられる。
【0021】
隣接屋内空間82は、建物8において、隔壁85を介して空調屋内空間81に隣接する空間であればよく、実施例では空調屋内空間81の天井裏に設けられた天井裏空間である。この天井裏空間は、屋根裏に設けられる屋根裏空間であってもよいし、上階の屋内空間の下方に設けられる階間空間であってもよい。隣接屋内空間82は、横に連結される空間であってもよい。
【0022】
隔壁85は、空調屋内空間81と隣接屋内空間82とを隔てる平板状の構造体であり、実施例では空調屋内空間81の天井であり、隣接屋内空間82の床である。隔壁85は、立壁であってもよいし、その他の形態の区画部材であってもよい。また、隔壁85は、平板で挟まれた中空状の構造体であってもよい。
【0023】
空調システム100は、建物8の階間空間あるいは天井裏空間に設置できる。実施例では、空調システム100は、建物8の隣接屋内空間82に設置され、空調屋内空間81に給気する。空調システム100は、操作入力部(不図示)に運転開始の操作が入力されたら運転を開始し、操作入力部に運転停止の操作が入力されたら、運転を停止する。
【0024】
空調システム100は、給気風路部21と、排気風路部22と、モード切替部23と、熱交換装置24と、空調装置26と、風路切替部27と、吹出部28と、強制排気手段29と、温度センサS1、S2とを主に備える。
【0025】
給気風路部21は、屋外給気部32からダクト等を通じて吸い込んだ屋外空気F1(以下、単に「空気F1」ということがある)を空調屋内空間81の給気部34へ搬送するための風路である。給気風路部21の一部は、熱交換装置24の内部風路で構成される。排気風路部22は、空調屋内空間81の排気部35からダクト等を通じて吸い込んだ屋内空気F2(以下、単に「空気F2」ということがある)を、風路切替部27を通じて所定の空間または屋外に搬送するための風路である。排気風路部22の一部は、熱交換装置24の内部風路で構成される。なお、空気F2には、非居室空間83に設けた排気部(不図示)から吸い込んだ空気が含まれてもよい。
【0026】
空調システム100の動作モードを説明する。空調システム100は、
図1に示すように、熱交換装置24で熱交換された後の空気F2を交換後空気F3(以下、単に「空気F3」ということがある)として、隣接屋内空間82に排出する第1モードを有する。また、空調システム100は、
図2に示すように、空気F3を屋外に排出する第2モードとを有する。第1モードと第2モードとの間の切り替え等については後述する。
【0027】
熱交換装置24は、内蔵する熱交換素子25を用いて空気F1と空気F2との間で熱交換する。熱交換装置24は、空気F1の入口であるOAポート(外気口)と、空気F1の出口であるSAポート(給気口)と、空気F2の入口であるRAポート(内気口)と、空気F2の出口であるEAポート(排気口)とを有する。熱交換素子25は、OAポートからSAポートへ流通する空気F1と、RAポートからEAポートへ流通する空気F2との間で熱エネルギーの交換を行う。
【0028】
熱交換装置24には、空気F1を付勢して給気流を生成する給気送風部46と、空気F2を付勢して排気流を生成する排気送風部47とが設けられる。換言すると、空気F1は、給気送風部46の作用により、熱交換素子25を流通して、空調屋内空間81に送出される。空気F2は、排気送風部47の作用により、熱交換素子25を流通して、風路切替部27に送出される。給気送風部46及び排気送風部47は、シロッコファン等を含んで構成される。
【0029】
空調装置26は、空調屋内空間81を空調する。実施例では、空調装置26は、エアコン(エアコンディショナ)であり、空調屋内空間81に設けられる。空調装置26は、公知の技術に基づく空気調和技術を用いて構成できる。空調装置26は、空調屋内空間81の空気F11を内部に吸い込み、温度等を調整した空気F12を空調屋内空間81に供給する。例えば、空調装置26は、夏期に空調屋内空間81を冷房して屋外よりも低い所定の室温を維持する。空調装置26は、冬期に空調屋内空間81を暖房して屋外よりも高い所定の室温を維持する。
【0030】
風路切替部27は、排気風路部22に設けられ、モード切替部23の制御に基づいて、熱交換装置24からの空気F3の排出先を屋外と隣接屋内空間82との間で切り替える。風路切替部27の第1出口部D1は、吹出部28に連通し、第2出口部D2は、屋外に排出するための屋外排出部31に連通し、入口部J1は、熱交換装置24のEAポートに連通する。風路切替部27は、第1モードでは入口部J1からの空気F3を第1出口部D1に流通させ、第2モードでは入口部J1からの空気F3を第2出口部D2に流通させる。風路切替部27は、モード切替部23の制御に基づいて、電磁的な作用により風路を切り替える風路切替ダンパで構成できる。
【0031】
吹出部28は、風路切替部27の第1出口部D1に連通しており、第1モードで熱交換装置24からの空気F3を隣接屋内空間82に排出する開口である。空調屋内空間81への熱移動を抑制する観点で、空気F3を隔壁85に直接当てることが望ましい。このようにすることで、夏期は隔壁85の温度を下げ、冬期は隔壁85の温度を上げて空調屋内空間81への熱移動を抑制することができる。そこで、実施例の吹出部28は、空気F3を隔壁85に向けて吹き出す。この結果、空気F3を隔壁85に沿って流すことができ、隔壁85の温度を効率的に調整し、空調屋内空間81への熱移動を抑制することができる。
【0032】
隣接屋内空間82に排気された空気F3は、隣接屋内空間82の壁面の隙間を通って屋外に排気されるため、隣接屋内空間82から屋外への排気量を安定的に確保することが難しい。そこで、実施例の空調システム100は、隣接屋内空間82の空気F4を屋外に排出する強制排気手段29を備える。実施例の強制排気手段29は、モータ(不図示)でファン(不図示)を回転させて空気F4を屋外に排出する換気扇である。空気F4を強制排気することにより、熱交換装置24からの空気F3の供給に伴う隣接屋内空間82の圧力上昇を抑制することができ、排気送風部47の負荷を減らせる。なお、強制排気手段29は、隣接屋内空間82を屋外に対して陽圧に保つ程度に空気F4を排出してもよい。
【0033】
図3を参照する。
図3は、第1モードでの空気(空気F3及び空気F4)の流れを模式的に示す図である。強制排気手段29が、吹出部28の近傍に配置されると、空気F3が強制排気手段29から直接排出されやすくなるため、空気F3による隔壁85の温調効果が得られにくい。また、空気F4のうち熱量を多く持つ空気F5は、隣接屋内空間82の上部に滞留しやすいため、強制排気手段29が吹出部28の近傍に配置されると、空気F5が十分排出されずに、夏期において隣接屋内空間82の温度低減効果が得られにくくなる。そこで、実施例では、強制排気手段29は、吹出部28よりも高位置に配置される。この場合、
図3に示すように、空気F3は、強制排気手段29によって直接排気される割合が減少するので、温調効果を高めることができる。また、空気F4(特に空気F5)は、強制排気手段29によって排気される割合が増加するので、隣接屋内空間82の上部に滞留した熱量を効果的に排出することができ、夏期においては隣接屋内空間82の温度低減効果を高めることができる。
【0034】
図1及び
図2に戻る。空気F3の温度と隣接屋内空間82の温度との差が小さい場合、隣接屋内空間82に空気F3を供給しても効果が殆どない。また、夏期であっても夜間あるいは早朝では、隣接屋内空間82の温度が空気F3の温度よりも低い場合には、空気F3の供給は逆効果となる場合も考えられる。また、冬期において上階の屋内空間が空調されていない場合、あるいは放射冷却で隣接屋内空間82が冷やされる夜間では空気F3を隣接屋内空間82に排出した方が隣接屋内空間82の温度を高く維持できる場合もある一方、外気温が高くなる日中は空気F3を屋外に排出した方が隣接屋内空間82の温度を高く維持できる場合もある。そこで、実施例では、空調システム100は、温度センサS1、S2とモード切替部23とを備える。
【0035】
温度センサS1は、EAポートの下流で風路切替部27の上流に設けられ、空気F3の温度T1を検知して、温度T1をモード切替部23に送信する。温度センサS2は、隣接屋内空間82に設けられ、隣接屋内空間82の空気F4の温度T2を検知して、温度T2をモード切替部23に送信する。温度センサS1、S2としては、公知の技術に基づく温度センサを採用できる。なお、空間の温度は空間内の室温である。
【0036】
モード切替部23は、温度センサS1から空気F3の温度T1を受信し、温度センサS2から空気F4の温度T2を受信する。モード切替部23は、空気F3の温度T1と、空気F4の温度T2との比較結果に基づいて第1モードと第2モードとを切り替える。
【0037】
モード切替部23は、隣接屋内空間82に排気される交換後空気F3の温度T1と、隣接屋内空間82の空気F4の温度T2との温度差Tdが所定の切替条件を満たすとき第1モードに切り替える。夏期、冬期などの季節によって切替条件を変更してもよい。実施例のモード切替部23は、温度差Tdが閾値H1以上の場合に第1モードに切り替え、温度差Tdが閾値H1未満の場合に第2モードに切り替える。閾値H1は、空気F3による隔壁85の温調効果(温度低減効果または温度上昇効果)が所望のレベルで得られるように、実験またはシミュレーションによって設定できる。実施例の閾値H1は3℃に設定されている。
【0038】
図1、
図2、及び
図4を参照して、空調システム100の動作プロセスの一例を説明する。
図4は、空調システム100の動作プロセスS110を示すフローチャートである。
【0039】
プロセスS110は、ユーザの操作等に基づいて空調システム100の運転が開始されると開始される。
【0040】
プロセスS110が開始されると、モード切替部23は、空調システム100を第2モードで動作させる(ステップS111)。このステップを実行する前に空調システム100が第1モードであった場合は、モード切替部23は第2モードに切り替える。
【0041】
次に、モード切替部23は、温度センサS1、S2から温度T1、T2を取得する(ステップS112)。
【0042】
次に、モード切替部23は、温度T1と温度T2との間の温度差Tdが閾値H1以上か否かを判定する(ステップS113)。温度差Tdが閾値H1以上でない場合(ステップS113のN)、プロセスS110はステップS112に戻る。
【0043】
温度差Tdが閾値H1以上の場合(ステップS113のY)、モード切替部23は、第1モードに切り替え、空調システム100を第1モードで動作させる(ステップS114)。
【0044】
次に、モード切替部23は、温度センサS1、S2から温度T1、T2を取得する(ステップS115)。
【0045】
次に、モード切替部23は、温度T1と温度T2との間の温度差Tdが閾値H1未満か否かを判定する(ステップS116)。温度差Tdが閾値H1未満でない場合(ステップS116のN)、プロセスS110はステップS115に戻る。
【0046】
温度差Tdが閾値H1未満の場合(ステップS116のY)、プロセスS110はステップS111に戻り、ステップS111~ステップS116を繰り返す。これらのステップは一例であり各種の変形が可能である。
【0047】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示の空調システム(100)は、屋外の屋外空気(F1)を空調屋内空間(81)へ搬送する給気風路部(21)と、空調屋内空間(81)の屋内空気(F2)を搬送する排気風路部(22)と、屋外空気(F1)と屋内空気(F2)との間で熱交換する熱交換装置(24)と、空調屋内空間(81)を空調する空調装置(26)と、を備える。
空調システム(100)は、熱交換装置(24)で熱交換された後の屋内空気(F2)を交換後空気(F3)として、隔壁(85)を介して空調屋内空間(81)に隣接する隣接屋内空間(82)に排出する第1モードを有する。
【0048】
この構成によれば、交換後空気(F3)を隣接屋内空間(82)に排出することにより、夏期には隣接屋内空間(82)の温度を下げ、冬期には隣接屋内空間(82)の温度を上げることができる。この結果、隣接屋内空間(82)から空調屋内空間(81)への熱移動を減らし、空調装置(26)の出力を抑制して消費電力の低減を図れる。
特に、従来の熱交換装置においてそのまま屋外に排出していた交換後空気(F3)を利用しているので、換気装置を新たに設置して空調屋内空間(81)から隣接屋内空間(82)に屋内空気(F2)を供給する場合よりも、空調装置(26)の出力を抑制して消費電力の低減を図れる。
【0049】
実施例では、空調システム(100)は、隣接屋内空間(82)の空気(F4)を屋外に排出する強制排気手段(29)をさらに備える。この場合、隣接屋内空間(82)の空気(F4)を屋外に排出することにより、一層安定的に隣接屋内空間(82)からの換気量を確保することができ、効率的に隣接屋内空間(82)の温度を下げて空調屋内空間(81)への熱負荷を抑制できる。
【0050】
実施例では、空調システム(100)は、交換後空気(F3)を屋外に排出する第2モードを有し、交換後空気(F3)の温度と、隣接屋内空間(82)の温度との比較結果に基づいて第1モードと第2モードとを切り替えるモード切替部(23)をさらに備える。例えば、隣接屋内空間(82)の温度が交換後空気(F3)の温度よりも低い場合には、交換後空気(F3)を屋外に排出して、隣接屋内空間(82)の温度上昇を抑制できる。
【0051】
実施例では、モード切替部(23)は、交換後空気(F3)の温度(T1)と、隣接屋内空間(82)の温度(T2)との間の温度差(Td)が閾値(H1)以上の場合に第1モードに切り替え、温度差(Td)が閾値(H1)未満の場合に第2モードに切り替える。例えば、温度差(Td)が閾値(H1)未満の場合には、交換後空気(F3)を屋外に排出して、隣接屋内空間(82)の温度上昇を抑制できる。
【0052】
実施例では、空調システム(100)は、交換後空気(F3)を、隔壁(85)に向けて吹き出す吹出部(28)を有する。この場合、交換後空気(F3)を隔壁(85)に直接吹き付けることにより、隔壁(85)の温度を下げ、隔壁(85)から空調屋内空間(81)への熱移動を抑制し、空調屋内空間(81)の熱負荷を抑制できる。
【0053】
実施例では、空調システム(100)は、隣接屋内空間(82)の空気(F4)を屋外に排出する強制排気手段(29)をさらに備える。強制排気手段(29)は、吹出部(28)よりも高位置に配置される。この場合、強制排気手段(29)が吹出部(28)よりも低位置にある構成に比べて、交換後空気(F3)が強制排気手段(29)によって直接排出されにくくなり、交換後空気(F3)は隔壁(85)の近傍に溜まりやすくなり、隔壁(85)の温度低減(冷却)に有利である。
【0054】
以上、本開示を、実施例をもとに詳細に説明した。上述した実施例は、いずれも本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施例の内容は、請求の範囲に規定された思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。上述の説明では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施例の」「実施例では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容にも設計変更が許容される。
【0055】
実施例に係る空調システム100では、強制排気手段29を設けたが、必ずしも設ける必要はない。この場合には、排気送風部47に負荷がかかるものの、隣接屋内空間82に供給される交換後空気F3によって隣接屋内空間82が屋外と比べて陽圧となるので、隣接屋内空間82から屋外につながる隙間などから屋外に自然に放出される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示の空調システムは、屋内空間を空調するシステムに利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
8 建物、 9建物、21 給気風路部、 22 排気風路部、 23 モード切替部、 24 熱交換装置、 25 熱交換素子、 26 空調装置、 27 風路切替部、 28 吹出部、 29 強制排気手段、 31 屋外排出部、32 屋外給気部、34 給気部、 35 排気部、 46 給気送風部、 47 排気送風部、 81 空調屋内空間、 82 隣接屋内空間、 83 非居室空間、 85 隔壁、 91 天井材、 92 居室空間、 93 天井裏空間 、94 空調装置、 96 天井材 、 97 非空調居室空間、 100 空調システム。