(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131289
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】送電線管理装置、電流容量決定方法および電流容量決定プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20240920BHJP
H02H 5/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02H5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041465
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】丸山 剛史
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】三田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 治
(72)【発明者】
【氏名】岩間 成美
【テーマコード(参考)】
5G064
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AA04
5G064AC09
5G064BA02
5G064BA09
5G064CB08
5G064CB17
5G064DA03
(57)【要約】
【課題】電線の温度を許容温度以下に抑えながら、当該電線の電流容量をより高い値に設定する。
【解決手段】送電線管理装置は、電線の温度の測定結果を取得する第1取得部と、前記電線の環境に関する物理量を取得する第2取得部と、前記第1取得部により取得された対象時刻における前記測定結果、および前記第2取得部により取得された前記物理量に基づいて、前記対象時刻から所定時間後の第1時刻に前記電線の温度が許容温度以下となり、かつ前記第1時刻よりも後の時刻に前記電線の温度が前記許容温度を超える場合の前記電線の電流を、前記電線の電流容量として決定する演算処理を行う決定部とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統における電線の温度が許容温度以下となるような前記電線の電流容量を決定する送電線管理装置であって、
前記電線の温度の測定結果を取得する第1取得部と、
前記電線の環境に関する物理量を取得する第2取得部と、
前記第1取得部により取得された、対象時刻における前記測定結果、および前記第2取得部により取得された前記物理量に基づいて、前記電線の温度の予測値を取得する予測部と、
前記予測部により取得された前記予測値が、前記対象時刻から所定時間後の第1時刻に前記許容温度以下となり、かつ前記第1時刻よりも後の時刻に前記許容温度を超える場合の前記電線の電流を、前記電流容量として決定する演算処理を行う決定部とを備える、送電線管理装置。
【請求項2】
前記予測部は、仮の電流値、前記測定結果および前記物理量に基づいて、前記対象時刻よりも後の時刻における前記予測値を算出する、請求項1に記載の送電線管理装置。
【請求項3】
前記送電線管理装置は、さらに、
前記電線を通して流れる電流、前記電線の温度および前記物理量と、前記電線の温度の時間変化を示す実測データとの対応関係を示す対応情報を記憶する記憶部を備え、
前記予測部は、前記対応情報において、仮の電流値、前記測定結果および前記第2取得部により取得された前記物理量に対応する前記実測データに基づいて、前記対象時刻よりも後の時刻における前記予測値を取得する、請求項1に記載の送電線管理装置。
【請求項4】
前記送電線管理装置は、さらに、
前記対象時刻から前記第1時刻までの期間において前記所定時間よりも短い周期で前記測定結果と前記許容温度に基づく第1閾値とを比較し、前記測定結果が前記第1閾値を超えた場合、所定の通知処理を行う第1通知処理部を備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の送電線管理装置。
【請求項5】
前記送電線管理装置は、さらに、
前記電線を通して流れる電流の測定値を取得する第3取得部と、
前記対象時刻から前記第1時刻までの期間において前記所定時間よりも短い周期で、前記第3取得部により取得された前記測定値と、前記電流容量に基づく第2閾値とを比較し、前記測定値が前記第2閾値を超えた場合、所定の通知処理を行う第2通知処理部とを備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の送電線管理装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記所定時間以下の時間間隔で前記演算処理を繰り返し行う、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の送電線管理装置。
【請求項7】
前記送電線管理装置は、さらに、
前記対象時刻から前記第1時刻までの期間において前記時間間隔よりも短い周期で前記測定結果と前記許容温度に基づく第1閾値とを比較し、前記測定結果が前記第1閾値を超えた場合、所定の通知処理を行う第1通知処理部を備える、請求項6に記載の送電線管理装置。
【請求項8】
前記送電線管理装置は、さらに、
前記電線を通して流れる電流の測定値を取得する第3取得部と、
前記対象時刻から前記第1時刻までの期間において前記時間間隔よりも短い周期で、前記第3取得部により取得された前記測定値と、前記電流容量に基づく第2閾値とを比較し、前記測定値が前記第2閾値を超えた場合、所定の通知処理を行う第2通知処理部とを備える、請求項6に記載の送電線管理装置。
【請求項9】
電力系統における電線の温度が許容温度以下となるような前記電線の電流容量を決定する、送電線管理装置における電流容量決定方法であって、
前記電線の温度の測定結果を取得するステップと、
前記電線の環境に関する物理量を取得するステップと、
取得した、対象時刻における前記測定結果、および取得した前記物理量に基づいて、前記電線の温度の予測値を取得するステップと、
取得した予測値が、前記対象時刻から所定時間後の第1時刻に前記許容温度以下となり、かつ前記第1時刻よりも後の時刻に前記許容温度を超える場合の前記電線の電流を、前記電流容量として決定する演算処理を行うステップとを含む、電流容量決定方法。
【請求項10】
電力系統における電線の温度が許容温度以下となるような前記電線の電流容量を決定する送電線管理装置、において用いられる電流容量決定プログラムであって、
コンピュータを、
前記電線の温度の測定結果を取得する第1取得部と、
前記電線の環境に関する物理量を取得する第2取得部と、
前記第1取得部により取得された、対象時刻における前記測定結果、および前記第2取得部により取得された前記物理量に基づいて、前記電線の温度の予測値を取得する予測部と、
前記予測部により取得された前記予測値が、前記対象時刻から所定時間後の第1時刻に前記許容温度以下となり、かつ前記第1時刻よりも後の時刻に前記許容温度を超える場合の前記電線の電流を、前記電流容量として決定する演算処理を行う決定部、
として機能させるための、電流容量決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送電線管理装置、電流容量決定方法および電流容量決定プログラム
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気象条件および電線の温度に基づいて、電線の電流容量を動的に決定する技術が提案されている。たとえば、特許文献1(特開2009-65796号公報)には、以下のような電流容量動的決定装置が開示されている。すなわち、電流容量動的決定装置は、データを入力するためのデータ入力部とデータを出力するためのデータ出力部とを有して情報処理を実行する情報処理部と、前記情報処理部が、架空送電線が設置されている送電線ルート上の複数の気象観測点における気温、風速及び日射量を含む気象条件データを前記データ入力部から入力する手段と、前記情報処理部が、気温、風速及び日射量を含む気象条件の値を変数として架空送電線の電流容量を算出する計算式に前記個々の気象観測点毎に入力された気象条件データの値を当てはめて当該個々の気象観測点毎に電流容量を算出する手段と、前記情報処理部が、前記算出した個々の気象観測点毎の電流容量のうちの最小値を前記架空送電線の電流容量として前記データ出力部から出力する手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】電気学会技術報告第660号「架空送電線の電流容量」、電気学会 電力・エネルギー部門 高電圧技術委員会、1997年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術を超えて、電線の温度を許容温度以下に抑えながら、当該電線の電流容量をより高い値に設定することが可能な技術が望まれる。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、電線の温度を許容温度以下に抑えながら、当該電線の電流容量をより高い値に設定することが可能な送電線管理装置、電流容量決定方法および電流容量決定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の送電線管理装置は、電力系統における電線の温度が許容温度以下となるような前記電線の電流容量を決定する送電線管理装置であって、前記電線の温度の測定結果を取得する第1取得部と、前記電線の環境に関する物理量を取得する第2取得部と、前記第1取得部により取得された、対象時刻における前記測定結果、および前記第2取得部により取得された前記物理量に基づいて、前記電線の温度の予測値を取得する予測部と、前記予測部により取得された前記予測値が、前記対象時刻から所定時間後の第1時刻に前記許容温度以下となり、かつ前記第1時刻よりも後の時刻に前記許容温度を超える場合の前記電線の電流を、前記電流容量として決定する演算処理を行う決定部とを備える。
【0008】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える送電線管理装置として実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、送電線管理装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、送電線管理装置を含むシステムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電線の温度を許容温度以下に抑えながら、当該電線の電流容量をより高い値に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る電線監視システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係る電線監視システムの適用例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置における処理部により算出される予測データDの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置における処理部により算出される予測データDの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置システムが温度確認処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置システムが演算処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係る電線監視システムの適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0012】
(1)本開示の実施の形態に係る送電管理装置は、電力系統における電線の温度が許容温度以下となるような前記電線の電流容量を決定する送電線管理装置であって、前記電線の温度の測定結果を取得する第1取得部と、前記電線の環境に関する物理量を取得する第2取得部と、前記第1取得部により取得された、対象時刻における前記測定結果、および前記第2取得部により取得された前記物理量に基づいて、前記電線の温度の予測値を取得する予測部と、前記予測部により取得された前記予測値が、前記対象時刻から所定時間後の第1時刻に前記許容温度以下となり、かつ前記第1時刻よりも後の時刻に前記許容温度を超える場合の前記電線の電流を、前記電流容量として決定する演算処理を行う決定部とを備える。
【0013】
このように、対象時刻から所定時間後の第1時刻に電線温度が許容温度以下となり、かつ第1時刻よりも後の時刻に電線温度が許容温度を超える場合の電線電流を電流容量として決定する構成により、無限時間が経過しても電線温度が許容温度を超えない場合の電線電流を電流容量として決定する従来のダイナミックレーティングと比べて、少なくとも第1時刻までの電線温度を許容温度以下に抑えながら、電流容量をより高い値に設定することができる。したがって、電線の温度を許容温度以下に抑えながら、当該電線の電流容量をより高い値に設定することができる。
【0014】
(2)上記(1)において、前記予測部は、仮の電流値、前記測定結果および前記物理量に基づいて、前記対象時刻よりも後の時刻における前記予測値を算出してもよい。
【0015】
このような構成により、たとえば、電流値と電線の温度と物理量とに基づいて予測値を算出するための理論式に基づいて、より正確な予測値を算出することができる。
【0016】
(3)上記(1)において、前記送電線管理装置は、さらに、前記電線を通して流れる電流、前記電線の温度および前記物理量と、前記電線の温度の時間変化を示す実測データとの対応関係を示す対応情報を記憶する記憶部を備えてもよく、前記予測部は、前記対応情報において、仮の電流値、前記測定結果および前記第2取得部により取得された前記物理量に対応する前記実測データに基づいて、前記対象時刻よりも後の時刻における前記予測値を取得してもよい。
【0017】
このような構成により、実測値に基づいて、より正確な予測値を取得することができる。
【0018】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記送電線管理装置は、さらに、前記対象時刻から前記第1時刻までの期間において前記所定時間よりも短い周期で前記測定結果と前記許容温度に基づく第1閾値とを比較し、前記測定結果が前記第1閾値を超えた場合、所定の通知処理を行う第1通知処理部を備えてもよい。
【0019】
このような構成により、たとえば、電線の環境に関する物理量の変化により電線温度が上昇して第1閾値を超えた場合において、電線電流を制御することにより電線温度を第1閾値以下に下げることができる。
【0020】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記送電線管理装置は、さらに、前記電線を通して流れる電流の測定値を取得する第3取得部と、前記対象時刻から前記第1時刻までの期間において前記所定時間よりも短い周期で、前記第3取得部により取得された前記測定値と、前記電流容量に基づく第2閾値とを比較し、前記測定値が前記第2閾値を超えた場合、所定の通知処理を行う第2通知処理部とを備えてもよい。
【0021】
このような構成により、たとえば、電線電流が上昇して第2閾値を超えた場合において、発電装置を制御することにより電線電流を第2閾値以下に下げることができる。
【0022】
(6)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記決定部は、前記所定時間以下の時間間隔で前記演算処理を繰り返し行ってもよい。
【0023】
このような構成により、演算処理のタイミングごとに継続的に、電線温度を許容温度以下に抑えながら電流容量をより高い値に設定することができる。
【0024】
(7)上記(6)において、前記送電線管理装置は、さらに、前記対象時刻から前記第1時刻までの期間において前記時間間隔よりも短い周期で前記測定結果と前記許容温度に基づく第1閾値とを比較し、前記測定結果が前記第1閾値を超えた場合、所定の通知処理を行う第1通知処理部を備えてもよい。
【0025】
このような構成により、たとえば、電線の環境に関する物理量の変化により電線温度が上昇して第1閾値を超えた場合において、電線電流を制御することにより電線温度を第1閾値以下に下げることができる。
【0026】
(8)上記(6)または(7)において、前記送電線管理装置は、さらに、前記電線を通して流れる電流の測定値を取得する第3取得部と、前記対象時刻から前記第1時刻までの期間において前記時間間隔よりも短い周期で、前記第3取得部により取得された前記測定値と、前記電流容量に基づく第2閾値とを比較し、前記測定値が前記第2閾値を超えた場合、所定の通知処理を行う第2通知処理部とを備えてもよい。
【0027】
このような構成により、たとえば、電線電流が上昇して第2閾値を超えた場合において、発電装置を制御することにより電線電流を第2閾値以下に下げることができる。
【0028】
(9)本開示の実施の形態に係る電流容量決定方法は、電力系統における電線の温度が許容温度以下となるような前記電線の電流容量を決定する、送電線管理装置における電流容量決定方法であって、前記電線の温度の測定結果を取得するステップと、前記電線の環境に関する物理量を取得するステップと、取得した、対象時刻における前記測定結果、および取得した前記物理量に基づいて、前記電線の温度の予測値を取得するステップと、取得した予測値が、前記対象時刻から所定時間後の第1時刻に前記許容温度以下となり、かつ前記第1時刻よりも後の時刻に前記許容温度を超える場合の前記電線の電流を、前記電流容量として決定する演算処理を行うステップとを含む。
【0029】
このように、対象時刻から所定時間後の第1時刻に電線温度が許容温度以下となり、かつ第1時刻よりも後の時刻に電線温度が許容温度を超える場合の電線電流を電流容量として決定する方法により、無限時間が経過しても電線温度が許容温度を超えない場合の電線電流を電流容量として決定する従来のダイナミックレーティングと比べて、少なくとも第1時刻までの電線温度を許容温度以下に抑えながら、電流容量をより高い値に設定することができる。したがって、電線の温度を許容温度以下に抑えながら、当該電線の電流容量をより高い値に設定することができる。
【0030】
(10)本開示の実施の形態に係る電流容量決定プログラムは、電力系統における電線の温度が許容温度以下となるような前記電線の電流容量を決定する送電線管理装置、において用いられる電流容量決定プログラムであって、コンピュータを、前記電線の温度の測定結果を取得する第1取得部と、前記電線の環境に関する物理量を取得する第2取得部と、前記第1取得部により取得された、対象時刻における前記測定結果、および前記第2取得部により取得された前記物理量に基づいて、前記電線の温度の予測値を取得する予測部と、前記予測部により取得された前記予測値が、前記対象時刻から所定時間後の第1時刻に前記許容温度以下となり、かつ前記第1時刻よりも後の時刻に前記許容温度を超える場合の前記電線の電流を、前記電流容量として決定する演算処理を行う決定部、として機能させるためのプログラムである。
【0031】
このように、対象時刻から所定時間後の第1時刻に電線温度が許容温度以下となり、かつ第1時刻よりも後の時刻に電線温度が許容温度を超える場合の電線電流を電流容量として決定する構成により、無限時間が経過しても電線温度が許容温度を超えない場合の電線電流を電流容量として決定する従来のダイナミックレーティングと比べて、少なくとも第1時刻までの電線温度を許容温度以下に抑えながら、電流容量をより高い値に設定することができる。したがって、電線の温度を許容温度以下に抑えながら、当該電線の電流容量をより高い値に設定することができる。
【0032】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0033】
[構成および基本動作]
図1は、本開示の実施の形態に係る電線監視システムの構成を示す図である。
図1を参照して、電線監視システム301は、複数の接触ユニット101と、収集ユニット102と、送電線管理装置201とを備える。接触ユニット101は、温度センサ111と、環境センサ121と、電流センサ131と、転送装置161とを含む。収集ユニット102は、集約装置151を含む。
【0034】
図1では、1つの収集ユニット102を代表的に示しているが、複数の収集ユニット102が設けられてもよい。
【0035】
図2は、本開示の実施の形態に係る電線監視システムの適用例を示す図である。
図1および
図2を参照して、収集ユニット102は、たとえば鉄塔2に設けられる。
【0036】
電線1U,1V,1Wは、それぞれ、電力系統におけるU相,V相,W相の電線であり、複数の鉄塔2により支持されている。電線1U,1V,1Wにより1つの回線3が構成される。
図2では、1つの回線3を代表的に示しているが、複数の回線3が設けられてもよい。以下、電線1U,1V,1Wの各々を、電線1とも称する。電線監視システム301は、電力系統の電線1を監視する。
【0037】
接触ユニット101は、たとえば、複数相の電線1において、互いに対応する位置に設けられる。より詳細には、3つの接触ユニット101は、たとえば、電線1U,1V,1Wの各々における鉄塔2の近傍の位置に設けられる。これらの3つの接触ユニット101と鉄塔2との距離は、たとえば略同じである。
【0038】
接触ユニット101に含まれる温度センサ111は、電線1の温度を測定する。より詳細には、温度センサ111は、電線1自体の温度を測定する。以下、電線1の温度を「電線温度Tw」とも称し、温度センサ111による電線温度Twの測定値を「温度測定値Vt」とも称する。
【0039】
接触ユニット101に含まれる環境センサ121は、電線1の環境に関する物理量PQを測定する。たとえば、環境センサ121は、電線1の環境に関する物理量PQとして、電線1の周囲の気温、風速、風向および日射量を測定する。以下、環境センサ121による物理量PQの測定値を「物理測定値Vpq」とも称する。
【0040】
接触ユニット101に含まれる電流センサ131は、電線1を通して流れる電流を測定する。より詳細には、電流センサ131は、電流センサ131の設置個所において電線1を通して流れる電流を測定する。以下、電線1を通して流れる電流を「電線電流Cw」とも称し、電流センサ131による電線電流Cwの測定値を「電流測定値Vc」とも称する。
【0041】
転送装置161は、温度センサ111による測定結果、環境センサ121による測定結果および電流センサ131による測定結果を送信する。より詳細には、転送装置161は、たとえば所定の測定周期Cmに従う測定タイミングTmにおいて、温度センサ111から温度測定値Vtを取得し、環境センサ121から物理測定値Vpqを取得し、電流センサ131から電流測定値Vcを取得する。転送装置161は、温度測定値Vtとして、所定期間における電線1の温度の平均値、最大値または最小値を取得してもよいし、瞬時値を取得してもよい。また、転送装置161は、物理測定値Vpqとして、所定期間における物理量PQの平均値、最大値または最小値を取得してもよいし、瞬時値を取得してもよい。また、転送装置161は、電流測定値Vcとして、所定期間において電線1を通して流れる電流の平均値、最大値または最小値を取得してもよいし、瞬時値を取得してもよい。転送装置161は、取得した温度測定値Vt、電流測定値Vc、物理測定値Vpqおよび測定時刻tmを示すセンサ情報S1を生成する。
【0042】
転送装置161は、たとえば、IEEE802.15.4の通信規格に従って、差出元としての当該転送装置161のID、宛先としての集約装置151のIDおよびセンサ情報S1を含むセンサパケットを作成し、作成したセンサパケットを含む920MHz帯の無線信号を送信する。
【0043】
また、転送装置161は、たとえば、他の転送装置161によって送信されたセンサパケットを転送する。より詳細には、転送装置161は、他の転送装置161からセンサパケットを含む無線信号を受信し、受信した無線信号に含まれるセンサパケットを再び無線信号に含めて送信する。
【0044】
センサパケットの伝送ルートは、たとえば、IEEE802.15.4の通信規格に従って、各転送装置161によって自動的に構築される。
図2では、センサパケットの伝送ルートの一例が破線により示されている。この例では、互いに対応する位置に設けられる3つの接触ユニット101のうちの1つの接触ユニット101である代表接触ユニットが、作成したセンサパケットを送信するとともに、対応の位置に設けられた他の接触ユニット101から送信されたセンサパケットを受信して転送する。
【0045】
たとえば、電線監視システム301における、温度センサ111、環境センサ121および電流センサ131のうちの一部の測定結果は、複数の転送装置161を経由して集約装置151へ伝送される。具体的には、一部のセンサパケットは、たとえば、複数の鉄塔2における代表接触ユニットにより転送される。
【0046】
収集ユニット102が設けられた鉄塔2における代表接触ユニットは、作成したセンサパケットを収集ユニット102における集約装置151へ送信するとともに、他の鉄塔2における代表接触ユニットから転送されたセンサパケット、および対応の位置に設けられた接触ユニット101から送信されたセンサパケットを受信し、受信したセンサパケットを収集ユニット102における集約装置151へ送信する。
【0047】
また、たとえば、電線監視システム301において転送装置161が故障した場合、センサパケットの伝送ルートは、他の各転送装置161によって自動的に切り替えられる。
【0048】
集約装置151は、転送装置161からセンサパケットを受信し、受信したセンサパケットからセンサ情報S1および当該センサ情報S1を生成した転送装置161のIDを取得する。たとえば、集約装置151は、取得した転送装置161のIDを、当該転送装置161を含む接触ユニット101のIDとして扱う。集約装置151は、取得したセンサ情報S1および対応の転送装置161のIDを含む集約情報を、無線通信により送電線管理装置201へ送信する。なお、集約装置151は、集約情報を有線通信により送電線管理装置201へ送信してもよい。
【0049】
送電線管理装置201は、集約装置151から集約情報を受信し、受信した集約情報に基づいて、電線1の電線温度Twが所定の許容温度P1以下となるような電線1の電流容量CAを決定するダイナミックラインレーティングを行う。
【0050】
(送電線管理装置)
図3は、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置の構成を示す図である。
図3を参照して、送電線管理装置201は、受信部11と、処理部12と、記憶部13とを備える。受信部11は、第1取得部の一例であり、第2取得部の一例であり、かつ第3取得部の一例である。処理部12は、決定部の一例であり、第1通知処理部の一例であり、第2通知処理部の一例であり、かつ予測部の一例である。受信部11および処理部12の一部または全部は、たとえば、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現される。記憶部13は、たとえば上記処理回路に含まれる不揮発性メモリである。
【0051】
記憶部13は、電線1の許容温度P1を記憶している。許容温度P1は、たとえば電力系統の管理者によって予め設定され、送電線管理装置201における記憶部13に保存される。たとえば、電力系統では、各電線1に共通の許容温度P1が設定されている。なお、電線1ごとに異なる許容温度P1が設定されてもよい。
【0052】
受信部11は、電線温度Twの温度測定値Vt、電線1の環境に関する物理量PQを示す物理測定値Vpq、および電線電流Cwの電流測定値Vcを取得する。より詳細には、受信部11は、集約装置151から集約情報を受信し、受信した集約情報から複数のセンサ情報S1および複数の転送装置161のIDを取得する。受信部11は、センサ情報S1を転送装置161のIDに対応付けて記憶部13に保存する。
【0053】
処理部12は、受信部11により取得された測定時刻tmにおける温度測定値Vt、および受信部11により取得された物理測定値Vpqに基づいて、当該測定時刻tmから所定の経過時間Tx後の時刻t1に電線温度Twが許容温度P1以下となり、かつ時刻t1よりも後の時刻に電線温度Twが許容温度P1を超える場合の電線電流Cwを、電流容量CAとして決定する演算処理を行う。測定時刻tmは、対象時刻の一例である。時刻t1は、第1時刻の一例である。経過時間Txは、有限の時間であり、たとえば10分である。
【0054】
より詳細には、処理部12は、測定周期Cmよりも長い所定の演算周期Ccに従う演算タイミングTcにおいて、受信部11により記憶部13に保存された、転送装置161のIDごとの最新のセンサ情報S1を取得する。処理部12は、取得した各センサ情報S1に基づいて、転送装置161のIDごとに、対応のセンサ情報S1が示す測定時刻tmから経過時間Tx後の時刻t1における電線温度Twが許容温度P1以下となり、かつ当該時刻t1から有限の所定時間後の時刻における電線温度Twが許容温度P1を超える場合の電線電流Cwを、仮電流容量Pcaとして決定する。
【0055】
処理部12は、転送装置161のIDごとに決定した複数の仮電流容量Pcaのうちの最も小さい値を電流容量CAとして決定する。以下、演算処理の詳細について説明する。
【0056】
(演算処理)
処理部12は、測定時刻tmにおける温度測定値Vtおよび物理測定値Vpqに基づいて、測定時刻tmよりも後の時刻における電線温度Twの予測値を含む予測データDを取得する。
【0057】
たとえば、処理部12は、特許文献1および非特許文献1等に記載されている、定常状態における電線温度Twの算出方法CM1に従って、センサ情報S1が示す物理測定値Vpqに基づいて、無限時間経過後に電線温度Twが許容温度P1となるときの電線電流Cwである連続許容電流値Calvを算出する。算出方法CM1は、物理量PQに基づいて、電線1の発熱、吸熱および放熱が平衡するときの電線温度Twと電線電流Cwとを算出する算出方法である。処理部12は、算出した連続許容電流値Calvを用いて、電線電流Cwの仮設定値Sを決定する。
【0058】
そして、処理部12は、非特許文献1等に記載されている、過渡状態における電線温度Twの算出方法CM2に従い、仮設定値S、ならびにセンサ情報S1が示す測定時刻tmにおける物理測定値Vpqおよび温度測定値Vtに基づいて、当該測定時刻tmよりも後の時刻における電線温度Twの時間変化を示す予測データDを算出する。算出方法CM2は、ある時刻の電線温度Tw、電線電流Cwおよび物理量PQに基づいて、当該時刻よりも後の時刻における単位時間あたりの電線温度Twの変化を算出する算出方法である。処理部12は、算出した予測データDに基づいて、仮電流容量Pcaを決定する。
【0059】
図4は、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置における処理部により算出される予測データDの一例を示す図である。
図4において、横軸は時刻であり、縦軸は温度である。
図4は、予測データDalv,Da,Db,Dcを示している。予測データDalvは、仮設定値Sとして連続許容電流値Calvを用いた場合に処理部12により算出される予測データDである。予測データDa,Db,Dcは、仮設定値Sとして仮設定値Sa,Sb,Scを用いた場合に処理部12によりそれぞれ算出される予測データDである。すなわち、仮設定値Sとは、
図4に示す予測データDを算出するために暫定的に決定される電流容量である。仮設定値Saは、連続許容電流値Calvに所定値V1を加えた値である。仮設定値Sbは、仮設定値Saに所定値V1を加えた値である。仮設定値Scは、仮設定値Sbに所定値V1を加えた値である。所定値V1は、たとえば100アンペアである。
【0060】
図4を参照して、処理部12は、複数の仮設定値Sにそれぞれ対応する複数の予測データDを算出し、算出した複数の予測データDを用いて、時刻t1における電線温度Twが許容温度P1以下となり、かつ当該時刻t1よりも後の時刻における電線温度Twが許容温度P1を超える場合の仮設定値Sを探索する探索処理を行う。
【0061】
処理部12は、探索処理を行うことにより、複数の仮設定値Sのうち、対応の予測データDにおいて電線温度Twが許容温度P1に到達する到達時刻trが、時刻t1以上であり、かつ時刻t1から所定時間内の時刻となるときの仮設定値Sを特定し、特定した仮設定値Sを仮電流容量Pcaとして決定する。
【0062】
一例として、処理部12は、仮設定値Sを段階的に大きな値に変化させたときに、対応の予測データDにおける到達時刻trが時刻t1よりも前の時刻となったときの仮設定値Sを検知する第1探索処理を行う。次に、処理部12は、第1探索処理において検知した仮設定値Sを段階的に小さな値に変化させたときに、対応の予測データDにおける到達時刻trが時刻t1よりも後の時刻となったときの仮設定値Sを検知する第2探索処理を行う。処理部12は、第2探索処理において検知した仮設定値Sを、仮電流容量Pcaとして決定する。
【0063】
具体的には、処理部12は、第1探索処理において、連続許容電流値Calvに所定値V1を加えた仮設定値Saに対応する予測データDaを算出し、算出した予測データDaにおける到達時刻trである到達時刻taを算出する。処理部12は、算出した到達時刻taと時刻t1とを比較する。
図4に示す例では、到達時刻taは時刻t1よりも後の時刻である。
【0064】
処理部12は、到達時刻taが時刻t1よりも後の時刻である場合、仮設定値Saに所定値V1を加えた仮設定値Sbに対応する予測データDbを算出し、算出した予測データDbにおける到達時刻trである到達時刻tbを算出する。処理部12は、算出した到達時刻tbと時刻t1とを比較する。
図4に示す例では、到達時刻tbは時刻t1よりも後の時刻である。
【0065】
処理部12は、到達時刻tbが時刻t1よりも後の時刻である場合、仮設定値Sbに所定値V1を加えた仮設定値Scに対応する予測データDcを算出し、算出した予測データDcにおける到達時刻trである到達時刻tcを算出する。処理部12は、算出した到達時刻tcと時刻t1とを比較する。
図4に示す例では、到達時刻tcは時刻t1よりも前の時刻である。処理部12は、到達時刻tcが時刻t1よりも前の時刻である場合、第1探索処理を終了して第2探索処理を行う。
【0066】
図5は、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置における処理部により算出される予測データDの一例を示す図である。
図5において、横軸は時刻であり、縦軸は温度である。
図5は、予測データDalv,Dc,Ddを示している。予測データDdは、仮設定値Sとして仮設定値Sdを用いた場合に処理部12により算出される予測データDである。仮設定値Sdは、仮設定値Scから所定値V2を差し引いた値である。所定値V2は、所定値V1よりも小さい値であり、たとえば10アンペアである。
【0067】
図5を参照して、処理部12は、第2探索処理において、仮設定値Scから所定値V2を差し引いた仮設定値Sdに対応する予測データDdを算出し、算出した予測データDdにおける到達時刻trである到達時刻tdを算出する。処理部12は、算出した到達時刻tdと時刻t1とを比較する。
図5に示す例では、到達時刻tdは時刻t1よりも後の時刻である。
【0068】
処理部12は、到達時刻tdが時刻t1よりも後の時刻である場合、第2探索処理を終了する。そして、処理部12は、仮設定値Sdを仮電流容量Pcaとして決定する。
【0069】
なお、処理部12は、到達時刻tdが時刻t1よりも前の時刻である場合、仮設定値Sdから所定値V2を差し引いた仮設定値に対応する予測データDを算出し、算出した予測データDにおける到達時刻trと時刻t1とを比較する。処理部12は、第2探索処理において、到達時刻が時刻t1よりも後の時刻となるまで、予測データDの算出および到達時刻trと時刻t1との比較を繰り返し、到達時刻trが時刻t1よりも後の時刻となった場合、当該予測データDに対応する仮設定値Sを仮電流容量Pcaとして決定する。
【0070】
また、処理部12は、第2探索処理の終了後、予測データDにおける到達時刻trが、時刻t1以上であり、かつ時刻t1から所定時間内の時刻となるときの仮設定値Sを検知するまで、所定値V1の代わりに所定値V2よりも小さい所定値V3を用いて再び第1探索処理を行い、所定値V2の代わりに所定値V3よりも小さい所定値V4を用いて再び第2探索処理を行ってもよい。すなわち、処理部12は、仮設定値Sに加減する値を小さくしながら、第1探索処理と第2探索処理とを交互に繰り返し行ってもよい。
【0071】
また、処理部12は、所定値V1が十分に小さい値である場合、第2探索処理を行わなくてもよい。この場合、処理部12は、第1探索処理において検知した仮設定値Sよりも1段階小さい仮設定値Sを、仮電流容量Pcaとして決定する。すなわち、処理部12は、
図4に示す例における仮設定値Sbを仮電流容量Pcaとして決定する。
【0072】
上述したように連続許容電流値Calvを用いて仮設定値Sを決定することにより、電線温度Twが許容温度P1に到達する到達時刻が時刻t1以上であり、かつ時刻t1から所定時間内の時刻となるときの仮設定値Sを早期に発見することができるので、仮電流容量Pcaの決定に要する処理時間を短くすることができる。
【0073】
処理部12は、転送装置161のIDごとに仮電流容量Pcaを決定し、転送装置161のIDごとに決定した複数の仮電流容量Pcaのうちの最も小さい値を電流容量CAとして決定する。処理部12は、決定した電流容量CAを示す演算情報を、たとえば電力会社設備に設けられた図示しない発電管理装置へ送信する。
【0074】
たとえば、処理部12は、経過時間Tx以下の時間間隔で演算処理を繰り返し行う。一例として、処理部12は、経過時間Txと同じ長さの演算周期Ccごとに、演算処理を繰り返し行う。処理部12は、演算周期Ccごとに、演算処理において決定した電流容量CAを示す演算情報を、たとえば電力会社設備に設けられた図示しない発電管理装置へ送信する。なお、処理部12は、経過時間Txよりも短い周期で演算処理を繰り返し行ってもよい。
【0075】
(温度確認処理)
たとえば、処理部12は、測定時刻tmから時刻t1までの期間において、経過時間Txよりも短い温度確認周期C1で温度測定値Vtと所定の閾値ThP1とを比較する温度確認処理を行う。閾値ThP1は、第1閾値の一例である。閾値ThP1は、許容温度P1に基づく値である。閾値ThP1は、許容温度P1であってもよいし、許容温度P1に所定値を加減した値であってもよい。たとえば、温度確認周期C1は、演算周期Ccよりも短い周期である。
【0076】
より詳細には、処理部12は、集約情報から取得された複数のセンサ情報S1が受信部11により記憶部13に保存されるたびに、当該複数のセンサ情報S1を取得し、取得した各センサ情報S1が示す温度測定値Vtと閾値ThP1とを比較する。
【0077】
処理部12は、温度測定値Vtが閾値ThP1を超えた場合、所定の通知処理を行う。より詳細には、処理部12は、当該複数のセンサ情報S1のうちの少なくともいずれか1つのセンサ情報S1が示す温度測定値Vtが閾値ThP1よりも大きい場合、警報情報を、たとえば電力会社設備に設けられた図示しない発電管理装置へ送信する。
【0078】
一方、処理部12は、当該複数のセンサ情報S1がそれぞれ示す複数の温度測定値Vtが閾値ThP1以下である場合、新たなセンサ情報S1が記憶部13に保存されるのを待ち受ける。
【0079】
(電流確認処理)
たとえば、処理部12は、測定時刻tmから時刻t1までの期間において、経過時間Txよりも短い電流確認周期C2で電流測定値Vcと所定の閾値ThP2とを比較する電流確認処理を行う。閾値ThP2は、第2閾値の一例である。閾値ThP2は、電流容量CAに基づく値である。閾値ThP1は、電流容量CAであってもよいし、電流容量CAに所定値を加減した値であってもよい。たとえば、電流確認周期C2は、演算周期Ccよりも短い周期である。
【0080】
より詳細には、処理部12は、集約情報から取得された複数のセンサ情報S1が受信部11により記憶部13に保存されるたびに、当該複数のセンサ情報S1を取得し、取得した各センサ情報S1が示す電流測定値Vcと閾値ThP2とを比較する。
【0081】
処理部12は、電流測定値Vcが閾値ThP2を超えた場合、所定の通知処理を行う。より詳細には、処理部12は、当該複数のセンサ情報S1のうちの少なくともいずれか1つのセンサ情報S1が示す電流測定値Vcが閾値ThP2よりも大きい場合、警報情報を、たとえば電力会社設備に設けられた図示しない発電管理装置へ送信する。
【0082】
一方、処理部12は、当該複数のセンサ情報S1がそれぞれ示す複数の電流測定値Vcが閾値ThP2以下である場合、新たなセンサ情報S1が記憶部13に保存されるのを待ち受ける。
【0083】
[動作の流れ]
図6は、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置システムが温度確認処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0084】
図6を参照して、まず、送電線管理装置201は、集約装置151から集約情報が到来するのを待ち受け(ステップS11でNO)、集約装置151から集約情報を受信すると(ステップS11でYES)、集約情報から複数のセンサ情報S1および複数の転送装置161のIDを取得し、取得したセンサ情報S1を転送装置161のIDに対応付けて記憶部13に保存する(ステップS12)。
【0085】
次に、送電線管理装置201は、取得した各センサ情報S1が示す温度測定値Vtと閾値ThP1とを比較する(ステップS13)。
【0086】
次に、送電線管理装置201は、集約情報から取得した複数のセンサ情報S1がそれぞれ示す複数の温度測定値Vtが閾値ThP1以下である場合(ステップS14でNO)、集約装置151から新たな集約情報が到来するのを待ち受ける(ステップS11でNO)。
【0087】
一方、送電線管理装置201は、集約情報から取得した複数のセンサ情報S1のうちの少なくともいずれか1つのセンサ情報S1が示す温度測定値Vtが閾値ThP1よりも大きい場合(ステップS14でYES)、警報情報を、たとえば電力会社設備に設けられた図示しない発電管理装置へ送信する(ステップS15)。
【0088】
次に、送電線管理装置201は、集約装置151から新たな集約情報が到来するのを待ち受ける(ステップS11でNO)。
【0089】
図7は、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置システムが演算処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0090】
図7を参照して、まず、送電線管理装置201は、演算周期Ccに従う演算タイミングTcの到来を待ち受け(ステップS21でNO)、演算タイミングTcが到来すると(ステップS21でYES)、記憶部13から転送装置161のIDごとの最新のセンサ情報S1を取得する(ステップS22)。
【0091】
次に、送電線管理装置201は、取得したセンサ情報S1に基づいて、転送装置161のIDごとに仮電流容量Pcaを決定する。より詳細には、送電線管理装置201は、非特許文献1等に記載されている算出方法CM2に従って、複数の仮設定値Sにそれぞれ対応する複数の予測データDを算出する。送電線管理装置201は、複数の仮設定値Sのうち、対応の予測データDにおいて電線温度Twが許容温度P1に到達する到達時刻が、時刻t1以上であり、かつ時刻t1から所定時間内の時刻となるときの仮設定値Sを、仮電流容量Pcaとして決定する(ステップS23)。
【0092】
次に、送電線管理装置201は、転送装置161のIDごとに決定した複数の仮電流容量Pcaのうちの最も小さい値を電流容量CAとして決定する(ステップS24)。
【0093】
次に、送電線管理装置201は、決定した電流容量CAを示す演算情報を、たとえば電力会社設備に設けられた図示しない発電管理装置へ送信する(ステップS25)。
【0094】
次に、送電線管理装置201は、演算周期Ccに従う新たな演算タイミングTcの到来を待ち受ける(ステップS21でNO)。
【0095】
なお、本開示の実施の形態に係る電線監視システム301では、接触ユニット101は、環境センサ121を含む構成であるとしたが、これに限定するものではない。電線監視システム301における一部の接触ユニット101は、環境センサ121を含まない構成であってもよい。環境センサ121を含まない接触ユニット101における転送装置161は、センサ情報S1の代わりに、温度測定値Vt、電流測定値Vcおよび測定時刻tmを示すセンサ情報S2を生成する。この場合、たとえば、送電線管理装置201における処理部12は、環境センサ121を含まない接触ユニット101における転送装置161のIDに対応する仮電流容量Pcaを、当該転送装置161のIDに対応するセンサ情報S2と、当該接触ユニット101の近傍に設けられた他の接触ユニット101において生成されたセンサ情報S1が示す物理測定値Vpqとに基づいて決定する。
【0096】
また、電線監視システム301では、接触ユニット101の代わりに、収集ユニット102が環境センサ121を含む構成であってもよい。この場合、収集ユニット102における集約装置151は、環境センサ121から物理測定値Vpqを取得する。また、接触ユニット101における転送装置161は、センサ情報S1の代わりに、温度測定値Vt、電流測定値Vcおよび測定時刻tmを示すセンサ情報S2を生成し、生成したセンサ情報S2を含むセンサパケットを作成し、作成したセンサパケットを含む無線信号を送信する。集約装置151は、転送装置161からセンサパケットを受信し、受信したセンサパケットからセンサ情報S2を取得し、取得したセンサ情報S2に取得した物理測定値Vpqを加えることによりセンサ情報S1を生成し、生成したセンサ情報S1を含む集約情報を送電線管理装置201へ送信する。
【0097】
また、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置201では、受信部11は、物理測定値Vpqを取得する構成であるとしたが、これに限定するものではない。受信部11は、物理測定値Vpqの代わりに、物理量PQの予測値または物理量PQの固定値を取得する構成であってもよい。また、処理部12は、物理測定値Vpqの代わりに、物理量PQの予測値または物理量PQの固定値を用いて、電流容量CAを決定する構成であってもよい。
【0098】
また、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置201では、処理部12は、複数の仮設定値Sにそれぞれ対応する複数の予測データDを用いて、時刻t1における電線温度Twが許容温度P1以下となり、かつ当該時刻t1よりも後の時刻における電線温度Twが許容温度P1を超える場合の仮設定値Sを探索する探索処理を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。処理部12は、探索処理を行わない構成であってもよい。この場合、たとえば、処理部12は、連続許容電流値Calvに、測定時刻tmにおける温度測定値Vtに基づいて経験的に求められる値または所定値を加えた電流値を、仮電流容量Pcaとして決定する。すなわち、処理部12は、電線温度Twが許容温度P1に到達する到達時刻trが、時刻t1以上であり、かつ時刻t1から所定時間内の時刻となる条件を満たす限りにおいて、定常計算すなわち算出方法CM1に従って算出される連続許容電流値Calvより僅かでも高い値を仮電流容量Pcaとして決定すればよい。そして、上述したように、処理部12は、転送装置161のIDごとに決定した複数の仮電流容量Pcaのうちの最も小さい値を電流容量CAとして決定し、決定した電流容量CAを示す演算情報を、たとえば電力会社設備に設けられた図示しない発電管理装置へ送信する。
【0099】
また、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置201では、処理部12は、連続許容電流値Calvを用いて仮設定値Sを決定する構成であるとしたが、これに限定するものではない。また、処理部12は、たとえば処理時間の増加が許容される場合、連続許容電流値Calvを用いることなく仮設定値Sを決定し、決定した仮設定値Sを用いて予測データDを算出する構成であってもよい。すなわち、処理部12は、探索処理において、連続許容電流値Calvを用いることなく、仮設定値Sを、たとえばゼロアンペアから10アンペアずつ段階的に変化させてもよい。
【0100】
また、処理部12は、探索処理において、2分法を用いることにより、電線温度Twが許容温度P1に到達する到達時刻trが、時刻t1以上であり、かつ時刻t1から所定時間内の時刻となるときの電流値を検知し、検知した電流値を仮電流容量Pcaとして決定してもよい。
【0101】
また、処理部12は、仮設定値Sを用いる代わりに、機械学習により作成した学習モデルを用いて、予測データDを生成してもよい。
【0102】
また、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置201では、処理部12は、非特許文献1等に記載されている算出方法CM2に従い、仮設定値S、ならびにセンサ情報S1が示す測定時刻tmにおける物理測定値Vpqおよび温度測定値Vtに基づいて、予測データDを算出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。処理部12は、予測データDの算出を行わない構成であってもよい。この場合、たとえば、記憶部13は、電線電流Cw、電線温度Twおよび物理量PQと、電線温度Twの時間変化を示す実測データとの対応関係を示す対応情報を記憶している。処理部12は、対応情報から、仮設定値S、ならびにセンサ情報S1が示す測定時刻tmにおける物理測定値Vpqおよび温度測定値Vtに対応する実測データを取得し、取得した実測データに基づいて、測定時刻tmよりも後の時刻における電線温度Twの時間変化を予測する。
【0103】
また、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置201では、処理部12は、温度確認処理を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。処理部12は、温度確認処理を行わない構成であってもよい。
【0104】
また、本開示の実施の形態に係る送電線管理装置201では、処理部12は、経過時間Txと同じ長さの演算周期Ccごとに、演算処理を繰り返し行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。処理部12は、経過時間Txよりも長い周期で演算処理を繰り返し行ってもよいしし、演算処理を不定期に繰り返し行ってもよい。
【0105】
また、本開示の実施の形態に係る電線監視システム301では、接触ユニット101は、電流センサ131を含む構成であるとしたが、これに限定するものではない。電線監視システム301における一部の接触ユニット101は、電流センサ131を含まない構成であってもよい。より詳細には、同じ電線1に設けられた複数の接触ユニット101のうちのいずれか1つの接触ユニット101が電流センサ131を含んでいればよく、複数の接触ユニット101のうちの他の接触ユニット101は電流センサ131を含まない構成であってもよい。
【0106】
図8は、本開示の実施の形態に係る電線監視システムの適用例を示す図である。
図8を参照して、たとえば、電線1は、分岐線1a,1bを有している。分岐線1aの端部は、太陽光発電所231における発電装置に接続される。分岐線1bの端部は、工場等における負荷装置241に接続される。発電所211において発電された電力および太陽光発電所231において発電された電力は、一部が電線1を介して負荷装置241へ供給され、一部が変電所221へ送電される。
【0107】
電線監視システム301では、電流センサ131を含む接触ユニット101である接触ユニット101Aが、電線1の分岐部ごとに設けられる。
【0108】
たとえば、送電線管理装置201における処理部12は、上述した電流確認処理において、各接触ユニット101Aにおける電流測定値Vcと閾値ThP2とを比較する。このように、電線1の分岐部ごとに設けられた接触ユニット101Aの電流測定値Vcを用いて電流確認処理を行うことにより、負荷装置241における負荷変動および分散電源の潮流がある場合においても、電線1の電流を適切に制御することができる。
【0109】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0110】
上述の実施形態の各処理(各機能)は、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現される。上記処理回路は、上記1または複数のプロセッサに加え、1または複数のメモリ、各種アナログ回路、各種デジタル回路が組み合わされた集積回路等で構成されてもよい。上記1または複数のメモリは、上記各処理を上記1または複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1または複数のプロセッサは、上記1または複数のメモリから読み出した上記プログラムに従い上記各処理を実行してもよいし、予め上記各処理を実行するように設計された論理回路に従って上記各処理を実行してもよい。上記プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。なお、物理的に分離した上記複数のプロセッサが互いに協働して上記各処理を実行してもよい。たとえば、物理的に分離した複数のコンピュータのそれぞれに搭載された上記プロセッサがLAN(Local Area Network)、WAN (Wide Area Network)、およびインターネット等のネットワークを介して互いに協働して上記各処理を実行してもよい。上記プログラムは、外部のサーバ装置等から上記ネットワークを介して上記メモリにインストールされても構わないし、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、および半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通し、上記記録媒体から上記メモリにインストールされても構わない。
【0111】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
電力系統における電線の温度が許容温度以下となるような前記電線の電流容量を決定する送電線管理装置であって、
前記電線の温度の測定結果を取得する第1取得部と、
前記電線の環境に関する物理量を取得する第2取得部と、
前記第1取得部により取得された、対象時刻における前記測定結果、および前記第2取得部により取得された前記物理量に基づいて、前記電線の温度の予測値を取得する予測部と、
前記予測部により取得された前記予測値が、前記対象時刻から所定時間後の第1時刻に前記許容温度以下となり、かつ前記第1時刻よりも後の時刻に前記許容温度を超える場合の前記電線の電流を、前記電流容量として決定する演算処理を行う決定部とを備え、
前記決定部は、前記演算処理において、前記対象時刻から有限の所定時間後の前記第1時刻に前記電線の温度が前記許容温度以下となり、かつ前記第1時刻から有限の所定時間後の時刻に前記電線の温度が前記許容温度を超える場合の前記電線の電流を、前記電流容量として決定する、送電線管理装置。
【0112】
[付記2]
電力系統における電線の温度が許容温度以下となるような前記電線の電流容量を決定する送電線管理装置であって、
処理回路を備え、
前記処理回路は、
前記電線の温度の測定結果を取得し、
前記電線の環境に関する物理量を取得し、
取得した、対象時刻における前記測定結果、および取得した前記物理量に基づいて、前記電線の温度の予測値を取得し、
取得した前記予測値が、前記対象時刻から所定時間後の第1時刻に前記許容温度以下となり、かつ前記第1時刻よりも後の時刻に前記許容温度を超える場合の前記電線の電流を、前記電流容量として決定する演算処理を行う、送電線管理装置。
【符号の説明】
【0113】
1,1U,1V,1W 電線
1a,1b 分岐線
2 鉄塔
3 回線
11 受信部(第1の取得部、第2の取得部、第3取得部)
12 処理部(決定部、第1通知処理部、第2通知処理部、予測部)
13 記憶部
101,101A 接触ユニット
102 収集ユニット
111 温度センサ
121 環境センサ
131 電流センサ
151 集約装置
161 転送装置
201 送電線管理装置
211 発電所
221 変電所
231 太陽光発電所
241 負荷装置
301 電線監視システム
D,Da,Db,Dc,Dd,Dalv 予測データ