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特開2024-131291ストレージ管理装置、ストレージ管理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131291
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ストレージ管理装置、ストレージ管理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/06 20060101AFI20240920BHJP
   G06F 13/10 20060101ALI20240920BHJP
   G06F 11/30 20060101ALI20240920BHJP
   G06F 16/28 20190101ALI20240920BHJP
【FI】
G06F3/06 301Z
G06F13/10 340A
G06F3/06 301X
G06F3/06 304N
G06F11/30 155
G06F11/30 140M
G06F16/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041474
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】小川 亮二
【テーマコード(参考)】
5B042
5B175
【Fターム(参考)】
5B042GA34
5B042MA08
5B042MC25
5B175AA02
(57)【要約】
【課題】ユーザの利便性を低下させることなく、利用コストを低減する。
【解決手段】クラウドストレージ4は、高速ストレージ5と、低速ストレージ6とを備える。アクセスモニタコンポーネント3は、クラウドストレージ4内のファイル毎に、アクセス頻度、配置されるストレージ、コスト見積結果、ファイル移動可否の判断結果などを記録するヒートマップを有する。アクセスモニタコンポーネント3は、ヒートマップを参照して、クラウドストレージ4内のファイルに現在の利用コストが不適状態であることを示すコスト不適状態を検出した場合に、複数のストレージに対してファイル(データ)移動命令を実行し、ストレージの間でファイル移動を実施する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレージ装置が備える複数のストレージのファイル毎に対するクライアントからの利用状況を記録するアクセス状況記録手段と、
ファイル毎の利用状況に基づいて、ファイルが現在格納されている移動元ストレージにおける第1利用コストと、前記移動元ストレージとは異なる移動先ストレージにおける第2利用コストとを算出する利用コスト算出手段と、
前記第1利用コストと前記第2利用コストとの差分であるコスト改善値に基づいて、前記移動元ストレージから前記移動先ストレージへの移動対象の候補となるファイルを特定する候補ファイル特定手段と、
を備えることを特徴とするストレージ管理装置。
【請求項2】
前記移動対象の候補として特定したファイルを移動した場合の移動コストを算出する移動コスト算出手段と、
前記コスト改善値と前記移動コストとに基づいて、前記移動対象の候補として特定したファイルのうち、前記移動元ストレージから前記移動先ストレージへの移動対象となるファイルを特定する移動対象ファイル特定手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のストレージ管理装置。
【請求項3】
前記移動対象ファイル特定手段は、
前記コスト改善値が大きい順に、各ファイルのコスト改善値を累計した合計コスト改善値と、各ファイルの移動コストを累計した合計移動コスト値とを順次算出し、
前記移動対象の候補として特定したファイルのうち、合計コスト改善値が合計移動コストを上回る範囲におけるファイルを移動対象とする、
ことを特徴とする請求項2に記載のストレージ管理装置。
【請求項4】
前記利用状況は、
ファイル毎の読み込み回数と、書き込み回数と、一覧取得回数と、データ取得回数とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のストレージ管理装置。
【請求項5】
前記第1利用コストは、前記移動元ストレージにおける、ストレージ容量コストとトランザクションコストとの合計であり、
前記第2利用コストは、前記移動先ストレージにおける、ストレージ容量コストとトランザクションコストとの合計であり、
前記トランザクションコストは、
書き込みトランザクションと、読み込みトランザクションと、一覧表示トランザクションと、データ取得トランザクションとの合計である、
ことを特徴とする請求項1に記載のストレージ管理装置。
【請求項6】
ストレージ装置が備える複数のストレージのファイル毎に対するクライアントからの利用状況を記録するステップと、
ファイル毎の利用状況に基づいて、ファイルが現在格納されている移動元ストレージにおける第1利用コストと、前記移動元ストレージとは異なる移動先ストレージにおける第2利用コストとを算出するステップと、
前記第1利用コストと前記第2利用コストとの差分であるコスト改善値に基づいて、前記移動元ストレージから前記移動先ストレージへの移動対象の候補となるファイルを特定するステップと、
を含むことを特徴とするストレージ管理方法。
【請求項7】
情報処理装置のコンピュータを、
ストレージ装置が備える複数のストレージのファイル毎に対するクライアントからの利用状況を記録するアクセス状況記録機能、
ファイル毎の利用状況に基づいて、ファイルが現在格納されている移動元ストレージにおける第1利用コストと、前記移動元ストレージとは異なる移動先ストレージにおける第2利用コストとを算出する利用コスト算出機能、
前記第1利用コストと前記第2利用コストとの差分であるコスト改善値に基づいて、前記移動元ストレージから前記移動先ストレージへの移動対象の候補となるファイルを特定する候補ファイル特定機能、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレージ管理装置、ストレージ管理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に広く利用されているクラウドサービスの一つとして、オンプレミス側のストレージ装置と同様に、クライアントがネットワークを介してアクセスすることで、クラウド上のストレージ装置(クラウドストレージ)を種々のファイルを格納するストレージ領域として使用するクラウドストレージサービスが知られている。
【0003】
クラウドストレージには、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)など性能が異なるストレージ装置が用いられており、利用者の利用状況に応じて、高速なI/O性能を有するが容量あたりの利用コストが高価な高速ストレージ、低速なI/O性能だが容量あたりの利用コストが安価な低速ストレージなど、多様な選択肢が存在する。
【0004】
しかしながら、を利用する場合、パフォーマンスと利用コスト(従量課金)はいわばトレードオフの関係にあり、パフォーマンスが良くなる分、利用コストも拡大していく傾向がある。クラウドストレージの利用においては、利用者の利用状況に応じてパフォーマンスと利用コストとの間で折り合いをつける必要がある。
【0005】
利用者側でクラウドストレージの利用コストを最適化するためには、異なるストレージ装置(高速ストレージ、低速ストレージ)に配置された全てのファイルに対し、ファイルアクセス頻度やファイル容量などを考慮して、具体的なコスト計算を行った上でファイルの配置先を決定する必要がある。これらの計算や操作などの手続きを利用者側にて手動で実施することは容易ではなく、対象のファイル数が膨大になるほど現実的ではない。
【0006】
例えば、特許文献1では、アクセス回数の合計であるデータ価値とストレージコストを比較し、当該データを適切なストレージロケーションに再配置する技術が提案されている。また、特許文献2では、アクセス頻度の高いデータを高速なストレージ装置に配置し、アクセス頻度の低いデータを低速なストレージ装置に再配置する技術が提案されている。また、特許文献3では、ストレージノードの利用可能性、ストレージノードの容量、ストレージノードに関連するデータ記憶コスト、ストレージノードに関連するデータ転送コスト、ストレージノードの場所、ネットワークトポロジー、又はストレージノードに応じて、様々な異種のストレージノードにデータの複数のコピー(例えば、複製)を配置する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-031668号公報
【特許文献2】特開2016-167195号公報
【特許文献3】特表2012-524947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1-3では、様々なパラメータに基づいて、利用コストを低減することが試みられているが、利用状況に係わるパラメータが十分に精査されておらず、ユーザの利便性と利用コストを十分に最適化できないという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、上述の課題を解決するストレージ管理装置、ストレージ管理方法およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、ストレージ装置が備える複数のストレージのファイル毎に対するクラウドからの利用状況を記録するアクセス状況記録手段と、ファイル毎の利用状況に基づいて、ファイルが現在格納されている移動元ストレージにおける第1利用コストと、前記移動元ストレージとは異なる移動先ストレージにおける第2利用コストとを算出する利用コスト算出手段と、前記第1利用コストと前記第2利用コストとの差分であるコスト改善値に基づいて、前記移動元ストレージから前記移動先ストレージへの移動対象の候補となるファイルを特定する候補ファイル特定手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、ストレージ装置が備える複数のストレージのファイル毎に対するクラウドからの利用状況を記録するステップと、ファイル毎の利用状況に基づいて、ファイルが現在格納されている移動元ストレージにおける第1利用コストと、前記移動元ストレージとは異なる移動先ストレージにおける第2利用コストとを算出するステップと、前記第1利用コストと前記第2利用コストとの差分であるコスト改善値に基づいて、前記移動元ストレージから前記移動先ストレージへの移動対象の候補となるファイルを特定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様は、情報処理装置のコンピュータを、ストレージ装置が備える複数のストレージのファイル毎に対するクラウドからの利用状況を記録するアクセス状況記録機能、ファイル毎の利用状況に基づいて、ファイルが現在格納されている移動元ストレージにおける第1利用コストと、前記移動元ストレージとは異なる移動先ストレージにおける第2利用コストとを算出する利用コスト算出機能、前記第1利用コストと前記第2利用コストとの差分であるコスト改善値に基づいて、前記移動元ストレージから前記移動先ストレージへの移動対象の候補となるファイルを特定する候補ファイル特定機能、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、ユーザの利便性を低下させることなく、利用コストを低減することができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態によるストレージ管理装置1の構成を示すブロック図である。
図2】本第1実施形態のアクセスモニタコンポーネント3によるコスト不適状態の検出機能を示すブロックである。
図3】本第1実施形態のアクセスモニタコンポーネント3によるヒートマップ11を用いたコスト不適状態の検出動作を説明するためのフローチャートである。
図4】本第1実施形態のヒートマップ11の一例を示す概念図である。
図5】本第1実施形態において、上述した処理後のヒートマップ(の一部)11の他の例を示す概念図である。
図6】本発明の第2実施形態のストレージ管理装置1の構成を示すブロック図である。
図7】本第2実施形態の動作説明に対して設定する前提条件を示す概念図である。
図8】本第2実施形態の動作説明に用いるファイルA~Fの利用状況を示す概念図である。
図9】本第2実施形態において、現在のストレージで過去1か月にかかった利用コスト32の一例を示す概念図である。
図10】本第2実施形態において、現在とは異なるストレージ(対のストレージ)に配置されたと仮定した場合の1か月にかかる利用コスト33の一例を示す概念図である。
図11】本第2実施形態において各ファイルA~Fに対して算出された、コスト改善値(impC)と移動コスト(moveC)とを示す概念図である。
図12】本第2実施形態によるヒートマップ11の一例を示す概念図である。
図13】本第2実施形態において、ソート、移動要否判定後のヒートマップ11の一例を示す概念図である。
図14】本発明の第1変形例の構成を示すブロック図である。
図15】本発明の第2変形例の構成を示すブロック図である。
図16】本実施形態によるストレージ管理装置の最小構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるストレージ管理装置1の構成を示すブロック図である。図1において、ストレージ管理装置1は、ファイルアクセス提供コンポーネント2と、アクセスモニタコンポーネント3とを備える。クラウドストレージ4は、高速ストレージ5と、低速ストレージ6とを備える。高速ストレージ5および低速ストレージ6は、例えば、SSD(Solid State Drive)や、HDD(Hard Disk Drive)などから構成される。クライアント7は、クラウドストレージ4の利用者としてオンプレミス側に存在する。クライアント7は、インターネット回線を通じて、クラウド上のファイルアクセス提供コンポーネント2へアクセス手段の問い合わせを行い(SS1)、ファイルアクセス提供コンポーネント2からアクセス手段回答を受信すると(SS2)、クラウドストレージ4上のファイルに対してアクセスを行う(SS3)。
【0017】
ファイルアクセス提供コンポーネント2は、クライアント7が要求するファイルアクセス方法に沿う形で、ファイルアクセスに必要な情報を受け渡す役割を持つ。ファイルアクセスを実行するためのプロトコル、ファイルシステム、クエリ等は、クラウドサービスの提供形態に依存するが、クラウドストレージ4の利用者は表面上それらを意識せず、一般的なファイル操作アプリケーションや、Webブラウザ等で提供されるファイル参照手段によってアクセスを行う。
【0018】
アクセスモニタコンポーネント3は、クラウドストレージ4内のファイル毎に、アクセス頻度、配置されるストレージ、コスト見積結果、ファイル移動可否の判断結果などを記録するヒートマップ(後述する図4を参照)を有する。アクセスモニタコンポーネント3は、ヒートマップを参照して、クラウドストレージ4内のファイルに現在の利用コストが不適状態であることを示すコスト不適状態を検出した場合に(SS4)、クラウドストレージ4に対してファイル(データ)移動命令を実行し(SS5)、高速ストレージ5と低速ストレージ6との間でファイル移動を実施する。アクセスモニタコンポーネント3は、ファイル移動が終了すると、ファイルアクセス提供コンポーネント2にファイル格納先変更を通知する(SS6)。
【0019】
本第1実施形態では、クラウドストレージ4における代表的なストレージとして、高速ストレージ5と低速ストレージ6との2つを用いて説明する。高速ストレージ5は、高速なI/O性能を有するが容量あたりの利用コストが高価なストレージであり、低速ストレージ6は、低速なI/O性能だが容量あたりの利用コストが安価なストレージである。低速ストレージ6から高速ストレージ5への高頻度ファイルが移動され(SS7)、高速ストレージ5から低速ストレージ6に低頻度ファイルが移動される(SS8)。なお、実際のクラウドストレージ4では、2種類を超える種類のストレージが存在する場合もあるが、そのような場合でも本第1実施形態は適用可能となっている。
【0020】
図2は、本第1実施形態のアクセスモニタコンポーネント3によるコスト不適状態の検出機能を示すブロックである。コスト不適状態検出部10は、ファイルアクセス頻度情報(ヒートマップ)11を参照し、ファイルがコスト不適状態であるか否かを検出する。コスト不適状態の検出が行われるタイミングは、例えば、毎月初日の特定の時刻に定期的に自動実行したり、クラウドストレージ管理者が任意のタイミングで適時実行したりしてもよい。データ移動先決定部12は、コスト不適状態検出部10によってファイルがコスト不適状態であることが検出されると、利用コストがより低いストレージを移動先として決定する。データ移動部13は、データ移動先決定部12によって決定された移動先のストレージ(高速ストレージ又は低速ストレージ)に該当ファイルを移動させる。
【0021】
図3は、本第1実施形態のアクセスモニタコンポーネント3によるヒートマップ11を用いたコスト不適状態の検出動作を説明するためのフローチャートである。図4は、本第1実施形態のヒートマップ11の一例を示す概念図である。なお、本実施形態において、ヒートマップ11は、一例としてテーブル(表)形式で扱うが、key-valueストアやJSON(JavaScript(登録商標) Object Notation)、XML(Extensible Markup Language)など、データ記述が可能なものであれば実装方式を限定しない。
【0022】
アクセスモニタコンポーネント3は、ファイルアクセス頻度情報を更新する(ステップS10)。より具体的には、アクセスモニタコンポーネント3は、クラウドストレージ4の運用上記録されるログ情報を元に、ファイル毎の書き込み回数、読み込み回数、一覧取得回数、データ取得回数の4つのパラメータをカウントし、集計したものをヒートマップ11の各列へ転記する(図4を参照)。
【0023】
なお、カウント対象となる4つのパラメータは、予め期間を指定しておき、どの期間を対象としてコスト不適状態を検出するかを決定しておく。例えば、1か月という期間を指定した場合、コスト不適状態検出開始時点から過去1か月分のパラメータをカウントする。本第1実施形態としては、上記期間を限定しないが、1週間、1か月、6か月、12か月などの区切りを静的に定義しておき、利用者が所望する期間を指定するようにしてもよい。
【0024】
次に、アクセスモニタコンポーネント3は、全ファイルに対してコスト見積計算を実施する(ステップS12)。より具体的には、アクセスモニタコンポーネント3は、ヒートマップ11に記録されたファイル毎のパラメータから、ファイルが現在配置されているストレージ(第1ストレージ)におけるストレージ容量コスト(Cs)およびトランザクションコスト(Ct)を算出し、その合計値(Cs+Ct)をヒートマップの「月間ストレージコスト」列へ転記し、現在配置されているストレージの種別を「ストレージ」列に転記する(図4を参照)。
【0025】
なお、正確な利用コスト(合計値(Cs+Ct))の計算方法は、クラウド事業者の定めるものに従うが、本第1実施形態においては、一般的に扱われる計算方法を例に説明する。なお、本第1実施形態においては、指定期間を1か月とするため、期間の表現として「月間」という言葉を用いる。
【0026】
ストレージ容量コスト(Cs)は、以下の計算式で算出する。
Cs=保存容量単価(¥/GB/月)×ファイルサイズ(GB)×指定期間内の月数
【0027】
トランザクションコスト(Ct)は、以下の計算式で算出する。
Ct=書き込みトランザクションTrs-w(¥/件)×指定期間内の書き込み回数
+読み込みトランザクションTrs-r(¥/件)×指定期間内の読み込み回数
+一覧表示トランザクションTrs-v(¥/件)×指定期間内の表示回数
+データ取得トランザクションTrs-d(¥/GB)×ファイルサイズ(GB)×指定期間内の取得回数
【0028】
次に、アクセスモニタコンポーネント3は、上記月間ストレージコストである合計値(Cs+Ct)等を元に、コスト改善値(impC)を算出し、コスト不適状態フラグを付与する(ステップS14)。より具体的には、アクセスモニタコンポーネント3は、現在、ファイルが配置されているストレージ(第1ストレージ)における月間ストレージコスト(C(a))を算出後、現在のストレージとは異なるストレージ(第2ストレージ)に配置されていた場合の月間ストレージコスト(C(b))を算出する。次に、アクセスモニタコンポーネント3は、月間ストレージコスト(C(a))と月間ストレージコスト(C(b))との差をコスト改善値(impC)として以下の計算式で算出する。
impC=C(a)-C(b)
【0029】
そして、コスト改善値(impC)が正の値である場合には、移動先に想定されたストレージの方が利用コストが低いので、コスト改善が見込まれると判断し、ファイルがコスト不適状態とし、当該ファイルに対して、ヒートマップの「コスト不適」列に「不適」であることを記録し(コスト不適状態フラグの付与)、コスト改善値(impC)を「改善値」列に記録する(図4を参照)。
【0030】
一方、コスト改善値(impC)が負の値である場合には、移動先に想定されたストレージの方が利用コストが高いので、コスト改善が見込まれないと判断し、ファイルがコスト不適状態でないとし、当該ファイルに対して、ヒートマップの「コスト不適」列に「適」であることを記録する(図4を参照)。
【0031】
次に、アクセスモニタコンポーネント3は、ヒートマップ11を参照し、コスト不適状態と判定されたファイルがあるか否かを判断する(ステップS16)。そして、コスト不適状態と判定されたファイルがない場合には(ステップS16のNO)、ストレージの移動は不要であるので当該処理を終了する。
【0032】
一方、コスト不適状態と判定されたファイルがある場合には(ステップS16のYES)、アクセスモニタコンポーネント3は、コスト改善値(impC)が降順となるようにヒートマップ11をソートし、移動コスト(moveC)を算出する(ステップS18)。より具体的には、アクセスモニタコンポーネント3は、実際にストレージの移動を行うかどうかの判断を行うために、ヒートマップの「改善値」列をキーに、コスト改善が大きなものから並ぶように降順でソートする(図4のファイルA、Bを参照)。
【0033】
アクセスモニタコンポーネント3は、ヒートマップ11のソート後、コスト改善が大きなファイルから順にストレージを移動する際に発生するコストとして、以下の計算式で移動コスト(moveC)を算出し、ヒートマップ11の「移動コスト」列に記録する(図4のファイルA、Bの「移動コスト」列を参照)。
moveC=ファイルの書き込みトランザクション(¥/GB)+ファイルのデータ取得コスト(¥/GB)
【0034】
アクセスモニタコンポーネント3は、さらに、ヒートマップ11の「改善値」列のコスト改善値が大きなものから降順に、合計コスト改善値(ΣimpC)と合計移動コスト(ΣmoveC)とを順次算出し、その都度、合計コスト改善値(ΣimpC)が合計移動コスト(ΣmoveC)を上回るか否かを判断し(ステップS20)、合計コスト改善値(ΣimpC)が合計移動コスト(ΣmoveC)を上回る(ΣimpC>ΣmoveC)場合には(ステップS20のYES)、当該ファイルに対して、ヒートマップ11の「移動要否」列に「要」を記録する(ステップS22)。
【0035】
より具体的には、アクセスモニタコンポーネント3は、合計コスト改善値(ΣimpC)が合計移動コスト(ΣmoveC)を上回る場合には、ストレージの移動を実行した方がコスト面で有利であるので、当該ファイルを移動対象とし、ヒートマップ11の「移動要否」列に「要」を記録する(図4のファイルAを参照)。その後、ヒートマップ11の「改善値」列が大きなものから降順に、合計コスト改善値(ΣimpC)が合計移動コスト(ΣmoveC)を上回る(ΣimpC>ΣmoveC)間は、ステップS20、S22を繰り返し、都度、ファイルを移動対象とし、ヒートマップ11の「移動要否」列に「要」を記録する。
【0036】
一方、合計コスト改善値(ΣimpC)が合計移動コスト(ΣmoveC)を下回った場合(ΣimpC≦ΣmoveC)には(ステップS20のNO)、これ以上、ファイルを移動すると(移動対象に追加すると)、移動コストの方が大となり、コスト面でのメリットがなくなるので、当該ファイルを移動対象から外し、ヒートマップの「移動要否」列に「不要」を記録し(ステップS24;図4のファイルBを参照)、当該処理を終了する。したがって、これ以降にもコスト不適であるファイルがあったとしても、移動対象から外れることになる。
【0037】
図4に示すヒートマップ11の例では、ファイルAの場合、合計コスト改善値(ΣimpC)が$1.0、合計移動コスト(ΣmoveC)が$0.8となって(ΣimpC>ΣmoveC)、合計コスト改善値(ΣimpC)が上回るので、ヒートマップの「移動要否」列に「要」が記録される。しかしながら、ファイルBの場合、合計コスト改善値(ΣimpC)が$1.5、合計移動コスト(ΣmoveC)が$1.6となって(ΣimpC<ΣmoveC)、ファイルA、Bの2つのファイルを移動すると移動コストの方が大となり、コスト面でのメリットがなくなるので、ファイルBに対する、ヒートマップ11の「移動要否」列には「不要」が記録される。
【0038】
図5は、本第1実施形態において、上述した処理後のヒートマップ(の一部)11の他の例を示す概念図である。図5では、ファイルF1のコスト改善値が$1.0、ファイルF2のコスト改善値が$0.5、ファイルF3のコスト改善値が$0.4、ファイルF4のコスト改善値が$0.3と、コスト改善値が大きい順に並ぶようにソートされている。そして、上述したように、ヒートマップ11の「改善値」列のコスト改善値をキーに、コスト改善値が大きなものから順に(上から順に)、合計コスト改善値(ΣimpC)と合計移動コスト(ΣmoveC)とを順次算出し、その都度、合計コスト改善値(ΣimpC)が合計移動コスト(ΣmoveC)を上回るか否かを判断していく。
【0039】
まず、ファイルF1の場合、合計コスト改善値(ΣimpC)が$1.0、合計移動コスト(ΣmoveC)が$0.8となり、合計コスト改善値(ΣimpC)が上回るので($1.0>$0.8)、ヒートマップ11の「移動要否」列に「要」が記録される。次に、ファイルF2の場合、合計コスト改善値(ΣimpC)が$1.5(1.0+0.5)、合計移動コスト(ΣmoveC)が$0.9(0.8+0.1)となり、合計コスト改善値(ΣimpC)が上回るので($1.5>$0.9)、ヒートマップ11の「移動要否」列に「要」が記録される。
【0040】
次に、ファイルF3の場合、合計コスト改善値(ΣimpC)が$1.9(1.0+0.5+0.4)、合計移動コスト(ΣmoveC)が$1.8(0.8+0.1+0.9)となり、合計コスト改善値(ΣimpC)が上回るので($1.9>$1.8)、ヒートマップ11の「移動要否」列に「要」が記録される。そして、ファイルF4の場合、合計コスト改善値(ΣimpC)が$2.2(1.0+0.5+0.4+0.3)、合計移動コスト(ΣmoveC)が$2.3(0.8+0.1+0.9+0.5)となり、合計コスト改善値(ΣimpC)が下回るので($2.2<$2.3)、移動コストの方が大となってコスト面でのメリットがなくなるため、ヒートマップの「移動要否」列に「不要」が記録される。
【0041】
次に、アクセスモニタコンポーネント3は、ストレージの移動対象となったファイルを移動する命令を、クラウドストレージ4の高速ストレージ5、低速ストレージ6へ送信する。図4に示す例では、ファイルAを移動する命令を送信することになり、図5に示す例では、ファイルF1、F2、F3を移動する命令を送信することになる。そして、移動元の高速ストレージ5(又は低速ストレージ6)から移動先の低速ストレージ6(又は高速ストレージ5)へのファイル移動が完了後、アクセスモニタコンポーネント3は、ファイルアクセス提供コンポーネント2にファイルの格納先が変更されたことを通知する。
【0042】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態のストレージ管理装置1の構成を示すブロック図である。なお、図1等に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。図1において、クラウドサービス事業者は、クライアント(利用者)にファイルアクセス機能とコスト最適化機能とを提供するインタフェースとして、クラウドストレージサービスインタフェース20を用意する。
【0043】
クラウドストレージサービスインタフェース20は、ファイルサーバ機能21を有し、HTTP通信あるいはSMB/NFSプロトコルによってファイルアクセス機能を提供する。クラウドストレージサービスインタフェース20には、利用者が個別に使用するファイル保存領域として、クラウドストレージ4のストレージ(高速ストレージ5、低速ストレージ6)が接続されている。また、クラウドストレージサービスインタフェース20は、コスト最適化機能を実行するためのユーザインタフェース機能22を有する。ユーザインタフェース機能22は、利用者が任意のタイミングで実行可能となっている。
【0044】
アクセスモニタコンポーネント3は、ヒートマップ11と通知機能14とを有する。ヒートマップ11は、ファイル毎に、アクセス頻度、配置されるストレージ、コスト見積結果、ファイル移動可否の判断結果などを記録する。通知機能14は、高速ストレージ5と低速ストレージ6との間でファイル移動が行われた際に、ファイル配置先が変更されたことをクラウドストレージサービスインタフェース20へ通知する。
【0045】
クライアント7は、クラウドストレージサービスインタフェース20にインターネット経由で接続し、Webブラウザ8あるいはファイル閲覧機能9を用いて、インターネットを介してファイルサーバ機能21を利用する。
【0046】
図7は、本第2実施形態の動作説明に対して設定する前提条件を示す概念図である。また、図8は、本第2実施形態の動作説明に用いるファイルA~Fの利用状況を示す概念図である。
【0047】
本第2実施形態の動作説明として、以下の前提条件を設定する。
[前提条件]
・高速ストレージおよび低速ストレージにおける利用コストは、図7に示す前提条件30のように、保存容量単価(¥/GB/月)、書き込みトランザクションTrs-w(¥/10,000件)、読み込みトランザクションTrs-r(¥/10,000件)、一覧表示トランザクションTrs-v(¥/10,000件)、データ取得トランザクションTrs-d(¥/GB)を含む。
・利用者が指定するコスト不適状態の検出期間は1か月とする。
・クラウドストレージサービスの利用者は、図8に示す利用状況31のように、6つのファイルA~Fを利用している。各ファイルA~Fは、「ストレージ」列に示すストレージ(低速又は高速)に配置されており、容量(GB)、書き込み回数、読み込み回数、一覧取得回数、データ取得回数を含むパラメータを有する。これらパラメータに基づいてヒートマップ11が作成される。
【0048】
この前提条件30および利用状況31の下で、クライアント(利用者)7がクラウドストレージサービスインタフェース20から、コスト最適化を実行した際の動作について説明する。まず、アクセスモニタコンポーネント3がストレージアクセスやトランザクション履歴が記録されるログファイル(不図示)を用いて、ファイルA~Fに対して図8に示す利用状況31を生成する。次に、アクセスモニタコンポーネント3は、コスト不適状態を検出するため、図7に示す前提条件30および図8に示す利用状況31から、ファイルA~Fのそれぞれに対して、現在のストレージで過去1か月にかかった利用コスト32(図9)を計算し、現在とは異なるストレージ(対のストレージ)に配置されたと仮定した場合の1か月にかかる利用コスト33(図10)を計算する。
【0049】
計算例として、現在、低速ストレージに配置されているファイルAについて各コストの計算過程を以下に示す。
・ファイルAの移動元の低速ストレージでの利用コスト(図9
ストレージ容量コスト(Cs)
=31.5(保存容量単価)×0.1(ファイルサイズ(GB))×1(指定期間内の月数)=3.15
【0050】
トランザクションコスト(Ct)
書き込みトランザクションコスト(Trs-w)
=0.00182(Trs-w(¥/件))×1000(指定期間内の書き込み回数)=1.820
【0051】
読み込みトランザクションコスト(Trs-r)
=0.000182(Trs-r(¥/件))×5000(指定期間内の読み込み回数)=0.910
【0052】
一覧表示トランザクションコスト(Trs-v)
=0.0091(Trs-v(¥/件))×1000(指定期間内の表示回数)=0.910
【0053】
データ取得トランザクション(Trs-d)
=1.4(Trs-d(¥/GB))×0.1(ファイルサイズ(GB))×20(指定期間内の取得回数)=2.800
よって、ファイルAの低速ストレージでの利用コストの合計は¥9.590となる。
【0054】
・ファイルAの移動先の高速ストレージでの利用コスト(図10
ストレージ容量コスト(Cs)
=42(保存容量単価)×0.1(ファイルサイズ(GB))×1(指定期間内の月数)=4.200
【0055】
トランザクションコスト(Ct)
書き込みトランザクションコスト(Trs-w)
=0.00091(Trs-w(¥/件))×1000(指定期間内の書き込み回数)=0.910
【0056】
読み込みトランザクションコスト(Trs-r)
=0.0000728(Trs-r(¥/件))×5000(指定期間内の読み込み回数)=0.364
【0057】
一覧表示トランザクションコスト(Trs-v)
=0.0091(Trs-v(¥/件))×1000(指定期間内の表示回数)=0.910
【0058】
データ取得トランザクション(Trs-d)
=0.000(高速ストレージのため)
よって、ファイルAの高速ストレージでの利用コストの合計は¥6.384となる。
【0059】
次に、アクセスモニタコンポーネント3は、ファイルA~Fのそれぞれに対して、現在のストレージで過去1か月にかかった利用コスト32(図9)と、現在とは異なるストレージ(対のストレージ)に配置されたと仮定した場合の1か月にかかる利用コスト33(図10)とから、各ファイルA~Fがストレージを移動する場合のコスト改善値(impC)を算出する。
【0060】
また、アクセスモニタコンポーネント3は、ファイルA~Fのうち、ストレージの移動によってコスト改善が見込める、移動対象ファイルに対して移動コスト(moveC)とを算出する。アクセスモニタコンポーネント3は、コスト改善値(impC)と移動コスト(moveC)の計算完了後、計算結果をヒートマップ11に記録する。
【0061】
図11は、本第2実施形態において各ファイルA~Fに対して算出された、コスト改善値(impC)と移動コスト(moveC)とを示す概念図である。図11に示す表34には、上述したファイルA~Fに対して算出したコスト改善値(impC)と移動コスト(moveC)とを示している。
【0062】
具体的には、ファイルAの場合には、図9に示す合計「9.590」から、図10に示す合計「6.384」を減算した値「3.206」がコスト改善値(impC)となる。同様に、ファイルBの場合には、図9に示す合計「16.223」から、図10に示す合計「21.462」を減算した値「-5.239」がコスト改善値(impC)となる。以下同様に、ファイルCのコスト改善値(impC)は、「33.166」-「50.400」=「-17.234」となり、ファイルDのコスト改善値(impC)は、「17.746」-「13.601」=「4.145」となり、ファイルEのコスト改善値(impC)は、「31.878」-「43.820」=「-11.942」となり、ファイルFのコスト改善値(impC)は、「25.200」-「18.900」=「6.300」となる。
【0063】
そして、表34において、コスト改善値(impC)が正の値を示す場合は、ストレージの移動によってコスト改善が見込める、移動対象ファイルの候補であることを意味する。図示の例では、ファイルAのコスト改善値が「3.206」、ファイルDのコスト改善値が「4.145」、ファイルFのコスト改善値が「6.300」であり、いずれも正の値を示すので、ファイルA、D、Fがストレージの移動によってコスト改善が見込める、移動対象ファイルの候補となる。そして、コスト改善が見込めるファイルA、D、Fに対して上述した数式に基づいて移動コスト(moveC)を算出する。図例の例では、ファイルAの移動コストが「0.142」、ファイルDの移動コストが「0.002」、ファイルFの移動コストが「0.002」となる。
【0064】
図12は、本第2実施形態によるヒートマップ11の一例を示す概念図である。ヒートマップ11には、図12に示すように、上述した処理により、ファイルA~F毎に、書き込み回数、読み込み回数、一覧取得回数、データ取得回数、月間ストレージコスト、ストレージ、コスト不適、コスト改善値、移動コストが転記されている。また、図12のヒートマップ11では、既に、コスト改善値の正負に基づいて、「コスト不要」列に対して、「不適」又は「適」が記録されている。上述したように、コスト改善値が正の値を示すファイルA、D、Fの「コスト不適」列が「不適」、すなわち移動対象ファイルの候補となっている。アクセスモニタコンポーネント3は、図12に示すヒートマップ11に対して、コスト改善値が大きな順になるようにソートし、前述した図3に示すフローチャートに従って、コスト改善値が大きい方から順に算出した合計コスト改善値(ΣimpC)と合計移動コスト(ΣmoveC)とに基づいて、コスト改善が見込めるファイルの移動要否を判定する。
【0065】
図13は、本第2実施形態において、ソート、移動要否判定後のヒートマップ11の一例を示す概念図である。図13に示すように、ヒートマップ11は、コスト改善値が大きな順になるように、ファイルF、D、A、B、C、Eの順番にソートされている。ファイルF、D、Aがコスト改善が見込める「不適」であり、それぞれのコスト改善値が「6.300」、「4.145」、「3.206」となっており、移動コストが「0.002」、「0.002」、「0.142」となっている。
【0066】
アクセスモニタコンポーネント3は、ヒートマップ11に対して、以下のように合計コスト改善値(ΣimpC)と合計移動コスト(ΣmoveC)とを算出する。まず、ファイルFについては、ΣimpC=6.300、ΣmoveC=0.002であるので、合計コスト改善値(ΣimpC)は合計移動コスト(ΣmoveC)は上回るので、ファイルAの移動要否は「要」と判定される。次に、ファイルDについては、ΣimpC=6.300+4.145=10.445、ΣmoveC=0.002+0.002=0.004であるので、合計コスト改善値(ΣimpC)は合計移動コスト(ΣmoveC)を上回るので、ファイルDの移動要否は「要」と判定される。そして、ファイルDについては、ΣimpC=6.300+4.145+3.206=13.651、ΣmoveC=0.002+0.002+0.142=0.146であるので、合計コスト改善値(ΣimpC)は合計移動コスト(ΣmoveC)を上回るので、ファイルDの移動要否は「要」と判定される。このように、第2実施形態では、ファイルA、D、Fのいずれついても、合計コスト改善値(ΣimpC)が合計移動コスト(ΣmoveC)を上回るため、移動対象ファイルの候補となったファイルA、D、Fの全ての移動要否が「要」と判定される。
【0067】
アクセスモニタコンポーネント3は、移動要否が「要」と判定されたファイルF、D、Aを異なるストレージに移動する命令をクラウドストレージサービスインタフェース20に指示する。クラウドストレージサービスインタフェース20は、コスト最適化機能を実行するためのユーザインタフェース機能22により、ファイルF、D、Aを異なるストレージに移動させる。具体的には、ファイルFを高速ストレージ5から低速ストレージ6へ移動させ、ファイルDを高速ストレージ5から低速ストレージ6へ移動させ、ファイルAを低速ストレージ6から高速ストレージ5へ移動させる。アクセスモニタコンポーネント3は、移動元から移動先へファイルの所在が変更されたため、通知機能14により、クラウドストレージサービスインタフェース20のファイルサーバ機能21へファイルの所在が変化した旨を通知する。クラウドストレージサービスインタフェース20は、クラウドストレージサービスのクライアント(利用者)のアクセス性を損なわないよう、透過的なアクセス手段を維持しながらファイルサーバ機能21の内部でファイルの配置先、所在情報を更新する。
【0068】
上述した第1、第2実施形態によれば、将来的なクラウドストレージ4の利用コストを低減することができる。上述した第1、第2実施形態において、100~600MB程度のサイズの6つのファイルに対する1か月のアクセス履歴をもとにコスト改善値を見積もった結果、1か月あたり約¥13のコスト改善が見込まれた。クラウドストレージ4の実運用に則した形で、ファイル数の増加、見積期間の長期化など規模が大きくなるに従って、さらなるコスト改善を見込める可能性は高い。
【0069】
また、上述した第1、第2実施形態によれば、コスト低減を自動的に実行できる。コスト改善値の見積は、ファイル数、ストレージの種類によって計算量が増加し、クラウドストレージ4を実運用する上で、利用者が見積や予測を立てることは非常に困難である。上述した第1、第2実施形態によれば、クラウドストレージ4のコスト改善を自動的に計算することで、利用者の利便性を向上させることができ、運用面での負担も軽減することが可能となる。
【0070】
(変形例)
本願発明では、ファイルサーバ(ストレージ装置)としてクラウドストレージ4を利用する場面を想定しているが、ファイルサーバ以外の、例えば、ブロックストレージ、オブジェクトストレージ、ディスクにおいても、データ保存先として特定のストレージを選択・移動可能、かつ料金体系が異なる場合であっても、同じ手法を適用することができる。
【0071】
(第1変形例)
図14は、本発明の第1変形例の構成を示すブロック図である。図14に示すように、第1変形例では、クライアント7上で利用している仮想マシン40が複数の異なるI/O性能を持つストレージ装置50を有し、仮想マシン40上のオペレーティングシステム41から利用される構成を想定する。第1変形例では、高速なディスク51と低速なディスク52、53との間でデータを移動する手段は、クラウドサービスの提供形態に依存する。そのため、上述した実施形態における「ストレージを変更するための命令」は、ストレージ装置50を利用する仮想マシン40上のオペレーティングシステム41が主体に向けて発せられるか、あるいは高速なディスク51および低速なディスク52、53の物理的実体が存在するストレージ装置50又はストレージ装置50の管理主体に向けて発せられることが考えられる。このように、多様な手段が考えられるため、命令手段の実装方法は特に限定せず、クラウドサービス事業者側で適切な実装方法を選択するようにしてもよい。
【0072】
また、ディスクアクセスの透過性の観点からは、オペレーティングシステム41内、あるいはストレージ装置50のいずれかにおいて、移動後のアクセス透過性を確保する手段を実装する必要があるが、その方法についても特に限定しない。
【0073】
(第2変形例)
図15は、本発明の第2変形例の構成を示すブロック図である。図15に示すように、第2変形例では、クライアント7上で利用している仮想マシン40が、異なる性能を持つ高速ストレージ装置60(ディスク61)、バックアップストレージ装置70(ディスク71、72)上のデータ群を利用する構成を想定する。第2変形例では、上述した第1の変形例と同様に、将来的なコスト改善が見込まれる場合には、高速なストレージ60とバックアップストレージ70との間でデータを移動する構成とする。第1変形例と同様、保存先ストレージを変更する命令手段の実装方法は限定せず、またデータへのアクセス手段の維持もその実装方法は限定しない。
【0074】
上述した第1、第2実施形態ならびに第1、第2変形例によれば、アクセスモニタコンポーネント3により、クラウドストレージ4が備える高速ストレージ5、低速ストレージ6のファイル毎に対するクライアント7からの利用状況をヒートマップ11に記録し、ファイル毎の利用状況に基づいて、ファイルが現在格納されている移動元のストレージにおける利用コストと、移動元のストレージとは異なる移動先のストレージにおける利用コストとを算出し、移動元のストレージの第1利用コストと移動先のストレージの第2利用コストとの差分であるコスト改善値が正の値をとる場合に、移動元のストレージから移動先のストレージへの移動対象の候補となるファイルとして特定するようにしたので、ユーザの利便性を低下させることなく、将来的なクラウドストレージの利用コストを低減することができる。
【0075】
また、上述した第1、第2実施形態ならびに第1、第2変形例によれば、アクセスモニタコンポーネント3により、移動対象の候補として特定したファイルを移動した場合の移動コストを算出し、コスト改善値と移動コストとに基づいて、移動対象の候補として特定したファイルのうち、移動元のストレージから移動先のストレージへの移動対象となるファイルを特定するようにしたので、コスト改善値に従って移動対象の候補となるファイルとして特定したとしても、移動コストが高ければ、最終的に移動対象から外すようにしたので、移動に伴う移動コストを含めて、ユーザの利便性を低下させることなく、将来的なクラウドストレージの利用コストを低減することができる。
【0076】
また、上述した第1、第2実施形態ならびに第1、第2変形例によれば、アクセスモニタコンポーネント3により、コスト改善値が大きい順に、各ファイルのコスト改善値を累計した合計コスト改善値と、各ファイルの移動コストを累計した合計移動コスト値とを順次算出し、移動対象の候補として特定したファイルのうち、合計コスト改善値が合計移動コストを上回る範囲におけるファイルを移動対象とするようにしたので、移動対象の候補となった複数のファイルの全てを移動するのではなく、全体として移動コストが上回る前のファイルまでとすることで、移動に伴う移動コストを含めて、ユーザの利便性を低下させることなく、将来的なクラウドストレージ利用コストを低減することができる。
【0077】
また、上述した第1、第2実施形態ならびに第1、第2変形例によれば、アクセス状況として、ファイル毎の読み込み回数と、書き込み回数と、一覧取得回数と、データ取得回数とを含むようにしたので、ファイルに対する利用状況を正確に把握することができ、より正確に利用コストを算出することができ、ゆえに、ユーザの利便性を低下させることなく、将来的なクラウドストレージ利用コストを低減することができる。
【0078】
また、上述した第1、第2実施形態ならびに第1、第2変形例によれば、第1利用コストを、移動元のストレージにおける、ストレージ容量コストとトランザクションコストとの合計とし、第2利用コストを、移動先のストレージにおける、ストレージ容量コストとトランザクションコストとの合計とし、トランザクションコストは、書き込みトランザクションと、読み込みトランザクションと、一覧表示トランザクションと、データ取得トランザクションとの合計としたので、より正確に利用コストを算出することができ、ゆえに、ユーザの利便性を低下させることなく、将来的なクラウドストレージ利用コストを低減することができる。
【0079】
図16は、第1、第2実施形態ならびに第1、第2変形例によるファイルサーバの最小構成を示すブロック図である。
本実施形態によるストレージ管理装置80は、少なくとも、利用状況記録手段81と、利用コスト算出手段82と、候補ファイル特定手段83とを備えればよい。利用状況記録手段81は、クラウドからストレージ装置90へのファイル毎に対する利用状況を記録する。利用コスト算出手段82は、ファイル毎の利用状況に基づいて、現在格納されている移動元ストレージ91における第1利用コストと、前記移動元ストレージ91とは異なる移動先ストレージ92における第2利用コストとを算出する。候補ファイル特定手段83は、前記第1利用コストと前記第2利用コストとの差分であるコスト改善値に基づいて、前記移動元ストレージ91から前記移動先ストレージ92への移動対象の候補となるファイルを特定する。
【0080】
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0081】
(付記1)
ストレージ装置が備える複数のストレージのファイル毎に対するクライアントからの利用状況を記録するアクセス状況記録手段と、ファイル毎の利用状況に基づいて、ファイルが現在格納されている移動元ストレージにおける第1利用コストと、前記移動元ストレージとは異なる移動先ストレージにおける第2利用コストとを算出する利用コスト算出手段と、前記第1利用コストと前記第2利用コストとの差分であるコスト改善値に基づいて、前記移動元ストレージから前記移動先ストレージへの移動対象の候補となるファイルを特定する候補ファイル特定手段と、を備えることを特徴とするストレージ管理装置。
【0082】
(付記2)
前記移動対象の候補として特定したファイルを移動した場合の移動コストを算出する移動コスト算出手段と、前記コスト改善値と前記移動コストとに基づいて、前記移動対象の候補として特定したファイルのうち、前記移動元ストレージから前記移動先ストレージへの移動対象となるファイルを特定する移動対象ファイル特定手段と、をさらに備えることを特徴とする付記1に記載のストレージ管理装置。
【0083】
(付記3)
前記移動対象ファイル特定手段は、前記コスト改善値が大きい順に、各ファイルのコスト改善値を累計した合計コスト改善値と、各ファイルの移動コストを累計した合計移動コスト値とを順次算出し、前記移動対象の候補として特定したファイルのうち、合計コスト改善値が合計移動コストを上回る範囲におけるファイルを移動対象とする、ことを特徴とする付記2に記載のストレージ管理装置。
【0084】
(付記4)
前記利用状況は、ファイル毎の読み込み回数と、書き込み回数と、一覧取得回数と、データ取得回数とを含む、ことを特徴とする付記1から付記3の何れか一つに記載のストレージ管理装置。
【0085】
(付記5)
前記第1利用コストは、前記移動元ストレージにおける、ストレージ容量コストとトランザクションコストとの合計であり、前記第2利用コストは、前記移動先ストレージにおける、ストレージ容量コストとトランザクションコストとの合計であり、前記トランザクションコストは、書き込みトランザクションと、読み込みトランザクションと、一覧表示トランザクションと、データ取得トランザクションとの合計である、とを特徴とする付記1から付記4の何れか一つに記載のストレージ管理装置。
【0086】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより特典情報の制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0087】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 ストレージ管理装置
2 ファイルアクセス提供コンポーネント
3 アクセスモニタコンポーネント
4 クラウドストレージ
5 高速ストレージ
6 低速ストレージ
7 クライアント
8 Webブラウザ
9 ファイル閲覧機能
10 コスト不適状態検出部
11 ヒートマップ
12 データ移動先決定部
13 データ移動部
14 通知機能
20 クラウドストレージサービスインタフェース
21 ファイルサーバ機能
22 ユーザインタフェース機能
30 前提条件
31 利用状況
32、33 利用コスト
40 仮想マシン
41 オペレーティングシステム
50 ストレージ装置
51、52、53 ディスク
60 高速ストレージ装置
61、71、72 ディスク
70 バックアップストレージ装置
80 ストレージ管理装置
81 利用状況記録手段
82 利用コスト算出手段
83 候補ファイル特定手段
90 ストレージ装置
91 移動元ストレージ
92 移動先ストレージ
A~F、F1~F4 ファイル
Trs-d データ取得トランザクション
Trs-r :読み込みトランザクション
Trs-v :一覧表示トランザクション
Trs-w :書き込みトランザクション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16