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特開2024-131298電動モータ用ターミナルユニット及びブラシレスモータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131298
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電動モータ用ターミナルユニット及びブラシレスモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041488
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】福島 剛典
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA08
5H605BB05
5H605CC06
5H605EC05
5H605EC07
5H605EC08
(57)【要約】
【課題】ターミナルユニットを備えた電動モータにおいて、ターミナルユニットのコイル嵌合部における保持力を向上させ、ターミナルユニットの位置決め精度の向上を図る。
【解決手段】
ターミナルユニット31は、ターミナルホルダ32とターミナル部材33とを有し、ステータコア21の一端側に取り付けられる。ターミナルホルダ32の本体部32aには、ステータコア21と嵌合する嵌挿溝42を備えたコイル嵌合部41が突設されている。コイル嵌合部41の内縁45a、外縁45bにはそれぞれ傾斜面43を有する切欠部44が形成されている。傾斜面43には、嵌挿溝42から周方向に延びるステータコイル25が接触し、ターミナルユニット31がガタなくステータコア21に装着される。切欠部43には段部47が設けられており、段部47とステータコイル25が当接しターミナルユニット31が径方向に抜け止めされる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの一端側に取り付けられ、合成樹脂製のターミナルホルダと、前記ターミナルホルダ内に配設されステータコイルと電気的に接続される金属製のターミナル部材と、を有する電動モータ用のターミナルユニットであって、
前記ターミナルユニットは、前記ターミナルホルダに設けられ前記ステータコイルと嵌合するコイル嵌合部を有し、
前記コイル嵌合部は、前記ステータコイルを挿入可能な嵌挿溝と、該コイル嵌合部の周縁に形成され前記ステータコイルと接触する切欠部と、を有することを特徴とする電動モータ用ターミナルユニット。
【請求項2】
請求項1記載の電動モータ用ターミナルユニットにおいて、
前記ステータコイルは、前記ステータコアの端面から周方向に延伸し、
前記切欠部は、前記ターミナルユニットを前記ステータコアに取り付けたとき、前記コイル嵌合部の下方側から周方向に延びる前記ステータコイルと接触することを特徴とする電動モータ用ターミナルユニット。
【請求項3】
請求項2記載の電動モータ用ターミナルユニットにおいて、
前記切欠部は前記コイル嵌合部の上縁に形成され、周方向に沿って反時計方向に延びる前記ステータコイルと接触する第1切欠部と、周方向に沿って反時計方向に延びる前記ステータコイルと接触する第2切欠部と、からなることを特徴とする電動モータ用ターミナルユニット。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の電動モータ用ターミナルユニットにおいて、
前記切欠部は前記コイル嵌合部の周縁に面取り状に形成され、前記ステータコイルと接触する傾斜面を有することを特徴とする電動モータ用ターミナルユニット。
【請求項5】
請求項4記載の電動モータ用ターミナルユニットにおいて、
前記コイル嵌合部の周縁は、前記切欠部と、該切欠部を有さないエッジ部と、を有し、
前記切欠部と前記エッジ部の境界部には、前記切欠部に配された前記ステータコイルが当接し前記コイル嵌合部の径方向の移動を規制する段部が形成されてなることを特徴とする電動モータ用ターミナルユニット。
【請求項6】
請求項1記載の電動モータ用ターミナルユニットにおいて、
前記ターミナルホルダはさらに、該ターミナルホルダの周方向両端部に設けられ、該両端部近傍に位置する前記ステータコイルに係合し、前記ターミナルユニットの移動を規制する係合部を有することを特徴とする電動モータ用ターミナルユニット。
【請求項7】
請求項1記載の電動モータ用ターミナルユニットにおいて、
前記ステータコアは、径方向内側に向かって突設された複数個のティースと、前記ティース間に形成されたスロットと、を備え、
前記ステータコイルは、インシュレータを介して、前記スロット内に前記ステータコアと絶縁された状態で収容され、
前記インシュレータは、前記ステータコイルの端面から軸方向に突出した突出部を有し、
前記嵌挿溝は、前記突出部に嵌合することを特徴とする電動モータ用ターミナルユニット。
【請求項8】
請求項1記載の電動モータ用ターミナルユニットにおいて、
前記ターミナルユニットは、前記コイル嵌合部を前記ステータコイルと嵌合させることにより、前記ステータコアに対し所定の位置に配置されることを特徴とする電動モータ用ターミナルユニット。
【請求項9】
請求項1記載の電動モータ用ターミナルユニットにおいて、
前記ターミナルホルダは円弧状に形成され、
前記コイル嵌合部は、前記ターミナルホルダの内周側に、径方向内側に向かって突設されてなることを特徴とする電動モータ用ターミナルユニット。
【請求項10】
径方向内側に向かって複数個のティースが突設されたステータコアと、前記ティース間に形成されるスロットに収容されるステータコイルと、を備えるステータと、
前記ステータコアの一端側に取り付けられ、合成樹脂製のターミナルホルダと、前記ターミナルホルダ内に配設され前記ステータコイルと電気的に接続される金属製のターミナル部材と、を有するターミナルユニットと、
前記ステータの径方向内側に回転自在に配置されたロータと、を有するブラシレスモータであって、
前記ターミナルユニットは、前記ターミナルホルダに設けられ前記ステータコイルと嵌合するコイル嵌合部を有し、
前記コイル嵌合部は、前記ステータコイルを挿入可能な嵌挿溝と、該コイル嵌合部の周縁に形成され前記ステータコイルと接触する切欠部と、を有することを特徴とするブラシレスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータのステータユニットに取り付けられる給電用ターミナルユニットに関し、特に、ステータユニットとターミナルユニットの間の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブラシレスモータ(電動モータ)の給電手段として、銅やアルミニウム等の導電金属製のターミナル部材を備えたターミナルユニットが知られている(例えば、特許文献1のモジュール等)。このターミナルユニットは、モータのステータコア端面に取り付けられ、ステータコイルと電気的に接続されて使用される。ターミナルユニット内にはモータ各相用と中性点用の各ターミナル部材が配設され、ターミナル部材には、給電用、各相接続用、中性点用のターミナル(接続用端子)が設けられる。
【0003】
図6は、従来のターミナルユニット51の構成を示す説明図である。ターミナルユニット51は、合成樹脂製のターミナルホルダ52と、ターミナルホルダ52内に配設された導電金属製のターミナル部材53と、を備えている。ターミナルユニット51は3相モータ用となっており、ターミナル部材53は、各相用のターミナル部材53U,53V,53Wと、中性点用のターミナル部材53Nの計4個が設けられている。
【0004】
ターミナル部材53U,53V,53Wには、各相コイルと接続されるコイル側ターミナル54(54U,54V,54W)と、電源と接続される電源側ターミナル55(55U,55V,55W)が設けられている。コイル側ターミナル54と電源側ターミナル55の間は帯状のコネクトプレート56によって接続され、ターミナル部材53として一体化されている。また、ターミナル部材53Nには、中性点接続用の中性点ターミナル57が3個設けられている。各中性点ターミナル57の間も帯状のコネクトプレート58によって接続され、ターミナル部材53として一体化されている。各ターミナル部材53は、ターミナルホルダ52に設けられたターミナル取付溝59内に嵌合装着される。
【0005】
ターミナルユニット51は、各ターミナル54,55,57が所定位置に来るように、位置決めされた状態でステータコアに装着される。ターミナルユニット51の内周側には、嵌挿溝61を備えたコイル嵌合部62が径方向内側に向かって突設されており、図7に示すように、ステータコイル63(以下、コイル63と略記する)を嵌挿溝61に嵌合させることにより、ターミナルユニット51は、位置決めされた状態でステータコア64に取り付けられる。この場合、ステータコア64側にはコイル63が径方向に沿って並んで配置されており、嵌挿溝61にコイル63の列を差し込むことにより、ターミナルユニット51はステータコア64に位置決めされた形で装着される。
【0006】
このようにしてターミナルユニット51をステータコア64に取り付けた後、各ターミナル54,55,57の電気的接続が行われる。すなわち、ターミナルユニット装着後、コイル側ターミナル54と中性点ターミナル57はそれぞれ、各相コイルと各中性点に接続される、電源側ターミナル55は図示しないモータ電源と接続される。そして、モータを使用する際は、ターミナル部材53を介してコイル63に給電を行い、ロータを回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-25745号公報
【特許文献2】特開2013-102596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のように、ターミナルユニット51は、嵌挿溝61をコイル63の列に差し込む形でステータコア64に取り付けられるため、嵌挿溝61とコイル63との間の嵌合力は大きくない。このため、コイル嵌合部62における保持力が不足し、ターミナルユニット51をしっかりと固定できないおそれがあり、その結果、ターミナルユニット51の位置決め精度が低下してしまう、という問題があった。この場合、嵌挿溝61をコイル63の外側に強く圧入する構成とすれば両者間の嵌合力が増大し保持力も増すが、反面、強圧入によりコイル等を損傷してしまうおそれがあり、好ましくない。
【0009】
本発明の目的は、ターミナルユニットを備えた電動モータにおいて、ターミナルユニットのコイル嵌合部における保持力を向上させ、ターミナルユニットの位置決め精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電動モータ用ターミナルユニットは、ステータコアの一端側に取り付けられ、合成樹脂製のターミナルホルダと、前記ターミナルホルダ内に配設されステータコイルと電気的に接続される金属製のターミナル部材と、を有する電動モータ用のターミナルユニットであって、前記ターミナルユニットは、前記ターミナルホルダに設けられ前記ステータコイルと嵌合するコイル嵌合部を有し、前記コイル嵌合部は、前記ステータコイルを挿入可能な嵌挿溝と、該コイル嵌合部の周縁に形成され前記ステータコイルと接触する切欠部と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、ターミナルユニットに嵌挿溝を備えたコイル嵌合部を設けると共に、コイル嵌合部の周縁に切欠部を設けたので、ターミナルユニットをステータコアに取り付けるとステータコイルがこの切欠部に接触する。これにより、嵌挿溝をステータコイルに差し込むと、コイル嵌合部がコイルによって押さえ込まれる形となり、その結果、ターミナルユニットがガタつきなく所定の位置に設置され、ターミナルユニットの位置決め精度の向上が図られる。
【0012】
前記電動モータ用ターミナルユニットにおいて、前記ステータコイルを前記ステータコアの端面から周方向に延伸させて設け、前記ターミナルユニットを前記ステータコアに取り付けたとき、前記切欠部が前記コイル嵌合部の下方側から周方向に延びる前記ステータコイルと接触するようにしても良い。また、前記切欠部を前記コイル嵌合部の上縁に形成し、周方向に沿って反時計方向に延びる前記ステータコイルと接触する第1切欠部と、周方向に沿って反時計方向に延びる前記ステータコイルと接触する第2切欠部と、から構成するようにしても良い。
【0013】
前記電動モータ用ターミナルユニットにおいて、前記切欠部を前記コイル嵌合部の周縁に面取り状に形成し、該切欠部内に前記ステータコイルと接触する傾斜面を設けても良い。この場合、前記コイル嵌合部の周縁に、前記切欠部と、該切欠部を有さないエッジ部と、を設け、前記切欠部と前記エッジ部の境界部に、前記切欠部に配された前記ステータコイルが当接し前記コイル嵌合部の径方向の移動を規制する段部を形成しても良い。これにより、切欠部に収容されたステータコイルの径方向の移動が規制され、ターミナルユニットがガタなく径方向に抜け止めされた状態でステータコアに装着される。
【0014】
前記ターミナルホルダの周方向両端部に、該両端部近傍に位置するステータコイルに係合し、前記ターミナルユニットの移動を規制する係合部を設けても良い。これにより、ターミナルユニット組み付け後におけるステータコアに対するターミナルユニット保持力が向上する。
【0015】
前記ステータコアに、径方向内側に向かって突設された複数個のティースと、前記ティース間に形成されたスロットと、を設け、前記ステータコイルを、インシュレータを介して、前記スロット内に前記ステータコアと絶縁された状態で収容し、前記インシュレータに、前記ステータコイルの端面から軸方向に突出した突出部を設け、前記嵌挿溝を前記突出部に嵌合させるようにしても良い。これにより、ターミナルユニットをステータコアに取り付ける際、嵌挿溝とステータコイルが直接接触せず、ターミナルユニット取付時におけるコイルの損傷が抑えられる。
【0016】
前記ターミナルユニットは、前記コイル嵌合部を前記ステータコイルと嵌合させることにより、前記ステータコアに対し所定の位置に配置される構成であっても良い。また、前記ターミナルユニットの前記ターミナルホルダを円弧状に形成し、前記コイル嵌合部を、前記ターミナルホルダの内周側に径方向内側に向かって突設しても良い。
【0017】
一方、本発明によるブラシレスモータは、径方向内側に向かって複数個のティースが突設されたステータコアと、前記ティース間に形成されるスロットに収容されるステータコイルと、を備えるステータと、前記ステータコアの一端側に取り付けられ、合成樹脂製のターミナルホルダと、前記ターミナルホルダ内に配設されステータコイルと電気的に接続される金属製のターミナル部材と、を有するターミナルユニットと、前記ステータの径方向内側に回転自在に配置されたロータと、を有するブラシレスモータであって、前記ターミナルユニットは、前記ターミナルホルダに設けられ、前記ステータコイルと嵌合するコイル嵌合部を有し、前記コイル嵌合部は、前記ステータコイルを挿入可能な嵌挿溝と、該コイル嵌合部の周縁に形成され前記ステータコイルと接触する切欠部と、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明のブラシレスモータは、ステータコアとステータコイルとを備えるステータと、ステータコアの一端側に取り付けられステータコイルと接続されるターミナル部材を有するターミナルユニットと、ステータの径方向内側に回転自在に配置されたロータと、を有するブラシレスモータにて、ターミナルユニットに嵌挿溝を備えたコイル嵌合部を設けると共に、コイル嵌合部の周縁に切欠部を設けたので、ターミナルユニットをステータコアに取り付けるとステータコイルがこの切欠部に接触する。これにより、嵌挿溝をステータコイルに差し込むと、コイル嵌合部がコイルによって押さえ込まれる形となり、その結果、ターミナルユニットがガタつきなく所定の位置に設置され、ターミナルユニットの位置決め精度の向上が図られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電動モータ用ターミナルユニットによれば、ターミナルユニットに嵌挿溝を備えたコイル嵌合部を設けると共に、このコイル嵌合部の周縁に切欠部を設けたので、ターミナルユニットをステータコアに取り付けるとステータコイルがこの切欠部に接触する。これにより、ターミナルユニットがガタつきなく所定の位置に設置され、ターミナルユニットの位置決め精度の向上を図ることが可能となる。
【0020】
また、本発明のブラシレスモータによれば、ターミナルユニットを有するブラシレスモータにて、ターミナルユニットに嵌挿溝を備えたコイル嵌合部を設けると共に、コイル嵌合部の周縁に切欠部を設けたので、ターミナルユニットをステータコアに取り付けるとステータコイルがこの切欠部に接触する。これにより、ターミナルユニットがガタつきなく所定の位置に設置され、ターミナルユニットの位置決め精度の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態である電動モータ用ターミナルユニットを用いたブラシレスモータの構成を示す説明図である。
図2】ステータコアにターミナルユニットを取り付けた状態を示す説明図である。
図3図1のブラシレスモータにて使用されているターミナルユニットの構成を示す説明図である。
図4図3のターミナルユニットにおけるコイル嵌合部の構成を示す説明図である。
図5】ステータコア端面におけるインシュレータ突出部の構成を示す説明図である。
図6】従来の電動モータ用ターミナルユニットの構成を示す説明図である。
図7図6のターミナルユニットとステータコアの接続部の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態である電動モータ用ターミナルユニットを用いたブラシレスモータ1(電動モータ、以下、モータ1と略記する)の構成を示す説明図である。図1に示すように、モータ1は、外側にステータ(固定子)2、内側にロータ(回転子)3を配し、それらを金属製のモータハウジング4内に収容したインナーロータ型の構成となっている。ここでは、モータ1として、ロータ3側に発生するリラクタンストルクによって作動するシンクロナスリラクタンスモータを採用しており、例えば電動パワーステアリング装置の駆動源として使用される。
【0023】
モータハウジング4は有底円筒状に形成されており、その図1において右端側の開口部には、ベアリングホルダ5が取り付けられている。ベアリングホルダ5は合成樹脂又はアルミダイキャストにて形成されており、その中央にはベアリング6aが固定されている。一方、モータハウジング4の左端側中央部にはベアリング固定部7が形成されており、ベアリング6bが固定されている。ベアリング6a,6bには、ロータシャフト(モータ回転軸)8が回転自在に軸支されている。ロータシャフト8にはロータ3が固定されており、ロータ3はステータ2の内側に回転自在に挿入配置される。
【0024】
ロータ3は、ロータシャフト8の外周に圧入固定されたロータコア11を備えている。ロータコア11は、電磁鋼板等にて形成された円形の薄板材を複数枚積層させた構成となっている。ロータコア11の内部には、軸方向に貫通する複数のスリット12が形成されている。前述のように、モータ1はシンクロナスリラクタンスモータとなっており、ロータにはマグネットは使用されておらず、それに代えて、回転方向に沿って磁気抵抗が変化するよう、フラックスバリアとして空隙のスリット12が形成されている。ロータシャフト8の一端側には、ロータ回転位置を検出するためのセンサマグネット13が取り付けられる。ベアリングホルダ5には、このセンサマグネット13に近接して磁気検出素子14が配設されている。
【0025】
ステータ2は、略円筒状のステータコア21を有している。ステータコア21の外周面は、モータハウジング4の内側に焼嵌め等によって固定されている。図2に示すように、ステータコア21の一端側には、円弧状に形成されたターミナルユニット31が取り付けられている。ステータコア21には、径方向内側に向かって複数のティース22が周方向に等間隔で突設されている。各ティース22の間はスロット23となっており、スロット23内には、絶縁材(例えば紙など)にて形成されたインシュレータ24(図5参照)が挿入されている。スロット23にはさらに、インシュレータ24を介して、ステータコイル25(以下、コイル25と略記する)がステータコア21と絶縁された状態で収容されている。モータ1では、コイル25として、ヘアピン状の銅線が使用されており、それをスロット23に挿入し、開放端側を適宜溶接する形でコイル25が形成される。
【0026】
図3は、本発明によるターミナルユニット31の構成を示す説明図である。図3のターミナルユニット31は、前述の図6のものと基本構成は共通しており、合成樹脂製のターミナルホルダ32と、ターミナルホルダ32内にインサートモールドにて配設された導電金属製のターミナル部材33と、を備えている。モータ1は3相駆動となっており、ターミナル部材33は、各相用のターミナル部材33U,33V,33Wと、中性点用のターミナル部材33Nの計4個が設けられている。
【0027】
ターミナル部材33U,33V,33Wには、各相コイル25と接続されるコイル側ターミナル34(34U,34V,34W)と、図示しない電源と接続される電源側ターミナル35(35U,35V,35W)が設けられている。コイル側ターミナル34と電源側ターミナル35の間は帯状のコネクトプレート36によって接続され、ターミナル部材33として一体化されている。また、ターミナル部材33Nには、中性点接続用の中性点ターミナル37が3個設けられている。各中性点ターミナル37の間も帯状のコネクトプレート38によって接続され、ターミナル部材33として一体化されている。
【0028】
このようなモータ1では、各相コイル25には3相の正弦波電流が供給され、ステータ2側には正弦波状の回転磁界が形成される。一方、ロータ3には、スリット12による磁気抵抗差によって、磁束が最も通りやすい方向(d軸方向)と、磁束が最も通りにくい方向(q軸方向)が生じ、d軸インダクタンスLdがq軸インダクタンスLqよりも大きくなる。そして、この磁気的突極性から、d軸に対し所定角度方向のティース22に起磁力が生じ、ロータ3が所定の方向に回転する。すなわち、磁気抵抗差によるリラクタンストルクが発生し、モータ1が作動する。
【0029】
一方、ターミナルユニット31の内周側には、図6のターミナルユニット51と同様に、蟹爪状のコイル嵌合部41が設けられている。図3に示すように、ターミナルホルダ32の本体部32aには、径方向内側に向かってコイル嵌合部41が突設されている。コイル嵌合部41の周方向中央部には、内周側先端部が開口した嵌挿溝42が設けられている。ターミナルユニット31もまた、嵌挿溝42内にコイル25を挿入・嵌合させる形でステータコア21に取り付けられるが、従来のターミナルユニット51とはコイル嵌合部41の周縁の構成を異にしている。
【0030】
すなわち、ターミナルユニット31では、コイル嵌合部41の周縁には、傾斜面43を有する切欠部44(第1切欠部44a,第2切欠部44b)が面取り状に設けられている。この場合、モータ1のコイル25は、図2に示すように、ステータコア21の端面21aから周方向に延びている。このため、ターミナルユニット31をステータコア21に取り付け、嵌挿溝42内にコイル25を挿入・嵌合させると、傾斜面43とコイル25が接触し、コイル嵌合部41における保持力が向上し、ターミナルユニット31が安定的にステータコア21に装着される。
【0031】
図4に示すように、第1切欠部44aは、径方向外側(ターミナルホルダ32の本体部32a側)に、第2切欠部44bは、径方向内側(嵌挿溝42の開口42a側)に設けられる。コイル嵌合部41の内縁(嵌挿溝42の対向する上縁)45aには、第1切欠部44aと第2切欠部44bが径方向に位置をずらして形成されている。また、コイル嵌合部41の外縁(コイル嵌合部41の周方向外側の上縁)45bには、一方(図4において左側)には第1切欠部44aが、他方側(同右側)には第2切欠部44bがそれぞれ径方向に位置をずらして形成されている。第1切欠部44a内には傾斜面43aが、第2切欠部44bには傾斜面43bがそれぞれ形成されている。
【0032】
ここで、コイル25は径方向に沿って4層構造になっており、径方向内側の2層25pはCW(時計方向)方向、径方向外側の2層25qはCCW(反時計方向)方向にそれぞれ周方向に沿って曲げられている。そこで、ターミナルユニット31をステータコア21に取り付けるべく、開口42aから嵌挿溝42内にコイル25を差し込むと、コイル嵌合部41の下方側(ステータコア21側)から嵌挿溝42を通って時計方向に延びる内側2層のコイル25pが傾斜面43bに接触する。また、コイル嵌合部41の下方側から嵌挿溝42を通って反時計方向に延びる外側2層のコイル25qは傾斜面43aに接触する。なお、図4では、内縁45a側のみコイル25を破線にて示したが、外縁45b側も同様にコイル25が配置される。
【0033】
コイル嵌合部41では、各傾斜面43a,43bは、端縁側に向かって下がる形で設けられており、したがって、下方側から嵌挿溝42を通ったコイル25p,25qは、傾斜面43a,43bに沿って接触しつつ周方向に延伸する状態となる。つまり、コイル25p,25qは、傾斜面43a,43bに覆い被さるように配される。このため、コイル嵌合部41は、各コイル25q,25qによって上から押さえ込まれるような状態となり、その結果、ターミナルユニット31は、ガタつきなく所定の位置に精度良く設置される。
【0034】
また、コイル嵌合部41の周縁は、切欠部44のない部分はエッジ部46となっており、切欠部44とエッジ部46との境界部には段部47が形成されている。つまり、第1切欠部44aの径方向内側、第2切欠部44bの径方向外側にそれぞれ段部47が形成されている。前述のように、第1切欠部44aの傾斜面43aには外側2層のコイル25qが配されるが、コイル25qのうち内側のコイル25rは第1切欠部44aの段部47に当接した状態となる。これにより、コイル嵌合部41の径方向外側への移動がコイル25qによって規制され、ターミナルユニット31は、径方向外側に抜け止めされた状態でステータコア21に装着される。一方、第2切欠部44bの段部47にも、コイル25pのうち外側のコイル25sが当接し、これにより、コイル嵌合部41の径方向へのガタが抑えられる。
【0035】
さらに、ステータ2では、図5に示すように、インシュレータ24がステータコア21の端面21aから軸方向に突出している。コイル嵌合部41は、このインシュレータ24の突出部24aの位置に径方向外側から挿入され、嵌挿溝42は、突出部24aの外周と摺接しつつ嵌合し、コイル25と嵌合する。すなわち、モータ1では、ターミナルユニット31をステータコア21に取り付ける際、嵌挿溝42はコイル25とは直接接触しないようになっており、これにより、ターミナルユニット取付時におけるコイルの損傷を防止している。
【0036】
加えて、ターミナルユニット31の周方向両端部には、係合爪(係合部)48が径方向内側に向かって突設されている。この係合爪48は、ターミナルユニット31をステータコア21に取り付ける際、ターミナルユニット31の周方向両端部近傍に位置するコイル25n(図2参照)に係合し、ターミナルユニット31の移動を規制しステータコア21に保持する抜け止めとして作用する。この場合、係合爪48はコイル外側からスナップフィットし、ユニット端部近傍のコイル25nを乗り越えるようにしてコイルに引っ掛かる。これにより、係合爪48はコイル25nに対して相対的に動かない状態となり、ステータコア21に対するターミナルユニット31の保持力が向上する。
【0037】
このように、本発明によるターミナルユニット31は、コイル嵌合部41の上縁に切欠部44を設けたことにより、ターミナルユニット31をステータコア21に取り付ける際、コイル25が切欠部44内に形成されたテーパ状の傾斜面43に接触する。このため、嵌挿溝42をコイル25に差し込むと、コイル嵌合部41がコイル25によって押さえ込まれる形となる。その結果、ターミナルユニット31がガタつきなく所定の位置に設置され、ターミナルユニット31の位置決め精度の向上が図られる。
【0038】
また、切欠部44に段部47を形成したことにより、嵌挿溝42内に収容されたコイル25が段部47に当接し、コイル嵌合部41の径方向への動きがコイル25によって抑えられ、ターミナルユニット31の径方向のガタを抑制できる。特に、第1切欠部44aの段部47とコイル25が当接することにより、コイル嵌合部41の径方向外側への動きが抑えられ、ターミナルユニット31の径方向外側への抜け止めが可能となる。したがって、ターミナルユニット31をガタなく抜け止めした状態でステータコア21に装着でき、ステータコア21に対するターミナルユニット31の保持力の向上が図られる。
【0039】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態では、切欠部44内に傾斜面43を形成し、そこにコイル25を当接させる構成を示したが、切欠部44内の形状は平面状の傾斜面には限定されずR状の曲面とすることもできる。すなわち、切欠部の形状は、周方向に延びるコイル25と接触しつつ、コイル25によってコイル嵌合部41の上面を上方から覆うようにコイル25を案内する構造であれば良い。
【0040】
また、前述の実施形態では、モータ1としてシンクロナスリラクタンスモータを採用しているが、本発明は、ロータにマグネットを配した構成のブラシレスモータにも適用可能である。さらに、コイル25として、ヘアピン状の部材に代えて、ティースに巻線を巻装する構成を採用することも可能である。また、コイル25が径方向に沿って4層構造である構成を示したが、コイル25は4層に限定されない。加えて、前述の実施形態では、ターミナルユニット31として、ターミナルホルダ32にターミナル部材33をインサートモールドしたものを示したが、本発明は、図6のように、ターミナルホルダに設けた取付溝にターミナル部材を挿入する構成のターミナルユニットにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、電動パワーステアリング装置用のモータ以外にも、オイルポンプや電動のブレーキシステム、ハイブリッド車や電気自動車などにも適用可能である。また、本発明のモータは、自動車関連のみならず、家電製品や産業機械など、他の電気機械・機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 ブラシレスモータ
2 ステータ
3 ロータ
4 モータハウジング
5 ベアリングホルダ
6a,6b ベアリング
7 ベアリング固定部
8 ロータシャフト
11 ロータコア
12 スリット
13 センサマグネット
14 磁気検出素子
21 ステータコア
21a 端面
22 ティース
23 スロット
24 インシュレータ
24a 突出部
25 ステータコイル
25p 内側2層のステータコイル
25q 外側2層のステータコイル
25r 内側2層のステータコイルのうちの内側コイル
25s 外側2層のステータコイルのうちの外側コイル
25n ターミナルユニット両端部近傍に位置するコイル
31 ターミナルユニット
32 ターミナルホルダ
32a 本体部
33 ターミナル部材
33U,33V,33W,33N ターミナル部材
34 コイル側ターミナル
34U,34V,34W コイル側ターミナル
35 電源側ターミナル
35U,35V,35W 電源側ターミナル
36 コネクトプレート
37 中性点ターミナル
38 コネクトプレート
41 コイル嵌合部
42 嵌挿溝
42a 開口
43 傾斜面
43a 傾斜面
43b 傾斜面
44 切欠部
44a 第1切欠部
44b 第2切欠部
45a 内縁
45b 外縁
46 エッジ部
47 段部
48 係合爪
51 ターミナルユニット
52 ターミナルホルダ
53 ターミナル部材
53U,53V,53W,53N ターミナル部材
54 コイル側ターミナル
54U,54V,54W コイル側ターミナル
55 電源側ターミナル
55U,55V,55W 電源側ターミナル
56 コネクトプレート
57 中性点ターミナル
58 コネクトプレート
59 ターミナル取付溝
61 嵌挿溝
62 コイル嵌合部
63 コイル
64 ステータコア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7