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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131301
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】排水トラップ
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/28 20060101AFI20240920BHJP
   E03C 1/262 20060101ALI20240920BHJP
   E03C 1/264 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E03C1/28 B
E03C1/28 A
E03C1/262 A
E03C1/264
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041493
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】丸山 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】岩端 智大
(72)【発明者】
【氏名】北浦 秀和
(72)【発明者】
【氏名】松尾 理沙
(72)【発明者】
【氏名】山口 輝八
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA01
2D061DD07
2D061DD08
2D061DE03
2D061DE13
(57)【要約】
【課題】筒状部材を取り外し操作するための操作部が、筒状部材の入口部に設けられていない場合でも、筒状部材を封水貯留部材に着脱することができる排水トラップを提供する。
【解決手段】本発明は、排水を排水管に排出すると共に、排水管を封水する排水トラップ(1)であって、排水管と連通し、所定水位まで封水を溜めるように構成された封水貯留部材(2)と、封水の中に下端部が水没するように、封水貯留部材の内側に着脱可能に固定される筒状部材(4)と、この筒状部材を封水貯留部材に固定すると共に、筒状部材に引き抜く方向の力を加えることにより、筒状部材の固定を解除可能な固定機構(18)と、使用者が、筒状部材に引き抜く方向の力を加えるための固定解除操作部(4c)と、を有し、固定解除操作部は、筒状部材の、封水に水没する位置に設けられていることを特徴としている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水を排水管に排出すると共に、排水管を封水する排水トラップであって、
排水管と連通し、所定水位まで封水を溜めるように構成された封水貯留部材と、
上記封水の中に下端部が水没するように、上記封水貯留部材の内側に着脱可能に固定される筒状部材と、
この筒状部材を上記封水貯留部材に固定すると共に、上記筒状部材に引き抜く方向の力を加えることにより、上記筒状部材の固定を解除可能な固定機構と、
使用者が、上記筒状部材に引き抜く方向の力を加えるための固定解除操作部と、
を有し、
上記固定解除操作部は、上記筒状部材の、上記封水に水没する位置に設けられていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項2】
排水を排水管に排出すると共に、排水管を封水する排水トラップであって、
排水管と連通し、所定水位まで封水を溜めるように構成された封水貯留部材と、
上記封水の中に下端部が水没するように、上記封水貯留部材の内側に着脱可能に固定される筒状部材と、
この筒状部材を上記封水貯留部材に固定すると共に、上記筒状部材に回転力を加えることにより、上記筒状部材の固定を解除可能な固定機構と、
使用者が、上記筒状部材に回転力を加えるための固定解除操作部と、
を有し、
上記固定解除操作部は、上記筒状部材の、上記封水に水没する位置に設けられていることを特徴とする排水トラップ。
【請求項3】
上記固定解除操作部は、上記筒状部材の外周面に設けられた指掛け突起である請求項2記載の排水トラップ。
【請求項4】
上記固定解除操作部は、上記筒状部材の下端の一部に設けられた切欠である請求項2記載の排水トラップ。
【請求項5】
上記切欠の上端は、上記封水貯留部材内の封水水深の最低レベルを規定する請求項4記載の排水トラップ。
【請求項6】
上記固定機構は、上記筒状部材に引き抜く方向の力を加えることによる上記筒状部材の一部の弾性変形により移動される係合突起により構成されている請求項1記載の排水トラップ。
【請求項7】
上記固定機構は、上記筒状部材に引き抜く方向の力を加えることにより曲げ変形されるアーム部と、このアーム部に設けられた上記係合突起と、を有する請求項6記載の排水トラップ。
【請求項8】
上記封水貯留部材は上記筒状部材を内側に受け入れる受入筒部を備え、上記係合突起は上記筒状部材が上記受入筒部内に受け入れられたとき、上記受入筒部と係合し、上記アーム部は、上記筒状部材の上記受入筒部内への挿入を案内する請求項7記載の排水トラップ。
【請求項9】
上記固定解除操作部は、上記筒状部材の下端と、上記封水貯留部材の底面との間に形成された、手指を挿入可能な隙間により構成されている請求項6乃至8の何れか1項に記載の排水トラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水トラップに関し、特に、排水を排水管に排出すると共に、排水管を封水する排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5979585号公報(特許文献1)には、浴室の排水部構造が記載されている。この浴室の排水部構造は、内部に封水が溜められる排水トラップ本体と、この排水トラップ本体の中に挿入される封水筒を備えている。封水筒の外周面には、円周方向に延びる複数の固定用リブが設けられている。一方、排水トラップ本体側には、固定用リブと係合する封水筒当てリブが設けられており、封水筒を排水トラップ本体に対して回転させることにより、固定用リブと封水筒当てリブが係合し、封水筒を排水トラップ本体に固定することができる。
【0003】
また、封水筒を排水トラップ本体から取り外す際には、封水筒を逆方向に回転させることにより、固定用リブと封水筒当てリブの係合を解除して、封水筒を取り外すことができる。このため、封水筒を取り外す際、使用者が封水筒に回転力を与えることができるように、封水筒には、使用者が指を掛けるための操作部が設けられている。特許文献1記載の排水部構造においては、操作部として、封水筒の上部に設けられたすり鉢状に広がる傾斜排水面に、放射方向に延びる突起が設けられている。使用者は、清掃等のために、封水筒を取り外す際、放射方向に延びる突起に指をかけ、封水筒に回転力を加える。これにより、固定用リブと封水筒当てリブの係合が解除され、その後、突起を把持して封水筒を上方に引き上げることにより、排水トラップ本体から封水筒を取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5979585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の排水部構造のように、封水筒を取り外す際に使用者が指を掛けるための突起物を、封水筒の入口部分に設けると、その部分に汚れが付着しやすく、清浄な状態に維持することが難しいという問題がある。さらに、突起物の近傍に汚れが付着すると清掃がしにくいため、封水筒を取り外すための突起物を設けることにより清掃性が低下するという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、筒状部材(封水筒)を取り外し操作するための操作部が、筒状部材の入口部に設けられていない場合でも、筒状部材を封水貯留部材(排水トラップ本体)に着脱することができる排水トラップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、排水を排水管に排出すると共に、排水管を封水する排水トラップであって、排水管と連通し、所定水位まで封水を溜めるように構成された封水貯留部材と、封水の中に下端部が水没するように、封水貯留部材の内側に着脱可能に固定される筒状部材と、この筒状部材を封水貯留部材に固定すると共に、筒状部材に引き抜く方向の力を加えることにより、筒状部材の固定を解除可能な固定機構と、使用者が、筒状部材に引き抜く方向の力を加えるための固定解除操作部と、を有し、固定解除操作部は、筒状部材の、封水に水没する位置に設けられていることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、筒状部材に引き抜く方向の力を加えるための固定解除操作部が封水に水没する位置に設けられているので、筒状部材の入口部に操作部が設けられていない場合でも、使用者は筒状部材を容易に着脱することができる。また、固定解除操作部が封水に水没する位置に設けられているので、固定解除操作部に汚れが付着したとしても目立つことがなく、排水トラップの美観を向上させることができる。また、固定解除操作部が水没する位置に設けているため、固定解除操作部に汚れが付着した場合であっても、汚れが乾燥し固着することを抑制できるため、固定解除操作部に対する清掃が容易となる。
【0009】
また、本発明は、排水を排水管に排出すると共に、排水管を封水する排水トラップであって、排水管と連通し、所定水位まで封水を溜めるように構成された封水貯留部材と、封水の中に下端部が水没するように、封水貯留部材の内側に着脱可能に固定される筒状部材と、この筒状部材を封水貯留部材に固定すると共に、筒状部材に回転力を加えることにより、筒状部材の固定を解除可能な固定機構と、使用者が、筒状部材に回転力を加えるための固定解除操作部と、を有し、固定解除操作部は、筒状部材の、封水に水没する位置に設けられていることを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明によれば、筒状部材に回転力を加えるための固定解除操作部が封水に水没する位置に設けられているので、筒状部材の入口部に操作部が設けられていない場合でも、使用者は筒状部材を容易に着脱することができる。また、固定解除操作部が封水に水没する位置に設けられているので、固定解除操作部に汚れが付着したとしても目立つことがなく、排水トラップの美観を向上させることができる。また、固定解除操作部が水没する位置に設けているため、固定解除操作部に汚れが付着した場合であっても、汚れが乾燥し固着することを抑制できるため、固定解除操作部に対する清掃が容易となる。
【0011】
本発明において、好ましくは、固定解除操作部は、筒状部材の外周面に設けられた指掛け突起である。
【0012】
このように構成された本発明によれば、固定解除操作部が筒状部材の外周面に設けられているので、固定解除操作部に汚れが付着したとしても、汚れが使用者の目につくことはなく、排水トラップの美観を向上させることができる。また、固定解除操作部が指掛け突起で構成されているため、使用者は筒状部材に十分な回転力を与えることができ、容易に筒状部材の固定を解除することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、固定解除操作部は、筒状部材の下端の一部に設けられた切欠である。
【0014】
このように構成された本発明によれば、固定解除操作部が筒状部材の下端の一部に設けられた切欠により構成されているので、簡単な構造で固定解除操作部を形成することができると共に、汚れの付着しにくい固定解除操作部を構成することができ、さらに清掃頻度を低減させることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、切欠の上端は、封水貯留部材内の封水水深の最低レベルを規定する。
【0016】
このように構成された本発明によれば、切欠により封水貯留部材内の封水水深の最低レベルが規定されるので、排水トラップに封水水深を規定するためのディップを別途設ける必要がない。このため、筒状部材を取り外した際、排水管に向かう流路の開口高さが十分に大きくなりメンテナンス性を向上させることができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、固定機構は、筒状部材に引き抜く方向の力を加えることによる筒状部材の一部の弾性変形により移動される係合突起により構成されている。
【0018】
このように構成された本発明によれば、固定機構が筒状部材に引き抜く方向の力を加えることによる筒状部材の一部の弾性変形により移動される係合突起により構成されているので、比較的簡単な構造で封水筒を排水トラップにしっかりと固定させることが可能な固定機構を構成することができる。また、使用者は、筒状部材に引き抜く方向の力を加えることにより、筒状部材を取り外すことができるので、使用者は力を加えやすく、容易に筒状部材を取り外すことができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、固定機構は、筒状部材に引き抜く方向の力を加えることにより曲げ変形されるアーム部と、このアーム部に設けられた係合突起と、を有する。
【0020】
このように構成された本発明によれば、係合突起が、曲げ変形されるアーム部に設けられているので、アーム部の弾性変形により、係合突起を大きく移動させることができ、固定機構に過大な応力を与えることなく、スナップ止め機構を構成することができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、封水貯留部材は筒状部材を内側に受け入れる受入筒部を備え、係合突起は筒状部材が受入筒部内に受け入れられたとき、受入筒部と係合し、アーム部は、筒状部材の受入筒部内への挿入を案内する。
【0022】
このように構成された本発明によれば、アーム部が筒状部材の受入筒部内への挿入を案内するので、筒状部材を受入筒部に挿入する際に、筒状部材が水平方向にがたつくのを抑制することができ、係合突起の破損を防止することができる。
【0023】
本発明において、好ましくは、固定解除操作部は、筒状部材の下端と、封水貯留部材の底面との間に形成された手指を挿入可能な隙間により構成されている。
【0024】
このように構成された本発明によれば、固定解除操作部が筒状部材の下端により構成されているので、固定解除操作部に汚れが付着したとしても、汚れが使用者の目につくことはなく、排水トラップの美観を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の排水トラップによれば、筒状部材を取り外し操作するための操作部が、筒状部材の入口部に設けられていない場合でも、筒状部材を封水貯留部材に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態による排水トラップの全断面図である。
図2】本発明の第1実施形態による排水トラップが設けられた排水口を示す斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態による排水トラップの一部を拡大して示す断面図である。
図4】本発明の第1実施形態による排水トラップに備えられている固定機構を拡大して示す断面図である。
図5】本発明の第1実施形態の変形例による排水トラップの一部を拡大して示す断面図である。
図6】本発明の第2実施形態による排水トラップの一部の内部構造を示す斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態の変形例による排水トラップの一部の内部構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による排水トラップを説明する。
まず、図1乃至図4を参照して、本発明の第1実施形態による排水トラップを説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による排水トラップの全断面図である。図2は、本発明の第1実施形態による排水トラップが設けられた排水口を示す斜視図である。図3は、本発明の第1実施形態による排水トラップの一部を拡大して示す断面図である。図4は、本発明の第1実施形態による排水トラップに備えられている固定機構を拡大して示す断面図である。
【0028】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による排水トラップ1は、浴室の洗い場の床面Fに設けられた排水トラップであり、床面Fに流れた排水を排水管Dに排出すると共に、排水管Dを封水するように構成されている。この排水トラップ1は、封水貯留部材2と、この封水貯留部材2の内側に着脱可能に固定される筒状部材4と、を有する。
【0029】
さらに、封水貯留部材2は、下側本体部材6と、この下側本体部材6の上側に取り付けられた上側本体部材8と、床面Fに取り付けられ、床面Fと上側本体部材8を接続する開口部材10と、を有する。さらに、開口部材10は、円環状の締付フランジ部材12により、上側本体部材8に固定されている。
【0030】
下側本体部材6は、封水貯留部材2の下部を構成する部材であり、封水が溜まる封水凹部6aと、封水貯留部材2の中に溜められる封水の水位を規定するためのトラップ部6bが設けられている。封水凹部6aは、排水トラップ1に流入した排水が溜まるように構成された凹部であり、その底面はトラップ部6bに向かって高くなるように直線的に傾斜している。このため、封水凹部6a内の水位がトラップ部6bの高さを超えると、封水凹部6a内の排水は排水管Dに流出する。従って、封水貯留部材2内の封水の水位は、トラップ部6bの高さによって所定水位WLに規定されている。
【0031】
上側本体部材8は、下側本体部材6の上側に取り付けられ、一体化される部材であり、封水凹部6aの上方を覆うように配置される。上側本体部材8の一方の端部には、筒状部材4の下部を受け入れるように構成された受入筒部8aが形成され、他方の端部には、排水管Dを接続するための排水管接続部8bが設けられている。
【0032】
受入筒部8aは、筒状部材4を内側に受け入れるように形成された、上方に向けて開口した円形断面の筒状の部分である。受入筒部8aは、下側の内径が小さく、上側の内径が大きい段付きの筒状に構成され、下側の部分に筒状部材4の下部が嵌め込まれるように構成されている。排水管接続部8bは、トラップ部6bの下流側に設けられた円筒状の部分であり、排水管Dを水平方向に向けられた排水管Dを受け入れて接続するように構成されている。この排水管接続部8bの下端は、トラップ部6bよりも低い位置に形成されており、封水貯留部材2の中の水位がトラップ部6bの高さを超えると、排水が排水管接続部8bに流入するように構成されている。
【0033】
開口部材10は、洗い場の床面Fと上側本体部材8の受入筒部8aを滑らかに接続するように配置される浅いカップ状の部材であり、図2に示すように、上面視で略長方形に構成されている。また、図3に示すように、開口部材10の略中央には、筒状部材4を受け入れるための円形の開口10aが設けられている。そして、開口部材10は、締付フランジ部材12により、上側本体部材8に固定されている。
【0034】
図3に示すように、締付フランジ部材12は、円環板状の円環部12aと、この円環部12aの内周から延びる短い円筒状の円筒部12bを有し、円筒部12bの外周面には雄ネジが形成されている。一方、上側本体部材8の受入筒部8aの上部内周壁面には雌ネジが形成されている。このため、締付フランジ部材12の円筒部12bを、開口部材10の開口10aに通して、円筒部12bの外周面の雄ネジを受入筒部8aの雌ネジと螺合させることにより、開口部材10を上側本体部材8に固定することができる。
【0035】
次に、筒状部材4は、封水貯留部材2に溜まっている封水の中に下端部が水没するように、封水貯留部材2の内側に着脱可能に固定される筒状の部材である。図3に示すように、筒状部材4は、円筒形の円筒部4aと、この円筒部4aの上端に滑らかに連続するように形成された、上方に向けてすり鉢状に広がる鍔部4bと、を有する。さらに、図1に示すように、鍔部4bの内側には、籠状のヘアキャッチャー14が配置され、排水と共に排水トラップ1に流れ込む毛髪等を捕捉するように構成されている。
【0036】
また、筒状部材4は、その円筒部4aの下部が、封水貯留部材2の中に溜められた封水の中に水没するように、封水貯留部材2の受入筒部8aの中に挿入され、円筒部4aの下端は、下側本体部材6の封水凹部6aの底面まで延びている。なお、図2に示すように、筒状部材4内側の封水に水没していない部分には、突起物等が形成されておらず、全体的に平滑な面に仕上げられており、汚れ等が付着しにくくなっている。
【0037】
また、図3に示すように、筒状部材4の円筒部4aの下端には、固定解除操作部である切欠4cが形成され、この切欠4cにより、円筒部4aの下端と封水凹部6aの底面の間に手指を挿入可能な隙間が形成されている。また、この円筒部4aの下端に設けられた切欠4cにより、排水トラップ1を水封することができる、封水貯留部材2内の封水水深の最低レベルが規定されている。即ち、封水貯留部材2内に溜められている封水の水深が切欠4cの上端以上であるとき、排水トラップ1が封水される。従って、切欠4cの上端は、排水トラップ1の封水水深を規定するディップとしても機能している。
【0038】
さらに、円筒部4aの上部外周には、円環状のパッキン16aが配置され、筒状部材4の外周と、上側本体部材8の受入筒部8aの下部内周面との間の水密性が確保されている。また、鍔部4bの上端部の外周には、円環状のパッキン16bが配置され、筒状部材4の鍔部4bの外周と、開口部材10の開口10aの内周面との間の水密性が確保されている。本実施形態において、例えば、隙間の高さの下限値は、人の手指を挿入可能とするために8mm以上が好ましく、高さの上限値は、排水トラップ自体の高さをコンパクトにするために25mm未満が好ましい。
【0039】
さらに、筒状部材4の円筒部4aの外周上部には、2箇所に固定機構18が設けられている。この固定機構18は、筒状部材4の外周面に一体的に形成されたアーム部18a及び係合突起18bを備えており、アーム部18aは、筒状部材4に、これを引き抜く方向の力を加えることにより弾性的に曲げ変形され、この弾性変形により、係合突起18bが移動されるように構成されている。
【0040】
具体的には、筒状部材4の円筒部4aの上部には、外周を一周するようにリブ4dが形成されており、このリブ4dに形成された溝により、パッキン16aが保持されている。また、このリブ4dの円周上の2箇所から、下方に向けて延びるように長方形板状のアーム部18aが一体に形成されている。即ち、アーム部は、その上端がリブ4dと一体化され、円筒部4aの外周面と平行に下方に向けて延びるように形成された片持ち梁状の部分である。さらに、アーム部18aの下端には、筒状部材4の半径方向外方に向けて突出した係合突起18bが形成されている。これにより、筒状部材4の円筒部4aが上側本体部材8の受入筒部8aに挿入されると、係合突起18bが上側本体部材8の受入筒部8a下端と係合し、筒状部材4が封水貯留部材2(を構成する上側本体部材8)にスナップ止めされる。
【0041】
さらに、筒状部材4を封水貯留部材2から取り外す場合には、使用者は、筒状部材4の中に手指を挿入し、指先を固定解除操作部である切欠4cに掛けて、筒状部材4を鉛直上方に引き抜く方向に力を加える。これにより、図4に示すように、筒状部材4の外周面に形成されたアーム部18aが弾性変形され、アーム部18aの下端が、筒状部材4の半径方向内方に向けて移動する。その結果、アーム部18a下端の係合突起18bと、上側本体部材8の受入筒部8a下端の係合が外れ、筒状部材4を上方に引き抜くことができる。本実施形態において、筒状部材4の内径は、使用者の手指を挿入可能とするために、例えば、直径65mm以上と設定することが好ましい。
【0042】
一方、筒状部材4を封水貯留部材2に取り付ける場合には、筒状部材4の円筒部4aを、封水貯留部材2の受入筒部8aの中に上方から押し込むことにより、アーム部18aが半径方向内方に向けて弾性変形される。さらに、筒状部材4が封水貯留部材2の適所まで挿入されると、弾性変形されていたアーム部18aが元の形状に復帰する。これにより、図3に示すように、アーム部18aの弾性的な曲げ変形により係合突起18bが筒状部材4の半径方向外方に移動して、係合突起18bと受入筒部8a下端が係合し、筒状部材4を封水貯留部材2にスナップ止め(固定)される。また、封水貯留部材2の受入筒部8aの中に挿入する際、アーム部18aは、筒状部材4の挿入を案内する。従って、アーム部18aは筒状部材4の受入筒部8a内への挿入を案内するガイド部として機能する。
【0043】
このように、本実施形態の排水トラップ1においては、筒状部材4を封水貯留部材2から取り外して清掃等のメンテナンスを行う場合には、封水に水没する位置に設けられた固定解除操作部である切欠4cに使用者が指先を掛ける。そして、筒状部材4に引き抜く方向の力を加えることにより、固定機構18による筒状部材4の固定を解除し、これを取り外すことができる。なお、本実施形態の排水トラップ1では、筒状部材4の内周上部の鍔部4b等に突起物が設けられていないため(図2)、筒状部材4の外部から視認できる部分には汚れが付着しにくく、また、付着した汚れも容易に拭き取ることができる。このため、通常の清掃時に使用者が筒状部材4を取り外す必要はなく、大掃除や、業者によるメンテナンス時に筒状部材4を取り外すだけで良い。
【0044】
本発明の第1実施形態の排水トラップ1によれば、筒状部材4に引き抜く方向の力を加えるための固定解除操作部である切欠4cが封水に水没する位置に設けられているので、筒状部材4の入口部に操作部が設けられていない場合でも、使用者は筒状部材4を容易に着脱することができる。また、切欠4cが封水に水没する位置に設けられているので、切欠4cに汚れが付着したとしても目立つことがなく、排水トラップ1の美観を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態の排水トラップ1によれば、固定解除操作部である切欠4cが筒状部材4の下端に設けられているので、切欠4cに汚れが付着したとしても、汚れが使用者の目につくことはなく、排水トラップ1の美観を向上させることができる。
【0046】
さらに、本実施形態の排水トラップ1によれば、固定解除操作部が筒状部材4の下端の一部に設けられた切欠4cにより構成されているので、簡単な構造で固定解除操作部を形成することができると共に、汚れの付着しにくい固定解除操作部を構成することができる。
【0047】
また、本実施形態の排水トラップ1によれば、固定機構18が筒状部材4に引き抜く方向の力を加えることにより弾性変形されるアーム部18aにより構成されているので、比較的簡単な構造で固定機構18を構成することができる。また、使用者は、筒状部材4に引き抜く方向の力を加えることにより、筒状部材4を取り外すことができるので、使用者は力を加えやすく、容易に筒状部材4を取り外すことができる。
【0048】
さらに、上述した本発明の第1実施形態においては、筒状部材4を固定するための固定機構18が、弾性変形可能な片持ち梁状のアーム部18aによって構成されていたが、変形例として、固定機構をリブ状の係合突起により構成することもできる。
図5は、本変形例による排水トラップの一部を拡大して示す断面図である。
【0049】
図5に示すように、本変形例の排水トラップにおいては、封水貯留部材の一部を構成する上側本体部材38の受入筒部38aの中に、筒状部材34が着脱可能に固定されている。即ち、本変形例において、筒状部材34は、円筒部34aと、その上方に連なる鍔部34bを有し、円筒部34aが、上側本体部材38の受入筒部38aの中に挿入されている。
【0050】
円筒部34aの外周面には、固定機構として、半径方向外方に突出するリブ状の係合突起である外周突起34dが、全周に亘って設けられている。一方、筒状部材34を受け入れている受入筒部38aの内周面には、固定機構として、半径方向内方に突出する係合突起であるリブ状の内周突起38cが、全周に亘って設けられている。そして、筒状部材34の円筒部34aが、上側本体部材38の受入筒部38aの中に所定位置まで挿入されている状態では、円筒部34aの外周突起34dと、受入筒部38aの内周突起38cが係合し、筒状部材34は上側本体部材38(封水貯留部材)にスナップ止め(固定)されている。なお、外周突起34dは円筒部34aの外周の一部に形成されていても良い。
【0051】
筒状部材34を封水貯留部材から取り外す場合には、使用者は、筒状部材34の中に手指を挿入して指先を筒状部材34の下端34cに掛け、筒状部材34に、これを上方に引き抜く方向の力を加える。これにより、円筒部34a及び受入筒部38aの一部が弾性変形され、係合突起である外周突起34d及び内周突起38cが移動されて、外周突起34dが内周突起38cを乗り越え、円筒部34aを引き抜くことができる。
【0052】
なお、上述した第1実施形態においては、筒状部材4の下端に切欠4cが設けられ、これが、使用者が筒状部材4に引き抜く方向の力を加えるための固定解除操作部として機能していた。これに対し、本変形例においては、筒状部材34の下端34cに切欠は設けられていない。しかしながら、本変形例においては、筒状部材34の下端34cと、下側本体部材36の封水凹部36aの底面との間には、全周に亘って手指を挿入可能な隙間があり、使用者は筒状部材34の下端34cに指先を掛け、筒状部材34に引き抜く方向の力を加えることができる。従って、本変形例においては、筒状部材34の下端34cが、使用者が筒状部材34に引き抜く方向の力を加えるための固定解除操作部として機能する。
【0053】
本変形例の排水トラップによれば、固定機構が外周突起34d及び内周突起38cにより構成されているので、単純な構造で、筒状部材34を封水貯留部材に固定する固定機構を構成することができる。
【0054】
また、更なる変形例として、固定機構として、磁石と、これによって吸着されて磁性体材料を設けることもできる。即ち、筒状部材及び受入筒部の略水平方向に向けられた当接面の、互いに対向する位置に、磁石と磁性体材料を夫々埋め込んでおき、これらの間に作用する吸着力によって、筒状部材を封水貯留部材に固定するように本発明を構成することもできる。この変形例においては、使用者が筒状部材に引き抜く方向の力を加えることにより、筒状部材の固定を解除することができる。
【0055】
次に、図6を参照して、本発明の第2実施形態による排水トラップを説明する。
本実施形態の排水トラップは、筒状部材を封水貯留部材に固定する固定機構が上述した第1実施形態とは異なっている。従って、以下では、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。図6は、本発明の第2実施形態による排水トラップの一部の内部構造を示す斜視図である。
【0056】
図6に示すように、本実施形態の排水トラップにおいては、筒状部材104の円筒部104aが、封水貯留部材の一部を構成する上側本体部材108の受入筒部108aの中に挿入された状態で、着脱可能に固定されている。ここで、筒状部材104の円筒部104a、及び上側本体部材108の受入筒部108aは、何れも円筒形に構成され、円筒部104aは受入筒部108aの内側に嵌まり込み、受入筒部108aの中で回動することができる。また、受入筒部108aの下端には、略半周に亘って開口108bが設けられている。
【0057】
一方、筒状部材104の円筒部104aの外周面には、半径方向外方に向かって突出する棒状の突起118が設けられている。図6に示す状態においては、この突起118と、受入筒部108aに設けられた開口108bの縁が係合し、筒状部材104を上方に引き抜くことはできない。従って、本実施形態において、突起118は、筒状部材104を封水貯留部材(受入筒部108a)に固定する固定機構として機能する。
【0058】
また、筒状部材104の円筒部104aの下端には、切欠104cが設けられており、この切欠104cにより、筒状部材104の下端と、下側本体部材106の封水凹部106aの底面との間に手指を挿入可能な隙間ができている。
【0059】
一方、筒状部材104を受け入れている受入筒部108aには、スリット108cが設けられている。このスリット180cは鉛直方向に延びると共に、筒状部材104に設けられた突起118よりも少し幅が大きく構成されている。このため、筒状部材104を封水貯留部材(受入筒部108a)から引き抜いて取り外す場合には、まず、使用者は、筒状部材104の中に手指を挿入し、指先を円筒部104aの下端に設けられた切欠104cに掛ける。そして、切欠104cの鉛直方向の縁を横方向に押して、筒状部材104に回転力を加える。このようにして、円筒部104aに設けられた突起118と、受入筒部108aに設けられたスリット108cが整合する位置まで、筒状部材104を回動させる。
【0060】
これにより、封水貯留部材(受入筒部108a)に対する筒状部材104の固定が解除される。この状態で、上方に引き抜く方向の力を筒状部材104に加えることにより、筒状部材104を封水貯留部材(受入筒部108a)から取り外すことができる。このように、本実施形態において、筒状部材104の下端に設けられた切欠104cは、筒状部材104に回転力を加えるための固定解除操作部として機能する。
【0061】
本発明の第2実施形態の排水トラップによれば、筒状部材104に回転力を加えるための固定解除操作部が筒状部材104の下端の一部に設けられた切欠104cにより構成されているので、簡単な構造で固定解除操作部を形成することができると共に、汚れの付着しにくい固定解除操作部を構成することができる。
【0062】
また、本実施形態の排水トラップによれば、筒状部材104に回転力を加えるための固定解除操作部である切欠104cが筒状部材104の下端に設けられているので、切欠104cに汚れが付着したとしても、汚れが使用者の目につくことはなく、排水トラップの美観を向上させることができる。
【0063】
また、上述した本発明の第2実施形態においては、筒状部材104に回転力を加えるための固定解除操作部が、筒状部材104の下端に設けた切欠104cにより構成されていたが、他の構成を固定解除操作部とすることもできる。図7は、本発明の第2実施形態の変形例による排水トラップの一部の内部構造を示す斜視図である。
【0064】
図7に示すように、本実施形態の排水トラップにおいては、筒状部材204の円筒部204aが、封水貯留部材の一部を構成する上側本体部材208の受入筒部208aの中に挿入された状態で、着脱可能に固定されている。ここで、筒状部材204の円筒部204a、及び上側本体部材208の受入筒部208aは、何れも円筒形に構成され、円筒部204aは受入筒部208aの内側に嵌まり込み、受入筒部208aの中で回動することができる点は、上述した第2実施形態と同様である。また、本変形例においても、受入筒部208aの下端には、略半周に亘って開口208bが設けられている。
【0065】
一方、筒状部材204の円筒部204aの外周面に棒状の突起218が設けられ、この突起218と開口208bの縁が係合することにより、筒状部材204が固定されている点も、上述した第2実施形態と同様である。さらに、本変形例においても、筒状部材204を受け入れている受入筒部208aにスリット208cが設けられており、スリット208cと筒状部材204に設けられた突起218を整合させることにより、筒状部材204の取り外しが可能となる。
【0066】
ここで、本変形例においては、筒状部材204の円筒部204aの下端と、下側本体部材206の封水凹部206aの底面との間に、全周に亘って手指を挿入可能な隙間が設けられている。さらに、円筒部204aの外周下端には、半径方向外方に放射状に延びる3つの指掛け突起204cが設けられている。このため、筒状部材204を封水貯留部材(受入筒部208a)から取り外す場合には、まず、使用者は、筒状部材204の中に手指を挿入し、指先を円筒部204aの下端から、円筒部204aの外側に延ばし、指掛け突起204cに指を掛ける。そして、指掛け突起204cを把持して、筒状部材204に回転力を加える。さらに、筒状部材204を、円筒部204aに設けられた突起218と、受入筒部208aに設けられたスリット208cが整合する位置まで回動させる。
【0067】
これにより、封水貯留部材(受入筒部208a)に対する筒状部材204の固定が解除され、上方に引き抜く方向の力を加えることにより、筒状部材204を封水貯留部材(受入筒部208a)から取り外すことができる。(なお、受入筒部208aの内周には、指掛け突起204cを通過させるための鉛直方向の窪み(図示せず)が設けられている。)このように、本実施形態において、筒状部材204の下端外周に設けられた指掛け突起204cは、筒状部材204に回転力を加えるための固定解除操作部として機能する。本変形例によれば、使用者は、筒状部材204を把持しやすく、容易に筒状部材204に強い回転力を与えて、これを回転させることができる。
【0068】
また、本変形例の排水トラップによれば、筒状部材204に回転力を加えるための固定解除操作部である指掛け突起204cが筒状部材204の外周面に設けられているので、指掛け突起204cに汚れが付着したとしても、汚れが使用者の目につくことはなく、排水トラップの美観を向上させることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 排水トラップ
2 封水貯留部材
4 筒状部材
4a 円筒部
4b 鍔部
4c 切欠(固定解除操作部)
4d リブ
6 下側本体部材
6a 封水凹部
6b トラップ部
8 上側本体部材
8a 受入筒部
8b 排水管接続部
10 開口部材
10a 開口
12 締付フランジ部材
12a 円環部
12b 円筒部
14 ヘアキャッチャー
16a パッキン
16b パッキン
18 固定機構
18a アーム部
18b 係合突起
34 筒状部材
34a 円筒部
34b 鍔部
34c 下端(固定解除操作部)
34d 外周突起(固定機構の係合突起)
36 下側本体部材
36a 封水凹部
38 上側本体部材
38a 受入筒部
38c 内周突起(固定機構の係合突起)
104 筒状部材
104a 円筒部
104c 切欠(固定解除操作部)
106 下側本体部材
106a 封水凹部
108 上側本体部材
108a 受入筒部
108b 開口
118 突起
204 筒状部材
204a 円筒部
204c 放射状突起(固定解除操作部)
206 下側本体部材
206a 封水凹部
208 上側本体部材
208a 受入筒部
208b 開口
208c スリット
218 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7