(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131307
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】マスク貼着用シート、及びマスク貼着用シートが貼着されたマスク
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240920BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240920BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240920BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B15/08 E
B32B27/18 F
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041501
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹本 貴司
【テーマコード(参考)】
3B211
4F100
【Fターム(参考)】
3B211AC26
3B211CA02
3B211CC03
4F100AA21B
4F100AB01B
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4F100AB17B
4F100AB31B
4F100AK01A
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4F100AR00C
4F100AR00D
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4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】マスク内側における香りを十分に持続させながらも、マスクから剥がれにくく、更にマスク自体の装着感も損なわないマスク貼着用シート、及び当該マスク貼着用シートが貼着されたマスクを提供する。
【解決手段】樹脂材料を含む基材と、前記基材の一方の面に設けられた金属蒸着層と、前記金属蒸着層の前記基材が存在する面とは反対側の面に設けられ、香料及び粘着剤を含む粘着剤層と、を有し、前記基材と前記金属蒸着層とから成る積層体の剛軟度が10mm~80mmである、マスク貼着用シート及び当該マスク貼着用シートが貼着されたマスク。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料を含む基材と、
前記基材の一方の面に設けられた金属蒸着層と、
前記金属蒸着層の前記基材が存在する面とは反対側の面に設けられ、香料及び粘着剤を含む粘着剤層と、を有し、
前記基材と前記金属蒸着層とから成る積層体の剛軟度が10mm~80mmである、マスク貼着用シート。
【請求項2】
前記樹脂材料が、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のマスク貼着用シート。
【請求項3】
前記金属蒸着層がアルミニウム、タングステン、銅、錫、チタン、これらの酸化物及びこれらの合金からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載のマスク貼着用シート。
【請求項4】
前記金属蒸着層の厚みが5nm~200nmである、請求項1又は2に記載のマスク貼着用シート。
【請求項5】
前記積層体の40℃、90%RH雰囲気下における水蒸気透過率が、5g/m2/day以下である、請求項1又は2に記載のマスク貼着用シート。
【請求項6】
前記基材の前記金属蒸着層が存在する面とは反対側の面に装飾層を有する、請求項1又は2に記載のマスク貼着用シート。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のマスク貼着用シートが貼着されたマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク貼着用シート、及びマスク貼着用シートが貼着されたマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染予防や拡散防止のため、日常的にマスクを着用する人が増加している。このようなマスクには、様々な機能が付加され、香り付きのものなどが製造販売されている。
【0003】
これに関連して下記の特許文献1には、基材と、基材の一方の面に設けられた粘着剤層と、粘着剤層が設けられた面と反対側の面に設けられた芳香剤と、からなり、粘着剤層によりマスク本体部に貼着することのできるマスク貼着用芳香シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構成では、芳香剤の香り成分がマスク内側に入り込む経路として、基材を厚み方向に通過してマスク内側に入り込む経路A(特許文献1の
図5参照)と、芳香剤の外側の空間に拡散した香り成分が芳香シートの外側を回ってマスク内側に入り込む経路B(特許文献1の
図5参照)が存在する。
【0006】
特許文献1に開示された構成では、経路Aによるマスク内側だけでなく、経路Bにてマスクの外側方向にも香り成分を放散しているため、香りの持続時間が短い。
【0007】
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染予防や拡散防止の目的でマスクを使用するため、マスクの装着時間が長い傾向にある。このため、マスクに貼着した香り付きシートに起因して装着感が低下しないことや、マスクが会話や呼吸で動いた場合であってもマスクから香り付きシートが剥がれにくいことも重要な要求性能となる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、マスク内側における香りを十分に持続させながらも、マスクから剥がれにくく、更にマスク自体の装着感も損なわないマスク貼着用シート、及び当該マスク貼着用シートが貼着されたマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明に係るマスク貼着用シート、及びマスク貼着用シートが貼着されたマスクは、以下の構成を有する。
【0010】
1.樹脂材料を含む基材と、前記基材の一方の面に設けられた金属蒸着層と、前記金属蒸着層の前記基材が存在する面とは反対側の面に設けられ、香料及び粘着剤を含む粘着剤層と、を有し、前記基材と前記金属蒸着層とから成る積層体の剛軟度が10mm~80mmである、マスク貼着用シート。
【0011】
2.前記樹脂材料が、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、1.に記載のマスク貼着用シート。
【0012】
3.前記金属蒸着層がアルミニウム、タングステン、銅、錫、チタン、これらの酸化物及びこれらの合金からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、1.又は2.に記載のマスク貼着用シート。
【0013】
4.前記金属蒸着層の厚みが5nm~200nmである、1.~3.のいずれかに記載のマスク貼着用シート。
【0014】
5.前記積層体の40℃、90%RH雰囲気下における水蒸気透過率が、5g/m2/day以下である、1.~4.のいずれかに記載のマスク貼着用シート。
【0015】
6.前記基材の前記金属蒸着層が存在する面とは反対側の面に装飾層を有する、1.~5.のいずれかに記載のマスク貼着用シート。
【0016】
7.1.~6.のいずれかに記載のマスク貼着用シートが貼着されたマスク。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マスク内側における香りを十分に持続させながらも、マスクから剥がれにくく、更にマスク自体の装着感も損なわないマスク貼着用シート、及び当該マスク貼着用シートが貼着されたマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るマスク貼着用シートの一実施形態を示す断面模式図である。
【
図2】本発明に係るマスク貼着用シートが被貼着マスクに貼着された状態を拡大した断面模式図である。
【
図3】本発明に係るマスク貼着用シートが貼着されたマスクを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、マスク貼着用シート10及びマスク貼着用シートが貼着されたマスク90(以下、単にマスク90とも言う)の構成について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0020】
図1は、本発明の一形態であるマスク貼着用シート10を示す断面模式図である。
図1に示すように、マスク貼着用シート10は、樹脂材料を含む基材11と、基材11の一方の面に設けられた金属蒸着層12と、金属蒸着層12の基材11が存在する面とは反対側の面に設けられ、香料及び粘着剤を含む粘着剤層13と、剥離ライナー15と、を有する。剥離ライナー15は、粘着剤層13を保護し、粘着性の低下を防止するとともに、粘着剤層13から香料が揮発することを抑制する機能を有する。そして、後述する被貼着マスク90Aに貼着する際には剥離ライナー15は、剥離され、露出した粘着剤層13をマスク面に貼着する。
【0021】
図2は、マスク貼着用シート10が、後述する被貼着マスク90Aに貼着された状態を拡大した断面模式図である。
図2に示すように、マスク貼着用シート10は、粘着剤層13を介して、被貼着マスク90Aに貼着される。よって、被貼着マスク90Aに貼着された状態では、マスク貼着用シート10の各層は、被貼着マスク90A側から、粘着剤層13、金属蒸着層12、基材11の順に配置される。
【0022】
マスク貼着用シート10の金属蒸着層12は、金属が蒸着された層であることから、ガスバリア性を有する。そのため、粘着剤層13に保持された香料は、被貼着マスク90Aの外側方向(
図2中の破線矢印Bで示した方向)へ放出されることが極めて少なく、香料のほとんどが被貼着マスク90Aの内側方向(
図2中の破線矢印Aで示した方向)に放出される。よって、マスク貼着用シート10は、金属蒸着層12を有することにより、香料の被貼着マスク90Aの外側方向への分散を防ぐことができるため、香料の効果を長く保つことができる。
【0023】
金属蒸着層12は、ガスバリア性を有する一方、耐傷性が極めて低い。このため、表面側に基材11を配置することで、金属蒸着層12を保護することができる。また、マスク貼着用シート10における基材11と金属蒸着層12とからなる積層体14(以下、単に積層体とも称する)は、剛軟度が10mm~80mmである。剛軟度が80mmを超えると、マスク貼着用シートが剛直となり、マスク貼着用シートを貼着したマスクを装着した場合に、ごわつきを生じ、マスクの装着感に劣るものとなる。また、同様に、剛軟度が80mmを超えることでマスク貼着用シートが剛直なものとなり、被貼着マスク90Aの形状変化に対して追従しにくくなる。これにより、マスクが日常生活の会話や呼吸により動くと、剛軟度が80mm以下のマスク貼着用シート10と比較して、被貼着マスク90Aから剥がれやすくなる。また、剛軟度が10mm以上であることによりマスク貼着用シート10の硬さが十分なものとなり、例えば、被貼着マスク90Aへの貼着を容易に行うことができる。
【0024】
上述の通り、積層体14の剛軟度の上限は、80mmであるが、70mm以下であることが好ましく、65mm以下であることがより好ましく、60mm以下であることが更に好ましい。積層体14の剛軟度の上限が上記の範囲内であることにより、マスク貼着用シート10を貼着したマスクを装着した際の装着感がより向上し、更にマスク貼着用シート10のマスクからの剥がれ耐性もより向上する。また、積層体14の剛軟度の下限は、10mmであるが、20mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましく、40mm以上であることが更に好ましい。積層体14の剛軟度の下限が上記の範囲内であることにより、マスク貼着用シート10の硬さがより十分なものとなり、被貼着マスク90Aへの貼着がより容易となる。すなわち、積層体14の剛軟度は、20mm~70mmであることが好ましく、30mm~65mmであることがより好ましく、40mm~60mmであることが更に好ましい。
【0025】
なお、積層体14の剛軟度は、JIS L 1096:2010の8.21.1 A法(45°カンチレバー法)に準じて測定することができる。
【0026】
また、積層体14は、40℃、90%RH雰囲気下における水蒸気透過率が、5g/m
2/day以下であることが好ましく、3g/m
2/day以下であることがより好ましく、2g/m
2/day以下であることが更に好ましく、1.5g/m
2/day以下であることが特に好ましい。水蒸気透過率の上限が上記の範囲内であることで、積層体14のガスバリア性が担保され、被貼着マスク90Aの外側方向(
図2中の破線矢印Bで示した方向)への香料の放出が抑制されるため好ましい。なお、40℃、90%RH雰囲気下における水蒸気透過率の下限値は、特に制限されないが、0.01g/m
2/day以上であることが好ましい。
【0027】
40℃、90%RH雰囲気下における水蒸気透過率は、JIS Z 0208:1976に準じて測定することができる。
【0028】
積層体14の厚みは、10~300μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましい。積層体14の厚みが当該範囲にあることにより、マスク貼着用シート10が貼着されたマスク90を装着した際の装着感や、マスク貼着用シート10の剥がれ耐性がより向上する。
【0029】
また、マスク貼着用シート10の形状は、被貼着マスク90Aに貼着可能であれば特に制限されず、例えば、平面視した際の形状が、長方形、正方形、円形、星形等であってもよい。被貼着マスク90Aへの貼着の容易性の観点から、平面視した際の形状は、長方形であることが好ましく、長方形である場合、例えば、1cm×2cm、1cm×3cm、1cm×4cm、2cm×3cm、2cm×4cm、2cm×5cmなどの様々な形状をとり得る。
【0030】
また、マスク貼着用シート10において、金属蒸着層12は、特に制限されないが、基材11の一方の面の全体に形成されていることが好ましい。これにより、基材11と金属蒸着層12とからなる積層体14のガスバリア性がより向上する。また同様に、粘着剤層13は、特に制限されないが、金属蒸着層12の基材11が存在する面とは反対側の面の全体に形成されていることが好ましい。これにより、マスク貼着用シート10の粘着性が十分なものとなり、被貼着マスク90Aから剥がれにくくなる。
【0031】
また、マスク貼着用シート10は、基材11の金属蒸着層12が存在する面とは反対側の面に装飾層を有していてもよい(図示せず)。装飾層は、基材11の金属蒸着層12が存在する面とは反対側の面の全面に形成しても良いし、一部のみに形成してもよい。装飾層としては、インキをベタ塗りしてなる着色層、インキを模様として印刷してなる絵柄層等が挙げられる。装飾層を有することにより、マスク貼着用シート10の意匠性を高めることができる。さらに、基材11と装飾層との間には、基材11と、装飾層を構成するインキ受理層やインキ等と、の密着性を高めるためのコート層が存在していてもよい。
【0032】
また、マスク貼着用シート10を構成する各部材間には、他の機能層が存在していてもよい。例えば、金属蒸着層12上には、当該金属蒸着層12を保護するための保護層が存在していてもよいし、基材11上、金属蒸着層12上、保護層上、及び/又は装飾層上には各部材間の密着性を向上させる密着付与層が存在していてもよい。
【0033】
図3は、本発明の一形態であるマスク貼着用シート10が貼着されたマスク90(以下、単にマスク90とも言う)を模式的に示す斜視図である。マスク貼着用シート10が貼着される被貼着マスク90Aとしては、一般に市販されている汎用のマスク(不織布マスク、ウレタンマスク、紙マスク、布マスク等)を広く使用することができる。以下説明する被貼着マスク90Aの構成は一例であって、任意の形状のマスクを使用することができる。
【0034】
被貼着マスク90Aは、
図3に示すように、着用者の鼻、口、顎を覆う本体部91と、本体部91を着用者の耳に係止するための一対の耳掛け部92、93と、を有する。
【0035】
本体部91には、
図3に示すように、本体部91を上下方向に広げるためのプリーツ91A~91Dが形成されている。プリーツ91A~91Dは、上下方向に4つ形成されている。
図3に示すように、着用時にプリーツ91A~91Dが上下方向に広げられることによって、本体部91が着用者の鼻、口、顎を好適に覆うことができる。
【0036】
本体部91のうち上側の箇所には、
図3に示すように、本体部91の上端縁に沿って補強部材94が内包されている。補強部材94は、可撓性の材料で構成されており、着用時に着用者の鼻元の形状に沿うように変形させることで、鼻と本体部91の隙間を減少させることができる。
【0037】
本体部91の構成及び材料は、特開2020-105643号公報に開示されている公知のものを用いることができるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0038】
耳掛け部92、93は、紐状部材であって、本体部91に対して、例えば溶着によって固定されている。
【0039】
マスク90において、マスク貼着用シート10が貼着られる箇所は、特に制限されない。しかしながら、
図3に示すように、プリーツ91Aとプリーツ91Bとの間の領域の中心部に横長となるようにマスク貼着用シート10が貼着られると、プリーツ91A及びプリーツ91Bの間は、着用者の鼻に最も近いため、香料の効果を高めることができる。
【0040】
以上、本実施形態に係るマスク貼着用シート10及びマスク90の構成について説明した。次に、マスク貼着用シート10の各部材を構成する材料について説明する。
【0041】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作及び物性等は、室温(20~25℃)/相対湿度45~55%RHの条件で測定する。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート及び/又はメタクリレート」を指し、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を指す。更に、本明細書においては「シート」と称しているが、シートには、ラベル、テープ等と称されるものも含まれる。また、マスク貼着用シートを単にシートと称する場合もある。
【0042】
<樹脂材料を含む基材>
基材に含まれる樹脂材料は、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。基材に含まれる、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の含有量(合計量)は、50質量%以上(上限100質量%)であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。中でも、本発明の効果の観点から、塩化ビニル樹脂、及びオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂、及びポリプロピレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
【0043】
以下、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂について説明する。
【0044】
(塩化ビニル樹脂)
塩化ビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルモノマー及び塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体(以下、塩化ビニル共重合体とも称する)等が挙げられる。塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニルのようなビニルエステル類、エチレンビニルエーテルのようなビニルエーテル類、エチレン、プロピレン、1-ブテン等のα-オレフィン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニリデン等が挙げられる。上記のポリ塩化ビニル及び塩化ビニル共重合体は、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法などの公知の製造方法によって製造することができる。
【0045】
塩化ビニル樹脂は、通常、可塑剤と併用される。可塑剤は、基材に柔軟性を付与する目的で添加され、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ジイソデシル等のフタル酸系可塑剤、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル等のアジピン酸系可塑剤、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシリル、リン酸トリブチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸オクチルジフェニル、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、エポキシ化大豆油等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。可塑剤の添加量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、例えば、10~60質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。
【0046】
塩化ビニル樹脂は、必要に応じて、安定剤、滑剤、充填剤、着色剤、加工助剤、軟化剤、金属粉、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難撚剤等と併用されていてもよい。安定剤としては、例えば、Ba-Zn系、Cd-Ba系、Sn系等のものが用いられ、或いはこれらがエポキシ化大豆油、エポキシ樹脂等と併用されていてもよい。また、軟化剤としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体やエチレン/酢酸ビニル/一酸化炭素共重合体等が用いられていてもよい。
【0047】
(オレフィン樹脂)
オレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のα-オレフィンをモノマー成分とするものが挙げられ、中でもオレフィン樹脂は、加工の容易性や入手の容易性の観点からポリプロピレンであることが好ましい。
【0048】
ポリエチレンは、(分岐状)低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、極低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、又はこれらの混合物のいずれであってもよい。
【0049】
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂としては、例えばポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などを用いることができる。
【0050】
樹脂材料を含む基材の厚みは、後述する積層体の剛軟度や機械的強度を考慮して、10μm~300μmであることが好ましく、10μm~100μmであることがより好ましい。
【0051】
樹脂材料を含む基材は、単層であってもよいし、複数層であってもよい。また、当該基材が複数層から構成される場合は、各層の構成が異なるものであってもよい。
【0052】
また、樹脂材料を含む基材には、プライマー処理、酸化法などによる表面処理を施すことができる。上記プライマー処理に使用し得る液剤としては、特に制限はされず、例えばアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、シリコーン系、ゴム系などの従来公知のものを用いることができる。一方、上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられる。
【0053】
<金属蒸着層>
金属蒸着層を形成する材料としては、例えばアルミニウム、タングステン、銅、錫、チタン、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、これら1種又は2種以上の酸化物、炭化物、窒化物、及びこれらの合金等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。中でも、保香性、ガスバリア性に優れるという観点から、金属蒸着層を形成する材料としては、アルミニウム、タングステン、銅、錫、チタン、これらの酸化物及びこれらの合金からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましく、アルミニウムであることがより好ましい。金属蒸着層は、当該層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察することにより、金属箔と区別することができる。
【0054】
金属蒸着層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法などの物理気相成長法(PVD法);並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法及び光化学気相成長法などの化学気相成長法(CVD法)が挙げられる。
【0055】
金属蒸着層の平均厚みは、5nm~200nmであることが好ましく、10nm~100nmであることがより好ましく、10nm~50nmであることが更に好ましい。金属蒸着層の厚みが上記範囲内であることで、バリア性や耐久性が十分なものとなり、機械的特性も確保され、また蒸着加工適性も向上するため、好ましい。ここで、金属蒸着層の平均厚みとは、電子顕微鏡により測定される金属蒸着層断面の任意の10点における厚みの平均値である。
【0056】
<香料及び粘着剤を含む粘着剤層>
粘着剤層には、香料及び粘着剤が含まれる。
【0057】
(香料)
香料は、揮発性である。このため、剥離ライナーを剥がしてマスクにマスク貼着用シートを貼着すると、粘着剤層に含浸された香料が揮発して、マスク(不織布)を通過し、使用者が香りを感ずることができる。
【0058】
香料としては、例えば、ラベンダー油、ハッカ油、レモン油、ローズ油、ショウノウ油、ビャクダン油、ヒノキ油、シトロネラ油、シナモン油、ティートリー油、ヒバ油、シナモン油、ユーカリ油、ユーカリシトリオドラ、コリアンダー油、タイム油などの植物精油からなる植物性香料などの天然香料、テルペン化合物、エステル化合物、芳香族化合物などからなる合成香料、或いはそれらをブレンドした調合香料などが挙げられる。
【0059】
本実施形態においては、香料は油状であることが好ましい。香料が油状であることで、後述の製造方法で記載するような粘着剤層への含浸が均一となりやすい。油状とは、水不溶性で液状であることを指す。ここで、液状とは、25℃にて流動性を有するものを指す。より具体的には、薬剤を4°傾けた場合、その形状を10分以上保持できず、形状の変化を生じることをいう。また、水不溶性とは、25℃における水に対する溶解度が5重量%以下(下限0重量%)であることを指し、1重量%以下であることが好ましい。
【0060】
更に、「揮発性」とは、25℃において薬剤として有効な程度の揮発性を示すことを意味する。
【0061】
香料の含浸量は粘着剤層100質量部に対し、1質量部~30質量部であることが好ましく、5質量部~25質量部であることがより好ましい。含浸量を上記の範囲とすることで、香料の効果が適切に発揮されながらも、粘着剤層の粘着性が十分なものとなる。
【0062】
(粘着剤)
粘着剤層に用いられる粘着剤としては、特に限定されず、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤などを用いることができる。上記粘着剤は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0063】
粘着剤としては、接着の信頼性の観点から、特にアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。
【0064】
アクリル系粘着剤を構成するアクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とし、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより形成される。ここで、主成分とは、単量体中50質量%以上(上限100質量%)であることを指し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単量体全体に対する含有割合は、好ましい順に、65質量%以上、85質量%以上、90質量%以上である。
【0065】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、粘着性能の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、及び(メタ)アクリル酸n-ブチルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸n-ブチルであることがより好ましく、アクリル酸n-ブチルであることが更により好ましい。
【0066】
架橋剤を用いる場合、更に、架橋剤と反応しうる官能基含有ビニルモノマー(以下、架橋性官能基含有ビニルモノマーとも称する)を用いることが好ましい。
【0067】
架橋性官能基含有ビニルモノマーにおける官能基は、選択される架橋剤により異なるが、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、水酸基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ニトリル基等が挙げられる。中でも、高い凝集力を確保できることから、架橋性官能基含有ビニルモノマーが、カルボキシル基含有ビニルモノマー及び水酸基含有ビニルモノマーの少なくとも一方から選択される架橋性官能基含有ビニルモノマーであることが好ましい。
【0068】
架橋性官能基含有ビニルモノマーは1種単独であっても、2種以上併用してもよい。
【0069】
カルボキシル基又は酸無水物基含有ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、及びオレイン酸などが挙げられる。中でも、重合性の観点から、(メタ)アクリル酸であることが好ましく、アクリル酸であることがより好ましい。
【0070】
架橋性官能基含有ビニルモノマーの含有量は、全単量体中、0.1~20質量%であることが好ましい。架橋性官能基含有ビニルモノマーがこのような範囲にあることで、架橋密度が適当となり粘着性が維持される。
【0071】
アクリル系共重合体の分子量は、特に制限されるものではないが、重量平均分子量(Mw)は、例えば、10万~200万であり、20万~100万であってもよい。本明細書において重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により標準ポリスチレン換算分子量として測定されたものを用いる。
【0072】
アクリル系共重合体の製造方法は、特に制限されず、重合開始剤を使用する溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いることができる。また、重合開始剤により重合を開始させる方法の他に、放射線、電子線、紫外線等を照射して重合を開始させる方法を採用することもできる。
【0073】
粘着剤は、粘着剤組成物から形成されうる。アクリル系共重合体の粘着剤組成物中の含有量は、50~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましい。
【0074】
当該粘着剤組成物は、アクリル系共重合体の他、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。架橋剤の添加量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、0.001~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましい。架橋剤は、単独で使用されても或いは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0075】
粘着剤組成物は、従来公知のその他の添加剤を更に含みうる。かような添加剤としては、例えば、充填剤、顔料、紫外線吸収剤、粘着付与剤などが挙げられる。充填剤としては、例えば、亜鉛華、シリカ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0076】
粘着剤層の厚みは、通常5~100μmであってもよく、5~50μmであってもよい。粘着剤層の厚みが当該範囲にあることにより、粘着剤層の粘着性を十分に維持しながらも、マスク貼着用シートが貼着されたマスクを装着した際の装着感がより向上する。
【0077】
<剥離ライナー>
剥離ライナーは、粘着剤層を保護し、粘着性の低下を防止するとともに、粘着剤層から香料が揮発することを抑制する機能を有する部材である。そして、剥離ライナーは、マスクに貼付する際にマスク貼着用シートから剥離される。このため、本発明におけるマスク貼着用シートは、剥離ライナーを有していないものも包含される。
【0078】
剥離ライナーとしては、香料不透過性であることが好ましい。具体的には、剥離ライナーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデンなどの樹脂フィルムが挙げられる。中でも、剥離ライナーはポリエステルフィルムであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。
【0079】
剥離ライナーの厚みは、通常10~400μm程度である。また、剥離ライナーの表面には、粘着剤層の剥離性を向上させるためのシリコーンなどから構成される剥離剤からなる層が設けられてもよい。かような層が設けられる場合の当該層の厚みは、通常0.01~5μm程度である。
【0080】
[マスク貼着用シートの製造方法]
マスク貼着用シートの製造方法は特に限定されるものではないが、(1)樹脂材料を含む基材上に金属蒸着層を形成し、基材と金属蒸着層とから成る積層体を準備する、(2)金属蒸着層における基材が存在する面とは反対側の面に粘着剤層を形成する、(3)粘着剤層に香料を塗布・含浸させ、マスク貼着用シートを得る、などの方法が挙げられる。
【0081】
粘着剤層の形成方法は、金属蒸着層上に粘着剤組成物を直接塗布して形成してもよく、また、剥離ライナー上に粘着剤層を形成した後、これを積層体の金属蒸着層と貼合してもよい。生産性の観点からは、剥離ライナー上に粘着剤層を形成した後、これを積層体の金属蒸着層と貼合する方法が好ましい。具体的には、剥離ライナー上に粘着剤組成物を塗布し、粘着剤組成物からなる粘着剤層を基材に転写する方法が挙げられる。
【0082】
形成された粘着剤層への香料の塗布・含浸方法は特に限定されるものではなく、グラビアコート、マイヤーバーコート、スプレーコート、カーテンコートなどの塗布、ディッピング法などの浸漬などを挙げることができる。香料を塗布・含浸させることで、粘着剤が溶解又は膨潤し、香料が粘着剤層に保持される。
【0083】
粘着剤層を形成した後に、香料を保持させることで、粘着剤及び香料を混合することによる粘着剤の粘性低下を抑制することとともに、高濃度の香料を保持させることができる。
【0084】
以上、実施形態を通じて本発明に係るマスク貼着用シート及びマスク貼着用シートが貼着されたマスクを説明したが、本発明は実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【実施例0085】
本発明の効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。実施例において「部」或いは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」或いは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0086】
[実施例1]
1.アクリル系共重合体の製造
還流器及び攪拌機を備えたフラスコに、アクリル酸n-ブチル90質量部、アクリル酸10質量部の組成を有するモノマー混合物、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤) モノマー混合物100質量部に対して0.25質量部、及び酢酸エチル(溶剤) モノマー混合物100質量部に対して200質量部を添加し、窒素置換を行いながら65℃まで加温した後、重合を行って、アクリル系共重合体を得た。得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、50万であった。
【0087】
2.粘着剤組成物の作製
1.で得られたアクリル系共重合体100質量部に対して、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(固形分75質量%、NCO13.2質量%)2質量部(カルボキシル基に対するイソシアネート基の当量:22mol%)を添加・混合して粘着剤組成物を作製した。
【0088】
3.マスク貼着用シートの作製
2.で得られた粘着剤組成物を、ナイフコーターにより、ポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーの剥離剤層上に乾燥膜厚30μmとなるように塗布した。その後、塗布した粘着剤組成物を乾燥させて、粘着剤層とした。次いで、当該粘着剤層と、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム上にアルミニウムを蒸着したアルミ蒸着フィルム(厚み 50μm、剛軟度 52mm、基材:ポリ塩化ビニル、金属蒸着層:アルミニウム 厚み 15nm)のアルミ蒸着層と、を貼合した。
【0089】
次いで、剥離ライナーを剥がし、香料を含浸量が5g/m2となるようにグラビアコーターにより粘着剤層に含浸させて、粘着剤層に香料を保持させた。その後、再度粘着剤層面にポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーを積層させた後、アルミ製の封入フィルム内に入れ、2日間放置して粘着剤層を形成させて、実施例1のマスク貼着用シートを得た。
【0090】
[実施例2]
ポリプロピレン(PP)フィルム上にアルミニウムを蒸着したアルミ蒸着フィルム(厚み 50μm、剛軟度 59mm、基材:ポリプロピレン、金属蒸着層:アルミニウム 厚み 15nm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のマスク貼着用シートを得た。
【0091】
[比較例1]
アルミ蒸着フィルムの代わりにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み 50μm、剛軟度 87mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のマスク貼着用シートを得た。
【0092】
[比較例2]
アルミ蒸着フィルムの代わりにポリ塩化ビニルフィルム(厚み 50μm、剛軟度 50mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2のマスク貼着用シートを得た。
【0093】
[比較例3]
アルミ蒸着フィルムの代わりに、ポリ塩化ビニルフィルム(厚み 50μm、剛軟度 50mm)上にアルミ箔(厚み 50μm)を貼り付け、アルミ箔上に2.で得られた粘着剤組成物を塗布した以外は、実施例1と同様にして比較例3のマスク貼着用シートを得た。上記ポリ塩化ビニルフィルムに上記アルミ箔を貼り付けた貼合体の剛軟度は150mm以上であった。
【0094】
(評価用マスクの作製)
上記で得られた実施例1~3及び比較例1~3のマスク貼着用シートを、それぞれ2cm×5cmサイズに切り出した。続いて、切り出したマスク貼着用シートを、市販の不織布マスク(プリーツ型)に貼着することで、評価用マスクを作製した。当該マスク貼着用シートは、
図1に示すように、不織布マスクの本体部外側であって、プリーツ91Aとプリーツ91Bとの間の領域の中心部に横長となるように貼着した。
【0095】
(官能評価)
実施例1~3及び比較例1~3の各評価用マスクについて、マスク貼着用シートの開発を担当する訓練された10人のパネラーによる官能評価試験を行った。官能評価の項目は、(1)香りの持続性、(2)装着感、(3)剥がれ耐性の3つであり、それぞれ以下の評価基準に基づいて3段階評価を行い、平均点を算出した。それぞれの平均点の結果を◎、〇、△、×を用いて、表1に示す。
【0096】
(平均点)
◎:2.5点以上
〇:2点以上2.5点未満
△:1.5点以上2点未満
×:1.5点未満
[香りの持続性]
上記で作製した各評価用マスクを、作製後すぐに装着した場合(場合1)の香りと、作製後6時間放置してから装着した場合(場合2)の香りと、の強さを比較することで、各評価用マスクの香りの持続性を評価した。
【0097】
(評価基準)
3:場合1の香りと、場合2の香りと、は同等の強さである。
【0098】
2:場合1と比べ、場合2の香りの強さが劣る(場合2でも香りを感じる)。
【0099】
1:場合1と比べ、場合2の香りの強さが大きく劣る(場合2でほとんど香りを感じない)。
【0100】
[装着感]
上記で作製した各評価用マスクを装着した場合と、マスク貼着用シートを貼着していない不織布マスク(比較対象)を装着した場合と、を比較することで、各評価用マスクの装着感を評価した。
【0101】
(評価基準)
3:比較対象と同等の装着感である。
【0102】
2:比較対象と比べ、若干のごわつきを感じ、装着感が少し劣る。
【0103】
1:比較対象と比べ、ごわつきを強く感じ、装着感が大きく劣る。
【0104】
[剥がれ耐性]
剥がれ耐性における試験では、まず、評価用マスクの本体部の短辺両端を手で持ち、マスク貼着用シートの貼着面が外側となるように評価用マスクを半分に山折りし、続いて当該貼着面が内側となる評価用マスクを半分に谷折りする、という操作を100回繰り返した。その後、マスクからのマスク貼着用シートの剥がれを観察し評価した。
【0105】
(評価基準)
3:剥がれがない。
【0106】
2:マスク貼着用シートの一部に剥がれが生じている。
【0107】
1:マスク貼着用シート全体がマスクから剥がれている。
【0108】
なお、剛軟度及び水蒸気透過率は、以下に示す方法に従い測定した。
【0109】
[剛軟度]
実施例1及び2で用いた各アルミ蒸着フィルム、比較例1~3で用いた各フィルム、並びに比較例3で用いたフィルムとアルミ箔の貼合体について、JIS L 1096:2010の8.21.1 A法(45°カンチレバー法)に準拠して剛軟度を測定した。
【0110】
[水蒸気透過率]
実施例1及び2で用いた各アルミ蒸着フィルム、比較例1及び2で用いた各フィルム、並びに比較例3で用いたフィルムとアルミ箔の貼合体について、JIS Z 0208:1976に準拠して水蒸気透過率を測定した。水蒸気透過率の測定試験は、40℃、90%RH雰囲気下で行った。
【0111】
【0112】
上記結果より、実施例1及び2のマスク貼着用シートでは、マスクに貼着した際の、香りの持続性、装着感、及び剥がれ耐性の全てが良好であることが分かった。一方、比較例1は装着感及び剥がれ耐性が、比較例2は香り持続性が、比較例3は装着感及び剥がれ耐性が、実施例1及び2よりも劣る結果となった。