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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131322
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】発光素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/08 20100101AFI20240920BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20240920BHJP
   H01L 33/10 20100101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/32
H01L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041521
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】大矢 昌輝
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA12
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA13
5F241CA22
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA74
5F241CB11
5F241CB28
5F241FF06
(57)【要約】
【課題】複数の活性層が順に積層され、各活性層が同時発光し、各発光の光出力を制御可能な発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子は、フリップチップ型のIII族窒化物半導体からなる発光素子であり、基板と、n層と、所定の発光波長の第1活性層と、n型不純物濃度が1×1018cm-3以下であるIII族窒化物半導体からなる中間層と、第1活性層とは異なる発光波長の第2活性層と、p層と、光を反射させるp電極と、を有する。第2活性層から放射される光は、その干渉はp層の厚さによって制御され、第1活性層から放射される光は、その干渉はp層の厚さと中間層の厚さによって制御され、第1活性層から放射される光と第2活性層から放射される光のうち少なくとも一方は、干渉により増幅するようにp層の厚さおよび中間層の厚さが設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリップチップ型のIII族窒化物半導体からなる発光素子において、
基板と、
前記基板上に設けられ、n型のIII族窒化物半導体からなるn層と、
前記n層上に設けられ、所定の発光波長の第1活性層と、
前記第1活性層上に設けられ、n型不純物濃度が1×1018cm-3以下であるIII族窒化物半導体からなる中間層と、
前記中間層上に設けられ、前記第1活性層とは異なる発光波長の第2活性層と、
前記第2活性層上に設けられ、p型のIII族窒化物半導体からなるp層と、
前記p層上に設けられ、光を反射させるp電極と、
を有し、
前記第2活性層から放射される光は、前記基板側に向かう光と、前記p電極側に向かい前記p電極によって反射された光との間で干渉し、その干渉は前記p層の厚さによって制御され、
前記第1活性層から放射される光は、前記基板側に向かう光と、前記p電極側に向かい前記p電極によって反射された光との間で干渉し、その干渉は前記p層の厚さと前記中間層の厚さによって制御され、
前記第1活性層から放射される光と前記第2活性層から放射される光のうち少なくとも一方は、干渉により増幅するように前記p層の厚さおよび前記中間層の厚さが設定されている、発光素子。
【請求項2】
前記中間層は、Inを含むIII族窒化物半導体からなる、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第2活性層の発光波長は前記第1活性層の発光波長よりも長く、
前記第2活性層は、量子井戸構造であって、発光しないように井戸層の厚さが調整されている歪緩和層と、量子井戸構造であって発光する発光層と、を順に積層させた構造であり、
前記歪緩和層の前記井戸層のバンド端エネルギーに相当する波長が前記発光層の発光波長よりも短くなるように設定されていて、
前記第1活性層から放射される光と前記第2活性層から放射される光のうち少なくとも一方は、干渉により増幅するように前記p層の厚さ、前記中間層の厚さ、および前記歪緩和層の厚さが設定されている、請求項1または請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記中間層は、ノンドープのIII族窒化物半導体からなるノンドープ層と、n型のIII族窒化物半導体からなるn型層が順に積層された構造である、請求項1または請求項2に記載の発光素子。
【請求項5】
フリップチップ型のIII族窒化物半導体からなる発光素子の製造方法において、
前記基板上に、n型のIII族窒化物半導体からなるn層を形成するn層形成工程と、
前記n層上に、所定の発光波長の第1活性層を形成する第1活性層形成工程と、
前記第1活性層上に、n型不純物濃度が1×1018cm-3以下であるIII族窒化物半導体からなる中間層を形成する中間層形成工程と、
前記中間層上に、前記第1活性層とは異なる発光波長の第2活性層を形成する第2活性層形成工程と、
前記第2活性層上に、p型のIII族窒化物半導体からなるp層を形成するp層形成工程と、
前記p層上に、光を反射させるp電極を形成するp電極形成工程と、
を有し、
前記第2活性層から放射される光は、前記基板側に向かう光と、前記p電極側に向かい前記p電極によって反射された光との間で干渉し、その干渉は前記p層の厚さによって制御し、
前記第1活性層から放射される光は、前記基板側に向かう光と、前記p電極側に向かい前記p電極によって反射された光との間で干渉し、その干渉は前記p層の厚さと前記中間層の厚さによって制御し、
前記第1活性層から放射される光と前記第2活性層から放射される光のうち少なくとも一方は、干渉により増幅するように前記p層の厚さおよび前記中間層の厚さを設定する、発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記中間層は、Inを含むIII族窒化物半導体からなる、請求項5に記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記第2活性層の発光波長は前記第1活性層の発光波長よりも長く、
前記第2活性層は、量子井戸構造であって、発光しないように井戸層の厚さが調整されている歪緩和層と、量子井戸構造であって発光する発光層と、を順に積層して形成し、
前記歪緩和層の前記井戸層のバンド端エネルギーに相当する波長が前記発光層の発光波長よりも短くなるように設定し、
前記第1活性層から放射される光と前記第2活性層から放射される光のうち少なくとも一方は、干渉により増幅するように前記p層の厚さ、前記中間層の厚さ、および前記歪緩和層の厚さを設定する、請求項5または請求項6に記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記中間層は、ノンドープのIII族窒化物半導体からなるノンドープ層と、n型のIII族窒化物半導体からなるn型層を順に積層して形成する、請求項5または請求項6に記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白色発光の発光素子として、青、緑、赤の各色を発光する活性層を順に積層させ、各層から同時に発光させることで白色とする構造が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Jpn. J. Phys. 52 08JG02 2013
【非特許文献2】J. Appl. Phys. 112.083101 (2012)
【非特許文献3】AIP Advances 5, 057168 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、そのような発光素子では、各色を同時に発光させ、かつ各発光強度を制御することができなかった。また、青、緑、赤の順で発光効率が低下してしまうため、光出力のバランスを制御することが困難であった。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、複数の活性層が順に積層され、各活性層が同時発光し、各発光の光出力を制御可能な発光素子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
フリップチップ型のIII族窒化物半導体からなる発光素子において、
基板と、
前記基板上に設けられ、n型のIII族窒化物半導体からなるn層と、
前記n層上に設けられ、所定の発光波長の第1活性層と、
前記第1活性層上に設けられ、n型不純物濃度が1×1018cm-3以下であるIII族窒化物半導体からなる中間層と、
前記中間層上に設けられ、前記第1活性層とは異なる発光波長の第2活性層と、
前記第2活性層上に設けられ、p型のIII族窒化物半導体からなるp層と、
前記p層上に設けられ、光を反射させるp電極と、
を有し、
前記第2活性層から放射される光は、前記基板側に向かう光と、前記p電極側に向かい前記p電極によって反射された光との間で干渉し、その干渉は前記p層の厚さによって制御され、
前記第1活性層から放射される光は、前記基板側に向かう光と、前記p電極側に向かい前記p電極によって反射された光との間で干渉し、その干渉は前記p層の厚さと前記中間層の厚さによって制御され、
前記第1活性層から放射される光と前記第2活性層から放射される光のうち少なくとも一方は、干渉により増幅するように前記p層の厚さおよび前記中間層の厚さが設定されている、発光素子にある。
【0007】
本発明の他の態様は、
フリップチップ型のIII族窒化物半導体からなる発光素子の製造方法において、
前記基板上に、n型のIII族窒化物半導体からなるn層を形成するn層形成工程と、
前記n層上に、所定の発光波長の第1活性層を形成する第1活性層形成工程と、
前記第1活性層上に、n型不純物濃度が1×1018cm-3以下であるIII族窒化物半導体からなる中間層を形成する中間層形成工程と、
前記中間層上に、前記第1活性層とは異なる発光波長の第2活性層を形成する第2活性層形成工程と、
前記第2活性層上に、p型のIII族窒化物半導体からなるp層を形成するp層形成工程と、
前記p層上に、光を反射させるp電極を形成するp電極形成工程と、
を有し、
前記第2活性層から放射される光は、前記基板側に向かう光と、前記p電極側に向かい前記p電極によって反射された光との間で干渉し、その干渉は前記p層の厚さによって制御し、
前記第1活性層から放射される光は、前記基板側に向かう光と、前記p電極側に向かい前記p電極によって反射された光との間で干渉し、その干渉は前記p層の厚さと前記中間層の厚さによって制御し、
前記第1活性層から放射される光と前記第2活性層から放射される光のうち少なくとも一方は、干渉により増幅するように前記p層の厚さおよび前記中間層の厚さを設定する、発光素子の製造方法にある。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、第1活性層と第2活性層の間に中間層を設け、中間層のn型不純物濃度を1×1018cm-3以下としているため、第1活性層と第2活性層を同時発光させることができる。また、各発光を光の干渉によって制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1における発光素子の構成を示した図であって、基板に垂直な面での断面図。
図2】実施形態1における発光素子の等価回路を示した図。
図3】実施形態1における発光素子の製造工程を示した図。
図4】実施形態1における発光素子の製造工程を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発光素子は、フリップチップ型のIII族窒化物半導体からなる発光素子である。発光素子は、基板と、前記基板上に設けられ、n型のIII族窒化物半導体からなるn層と、前記n層上に設けられ、所定の発光波長の第1活性層と、前記第1活性層上に設けられ、n型不純物濃度が1×1018cm-3以下であるIII族窒化物半導体からなる中間層と、前記中間層上に設けられ、前記第1活性層とは異なる発光波長の第2活性層と、前記第2活性層上に設けられ、p型のIII族窒化物半導体からなるp層と、前記p層上に設けられ、光を反射させるp電極と、を有する。また、前記第2活性層から放射される光は、前記基板側に向かう光と、前記p電極側に向かい前記p電極によって反射された光との間で干渉し、その干渉は前記p層の厚さによって制御され、前記第1活性層から放射される光は、前記基板側に向かう光と、前記p電極側に向かい前記p電極によって反射された光との間で干渉し、その干渉は前記p層の厚さと前記中間層の厚さによって制御され、前記第1活性層から放射される光と前記第2活性層から放射される光のうち少なくとも一方は、干渉により増幅するように前記p層の厚さおよび前記中間層の厚さが設定されている。
【0011】
上記発光素子において、前記中間層は、Inを含むIII族窒化物半導体からなるものであってもよい。
【0012】
上記発光素子において、前記第2活性層の発光波長は前記第1活性層の発光波長よりも長く、前記第2活性層は、量子井戸構造であって、発光しないように井戸層の厚さが調整されている歪緩和層と、量子井戸構造であって発光する発光層と、を順に積層させた構造であってもよい。また、前記歪緩和層の前記井戸層のバンド端エネルギーに相当する波長が前記発光層の発光波長よりも短くなるように設定されていてもよい。また、前記第1活性層から放射される光と前記第2活性層から放射される光のうち少なくとも一方は、干渉により増幅するように前記p層の厚さ、前記中間層の厚さ、および前記歪緩和層の厚さが設定されていてもよい。
【0013】
上記発光素子において、前記中間層は、ノンドープのIII族窒化物半導体からなるノンドープ層と、n型のIII族窒化物半導体からなるn型層が順に積層された構造であってもよい。
【0014】
発光素子の製造方法は、フリップチップ型のIII族窒化物半導体からなる発光素子の製造方法である。発光素子の製造方法は、前記基板上に、n型のIII族窒化物半導体からなるn層を形成するn層形成工程と、前記n層上に、所定の発光波長の第1活性層を形成する第1活性層形成工程と、前記第1活性層上に、n型不純物濃度が1×1018cm-3以下であるIII族窒化物半導体からなる中間層を形成する中間層形成工程と、前記中間層上に、前記第1活性層とは異なる発光波長の第2活性層を形成する第2活性層形成工程と、前記第2活性層上に、p型のIII族窒化物半導体からなるp層を形成するp層形成工程と、前記p層上に、光を反射させるp電極を形成するp電極形成工程と、を有する。また、前記第2活性層から放射される光は、前記基板側に向かう光と、前記p電極側に向かい前記p電極によって反射された光との間で干渉し、その干渉は前記p層の厚さによって制御し、前記第1活性層から放射される光は、前記基板側に向かう光と、前記p電極側に向かい前記p電極によって反射された光との間で干渉し、その干渉は前記p層の厚さと前記中間層の厚さによって制御し、前記第1活性層から放射される光と前記第2活性層から放射される光のうち少なくとも一方は、干渉により増幅するように前記p層の厚さおよび前記中間層の厚さを設定する。
【0015】
上記発光素子の製造方法において、前記中間層は、Inを含むIII族窒化物半導体からなるものであってもよい。
【0016】
上記発光素子の製造方法において、前記第2活性層の発光波長は前記第1活性層の発光波長よりも長く、前記第2活性層は、量子井戸構造であって、発光しないように井戸層の厚さが調整されている歪緩和層と、量子井戸構造であって発光する発光層と、を順に積層して形成し、前記歪緩和層の前記井戸層のバンド端エネルギーに相当する波長が前記発光層の発光波長よりも短くなるように設定し、前記第1活性層から放射される光と前記第2活性層から放射される光のうち少なくとも一方は、干渉により増幅するように前記p層の厚さ、前記中間層の厚さ、および前記歪緩和層の厚さを設定してもよい。
【0017】
上記発光素子の製造方法において、前記中間層は、ノンドープのIII族窒化物半導体からなるノンドープ層と、n型のIII族窒化物半導体からなるn型層を順に積層して形成してもよい。
【0018】
(実施形態1)
図1は、実施形態1における発光素子の構成を示した図である。実施形態1における発光素子は青、緑、赤を同時に発光してその混色により白色発光するものである。また、実施形態1における発光素子は、基板の裏面側から光を取り出すフリップチップ型であり、図示しない実装基板にフェイスダウンで実装されている。なお、実施形態1は1ピクセルが1チップの構造であるが、モノリシック型であってもよい。つまり、実施形態1の素子構造が同一基板上にマトリクス状に配列されたマイクロLEDディスプレイ素子としてもよい。
【0019】
1.発光素子の構成
実施形態1における発光素子は、図1に示すように、基板10と、n層11と、ESD層12と、下地層13と、第1活性層14と、第1中間層15と、第2活性層16と、第2中間層17と、第3活性層18と、電子ブロック層21と、p層22と、n電極23と、p電極24と、を有している。
【0020】
基板10は、III族窒化物半導体を成長させる成長基板である。たとえば、サファイア、Si、GaN、ScAlMgOなどである。
【0021】
n層11は、低温バッファ層や高温バッファ層(図示しない)を介して基板10上に設けられたn型の半導体である。ただし、バッファ層は必要に応じて設ければよく、基板がGaNである場合などにはバッファ層を設けなくともよい。n層11は、たとえばn-GaN、n-AlGaNなどである。Si濃度は、たとえば1×1018~100×1018cm-3である。
【0022】
ESD層12は、n層11上に設けられた半導体層であり、静電耐圧向上のために設ける層である。ESD層12は必要に応じて設ければよく、省略してよい。ESD層12は、たとえば、ノンドープまたは低濃度にSiがドープされたGaN、InGaN、またはAlGaNである。
【0023】
下地層13は、ESD層12上に設けられた超格子構造の半導体層であり、下地層13上に形成される半導体層の格子歪みを緩和するための層である。下地層13も必要に応じて設ければよく、省略してもよい。下地層13は、組成の異なるIII族窒化物半導体薄膜(たとえばGaN、InGaN、AlGaNのうち2つ)を交互に積層させたものであり、ペア数はたとえば3~30である。ノンドープでもよいし、Siを1×1017~100×1017cm-3程度ドープしてもよい。また、歪を緩和できるのでれば超格子構造である必要はない。第1活性層14とのヘテロ界面で格子定数差が小さくなるような材料であればよく、たとえば、InGaN層、AlInN層、AlGaIn層であってもよい。
【0024】
第1活性層14は、下地層13上に設けられたSQWまたはMQW構造の発光層である。発光波長は青色であり、430~480nmである。第1活性層14はAlGaNからなる障壁層とInGaNからなる井戸層を交互に1~7ペア積層させた構造である。より好ましくは1~5ペア、さらに好ましくは1~3ペアである。
【0025】
第1中間層15は、第1活性層14上に設けられた半導体層であり、第1活性層14と第2活性層16の間に位置している。第1中間層15は、第1活性層14からの発光と第2活性層16からの発光とを個別に制御可能とするために設ける層である。
【0026】
第1中間層15は、第1活性層14側から順にノンドープ層15A、n型層15Bを積層させた構造である。ノンドープ層15A、n型層15Bは不純物を除いて同一材料からなる。2層の第1中間層15のうちn側の層をノンドープとする理由は、第1中間層15の下の第1活性層14におけるキャリアの閉じ込めを改善するためである。
【0027】
第1中間層15の材料は、Inを含むIII族窒化物半導体であり、たとえばInGaNとするのがよい。Inによるサーファクタント効果によって第1中間層15表面の荒れを抑制し、表面平坦性を向上させることができる。また、格子歪みを緩和させることができる。
【0028】
第1中間層15のIn組成(III族窒化物半導体のIII族金属全体に占めるInのモル比)は、第1活性層14および第2活性層16から発光した光を吸収しないバンドギャップとなるように設定されていればよい。好ましいIn組成は、10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。In組成が10%よりも大きいと、第1中間層15の表面が荒れる原因となる。Inは0%よりも大きければ任意であり、ドープレベル(混晶を形成しないレベル)でもよい。たとえばIn濃度が1×1014cm-3以上1×1022cm-3以下のGaNである。
【0029】
ノンドープ層15Aはノンドープであり、n型層15BはSiドープである。n型層15BのSi濃度は、1×1018cm-3以下とする。これにより赤色光、緑色光、青色光を同時発行させることができる。n型層15BはSiを変調ドープしてもよく、n型層15Bの一部領域にノンドープの領域があってもよい。
【0030】
第1中間層15の厚さは、20~150nmとすることが好ましい。150nmよりも厚いと、第1中間層15の表面が荒れる原因となり得る。より好ましくは30~100nm、さらに好ましくは50~80nmである。
【0031】
n型層15Bの厚さは、10nm以上とすることが好ましい。各活性層の発光特性を独立に制御するためである。
【0032】
第2活性層16は、歪緩和層16AとSQWまたはMQWの量子井戸構造層(発光層)16Bを順に積層させた構造である。量子井戸構造層16Bの発光波長は緑色であり、510~570nmである。量子井戸構造層16BはGaNからなる障壁層とInGaNからなる井戸層を交互に1~7ペア積層させた構造である。より好ましくは1~5ペア、さらに好ましくは1~3ペアである。また、第1活性層14のペア数と等しいか少ないことが好ましく、少ないことがより好ましい。
【0033】
歪緩和層16Aは、障壁層と井戸層を順に積層させたSQW構造であり、発光しないように井戸層の厚さを薄く調整した量子井戸構造である。たとえば井戸層の厚さを1nm以下とすることで発光しないようにすることができる。障壁層はAlGaN、井戸層はInGaNである。歪緩和層16Aの井戸層のバンド端エネルギーに相当する波長は、量子井戸構造層16Bの発光波長よりも短ければよく、たとえば発光波長が500~560nmであれば400~460nmである。好ましくは量子井戸構造層16Bの発光波長よりも40~100nm短くする。この場合、歪緩和層16Aの成長温度は、700~800℃である。
【0034】
歪緩和層16Aの井戸層のバンド端エネルギーに相当する波長は、第1活性層14の発光波長と等しくしてもよい。この場合、第1活性層14と同様の成長温度で成長させてもよい。
【0035】
歪緩和層16Aの井戸層におけるバンド端エネルギーの制御は、井戸層の厚さで制御することができる。すなわち、歪緩和層16Aの井戸層の厚さを十分に薄くすることで井戸内のサブバンドのエネルギーが上昇しバンド端エネルギーが大きくなる。これにより、量子井戸構造層16Bの発光波長よりも短くしてもよい。成長温度は任意であるが、量子井戸構造層16Bと同様の成長温度で成長させてもよい。さらに、歪緩和層16Aの井戸層の膜厚を薄くすると、サブバンドがさらに上昇し、障壁層とのエネルギー差が小さくなる。すなわち、障壁層のバンド端エネルギーに近くなる。その結果、歪緩和層16Aの井戸層におけるキャリアの閉じ込めがされ難くなり、発光しにくくなることから、量子井戸構造層16Bの障壁層の一部として機能するとともに、歪緩和の効果も同時に得られる。
【0036】
このように、量子井戸構造層16Bの井戸層よりもキャリア閉じ込めの悪い井戸層を持つ歪緩和層16Aを形成することで、発光しない歪緩和層16Aを形成することができる。
【0037】
要するに、歪緩和層16A全体の実効的な格子定数が、第1中間層15の格子定数と量子井戸構造層16Bの格子定数の間となるように歪緩和層16Aの材料や層構成が設定され、かつ、歪緩和層16Aが発光しないように井戸層の厚さが設定されていればよい。
【0038】
歪緩和層16Aは障壁層と井戸層を2ペア以上積層させたMQW構造としてもよいが、第2活性層16が厚くなるのでSQW構造とすることが好ましい。
【0039】
以上のように歪緩和層16Aを設けることで、その上に積層される量子井戸構造層16Bの歪を緩和させることができ、量子井戸構造層16Bの井戸層の結晶品質を向上させることができる。
【0040】
第2中間層17は、第2活性層16上に設けられた半導体層であり、第2活性層16と第3活性層18の間に位置している。第2中間層17は、第1中間層15と同様の理由により設けられたものであり、第2活性層16からの発光と第3活性層18からの発光とを個別に制御可能とするために設ける層である。
【0041】
第2中間層17は、第2活性層16側から順にノンドープ層17A、n型層17Bを積層させた構造である。ノンドープ層17A、n型層17Bは、ノンドープ層15A、n型層15Bと同様の構造である。つまり、ノンドープ層17A、n型層17Bは不純物を除いてノンドープ層15A、n型層15Bと同一材料であり、厚さの範囲などもノンドープ層15A、n型層15Bと同様である。ノンドープ層17Aはノンドープ、n型層17BはSiドープである。2層の第2中間層17のうちn側の層をノンドープとする理由は、第1中間層15の下の第1活性層14におけるキャリアの閉じ込めを改善するためである。
【0042】
第2中間層17の材料は、第1中間層15と同様である。第1中間層15と第2中間層17を同一材料としてもよい。また、第2中間層17の厚さも第1中間層15と同様であり、第1中間層15と第2中間層17の厚さを同一としてもよい。ただし、第1中間層15よりも薄くし、In組成も第1中間層15より大きくすることが好ましい。緑色発光の第2活性層16は、青色発光の第1活性層14よりも熱ダメージを受けやすく、界面での歪みの影響が大きくなるためである。
【0043】
第3活性層18は、第1歪緩和層18Aと、第2歪緩和層18Bと、SQWまたはMQWの量子井戸構造層18Cを順に積層させた構造である。量子井戸構造層18Cの発光波長は赤色であり、590~700nmである。量子井戸構造層18CはInGaNからなる障壁層とInGaNからなる井戸層を交互に1~7ペア積層させた構造である。より好ましくは1~5ペア、さらに好ましくは1~3ペアである。また、第2活性層16の量子井戸構造層16Cのペア数と等しいか少ないことが好ましく、少ないことがより好ましい。
【0044】
第1歪緩和層18Aは、第2活性層16の歪緩和層16Aと同様の構造である。第1歪緩和層18Aの井戸層のバンド端エネルギーに相当する波長は、量子井戸構造層16Bの発光波長よりも短ければよく、たとえば400~460nmである。
【0045】
第2歪緩和層18Bは、第2歪緩和層18Bの井戸層のバンド端エネルギーに相当する波長が量子井戸構造層18Cの発光波長よりも短く、第1歪緩和層18Aの井戸層のバンド端エネルギーに相当する波長よりも長い。たとえば、510~570nmである。それ以外は第1歪緩和層18Aと同様である。
【0046】
第1歪緩和層18Aの井戸層のバンド端エネルギーに相当する波長と第2歪緩和層18Bの井戸層のバンド端エネルギーに相当する波長の差、および第2歪緩和層18Bの井戸層のバンド端エネルギーに相当する波長と量子井戸構造層18Cの発光波長の差は、40~100nmとすることが好ましい。
【0047】
第3活性層18の厚さに対する第1活性層14の厚さの比や、第3活性層18の厚さに対する第2活性層16の厚さの比は、30%以下となるように設定することが好ましい。より効率的に量子井戸構造層18Cの歪を緩和させることができる。
【0048】
このように第1歪緩和層18A、第2歪緩和層18Bを設けることで、段階的に歪を緩和させることができ、その上に積層される量子井戸構造層18Cの歪を効果的に緩和させることができる。その結果、量子井戸構造層18Cの井戸層の品質を向上させることができる。
【0049】
なお、第3活性層18では第1歪緩和層18A、第2歪緩和層18Bによって2段階に歪を緩和させているが、歪緩和層を3つ以上設けて3段階以上に歪を緩和させてもよい。また、第2活性層16においても、歪緩和層16Aを複数にして段階的に歪を緩和させてもよい。
【0050】
また、第1活性層14においても、同様にして歪緩和層を設けてよい。この場合、歪緩和層の成長温度は、たとえば、800~900℃である。
【0051】
電子ブロック層21は、第3活性層18上に設けられた半導体層であり、n層11から注入された電子を第1活性層14、第2活性層16、第3活性層18に効率よく閉じ込めるためにブロックする層である。電子ブロック層21はGaNやAlGaNの単層でもよいし、AlGaN、GaN、InGaNのうち2以上を積層させた構造や、組成比のみ替えて積層させた構造であってもよい。また、超格子構造としてもよい。電子ブロック層21の厚さは、5~50nmが好ましく、より好ましくは5~25nmである。電子ブロック層21のMg濃度は1×1019~100×1019cm-3とするのがよい。
【0052】
p層22は、電子ブロック層21上にそれぞれ設けられた半導体層であり、電子ブロック層21側から順に第1層、第2層で構成されている。第1層は、p-GaN、p-InGaNが好ましい。第1層の厚さは10~500nmが好ましく、より好ましくは10~200nm、さらに好ましくは10~100nmである。第1層のMg濃度は1×1019~100×1019cm-3とするのがよい。第2層は、p-GaN、p-InGaNが好ましい。第2層の厚さは2~50nmが好ましく、より好ましくは4~20nm、さらに好ましくは6~10nmである。第2層のMg濃度は1×1020~100×1020cm-3とするのがよい。
【0053】
p層22の所定領域には、n層11に達する深さの溝が設けられている。この溝はn電極23を設けるためのものである。
【0054】
n電極23は、溝の底面に露出するn層11上に設けられた電極である。基板10が導電性材料である場合には、溝を設けずに基板10裏面にn電極23を設けてもよい。n電極23の材料は、たとえばTi/Al、V/Alである。
【0055】
p電極24は、p層22上に設けられた電極である。p電極24の材料は、発光波長の光の反射率が高く、p層22に対するコンタクト抵抗の低い材料がよい。たとえばAg、Ni/Au、Co/Au、ITO/Ni/Al、Rh、Ruなどである。第1活性層14、第2活性層16、および第3活性層18から放射される光のうち、p層22側に向かう光はp電極24によって反射され、基板10側へと向かう。
【0056】
2.各層の厚さの設定
第3活性層18から放射される赤色光は、基板10側に放射される光と、p層22側(基板10側とは反対)に放射され、p電極24によって反射された後に基板10側に向かう光が存在し、干渉を生じる。第2活性層16から放射される緑色光、第1活性層14から放射される青色光についても同様である。実施形態1における発光素子では、青色、緑色、赤色の各発光色について、光の干渉によって光出力が制御された素子構造が設定されている。具体的には以下の通りである。
【0057】
まず、厚さa1~a3を定義しておく。厚さa1は、電子ブロック層21、およびp層22Aの総膜厚とする。また、厚さa2は、第2中間層17、第3活性層18、電子ブロック層21、およびp層22の総膜厚とする。また、厚さa3は、第1中間層15、第2活性層16、第2中間層17、第3活性層18、電子ブロック層21、およびp層22の総膜厚とする。
【0058】
実施形態1では、厚さa1~a3の設定により赤色光、緑色光、青色光のそれぞれについて光の干渉による増幅、減衰を制御されており、光出力のバランスが制御されている。そのため、混色によって白色発光させることができる。
【0059】
厚さa1~a3は、第1中間層15、第2中間層17、p層22によって調整可能である。加えて、第2活性層16の歪緩和層16A、第3活性層18の第1歪緩和層18A、第2歪緩和層18Bを調整してもよい。
【0060】
通常、赤色や緑色は青色に比べて発光効率が低いので、赤色と緑色のみ増幅されるようにしてもよい。また、3色のうち赤色が最も発光効率が低いので、赤色のみ増幅されるようにしてもよい。この場合、増幅率はたとえば50~100%であり、好ましくは70~100%、より好ましくは80~100%である。ここで増幅率は、干渉により光出力が最大となるときを100%とし、光出力の最大値と最小値の中間を0%とした値である。
【0061】
また、通常、青色は赤色や緑色に比べて発光効率が高いので、青色のみ減衰されるようにしてもよい。この場合、減衰率はたとえば60~100%であり、好ましくは70~100%、より好ましくは80~100%である。ここで減衰率は、干渉により光出力が最小となるときを100%とし、光出力の最大値と最小値の中間を0%とした値である。
【0062】
また、通常、赤色は緑色に比べて発光効率が低いので、緑色の増幅率を赤色の増幅率よりも低くしてもよい。たとえば、赤色は増幅率60~100%、好ましくは70~100%、より好ましくは80~100%とし、緑色は増幅率0~70%、好ましくは0~50%、より好ましくは0~30%とし、青色は減衰率60~100%、好ましくは70~100%、より好ましくは80~100%としてもよい。
【0063】
厚さa1~a3の設定は、たとえば次のようにする。第1活性層14、第2活性層16、第3活性層18の光学長をそれぞれ、m1×λn1、m2×λn2、m3×λn3と表す。λn1、λn2、λn3は第1活性層14、第2活性層16、第3活性層18の発光波長をそれら活性層の上部の層の平均屈折率で割った値である。このとき、厚さa1~a3が、下記の式を満たすように設定されていれば、各発光は増幅される。
【0064】
(m3-0.1)×λn3<a1<(m3+0.1)×λn3 ・・・(1)
(m2-0.1)×λn2<a2<(m2+0.1)×λn2 ・・・(2)
(m1-0.1)×λn1<a3<(m1+0.1)×λn1 ・・・(3)
式(1)~(3)において、m≒0.2、0.7、1.2、・・・である。ここで≒としているのは、mの値について0.1程度の誤差が許容されるということであり、たとえばm≒0.7は0.6~0.8程度の誤差が許容される。
【0065】
なお、干渉効果によって光出力が減衰するように設定する場合には、式(1)~(3)において、m≒0.5、1.0、1.5、・・・とすればよい。
【0066】
p電極24の反射面に対して、遠い順に、第1活性層14、第2活性層16、第3活性層18となる。そのため、第1活性層14、第2活性層16、第3活性層18の光学長の関係は、必然的に、m1×λn1>m2×λn2>m3×λn3、となる。また、第1活性層14、第2活性層16、第3活性層18の発光色がそれぞれ青、緑、赤なので、λn1<λn2<λn3となる。この発光波長の積層順の場合はm1>m2>m3となる。
【0067】
光の干渉は反射膜の膜厚に依存して増減するため、すべての活性層からの光をなるべく増幅させる場合は、m1=1.7±0.2、m2=1.2±0.2、m3=0.7±0.2の範囲に収めればよい。増幅と減衰を組み合わせる場合は、0.1<m1、m2、m3<2.2の範囲で調整すればよい。
【0068】
実施形態1では、第1活性層14、第2活性層16、第3活性層18の発光波長が青、緑、赤すなわち、λn1<λn2<λn3の場合に限定されるものでは無い。たとえば、λn1>λn2>λn3の場合には、m1≒<m2≒<m3になる。各活性層からの発光波長に応じたm1、m2、m3値を設定し、光干渉による光出力の増減を制御すれば良い。
【0069】
3.発光素子の動作
次に、実施形態1における発光素子の動作について説明する。実施形態1における発光素子では、p電極24とn電極23の間に電圧を印加することで第1活性層14、第2活性層16、第3活性層18から青色、緑色、赤色の光を同時に発光させることができる。そして、光の干渉によって各色の光出力を調整することができるため、混色により白色とすることができる。
【0070】
図2に実施形態1における発光素子の等価回路を示す。図2に示すように、実施形態1における発光素子は、青色、緑色、赤色のLEDが直列接続された構造であり、1素子で白色発光を実現することができる。
【0071】
4.発光素子の製造工程
次に、実施形態1における発光素子の製造工程について、図を参照に説明する。
【0072】
まず、基板10を用意し、水素や窒素、必要に応じてアンモニアを加えて、基板の熱処理を行う。
【0073】
次に、基板10上にバッファ層を形成し、バッファ層上にn層11、ESD層12、下地層13、第1活性層14、第1中間層15、第2活性層16、第2中間層17、第3活性層18、電子ブロック層21、p層22を順に形成する(図3参照)。各層の好ましい成長温度は次の通りである。
【0074】
第1活性層14の成長温度は、700~950℃が好ましい。結晶品質を向上でき、発光効率を高めることができる。第1活性層14は井戸層と障壁層で構成されるが、井戸層と障壁層は同じ温度で形成してもよいし、上記温度範囲内で異なる温度としてもよい。異なる温度とする場合は、井戸層の成長温度を障壁層の成長温度よりも低いことが好ましい。
【0075】
第1中間層15の成長温度は、700~1000℃が好ましい。第1活性層14への熱ダメージを抑制するためである。また、700℃よりも低いと貫通転位に起因したピットや点欠陥が生じやすくなってしまう。より好ましくは800~950℃、さらに好ましくは850~950℃である。
【0076】
第2活性層16の成長温度は、650~950℃が好ましい。結晶品質を向上でき、発光効率を高めることができる。第2活性層16は井戸層と障壁層で構成されるが、井戸層と障壁層は同じ温度で形成してもよいし、上記温度範囲内で異なる温度としてもよい。異なる温度とする場合は、井戸層の成長温度を障壁層の成長温度よりも低くすることが好ましい。また、第2活性層16の成長温度は、第1活性層14の成長温度よりも低いことが好ましい。
【0077】
第2中間層17の成長温度は、第1中間層15の成長温度と同様の範囲が好ましい。ただし、第2中間層17の成長温度は、第1中間層15の成長温度よりも低くすることが好ましい。緑色発光の第2活性層16は、青色発光の第1活性層14よりも熱ダメージを受けやすく、界面での歪みの影響が大きくなるためである。
【0078】
第3活性層18の成長温度は、500~950℃が好ましい。結晶品質を向上でき、発光効率を高めることができる。第3活性層18は井戸層と障壁層で構成されるが、井戸層と障壁層は同じ温度で形成してもよいし、上記温度範囲内で異なる温度としてもよい。異なる温度とする場合は、井戸層の成長温度を障壁層の成長温度よりも低くすることが好ましい。また、第3活性層18の成長温度は、第2活性層16の成長温度よりも低いことが好ましい。
【0079】
電子ブロック層21の成長温度は、750~1000℃が好ましい。第1活性層14、第2活性層16、第3活性層18への熱ダメージを抑制するためである。より好ましくは750~950℃、さらに好ましくは800~900℃である。
【0080】
p層22の成長温度は、650~1000℃が好ましい。より好ましくは700~950℃、さらに好ましくは750~900℃である。
【0081】
ここで、第1中間層15、第2中間層17、電子ブロック層21、およびp層22の厚さは、光の干渉によって赤色光、緑色光、青色光の光出力のバランスを設定する。
【0082】
次に、p層22C表面の一部領域をn層11に達するまでドライエッチングして溝を形成する(図4参照)。そして、露出したn層11上にn電極23を形成し、p層22上にp電極24を形成する。以上によって実施形態1における発光素子が製造される。
【0083】
5.各種変形形態
実施形態1~3における発光素子は、第1活性層14、第2活性層16、第3活性層18の3つの活性層を有するものであったが、発光波長が互いに異なる2以上の活性層を有する構造であれば本発明は適用できる。また、発光色も青、緑、赤に限らず、異なる発光波長であれば任意である。たとえば、青と黄色の2つの活性層を有するもの、青、緑、赤に加えて紫や黄色を加えた4つの活性層を有するものであってもよい。また、互いに異なる2以上の活性層の積層順も、基板側が短波長、p層側が長波長の順である必要はなく、逆の順でもよいし、ランダムでもよい。
【符号の説明】
【0084】
10:基板 11:n層 12:ESD層 13:下地層 14:第1活性層 15:第1中間層 16:第2活性層 17:第2中間層 18:第3活性層 21:電子ブロック層 22:p層 23:n電極 24:p電極 15A、17A:ノンドープ層 15B、17B:n型層 16A:歪緩和層 16B、18C、18C:量子井戸構造層 18A:第1歪緩和層 18B:第2歪緩和層
図1
図2
図3
図4