(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131325
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G03G 21/14 20060101AFI20240920BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240920BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240920BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G03G21/14
G03G15/00 303
G03G15/16
G03G15/20 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041525
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】青山 隼也
【テーマコード(参考)】
2H033
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB29
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2H033BB38
2H033BE00
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2H200GB23
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2H200PB25
2H270LB01
2H270LB08
2H270LC04
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2H270LC07
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2H270LD14
2H270MB03
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2H270MB07
2H270MB25
2H270MB28
2H270MB30
2H270MB32
2H270MB41
2H270MB43
2H270MB55
2H270MC39
2H270MC44
2H270MD10
2H270MD12
2H270MH09
2H270ZC03
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】 電子写真方式により用紙などの画像記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、より低コストかつ安価な構成によって、当該画像記録媒体の後端のトナー汚れを防止する。
【解決手段】 本開示に係る画像形成装置(10)によれば、画像形成処理に供される画像データに基づいて、印字率Rxが導出される。そして、感光体ドラム28の表面速度である転写速度Vtと、加圧ローラ388の表面速度である定着速度Vfと、の差である速度差ΔVが、印字率Rxに応じた大きさとなるように、感光体ドラム用モータ(282)および定着用モータ(390)が制御される。これにより、印字率Rxに拘らず、転写ニップ部Ntから定着ニップ部Nfまでの区間における用紙のたわみが一定となり、当該用紙の後端のトナー汚れが防止される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられ、表面にトナー像が形成される像担持体、
前記像担持体を回転駆動する第1駆動源、
自身の表面を前記像担持体の表面に当接させた状態で回転可能に設けられる転写部材を有し、当該転写部材の表面と当該像担持体の表面との当接部である転写ニップ部においてシート状の画像記録媒体を挟持して搬送することにより前記トナー像を当該画像記録媒体に転写させる転写手段、
所定温度に加熱されるとともに回転可能に設けられる定着部材と、自身の表面を当該定着部材の表面に当接させた状態で回転可能に設けられる加圧部材と、を有し、当該定着部材の表面と当該加圧部材の表面との当接部である定着ニップ部において前記画像記録媒体を挟持して搬送することにより前記トナー像を当該画像記録媒体に定着させる定着手段、
前記定着部材または前記加圧部材を回転駆動する第2駆動源、
前記像担持体への前記トナー像の形成処理に供される画像データに基づいて当該トナー像による印字率を導出する印字率導出手段、および、
前記像担持体または前記転写部材の表面速度である転写速度と、前記定着部材または前記加圧部材の表面速度である定着速度と、に差を付与するとともに、当該転写速度と当該定着速度との差である速度差が前記印字率導出手段によって導出された前記印字率に応じた大きさとなるように、前記第1駆動源と前記第2駆動源とを制御する制御手段を備える、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記定着速度が前記転写速度よりも低い状態となる前記速度差を付与するとともに、前記印字率が低いほど当該速度差が小さくなるように、前記第1駆動源と前記第2駆動源とを制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記転写速度を一定とした状態で、前記定着速度が前記印字率に応じた速度となるように、前記第1駆動源と前記第2駆動源とを制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像記録媒体の搬送方向における当該画像記録媒体の長さ寸法を表す長さ情報と、当該画像記録媒体の厚さ寸法を表す厚さ情報と、が記憶される記憶手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記長さ情報に基づく前記長さ寸法と前記厚さ情報に基づく前記厚さ寸法との一方または両方が所定の制御実行条件に適合する場合に、前記速度差が前記印字率に応じた大きさとなるように、前記第1駆動源と前記第2駆動源とを制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像記録媒体の搬送方向における前記定着ニップ部よりも上流側において当該画像記録媒体の当該搬送方向における下流側端部が通過したことを検知する検知手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記検知手段による検知結果に基づいて予測される前記画像記録媒体の前記搬送方向における下流側端部が前記定着ニップ部を通過した時点から所定時間が経過した時点で前記速度差を小さくするように、前記第1駆動源と前記第2駆動源とを制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記定着手段は、
前記定着部材としての無端帯状の定着ベルト、
前記定着ベルトを前記所定温度に加熱する加熱手段、
前記定着ベルトの内側における前記加圧部材と対向する位置に設けられ、当該加圧部材の表面との間で当該定着ベルトを挟持することにより、当該定着ベルトの外側面と当該加圧部材の表面との間に前記定着ニップ部を形成する対向部材、および、
前記加圧部材としての加圧ローラを有する、請求項1から5までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像形成装置の制御方法であって、
前記画像形成装置は、
回転可能に設けられ、表面にトナー像が形成される像担持体、
前記像担持体を回転駆動する第1駆動源 、
自身の表面を前記像担持体の表面に当接させた状態で回転可能に設けられる転写部材を有し、当該転写部材の表面と当該像担持体の表面との当接部である転写ニップ部においてシート状の画像記録媒体を挟持して搬送することにより前記トナー像を当該画像記録媒体に転写させる転写手段、
所定温度に加熱されるとともに回転可能に設けられる定着部材と、自身の表面を当該定着部材の表面に当接させた状態で回転可能に設けられる加圧部材と、を有し、当該定着部材の表面と当該加圧部材の表面との当接部である定着ニップ部において前記画像記録媒体を挟持して搬送することにより前記トナー像を当該画像記録媒体に定着させる定着手段、および、
前記定着部材または前記加圧部材を回転駆動する第2駆動源を備え、その上で、
前記像担持体への前記トナー像の形成処理に供される画像データに基づいて当該トナー像による印字率を導出する印字率導出ステップ、および、
前記像担持体または前記転写部材の表面速度である転写速度と、前記定着部材または前記加圧部材の表面速度である定着速度と、に差を付与するとともに、当該転写速度と当該定着速度との差である速度差が前記印字率導出ステップによって導出された前記印字率に応じた大きさとなるように、前記第1駆動源と前記第2駆動源とを制御する制御ステップを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置および画像形成装置の制御方法に関し、特に、電子写真方式によりシート状の画像記録媒体に画像を形成する、画像形成装置および画像形成装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置においては、像担持体の表面に形成されたトナー像が転写手段により画像記録媒体に転写される。転写手段は、自身の表面を像担持体の表面に当接させた状態で回転可能に設けられる転写部材を有し、当該転写部材の表面と像担持体の表面との当接部である転写ニップ部において、画像記録媒体を挟持して搬送することにより、像担持体上のトナー像を画像記録媒体に転写させる。画像記録媒体に転写されたトナー像は、定着手段により当該画像記録媒体に定着(熱定着)される。定着手段は、所定温度に加熱されるとともに回転可能に設けられる定着部材と、自身の表面を定着部材の表面に当接させた状態で回転可能に設けられる加圧部材と、を有し、これら定着部材の表面と加圧部材の表面との当接部である定着ニップ部において、画像記録媒体を挟持して搬送することにより、画像記録媒体上のトナー像を当該画像記録媒体に定着させる。
【0003】
ここで一般に、像担持体または転写部材の表面速度(換言すれば転写ニップ部における画像記録媒体の理想的な搬送速度)である転写速度は、一定とされる。これに対して、定着部材または加圧部材の表面速度(換言すれば定着ニップ部における画像記録媒体の理想的な搬送速度)である定着速度は、転写速度よりも僅かに低めに設定される。このように設定されることで、転写ニップ部から定着ニップ部までの区間において、この区間を搬送される画像記録媒体に適当なたわみ(たるみ)が与えられる。これにより、転写ニップ部における画像記録媒体の定着ニップ部側への引っ張りが防止され、当該転写ニップ部におけるトナー像の転写が適切に行われる。また、トナー像が転写された後の画像記録媒体の先端が定着ニップ部に突入する際に、当該画像記録媒体に適当なたわみが与えられることで、とりわけ当該画像記録媒体が加圧部材側へたわむことで、当該画像記録媒体が定着ニップ部よりも手前で定着部材に接触することによる画像不良が防止される。
【0004】
ただし、画像記録媒体が過度にたわむと、画像記録媒体の後端が転写ニップ部を通過した後に、当該画像記録媒体の後端が像担持体または転写部材に接触して、像担持体または転写部材の表面に付着した残留トナーを擦りながら搬送され、その結果、当該画像記録媒体の後端が残留トナーにより汚れる、という不都合が生ずる。この不都合を回避するための技術の一例が、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された技術によれば、画像記録媒体のたるみ度合がたるみ検出部により検出される。そして、画像記録媒体の後端が転写ニップ部を通過する際のたるみ度合が、当該画像記録媒体の後端が転写ニップ部を通過する前のたるみ度合よりも抑制されるように、たとえば定着速度が制御される。これにより、画像記録媒体の後端のトナー汚れが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、たるみ検出部というセンサが設けられることで、その分、装置全体が高コスト化するとともに、その構成が複雑化する。
【0007】
そこで、本開示は、より低コストかつ簡素な構成によって、画像記録媒体の後端のトナー汚れを防止することができる、新規な画像形成装置および画像形成装置の制御方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本開示は、画像形成装置に係る第1の開示、および、画像形成装置の制御方法に係る第2の開示を含む。
【0009】
このうちの画像形成装置に係る第1の開示は、像担持体、第1駆動源、転写手段、定着手段、第2駆動源、印字率導出手段および制御手段を備える。像担持体は、回転可能に設けられ、この像担持体の表面には、トナー像が形成される。そして、第1駆動源は、像担持体を回転駆動する。転写手段は、転写部材を有する。転写部材は、自身の表面を像担持体の表面に当接させた状態で、回転可能に設けられる。そして、転写手段は、像担持体の表面と転写部材の表面との当接部である転写ニップ部において、シート状の画像記録媒体を挟持して搬送することにより、像担持体上のトナー像を画像記録媒体に転写させる。定着手段は、定着部材および加圧部材を有する。定着部材は、所定温度に加熱されるとともに、回転可能に設けられる。加圧部材は、自身の表面を定着部材の表面に当接させた状態で、回転可能に設けられる。そして、定着手段は、定着部材の表面と加圧部材の表面との当接部である定着ニップ部において、画像記録媒体を挟持して搬送することにより、画像記録媒体上のトナー像を当該画像記録媒体に定着させる。第2駆動源は、定着部材または加圧部材を回転駆動する。さらに、印字率導出手段は、像担持体へのトナー像の形成処理に供される画像データに基づいて、当該トナー像による印字率(画像記録媒体上の印刷可能領域に対するトナー像の占有領域の比率)を導出する。そして、制御手段は、像担持体または転写部材の表面速度である転写速度と、定着部材または加圧部材の表面速度である定着速度と、に差を付与するとともに、当該転写速度と定着速度との差である速度差(換言すれば転写速度と定着速度との相対比である速度比)が印字率導出手段によって導出された印字率に応じた大きさとなるように、第1駆動源と第2駆動源とを制御する。
【0010】
具体的には、制御手段は、定着速度が転写速度よりも低い状態となるように、これら定着速度と転写速度との差である速度差を付与する。併せて、制御手段は、印字率が低いほど速度差が小さくなるように、第1駆動源と第2駆動源とを制御する。
【0011】
また、制御手段は、転写速度を一定とした状態で、定着速度が印字率に応じた速度となるように、第1駆動源と第2駆動源とを制御する。
【0012】
本第1の開示においては、さらに、記憶手段が、備えられてもよい。この記憶手段には、画像記録媒体の搬送方向における当該画像記録媒体の長さ寸法を表す長さ情報と、当該画像記録媒体の厚さ寸法(厚み)を表す厚さ情報と、が記憶される。そして、制御手段は、長さ情報に基づく画像記録媒体の長さ寸法と、厚さ情報に基づく画像記録媒体の厚さ寸法と、の一方または両方が所定の制御実行条件に適合する場合に、前述の速度差が印字率に応じた大きさとなるように、第1駆動源と第2駆動源とを制御してもよい。
【0013】
加えて、本第1の開示においては、検知手段が、さらに備えられてもよい。この検知手段は、画像記録媒体の搬送方向における定着ニップ部よりも上流側において、当該画像記録媒体の搬送方向における下流側端部が、つまり先端が、通過したことを検知する。そして、制御手段は、画像記録媒体の先端が定着ニップ部を通過した時点から所定時間が経過した時点で、前述の速度差をさらに小さくするように、第1駆動源と第2駆動源とを制御してもよい。ここで言う所定時間とは、画像記録媒体の先端が定着ニップ部を通過した時点から当該画像記録媒体の先端よりも後端側の所定位置が定着ニップ部を通過する時点までの時間に相当する。また、画像記録媒体の先端が定着ニップ部を通過した時点は、検知手段による検知結果に基づいて予測される。
【0014】
なお、定着手段は、パッド方式のものであってもよい。パッド方式の定着手段は、定着部材としての無端帯状の定着ベルト、当該定着ベルトを所定温度に加熱する加熱手段、パッドとしての対向部材、および、加圧部材としての加圧ローラを有する。特に、対向部材は、定着ベルトの内側における加圧部材と対向する位置に設けられる。そして、対向部材は、加圧部材としての加圧ローラの表面との間で定着ベルトを挟持することにより、当該定着ベルトの外側面と加圧ローラの表面との間に定着ニップ部を形成する。
【0015】
本開示のうちの画像形成装置の制御方法に係る第2の開示は、印字率導出ステップおよび制御ステップを含む。ここで、画像形成装置は、像担持体、第1駆動源、転写手段、定着手段および第2駆動源を備える。像担持体は、回転可能に設けられ、この像担持体の表面には、トナー像が形成される。そして、第1駆動源は、像担持体を回転駆動する。転写手段は、転写部材を有する。転写部材は、自身の表面を像担持体の表面に当接させた状態で、回転可能に設けられる。そして、転写手段は、像担持体の表面と転写部材の表面との当接部である転写ニップ部において、シート状の画像記録媒体を挟持して搬送することにより、像担持体上のトナー像を画像記録媒体に転写させる。定着手段は、定着部材および加圧部材を有する。定着部材は、所定温度に加熱されるとともに、回転可能に設けられる。加圧部材は、自身の表面を定着部材の表面に当接させた状態で、回転可能に設けられる。そして、定着手段は、定着部材の表面と加圧部材の表面との当接部である定着ニップ部において、画像記録媒体を挟持して搬送することにより、画像記録媒体上のトナー像を当該画像記録媒体に定着させる。第2駆動源は、定着部材または加圧部材を回転駆動する。その上で、印字率導出ステップでは、像担持体へのトナー像の形成処理に供される画像データに基づいて、当該トナー像による印字率を導出する。そして、制御ステップでは、像担持体または転写部材の表面速度である転写速度と、定着部材または加圧部材の表面速度である定着速度と、に差を付与するとともに、当該転写速度と定着速度との差である速度差が印字率導出ステップによって導出された印字率に応じた大きさとなるように、第1駆動源と第2駆動源とを制御する。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、より低コストかつ簡素な構成によって、画像記録媒体の後端のトナー汚れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施例に係る画像形成装置の内部の構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施例における定着装置の一部分を拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施例における転写ニップ部から定着ニップ部までの区間での用紙の搬送状態の一例を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施例における転写ニップ部から定着ニップ部までの区間での用紙の搬送状態の別の例を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施例における印字率Rxと補正係数βとの関係を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施例における補正係数テーブルの構成を概念的に示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施例に係る画像形成装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第1実施例における印刷制御タスクの流れを示すフロー図である。
【
図9】
図9は、本開示の第2実施例における印刷制御タスクの一部分の流れを示すフロー図である。
【
図10】
図10は、第2実施例における印刷制御タスクの残りの部分の流れを示すフロー図である。
【
図11】
図11は、本開示の第3実施例における印刷制御タスクの一部分の流れを示すフロー図である。
【
図12】
図12は、パッド式の定着装置とローラ式の定着装置との違いを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施例]
本開示の第1実施例について、
図1に示されるモノクロの画像形成装置10を例に挙げて説明する。
【0019】
本第1実施例に係る画像形成装置10は、コピー機能、プリンタ機能、イメージスキャナ機能、ファクス機能などの複数の機能を有する、いわゆる複合機(MFP)である。なお、
図1は、使用可能な状態に設置された画像形成装置10の内部の構成を当該画像形成装置10の前方側から見た図である。すなわち、
図1における上下方向は、画像形成装置10の上下方向に対応する。そして、
図1における左右方向は、画像形成装置10の左右方向に対応する。さらに、
図1の紙面の手前側は、画像形成装置10の前方に対応する。そして、
図1の紙面の奥側は、画像形成装置10の後方に対応する。
【0020】
この画像形成装置10の上部には、画像読取手段としての画像読取部12が設けられる。画像読取部12は、不図示の原稿の画像を読み取って、当該原稿の画像に応じた2次元の読取画像データを出力する、画像読取処理を担う。このため、画像読取部12は、原稿が載置される原稿台14を有する。原稿台14は、概略矩形平板状のガラスなどの透明部材により形成され、その両主面を水平方向に沿わせるように設けられる。そして、原稿台14の下方に、画像読取ユニット16が設けられる。詳しい説明は省略するが、画像読取ユニット16は、光源、ミラー、レンズ、ラインセンサなどを有し、原稿台14の上面に画像形成装置10の前後方向に沿って延伸する直線状の画像読取位置Prを形成する。併せて、原稿台14の下方には、画像読取ユニット16の画像読取位置Prを画像形成装置10の左右方向に沿って移動(走査)させるための不図示の駆動機構が設けられる。すなわち、原稿台14に原稿が載置された状態で、画像読取ユニット16の画像読取位置Prが駆動機構により移動されることで、当該原稿の画像が読み取られ、いわゆる固定読み方式により読み取られる。なお、画像形成装置10の前後方向は、主走査方向と呼ばれる。そして、画像形成装置10の左右方向は、副走査方向と呼ばれる。
【0021】
また、原稿台14の上方には、当該原稿台14に載置された原稿を押さえるための原稿押さえカバーを兼ねる自動原稿送り装置(ADF)18が設けられる。自動原稿送り装置18は、原稿台14の上面を外部に露出させる状態と、当該原稿台14の上面を覆う状態と、に遷移可能に設けられる。このため、自動原稿送り装置18は、不図示のヒンジなどの適当な可動支持部材を介して画像形成装置10の本体(筐体)に結合される。なお、
図1は、自動原稿送り装置18が原稿台14の上面を覆った状態を示す。また、自動原稿送り装置18は、
図1に示される如く原稿台14の上面を覆った状態にあるときに、次に説明する如くそれ本来の機能を発揮する。
【0022】
すなわち、自動原稿送り装置18は、原稿載置トレイ20を有する。この原稿載置トレイ20には、原稿が、厳密にはシート状の原稿が、載置可能であり、とりわけ複数枚の原稿が積層状に載置可能である。詳しい説明は省略するが、自動原稿送り装置18は、原稿載置トレイ20に載置された原稿を1枚単位で(1枚ずつ)取り込み、当該自動原稿送り装置18内の原稿搬送路22に沿って搬送させる。その途中で、原稿は、画像読取位置Prを通過し、厳密には固定された状態にある画像読取位置Prを通過する。これにより、原稿の画像が読み取られ、いわゆる流し読み方式で読み取られる。その後、原稿は、原稿排出トレイ24に排出される。
【0023】
画像読取部12の下方には、画像形成手段としての画像形成部26が設けられる。この画像形成部26は、不図示のシート状の画像記録媒体、たとえば用紙に、前述の読取画像データなどの適宜の画像データに基づく画像を形成する画像形成処理を担い、つまり印刷を担う。この印刷は、公知の電子写真方式により行われる。
【0024】
具体的には、画像形成部26は、像担持体としての感光体ドラム28、帯電手段としての帯電装置30、露光手段としての露光装置32、現像手段としての現像装置34、転写手段としての転写装置36、定着手段としての定着装置38、クリーニング手段としてのクリーニング装置40、除電手段としての不図示の除電装置、トナー補給手段としてのトナー補給装置42などを有する。
【0025】
感光体ドラム28は、アルミニウムなどの導電性材料により形成された円筒状の導電性部材である基体を有する。この基体は、画像形成装置10の不図示のフレームに接続され、つまり接地される。また、基体の表面(外周面)には、感光層が形成される。感光層は、光が照射された部分については、導電性を示し、光が照射されていない部分については、絶縁性を示す。この感光体ドラム28は、第1駆動源としての後述する感光体ドラム用モータ282(
図7参照)からの駆動力を受けて回転し、たとえば
図1において反時計回りに回転する。
【0026】
帯電装置30は、感光体ドラム28の表面に静電気を与えて、当該感光体ドラム28の表面を所定の電位に、たとえば接地電位を基準とするマイナスの電位に、帯電させる。このようにして帯電された感光体ドラム28の表面に対して、露光装置32による露光が行われる。露光装置32は、たとえばレーザスキャニングユニット(LSU)であり、印刷に供される画像データに基づくパターンでレーザ光を感光体ドラム28の表面に照射し、詳しくは感光体ドラム28の回転方向における帯電装置30による帯電位置よりも下流側の位置に照射する。これにより、印刷に供される画像データに基づく静電潜像が感光体ドラム28の表面に形成される。なお、露光装置32は、レーザスキャニングユニットに限らず、たとえば光源としてLEDが並べられたLEDアレイを有するLEDユニットであってもよい。
【0027】
このようにして静電潜像が形成された感光体ドラム28の表面に対して、現像装置34による現像が行われる。すなわち、現像装置34は、感光体ドラム28の表面電位と同極性に帯電された、つまり接地電位を基準とするマイナスの電位に帯電された、不図示のトナーを、感光体ドラム28の表面に形成された静電潜像に付着させることで、当該静電潜像をトナー像に顕像化する。このため、詳しい説明は省略するが、現像装置34は、当該現像装置34内のトナーを含む現像剤を撹拌しながら搬送することで当該現像剤を帯電させる搬送スクリュと、帯電された現像剤を感光体ドラム28の表面近傍に搬送する現像ローラと、を有する。なお、現像剤は、トナーの他にキャリアを含む2成分系の現像剤であるが、トナーのみから成る1成分系の現像剤であってもよい。
【0028】
この現像装置34による現像により感光体ドラム28の表面に形成されたトナー像は、感光体ドラム28の回転方向における現像装置34による現像位置よりも下流側の位置において、転写装置36により用紙へ転写される。転写装置36は、転写部材としての転写ローラ362を有する。転写ローラ362は、自身の表面
が感光体ドラム28の表面に当接するように設けられ、当該感光体ドラム28の回転駆動力を受けて従動回転し、つまり
図1において時計回りに回転する。併せて、転写ローラ362には、不図示の直流の定電流源である転写バイアス電源から、接地電位を基準とするプラスの直流電流である転写電流が供給される。これにより、感光体ドラム28の表面と転写ローラ362の表面との当接部である転写ニップ部Ntに、当該感光体ドラム28の表面のトナー像を転写ローラ362側へ引き寄せるための転写電界が形成される。この転写ニップ部Ntを後述する如く用紙が通過することで、感光体ドラム28の表面のトナー像が当該用紙へ転写される。
【0029】
このようにしてトナー像が転写された後の感光体ドラム28の表面は、当該感光体ドラム28の回転方向における転写装置36による転写位置よりも下流側において、クリーニング装置40によりクリーニングされる。詳しい説明は省略するが、クリーニング装置40は、感光体ドラム28の表面に残っているトナー(残留トナー)を除去するクリーニングブレードと、このクリーニングブレードにより除去されたトナーを不図示の廃トナーボックスへ搬送する搬送部材と、を有する。
【0030】
このクリーニング装置40によるクリーニング後の感光体ドラム28の表面は、感光体ドラム28の回転方向における当該クリーニング装置40によるクリーニング位置よりも下流側の位置において、不図示の除電装置により除電される。除電装置は、感光体ドラム28の表面に光を照射することで、当該感光体ドラム28の表面を除電し、つまり当該感光体ドラム28の表面の潜像電位を消去する。
【0031】
これ以降、同じ要領で、帯電装置30による帯電、露光装置32による露光、現像装置34による現像、転写装置36による転写、クリーニング装置40によるクリーニング、および、除電装置による除電、という各処理が繰り返される。
【0032】
また、現像装置34による現像が行われることによって、当該現像装置34内のトナーが消費される。このトナーの消費分を補うために、トナー補給装置42により現像装置34へトナーが補給される。これに際して、印刷に供される画像データに基づいて、厳密には当該画像データに含まれるピクセルデータに基づいて、印字率(用紙上の印刷可能領域に対するトナー像の占有領域の比率)Rxが導出される。そして、印字率Rxに基づいて、トナーの消費量が推定され、換言すればトナーの必要補給量が算出される。この必要補給量分のトナーが、トナー補給装置42により現像装置34へ補給される。なお、印字率Rxは、たとえば1%単位(刻み)で求められるが、これに限らない。
【0033】
さらに、画像形成装置10内には、後述する給紙部44から転写ニップ部Ntを介して後述する排紙トレイ46への排紙口48に至る用紙搬送路50が設けられる。そして、用紙搬送路50の適宜の位置には、給紙部44から排紙口48へ向けて用紙を搬送させるための複数の搬送ローラ(厳密にはローラ対)52,52,…が設けられる。すなわち、後述する如く給紙部44から用紙搬送路50へ供給された用紙は、各搬送ローラ52,52,…により順次挟持搬送されることで、排紙口48に向けて搬送され、当該排紙口48を介して排紙トレイ46へ排出される。その途中で、用紙は、転写ニップ部Ntにおいて挟持搬送され、つまり当該転写ニップ部Ntを通過し、その際、前述の如く感光体ドラム28の表面のトナー像が用紙へ転写される。また、転写ニップ部Ntを通過した用紙は、つまりトナー像が転写された用紙は、後述する定着ニップ部Nfを通過する。
【0034】
なお、各搬送ローラ52,52,…のうち、用紙搬送路50における用紙の搬送方向の転写ニップ部Ntよりも上流側であって、当該転写ニップ部Ntに最も近い位置に設けられる搬送ローラ52は、用紙を転写ニップ部Ntに突入させるタイミングを計るためのレジストローラ52aである。また、各搬送ローラ52,52,…のうち、用紙搬送路50における用紙の搬送方向の最下流側に設けられた、つまり排紙口48の近傍に設けられた、搬送ローラ52は、当該排紙口48を介して排紙トレイ46へ用紙を排出するための排紙ローラ52bである。
【0035】
加えて、用紙搬送路50における転写ニップ部Ntと排紙口48との間の位置に、換言すれば当該用紙搬送路50における用紙の搬送方向の転写ニップ部Ntよりも下流側の位置に、定着装置38が設けられる。この定着装置38は、たとえばパッド方式のものである。
【0036】
図2を併せて参照して、定着装置38は、定着部材としての定着ベルト382、加熱手段としての熱源384、対向部材としての定着パッド386、および、加圧部材としての加圧ローラ388を有する。定着ベルト382は、概略円筒状に形成された無端帯状体であり、たとえばポリイミドなどの合成樹脂製またはニッケルなどの金属製の基材の表面にテフロン(登録商標)などの離型層が設けられたものである。この定着ベルト382は、その(概略円筒状の)軸線回りに回動可能に設けられ、詳しくはそうなるように不図示の適当な枠体(ガイド)により支持される。なお、定着ベルト382の内径は、たとえば約30mmである。
【0037】
熱源384は、定着ベルト382の内側において、当該定着ベルト382の軸線方向に沿って延伸するように設けられ、当該定着ベルト382を所定の定着温度に加熱する。なお、熱源384としては、たとえばハロゲンランプなどのランプヒータが用いられる。
【0038】
定着パッド386は、少し厚みのある概略長尺(直線定規)状の部材であり、概略平面状の平面部386aを有する。そして、定着パッド386は、定着ベルト382の内側における加圧ローラ388と対向する位置に設けられ、加圧ローラ388の表面との間で定着ベルト382を挟持することにより、当該定着ベルト382の外側面と加圧ローラ388の表面との間に定着ニップ部Nfを形成する。併せて、定着パッド386は、定着ベルト382の軸線方向に沿って延伸し、その平面部386aが定着ベルト382の内側面と摺接するように、不図示の固定部材により固定的に設けられる。なお、定着パッド386は、金属やポリイミドなどの耐熱性を有する樹脂により形成される。また、定着パッド386の平面部386aには、定着ベルト382との間での摩擦力を低減するための摺動オイルが塗布され、あるいは、不図示の摺接シートが設けられる。この平面部386aの幅寸法(定着パッド386の延伸方向に対して直交する方向の寸法)、言わばパッド幅Lpは、たとえば約15mmであり、後述する定着ニップ部Nfの幅寸法(パッド幅Lpと同じ方向における寸法)である定着ニップ幅Lfより長い。
【0039】
加圧ローラ388は、定着パッド386の平面部386aとの間で定着ベルト382を挟んで当該定着ベルト382を押圧することにより、当該定着ベルト382の外側面との間に定着ニップ部Nfを形成する。併せて、加圧ローラ388は、第2駆動源としての後述する定着用モータ390(
図7参照)からの駆動力を受けて回転し、たとえば
図1および
図2において時計回りに回転する。これに伴い、定着ベルト382が回転し、つまり
図1および
図2において反時計回りに従動回転する。なお、詳しい図示は省略するが、加圧ローラ388は、円筒状の芯材と、この芯材の外周面を覆うように設けられた弾性層と、この弾性層の外周面を覆うように設けられた離型層と、を有する。芯材は、たとえばアルミニウムなどの金属製であり、弾性層は、シリコンゴムなどの弾性素材により形成される。そして、離型層は、フッ素系樹脂などの摩擦係数が比較的に低い素材により形成される。また前述したように、定着ニップ部Nfの幅寸法である定着ニップ幅Lfは、パッド幅Lpよりも小さく、たとえば5mm~10mm程度である。さらに、加圧ローラ388ではなく、定着ベルト382が、また定着用モータ390からの駆動力を受けて回転する構成とされてもよい。
【0040】
すなわち、前述の如く転写ニップ部Ntを通過した用紙は、つまりトナー像が転写された用紙は、定着装置38の定着ニップ部Nfを通過し、詳しくは当該定着ニップ部Nfにより挟持搬送される。これにより、用紙上のトナー像が当該用紙上に定着される。これをもって、画像形成部26による一連の画像形成処理が終了する。
【0041】
なお、パッド方式の定着装置38によれば、たとえば定着ローラと加圧ローラとにより定着ニップ部を形成するローラ方式の定着装置に比べて、定着ニップ幅Lfが大きいので(ローラ方式の定着装置における定着ニップ幅Lfは2mm程度である)、定着ベルト382の熱をトナーに伝える時間が長くなり、その分、より低い温度でトナー像を溶融することができる。すなわち、パッド方式の定着装置38によれば、ローラ方式の定着装置に比べて、より低い温度で定着可能であり、しかも、トナーを昇温させる時間の短縮化が可能であり、さらに、放熱量が抑制されるとともに、熱容量が小さいので、省エネルギ性に優れる。
【0042】
この定着装置37による定着を含む一連の画像形成処理が施された後の用紙(印刷物)は、排紙口48を介して排紙トレイ46に排出される。なお、排紙トレイ46は、画像形成部26と画像読取部12との間に設けられ、いわゆる画像形成装置10の胴内空間に設けられる。これに代えて、排紙トレイ46は、画像形成装置10の外側に設けられてもよい。
【0043】
さらに、画像形成装置10内の下部に、給紙手段としての給紙部44が設けられる。給紙部44は、給紙カセット44aを有し、当該給紙カセット44aには、複数枚の用紙が積層状に収容可能である。併せて、給紙部44は、ピックアップローラ44bおよび給紙ローラ(厳密にはローラ対)44cを有する。そして、給紙部44は、給紙カセット44aに収容された用紙をピックアップローラ44bにより1枚単位で取り出し、取り出された用紙を給紙ローラ44cにより用紙搬送路50へ供給する。
【0044】
また、画像形成装置10内には、両面印刷用の搬送路54が設けられる。この両面印刷用の搬送路54は、一旦、定着ニップ部Nfを通過した用紙を、つまり印刷後の用紙を、取り込んで、改めて当該用紙を印刷に供するための搬送路である。すなわち、両面印刷用の搬送路54に取り込まれた用紙は、改めて用紙搬送路50へ供給され、詳しくはレジストローラ52aの上流側へ供給される。その際、用紙の表裏が反転される。これにより、用紙の裏面への印刷が行われ、つまり両面印刷が実現される。なお、両面印刷用の搬送路54の適宜の位置にも当該両面印刷用の搬送路54に沿って用紙を搬送させるための複数の搬送ローラ(厳密にはローラ対)56,56,…が設けられる。
【0045】
さて、転写ニップ部Ntから定着ニップ部Nfまでの区間における用紙の搬送状態に注目すると、
図3に太実線100で示されるように、当該用紙に適当なたわみが与えられる。そのために、感光体ドラム28(または転写ローラ362)の表面速度である転写速度Vtが一定とされ、加圧ローラ388(または定着ベルト382)の表面速度である定着速度Vfが転写速度Vtよりも少し、たとえば1%強、低め(遅め)に設定される。言い換えれば、そうなるように定着速度Vfと転写速度Vtとに差が付与され、つまり速度差ΔV(=|Vt-Vf|)が付与される。これにより、搬送中の用紙のたわみ量が減ることに起因して発生する転写ニップ部Ntにおける用紙の定着ニップ部Nf側への引っ張りによる転写ずれ(画像欠損)が防止される。すなわち、転写ニップ部Ntにおける用紙へのトナー像の転写が適切に行われる。
【0046】
また、搬送中の用紙が加圧ローラ388側へたわむように、転写ニップ部Ntおよび定着ニップ部Nfの相互の位置関係ならびに加圧ローラ388の配置が定められる。言い換えれば、トナー像が転写された用紙の先端が先に加圧ローラ388の表面に当接してから定着ニップ部Nfへ案内されるように、構成される。これにより、トナー像が転写された用紙の先端が定着ニップ部Nfに突入する際に、当該用紙が定着ニップ部Nfよりも手前で加熱された状態にある定着ベルト382に触れて、当該トナー像が過剰に溶融することによる画像不良(定着ベルト382に触れた部分のトナー像が過剰に溶融して当該定着ベルト382側に残ることにより、用紙上のトナー像が薄くなる画像不良)が防止される。
【0047】
ところで、前述の印字率Rxが高い場合、とりわけ当該印字率Rxが100%(ベタ画像)である場合には、転写ニップ部Ntにおいて、用紙との間に滑りが生じ(グリップ力が減少し)易い。これにより、転写ニップ部Ntにおける用紙の送り速度(紙送り速度)が、感光体ドラム28の表面速度である転写速度Vtよりも僅かではあるが低下する。すなわち、印字率Rxが高いほど、転写ニップ部Ntにおける用紙の送り速度が転写速度Vtよりも低下する。一方、定着ニップ部Nfにおいては、転写ニップ部Ntよりも用紙に掛かる押圧力が大きいので(定着ニップ部Nfに作用する総加重は、加熱されたトナーを用紙に隙間なく密着させる必要があるため、たとえば20kgf以上に設定され、これに対して、転写ニップ部Ntに作用する総加重は、用紙に転写されたトナー像を崩さないようにする必要があるため、たとえば2kgf以下に設定される)、当該用紙との間に滑りは(殆ど)生じない。このため、前述の定着速度Vfが転写速度Vtよりも1%強低めに設定される、という当該定着速度Vfと転写速度Vtとの関係は、つまり当該1%強という値は、印字率Rxが100%である場合を基準として定められる。
【0048】
ところが、印字率Rxが低い場合には、とりわけ当該印字率Rxが低いほど、転写ニップ部Ntにおける用紙との間の滑りが生じ難くなり(グリップ力が上がり)、当該転写ニップ部Ntにおける用紙の送り速度が転写速度Vtに近づく。そして、印字率Rxが0%である場合には、転写ニップ部Ntにおける用紙の送り速度は、転写速度Vtとほぼ同じになる。この印字率Rxが(100%よりも)低い場合に、たとえば印字率Rxが100%である場合と同じ定着速度Vfが設定される、とすると、
図4に太破線100aで示されるように、当該印字率Rxが100%である場合に比べて、用紙が大きくたわむことになる。そして、用紙が過度にたわむと、当該用紙の後端が転写ニップ部Ntを通過した後に、当該用紙の後端が感光体ドラム28または転写ローラ362に接触して、感光体ドラム28または転写ローラ362の表面に付着した残留トナーを擦りながら搬送され、その結果、当該用紙の後端が残留トナーにより汚れる、という不都合が生ずる。この不都合を回避するために、本第1実施例においては、次のような工夫が施される。
【0049】
すなわち、次の式1に基づいて、定着速度Vfが設定される。
【0050】
《式1》
Vf=Vt×α×β
【0051】
この式1において、αは、印字率Rxが100%である場合の転写速度Vtに対する定着速度Vfの比を表す相対係数であり、前述の1%強という値に対応し、ここではたとえば1.5%という値に対応し、つまり98.5%(=100%-1.5%=0.985)という値である。ここで言う1.5%という値は、速度差ΔVの基準値であり、厳密には速度差ΔVを転写速度Vtに対する比率(=ΔV/Vt)で表した場合の当該速度差ΔVの基準値である。そして、βは、補正係数であり、印字率Rxによって変わる。この補正係数βと印字率Rxとの関係を、
図5に示す。
【0052】
この
図5に示されるように、補正係数βは、印字率Rxが100%である場合に、100%(=1)という値をとる。すなわち、印字率Rxが100%である場合の速度差ΔVは、これを転写速度Vtに対する比率で表すと、その基準値である1.5%となる。そして、印字率Rxが低くなるほど、補正係数βは、大きい値をとり、つまり100%以上の値となり、また、速度差ΔVは、その基準値よりも小さくなる。たとえば、印字率Rxが10%である場合、補正係数βは、100.7%(=1.007)という値をとる。またたとえば、印字率Rxが0%である場合、補正係数βは、101.2%(=1.012)という値をとる。この
図5に示される補正係数βと印字率Rxとの関係は、実験により求められ、詳しくは様々な印字率Rxに対して用紙のたわみ(たわみ量)が一定となるように、当該様々な印字率Rxに対する各補正係数βが実験により求められる。なお、印字率Rxが0%である場合であっても、つまり補正係数βが101.2%という最大値をとる場合であっても、定着速度Vfが転写速度Vtよりも低い(Vf<Vt)という状態が維持され、ゆえに、用紙にたわみが与えられる状態が維持される。
【0053】
その上で、
図5に示される補正係数βと印字率Rxとの関係が、
図6に示されるような補正係数テーブル200に纏められる。この補正係数テーブル200には、それぞれの印字率Rxに対応する補正係数βが記憶される。この補正係数テーブル200は、後述する制御プログラムに組み込まれ、とりわけ印刷制御プログラムに組み込まれる。なお、
図6に示される補正係数テーブル200においては、印字率Rxが0%から100%まで1%刻みで分割されるが、この印字率Rxの分割数は、これに限らない。
【0054】
そして、印刷が行われる際に、前述の如く当該印刷に供される画像データに基づいて、印字率Rxが導出され、この印字率Rxが補正係数テーブル200と照合されることで、補正係数βが特定される。そして、特定された補正係数βが式1に適用されることで、定着速度Vfが求められ、当該定着速度Vfが設定される。
【0055】
このように、本第1実施例によれば、転写速度Vtが一定とされた状態で、印字率Rxに基づいて、定着速度Vfが制御される。たとえば、印字率Rxが100%である場合、定着速度Vfは、転写速度Vtよりも1.5%低めに設定され、言わば当該定着速度Vfの基準値に設定される。そして、印字率Rxが低いほど、定着速度Vfがその基準値より高くなるように設定され、換言すれば転写速度Vtと当該定着速度Vfとの差である速度差ΔVが小さくなるように制御される。これにより、印字率Rxに拘らず、用紙のたわみが一定となり、当該用紙が過度にたわむことによる不都合が回避され、つまり用紙の後端のトナー汚れが防止される。
【0056】
図7は、画像形成装置10の電気的な構成を示すブロック図である。この
図7に示されるように、画像形成装置10は、制御部60を有する。そして、制御部60に、バス62を介して、画像読取部12、自動原稿送り装置18、画像形成部26および給紙部44が接続される。併せて、制御部60には、バス62を介して、操作ユニット64、補助記憶部66、通信部68などが接続される。なお、画像形成装置10は、これら以外にも、種々の要素を備えるが、ここでは、本開示の本旨に直接的に関係しない要素についての図示および説明を省略する。また、画像読取部12、自動原稿送り装置18、画像形成部26および給紙部44については、前述した通りある。特に、画像形成部26は、感光体ドラム用モータ282および定着用モータ390を有する。これらの感光体ドラム用モータ282および定着用モータ390には、たとえばDCモータあるいはステッピングモータが使用される。
【0057】
制御部60は、画像形成装置10全体の制御を司る、制御手段である。このため、制御部60は、制御実行手段としてのコンピュータ、たとえばCPU60a、を有する。併せて、制御部60は、CPU60aが直接的にアクセス可能な主記憶手段としての主記憶部60bを有する。主記憶部60bは、たとえば不図示のROMおよびRAMを含む。このうちのROMには、CPU60aの動作を制御するための制御プログラム(ファームウェア)が記憶される。この制御プログラムには、印刷制御プログラムが含まれる。また、印刷制御プログラムには、前述(
図6)の補正係数テーブル200が組み込まれる。そして、RAMは、CPU60aが制御プログラムに従う処理を実行する際の作業領域およびバッファ領域を構成する。
【0058】
操作ユニット64は、不図示のタッチパネル付きのディスプレイを有する。タッチパネル付きのディスプレイは、不図示のユーザによる操作を受付可能な操作受付手段の一例としてのタッチパネルと、各種の情報を表示する表示手段の一例としてのディスプレイと、が一体的に組み合わされた構成品である。また、操作ユニット64は、タッチパネル付きのディスプレイの他に、不図示のLEDなどの適宜の発光手段、および、不図示の押しボタンなどの適宜のハードウェアスイッチを有する。
【0059】
補助記憶部66は、補助記憶手段の一例である。この補助記憶部66には、前述の読取画像データや後述する印刷ジョブなどの種々のデータが適宜に記憶される。この補助記憶部66は、たとえば不図示のハードディスクドライブを有する。併せて、補助記憶部66は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリを有する場合がある。
【0060】
通信部68は、通信手段の一例である。すなわち、通信部68は、不図示のLAN回線を介しての双方向の通信処理を担う。なお、通信部68は、LAN回線と有線により接続されてもよいし、無線により接続されてもよい。LAN回線には、不図示のパーソナルコンピュータやサーバなどの種々の外部装置が接続される。また、通信部68は、不図示の公衆交換電話網を介しての双方向の通信処理をも担う。
【0061】
前述したように、本第1実施例によれば、印刷に供される画像データに基づいて、印字率Rxが導出される。そして、転写速度Vtが一定とされた状態で、印字率Rxに基づいて、定着速度Vfが制御され、換言すれば当該転写速度Vtと定着速度Vfとの差である速度差ΔVが制御され、厳密には感光体ドラム用モータ282および定着用モータ390が制御される。このような要領による速度差ΔVの制御を含む印刷制御を実現するために、CPU60aは、前述の印刷制御プログラムに従って印刷制御タスクを実行する。この印刷制御タスクの流れを、
図8に示す。なお、
図8に係る印刷制御タスクは、画像形成装置10のプリンタ機能による印刷を指示する印刷ジョブが受け付けられたことに応答して実行される。また、
図8は、印刷部数が1部である場合の例を示す。
【0062】
この印刷制御タスクによれば、CPU60aは、まず、ステップS1において、印刷ジョブを解析して、原稿のページ数や印刷先の用紙のサイズなどを認識する。そして、CPU60aは、処理をステップS3へ進める。
【0063】
ステップS3において、CPU60aは、印刷対象ページの番号を表す変数nに、その初期値である1という値を設定する。そして、CPU60aは、処理をステップS5へ進める。
【0064】
ステップS5において、CPU60aは、第nページの原稿の画像データを展開する。そして、CPU60aは、処理をステップS7へ進める。
【0065】
ステップS7において、CPU60aは、ステップS5で展開された画像データに基づいて、印字率Rxを導出する。そして、CPU60aは、処理をステップS9へ進める。なお、ステップS7で導出された印字率Rxは、前述のトナー補給装置42による現像装置34へのトナー補給に際しての当該トナーの必要補給量の算出にも供される。
【0066】
ステップS9において、CPU60aは、ステップS7で導出された印字率Rxを前述の補正係数テーブル200と照合することで、当該印字率Rxに対応する補正係数βを特定する。そして、CPU60aは、処理をステップS11へ進める。
【0067】
ステップS11において、CPU60aは、ステップS9で特定された補正係数βを前述の式1に適用することで、定着速度Vfを求め、当該定着速度Vfを設定する。そして、CPU60aは、処理をステップS13へ進める。
【0068】
ステップS13において、CPU60aは、第nページの印刷を開始する。このとき、定着装置38の定着用モータ390は、ステップS11で設定された定着速度Vfに従う速度で駆動する。また、感光体ドラム用モータ282は、転写速度Vtに従う一定の速度で駆動する。そして、CPU60aは、処理をステップS15へ進める。
【0069】
ステップS15において、CPU60aは、第nページの印刷が終了するのを待つ(S15:NO)。そして、第nページの印刷が終了すると(S15:YES)、CPU60aは、処理をステップS17へ進める。
【0070】
ステップS17において、CPU60aは、印刷ジョブに従う全ての印刷が終了したかどうかを、つまり印刷の対象となる次のページが存在するかどうかを、判定する。ここで、印刷ジョブに従う全ての印刷が終了した場合(S17:YES)、CPU60aは、印刷制御タスクを終了する。一方、印刷ジョブに従う全ての印刷がまだ終了していない場合は(S17:NO)、CPU60aは、処理をステップS19へ進める。
【0071】
ステップS19において、CPU60aは、印刷対象ページの番号を表す変数nの値をインクリメントする。そして、CPU60aは、処理をステップS5へ戻す。
【0072】
このように、本第1実施例によれば、印刷に供される画像データに基づいて、印字率Rxが導出される。そして、転写速度Vtが一定とされた状態で、印字率Rxに基づいて、定着速度Vfが制御され、換言すれば当該転写速度Vtと定着速度Vfとの差である速度差ΔVが制御され、詳しくは転写ニップ部Ntから定着ニップ部Nfまでの区間における用紙のたわみが一定となるように当該速度差ΔVが制御される。これにより、用紙が過度にたわむことによる不都合が回避され、つまり用紙の後端のトナー汚れが防止される。すなわち、たるみ検出部というセンサを必要とする前述の特許文献1に開示された技術に比べて、より低コストかつ簡素な構成によって、用紙の後端のトナー汚れを防止することができる。
【0073】
なお、印刷制御タスクのステップS7を実行するCPU60aは、厳密には当該CPU60aを含む制御部60は、本開示に係る印字率導出手段の一例である。また、制御部60は、本開示に係る制御手段の一例でもある。
【0074】
[第2実施例]
次に、本開示の第2実施例について、説明する。
【0075】
本第2実施例においては、用紙の態様が所定の制御実行条件に適合する場合に、第1実施例と同様の要領により印字率Rxに基づく速度差ΔV(定着速度Vf)の制御が行われる。一方、用紙の態様が制御実行条件に適合しない場合は、速度差ΔVが一定とされ、つまり印字率Rxに基づく速度差ΔVの制御は行われない。すなわち、用紙の態様が制御実行条件に適合しない場合は、印字率Rxに拘らず、速度差ΔVがその基準値(たとえば比率にして1.5%)となるように、定着速度Vfが制御される。
【0076】
ここで言う用紙の態様には、当該用紙の搬送方向における長さ寸法Laが含まれる。そして、用紙の長さ寸法Laが所定の長さ閾値Lb以上(La≧Lb)である場合に、当該用紙の長さ寸法Laが制御実行条件に適合するものと見なされる。併せて、用紙の態様には、当該用紙の厚さ寸法taが含まれ、詳しくは当該用紙の厚さ寸法taと関連する物理量、たとえば坪量Ga(1m2当たりの質量であり、この値が大きいほど用紙の厚さ寸法が大きいという相関がある。)が、含まれる。そして、用紙の坪量Gaが所定の坪量閾値Gb未満(Ga<Gb)である場合にも、換言すれば用紙の厚さ寸法taが所定の厚さ閾値tb未満(ta<tb)である場合にも、当該用紙の坪量Ga(厚さ寸法ta)が制御実行条件に適合するものと見なされる。すなわち、用紙の長さ寸法Laが所定の長さ閾値Lb以上である場合、あるいは、用紙の坪量Gaが所定の坪量閾値Gb未満である場合に、当該用紙の態様が制御実行条件に適合するものとみなされる。
【0077】
ここで、用紙の長さ寸法Laが大きい(長い)ほど、当該用紙が転写ニップ部Ntから定着ニップ部Nfまでの区間を搬送されるに連れて、当該用紙のたわみが蓄積されて、当該用紙の後端付近におけるたわみが大きくなり、当該用紙の後端のトナー汚れが生じ易くなる。言い換えれば、用紙の長さ寸法Laが比較的に小さい(短い)場合には、当該用紙の後端のトナー汚れは生じ難い。また、用紙の坪量Gaが小さいほど、つまり用紙の厚さ寸法taが小さい(薄い)ほど、当該用紙がたわみ易く、よって、当該用紙の後端のトナー汚れが生じ易くなる。言い換えれば、用紙の坪量Gaが比較的に大きい場合には、つまり用紙の厚さ寸法taが比較的に大きい(厚い)場合には、当該用紙の後端のトナー汚れは生じ難い。
【0078】
これらの点に注目して、本第2実施例においては、用紙の長さ寸法Laが所定の長さ閾値Lb以上である場合、あるいは、用紙の坪量Gaが所定の坪量閾値Gb未満である場合に、当該用紙の態様が制御実行条件に適合するものとみなされ、当該用紙の後端のトナー汚れが生じ易い状況にあることから、第1実施例と同様の要領により印字率Rxに基づく速度差ΔVの制御が行われる。そして、用紙の態様が制御実行条件に適合しない場合は、つまり用紙の後端のトナー汚れが生じ難い状況にある場合は、印字率Rxに基づく速度差ΔVの制御は行われず、当該速度差ΔVは一定とされ、詳しくは印字率Rxに拘らず、速度差ΔVがその基準値となるように、定着速度Vfが制御される。
【0079】
なお、長さ閾値Lbは、たとえば300mmであるが、これに限らず、また、任意の値に設定可能とされてもよい。そして、坪量閾値Gbは、たとえば70g/m2であるが、この坪量閾値Gbについても、これに限らず、また、任意の値に設定可能とされてもよい。
【0080】
さらに、前述(
図7)の補助記憶部66には、用紙の長さ寸法Laを表す長さ情報、厳密には用紙の長さ寸法Laおよび当該用紙の搬送方向と直交する方向の寸法である幅寸法から成る用紙のサイズ情報が、記憶される。併せて、補助記憶部66には、用紙の厚さ寸法taを表す厚さ情報、厳密には用紙の坪量Gaを表す坪量情報が、記憶される。これらの長さ情報および坪量情報は、たとえば操作ユニット64の操作により、給紙部44の給紙カセット44aと関連付けられた状態で、とりわけ複数の給紙カセット44aが設けられている場合には、それぞれの給紙カセット44aと関連付けられた状態で、補助記憶部66に記憶される。したがって、印刷に際して、任意の給紙カセット44aが給紙元として指定されると、その給紙元として指定された給紙カセット44aと関連付けられた用紙の長さ情報および坪量情報に基づいて、当該印刷に使用される用紙の長さ寸法Laおよび坪量Gaが認識される。この用紙の長さ情報および坪量情報が記憶される補助記憶部66は、本開示に係る記憶手段の一例である。
【0081】
このような本第2実施例においても、CPU60aにより印刷制御タスクが実行されるが、本第2実施例における印刷制御タスクは、
図9および
図10に示されるような流れで実行される。
【0082】
これらの
図9および
図10を参照して、本第2実施例における印刷制御タスクによれば、CPU60aは、まず、ステップS102において、第1実施例における印刷制御タスクのステップS1と同様に、印刷ジョブを解析して、原稿のページ数や印刷先の用紙のサイズなどを認識し、さらに、当該用紙の長さ寸法Laおよび坪量Gaを認識する。そして、CPU60aは、処理をステップS103へ進める。
【0083】
ステップS103において、CPU60aは、用紙の態様が制御実行条件に適合するかどうかを判定し、つまり用紙の長さ寸法Laが長さ閾値Lb以上であるかどうかを判定するとともに、当該用紙の坪量Gaが坪量閾値Gb未満であるかどうかを判定する。ここで、用紙の態様が制御実行条件に適合する場合、つまり用紙の長さ寸法Laが長さ閾値Lb以上である場合、あるいは、用紙の坪量Gaが坪量閾値Gb未満である場合(S103:YES)、CPU60aは、処理をステップS105へ進める。これに対して、用紙の態様が制御実行条件に適合しない場合、つまり用紙の長さ寸法Laが長さ閾値Lb未満(La<Lb)であるとともに、当該用紙の坪量Gaが坪量閾値Gb以上(Ga≧Gb)である場合は(S103:NO)、CPU60aは、処理を後述するステップS123へ進める。
【0084】
ステップS105において、CPU60aは、第1実施例における印刷制御タスクのステップS3と同様に、印刷対象ページの番号を表す変数nに、その初期値である1という値を設定する。これ以降、CPU60aは、ステップS107~ステップS121において、第1実施例における印刷制御タスクのステップS5~ステップS19と同様の処理を行う。これらステップS107~ステップS121における処理についての説明は、省略する。
【0085】
これに対して、CPU60aは、前述のステップS103からステップS123へ処理を進めた場合、当該ステップS123において、定着速度Vfを設定し、詳しくは次の式2に基づく定着速度Vfを設定する。なお、式2は、前述の式1から補正係数βを排除したものであり、換言すれば当該式1における補正係数βとして100%という値が適用されたものである。このステップS123の実行後、CPU60aは、処理をステップS125へ進める。
【0086】
《式2》
Vf=Vt×α
【0087】
ステップS125において、CPU60aは、印刷対象ページの番号を表す変数nに、その初期値である1という値を設定する。そして、CPU60aは、処理をステップS127へ進める。
【0088】
ステップS127において、CPU60aは、第nページの原稿の画像データを展開する。そして、CPU60aは、処理をステップS129へ進める。
【0089】
ステップS129において、CPU60aは、ステップS127で展開された画像データに基づいて、印字率Rxを導出する。導出された印字率Rxは、前述のトナー補給装置42による現像装置34へのトナー補給に際しての当該トナーの必要補給量の算出に供される。そして、CPU60aは、処理をステップS131へ進める。
【0090】
ステップS131において、CPU60aは、第nページの印刷を開始する。このとき、定着装置38の定着用モータ390は、ステップS123で設定された定着速度Vfに従う速度で駆動する。そして、CPU60aは、処理をステップS133へ進める。
【0091】
ステップS133において、CPU60aは、第nページの印刷が終了するのを待つ(S133:NO)。そして、第nページの印刷が終了すると(S133:YES)、CPU60aは、処理をステップS135へ進める。
【0092】
ステップS135において、CPU60aは、印刷ジョブに従う全ての印刷が終了したかどうかを、つまり印刷の対象となる次のページが存在するかどうかを、判定する。ここで、印刷ジョブに従う全ての印刷が終了した場合(S135:YES)、CPU60aは、印刷制御タスクを終了する。一方、印刷ジョブに従う全ての印刷がまだ終了していない場合は(S135:NO)、CPU60aは、処理をステップS137へ進める。
【0093】
ステップS137において、CPU60aは、印刷対象ページの番号を表す変数nの値をインクリメントする。そして、CPU60aは、処理をステップS127へ戻す。
【0094】
このように、本第2実施例によれば、用紙の後端のトナー汚れが生じ易い状況にある場合にのみ、第1実施例と同様の要領により印字率Rxに基づく速度差ΔVの制御が行われる。これは、CPU60aを含む制御部60の負担の軽減に有益である。
【0095】
なお、本第2実施例においては、用紙の長さ寸法Laが所定の長さ閾値Lb以上である場合、あるいは、用紙の坪量Gaが所定の坪量閾値Gb未満である場合に、当該用紙の態様が制御実行条件に適合するものとみなされたが、これに限らない。すなわち、用紙の長さ寸法Laが所定の長さ閾値Lb以上であるとともに、用紙の坪量Gaが所定の坪量閾値Gb未満である場合に、当該用紙の態様が制御実行条件に適合するものとみなされるように構成されてもよい。また、用紙の厚さ寸法Laの指標として、当該用紙の坪量Gaが用いられたが、用紙の連量などの当該坪量Ga以外の物理量が用いられてもよい。さらに、用紙の厚さ寸法taそのものを検出するための適当な手段が設けられ、その手段により検出された当該用紙の厚さ寸法taそのものが厚さ閾値tb未満であるかどうかに基づいて、用紙の態様が制御実行条件に適合するかどうかの判定が行われてもよい。
【0096】
[第3実施例]
次に、本開示の第3実施例について、説明する。
【0097】
本第3実施例は、第1実施例を前提とする。その上で、本第3実施例においては、用紙の先端から後端側へ距離Lc離れた当該用紙の所定位置が定着ニップ部Nfに到達した時点から、速度差ΔVがより小さくなるように定着速度Vfが変更され、つまりそのような制御が追加される。
【0098】
すなわち、
図3(および
図4)に示されるように、転写ニップ部Ntから定着ニップ部Nfまでの区間を搬送されている状態にある(或る瞬間の)用紙に注目すると、この区間へ転写速度Vtで送り込まれた用紙の送り込み(済の)量の方が、当該区間から定着速度Vfで送り出された用紙の送り出し(済の)量よりも大きく、これを吸収するために、用紙がたわみ、このたわみは、用紙の後端が転写ニップ部Ntを抜けるまで増加し続ける。言い換えれば、速度差ΔVに応じたペースで、転写ニップ部Ntから定着ニップ部Nfまでの区間における用紙長が大きくなり、これを吸収するために、たわみが増加していく。そして、用紙の後端が転写ニップ部Ntを通過する時点で、たわみが最大になる。また、用紙のたわみは、当該用紙の長さ寸法Laが大きいほど大きくなる。たとえば、A4サイズ(297mm×210mm)の用紙がその短手方向に沿って搬送される場合(用紙の搬送方向の長さ寸法Laが210mmの場合)と、A3サイズ(420mm×297mm)の用紙がその長手方向に沿って搬送される場合(用紙の搬送方向の長さ寸法Laが420mmの場合)と、を比較すると、A4サイズの用紙よりも、A3サイズの用紙の方が、搬送中に生じる用紙のたわみが大きくなる。そのため、搬送方向の長さ寸法Laが大きい用紙ほど、その後端のトナー汚れが生じ易いという傾向がある。
【0099】
そこで、本第3実施例においては、用紙の先端から後端側へ所定距離Lc離れた位置である所定位置が定着ニップ部Nfに到達した時点から、速度差ΔVがより小さくなるように、定着速度Vfが変更される。言い換えれば、用紙の当該所定位置よりも後端までの領域である当該用紙の一部領域については、定着ニップ部Nfにおいて、速度差ΔVがより小さくなるような定着速度Vfで搬送される。これにより、用紙の所定位置よりも後端側の一部領域において、たわみの増加が抑制され、その結果、当該用紙の後端のトナー汚れがより確実に防止される。なお、所定距離Lcは、たとえば300mmであるが、この所定距離Lcの値は、これ以外であってもよいし、任意に設定可能とされてもよい。また、定着速度Vfが変更されても、当該定着速度Vfが転写速度Vtよりも低いという関係(状態)は、維持される。
【0100】
本第3実施例においても、CPU60aにより印刷制御タスクが実行されるが、本第3実施例においては、第1実施例(
図8)における印刷制御タスクに、詳しくはステップS13とステップS15との間に、
図11に示されるステップS201およびステップS203がさらに設けられる。
【0101】
すなわち、本第3実施例における印刷制御タスクによれば、CPU60aは、ステップS13において、第nページの印刷を開始した後、処理をステップS201へ進める。そして、ステップS201において、CPU60aは、定着速度Vfを変更させるタイミングが到来するのを待ち、つまり用紙の先端から後端側へ所定距離Lc離れた位置である所定位置が定着ニップ部Nfに到達するのを待つ(S201:NO)。そして、用紙の所定位置が転写ニップ部Ntに到達すると(S201:YES)、CPU60aは、処理をステップS203へ進める。
【0102】
なお、用紙の所定位置が定着ニップ部Nfに到達したかどうかは、レジストローラ52aが回転し始めたタイミングと定着速度Vfと所定距離Lcとに基づいて、判定される。具体的には、定着ニップ部Nfよりも用紙の搬送方向の上流側の適当な位置において、当該用紙の先端が通過したことを検出するための検出手段が設けられる。そして、この検知手段による検知結果に基づいて、用紙の先端が定着ニップ部Nfを通過した時点が予測される。本第3実施例では、レジストローラ52aが、検出手段として機能する。その上で、レジストローラ52aから定着ニップ部Nfまでの距離は、既知であるので、レジストローラ52aが回転し始めてから用紙の先端が定着ニップ部Nfに到達着するまでの時間は、当該レジストローラ52aから定着ニップ部Nfまでの距離と転写速度Vtとにより、算出することができる。併せて、定着速度Vfもまた、既知であるので、用紙の先端が定着ニップ部Nfに到達してから当該用紙の所定位置が定着ニップ部Nfを通過するまでの時間は、定着速度Vfと所定距離Lcとに基づいて、算出することができる。このように、用紙の所定位置が定着ニップ部Nfに到達したかどうかは、レジストローラ52aが回転し始めたタイミングと定着速度Vfと所定距離Lcとに基づいて、判定される。
【0103】
ステップS203において、CPU60aは、速度差ΔVがより小さくなるように、定着速度Vfを変更し、詳しくは次の式3に基づく定着速度Vfを設定する。なお、式3は、前述の式1に変更係数γを乗じたものである。この変更係数γは、100%(=1)よりも大きい値であり、たとえば100.2%~100.3%程度の値である。これにより、定着速度Vfが変更係数γに応じた程度に変更され、つまり速度差ΔVが0.2%~0.3%程度小さくなる。このステップS203の実行後、CPU60aは、処理をステップS15へ進める。
【0104】
《式3》
Vf=Vt×α×β×γ
【0105】
このように、本第3実施例によれば、用紙の先端から後端側へ所定距離Lc離れた当該用紙の所定位置が定着ニップ部Nfに到達した時点から、速度差ΔVがより小さくなるように定着速度Vfが変更される。これにより、用紙の後端付近のたわみが低減され、当該用紙の後端のトナー汚れがより確実に防止される。
【0106】
なお、本第3実施例は、第1実施例を前提とするが、第2実施例を前提としてもよい。この場合、第2実施例における印刷制御タスク(
図9)のステップS115とステップS117との間に、
図11に示されるステップS201およびステップS203が設けられる。
【0107】
[その他の適用例]
以上の各実施例は、本開示の具体例であり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。これら各実施例以外の局面にも、本開示を適用することができる。
【0108】
たとえば、
図8などに示される印刷制御タスクは、印刷部数が1部である場合の例を示すが、当該印刷部数が複数部である場合でも、適宜に印字率Rxが導出されるとともに、当該印字率Rxに基づいて、補正係数βが特定され、ひいては定着速度Vfが制御され、つまり速度差ΔVが制御される。そのために、印刷制御タスクが適宜に構成される。
【0109】
また、補正係数βについては、印字率Rxが補正係数テーブル200と照合されることで、当該印字率Rxに対応する補正係数βが特定されることとしたが、これに限らない。たとえば、印字率Rxを変数とする次の式4に基づいて、補正係数βが特定(算出)されてもよい。この式4は、
図5に示される補正係数βと印字率Rxとの関係を数式化したものである。
【0110】
《式4》
β=f(Rx)
【0111】
なお、
図5に示される補正係数βと印字率Rxとの関係は、一例であり、当該補正係数βと印字率Rxとの関係は、画像形成装置10の仕様などによって変わる。言い換えれば、画像形成装置10の仕様ごとに、補正係数βと印字率Rxとの関係が実験により求められる。
【0112】
さらに、
図8などに示される印刷制御タスクは、画像形成装置10のプリンタ機能に係るものであるが、当該画像形成装置10のコピー機能およびファクス機能(印刷を伴うファクス受信機能)においても、同様の印刷制御を適用することができる。
【0113】
加えて、定着装置38は、パッド方式に限らず、たとえば定着部材として定着ローラを採用するローラ方式のものであってもよい。ただし、パッド方式の定着装置38においては、ローラ方式のものに比べて、
図12に示されるように、定着ニップ部Nfの入口側400が狭い。なお、
図12における破線500は、定着装置38がローラ方式のものである場合の定着ローラ(の外周)を示す。このため、パッド方式の定着装置38の方が、ローラ方式のものに比べて、用紙の先端が定着ニップ部Nfに突入する際に、当該用紙が定着ニップ部Nfよりも手前で定着ベルト382に接触し易く、つまりそのことによる画像不良が発生し易い。したがって、パッド方式の定着装置38の方が、ローラ方式のものに比べて、転写ニップ部Ntから定着ニップ部Nfまでの区間における用紙のたわみが大きく設定され、その分、当該用紙の後端のトナー汚れが生じ易い。ゆえに、本開示は、用紙の後端のトナー汚れが生じ易いパッド方式の定着装置38を採用する構成に、より有益である。
【0114】
因みに、定着装置38がローラ方式のものである場合は、前述の相対係数αとして、1%弱に対応する値が設定され、つまり100%よりも1%弱小さい値が設定される。すなわち、印字率Rxが100%である場合の定着速度Vfは、転写速度Vtよりも1%弱小さめに設定される。
【0115】
また、前述の各実施例においては、モノクロの画像形成装置10を例に挙げたが、カラーの画像形成装置にも、とりわけ中間転写装置を有するタンデム方式の画像形成装置にも、本開示を適用することができる。
【0116】
そして、各実施例に係る画像形成装置10は、複合機であるが、プリンタ専用機やコピー専用機、ファクス専用機などの当該複合機以外の画像形成装置にも、本開示を適用することができる。
【0117】
そしてさらに、本開示は、画像形成装置という装置の形態に限らず、画像形成装置の制御方法という方法の形態によっても、提供することができる。
【符号の説明】
【0118】
10 … 画像形成装置
26 … 画像形成部
28 … 感光体ドラム
36 … 転写装置
38 … 定着装置
60 … 制御部
60a … CPU
60b … 主記憶部
362 … 転写ローラ
382 … 定着ベルト
384 … 熱源
386 … 定着パッド
388 … 加圧ローラ
390 … 定着用モータ
Nf … 定着ニップ部
Nt … 転写ニップ部