(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131328
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】送信器、送信装置、通信装置、および通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/116 20130101AFI20240920BHJP
【FI】
H04B10/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041528
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 藤男
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA21
5K102AL23
5K102PB18
5K102PH01
5K102PH31
5K102RB02
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】水平面内に沿った任意の方向に向けて、減衰しにくい空間光信号を送信できる送信器等を提供する。
【解決手段】照明光を出射する光源と、円環状に配置された複数の反射鏡によって構成された第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイと、光源から出射された照明光が照射させる変調部を有し、変調部で変調された変調光を、第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイのうち少なくともいずれかに向けて出射する空間光変調器と、を備え、第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡は、空間光変調器から出射された変調光が側方に向けて反射されるように配置され、第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡の反射面は、第1環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡のうちいずれかの反射面の死角領域を含む方向に向けられた送信器とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を出射する光源と、
前記照明光の光軸を中心として円環状に配置された複数の反射鏡によって構成された第1環状ミラーアレイと、
平面視における前記第1環状ミラーアレイの内側の領域において、前記照明光の光軸を中心として円環状に配置された複数の反射鏡によって構成された第2環状ミラーアレイと、
前記光源から出射された前記照明光が照射させる変調部を有し、前記変調部で変調された変調光を、前記第1環状ミラーアレイおよび前記第2環状ミラーアレイのうち少なくともいずれかに向けて出射する空間光変調器と、を備え、
前記第1環状ミラーアレイおよび前記第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡は、前記空間光変調器から出射された前記変調光が側方に向けて反射されるように配置され、
前記第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡の反射面は、前記第1環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡のうちいずれかの反射面の死角領域を含む方向に向けられる送信器。
【請求項2】
前記第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡の反射面は、前記第1環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡の境界を含む方向に向けられる請求項1に記載の送信器。
【請求項3】
前記照明光の光軸を中心として円環状に形成され、前記第1環状ミラーアレイおよび前記第2環状ミラーアレイのうち少なくともいずれかに向けて、前記空間光変調器から出射された前記変調光を中継反射する少なくとも2つの環状中継ミラーを備える請求項2に記載の送信器。
【請求項4】
前記照明光の光軸を中心として円環状に形成された第1環状中継ミラーと、
平面視において、前記第1環状中継ミラーの外側の領域に、前記照明光の光軸を中心として円環状に形成された第2環状中継ミラーと、を備え、
前記第1環状中継ミラーは、
前記空間光変調器で変調された前記変調光の光路に配置され、反射面に照射された前記変調光を前記第2環状中継ミラーの反射面に向けて反射し、
前記第2環状中継ミラーは、
前記第1環状中継ミラーの反射面で反射された前記変調光の光路に配置され、反射面に照射された前記変調光を、前記第1環状ミラーアレイおよび前記第2環状ミラーアレイのうち少なくともいずれかに向けて反射する請求項2に記載の送信器。
【請求項5】
前記光源、前記空間光変調器、前記第1環状ミラーアレイ、および前記第2環状ミラーアレイを収納する筐体の柱を避けて前記変調光を反射する位置に配置された柱回避ミラーを備える請求項1乃至4のいずれか一項に記載の送信器。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の送信器と、
空間光通信に用いられる位相画像を前記送信器に含まれる前記空間光変調器の前記変調部に設定し、前記位相画像が設定された前記変調部に前記照明光が照射されるように前記送信器に含まれる前記光源を制御する通信制御部と、を備える送信装置。
【請求項7】
前記光源が複数の出射器を有し、
前記空間光変調器の前記変調部に複数の変調領域が設定され、
複数の前記出射器の各々は複数の前記変調領域のいずれかに対応付けられ、
前記通信制御部は、
複数通信対象と同時通信するモードにおいて、前記第1環状ミラーアレイおよび前記第2環状ミラーアレイの各々を構成する反射鏡のうち、前記複数通信対象の各々に対応付けられた反射鏡に、複数の前記変調領域の各々で変調された前記変調光が照射されるように前記空間光変調器を制御し、
通信対象を探索するモードにおいて、前記第1環状ミラーアレイおよび前記第2環状ミラーアレイの各々を構成する反射鏡のうち単一の反射鏡に、複数の前記変調領域の各々で変調された前記変調光が照射されるように前記空間光変調器を制御する請求項6に記載の送信装置。
【請求項8】
前記送信器は、
前記第1環状ミラーアレイおよび前記第2環状ミラーアレイのいずれかの反射鏡で反射された前記変調光を検知する光検知器を有し、
前記通信制御部は、
光電力計測モードにおいて、前記空間光変調器で変調された前記変調光を前記光検知器に向けて照射させるように前記空間光変調器を制御し、前記光検知器によって検知された前記変調光の光電力を計測し、計測された前記変調光の光電力に応じて前記光源の出力を調整する請求項6に記載の送信装置。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の送信器と、
他の通信対象から送信された空間光信号を受信する受信器と、
前記受信器によって受信された前記他の通信装置からの空間光信号に基づく信号を取得し、取得した前記信号に応じた処理を実行し、前記他の通信対象に向けた空間光信号を前記送信器に送信させる通信制御装置と、を備える通信装置。
【請求項10】
請求項9に記載の通信装置を複数備え、
複数の前記通信装置が、
空間光信号を互いに送受信し合うように配置された通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間を伝播する光信号を送信する送信器等に関する。
【背景技術】
【0002】
光空間通信においては、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う。例えば、位相変調型の空間光変調器を含む送信装置を用いれば、空間光変調器の変調部に設定されるパターンを制御することによって、多様な方向に空間光信号を送信できる。送信装置を中心として多方向に空間光信号を送信できれば、空間光信号を用いた通信ネットワークを構築できる。
【0003】
一般的な空間光通信では、多様な方向に空間光信号を送信するために、空間光信号の送受信方向を調整するための調整機構が必要である。通信対象の方向が不明な場合、目視で通信対象の方向を確認したり、通信装置の間での通信を介して送受信方向を調整したりする必要があった。このように、空間光信号を送受信する通信装置の設置には、労力や時間を要する。
【0004】
特許文献1には、走行している車両間で光信号を送受信するための光送受信装置が開示されている。特許文献1の装置は、発光部、受光部、および全方位型の光学部品を備える。特許文献1の装置では、発光部から発信された光信号が光学部品に入射する光軸と、他の車両から送信されて光学部品に入射した光信号が光学部品から出射する光軸とが、同光軸になるように構成される。特許文献1の装置は、光学部品を通じて、外部の略水平方向の全方向に向けて光信号を送信するとともに、他の車両から送信された略水平方向の全方位からの光信号を受信する。このようにして、特許文献1の装置は、不特定の車両に対する全方位的な送受信を行う。また、特許文献1の装置は、全方位型の光学部品を通じて、一つの発光素子から送信された光信号を特定の他の車両に向けて送信しつつ、特定の他の車両から送信された光信号を受光する。このようにして、特許文献1の装置は、特定の他の車両との間で、一対一通信を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の手法では、全方位的な送受信によって通信対象を検出し、検出された単一の通信対象に向けて個別の光信号(個別信号)を送信する。特許文献1の手法では、曲面状の透光面を有する回転体を介して、光信号を送信する。そのため、特許文献1の手法では、透光面の曲率に応じて、光送受信装置から離れるにつれて光信号のビーム径が大きくなり、光信号が減衰しやすかった。一方、曲面状の透光面の代わりに平面鏡が用いられた場合、光信号の減衰は低減されるが、光信号を送信できない死角領域が増えてしまう。
【0007】
本開示の目的は、水平面内に沿った任意の方向に向けて、減衰しにくい空間光信号を送信できる送信器等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の送信器は、照明光を出射する光源と、照明光の光軸を中心として円環状に配置された複数の反射鏡によって構成された第1環状ミラーアレイと、平面視における第1環状ミラーアレイの内側の領域において、照明光の光軸を中心として円環状に配置された複数の反射鏡によって構成された第2環状ミラーアレイと、光源から出射された照明光が照射させる変調部を有し、変調部で変調された変調光を、第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイのうち少なくともいずれかに向けて出射する空間光変調器と、を備え、第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡は、空間光変調器から出射された変調光が側方に向けて反射されるように配置され、第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡の反射面は、第1環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡のうちいずれかの反射面の死角領域を含む方向に向けられる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、水平面内に沿った任意の方向に向けて、減衰しにくい空間光信号を送信できる送信器等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図2】第1実施形態に係る送信装置が備える第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイの配置例を示す概念図である。
【
図3】第1実施形態に係る送信装置が備える空間光変調器の変調部における変調領域の設定例を示す概念図である。
【
図4】第1実施形態に係る送信装置が備える第1環状ミラーアレイによる空間光信号の投射領域について説明するための概念図である。
【
図5】第1実施形態に係る送信装置が備える第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイの組み合わせによる空間光信号の投射領域について説明するための概念図である。
【
図6】第1実施形態に係る送信装置が備える第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイを用いた空間光信号の投射例について説明するための概念図である。
【
図7】第1実施形態に係る送信装置が備える第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイを用いた空間光信号の投射例について説明するための概念図である。
【
図8】第1実施形態に係る送信装置の筐体の一例を示す概念図である。
【
図9】第1実施形態に係る送信装置が備える第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイを用いた空間光信号の投射例について説明するための概念図である。
【
図10】第1実施形態の変形例1に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図11】第1実施形態の変形例1に係る送信装置が備える第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイを用いた空間光信号の投射例について説明するための概念図である。
【
図12】第2実施形態に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図13】第2実施形態に係る送信装置が備える第1環状中継ミラー、第1環状ミラーアレイ、および第2環状ミラーアレイの配置例を示す概念図である。
【
図14】第2実施形態に係る送信装置が備える第2環状中継ミラーの配置例を示す概念図である。
【
図15】第2実施形態の変形例2に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図16】第2実施形態の変形例3に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図17】第3実施形態に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図18】第3実施形態に係る送信装置による光電力計測モードについて説明するための概念図である。
【
図19】第4実施形態に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図20】第4実施形態に係る通信装置が備える受信器の構成の一例を示す概念図である。
【
図21】第4実施形態に係る通信装置による空間光信号の送受信について説明するための概念図である。
【
図22】第4実施形態に係る通信装置の適用例について説明するための概念図である。
【
図23】第5実施形態に係る送信器の構成の一例を示すブロック図である。
【
図24】各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0012】
以下の実施形態の説明に用いる全図において、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、光や信号の向きを限定するものではない。また、図面中の光の軌跡を示す線は、概念的なものであり、実際の光の進行方向や状態を正確に表すものではない。例えば、図面においては、空気と物質との界面における屈折や反射、拡散などによる光の進行方向や状態の変化を省略したり、光束を一本の線で表現したりすることもある。また、光の経路の一例を図示したり、構成が込み合ったりする等の理由により、断面にハッチングを施さない場合がある。
【0013】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る送信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信装置は、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う光空間通信に用いられる。本実施形態の送信装置は、空間を伝播する光を送光する用途であれば、光空間通信以外の用途に用いられてもよい。なお、本実施形態の説明で用いられる図面は、概念的なものであり、実際の構造を正確に描写したものではない。
【0014】
(構成)
図1は、本実施形態に係る送信装置1の構成の一例を示す概念図である。送信装置1は、光源11、空間光変調器12、第1環状ミラーアレイ15、第2環状ミラーアレイ16、および通信制御部19を備える。光源11、空間光変調器12、第1環状ミラーアレイ15、および第2環状ミラーアレイ16は、送信器を構成する。送信器は、空間光信号を送信するための窓Wが形成された筐体130に格納される。
図1は、筐体130の内部に収納された送信装置1の内部構成を側方の視座から見た図である。
図1においては、窓Wの部分で切断された筐体130を示す。
図1は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。また、
図1の構成は、上下が逆さの状態で配置されてもよい。
【0015】
図1には、光源11、第1環状ミラーアレイ15、および第2環状ミラーアレイ16を支持する天板131を示す。第1環状ミラーアレイ15および第2環状ミラーアレイ16は、天板131の下面に配置される。また、
図1には、空間光変調器12が配置される底板132を示す。空間光変調器12は、底板132の上面に配置される。
【0016】
図2は、天板131を下方の視座から見上げた概念図である。天板131の中央には、貫通孔Tが開口する。貫通孔Tは、光源11から出射された照明光101を、下方に向けて通過させるための開口である。
図2の例において、貫通孔Tの開口形状は矩形であるが、貫通孔Tの開口形状は矩形でなくてもよい。天板131の下面には、第1環状ミラーアレイ15および第2環状ミラーアレイ16が配置される。第1環状ミラーアレイ15および第2環状ミラーアレイ16は、複数の反射鏡が環状に配置されたミラーアレイである。第1環状ミラーアレイ15および第2環状ミラーアレイ16は、同心円状に配置される。第1環状ミラーアレイ15を構成する複数の反射鏡の反射面と、第2環状ミラーアレイ16を構成する複数の反射鏡の反射面とは、いずれも異なる方向に向けられる。
【0017】
光源11は、照明光101を出射する。光源11の出射面は、天板131の貫通孔Tを介して、空間光変調器12の変調部120に向けられる。光源11は、天板131の貫通孔Tの内部に配置されてもよい。光源11は、天板131の下面や、天板131と空間光変調器12との間に配置されてもよい。その場合、天板131には、貫通孔Tが形成されなくてもよい。光源11から出射された照明光101は、貫通孔Tを通過して、空間光変調器12の変調部120に照射される。
【0018】
光源11は、複数の出射器(図示しない)を含む。光源11に含まれる出射器は、通信制御部19の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光を出射する。出射器から出射されるレーザ光の波長は、特に限定されず、用途に応じて選定されればよい。例えば、出射器は、可視や赤外の波長帯のレーザ光を出射する。例えば、800~1000ナノメートル(nm)の近赤外線であれば、可視光と比べてレーザクラスをあげられるので、可視光よりも感度を向上できる。例えば、1.55マイクロメートル(μm)の波長帯の赤外線ならば、800~1000nmの近赤外線よりも、高出力のレーザ光源を用いることができる。1.55μmの波長帯の赤外線を出射するレーザ光源としては、アルミニウムガリウムヒ素リン(AlGaAsP)系レーザ光源や、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)系レーザ光源などを用いることができる。レーザ光の波長が長い方が、回折角を大きくでき、高いエネルギーに設定できる。光源11は、面発光型レーザによって実現されてもよい。光源11は、PCSEL(Photonic Crystal Surface Emitting Laser)型レーザによって実現される。PCSEL型レーザは、円形狭放射のレーザ光を出射するため、コリメータが不要である。
【0019】
空間光変調器12は、位相変調型の空間光変調器である。空間光変調器12は、変調部120を有する。変調部120には、複数の変調領域が設定される。変調部120に設定される変調領域の数は、光源11に含まれる出射器の数に合わせて設定される。
【0020】
図3は、変調部120に設定される複数の変調領域Rの一例を示す概念図である。変調部120には、光源11に含まれる出射器の数に応じて、変調領域Rが設定される。
図3の例では、6個の変調領域R(R
1~R
6)が設定される。隣接し合う変調領域Rの間には、不感帯が設定されてもよい。例えば、不感帯には、黒い格子状の位相画像が設定される。不感帯は、変調部120を格子状ではなく、任意の形状で設定されてもよい。
【0021】
複数の変調領域Rの各々は、光源11に含まれる複数の出射器のいずれかに対応付けられる。複数の変調領域Rの各々には、通信制御部19の制御に応じて、投射光105または投射光106によって表示される像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。複数の変調領域Rの各々には、照明光01が照射される。照明光101は、変調領域Rに対応付けられた出射器から出射されたレーザ光に由来する。複数の変調領域Rの各々に入射した照明光101は、複数の変調領域Rの各々に設定されたパターン(位相画像)に応じて変調される。複数の変調領域Rの各々で変調された変調光102は、第1環状ミラーアレイ15の反射面150または第2環状ミラーアレイ16の反射面160に向けて進行する。
【0022】
変調領域Rは、複数の領域に分割される(タイリングとも呼ぶ)。例えば、変調領域Rは、正方形や矩形の領域(タイルとも呼ぶ)に分割される。複数のタイルの各々は、複数の画素によって構成される。複数のタイルの各々には、投射される画像に対応する位相画像が設定される。変調領域Rに割り当てられた複数のタイルの各々には、同じ位相画像がタイリングされる。例えば、複数のタイルの各々には、予め生成された位相画像が設定される。複数のタイルに同じ位相画像が設定された状態で、変調領域Rに照明光101が照射されると、位相画像に対応する画像を形成する変調光102が出射される。変調領域Rに設定されるタイルが多いほど、鮮明な画像を表示させることができる。その一方で、各タイルの画素数が低下すると、解像度が低下する。そのため、変調領域Rに設定されるタイルの大きさや数は、用途に応じて設定される。
【0023】
例えば、空間光変調器12は、強誘電性液晶やホモジーニアス液晶、垂直配向液晶などを用いた空間光変調器によって実現される。例えば、空間光変調器12は、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)によって実現できる。また、空間光変調器12は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)によって実現されてもよい。位相変調型の空間光変調器12では、投射光105または投射光106を投射する箇所を順次切り替えるように動作させることによって、エネルギーを像の部分に集中することができる。そのため、位相変調型の空間光変調器12を用いる場合、光源11に含まれる出射器の出力が同じであれば、その他の方式と比べて画像を明るく表示させることができる。
【0024】
空間光変調器12の変調部120で変調された変調光102は、第1環状ミラーアレイ15の反射面150または第2環状ミラーアレイ16の反射面160に向けて進行する。第1環状ミラーアレイ15の反射面150に向けて進行した変調光102は、その反射面150で反射されて、投射光105として投射される。第2環状ミラーアレイ16の反射面160に向けて進行した変調光102は、その反射面160で反射されて、投射光106として投射される。
【0025】
第1環状ミラーアレイ15は、複数の反射鏡(第1反射鏡とも呼ぶ)が円環状に配置された構成である。複数の反射鏡の各々は、少なくとも垂直方向に曲率のある反射面150を有する反射鏡である。
図2の例において、第1環状ミラーアレイ15を構成する12枚の反射鏡は、それらの反射面150を斜め下方に向けて環状に配置される。第1環状ミラーアレイ15を構成する反射鏡の数は、12枚に限定されない。第1環状ミラーアレイ15が形成する円環の径は、第2環状ミラーアレイ16が形成する円環の径よりも大きい。第1環状ミラーアレイ15の内側には、第2環状ミラーアレイ16が同心円状に配置される。
【0026】
第2環状ミラーアレイ16は、複数の反射鏡(第2反射鏡とも呼ぶ)が円環状に配置された構成である。複数の反射鏡の各々は、少なくとも垂直方向に曲率のある反射面160を有する反射鏡である。
図2の例において、第2環状ミラーアレイ16を構成する12枚の反射鏡は、それらの反射面160を斜め下方に向けて環状に配置される。第2環状ミラーアレイ16を構成する反射鏡の数は、12枚に限定されない。
図2の例において、第2環状ミラーアレイ16を構成する反射鏡の数は、第1環状ミラーアレイ15を構成する反射鏡の数と同じである。第2環状ミラーアレイ16を構成する反射鏡の数は、第1環状ミラーアレイ15を構成する反射鏡の数と異なっていてもよい。第2環状ミラーアレイ16を構成する反射鏡の大きさや形状は、第1環状ミラーアレイ15を構成する反射鏡と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2環状ミラーアレイ16が形成する円環の径は、第1環状ミラーアレイ15が形成する円環の径よりも小さい。第2環状ミラーアレイ16の外側には、第1環状ミラーアレイ15が同心円状に配置される。
【0027】
第1環状ミラーアレイ15を構成する反射鏡の反射面150と、第2環状ミラーアレイ16を構成する反射鏡の反射面160とは、水平面内において異なる向きに向けられる。
図2の例においては、第2環状ミラーアレイ16を構成する反射鏡の反射面160は、第1環状ミラーアレイ15を構成する反射鏡の境界に向けられる。
【0028】
図4は、4枚の反射鏡で構成された第1環状ミラーアレイ15の一例を示す概念図である。
図4は、下方の視座から見上げた下面図である。第1環状ミラーアレイ15を構成する4枚の反射鏡の反射面150で反射された光の投射領域P
1の間には、死角領域Bが形成される。死角領域Bには、反射面150で反射された光が投射されない。
【0029】
図5は、4枚の反射鏡で構成された第1環状ミラーアレイ15の内側に、4枚の反射鏡で構成された第2環状ミラーアレイ16が配置された一例を示す概念図である。
図5は、下方の視座から見上げた下面図である。第1環状ミラーアレイ15を構成する4枚の反射鏡の反射面150で反射された光の投射領域P
1の間には、第2環状ミラーアレイ16を構成する4枚の反射鏡の反射面160で反射された光の投射領域P
2が形成される。投射領域P
1と投射領域P
2との間には、死角領域Bが形成される。死角領域Bには、反射面150で反射された光が投射されない。
【0030】
図5のように、第1環状ミラーアレイ15が単独で配置される例(
図4)と比較すると、第1環状ミラーアレイ15と第2環状ミラーアレイ16とを組み合わせることによって、死角領域Bの面積が小さくなる。
図4~
図5には、第1環状ミラーアレイ15および第2環状ミラーアレイ16が4枚の反射鏡で構成される例をあげた。第1環状ミラーアレイ15および第2環状ミラーアレイ16を構成する反射鏡の数を増やすほど、死角領域Bの面積が小さくなる。実際には、第1環状ミラーアレイ15および第2環状ミラーアレイ16を構成する反射鏡の数を増やすことによって、死角領域Bがほとんどない状況にする。
【0031】
第1環状ミラーアレイ15および第2環状ミラーアレイ16は、空間光変調器12の変調部120で変調された変調光102のうち、投射対象の光成分(所望光とも呼ぶ)が照射される。反射面150に照射された変調光102は、その反射面150で反射される。反射面150で反射された光(投射光105)は、空間光信号として投射される。同様に、反射面160に照射された変調光102は、その反射面160で反射される。反射面160で反射された光(投射光106)は、空間光信号として投射される。投射光106は、投射光105が投射されない死角領域Bを含む領域にも投射される。また、投射光105は、投射光106が投射されない死角領域Bを含む領域にも投射される。すなわち、投射光105および投射光106は、互いの死角領域Bを低減し合う。
【0032】
第1環状ミラーアレイ15の反射面150および第2環状ミラーアレイ16の反射面160は、互いの死角領域Bを補いながら、水平面内において360度の方位に向けられる。そのため、送信装置1を用いれば、空間光変調器12の変調部120に設定されたパターン(位相画像)を制御することによって、水平面内における360度の方向に向けて、投射光105または投射光106を投射できる。
【0033】
図6は、光源11に含まれる複数の出射器から照射された照明光101を、異なる反射鏡で反射させることによって、空間光信号を多方向に送信する例を示す概念図である。
図6は、天板131を下方の視座から見上げた図である。送信装置1は、変調部120に設定された複数の変調領域Rを異なる反射鏡に対応付けることによって、複数の方向に配置された通信対象に向けて、同時に空間光信号(投射光105、投射光106)を送信できる。
【0034】
図7は、光源11に含まれる複数の出射器から照射された照明光101に由来する変調光102を、単一の反射鏡で反射させることによって、空間光信号を一方向に送信する例を示す概念図である。
図7は、天板131を下方の視座から見上げた図である。通信対象を探索するモードにおいて、送信装置1は、変調部120に設定された複数の変調領域Rを単一の反射鏡に対応付けることによって、その反射鏡の反射面の反射方向に向けて、複数の光束の空間光信号を送信できる。そのため、
図7のような送信制御によれば、複数の光束の空間光信号を送信することによって、反射鏡の反射面の反射方向に位置する通信対象の検出速度が向上する。また、送信装置1は、単一の通信対象に向けて、多重化された空間光信号(投射光105、投射光106)を送信するように制御されてもよい。多重化された空間光信号を送信する場合、送信装置1は、照明光101に由来する変調光102が反射鏡の反射面の一点に照射されるように、空間光変調器12の変調部120に位相画像を設定する。
【0035】
通信制御部19(通信制御手段)は、光源11および空間光変調器12を制御する。例えば、通信制御部19は、プロセッサとメモリを含むマイクロコンピュータによって実現される。通信制御部19は、投射される画像に対応する位相画像を変調部120に設定する。通信制御部19は、空間光変調器12の変調部120に設定された変調領域に、投射される画像に対応する位相画像を設定する。投射される画像の位相画像は、記憶部(図示しない)に予め記憶させておけばよい。投射される画像の形状や大きさには、特に限定を加えない。
【0036】
通信制御部19は、変調部120に照射される照明光101の位相と、その変調部120で反射される変調光102の位相との差分を決定づけるパラメータが変化するように、空間光変調器12を制御する。通信制御部19による空間光変調器12の駆動方法は、空間光変調器12の変調方式に応じて決定される。通信制御部19は、表示される画像に対応する位相画像が空間光変調器12の変調部120に設定された状態で、光源11を駆動させる。その結果、変調部120に位相画像が設定された状態で、光源11から出射された照明光101が変調部120に照射される。変調部120に照射された照明光101は、変調部120において変調される。
【0037】
また、通信制御部19は、通信対象(図示しない)との間の通信のために、光源11から出射される照明光101を変調させる。通信において、通信制御部19は、通信用の位相画像を空間光変調器12の変調部120に設定した状態で、光源11から照明光101を出射させるタイミングを制御する。そのような制御によって、照明光101が変調される。通信における照明光101の変調パターンは、任意に設定される。
【0038】
〔変形例1〕
次に、本実施形態の変形例1について図面を参照しながら説明する。本変形例は、筐体130の柱の部分を回避して空間光信号を送信するための柱回避ミラーが配置される例である。
【0039】
図8~9は、筐体130の窓Wの部分に形成された柱Pについて説明するための概念図である。
図8は、斜め上方の視座から筐体130を見た図である。
図9は、天板131を下方の視座から見上げた図である。
図9のように、第1環状ミラーアレイ15の反射面150または第2環状ミラーアレイ16の反射面160で反射された光の一部は、柱Pによって遮蔽されてしまう。
【0040】
図10~
図11は、本変形例の構成の一例(送信装置1-1)について説明するための概念図である。本変形例では、柱Pを避けて空間光信号(投射光104)を投射するための柱回避ミラー14が配置される。
図10は、柱回避ミラー14が追加された送信装置1-1の内部構成を側方の視座から見た図である。
図10においては、窓Wの部分で切断された筐体130を示す。
図11は、天板131を下方の視座から見上げた図である。
【0041】
柱回避ミラー14は、第2環状ミラーアレイ16の内側において、天板131から吊り下げられる。柱回避ミラー14の反射面140は、柱Pを避けた向きに向けられる。
図10~
図11の例では、4枚の柱回避ミラー14が追加される。柱回避ミラー14の数は、4枚に限定されない。柱回避ミラー14は、柱Pの裏側に回り込む方向にも投射光104が投射されるように構成されることが好ましい。
【0042】
本変形例によれば、柱回避ミラー14が追加されることによって、柱Pの方向にも空間光信号(投射光104)を投射できる。
【0043】
以上のように、本実施形態の送信装置は、光源、空間光変調器、第1環状ミラーアレイ、第2環状ミラーアレイ、および通信制御部を備える。光源、空間光変調器、第1環状ミラーアレイ、および第2環状ミラーアレイは、送信器を構成する。光源は、照明光を出射する。空間光変調器は、光源から出射された照明光が照射させる変調部を有する。空間光変調器は、変調部で変調された変調光を、第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイのうち少なくともいずれかに向けて出射する。第1環状ミラーアレイは、照明光の光軸を中心として円環状に配置された複数の反射鏡によって構成される。第2環状ミラーアレイは、平面視における第1環状ミラーアレイの内側の領域において、照明光の光軸を中心として円環状に配置された複数の反射鏡によって構成される。第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡は、空間光変調器から出射された変調光が側方に向けて反射されるように配置される。第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡の反射面は、第1環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡のうちいずれかの反射面の死角を含む方向に向けられる。通信制御部は、空間光通信に用いられる位相画像を空間光変調器の変調部に設定する。通信制御部は、位相画像が設定された変調部に照明光が照射されるように光源を制御する。
【0044】
本実施形態の送信器は、複数の反射鏡によって構成された第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイを備える。本実施形態の送信器には、水平面内において曲率を有する一枚の反射面で構成された環状ミラーを用いる場合と比較して、反射面の曲率半径が大きい反射鏡を用いることができる。本実施形態の送信器によれば、水平面内における投射角を小さくできるため、空間光信号が減衰しにくい。また、本実施形態によれば、第1環状ミラーアレイの死角領域を第2環状ミラーアレイで補うことによって、水平面内に沿った任意の方向に向けて空間光信号を送信できる。すなわち、本実施形態の送信器によれば、水平面内に沿った任意の方向に向けて、減衰しにくい空間光信号を送信できる。
【0045】
本実施形態の一態様において、第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡の反射面は、第1環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡の境界を含む方向に向けられる。本態様によれば、第1環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡の境界に発生する死角領域を、第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡で補うことができる。そのため、本態様によれば、水平面内に沿った任意の方向に向けて、減衰しにくい空間光信号を送信できる。
【0046】
本実施形態の一態様の送信器は、柱回避ミラーを備える。柱回避ミラーは、光源、空間光変調器、第1環状ミラーアレイ、および第2環状ミラーアレイを収納する筐体の柱を避けて、変調光を反射する位置に配置される。本態様によれば、筐体の柱を避けて変調光を反射する柱回避ミラーによって、筐体の柱の方向にも空間光信号を送信できる。
【0047】
本実施形態の一態様において、光源は、複数の出射器を有する。空間光変調器の変調部には、複数の変調領域が設定される。複数の出射器の各々は、複数の変調領域のいずれかに対応付けられる。通信制御部は、複数通信対象と同時通信するモードにおいて、第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイの各々を構成する反射鏡のうち、複数通信対象の各々に対応付けられた反射鏡に、複数の変調領域の各々で変調された変調光が照射されるように空間光変調器を制御する。通信制御部は、通信対象を探索するモードにおいて、第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイの各々を構成する反射鏡のうち単一の反射鏡に、複数の変調領域の各々で変調された変調光が照射されるように空間光変調器を制御する。本態様によれば、複数通信対象との間で、空間光信号を用いた空間光通信を同時に行うことができる。また、本態様によれば、単一通信対象に対して、多重化された空間光信号を送信できる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る送信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信装置は、空間光変調器の変調部で変調された変調光を折り返す中継ミラーを備える点において、第1の実施形態の送信装置とは異なる。
【0049】
(構成)
図12は、本実施形態に係る送信装置2の構成の一例を示す概念図である。送信装置2は、光源21、空間光変調器22、第1環状中継ミラー271、第2環状中継ミラー272、第1環状ミラーアレイ25、第2環状ミラーアレイ26、および通信制御部29を備える。光源21、空間光変調器22、第1環状中継ミラー271、第2環状中継ミラー272、第1環状ミラーアレイ25、および第2環状ミラーアレイ26は、送信器を構成する。送信器は、空間光信号を送信するための窓Wが形成された筐体230に格納される。
図12は、筐体230の内部に収納された送信装置2の内部構成を側方の視座から見た図である。
図12においては、窓Wの部分で切断された筐体230を示す。
図12は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。また、
図12の構成は、上下が逆さの状態で配置されてもよい。
【0050】
図12には、光源21、第1環状中継ミラー271、第1環状ミラーアレイ25、および第2環状ミラーアレイ26を支持する天板231を示す。第1環状中継ミラー271、第1環状ミラーアレイ25、および第2環状ミラーアレイ26は、天板231の下面に配置される。また、
図12には、空間光変調器22および第2環状中継ミラー272が配置される底板232を示す。空間光変調器22および第2環状中継ミラー272は、底板232の上面に配置される。
【0051】
図13は、天板231を下方の視座から見上げた概念図である。天板231の中央には、貫通孔Tが開口する。貫通孔Tは、光源21から出射された照明光201を、下方に向けて通過させるための開口である。
図13の例において、貫通孔Tの開口形状は矩形であるが、貫通孔Tの開口形状は矩形でなくてもよい。天板231の下面には、第1環状中継ミラー271、第1環状ミラーアレイ25、および第2環状ミラーアレイ26が配置される。第1環状中継ミラー271は、環状のミラーである。第1環状ミラーアレイ25および第2環状ミラーアレイ26は、複数の反射鏡が環状に配置されたミラーアレイである。第1環状中継ミラー271、第1環状ミラーアレイ25、および第2環状ミラーアレイ26は、同心円状に配置される。第1環状ミラーアレイ25を構成する複数の反射鏡の反射面250と、第2環状ミラーアレイ26を構成する複数の反射鏡の反射面260とは、いずれも異なる方向に向けられる。
【0052】
光源21は、第1の実施形態の光源11と同様の構成である。光源21は、照明光201を出射する。光源21の出射面は、天板231の貫通孔Tを介して、空間光変調器22の変調部220に向けられる。光源21は、貫通孔Tの内部に配置されてもよい。光源21は、天板231の下面や、天板231と空間光変調器22との間に配置されてもよい。その場合、天板231には、貫通孔Tが形成されなくてもよい。光源21から出射された照明光201は、貫通孔Tを通過して、空間光変調器22の変調部220に照射される。
【0053】
図14は、底板232を上方の視座から見下ろした概念図である。底板232の中央には、空間光変調器22が配置される。底板232の上面には、第2環状中継ミラー272が配置される。第2環状中継ミラー272は、環状のミラーである。
【0054】
空間光変調器22は、第1の実施形態の空間光変調器12と同様の構成である。空間光変調器22は、位相変調型の空間光変調器である。空間光変調器22は、変調部220を有する。変調部220には、複数の変調領域が設定される。
【0055】
複数の変調領域の各々には、通信制御部29の制御に応じて、投射光205または投射光206によって表示される像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。複数の変調領域の各々には、その変調領域に対応付けられた出射器から出射されたレーザ光に由来する照明光201が照射される。変調部220に設定された複数の変調領域の各々に入射した照明光201は、複数の変調領域の各々に設定されたパターン(位相画像)に応じて変調される。複数の変調領域の各々で変調された変調光202は、第1環状中継ミラー271の反射面2710に向けて進行する。
【0056】
第1環状中継ミラー271は、天板231の中心点を中心として環状に形成された反射鏡である。第1環状中継ミラー271の反射面2710は、下方に配置された底板232の上面に向けられる。第1環状中継ミラー271は、第1環状ミラーアレイ25および第2環状ミラーアレイ26と同心円状に形成される。第1環状中継ミラー271は、第1環状ミラーアレイ25の内側に配置される。第1環状中継ミラー271の反射面2710には、空間光変調器22の変調部220で変調された変調光202が照射される。第1環状中継ミラー271の反射面2710に照射された変調光202は、その反射面2710で反射されて、第2環状中継ミラー272の反射面2720に向けて進行する。
【0057】
第2環状中継ミラー272は、底板232の中心点を中心として環状に形成された反射鏡である。第2環状中継ミラー272の反射面2720は、上方に配置された天板231の下面に向けられる。第2環状中継ミラー272は、平面視において、第1環状中継ミラー271、第1環状ミラーアレイ25、および第2環状ミラーアレイ26と同心円状に形成される。第1環状中継ミラー271の径と比べて、第2環状中継ミラー272の径の方が大きい。第2環状中継ミラー272の反射面2720には、第1環状中継ミラー271の反射面2710で反射された変調光202が照射される。第2環状中継ミラー272の反射面2720に照射された変調光202は、その反射面2720で反射されて、第1環状ミラーアレイ25の反射面250または第2環状ミラーアレイ26の反射面260に向けて進行する。
【0058】
第1環状ミラーアレイ25は、第1の実施形態の第1環状ミラーアレイ15と同様の構成である。第1環状ミラーアレイ25は、複数の反射鏡が円環状に配置された構成である。複数の反射鏡の各々は、少なくとも垂直方向に曲率のある反射面250を有する反射鏡である。
図13の例において、第1環状ミラーアレイ25を構成する12枚の反射鏡は、それらの反射面250を斜め下方に向けて環状に配置される。第1環状ミラーアレイ25を構成する反射鏡の数は、12枚に限定されない。第1環状ミラーアレイ25が形成する円環の径は、第2環状ミラーアレイ26が形成する円環の径よりも大きい。第1環状ミラーアレイ25の内側には、第2環状ミラーアレイ26および第1環状中継ミラー271が同心円状に配置される。
【0059】
第2環状ミラーアレイ26は、第1の実施形態の第2環状ミラーアレイ16と同様の構成である。第2環状ミラーアレイ26は、複数の反射鏡が円環状に配置された構成である。複数の反射鏡の各々は、少なくとも垂直方向に曲率のある反射面260を有する反射鏡である。
図13の例において、第2環状ミラーアレイ26を構成する12枚の反射鏡は、それらの反射面260を斜め下方に向けて環状に配置される。第2環状ミラーアレイ26を構成する反射鏡の数は、12枚に限定されない。
図13の例において、第2環状ミラーアレイ26を構成する反射鏡の数は、第1環状ミラーアレイ25を構成する反射鏡の数と同じである。第2環状ミラーアレイ26を構成する反射鏡の数は、第1環状ミラーアレイ25を構成する反射鏡の数と異なっていてもよい。第2環状ミラーアレイ26を構成する反射鏡の大きさや形状は、第1環状ミラーアレイ25を構成する反射鏡と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2環状ミラーアレイ26が形成する円環の径は、第1環状ミラーアレイ25が形成する円環の径よりも小さい。第2環状ミラーアレイ26の外側には、第1環状ミラーアレイ25が同心円状に配置される。また、第2環状ミラーアレイ26の内側には、第1環状中継ミラー271が同心円状に配置される。
【0060】
第1環状ミラーアレイ25を構成する反射鏡の反射面250と、第2環状ミラーアレイ26を構成する反射鏡の反射面260とは、水平面内において異なる向きに向けられる。
図13の例においては、第2環状ミラーアレイ26を構成する反射鏡の反射面260は、第1環状ミラーアレイ25を構成する反射鏡の境界に向けられる。このように第1環状ミラーアレイ25と第2環状ミラーアレイ26とを組み合わせることによって、死角領域の面積が小さくなる。
【0061】
第1環状ミラーアレイ25の反射面250に照射された変調光202は、その反射面250で反射される。反射面250で反射された光(投射光205)は、空間光信号として投射される。同様に、第2環状ミラーアレイ26の反射面260に照射された変調光202は、その反射面260で反射される。反射面260で反射された光(投射光206)は、空間光信号として投射される。投射光206は、投射光205が投射されない死角領域を含む領域にも投射される。また、投射光205は、投射光206が投射されない死角領域を含む領域にも投射される。すなわち、投射光205および投射光206は、互いの死角領域を低減し合う。
【0062】
第1環状ミラーアレイ25の反射面250および第2環状ミラーアレイ26の反射面260は、互いの死角領域を補いながら、水平面内において360度の方位に向けられる。そのため、送信装置2を用いれば、空間光変調器22の変調部220に設定されたパターン(位相画像)を制御することによって、水平面内における360度の方向に向けて、投射光205または投射光206を投射できる。
【0063】
通信制御部29(通信制御手段)は、第1の実施形態の通信制御部19と同様の構成である。通信制御部29は、光源21および空間光変調器22を制御する。例えば、通信制御部29は、プロセッサとメモリを含むマイクロコンピュータによって実現される。通信制御部29は、投射される画像に対応する位相画像を変調部220に設定する。通信制御部29は、空間光変調器22の変調部220に設定された変調領域に、投射される画像に対応する位相画像を設定する。投射される画像の位相画像は、記憶部(図示しない)に予め記憶させておけばよい。投射される画像の形状や大きさには、特に限定を加えない。
【0064】
通信制御部29は、変調部220に照射される照明光201の位相と、その変調部220で反射される変調光202の位相との差分を決定づけるパラメータが変化するように、空間光変調器22を制御する。通信制御部29による空間光変調器22の駆動方法は、空間光変調器22の変調方式に応じて決定される。通信制御部29は、表示される画像に対応する位相画像が空間光変調器22の変調部220に設定された状態で、光源21を駆動させる。その結果、変調部220に位相画像が設定された状態で、光源21から出射された照明光201が変調部220に照射される。変調部220に照射された照明光201は、変調部220において変調される。
【0065】
また、通信制御部29は、通信対象(図示しない)との間の通信のために、光源21から出射される照明光201を変調させる。通信において、通信制御部29は、通信用の位相画像を空間光変調器22の変調部220に設定した状態で、光源21から照明光201を出射させるタイミングを制御する。そのような制御によって、照明光201が変調される。通信における照明光201の変調パターンは、任意に設定される。
【0066】
〔変形例2〕
次に、本実施形態の変形例2について図面を参照しながら説明する。本変形例は、中継ミラーの枚数を増やした構成例である。本変形例においては、主に中継ミラーについて説明し、その他の構成については説明を省略する。
【0067】
図15は、本変形例の構成の一例(送信装置2-2)について説明するための概念図である。本変形例では、第1環状中継ミラー271および第2環状中継ミラー272に加えて、第3環状中継ミラー273および第4環状中継ミラー274が配置される。
図15は、第3環状中継ミラー273および第4環状中継ミラー274が追加された送信装置2-2の内部構成を側方の視座から見た図である。
図15においては、窓Wの部分で切断された筐体230を示す。
【0068】
第1環状中継ミラー271および第3環状中継ミラー273は、天板231の下面に配置される。第1環状中継ミラー271の径と比べて、第3環状中継ミラー273の径の方が大きい。第3環状中継ミラー273は、第1環状中継ミラー271の外側に配置される。第3環状中継ミラー273の外側には、第2環状ミラーアレイ26が配置される。第1環状中継ミラー271、第3環状中継ミラー273、第1環状ミラーアレイ25、および第2環状ミラーアレイ26は、天板231の中心点を中心として同心円状に配置される。
【0069】
第2環状中継ミラー272および第4環状中継ミラー274は、底板232の上面に配置される。第2環状中継ミラー272の径と比べて、第4環状中継ミラー274の径の方が大きい。第4環状中継ミラー274は、第2環状中継ミラー272の外側に配置される。第2環状中継ミラー272および第4環状中継ミラー274は、底板232の中心点を中心として同心円状に配置される。
【0070】
第1環状中継ミラー271は、天板231の中心点を中心として環状に形成された反射鏡である。第1環状中継ミラー271の反射面2710は、下方に配置された底板232の上面に向けられる。第1環状中継ミラー271は、第3環状中継ミラー273、第1環状ミラーアレイ25、および第2環状ミラーアレイ26と同心円状に形成される。第1環状中継ミラー271は、第3環状中継ミラー273の内側に配置される。第1環状中継ミラー271の反射面2710には、空間光変調器22の変調部220で変調された変調光202が照射される。第1環状中継ミラー271の反射面2710に照射された変調光202は、その反射面2710で反射されて、第2環状中継ミラー272の反射面2720に向けて進行する。
【0071】
第2環状中継ミラー272は、底板232の中心点を中心として環状に形成された反射鏡である。第2環状中継ミラー272の反射面2720は、上方に配置された天板231の下面に向けられる。第2環状中継ミラー272は、第4環状中継ミラー274と同心円状に形成される。第4環状中継ミラー274の径と比べて、第2環状中継ミラー272の径の方が小さい。また、第1環状中継ミラー271の径と比べて、第2環状中継ミラー272の径の方が大きい。第2環状中継ミラー272の反射面2720には、第1環状中継ミラー271の反射面2710で反射された変調光202が照射される。第2環状中継ミラー272の反射面2720に照射された変調光202は、その反射面2720で反射されて、第3環状中継ミラー273の反射面2730に向けて進行する。
【0072】
第3環状中継ミラー273は、天板231の中心点を中心として環状に形成された反射鏡である。第3環状中継ミラー273の反射面2730は、下方に配置された底板232の上面に向けられる。第3環状中継ミラー273は、第1環状中継ミラー271、第1環状ミラーアレイ25、および第2環状ミラーアレイ26と同心円状に形成される。第3環状中継ミラー273は、第1環状中継ミラー271の外側に配置される。第3環状中継ミラー273の反射面2730には、第2環状中継ミラー272の反射面2720で反射された変調光202が照射される。第3環状中継ミラー273の反射面2730に照射された変調光202は、その反射面2730で反射されて、第4環状中継ミラー274の反射面2740に向けて進行する。
【0073】
第4環状中継ミラー274は、底板232の中心点を中心として環状に形成された反射鏡である。第4環状中継ミラー274の反射面2740は、上方に配置された天板231の下面に向けられる。第4環状中継ミラー274は、第2環状中継ミラー272と同心円状に形成される。第2環状中継ミラー272の径と比べて、第4環状中継ミラー274の径の方が大きい。また、第3環状中継ミラー273の径と比べて、第4環状中継ミラー274の径の方が大きい。第4環状中継ミラー274の反射面2740には、第3環状中継ミラー273の反射面2730で反射された変調光202が照射される。第4環状中継ミラー274の反射面2740に照射された変調光202は、その反射面2740で反射されて、第1環状ミラーアレイ25の反射面250または第2環状ミラーアレイ26の反射面260に向けて進行する。
【0074】
本変形例によれば、中継ミラーの枚数を増やすことによって、送信装置2と比べて、第1環状ミラーアレイ25および第2環状ミラーアレイ26を構成する反射鏡の大きさや数を増大できる。また、本変形例の送信装置2-2は、送信装置2と比べて、高さを低くすることができる。
【0075】
〔変形例3〕
次に、本実施形態の変形例3について図面を参照しながら説明する。本変形例は、光源21と空間光変調器22の位置を入れ替えた構成例である。
【0076】
図16は、本変形例の構成の一例(送信装置2-3)について説明するための概念図である。本変形例では、天板231の下面に空間光変調器22が配置され、底板232の上面に光源21が配置される。
図16は、本変形例の送信装置2-3の内部構成を側方の視座から見た図である。
図16においては、窓Wの部分で切断された筐体230を示す。
【0077】
光源21は、底板232の上面の中央に配置される。また、空間光変調器22は、天板231の中央に配置される。光源21の出射面と、空間光変調器22の変調部220とは、互いに対向する。底板232の上面には、第1環状中継ミラー271および第3環状中継ミラー273が配置される。第1環状中継ミラー271と第3環状中継ミラー273とは、底板232の中心点を中心として、同心円状に配置される。第1環状中継ミラー271は、第3環状中継ミラー273の内側に配置される。天板231の下面には、第2環状中継ミラー272が配置される。平面視において、第1環状中継ミラー271、第2環状中継ミラー272、および第3環状中継ミラー273は、同心円状に配置される。
【0078】
光源21から出射された照明光201は、空間光変調器22の変調部220に照射される。空間光変調器22の変調部220に照射された照明光201は、その変調部220で変調される。変調部220で変調された変調光202は、第1環状中継ミラー271の反射面2710に向けて進行する。
【0079】
第1環状中継ミラー271の反射面2710に照射された変調光202は、その反射面2710で反射される。反射面2710で反射された変調光202は、第2環状中継ミラー272の反射面2720に向けて進行する。第2環状中継ミラー272の反射面2720に照射された変調光202は、その反射面2720で反射される。反射面2720で反射された変調光202は、第3環状中継ミラー273の反射面2730に向けて進行する。第3環状中継ミラー273の反射面2730に照射された変調光202は、その反射面2730で反射される。反射面2730で反射された変調光202は、第1環状ミラーアレイ25の反射面250または第2環状ミラーアレイ26の反射面260に向けて進行する。
【0080】
第1環状ミラーアレイ25の反射面250に照射された変調光202は、その反射面250で反射されて、空間光信号(投射光205)として送信される。第2環状ミラーアレイ26の反射面260に照射された変調光202は、その反射面260で反射されて、空間光信号(投射光206)として送信される。
【0081】
本変形例によれば、光源21や空間光変調器22の配置におけるバリエーションが広がる。底板232の側に光源21を配置できれば、より高出力の光源21を用いることができる。
【0082】
以上のように、本実施形態の送信装置は、光源、空間光変調器、少なくとも2つの環状中継ミラー、第1環状ミラーアレイ、第2環状ミラーアレイ、および通信制御部を備える。光源、空間光変調器、第1環状ミラーアレイ、および第2環状ミラーアレイは、送信器を構成する。光源は、照明光を出射する。空間光変調器は、光源から出射された照明光が照射させる変調部を有する。空間光変調器は、変調部で変調された変調光を、いずれかの環状中継ミラーの反射面に向けて出射する。少なくとも2つの環状中継ミラーは、照明光の光軸を中心として円環状に形成される。少なくとも2つの環状中継ミラーは、第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイのうち少なくともいずれかに向けて、空間光変調器から出射された変調光を中継反射する。第1環状ミラーアレイは、照明光の光軸を中心として円環状に配置された複数の反射鏡によって構成される。第2環状ミラーアレイは、平面視における第1環状ミラーアレイの内側の領域において、照明光の光軸を中心として円環状に配置された複数の反射鏡によって構成される。第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡は、空間光変調器から出射された変調光が側方に向けて反射されるように配置される。第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡の反射面は、第1環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡のうちいずれかの反射面の死角領域を含む方向に向けられる。通信制御部は、空間光通信に用いられる位相画像を空間光変調器の変調部に設定する。通信制御部は、位相画像が設定された変調部に照明光が照射されるように光源を制御する。
【0083】
本実施形態の構成では、空間光変調器の変調部で変調された変調光が、環状中継ミラーの反射面を介して、第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイのうち少なくともいずれかの反射面に向けて進行する。本実施形態の構成によれば、環状中継ミラーで変調光を折り返し反射することによって、空間光変調器と反射器との間隔を小さくできる。そのため、本実施形態によれば、送信器を薄型化できる。
【0084】
本実施形態の一態様の送信器は、第1環状中継ミラーおよび第2環状中継ミラーを備える。第1環状中継ミラーは、照明光の光軸を中心として円環状に形成される。第1環状中継ミラーは、空間光変調器で変調された変調光の光路に配置される。第1環状中継ミラーは、反射面に照射された変調光を第2環状中継ミラーの反射面に向けて反射する。第2環状中継ミラーは、平面視において、第1環状中継ミラーの外側の領域に、照明光の光軸を中心として円環状に形成される。第2環状中継ミラーは、第1環状中継ミラーの反射面で反射された変調光の光路に配置される。第2環状中継ミラーは、反射面に照射された変調光を、第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイのうち少なくともいずれかに向けて反射する。本態様によれば、第1環状中継ミラーおよび第2環状中継ミラーで変調光を折り返し反射することによって、空間光変調器と反射器の間隔を小さくできる。そのため、本実施形態によれば、送信器を薄型化できる。
【0085】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る送信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信装置は、空間光信号の電力をモニターする光検知器を備える点において、第1~第2の実施形態の送信装置とは異なる。
【0086】
(構成)
図17は、本実施形態に係る送信装置3の構成の一例を示す概念図である。送信装置3は、光源31、空間光変調器32、光検知器34、第1環状ミラーアレイ35、第2環状ミラーアレイ36、および通信制御部39を備える。光源31、空間光変調器32、光検知器34、第1環状ミラーアレイ35、および第2環状ミラーアレイ36は、送信器を構成する。送信器は、空間光信号を送信するための窓Wが形成された筐体330に格納される。
図17は、筐体330の内部に収納された送信装置3の内部構成を側方の視座から見た図である。
図17においては、窓Wがない柱Pの部分で切断された筐体330を示す。
図17には、柱Pの部分を誇張して示す。
図17は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。また、
図17の構成は、上下が逆さの状態で配置されてもよい。
【0087】
図18は、柱Pの部分を通過する切断面で筐体330を切断した断面図である。
図18は、天板331を下方の視座から見上げた概念図である。
図18には、天板331の下面に配置された、光源31、第1環状ミラーアレイ35、および第2環状ミラーアレイ36を示す。天板331の中央には、貫通孔Tが開口する。貫通孔Tは、光源31から出射された照明光301を、下方に向けて通過させるための開口である。また、
図18には、柱Pの部分に配置された光検知器34を示す。
【0088】
光源31は、第1の実施形態の光源11と同様の構成である。光源31は、照明光301を出射する。光源31の出射面は、天板331の貫通孔Tを介して、空間光変調器32の変調部320に向けられる。光源31は、貫通孔Tの内部に配置されてもよい。光源31は、天板331の下面や、天板331と空間光変調器32との間に配置されてもよい。その場合、天板331には、貫通孔Tが形成されなくてもよい。光源31から出射された照明光301は、貫通孔Tを通過して、空間光変調器32の変調部320に照射される。
【0089】
空間光変調器32は、第1の実施形態の空間光変調器12と同様の構成である。空間光変調器32は、位相変調型の空間光変調器である。空間光変調器32は、変調部320を有する。変調部320には、複数の変調領域が設定される。
【0090】
複数の変調領域の各々には、通信制御部39の制御に応じて、投射光305または投射光306によって表示される像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。複数の変調領域の各々には、その変調領域に対応付けられた出射器から出射されたレーザ光に由来する照明光301が照射される。変調部320に設定された複数の変調領域の各々に入射した照明光301は、複数の変調領域の各々に設定されたパターン(位相画像)に応じて変調される。複数の変調領域の各々で変調された変調光302は、第1環状ミラーアレイ35の反射面350、第2環状ミラーアレイ36の反射面360、または光検知器34に向けて進行する。
【0091】
第1環状ミラーアレイ35は、第1の実施形態の第1環状ミラーアレイ15と同様の構成である。第1環状ミラーアレイ35は、複数の反射鏡が円環状に配置された構成である。複数の反射鏡の各々は、少なくとも垂直方向に曲率のある反射面350を有する反射鏡である。
図18の例において、第1環状ミラーアレイ35を構成する12枚の反射鏡は、それらの反射面350を斜め下方に向けて環状に配置される。第1環状ミラーアレイ35を構成する反射鏡の数は、12枚に限定されない。第1環状ミラーアレイ35が形成する円環の径は、第2環状ミラーアレイ36が形成する円環の径よりも大きい。第1環状ミラーアレイ35の内側には、第2環状ミラーアレイ36が同心円状に配置される。
【0092】
第2環状ミラーアレイ36は、第1の実施形態の第2環状ミラーアレイ16と同様の構成である。第2環状ミラーアレイ36は、複数の反射鏡が円環状に配置された構成である。複数の反射鏡の各々は、少なくとも垂直方向に曲率のある反射面360を有する反射鏡である。
図18の例において、第2環状ミラーアレイ36を構成する12枚の反射鏡は、それらの反射面360を斜め下方に向けて環状に配置される。第2環状ミラーアレイ36を構成する反射鏡の数は、12枚に限定されない。
図18の例において、第2環状ミラーアレイ36を構成する反射鏡の数は、第1環状ミラーアレイ35を構成する反射鏡の数と同じである。第2環状ミラーアレイ36を構成する反射鏡の数は、第1環状ミラーアレイ35を構成する反射鏡の数と異なっていてもよい。第2環状ミラーアレイ36を構成する反射鏡の大きさや形状は、第1環状ミラーアレイ35を構成する反射鏡と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2環状ミラーアレイ36が形成する円環の径は、第1環状ミラーアレイ35が形成する円環の径よりも小さい。第2環状ミラーアレイ36の外側には、第1環状ミラーアレイ35が同心円状に配置される。
【0093】
第1環状ミラーアレイ35を構成する反射鏡の反射面350と、第2環状ミラーアレイ36を構成する反射鏡の反射面360とは、水平面内において異なる向きに向けられる。
図18の例においては、第2環状ミラーアレイ36を構成する反射鏡の反射面360は、第1環状ミラーアレイ35を構成する反射鏡の境界に向けられる。このように第1環状ミラーアレイ35と第2環状ミラーアレイ36とを組み合わせることによって、死角領域の面積が小さくなる。
【0094】
第1環状ミラーアレイ35の反射面350に照射された変調光302は、その反射面350で反射される。反射面350で反射された光(投射光305)は、空間光信号として投射される。同様に、第2環状ミラーアレイ36の反射面360に照射された変調光302は、その反射面360で反射される。反射面360で反射された光(投射光306)は、空間光信号として投射される。投射光306は、投射光305が投射されない死角領域を含む領域にも投射される。また、投射光305は、投射光306が投射されない死角領域を含む領域にも投射される。すなわち、投射光305および投射光306は、互いの死角領域を低減し合う。
【0095】
第1環状ミラーアレイ35の反射面350および第2環状ミラーアレイ36の反射面360は、互いの死角領域を補いながら、水平面内において360度の方位に向けられる。そのため、送信装置3を用いれば、空間光変調器32の変調部320に設定されたパターン(位相画像)を制御することによって、水平面内における360度の方向に向けて、投射光305または投射光306を投射できる。
【0096】
また、光電力計測モードにおいては、光検知器34に変調光302が照射される。光検知器34は、照射された変調光302を電気信号に変換する。光検知器34によって変換された電気信号は、通信制御部39に出力される。通信制御部39は、光検知器34から出力された電気信号に基づいて、変調光302の光電力を計測する。
【0097】
光検知器34は、光電力の計測対象である変調光302の波長領域の光を受光する受光素子である。例えば、光検知器34は、可視領域の光に感度を有する。例えば、光検知器34は、赤外領域の光に感度を有する。光検知器34は、例えば1.5μm(マイクロメートル)帯の波長の光に感度を有する。なお、光検知器34が感度を有する光の波長帯は、1.5μm帯に限定されない。光検知器34が受光する光の波長帯は、受信対象の空間光信号の波長に合わせて、任意に設定できる。光検知器34が受光する光の波長帯は、例えば0.8μm帯や、1.55μm帯、2.2μm帯に設定されてもよい。また、光検知器34が受光する光の波長帯は、例えば0.8~1μm帯であってもよい。
【0098】
例えば、光検知器34は、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの素子によって実現できる。例えば、光検知器34は、アバランシェフォトダイオードによって実現される。なお、光検知器34は、光信号を電気信号に変換できさえすれば、フォトダイオードやフォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード以外の素子によって実現されてもよい。
【0099】
通信制御部39は、光源31および空間光変調器32を制御する。例えば、通信制御部39は、プロセッサとメモリを含むマイクロコンピュータによって実現される。通信制御部39は、投射される画像に対応する位相画像を変調部320に設定する。通信制御部39は、空間光変調器32の変調部320に設定された変調領域に、投射される画像に対応する位相画像を設定する。投射される画像の位相画像は、記憶部(図示しない)に予め記憶させておけばよい。投射される画像の形状や大きさには、特に限定を加えない。
【0100】
通信制御部39は、変調部320に照射される照明光301の位相と、その変調部320で反射される変調光302の位相との差分を決定づけるパラメータが変化するように、空間光変調器32を制御する。通信制御部39による空間光変調器32の駆動方法は、空間光変調器32の変調方式に応じて決定される。通信制御部39は、表示される画像に対応する位相画像が空間光変調器32の変調部320に設定された状態で、光源31を駆動させる。その結果、変調部320に位相画像が設定された状態で、光源31から出射された照明光301が変調部320に照射される。変調部320に照射された照明光301は、変調部320において変調される。
【0101】
また、通信制御部39は、通信対象(図示しない)との間の通信のために、光源31から出射される照明光301を変調させる。通信において、通信制御部39は、通信用の位相画像を空間光変調器32の変調部320に設定した状態で、光源31から照明光301を出射させるタイミングを制御する。そのような制御によって、照明光301が変調される。通信における照明光301の変調パターンは、任意に設定される。
【0102】
さらに、通信制御部39は、空間光信号(投射光305、投射光306)の光強度を実測する光電力計測モードに移行する。光電力計測モードにおいて、通信制御部39は、変調光302を光検知器34の方向に出射するパターン(位相画像)を、空間光変調器32の変調部320に設定する。通信制御部39は、変調光302の照射に応じて光検知器34から出力された電気信号を用いて、変調光302の光電力を計測する。通信制御部39は、計測された光電力に応じて、光源31の出力を調整する。例えば、通信制御部39は、予め設定された出力範囲に収まるように、光源31の出力を調整する。光源31の出力範囲については、特に限定を加えない。例えば、光源31の出力範囲は、法定の基準に従って設定される。
【0103】
以上のように、本実施形態の送信装置は、光源、空間光変調器、第1環状ミラーアレイ、第2環状ミラーアレイ、光検知器、および通信制御部を備える。光源、空間光変調器、第1環状ミラーアレイ、および第2環状ミラーアレイは、送信器を構成する。光源は、照明光を出射する。空間光変調器は、光源から出射された照明光が照射させる変調部を有する。空間光変調器は、変調部で変調された変調光を、第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイのうち少なくともいずれかに向けて出射する。第1環状ミラーアレイは、照明光の光軸を中心として円環状に配置された複数の反射鏡によって構成される。第2環状ミラーアレイは、平面視における第1環状ミラーアレイの内側の領域において、照明光の光軸を中心として円環状に配置された複数の反射鏡によって構成される。第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡は、空間光変調器から出射された変調光が側方に向けて反射されるように配置される。第2環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡の反射面は、第1環状ミラーアレイを構成する複数の反射鏡のうちいずれかの反射面の死角領域を含む方向に向けられる。例えば、光検知器は、筐体の柱の内側に配置される。光検知器は、第1環状ミラーアレイおよび前記第2環状ミラーアレイのいずれかの反射鏡で反射された変調光を検知する。通信制御部は、空間光通信に用いられる位相画像を空間光変調器の変調部に設定する。通信制御部は、位相画像が設定された変調部に照明光が照射されるように光源を制御する。通信制御部は、光電力計測モードにおいて、空間光変調器で変調された変調光を光検知器に向けて照射させるように空間光変調器を制御する。通信制御部は、光検知器によって検知された変調光の光電力を計測する。通信制御部は、計測された変調光の光電力に応じて光源の出力を調整する。
【0104】
本実施形態の送信装置は、光検知器を用いて、空間光信号(投射光)の光電力を直接計測できる。そのため、本態様によれば、実測された空間光信号の光電力に応じて、光源の出力を調整できる。
【0105】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、送信装置と受信装置とを組み合わせた構成である。送信装置は、第1~第3の実施形態うちいずれかの構成である。受信装置は、空間光信号を受信できる構成であれば、特に限定しない。以下においては、ボールレンズを含む受光機能を備えた受信装置の例をあげる。なお、本実施形態の通信装置は、ボールレンズを含む受光機能ではなく、その他の受光機能を備えた受信装置を備えてもよい。
【0106】
図19は、本実施形態に係る通信装置400の構成の一例を示す概念図である。通信装置400は、送信器40、受信器47、および通信制御装置49を備える。通信装置400は、外部の通信対象と空間光信号を送受信し合う。そのため、通信装置400には、空間光信号を送受信するための開口や窓が形成される。
【0107】
送信器40は、第1~第3に係る実施形態の送信装置のうちいずれかに含まれる送信器である。送信器40は、通信制御装置49から制御信号を取得する。送信器40は、制御信号に応じた空間光信号を投射する。送信器40から投射された空間光信号は、その空間光信号の送信先の通信対象(図示しない)によって受光される。
【0108】
受信器47は、通信対象(図示しない)から送信された空間光信号を受信する。受信器47は、受信した空間光信号を電気信号に変換する。受信器47は、変換後の電気信号を通信制御装置49に出力する。例えば、受信器47は、ボールレンズを含む受光機能を備える。また、受信器47は、ボールレンズを含まない受光機能を有してもよい。
【0109】
通信制御装置49は、受信器47から出力された信号を取得する。通信制御装置49は、取得した信号に応じた処理を実行する。通信制御装置49が実行する処理については、特に限定を加えない。通信制御装置49は、実行した処理に応じた光信号を送信するための制御信号を、送信器40に出力する。例えば、通信制御装置49は、受信器47が受信した信号に含まれる情報に応じて、予め決められた条件に基づく処理を実行する。例えば、通信制御装置49は、受信器47が受信した信号に含まれる情報に応じて、通信装置400の管理者によって指定された処理を実行する。
【0110】
〔受信器〕
次に、受信器47の構成について図面を参照しながら説明する。
図20は、受信器47の構成の一例について説明するための概念図である。受信器47は、ボールレンズ471、受光素子473、および受信回路475を備える。
図20は、受信器47の内部構成を側方の視座から見た側面図である。受信回路475の位置については、特に限定を加えない。受信回路475は、受信器47の内部に配置されてもよいし、受信器47の外部に配置されてもよい。また、受信回路475の機能を通信制御装置49に含めてもよい。
【0111】
ボールレンズ471は、球形のレンズである。ボールレンズ471は、通信対象から送信された空間光信号を集光する光学素子である。ボールレンズ471は、任意の角度から見て、球形である。ボールレンズ471の一部は、受信器47の筐体に開けられた開口から突出する。ボールレンズ471は、入射された空間光信号を集光する。開口から突出したボールレンズ471に入射した空間光信号が集光される。空間光信号を集光できさえすれば、ボールレンズ471の一部は、開口から突出していなくてもよい。
【0112】
ボールレンズ471によって集光された空間光信号に由来する光(光信号)は、そのボールレンズ471の集光領域に向けて集光される。ボールレンズ471は、球形であるため、任意の方向から到来する空間光信号を集光する。すなわち、ボールレンズ471は、任意の方向から到来する空間光信号に対して、同様の集光性能を示す。ボールレンズ471に入射した光は、ボールレンズ471の内部に進入する際に屈折される。また、ボールレンズ471の内部を進行する光は、ボールレンズ471の外部に出射する際に、再度屈折される。ボールレンズ471から出射される光の大部分は、集光領域に集光される。
【0113】
例えば、ボールレンズ471は、ガラスや結晶、樹脂などの材料で構成できる。可視領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ471は、可視領域の光を透過/屈折するガラスや結晶、樹脂などの材料によって実現できる。例えば、ボールレンズ471は、クラウンガラスやフリントガラスなどの光学ガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ471は、BK(Boron Kron)などのクラウンガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ471は、LaSF(Lanthanum Schwerflint)などのフリントガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ471には、石英ガラスが適用できる。例えば、ボールレンズ471には、サファイア等の結晶が適用できる。例えば、ボールレンズ471には、アクリル等の透明樹脂が適用できる。
【0114】
空間光信号が近赤外領域の光(以下、近赤外線)である場合、ボールレンズ471には、近赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、1.5マイクロメートル(μm)程度の近赤外領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ471には、ガラスや結晶、樹脂などに加えて、シリコンなどの材料を適用できる。空間光信号が赤外領域の光(以下、赤外線)である場合、ボールレンズ471には、赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、空間光信号が赤外線である場合、ボールレンズ471には、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料を適用できる。空間光信号の波長領域の光を透過/屈折できれば、ボールレンズ471の材質には限定を加えない。ボールレンズ471の材質は、求められる屈折率や用途に応じて、適宜選択されればよい。
【0115】
ボールレンズ471は、受光素子473の配置された領域に向けて空間光信号を集光できれば、その他の集光器によって代替されてもよい。例えば、ボールレンズ471は、入射した空間光信号を、受光素子473の受光部に向けて導光する光線制御素子であってもよい。例えば、ボールレンズ471は、レンズや光線制御素子を組み合わせた構成であってもよい。例えば、ボールレンズ471によって集光される光信号を、受光素子473の受光部に向けて導光する機構が、追加されてもよい。
【0116】
受光素子473は、ボールレンズ471の後段に配置される。受光素子473は、ボールレンズ471の集光領域に配置される。受光素子473は、ボールレンズ471によって集光された光信号を受光する受光部を有する。ボールレンズ471によって集光された光信号は、受光素子473の受光部で受光される。受光素子473は、受光された光信号を電気信号(以下、信号)に変換する。受光素子473は、変換後の信号を、受信回路475に出力する。
図25には、受光素子473が単一の例を示す。例えば、ボールレンズ471の集光領域に、複数の受光素子473が配置されてもよい。例えば、ボールレンズ471の集光領域に、複数の受光素子473がアレイ化された受光素子アレイが配置されてもよい。
【0117】
受光素子473は、受信対象である空間光信号の波長領域の光を受光する。例えば、受光素子473は、可視領域の光に感度を有する。例えば、受光素子473は、赤外領域の光に感度を有する。受光素子473は、例えば1.5μm(マイクロメートル)帯の波長の光に感度を有する。なお、受光素子473が感度を有する光の波長帯は、1.5μm帯に限定されない。受光素子473が受光する光の波長帯は、受信対象の空間光信号の波長に合わせて、任意に設定できる。受光素子473が受光する光の波長帯は、例えば0.8μm帯や、1.55μm帯、2.2μm帯に設定されてもよい。また、受光素子473が受光する光の波長帯は、例えば0.8~1μm帯であってもよい。波長帯が短い方が、大気中の水分による吸収が小さいので、降雨時における光空間通信には有利である。また、受光素子473は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、空間光信号に由来する光信号を読み取ることができない。そのため、受光素子473よりも前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタが設置されてもよい。
【0118】
例えば、受光素子473は、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの素子によって実現できる。例えば、受光素子473は、アバランシェフォトダイオードによって実現される。アバランシェフォトダイオードによって実現された受光素子473は、高速通信に対応できる。なお、受光素子473は、光信号を電気信号に変換できさえすれば、フォトダイオードやフォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード以外の素子によって実現されてもよい。通信速度を向上させるために、受光素子473の受光部は、できるだけ小さい方が好ましい。例えば、受光素子473の受光部は、一辺が5mm(ミリメートル)程度の正方形の受光面を有する。例えば、受光素子473の受光部は、直径0.1~0.3mm程度の円形の受光面を有する。受光素子473の受光部の大きさや形状は、空間光信号の波長帯や通信速度などに応じて選定されればよい。
【0119】
例えば、受光素子473の前段に、偏光フィルタ(図示しない)が配置されてもよい。偏光フィルタは、受光素子473の受光部に対応付けて配置される。例えば、偏光フィルタは、受光素子473の受光部に、重ねて配置される。例えば、偏光フィルタは、受信対象の空間光信号の偏光状態に応じて選択されてもよい。例えば、受信対象の空間光信号が直線偏光の場合、偏光フィルタは1/2波長板を含む。例えば、受信対象の空間光信号が円偏光の場合、偏光フィルタは1/4波長板を含む。偏光フィルタの偏光特性に応じて、その偏光フィルタを通過した光信号の偏光状態が変換される。
【0120】
受信回路475は、受光素子473から出力された信号を取得する。受信回路475は、受光素子473からの信号を増幅する。受信回路475は、増幅された信号をデコードする。受信回路475によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信回路475によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0121】
〔通信装置〕
図21は、通信装置400の一例(通信装置401)を示す概念図である。通信装置401は、送信器410、受信器470、および通信制御装置(図示しない)を備える。
図21では、受信回路や通信制御装置を省略する。受信回路や通信制御装置は、通信装置401の内部に配置される。通信装置401は、円筒状の外形を有する送信器410および受信器470を組み合わせた構成を有する。
【0122】
受信器470は、ボールレンズ471、受光器472、カラーフィルタ476、および支持部材477を含む。ボールレンズ471は、上下に配置された一対の支持部材477によって、上下の部分を挟持される。ボールレンズ471の上下は、空間光信号の送受信に用いられないため、支持部材477で挟持されやすいように、平面状に加工されてもよい。受光器472は、受信対象の空間光信号を受信できるように、ボールレンズ471の集光領域に合わせて配置される。受光器472は、複数の受光素子が環状に配列された受光素子アレイを有する。複数の受光素子は、ボールレンズ471の集光領域に配置される。複数の受光素子は、ボールレンズ471に受光部を向けて配置される。複数の受光素子は、導線478によって、通信制御装置や送信器410に接続される。
【0123】
円筒状の受信器470の側面には、カラーフィルタ476が配置される。カラーフィルタ476は、不要な光を除去し、通信に用いられる空間光信号を選択的に透過する。円筒状の受信器470の上下面には、一対の支持部材477が配置される。一対の支持部材477は、ボールレンズ471の上下を挟持する。ボールレンズ471の周囲には、環状に形成された受光器472が配置される。受光器472は、ボールレンズ471に受光部を向けた複数の受光素子を含む。カラーフィルタ476を介してボールレンズ471に入射した空間光信号は、ボールレンズ471によって、受光器472に向けて集光される。受光器472に集光された光信号は、いずれかの受光素子の受光部に向けて導光される。受光素子の受光部に到達した光信号は、その受光素子によって受光される。通信制御装置(図示しない)は、受光器472に含まれる受光素子よって受光された光信号をデコードする。通信制御装置は、デコードされた光信号に応じて、送信器410から空間光信号を送信させる。
【0124】
送信器410は、第1~第3に係る実施形態の送信装置のうちいずれかに含まれる送信器よって構成される。送信器410は、円筒状の筐体の内部に収納される。円筒状の筐体には、送信器410による空間光信号の送信方向に合わせて開口されたスリットが形成される。例えば、送信器410が360度の方向に空間光信号を送信できる場合、送信器410の筐体の側面には、空間光信号の送信方向に合わせて、スリットが形成される。
【0125】
〔適用例〕
次に、本実施形態の適用例について図面を参照しながら説明する。以下の適用例では、複数の通信装置401が、空間光信号を送受信する例をあげる。
図22は、本適用について説明するための概念図である。本適用例では、街中に配置された電柱や街灯などの柱の上部(柱上空間)に、複数の通信装置401が配置された通信ネットワークの一例(通信システム)をあげる。
【0126】
柱上空間には障害物が少ない。そのため、柱上空間は、通信装置401を設置するのに適している。また、同程度の高さに通信装置401を設置すれば、空間光信号の到来方向が水平方向に限定される。そのため、受信器470を構成する受光器の受光面積を小さくして、装置を簡略化できる。空間光信号を送受信し合う通信装置401のペアは、少なくとも一方の通信装置401が、他方の通信装置401から送信された空間光信号を受光するように配置される。通信装置401のペアは、空間光信号を互いに送受信するように配置されてもよい。複数の通信装置401で空間光信号の通信ネットワークが構成される場合、中間に位置する通信装置401は、他の通信装置401から送信された空間光信号を、別の通信装置401に中継するように配置されてもよい。
【0127】
本適用例によれば、柱上空間に配置された複数の通信装置401の間で、空間光信号を用いた通信が可能になる。例えば、通信装置401の間における通信に応じて、自動車や家屋などに設置された無線装置や基地局と通信装置401との間で、無線通信による通信が行われてもよい。例えば、柱に設置された通信ケーブル等を介して、通信装置401がインターネットに接続されてもよい。
【0128】
以上のように、本実施形態の通信装置は、受信装置、送信装置、および通信制御装置を備える。送信装置は、第1~第2の実施形態に係る送信装置のいずれかに含まれる送信装置である。受信装置は、他の通信装置からの空間光信号を受信する。通信制御装置は、受信装置によって受信された他の通信装置からの空間光信号に基づく信号を取得する。通信制御装置は、取得した信号に応じた処理を実行する。通信制御装置は、実行した処理に応じた空間光信号を送信装置に送信させる。
【0129】
本実施形態の通信装置が備える送信装置は、水平面に沿った任意の方向に向けて、減衰しにくい空間光信号を送信する。そのため、本実施形態の送信装置は、水平面内に沿った任意の方向に配置された複数の通信対象に対して、安定した強度の空間光信号を送信できる。すなわち、本実施形態によれば、水平面内に沿った任意の方向に配置された通信対象に向けて、光空間通信のための空間光信号を継続的に送信できる。
【0130】
本実施形態の一態様の通信システムは、上記の通信装置を複数備える。通信システムにおいて、複数の通信装置は、空間光信号を互いに送受信し合うように配置される。本態様によれば、空間光信号を送受信する通信ネットワークを実現できる。
【0131】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る送信器について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信器は、第1~第3の実施形態の送信装置に含まれる送信器を簡略化した構成である。以下においては、第1の実施形態に係る送信装置に含まれる送信器の構成に基づいて、本実施形態の送信器について説明する。
【0132】
図23は、本実施形態に係る送信器50の構成の一例を示す概念図である。送信器50は、光源51、空間光変調器52、第1環状ミラーアレイ55、および第2環状ミラーアレイ56を備える。光源51は、照明光501を出射する。空間光変調器52は、光源51から出射された照明光501が照射させる変調部520を有する。空間光変調器52は、変調部520で変調された変調光502を、第1環状ミラーアレイ55および第2環状ミラーアレイ56のうち少なくともいずれかに向けて出射する。第1環状ミラーアレイ55は、照明光501の光軸を中心として円環状に配置された複数の反射鏡によって構成される。第2環状ミラーアレイ56は、平面視における第1環状ミラーアレイ55の内側の領域において、照明光501の光軸を中心として円環状に配置された複数の反射鏡によって構成される。第1環状ミラーアレイ55および第2環状ミラーアレイ56を構成する複数の反射鏡は、空間光変調器52から出射された変調光502が側方に向けて反射されるように配置される。第2環状ミラーアレイ56を構成する複数の反射鏡の反射面560は、第1環状ミラーアレイ55を構成する複数の反射鏡のうちいずれかの反射面550の死角領域を含む方向に向けられる。第1環状ミラーアレイ55の反射面550で反射された光(投射光505)と、第2環状ミラーアレイ56の反射面560で反射された光(投射光506)とは、空間光信号として送信される。
【0133】
本実施形態の送信器は、複数の反射鏡によって構成された第1環状ミラーアレイおよび第2環状ミラーアレイを備える。本実施形態の送信器には、水平面内において曲率を有する一枚の反射面で構成された環状ミラーを用いる場合と比較して、反射面の曲率半径が大きい反射鏡を用いることができる。本実施形態の送信器によれば、水平面内における投射角を小さくできるため、また、本実施形態によれば、第1環状ミラーアレイの死角領域を第2環状ミラーアレイで補うことによって、水平面内に沿った任意の方向に向けて空間光信号を送信できる。すなわち、本実施形態の送信器によれば、水平面内に沿った任意の方向に向けて、減衰しにくい空間光信号を送信できる。
【0134】
(ハードウェア)
次に、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、図面を参照しながら説明する。ここでは、そのようなハードウェア構成の一例として、
図24の情報処理装置90(コンピュータ)をあげる。
図24の情報処理装置90は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0135】
図24のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。
図24においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0136】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラム(命令)を、主記憶装置92に展開する。例えば、プログラムは、各実施形態の制御や処理を実行するためのソフトウェアプログラムである。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。プロセッサ91は、プログラムを実行することによって、各実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0137】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magneto resistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0138】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0139】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。外部機器と接続されるインターフェースとして、入出力インターフェース95と通信インターフェース96とが共通化されてもよい。
【0140】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。入力機器としてタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルの機能を有する画面がインターフェースになる。プロセッサ91と入力機器とは、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0141】
情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器が備え付けられてもよい。表示機器が備え付けられる場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられる。情報処理装置90と表示機器は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0142】
情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体に格納されたデータやプログラムの読み込みや、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みを仲介する。情報処理装置90とドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0143】
以上が、本開示の各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。
図24のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本開示の範囲を限定するものではない。各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも、本開示の範囲に含まれる。
【0144】
各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も、本開示の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0145】
各実施形態の構成要素は、任意に組み合わせられてもよい。各実施形態の構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよい。各実施形態の構成要素は、回路によって実現されてもよい。
【0146】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0147】
1、2、3 送信装置
11、21、31、51 光源
12、22、32、52 空間光変調器
14 柱回避ミラー
15、25、35、55 第1環状ミラーアレイ
16、26、36、56 第2環状ミラーアレイ
19、29、39 通信制御部
34 光検知器
40、50、410 送信器
47、470 受信器
49 通信制御装置
130、230、330 筐体
131、231、331 天板
132、232、332 底板
271 第1環状中継ミラー
272 第2環状中継ミラー
273 第3環状中継ミラー
274 第4環状中継ミラー
400、401 通信装置
471 ボールレンズ
472 受光器
473 受光素子
475 受信回路
476 カラーフィルタ
477 支持部材
478 導線