(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131329
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01L23/50 K
H01L23/50 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041530
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】門井 聖明
【テーマコード(参考)】
5F067
【Fターム(参考)】
5F067AA01
5F067AB04
5F067BA05
5F067BE10
5F067DC11
5F067DC17
5F067EA04
(57)【要約】
【課題】ダイパッドを不要とした構造であっても、機械的強度の低下を抑制することができる半導体装置の提供。
【解決手段】半導体装置10は、樹脂フィルム103aに搭載されている半導体素子104aと、平面視において、半導体素子104aの周囲に配置された補強部材102aと、平面視において、補強部材102aの周囲に配置されたリード101a-101hと、半導体素子104aとリード101a-101hを電気的に接続する導電性ワイヤ105a-105hと、少なくとも半導体素子104a、補強部材102a及び導電性ワイヤ105a-105hを封止する封止樹脂106と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムに搭載されている半導体素子と、
平面視において、前記半導体素子の周囲に配置された補強部材と、
平面視において、前記補強部材の周囲に配置されたリードと、
前記半導体素子と前記リードを電気的に接続する導電性ワイヤと、
少なくとも前記半導体素子、前記補強部材及び前記導電性ワイヤを封止する封止樹脂と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記補強部材は、前記リードと同じ材質である請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記補強部材の厚さは、前記リードと同じ厚さである請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記補強部材は、複数に分割され、互いに離間されて配置されている請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記補強部材は、前記リードと接続されている請求項1または2記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やモバイル用機器などの電子機器の高機能化に伴い、このような電子機器に使用される半導体装置に対する小型化及び薄型化の要求が高まっている。
【0003】
エポキシ樹脂の成形による半導体装置の一般的なパッケージは、リードフレームの一部であるダイパッドに半導体素子を搭載してエポキシ樹脂で覆うとともに外形を形成する構造を有する。このような構造のパッケージについては、近年の薄型化への要望を満たすため、半導体素子、封止樹脂及びダイパッドの構造を工夫することで薄型化を実現している場合が多い。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の発明では、ダイパッドの代わりに絶縁性樹脂層を用いることによりダイパッドを不要とした構造にして半導体装置の薄型化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの側面では、ダイパッドを不要とした構造であっても、機械的強度の低下を抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における半導体装置は、
樹脂フィルムに搭載されている半導体素子と、
平面視において、前記半導体素子の周囲に配置された補強部材と、
平面視において、前記補強部材の周囲に配置されたリードと、
前記半導体素子と前記リードを電気的に接続する導電性ワイヤと、
少なくとも前記半導体素子、前記補強部材及び前記導電性ワイヤを封止する封止樹脂と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの側面によれば、ダイパッドを不要とした構造であっても、機械的強度の低下を抑制し、変形の発生を抑制することができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態における半導体装置の概略上面図(透視図)である。
【
図2】
図2は、
図1に示したII-II線の概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造工程を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3につづく、本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造工程を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態における半導体装置の概略上面図(透視図)である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施形態における半導体装置の概略上面図(透視図)である。
【
図7】
図7は、本発明の第4の実施形態における半導体装置の概略上面図(透視図)である。
【
図8】
図8は、本発明の第5の実施形態における半導体装置の概略断面図である。
【
図9】
図9は、従来の半導体装置の概略上面図(透視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、
図9に示すような従来のダイパッドを不要とした薄型の半導体装置90では、平面視においてX方向の中心線X及びY方向の中心線Yにおいて、封止樹脂906及び半導体素子904aのみの剛性に頼ることなり、機械的強度が低下することに基づくものである。
【0011】
半導体装置のダイパッドを不要としたことによって機械的強度が低下するため、外部からの衝撃、振動及び応力などに対して反り、ねじれの半導体装置の変形が発生し、半導体装置の破損、実装基板への実装不良、半導体素子の特性変動などが発生するおそれがある。このため、半導体装置そのものの取り扱いが難しくなる場合がある。
【0012】
そこで、本発明の一実施形態における半導体装置は、平面視において、半導体素子の周囲に補強部材を配置した。
【0013】
これにより、この半導体装置は、半導体装置のダイパッドを不要としたことによる機械的強度の低下を抑制し、半導体装置の変形の発生を抑制することができる。
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための実施形態について詳細に説明する。
【0015】
なお、図面においては、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0016】
また、図面に示すX軸、Y軸及びZ軸は互いに直交するものとする。X軸方向を「幅方向」、Y軸方向を「奥行き方向」、Z軸方向を「高さ方向」又は「厚さ方向」と称する場合がある。各部材の+Z方向側の面を「表面」又は「上面」、-Z方向側の面を「裏面」又は「下面」と称する場合がある。
【0017】
さらに、図面は模式的なものであり、幅、奥行き及び厚さの比率などは示したとおりではない。各部材の数量、位置、形状、構造、大きさなどは、以下に示す実施形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数量、位置、形状、構造、大きさなどにすることができる。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における半導体装置の概略上面図である。
図2は、
図1に示したII-II線の概略断面図である。
【0019】
半導体装置10は、リード101a-101hと、補強部材102aと、樹脂フィルム103aと、半導体素子104aと、導電性ワイヤ105a-105hと、封止樹脂106と、を備える。
【0020】
リード101a-101hは、平面視において、補強部材102aの周囲に配置されており、下面が封止樹脂106から露出している。また、リード101a-101hは、本実施形態では銅合金で形成されており、表面が銀メッキされている。
【0021】
補強部材102aは、平面視において、半導体素子104aの周囲に切れ目なく矩形状に配置されており、下面が封止樹脂106から露出している。また、補強部材102aは、本実施形態では銅合金で形成されており、その表面は銀メッキされている。補強部材102aは、リード101a-101hと同じ材質で形成することで、リード101a-101hと一体のリードフレーム構造とすることが可能である。
【0022】
樹脂フィルム103aは、本実施形態ではいわゆるダイアタッチフィルムであり、エポキシ樹脂で形成されている。樹脂フィルム103aは、従来のダイパッドよりも厚さを低減することができ、樹脂フィルム103aの上面に半導体素子104aが搭載された際に半導体素子104aの上面の高さを低くすることができる。樹脂フィルム103aの下面は、封止樹脂106から露出している。ダイパッドの代わりに樹脂フィルム103aを用いることにより、半導体装置10の薄型化が実現されている。また、ダイパッドを用いると半導体素子の裏面との剥離箇所に吸着した水分の気化膨張によるパッケージクラックを引き起こす可能性があるが、樹脂フィルムの場合には気化した水分を樹脂フィルムから外部に逃がすことができ、パッケージクラックには至らない。なお、樹脂フィルム103aは、絶縁性及び導電性のいずれでもよい。
【0023】
半導体素子104aは、半導体装置10を機能させるための半導体チップであり、平面視において矩形状である。半導体素子104aの下面には、樹脂フィルム103aが固定されている。
【0024】
ここで、半導体素子104aの厚さをd1とし、リード101a-101h及び補強部材102aの厚さを同じ厚さとしてh1とすると、機械的強度を得られる観点から、次式、d1<h1、を満たすようにすることが好ましい。また、補強部材102aの上面は、半導体素子104aの上面よりも高くすることがより好ましい。本実施形態では、次式、d1<h1、を満たすとともに、補強部材102aの上面は、半導体素子104aの上面よりも高さt1だけ高い。
【0025】
導電性ワイヤ105a-105hは、半導体素子104aの上面に形成された図示しない複数の電極パッドと、リード101a-101fを電気的に接続している。導電性ワイヤ105a-105hは、本実施形態では金ワイヤである。
【0026】
封止樹脂106は、リード101a-101f、補強部材102a、半導体素子104a、及び導電性ワイヤ105a-105hを封止している。
【0027】
このように、半導体装置10は、平面視において、半導体素子104aの周囲に補強部材102aを配置することで、半導体装置のダイパッドを不要としたことによる機械的強度の低下を抑制し、半導体装置の変形の発生を抑制することができる。
【0028】
ここで、半導体装置10の製造方法を説明する。
【0029】
図3及び
図4は、本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造工程を示す図である。
【0030】
図3(a)に示すように、半導体基板111を研削装置により所定の厚さd1に研削した後、半導体基板111の下面に樹脂フィルム103を接着する。
【0031】
次に、
図3(b)に示すように、半導体基板111の所定の位置をダイシング装置により切削し、半導体素子104aの下面に樹脂フィルム103aが接着された個片を作製する。
【0032】
次に、
図4(a)に示すように、仮固定用テープ121の上面にリード101a-101h及び補強部材102aを固定する。本実施形態では、補強部材102aとリード101a-101hは、同じ材質で形成されており、一体のリードフレームの構造を有している。仮固定用テープ121は、本実施形態ではポリイミド材で形成されている。続いて、仮固定用のテープ121の上面の所定の位置に下面に樹脂フィルム103aが接着された半導体素子104aを固定する。
【0033】
補強部材102a及びリード101a-101hは、半導体装置が複数形成されるリードフレームの構造を有しており、最終的に個片の半導体装置に分割される。
図3、4では1つの半導体装置を形成する1つの組合せを示している。
【0034】
次に、
図4(b)に示すように、ワイヤボンディング装置により、半導体素子104aの上面に形成されている複数の電極パッド(図示せず)とリード101a-101hの先端部上面を導電性ワイヤ105a-105hで電気的に接続する。
【0035】
続いて、リード101a-101hを金型で挟持し、金型の内部に封止樹脂106を注入して固化させて封止する。このとき、ダイパッドの代わりに樹脂フィルム103aを用いていることから、半導体素子104aの上面の高さが低くなっており、スムーズに封止樹脂106を注入することができる。
【0036】
次に、仮固定用テープ121を剥離し、続いてリード101a-101h及び封止樹脂106の所定の位置をダイシング装置により切削し、
図4(c)に示すような半導体装置10が製造される。
【0037】
このように、本実施形態における半導体装置10は、樹脂フィルム103aに搭載されている半導体素子104aと、平面視において、半導体素子104aの周囲に配置された補強部材102aと、平面視において、補強部材102aの周囲に配置されたリード101a-101hと、半導体素子104aとリード101a-101hを電気的に接続する導電性ワイヤ105a-105hと、少なくとも半導体素子104a、補強部材102a及び導電性ワイヤ105a-105hを封止する封止樹脂106と、を備えた。
【0038】
このため、半導体装置のダイパッドを不要としたことによる機械的強度の低下を抑制することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態における半導体装置の概略上面図である。
【0040】
図5に示すように、第2の実施形態の半導体装置20は、補強部材202aとリード201b及びリード201gが接続されている。その他は半導体装置10と同様である。
【0041】
第2の実施形態においては、補強部材202aとリード201b及びリード201gを一体にすることにより、半導体装置の機械的強度をさらに高めることができる。これにより、半導体装置のダイパッドを不要としたことによる機械的強度の低下を抑制することができる。
【0042】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態における半導体装置の概略上面図である。
【0043】
図6に示すように、第3の実施形態の半導体装置30は、補強部材302a、302bを配置した。その他は半導体装置10と同様である。
【0044】
第3の実施形態においては、補強部材302a、302bは、互いに離間して隣り合うように配置されている。このため、製造工程で金型の内部に封止樹脂306を注入する際に、封止樹脂306も流れの妨げとなる金型の内部の空気を抜けやすくすることができ、封止樹脂306の注入が均等になりやすい。これにより、半導体装置30は、機械的強度の低下を更に抑制することができる。
【0045】
(第4の実施形態)
図7は、本発明の第4の実施形態における半導体装置の概略上面図である。
【0046】
図7に示すように、第4の実施形態の半導体装置40は、補強部材402a、402bを配置し、かつ、補強部材402aとリード401b及び補強部材402bとリード401gが接続されている。その他は半導体装置10と同様である。
【0047】
第4の実施形態においては、補強部材402aとリード401b及び補強部材402bとリード401gを一体にすることにより、半導体装置の機械的強度をさらに高めることができる。これにより、半導体装置のダイパッドを不要としたことによる機械的強度の低下を抑制することができる。
【0048】
(第5の実施形態)
図8は、本発明の第5の実施形態における半導体装置の概略断面図である。
【0049】
図8に示すように、第5の実施形態の半導体装置50は、補強部材502aの厚さh2をリード501a-501hの厚さh1よりもt2厚くした。その他は半導体装置10と同様である。
【0050】
第5の実施形態においては、補強部材502aの厚さh2をリード501a-501hの厚さh1よりもt2厚くすることにより、半導体装置の機械的強度をさらに高めることができる。これにより、半導体装置のダイパッドを不要としたことによる機械的強度の低下を抑制することができる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0052】
たとえば、本実施形態では補強部材の材質は、銅合金で表面が銀メッキされているとしたが、これに限ることなく他の材質としてもよく、表面が銀メッキされていなくてもよい。また、補強部材はリードと一体のリードフレームの構造としたが、一体の構造でなくてもよい。導電性ワイヤを金ワイヤとしたが、これに限ることなく他の導電性ワイヤとしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10、20、30、40、50 半導体装置
101a-101h、201a-201h、301a-301h、401a-401h、501a-501h リード
102a、202a、302a、302b、402a、402b、502a 補強部材
103 樹脂フィルム
103a、103b 樹脂フィルム(個片)
104a、104b 半導体素子
105a-105h 導電性ワイヤ
106、206、306、406、506 封止樹脂
111 半導体基板
121 仮固定用テープ
331a,331b、431a、431b 補強部材の間隔