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特開2024-131334ダイカストマシンの生産管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131334
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ダイカストマシンの生産管理システム
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/32 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B22D17/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041538
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保田 亘
(72)【発明者】
【氏名】村上 工成
(57)【要約】
【課題】視認性が高く精度の高い予防保全の機能を備えた、ダイカストマシンの状態管理や鋳造品の品質管理等の生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】金型キャビティ内に溶湯を射出充填して鋳造品を製造するダイカストマシンから収集した鋳造データを用いて生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システムにおいて、鋳造データを収集する鋳造データ送受信部と、鋳造データに識別符号をつけて保存する鋳造データ保存部と、鋳造データをグラフ表示する鋳造データ表示部と、予め設定した閾値とグラフ表示した鋳造データとの差分値を算出するスコア算出部と、差分値と閾値を重ね書き表示するスコア表示部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型キャビティ内に溶湯を射出充填して鋳造品を製造するダイカストマシンから収集した鋳造データを用いて生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システムにおいて、
前記鋳造データを収集する鋳造データ送受信部と、前記鋳造データに識別符号をつけて保存する鋳造データ保存部と、前記鋳造データをグラフ表示する鋳造データ表示部と、予め設定した閾値と前記グラフ表示した前記鋳造データとの差分値を算出するスコア算出部と、前記差分値と前記閾値を重ね書き表示するスコア表示部と、を備えることを特徴とするダイカストマシンの生産管理システム。
【請求項2】
前記鋳造データ表示部は、前記鋳造データ保存部から抽出した前記鋳造データを用いる、請求項1に記載のダイカストマシンの生産管理システム。
【請求項3】
前記鋳造データ表示部は、前記鋳造データ送受信部で受信した前記鋳造データを用いる、請求項1に記載のダイカストマシンの生産管理システム。
【請求項4】
前記スコア表示部は、前記差分値の積算値と前記閾値を重ね書き表示する、請求項1に記載のダイカストマシンの生産管理システム。
【請求項5】
前記スコア表示部は、前記差分値の最大値と前記閾値を重ね書き表示する、請求項1に記載のダイカストマシンの生産管理システム。
【請求項6】
前記スコア表示部は、前記差分値の移動平均値と前記閾値を重ね書き表示する、請求項1に記載のダイカストマシンの生産管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型キャビティ内に溶湯を射出充填して鋳造品を製造するダイカストマシンから収集した鋳造データを用いて生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の組成に調整したアルミニウム合金等の金属を加熱溶融した溶湯を、鋳造金型を型締して形成される金型キャビティに向けて射出部から射出充填して、鋳造品を製造する工程を鋳造といい、鋳造する設備をダイカストマシンという。ここで、鋳造の生産性を高めるために、ダイカストマシンから収集した鋳造データを波形グラフとして表示させて、鋳造を操作するオペレータや鋳造を管理する鋳造管理者(合わせて鋳造技術者という)に対して、鋳造状態の見える化(または視認性という)を高め、ダイカストマシンの状態管理および鋳造品の品質管理等の生産管理を行う手段が広く用いられている。
【0003】
さらに、収集した鋳造データの軽微な変化あるいは突発的な変化から、ダイカストマシンの状態変化および鋳造品の品質変化を察知し、ダイカストマシンおよび鋳造品に異常が発生する前に予防処置(予防保全ともいう)を行う生産管理が好ましい。この予防保全においても、鋳造技術者に対しての視認性を高めることによって予防保全の効果が高まり、ダイカストマシンの長期の安定運転と、高品質な鋳造品の安定供給が担保される。
【0004】
例えば、特許文献1に示すように、運転実測データの波形グラフと運転設定データの波形グラフを識別可能に重ね書き表示する生産管理の手段が提案されている。さらに、カーソルで指定した個所の波形グラフの数値が表示されるようになっている。これにより、視認性が高まり、精度の高い生産管理ができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-198131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に示す手段は、比較評価する複数の波形グラフを識別可能に重ね書き表示し、さらに、カーソルで指定した波形グラフの数値を表示する形態である。その結果、鋳造作業者は高い視認性を得ることができる。しかしながら、例えば、複数の波形グラフが乖離して表示されていたとしても、その乖離が正常な範囲なのか、あるいは、異常の範囲なのか、または、その乖離が異常を示す兆候なのか、等の判断が全くできず、精度の高い予防保全を行うことは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、視認性が高く精度の高い予防保全の機能を備えた、ダイカストマシンの状態管理や鋳造品の品質管理等の生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダイカストマシンの生産管理システムは、
金型キャビティ内に溶湯を射出充填して鋳造品を製造するダイカストマシンから収集した鋳造データを用いて生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システムにおいて、
前記鋳造データを収集する鋳造データ送受信部と、前記鋳造データに識別符号をつけて保存する鋳造データ保存部と、前記鋳造データをグラフ表示する鋳造データ表示部と、予め設定した閾値と前記グラフ表示した前記鋳造データとの差分値を算出するスコア算出部と、前記差分値と前記閾値を重ね書き表示するスコア表示部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のダイカストマシンの生産管理システムにおいて、
前記鋳造データ表示部は、前記鋳造データ保存部から抽出した前記鋳造データを用いる、ことが好ましい。
【0010】
本発明のダイカストマシンの生産管理システムにおいて、
前記鋳造データ表示部は、前記鋳造データ送受信部で受信した前記鋳造データを用いる、ことが好ましい。
【0011】
本発明のダイカストマシンの生産管理システムにおいて、
前記スコア表示部は、前記差分値の積算値と前記閾値を重ね書き表示する、ことが好ましい。
【0012】
本発明のダイカストマシンの生産管理システムにおいて、
前記スコア表示部は、前記差分値の最大値と前記閾値を重ね書き表示する、ことが好ましい。
【0013】
本発明のダイカストマシンの生産管理システムにおいて、
前記スコア表示部は、前記差分値の移動平均値と前記閾値を重ね書き表示する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、視認性が高く精度の高い予防保全の機能を備えた、ダイカストマシンの状態管理や鋳造品の品質管理等の生産管理を行う、ダイカストマシンの生産管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るダイカストマシンを示す概念図である。
図2】本発明の実施形態に係る生産管理システムを示す概念図である。
図3図2に示す鋳造データ表示部の実施形態を示す図である。
図4図2に示すスコア表示部の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが、各請求項に係る発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本実施形態においては、各構成要素の尺度や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0017】
(ダイカストマシン)
先ず、本発明の実施形態に係るダイカストマシンについて、図1を用いて説明する。図1に示すダイカストマシン100は、鋳造金型10と、型締部20と、射出部30と、成形制御部40と、周辺設備80と、を備える。なお、図1において、鋳造金型10と射出部30が水平方向に配置された形態(横型締横鋳込み鋳造装置という)としたが、これに限定されることなく、例えば、水平方向に配置された鋳造金型10と鉛直方向に配置された射出部30の形態(横型締竪鋳込み鋳造装置という)であっても良く、鋳造金型10と射出部30が鉛直方向に配置された形態(竪型締竪鋳込み鋳造装置という)であっても良い。また、鋳造金型10に対して複数の射出部30を配置した形態であっても良く、射出部30に対して複数の鋳造金型10を配置した形態であっても良い。いずれにおいても、構成要素は変わらず、鋳造金型10と射出部30の配置の組合せを変えたものであるので、ここでは横型締横鋳込みの鋳造装置であるダイカストマシン100を用いて説明する。
【0018】
また、図1において、ダイカストマシン100の成形制御部40と生産管理システム50を分けて配置したが、これに限定されることなく、例えば、成形制御部40と生産管理システム50を一体構造とする形態であっても良い。
【0019】
鋳造金型10は、型締部20を操作して固定金型11と可動金型12を型締することで金型キャビティ13と金型ゲート14が形成される。射出部30から金型キャビティ13に向けて溶湯を射出充填する前に、金型キャビティ13および金型ゲート14に離型剤を塗布することが好ましい。また、固定金型11および可動金型12には、図示しない温調回路を含む金型温調手段を設けて、加熱または冷却して所定の温度に調整することが好ましい。また、鋳造金型10に図示しない真空吸引手段を設け、この真空吸引手段を用いて金型キャビティ13内を直接的に真空吸引するとしても良い。
【0020】
型締部20は、固定金型11を支持する固定盤21と、可動金型12を支持する可動盤22と、型締駆動部26を支持する型締盤23と、を備える。型締駆動部26は、回転運動する電動モータ等の電動駆動手段とし、トグルリンク25を介して型締駆動部26と可動盤22が接続される。トグルリンク25のボールネジ253で型締駆動部26の回転運動を直線運動に変換し、クロスヘッド252を前後方向に動作させる。クロスヘッド252の動作によって複数のリンク251が動いて、固定盤21と型締盤23を連結した複数のタイバー24をガイドとして、可動盤22が前後方向に動作する。型締制御部27で型締駆動部26の回転運動を操作する。
【0021】
ここで、可動盤22および可動金型12が固定盤21および固定金型11に近接する動作を型閉動作といい、離間する動作を型開動作という。また、可動金型12と固定金型11がタッチした後も(金型タッチ点という)、型締制御部27で型締駆動部26を操作して、トグルリンク25を介して可動金型12と固定金型11を強固に押圧すると、タイバー24が伸張し弾性回復力が発生する。この弾性回復力を型締力として可動金型12と固定金型11を型締して金型キャビティ13を形成する。金型タッチ点から金型キャビティ13を形成する型閉動作を昇圧動作といい、昇圧動作の完了位置を型締限といい、型締限から金型タッチ点に向けた型開動作を降圧動作という。また、型閉動作と昇圧動作を合わせて型締動作という。
【0022】
なお、図1において、型締駆動部26を電動モータ等の電動駆動手段としたが、例えば、回転運動する油圧モータ等の油圧駆動手段であっても良い。また、トグルリンク25で型開閉動作するとしたが、例えば、型締駆動部26に前後方向に動作するロッド部材を備えた油圧シリンダ等の油圧駆動手段を用い、ロッド部材と可動盤22を連結して型開閉動作させる形態であっても良い。また、例えば、型締盤23に型締駆動部26を複数配置しても良く、タイバー24に型締駆動部26を配置した形態であっても良い。
【0023】
射出部30は、水平方向に配置された円筒状の射出スリーブ31と、射出スリーブ31内で前後方向に摺動するプランジャチップ32と、射出スリーブ31内にアルミニウム合金等の溶湯Mを供給する注湯口34と、プランジャチップ32の摺動を操作する射出駆動部36と、を備える。射出スリーブ31の先端部(注湯口34と反対側)は、固定盤21と固定金型11を貫通して、金型ゲート14に接続される。ここで、プランジャチップ32の摺動について、金型ゲート14に近接する方向を前方F、前方Fに向かう動作を前進動作といい、金型ゲート14から離間する方向を後方R、後方Rに向かう動作を後退動作という。
【0024】
プランジャチップ32と連結するプランジャロッド33は、連結部35を介して射出駆動部36に連結される。プランジャチップ32が注湯口34よりも後方Rに待機している間に、図示しない給湯手段を用いて、注湯口34から射出スリーブ31内に溶湯Mを供給する。射出制御部37で射出駆動部36を操作し、連結部35およびプランジャロッド33を介して、プランジャチップ32の前進動作および後退動作が制御される。プランジャチップ32の前進動作により、射出スリーブ31内に供給された溶湯Mが押圧され、金型ゲート14を経由して金型キャビティ13内に射出充填される。
【0025】
また、射出スリーブ31およびプランジャチップ32には、冷却水等の冷却媒体が流れる流路を含む図示しない冷却手段が設けられている。また、プランジャチップ32および射出スリーブ31の強固な接触によるカジリ損傷の防止や摺動状態の安定化及び溶湯残渣物の付着抑制等のため、射出スリーブ31とプランジャチップ32との摺動面に潤滑剤を塗布することが好ましい。また、射出スリーブ31に図示しない真空吸引手段を設け、射出スリーブ31内を真空吸引し、金型ゲート14を介して金型キャビティ13内を間接的に真空吸引するとしても良く、直接的な真空吸引と間接的な真空吸引を組み合せて行う形態であっても良い。
【0026】
ここで、図1に示す射出駆動部36は、例えば、型締駆動部26のボールネジ253と同様に、電動モータの回転運動を直線運動に変換する変換手段を用いた電動駆動手段とする。なお、これに限定することなく、例えば、油圧シリンダ等の油圧駆動手段であっても良く、油圧駆動手段と電動駆動手段を組み合せたハイブリット駆動手段であっても良い。また、油圧駆動手段の場合は、アキュムレータ等の蓄圧手段を更に備える形態であっても良い。
【0027】
また、図1において、射出スリーブ31を水平方向に配置したが、例えば、金型キャビティ13および金型ゲート14に対して水平方向から鉛直下方の範囲で任意に配置するとしても良い。また、注湯口34から溶湯Mを供給するとしたが、例えば、溶湯Mを保持する図示しない溶解炉と射出スリーブ31を給湯管等の連結手段を用いて連結し、連結手段を経由して溶湯Mを供給するとしても良い。また、射出スリーブ31とプランジャチップ32の組合せとしたが、例えば、図示しない密閉された溶湯Mの保持炉内に加圧ガス等を供給し、給湯管を経由して金型キャビティ13に溶湯Mを射出充填する形態であっても良く、加圧ガスの供給の代わりに輸送ポンプ等の輸送手段を用いて、溶湯Mを射出充填するとしても良い。
【0028】
成形制御部40は、型締制御部27および射出制御部37と接続し、予め設定された鋳造条件に基づいて、型締制御部27で型締駆動部26を操作して、鋳造金型10の型締動作および型開閉動作を行う。また、射出制御部37で射出駆動部36を操作して、金型キャビティ13内に向けて溶湯Mの射出充填、等の鋳造成形を行う。その他に、図示しない給湯手段や冷却手段および真空吸引手段等の周辺設備80に対して操作指令を発信し、ダイカストマシン100を操作して鋳造成形を管理する。
【0029】
周辺設備80は、鋳造成形を行うに際して併用される設備であって、例えば、鋳造金型10の温度調整手段や離型剤塗布手段、鋳造品の離型手段や搬送手段、インサート部材を用いる鋳造成形ではインサート部材搬送手段、射出スリーブ31やプランジャチップ32の温度調整手段や潤滑剤塗布手段、溶湯Mの溶解手段や搬送手段、射出スリーブ31内に所定量の溶湯Mを供給する給湯手段、溶湯Mの酸化防止のための不活性ガス供給手段、鋳造金型10や射出部30の稼働状況を監視する監視手段、金型キャビティ13や射出スリーブ31内を真空吸引する真空吸引手段、等の設備が挙げられる。
【0030】
(生産管理システム)
次に、本発明の実施形態に係る生産管理システムについて、図2から図4を用いて説明する。図2は、図1に示す生産管理システム50の詳細図を示す。また、図3は、図2に示す鋳造データ表示部53およびスコア算出部54の実施形態を示す。また、図4は、図2に示すスコア表示部55の実施形態を示す。
【0031】
先ず、図2に示すように、生産管理システム50の構成要素は、鋳造データ送受信部51と、鋳造データ保存部52と、鋳造データ表示部53と、スコア算出部54と、スコア表示部55と、を備える。なお、図2において、それぞれの構成要素を一体構造としたが、これに限定されることなく、例えば、それぞれの構成要素を分離する、または、特定の構成要素を組み合わせて分離する形態としても良い。例えば、鋳造データ表示部53またはスコア表示部55を携帯端末機等に装着して、遠隔で監視するとしても良く、鋳造工程の形態に応じて好適に配置するものとする。そのために、それぞれの構成要素は、例えば、無線通信等のデータ通信手段等を用いて相互に接続されることが好ましい。
【0032】
鋳造データ送受信部51は、ダイカストマシン100の成形制御部40と接続し、成形制御部40を経由して、鋳造金型10を型締して形成される金型キャビティ13に向けて溶湯Mを射出充填して鋳造品を製造する際に、射出制御部37と型締制御部27および周辺設備80から発信される鋳造データを収集する。また、生産管理システム50の生産管理情報を、成形制御部40を経由して、射出制御部37と型締制御部27および周辺設備80に向けて情報発信する。必要に応じて、外部の管理手段に向けて生産管理情報を発信するとしても良い。
【0033】
ここで、ダイカストマシン100の型締制御部27から発信される鋳造データとして、例えば、鋳造成形の1ショット分の開始から終了までを時間軸として、型締力波形、型締駆動部26の駆動トルク波形、型締部20の振動波形、型開動作初期の型締駆動部26の離型力波形、型締部20に内蔵された図示しない押出手段の押出力波形、型開閉速度波形、複数のタイバー24に発生する応力波形、図示しない監視装置を用いた型締部20の稼動監視情報、等を示す。
【0034】
また、ダイカストマシン100の射出制御部37から発信される鋳造データとして、例えば、鋳造成形の1ショット分の開始から終了までを時間軸として、プランジャチップ32の前進速度波形(射出速度波形という)、プランジャチップ32による溶湯の押圧力波形(鋳造圧力波形または射出圧力波形という)、プランジャチップ32の位置波形(射出位置波形という)、射出駆動部36の駆動トルク波形、射出スリーブ31やプランジャチップ32の温度波形、溶湯の温度波形、プランジャチップ32の前進動作および後退動作時の振動波形または振動加速度波形、射出速度の切替え時間波形(加速度波形という)、あるいは、射出制御部37の操作指令波形と射出駆動部36の実行波形、金型キャビティ13に向けて溶湯Mの射出充填に要した時間(射出時間という)、図示しない監視装置を用いた射出部30の稼動監視情報、等を示す。
【0035】
また、ダイカストマシン100の周辺設備80から発信される鋳造データとして、例えば、鋳造成形の1ショット分の開始から終了までを時間軸として、鋳造金型10または金型キャビティ13の温度波形、鋳造金型10の温調手段に用いる温調媒体の温度波形および流量波形、射出部30の温調手段に用いる温調媒体の温度波形および流量波形、金型キャビティ13や射出スリーブ31内の真空度波形や加圧ガス圧力波形、溶湯の組成および給湯量に関する情報、鋳造金型10の熱膨張波形、金型キャビティ13への離型剤塗布波形、鋳造金型10の変形量波形、図示しない給湯手段の溶湯Mの輸送時間波形および輸送量波形、気温および湿度あるいは気圧等の成形環境の状態を示す情報、あるいは、所定の位置に配置したカメラ等の画像撮影手段で撮影した画像データや、振動センサや加速度センサ等の計測手段で計測した振動または加速度の計測データ、または、マイク等の集音手段で集音した音響データ、等を示す。
【0036】
また、例えば、ダイカストマシン100および鋳造品の長期的な状態変化および品質変化を観察する、または、予測する形態では、鋳造成形の設定条件と、鋳造サイクルや最大射出圧および鋳造の運転日時等の情報を整理し、鋳造成形の1ショットに1度のみ実測する運転データ(鋳造運転データまたはトレンド・ヒストリーデータという)を、鋳造データとして抽出することが好ましい。また、例えば、ダイカストマシン100および鋳造品の突発的な状態変化および品質変化を検知する、または、予知する形態では、鋳造成形の1ショットでの時間的推移における実測波形(鋳造ショットデータまたは実測波形データという)を、鋳造データとして抽出することが好ましい。また、例えば、ダイカストマシン100や鋳造品の安定した状態の鋳造を示す鋳造データと、現在の鋳造を示す鋳造データを比較する形態としても良い。
【0037】
これらの鋳造データは、必要に応じて複数を選択しても良く、選択した複数の鋳造データを組み合せる形態としても良い。また、過去の鋳造成形の実績等からダイカストマシン100および鋳造品の状態を判定する指標(閾値という)を鋳造データに加えるとしても良い。さらに、例えば、流動解析等の解析手段を用いて解析を行った解析結果や、機械学習プログラム等の診断手段を用いて鋳造データを診断した診断結果(AI診断結果という)を鋳造データに加えるとしても良く、このAI診断結果に基づいてダイカストマシン100や鋳造品の良否判定を行う指標(判定基準値という)を鋳造データに加える形態であっても良い。
【0038】
鋳造データ保存部52は、鋳造データ送受信部51で収集した鋳造データに識別情報をつけて保存する。ここで、鋳造データ保存部52への鋳造データの収集と保存のタイミングは、例えば、鋳造工程の開始および終了と連動して自動で行っても良く、または、鋳造を操作するオペレータや鋳造を管理する鋳造管理者(合わせて鋳造技術者という)が、手動で操作しても良い。
【0039】
鋳造データ表示部53は、鋳造データをグラフに変換してグラフ表示する。詳しくは、図3を用いて説明する。ここで、鋳造データ表示部53に用いる鋳造データは、鋳造データ保存部52から識別情報を指定して抽出した鋳造データを用いる形態と、鋳造データ送受信部51で受信した鋳造データを用いる形態とがある。例えば、前者は、鋳造工程とは別工程で大量の鋳造データを一括して処理する場合に好適であり、後者は、鋳造工程と同工程で鋳造データを処理する場合に好適である。いずれにおいても、ダイカストマシン100および鋳造品の生産管理の形態に合わせて、鋳造データを好適に抽出し使用することが好ましい。
【0040】
先ず、図3(a)に示すように、鋳造データ表示部53は、表示画面531に鋳造データD1をグラフに変換してグラフ表示させる。横軸X1および縦軸Y1のスケールは、自動設定または手動設定が選択でき、いずれにおいても、表示画面531内で鋳造データD1のグラフ表示を好適な形態となるように設定することが好ましい。なお、図3(a)において、鋳造データD1のグラフ表示を1つとしたが、これに限定されることなく、ダイカストマシン100および鋳造品の好適な生産管理の形態に合わせて、鋳造データD1を複数設定し、複数のグラフの重ね書き表示とすることが好ましい。この場合、複数のグラフの線の種類を変える、線の色を変える、等の識別表示とすることが好ましい。また、鋳造データD1の複数設定に応じて、表示画面531を複数配置とするとしても良い。
【0041】
ここで、図3(a)に示す鋳造データD1は、一例として、鋳造運転データまたはトレンド・ヒストリーデータと言われる運転データを設定する。ダイカストマシン100および鋳造品の長期的な状態変化および品質変化を観察する、または、予測する生産管理の形態に好適とされている。これに対して、ダイカストマシン100および鋳造品の突発的な状態変化および品質変化を検知する、または、予知する形態では、図3(b)に示すように、鋳造工程の1ショットを示す鋳造ショットデータまたは実測波形データと言われる鋳造データD2を設定することが好ましい。このように、ダイカストマシン100および鋳造品の生産管理の形態に合わせて、鋳造データ(D1、D2)を好適に設定する。なお、図3(b)において、横軸X2および縦軸Y2は、図3(a)の横軸X1および縦軸Y1と同様に設定する。また、表示画面532も表示画面531と同様に配置する。
【0042】
スコア算出部54は、予め設定した閾値と、鋳造データ表示部53でグラフ表示した鋳造データ(D1、D2)との差分値を算出する。詳しくは、図3を用いて説明する。
【0043】
先ず、図3(a)に示すように、スコア算出部54は、予め設定した閾値S1と鋳造データD1を重ね書き表示する。次いで、例えば、カーソルを操作して計測ポイント(P1、P2)を設定し、閾値S1との差分値(K1、K2)を算出する。なお、図3(a)において、計測ポイント(P1、P2)および差分値(K1、K2)の算出を2点としたが、これに限定されることなく、例えば、ダイカストマシン100および鋳造品の好適な生産管理が行われるように、複数を設定することが好ましい。また、計測ポイント(P1、P2)の設定および差分値(K1、K2)の算出は、カーソル操作等の手動設定ではなく自動設定としても良い。また、鋳造工程と別工程で設定と算出を行うとしても良く、鋳造工程と同時工程で設定と算出を行うとしても良い。
【0044】
また、図3(a)に示すように、閾値S1を変更する形態としても良い。例えば、閾値S1を閾値S2に高め変更しても良く、または、閾値S1を閾値S3に低め変更としても良い。また、複数の閾値(S1~S3)を同時に設定しても良く、例えば、ダイカストマシン100および鋳造品の生産管理を、正常状態、軽度の異常状態、中度の異常状態、重度の異常状態、の4段階に区分けとすることができ、精度の高い生産管理、および、予測や予知の生産管理を可能とする。さらに、図3(b)に示すように、閾値S4を閾値S5のように段階的に変化させても良く、段階的に設定した閾値S5と直線的に設定した閾値S4の同時設定としても良い。なお、図3(b)において、一例として、計測ポイント(P3)の設定と差分値(K3、K4)の算出を行うとしたが、好適な生産管理を行うために、図3(a)と同様に複数を設定し算出することが好ましい。
【0045】
スコア表示部55は、スコア算出部54で算出した差分値(K1~K4)と閾値(S1~S5)を重ね書き表示する。詳しくは、図4を用いて説明する。ここで、スコア表示部55に表示する差分値(K1~K4)は、算出したままの状態で表示(瞬間値という)する形態を基本とするが、ダイカストマシン100および鋳造品の生産管理の形態に応じて変化させても良い。
【0046】
例えば、ダイカストマシン100の安定運転および鋳造品の品質安定化が困難となる時期を鋳造データ(D1、D2)の変化から予測し、周辺設備80および溶湯Mを含んでダイカストマシン100の総合メンテナンスを行う予防保全を主とする生産管理においては、異常状態の蓄積の程度を示し、また、ダイカストマシン100の長期的な状態変化を示す、差分値(K1~K4)のそれぞれの積算値を用いることが好ましい。なお、積算値を算出する鋳造データ(D1、D2)の範囲は、好適に設定することができる。
【0047】
また、ダイカストマシン100および鋳造品の突発的な状態変化を検知し、必要に応じて、鋳造工程を停止して緊急メンテナンスを行う緊急監視を主とする生産管理においては、差分値(K1~K4)のそれぞれの最大値を用いることが好ましい。また、短期的に鋳造データ(D1、D2)が上下しており瞬間値では判断が困難な場合、あるいは、鋳造データ(D1、D2)の長期的な変化の傾向を把握する場合においては、差分値(K1~K4)のそれぞれの移動平均値を用いることが好ましい。このように、スコア表示部55は、差分値(K1~K4)のそれぞれの瞬間値、積算値、最大値、移動平均値、を生産管理の形態応じて表示を切替える、または、重ね書き表示する形態とすることが好ましい。また、例えば、最小値や標準偏差値等の表示を更に加えるとしても良い。
【0048】
次に、図4を用いて、スコア表示部55の4つの実施形態について説明する。先ず、第1実施形態のスコア表示部55は、図4(a)に示すように、デジタルメータDM1とアナログメータAM1と、閾値メータSM1と、を備える。それぞれのメータの配置は、視認性が高まるような位置に配置されることが好ましい。また、それぞれのメータを同時に配置させたが、例えば、デジタルメータDM1を外して、アナログメータAM1と閾値メータSM1を配置させる、等としても良い。
【0049】
デジタルメータDM1は、スコア算出部54で算出した差分値(K1~K4)をデジタル数値で表示(デジタル表示という)する。また、閾値メータSM1は、予め設定した閾値をデジタル表示する。これによって、差分値(K1~K4)と閾値(S1~S5)とを視覚的に比較でき、視認性の高い生産管理システム50とすることができる。なお、デジタルメータDM1および閾値メータSM1は、差分値(K1~K4)と閾値(S1~S5)との差異に応じて、色調を変える、グラデーション表示させる、点灯または点滅させる、等の視認性を高める手段を更に加えるとしても良い。
【0050】
アナログメータAM1は、例えば、図3(a)に示すように、1つの閾値S1を用いて、閾値S1よりも低い計測ポイントP2の差分値K2を正常範囲A11とし、閾値S1よりも高い計測ポイントP1の差分値K1を異常範囲A12とし、差分値(K1、K2)に応じてアナログ指針A13が振れるように表示(アナログ表示という)する。アナログ指針A13の振れの程度によって、ダイカストマシン100および鋳造品が正常範囲A11にあるか、または異常範囲A12にあるかが視覚的に明確に分かる。これによって、視認性を高め、より精度の高いダイカストマシン100の生産管理システム50を提供することができる。なお、正常範囲A11および異常範囲A12は、例えば、色調を変える、グラデーション表示させる、等の視認性を高める手段が加えられている。また、アナログ指針A13の振れの程度によって、アナログメータAM1またはアナログ指針A13を点灯または点滅させる、等の視認性を高める手段を更に加えるとしても良い。
【0051】
次に、第2実施形態のスコア表示部55として、例えば、図4(b)に示すように、複数の閾値メータ(SM2、SM3)を配置し、正常範囲A21と、注意喚起を促す軽度の異常範囲A22と、鋳造を停止しメンテナンスを推奨する警報を発する重度の異常範囲A23、の3つに区分けされたアナログメータAM2を備える。このように、アナログメータAM2の区分けを増やすことによって、ダイカストマシン100および鋳造品の生産管理を緻密に行うことができ、予防保全に好適な精度の高いダイカストマシン100の生産管理システム50を提供することができる。なお、閾値メータ(SM2、SM3)の配置を更に増やして、アナログメータAM2の区分けを更に増やすとしても良い。また、アナログメータAM2およびデジタルメータDM2等の各メータは、第1実施形態と同様の視認性を高める手段および配置とすることが好ましい。
【0052】
次に、第3実施形態のスコア表示部55は、例えば、図4(c)に示すように、デジタルメータDM3と、閾値メータS4と、グラフメータGM1を備える。なお、デジタルメータDM3および閾値メータSM4は、第1実施形態または第2実施形態と同様の視認性を高める手段および配置とすることが好ましい。
【0053】
また、グラフメータGM1は、スコア算出部54で算出した差分値(K1~K4)をグラフバーG11の増減で表示(グラフ表示という)する。これによって、ダイカストマシン100および鋳造品の状態変化の程度を視覚的に明確に表現でき、精度の高い生産管理システム50を提供することができる。なお、グラフバーG11の増減の程度に応じて、例えば、グラフメータGM1およびグラフバーG11の色調を変える、グラデーション表示させる、点灯または点滅させる、等の視認性を高める手段を更に加えるとしても良い。
【0054】
最後に、第4実施形態のスコア表示部55は、図4(d)に示すように、閾値メータSM5と複数のデジタルメータ(DM4、DM5)を備える。なお、閾値メータSM5は、第1実施形態から第3実施形態と同様の視認性を高める手段および配置とすることが好ましい。
【0055】
また、デジタルメータ(DM4、DM5)は、スコア算出部54で算出した差分値(K1~K4)をデジタル表示する。例えば、デジタルメータDM4に差分値(K1~K4)の瞬間値を表示し、デジタルメータDM5に差分値(K1~K4)の瞬間値以外(積算値、最大値、移動平均値、その他の数学的表示、から1つを設定)を表示する。このように、差分値(K1~K4)を組み合わせて表示することで、視認性が高く、ダイカストマシン100および鋳造品の状態変化および品質変化を正確に読み取ることができる幅広い生産管理を一括して行うことができ、精度の高いダイカストマシン100の生産管理システム50を提供することができる。なお、デジタルメータ(DM4、DM5)に表示する項目は、ダイカストマシン100および鋳造品の生産管理の形態に応じて好適に選択できるもとし、第1実施形態から第3実施形態と同様の視認性を高める手段および配置とすることが好ましい。
【0056】
このように、本発明に係る生産管理システム50を用いた第1実施形態から第4実施形態によって、ダイカストマシン100の状態変化および鋳造品の品質変化の視認性が高まり、軽微な変化を見過ごすことなく、精度の高い予防保全の機能を備えた、ダイカストマシン100の状態管理や鋳造品の品質管理等の生産管理を行う、ダイカストマシン100の生産管理システム50を提供することができる。なお、必要に応じて、第1実施形態から第4実施形態を組み合わせて実施するとしても良い。また、例えば、鋳造技術者が常用する携帯端末機や鋳造工程を管理する管理機器等に、生産管理システム50の全体、または、鋳造データ表示部53またはスコア表示部55を配置させて、遠隔監視の手段として活用するとしても良い。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に記載された範囲には限定されない。上記の実施形態には多様な変更または改良を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
100 ダイカストマシン
10 鋳造金型
11 固定金型
12 可動金型
13 金型キャビティ
14 金型ゲート
20 型締部
21 固定盤
22 可動盤
23 型締盤
24 タイバー
25 トグルリンク
251 リンク
252 クロスヘッド
253 ボールネジ
26 型締駆動部
27 型締制御部
30 射出部
31 射出スリーブ
32 プランジャチップ
33 プランジャロッド
34 注湯口
35 連結部
36 射出駆動部
37 射出制御部
40 成形制御部
50 生産管理システム
51 鋳造データ送受信部
52 鋳造データ保存部
53 鋳造データ表示部
531、532 表示画面
54 スコア算出部
55 スコア表示部
80 周辺設備
M 溶湯
F 前方
R 後方
X1、X2 横軸
Y1、Y2 縦軸
D1、D2 鋳造データ
S1~S5 閾値
P1~P3 計測ポイント
K1~K4 差分値
DM1~DM5 デジタルメータ
AM1、AM2 アナログメータ
A11、A21 正常範囲
A12、A22、A23 異常範囲
A13 アナログ指針
SM1~SM5 閾値メータ
GM1 グラフメータ
G11 グラフバー
図1
図2
図3
図4