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特開2024-131341追尾式指向性スピーカ、制御装置、制御方法および制御プログラム
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  • 特開-追尾式指向性スピーカ、制御装置、制御方法および制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131341
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】追尾式指向性スピーカ、制御装置、制御方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240920BHJP
   H04R 1/32 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/32 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041546
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩元 和之
【テーマコード(参考)】
5D018
5D220
【Fターム(参考)】
5D018AF01
5D220AA05
5D220AA44
5D220AB06
(57)【要約】
【課題】対象に対する過剰な音声情報の提供を防止することのできる追尾式指向性スピーカ等を提供すること。
【解決手段】実施形態の追尾式指向性スピーカは、スピーカと、水平角度調整部と、垂直角度調整部と、制御装置とを備える。前記スピーカは、指向性のある音声を放射する。前記水平角度調整部は、前記スピーカを水平方向に対して回動することで前記スピーカの水平角度を調整する。前記垂直角度調整部は、前記スピーカを垂直方向に対して回動することで前記スピーカの垂直角度を調整する。前記制御装置は、センサ信号に基づいて対象を補足し、前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動を制御して、前記対象に前記スピーカの放射方向を向ける。前記制御装置は、前記対象の移動が過剰であると判断した場合、前記スピーカからの音声の送出を停止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性のある音声を放射するスピーカと、
前記スピーカを水平方向に対して回動することで前記スピーカの水平角度を調整する水平角度調整部と、
前記スピーカを垂直方向に対して回動することで前記スピーカの垂直角度を調整する垂直角度調整部と、
センサ信号に基づいて対象を補足し、前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動を制御して、前記対象に前記スピーカの放射方向を向ける制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記対象の移動が過剰であると判断した場合、前記スピーカからの音声の送出を停止する、
追尾式指向性スピーカ。
【請求項2】
前記制御装置は、前記水平角度調整部への水平角度の調整量の単位時間当たりの変化量または前記垂直角度調整部への垂直角度の調整量の単位時間当たりの変化量が所定の閾値を超えた場合に前記対象の移動が過剰と判断する、
請求項1に記載の追尾式指向性スピーカ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記垂直角度に応じて、前記水平角度の単位時間当たりの変化量の評価または前記閾値を設定する、
請求項2に記載の追尾式指向性スピーカ。
【請求項4】
前記スピーカは、超音波を音声信号で変調する指向性の強いパラメトリックスピーカである、
請求項1に記載の追尾式指向性スピーカ。
【請求項5】
前記制御装置は、センサ信号に基づいて前記対象を補足した場合に、前記対象がセンサ検出範囲の中央になるように前記水平角度調整部の水平角度および前記垂直角度調整部の垂直角度の回動の制御を開始する、
請求項1に記載の追尾式指向性スピーカ。
【請求項6】
前記制御装置は、待機位置として予め設定された水平角度および垂直角度に前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動を制御して待機する、
請求項1に記載の追尾式指向性スピーカ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記対象の移動が過剰であると判断した場合または前記対象が設定された所定の追尾範囲から外れた場合、前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動の制御による追尾を停止し、
待機位置として予め設定された水平角度および垂直角度に前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動を制御して待機する、
請求項1に記載の追尾式指向性スピーカ。
【請求項8】
前記制御装置は、前記対象の移動が過剰であると判断した場合または前記対象が設定された所定の追尾範囲から外れた場合、前記対象に向けて前記スピーカから送出する音声を区切りの良いところで停止する、
請求項7に記載の追尾式指向性スピーカ。
【請求項9】
前記制御装置は、追尾中の同一の前記対象への前記スピーカから送出する音声が設定された所定のリピート回数に達した場合、前記対象に向けて前記スピーカから送出する音声を区切りの良いところで停止し、
待機位置として予め設定された水平角度および垂直角度に前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動を制御して待機する、
請求項1に記載の追尾式指向性スピーカ。
【請求項10】
指向性のある音声を放射するスピーカと、
前記スピーカを水平方向に対して回動することで前記スピーカの水平角度を調整する水平角度調整部と、
前記スピーカを垂直方向に対して回動することで前記スピーカの垂直角度を調整する垂直角度調整部と、を制御する制御装置であって、
センサ信号に基づいて対象を補足し、前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動を制御して、前記対象に前記スピーカの放射方向を向け、
前記制御装置は、前記対象の移動が過剰であると判断した場合、前記スピーカからの音声の送出を停止する、
制御装置。
【請求項11】
指向性のある音声を放射するスピーカと、
前記スピーカを水平方向に対して回動することで前記スピーカの水平角度を調整する水平角度調整部と、
前記スピーカを垂直方向に対して回動することで前記スピーカの垂直角度を調整する垂直角度調整部と、を制御する制御装置のコンピュータが実行する制御方法であって、
センサ信号に基づいて対象を補足し、前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動を制御して、前記対象に前記スピーカの放射方向を向ける工程と、
前記制御装置は、前記対象の移動が過剰であると判断した場合、前記スピーカからの音声の送出を停止する工程と、
を含む制御方法。
【請求項12】
指向性のある音声を放射するスピーカと、
前記スピーカを水平方向に対して回動することで前記スピーカの水平角度を調整する水平角度調整部と、
前記スピーカを垂直方向に対して回動することで前記スピーカの垂直角度を調整する垂直角度調整部と、を制御する制御装置のコンピュータに、
センサ信号に基づいて対象を補足し、前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動を制御して、前記対象に前記スピーカの放射方向を向ける手順と、
前記制御装置は、前記対象の移動が過剰であると判断した場合、前記スピーカからの音声の送出を停止する手順と、
を実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追尾式指向性スピーカ、制御装置、制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
展示施設等において、観覧者等に対して自動で音声案内を行う場合がある。展示コーナ等ごとにスピーカを設け、所定の範囲内に一斉に音声を再生する場合もあるが、その展示コーナ等で既に観覧している者と到着したばかりの者とに同じ音声が発せられるため、一部の者は音声案内の内容を途中から聞くこととなり、適切ではない。
【0003】
そのため、対象(対象者)を追尾し、指向性の強いスピーカにより対象ごとに音声を発することが望まれる。指向性の強いスピーカとしては、音声信号により変調した超音波を利用するパラメトリックスピーカが知られている(例えば、特許文献1等を参照)。また、防犯に関するものではあるが、対象を追尾して音声による警告を行う技術が開示されている(例えば、特許文献2等を参照)。また、広告宣伝に関する同様な技術(例えば、特許文献3等を参照)や、電子機器に関する同様な技術(例えば、特許文献4等を参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-175145号公報
【特許文献2】特開2020-201816号公報
【特許文献3】特開2020-43503号公報
【特許文献4】特開2012-205240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、対象を追尾し、指向性の強いスピーカにより対象ごとに音声を発する場合、対象に対して過剰な音声情報の提供となる場合があり、それは避けなければならない。例えば、対象が音声情報を聞きたくないと思って場所を移動しても、追尾により音声情報の提供がしつこく続けられると、不快感を抱かせてしまう場合がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、対象に対する過剰な音声情報の提供を防止することのできる追尾式指向性スピーカ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る追尾式指向性スピーカは、スピーカと、水平角度調整部と、垂直角度調整部と、制御装置とを備える。前記スピーカは、指向性のある音声を放射する。前記水平角度調整部は、前記スピーカを水平方向に対して回動することで前記スピーカの水平角度を調整する。前記垂直角度調整部は、前記スピーカを垂直方向に対して回動することで前記スピーカの垂直角度を調整する。前記制御装置は、センサ信号に基づいて対象を補足し、前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動を制御して、前記対象に前記スピーカの放射方向を向ける。前記制御装置は、前記対象の移動が過剰であると判断した場合、前記スピーカからの音声の送出を停止する。
【0008】
本発明の一態様に係る追尾式指向性スピーカは、対象に対する過剰な音声情報の提供を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態にかかる追尾式指向性スピーカ等の機能ブロック図である。
図2図2は、追尾式指向性スピーカの構成例を示す斜視図である。
図3図3は、パラメトリックスピーカの構成例を示す斜視図である。
図4図4は、パラメトリックスピーカの音の広がりの例を示す図である。
図5図5は、一般的なスピーカの音の広がりの例を示す図である。
図6図6は、センサとしてサーモパイルアレイセンサが用いられた場合の検出状態の例を示す図である。
図7図7は、追尾式指向性スピーカによるセンサおよび音声送出の中心軸とセンサ検出範囲と追尾範囲との関係の例を示す図である。
図8図8は、追尾式指向性スピーカの制御例を示すフローチャートである。
図9図9は、対象の人が逃げることにより移動が過剰であると判断する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る追尾式指向性スピーカ、制御装置、制御方法および制御プログラムについて図面を参照して説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0011】
図1は、一実施形態にかかる追尾式指向性スピーカ100等の機能ブロック図である。図1において、追尾式指向性スピーカ100は、展示施設等において音声案内等を行うために設けられる装置であり、展示施設の天井等に設置される。追尾式指向性スピーカ100は内部に制御装置160を有しており、単独でも動作が可能であるが、追尾式指向性スピーカ100が複数設置される環境等においては、外部制御装置200により統括的に制御が行われるようにすることも可能である。また、追尾式指向性スピーカ100は、リモコン装置300によっても制御が可能である。外部制御装置200およびリモコン装置300は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等のコンピュータ装置により構成され、機能構成は追尾式指向性スピーカ100の制御装置160と同様である。
【0012】
図2は、追尾式指向性スピーカ100の構成例を示す斜視図である。図2において、追尾式指向性スピーカ100は、基台部101と、アーム部102と、スピーカ部103とを備えている。基台部101には、図1に示された追尾式指向性スピーカ100の制御装置160等が配置されている。アーム部102は、基台部101に対して水平面内で回転するとともに、スピーカ部103を垂直面内で回転する機構を備えている。スピーカ部103は、ほぼ全面がパラメトリックスピーカ110の超音波出力面となっており、額縁部にはセンサ130が設けられている。
【0013】
図1に戻り、追尾式指向性スピーカ100は、パラメトリックスピーカ110と、スピーカ駆動部120と、センサ130と、水平角度調整部140と、垂直角度調整部150と、制御装置160とを備えている。
【0014】
パラメトリックスピーカ110は、指向性のある音声を放射するスピーカの一例であり、音声信号により変調された超音波が伝播する際の空気の非線形特性により可聴音が発生する現象を利用している。図3は、パラメトリックスピーカ110の構成例を示す斜視図であり、図示の例では基板111上に50個の超音波発信子112が配置されており、基板111の法線方向であって図の上方に向けて超音波が放出される。図4は、パラメトリックスピーカ110の音の広がりの例を示す図であり、極めて高い指向性(指向特性)を有している。図5は、一般的なスピーカSPの音の広がりの例を示す図であり、無指向に放射状に音が広がる。
【0015】
図1に戻り、スピーカ駆動部120は、パラメトリックスピーカ110を駆動するための電気信号を出力する回路部分であり、音声信号により変調された例えば40kHzの電気信号を出力する。スピーカ駆動部120は、制御装置160により動作が制御され、変調に用いる音声信号(アナログ信号またはデジタル信号)も制御装置160から供給される。
【0016】
センサ130は、音声案内等を提供する対象(対象者)の方向を補足するためのものであり、例えばサーモパイルアレイセンサが用いられる。サーモパイルアレイセンサは、サーモパイル(熱電堆)がアレイ(配列)状に設けられたものであり、レンズ等の光学系により視野内の画像がアレイ上に投影されることで、視野内の温度分布を検出することができ、体温を有する人の検出を容易に行うことができる。アレイの数としては、8個×8個、16個×16個、32個×32個等の製品が存在している。図6は、センサ130としてサーモパイルアレイセンサが用いられた場合の検出状態の例を示す図であり、図の中央部の濃いハッチング部分は人の顔等の温度の高い部分を示し、その周囲の薄いハッチング部分は中央より温度の低い顔の周縁の部分を示している。なお、センサ130としては、サーモパイルアレイセンサに限られず、カメラやレーダ等を用いることもできる。
【0017】
図7は、追尾式指向性スピーカ100によるセンサ130および音声送出の中心軸AXとセンサ検出範囲A1と追尾範囲A2との関係の例を示す図である。図7において、センサ検出範囲A1は、図6で説明したサーモパイルアレイセンサの検出範囲に対応して矩形となっている。また、追尾範囲A2は、例えば中心軸AXが動き得る水平角度(パン角度)と垂直角度(チルト角度)の最小値と最大値とで設定され、矩形状となる。なお、水平角度と垂直角度との関係を規定することで、追尾範囲A2を任意の形状とすることもできる。
【0018】
図1に戻り、水平角度調整部140は、パラメトリックスピーカ110およびセンサ130を含むスピーカ部103の音声を送出する方向のうちの水平角度(パン角度)をモータ駆動等により調整する。垂直角度調整部150は、音声を送出する方向のうちの垂直角度(チルト角度)をモータ駆動等により調整する。図2には水平角度θと垂直角度θとが示されており、基準方向に対する水平角度θは中心軸AXを水平面に投影した投影線HLの基準方向からの水平面内の角度であり、垂直角度θは中心軸AXの垂直方向に対する角度である。基準方向は、図示の例では、基台部101の長手方向であって、スピーカ部103のない側からスピーカ部103のある側を向く方向である。
【0019】
図1に戻り、制御装置160は、制御部161と、記憶部162と、通信部163とを備えている。制御部161は、プロセッサを含むコンピュータの主要部分であり、記憶部162に記憶されたプログラムやデータと、センサ130からのセンサ信号に基づいて、スピーカ駆動部120、水平角度調整部140、垂直角度調整部150を制御する。
【0020】
記憶部162は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、または、ハードディスクや光ディスクなどの記憶装置によって実現される。記憶部162には、プログラムのほか、自己(追尾式指向性スピーカ100)の状態データ、待機位置、追尾範囲、音声案内リピート回数、音声データ等が保持されている。記憶部162に記憶されるプログラムやデータは、ネットワーク経由または可搬型の記憶媒体を介して読み込みまたは書き出しが可能である。
【0021】
状態データは、例えば、現在のパラメトリックスピーカ110の水平角度、垂直角度、音声案内のオン/オフ等を示すデータである。待機位置は、対象を追尾していない状態での水平角度および垂直角度である。追尾範囲は、対象を追尾する範囲であり、例えば水平角度および垂直角度のそれぞれの最小値および最大値により設定される。なお、水平角度と垂直角度との間に関連付けを与えることで、追尾範囲を矩形以外に円形や楕円形等にすることもできる。音声案内リピート回数は、1回の追尾の中で同じ対象に音声案内を繰り返す上限値である。音声データは、音声案内の内容の音声を示すデータである。
【0022】
通信部163は、NIC(Network Interface Card)等により実現され、制御部161の制御のもと、WiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の規格に従って外部制御装置200やリモコン装置300と通信を行う。
【0023】
図8は、追尾式指向性スピーカ100の制御例を示すフローチャートである。図8の制御は、主に追尾式指向性スピーカ100の制御装置160により行われるが、その一部または全部を外部制御装置200やリモコン装置300が行ってもよい。
【0024】
図8において、制御装置160は、電源の投入等により処理を開始すると、前述した待機位置と追尾範囲と音声案内リピート回数とを管理者の入力を経て設定する(ステップS1)。なお、既に待機位置と追尾範囲と音声案内リピート回数とが設定されている場合には、それらを変更する場合を除き、重ねて設定する必要はない。
【0025】
次いで、制御装置160は、水平角度調整部140および垂直角度調整部150の回動を制御して前述の待機位置に移動し、待機する(ステップS2)。なお、既に待機位置にある場合は、そのまま待機する。
【0026】
次いで、制御装置160は、センサ130のセンサ検出範囲に人を検出したか否か判断する(ステップS3)。センサ検出範囲に人を検出したか否かの判断は、例えば、センサ130がサーモパイルアレイセンサである場合にはセンサ検出範囲に人の体温に相当する温度が表れたか否かによる。センサ130がカメラである場合には、例えば、画像認識により人を認識したか否かによる。センサ130がレーダである場合には、例えば、深度画像の画像認識により人を認識したか否かによる。
【0027】
制御装置160は、センサ130のセンサ検出範囲に人を検出していないと判断した場合(ステップS3のNo)、待機位置での待機を継続する(ステップS2)。
【0028】
制御装置160は、センサ130のセンサ検出範囲に人を検出したと判断した場合(ステップS3のYes)、水平角度調整部140および垂直角度調整部150の回動を制御して、検出した対象がセンサ検出範囲の中央になるように水平角度および垂直角度の回動を開始する(ステップS4)。
【0029】
次いで、制御装置160は、パラメトリックスピーカ110で音声案内を開始する(ステップS5)。
【0030】
次いで、制御装置160は、対象の移動は過剰であるか否か判断する(ステップS6)。すなわち、音声による情報提供を好まずに聞こえない場所へ逃げようとして通常よりも早く移動したか否か判断する。制御装置160は、例えば、水平角度調整部140への水平角度の調整量の単位時間当たりの変化量または垂直角度調整部150への垂直角度の調整量の単位時間当たりの変化量が所定の閾値を超えた場合に対象の移動が過剰と判断する。
【0031】
移動が過剰であるか否かを厳密に判断するには、例えば人の頭部の水平面内における速度を求め、それを実験等により定められた通常の歩行か急ぎ足かを区別する閾値と比較することにより行う。センサ130が距離を測定する機能を有する場合には、対象との距離を直接に測定することができる。また、サーモパイルアレイセンサでは対象との距離を直接に測定することはできないが、追尾式指向性スピーカ100が天井に設置されていて天井の高さが分かり、人の平均的な身長がわかれば、水平角度および垂直角度から三角関数により追尾式指向性スピーカ100から対象までの距離がわかり、その水平面内での単位時間あたりの変化分から概略の速度を求めることができる。また、速度は、数式により算出してもよいし、水平角度および垂直角度からテーブルにより引き当ててもよい。
【0032】
また、追尾式指向性スピーカ100が展示コーナの中央の真上等に設置される場合、人の流れ(音声案内を聞きたくなくて逃げる方向にもほぼ一致)は音声の送出方向に対してほぼ直交するものとなるため、音声を送出する水平角度の変化量により速度を判断することができる。なお、垂直角度の違い(人が追尾式指向性スピーカ100に近いか遠いか)により水平角度の単位時間あたりの変化分と速度との関係が変わるため、垂直角度が小さい場合(追尾式指向性スピーカ100のほぼ真下にいる場合)は、水平角度の単位時間当たりの変化分を小さくするか、比較する閾値を大きくする。すなわち、垂直角度に応じて、水平角度の単位時間当たりの変化分の評価または閾値を設定することができる。
【0033】
図9は、対象の人M1、M2が逃げることにより移動が過剰であると判断する例を示す図であり、水平角度の単位時間あたりの変化分を人の速度とみなす場合を示している。図9において、対象である人M1と人M2は同じ速さで通常の移動を行った後に急ぎ足になる場合を示している。また、垂直角度に応じて、水平角度の単位時間当たりの変化分の評価が設定されている。対象である人M1は垂直角度が60°であり、追尾式指向性スピーカ100から遠くにいると判断されるため、水平角度の単位時間あたりの変化分は大きめに評価され、時刻t1~t2が通常の移動で、そこから急ぎ足になると時刻t3で移動が過剰であると判断される(時刻t1~t2において、水平角度の単位時間当たりの変化分はアローヘッド1つであり、人M1の移動距離は4つ分である。そして、時刻t2以降の水平角度の単位時間当たりの変化分は時刻t1~t2における水平角度の単位時間当たりの変化分より大きく、変化分が所定の閾値を超えたと判断され時刻t3で移動が過剰であると判断される。)。また、対象である人M2は垂直角度が30°であり、追尾式指向性スピーカ100の近くにいると判断されるため、水平角度の単位時間あたりの変化分は小さめに評価され、時刻t4~t5が通常の移動で、そこから急ぎ足になると時刻t6で移動が過剰であると判断される(時刻t4~t5において、水平角度の単位時間当たりの変化分は時刻t1~t2における水平角度の単位時間当たりの変化分より大きいが変化分は小さめに評価される。時刻t4~t5において、水平角度の単位時間当たりの変化分は、時刻t1~t2の場合と同様にアローヘッド1つであり、人M2の移動距離は4つ分である。ただし、人M2の移動距離は人M1の移動距離と同じであり、単位時間当たりの変化分は小さめに評価される。そして、時刻t5以降の水平角度の単位時間当たりの変化分は時刻t4~t5における水平角度の単位時間当たりの変化分より大きく、変化分が所定の閾値を超えたと判断され時刻t6で移動が過剰であると判断される。)。
【0034】
図8に戻り、制御装置160は、対象の移動が過剰でないと判断した場合(ステップS6のNo)、続いて、現在の追尾において同じ対象に対して送出している音声案内が前述の所定の音声案内リピート回数に到達したか否か判断する(ステップS7)。
【0035】
制御装置160は、所定の音声案内リピート回数に到達していないと判断した場合(ステップS7のNo)、続いて、対象が前述の追尾範囲から外れたか否か判断する(ステップS8)。制御装置160は、追尾範囲から外れていないと判断した場合(ステップS8のNo)、対象の移動が過剰か否かの判断(ステップS6)に戻る。
【0036】
制御装置160は、対象の移動が過剰であると判断した場合(ステップS6のYes)、または所定の音声案内リピート回数に到達したと判断した場合(ステップS7のYes)、または追尾範囲から外れたと判断した場合(ステップS8のYes)、水平角度調整部140および垂直角度調整部150の回動の制御による追尾を停止し(ステップS9)、パラメトリックスピーカ110から送出する音声案内の音声を区切りの良いところで終了する(ステップS10)。ステップS9の時点で追尾を停止しているが音声の区切りが悪い場合は、音声案内が継続して行われる。すなわち、音声の区切りが悪い場合はパラメトリックスピーカ110の放射方向が追尾を停止した時点の方向に固定された状態で音声案内が継続される。これにより、対象は気になって戻ってくることで音声を続けて聞くことができ、利便性を向上することができる。なお、この時点では追尾は停止しているため、立ち去れば音声は聞こえなくなる。そして、待機位置での待機(ステップS2)に戻る。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0038】
以上のように、実施形態に係る追尾式指向性スピーカは、指向性のある音声を放射するスピーカと、前記スピーカを水平方向に対して回動することで前記スピーカの水平角度を調整する水平角度調整部と、前記スピーカを垂直方向に対して回動することで前記スピーカの垂直角度を調整する垂直角度調整部と、センサ信号に基づいて対象を補足し、前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動を制御して、前記対象に前記スピーカの放射方向を向ける制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記対象の移動が過剰であると判断した場合、前記スピーカからの音声の送出を停止する。これにより、対象に対する過剰な音声情報の提供を防止することができる。すなわち、対象の移動が過剰となることで、音声を聞きたくなくて逃げようとしていると判断できるため、音声の送出を停止し、不快感を抱かせないようにすることができる。
【0039】
また、前記制御装置は、前記水平角度調整部への水平角度の調整量の単位時間当たりの変化量または前記垂直角度調整部への垂直角度の調整量の単位時間当たりの変化量が所定の閾値を超えた場合に前記対象の移動が過剰と判断する。これにより、対象の移動の過剰を容易に判断することができる。
【0040】
また、前記制御装置は、前記垂直角度に応じて、前記水平角度の単位時間当たりの変化量の評価または前記閾値を設定する。これにより、対象の状態(人が追尾式指向性スピーカに近いか遠いか)に応じて対象の移動の過剰を容易に判断することができる。
【0041】
また、前記スピーカは、超音波を音声信号で変調する指向性の強いパラメトリックスピーカである。これにより、指向性のある音声を放射するスピーカを容易に構成することができる。
【0042】
また、前記制御装置は、センサ信号に基づいて前記対象を補足した場合に、前記対象がセンサ検出範囲の中央になるように前記水平角度調整部の水平角度および前記垂直角度調整部の垂直角度の回動の制御を開始する。これにより、対象の追尾を容易に行うことができる。
【0043】
また、前記制御装置は、待機位置として予め設定された水平角度および垂直角度に前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動を制御して待機する。これにより、対象が例えば展示施設等の所定の入口等から現れる場合や展示コーナ等の所定の開始位置から現れる場合に、当該入口や当該開始位置を待機位置とすれば、次の対象の捕捉に早く備えて適切に追尾を開始することができ、音声による情報提供の効率を上げることができる。
【0044】
また、前記制御装置は、前記対象の移動が過剰であると判断した場合または前記対象が設定された所定の追尾範囲から外れた場合、前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動の制御による追尾を停止し、待機位置として予め設定された水平角度および垂直角度に前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動を制御して待機する。これにより、対象の追尾および音声の送出を適切に停止することができる。
【0045】
また、前記制御装置は、前記対象の移動が過剰であると判断した場合または前記対象が設定された所定の追尾範囲から外れた場合、前記対象に向けて前記スピーカから送出する音声を区切りの良いところで停止する。これにより、対象の追尾および音声の送出を適切に停止することができる。また、音声は区切りの良いところまで送出されるので、音声案内等の質感を保つとともに、対象はいったん逃げたり範囲外に出てしまったりしても気になって戻ってくることで音声を続けて聞くことができ、利便性が向上する。
【0046】
また、前記制御装置は、追尾中の同一の前記対象への前記スピーカから送出する音声が設定された所定のリピート回数に達した場合、前記対象に向けて前記スピーカから送出する音声を区切りの良いところで停止し、待機位置として予め設定された水平角度および垂直角度に前記水平角度調整部および前記垂直角度調整部の回動を制御して待機する。これにより、同じ対象に対して過剰に音声情報を提供することを防止することができる。
【0047】
また、制御動作のみを行う制御装置、この制御装置における制御方法、制御プログラムとして構成することができる。これにより、多様な形態で実施することができる。
【0048】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
100 追尾式指向性スピーカ,101 基台部,102 アーム部,103 スピーカ部,110 パラメトリックスピーカ,112 超音波発信子,120 スピーカ駆動部,130 センサ,140 水平角度調整部,150 垂直角度調整部,160 制御装置,161 制御部,162 記憶部,163 通信部,200 外部制御装置,300 リモコン装置
図1
図2
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図9