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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131343
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/02 20060101AFI20240920BHJP
   E02D 1/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01C9/02
E02D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041549
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 紀浩
(72)【発明者】
【氏名】兼行 智彦
(72)【発明者】
【氏名】大橋 渉
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AA09
2D043BA10
(57)【要約】
【課題】管状構造物への挿抜をスムーズに行うことができつつ、管状構造物内における位置を所望の位置に固定することができる計測装置を提供する。
【解決手段】管状構造物に挿入して使用する計測装置であって、計測装置は、計測可能方向について、物理量を計測する計測部と、本体部と、第1アンカーと第2アンカーとを含むアンカー部と、第1アンカーを付勢する付勢部と、を備え、計測装置には、挿入方向が決められており、付勢部は、外部からの入力に応じて、第1アンカーを付勢する付勢力を変化させ、計測方向は、管状構造物に対して決められており、第1アンカーと、第2アンカーとは、管状構造物の形状に応じた位置に設けられ、管状構造物の形状に応じた位置は、本体部が有する位置のうち、管状構造物内において当該付勢力を増大させた場合、計測可能方向が、計測方向と一致するように計測装置を管状構造物内に固定可能な位置である、計測装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土留め構造物の一部である又は地中に埋設される管状構造物に挿入して使用する計測装置であって、
所定の1以上の計測可能方向について、所定の物理量を計測する計測部と、
前記計測部を搭載する本体部と、
前記本体部に設けられる1以上の第1アンカーと、前記本体部に設けられる1以上の第2アンカーとを含むアンカー部と、
前記1以上の第1アンカーを前記本体部から離れる方向に向かって付勢する付勢部と、
を備え、
前記計測装置には、所定の挿入方向が決められており、
前記本体部は、前記挿入方向に向かって前記計測装置を見た場合、前記1以上の第1アンカーのうちの少なくとも1つと、前記1以上の第2アンカーのうちの少なくとも1つとの間に位置し、
前記付勢部は、外部からの入力に応じて、前記1以上の第1アンカーを付勢する付勢力を変化させ、
ユーザが前記物理量を計測したい所望の1以上の計測方向は、前記管状構造物に対して予め決められており、
前記1以上の第1アンカーと、前記1以上の第2アンカーとは、前記管状構造物の形状に応じた位置に設けられ、
前記管状構造物の形状に応じた位置は、前記本体部が有する位置のうち、前記1以上の計測可能方向のうちの少なくとも1つが、前記1以上の計測方向のうちの少なくとも1つと一致するように前記計測装置を前記管状構造物内に固定可能な位置である、
計測装置。
【請求項2】
前記付勢部は、前記1以上の第2アンカーを付勢しない、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記付勢部は、前記1以上の第2アンカーのうちの少なくとも1つを前記本体部から離れる方向に向かって付勢する付勢部材を含む、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記本体部の形状は、前記挿入方向に向かって前記計測装置を見た場合において長手方向を有する形状である、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項5】
前記管状構造物が延伸する延伸方向と直交する方向において前記管状構造物を切断した場合の前記管状構造物の断面の形状は、正方形であり、
前記挿入方向は、前記管状構造物に前記計測装置を挿入する場合において前記延伸方向と一致させる方向であり、
前記1以上の計測可能方向は、前記挿入方向と直交する方向であり、且つ、前記長手方向に対して45°で交差する第1計測可能方向を含み、
前記1以上の計測方向は、正方形の前記断面が有する4辺のうちの第1辺と平行な第1計測方向を含み、
前記管状構造物の形状に応じた位置は更に、前記本体部が有する位置のうち、前記付勢部が前記付勢力を増大させた場合、正方形の前記断面の対角線と前記長手方向とが平行となるように前記計測装置を前記管状構造物内に固定可能な位置である、
請求項4に記載の計測装置。
【請求項6】
前記1以上の第1アンカーのうちの少なくとも1つと、前記1以上の第2アンカーのうちの少なくとも1つとは、前記長手方向と平行に、且つ、互いに反対向きに前記計測装置から突出している、
請求項4又は5に記載の計測装置。
【請求項7】
前記付勢部は、前記外部からの入力に応じて、前記付勢力を減少させる、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項8】
前記計測部は、前記1以上の計測可能方向のうちの1つの重力方向に対する傾斜角を前記物理量として計測する、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項9】
前記計測部は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)として構成されている、
請求項8に記載の計測装置。
【請求項10】
前記外部からの入力は、前記外部から供給される空気の圧力であり、
前記付勢部は、前記空気が供給される供給管を含む、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項11】
前記挿入方向は、前記管状構造物に前記計測装置を挿入する場合において、前記管状構造物が延伸する延伸方向と一致させる方向であり、
前記計測装置は、前記供給管によって他の計測装置と接続され、前記挿入方向に向かって前記他の計測装置と並んでおり、
前記供給管は、前記他の計測装置へ前記空気を供給する他の供給管と一体に構成されている、
請求項10に記載の計測装置。
【請求項12】
前記他の計測装置は、前記計測部と、前記本体部と、前記アンカー部と、前記付勢部とを備える、
請求項11に記載の計測装置。
【請求項13】
所定の物理量を計測する計測部と、
前記計測部を搭載する本体部と、
前記本体部に設けられる1以上の第1アンカーと、前記本体部に設けられる1以上の第2アンカーとを含むアンカー部と、
前記1以上の第1アンカーを前記本体部から離れる方向に向かって付勢する付勢部と、
を備え、
前記付勢部は、前記1以上の第1アンカーを付勢する付勢力を変化させる、
計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
山留め計測等のように物理量の計測を行う計測装置についての研究、開発が行われている。
【0003】
これに関し、地中地盤内に設置された管状構造物内をケーブルにより吊るされて上下に走行可能な、管状構造物の傾斜を測定する傾斜計と、この傾斜計を吊るすケーブルと接触して回転する移動距離測定用プーリーと、これと同軸のロータリーエンコーダとからなるケーブルの移動距離を測定する深度計を備えた計測装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-062166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような計測装置は、管状構造物内を移動させる際に管状構造物と接触するローラを備えており、このローラによって当該計測装置の挿抜をスムーズに行うことができる。しかしながら、当該計測装置は、管状構造物内における位置を固定する部材を有していない。このため、当該計測装置は、常設時において管状構造物内における当該計測装置の位置を保持することが困難な場合があった。これは、当該計測装置による計測誤差の発生に繋がるため、望ましいことではない。
【0006】
また、このような問題を解決するため、板ばねのような弾性部材を用いて管状構造物内における位置を固定することが可能な計測装置も知られている。しかしながら、当該計測装置は、弾性部材の弾性力によって当該計測装置の管状構造物内における位置を固定するため、管状構造物への挿抜をスムーズに行うことが困難な場合があった。特に、管状構造物内の経年劣化によって管状構造物の内壁に凹凸が生じている場合、当該計測装置は、管状構造物への挿抜が困難になることがあった。
【0007】
本開示は、このような事情を考慮してなされたもので、管状構造物への挿抜をスムーズに行うことができつつ、管状構造物内における位置を所望の位置に固定することができる計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、土留め構造物の一部である又は地中に埋設される管状構造物に挿入して使用する計測装置であって、所定の1以上の計測可能方向について、所定の物理量 を計測する計測部と、前記計測部を搭載する本体部と、前記本体部に設けられる1以上の第1アンカーと、前記本体部に設けられる1以上の第2アンカーとを含むアンカー部と、前記1以上の第1アンカーを前記本体部から離れる方向に向かって付勢する付勢部と、を備え、前記計測装置には、所定の挿入方向が決められており、前記本体部は、前記挿入方向に向かって前記計測装置を見た場合、前記1以上の第1アンカーのうちの少なくとも1つと、前記1以上の第2アンカーのうちの少なくとも1つとの間に位置し、前記付勢部は、外部からの入力に応じて、前記1以上の第1アンカーを付勢する付勢力を変化させ、ユーザが前記物理量を計測したい所望の1以上の計測方向は、前記管状構造物に対して予め決められており、前記1以上の第1アンカーと、前記1以上の第2アンカーとは、前記管状構造物の形状に応じた位置に設けられ、前記管状構造物の形状に応じた位置は、前記本体部が有する位置のうち、前記1以上の計測可能方向のうちの少なくとも1つが、前記1以上の計測方向のうちの少なくとも1つと一致するように前記計測装置を前記管状構造物内に固定可能な位置である、計測装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、管状構造物への挿抜をスムーズに行うことができつつ、管状構造物内における位置を所望の位置に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】計測装置1の構成の一例を示す斜視図である。
図2図1に示した計測装置1の背面が見えるように他の角度から計測装置1を見た場合の斜視図である。
図3】管状構造物MTに対して所定の3つの計測方向の一例を示す図である。
図4】挿入方向に向かって計測装置1を見た場合における3つの計測可能方向の一例を示す図である。
図5図3に示した管状構造物MTが延伸する延伸方向に向かって管状構造物MT内に位置する計測装置1を見た場合における管状構造物MTに対する3つの計測可能方向の向きの一例を示す図である。
図6】管状構造物MTへ計測装置1を挿入する様子の一例を示す図である。
図7】山留め壁設けられた建設現場において計測装置1が使用されている様子の一例を示す図である。
図8】対象地盤への管状構造物MTの埋設方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
<計測装置の概要>
まず、本実施形態に係る計測装置の概要について説明する。
【0013】
実施形態に係る計測装置は、土留め構造物の一部である又は地中に埋設される管状構造物に挿入して使用する計測装置である。計測装置は、計測部と、本体部と、アンカー部と、付勢部を備える。計測部は、所定の1以上の計測可能方向について、所定の物理量を計測する。本体部は、計測部を搭載する。アンカー部は、本体部に設けられる1以上の第1アンカーと、本体部に設けられる1以上の第2アンカーとを含む。付勢部は、1以上の第1アンカーを本体部から離れる方向に向かって付勢する。また、計測装置には、所定の挿入方向が決められている。また、本体部は、挿入方向に向かって計測装置を見た場合、1以上の第1アンカーのうちの少なくとも1つと、1以上の第2アンカーのうちの少なくとも1つとの間に位置する。また、付勢部は、外部からの入力に応じて、1以上の第1アンカーを付勢する付勢力を変化させる。また、ユーザが物理量を計測したい所望の1以上の計測方向は、管状構造物に対して予め決められている。また、1以上の第1アンカーと、1以上の第2アンカーとは、管状構造物の形状に応じた位置に設けられる。そして、管状構造物の形状に応じた位置は、本体部が有する位置のうち、1以上の計測可能方向のうちの少なくとも1つが、1以上の計測方向のうちの少なくとも1つと一致するように計測装置を管状構造物内に固定可能な位置である。
【0014】
これにより、実施形態に係る計測装置は、管状構造物への挿抜をスムーズに行うことができつつ、管状構造物内における位置を所望の位置に固定することができる。
【0015】
以下では、実施形態に係る計測装置の構成について、詳しく説明する。
【0016】
<計測装置の構成>
以下、計測装置1を例に挙げて、実施形態に係る計測装置の構成について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、計測装置1のユーザを、単にユーザと称して説明する。
【0017】
図1は、計測装置1の構成の一例を示す斜視図である。また、図2は、図1に示した計測装置1の背面が見えるように他の角度から計測装置1を見た場合の斜視図である。
【0018】
計測装置1は、土留め構造物の一部である又は地中に埋設される管状構造物に挿入して使用する計測装置である。また、計測装置1は、所定の物理量を計測する計測装置である。所定の物理量は、例えば、傾斜角、角速度、加速度、速度、位置、歪み、温度、電流、電圧、電力、放射線量等であるが、これらに限られるわけではない。以下では、説明の便宜上、これらの物理量のうち、ユーザが計測したい所望の物理量を、対象物理量と称して説明する。なお、対象物理量の計測は、対象物理量の検出と称されてもよい。この場合、計測装置1は、検出装置と称されてもよい。
【0019】
より具体的には、計測装置1は、計測装置1における所定の1以上の計測可能方向について、対象物理量を計測する。このため、ユーザは、計測装置1によってユーザが計測したい所望の1以上の計測方向のうちの少なくとも1つ計測方向と、当該1以上の計測可能方向のうちの少なくとも1つの計測可能方向とを一致させ、計測装置1により当該少なくとも1つの計測方向における対象物理量を計測装置1に計測させる。例えば、当該少なくとも1つの計測可能方向が、計測装置1における所定の方向X1であり、当該少なくとも1つの計測方向が、ある方向X2であった場合、ユーザは、方向X1を方向X2と一致させ、計測装置1により方向X2における対象物理量を計測装置1に計測させる。
【0020】
以下では、一例として、計測装置1が、地中に埋設される管状構造物MTに挿入して使用する計測装置である場合について説明する。すなわち、計測装置1は、管状構造物MT内において、1以上の計測可能方向それぞれについての対象物理量を計測する。なお、図1及び図2には、計測装置1の構成を明確に示すため、管状構造物MTに挿入されていない計測装置1が示されている。
【0021】
ここで、管状構造物MTは、地盤内に埋設されてもよく、地盤によって構成される壁面に治具等を介して設けられてもよい。また、この場合において計測装置1によって計測される対象物理量は、例えば、重力方向に対する地盤の傾斜角、当該傾斜角を算出するための角速度、地盤内の歪み、地盤内の温度、地盤内を流れる水の水位、当該水の水圧、地盤内の放射線量等であるが、これらに限られるわけではない。なお、管状構造物MTを地中へ埋設する方法は、他の如何なる方法であってもよい。
【0022】
計測装置1には、管状構造物MTへ計測装置1を挿入する場合において、管状構造物MTが延伸する延伸方向と一致する挿入方向を予め決めることができる。そこで、以下では、一例として、計測装置1に当該挿入方向が予め決められている場合について説明する。例えば、延伸方向が重力方向と一致するように管状構造物MTを配置した場合、管状構造物MTに挿入されている状態の計測装置1の挿入方向は、延伸方向、すなわち、重力方向と一致する。また、計測装置1が管状構造物MTに挿入して使用する計測装置である場合、ユーザが計測したい所望の1以上の計測方向は、管状構造物MTに対して予め決めることができる。そこで、以下では、一例として、当該1以上の計測方向が、管状構造物MTに対して予め決められている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該1以上の計測方向が、第1計測方向BX、第2計測方向BY、第3計測方向BZの3つの計測方向である場合について説明する。なお、当該1以上の計測方向は、管状構造物MTに対して予め決められていなくてもよい。
【0023】
ここで、図3は、管状構造物MTに対して所定の3つの計測方向の一例を示す図である。図3には、管状構造物MTが延伸する延伸方向に向かって見た場合の管状構造物MTが示されている。図3に示した例では、管状構造物MTが延伸する延伸方向と直交する方向において管状構造物MTを切断した場合の管状構造物MTの断面の形状は、製造誤差等による歪みを除いて、正方形状である。そこで、以下では、一例として、当該断面の形状が、製造誤差等による歪みを除いて、正方形状である場合について説明する。なお、当該断面の形状は、正方形状に代えて、長方形状であってもよく、円形状であってもよく、楕円形状であってもよく、計測装置1を挿入可能な形状であれば、他の形状であってもよい。また、図3に示した例では、第3計測方向BZは、延伸方向と一致するように決められている。また、当該例では、第1計測方向BXは、当該断面が有する4辺のうちの1辺と平行であり、且つ、第3計測方向BZをZ軸の正方向とする仮想的な三次元直交座標系のX軸の正方向と一致するように決められている。また、当該例では、第2計測方向BYは、第1計測方向BX及び第3計測方向BZのそれぞれと直交し、且つ、当該三次元直交座標系のY軸の正方向と一致するように決められている。
【0024】
計測装置1は、例えば、計測部11と、本体部12と、アンカー部13と、付勢部14を備える。
【0025】
計測部11は、計測部11における所定の1以上の計測可能方向について、対象物理量を計測するセンサである。計測部11の1以上の計測可能方向は、計測装置1の1以上の計測可能方向のことである。
【0026】
図1に示した例では、計測部11は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)として構成されている。この場合、計測部11の外形は、図1に示したように、製造誤差等による歪み、凹凸、ねじ頭等を除いて、矩形平板形状である。計測部11がMEMSとして構成される場合、計測装置1は、計測装置1の製造コストの増大を抑制することができることに加えて、設計自由度を高くことができる。これは、当該場合、例えば、計測部11により計測された物理量を示すデータをデジタルデータとして直接出力することができるからである。
【0027】
なお、MEMSとして構成される計測部11の外形は、矩形平板形状に代えて、円形平板形状等のように、MEMSとして構成可能な他の形状であってもよい。また、計測部11は、MEMSとして構成されず、他の方式のセンサとして構成されてもよい。この場合、計測部11は、平板形状であってもよく、立体形状であってもよい。また、この場合、計測部11は、計測部11により計測されたデータを所望の形式のデータへ変換するプロセッサを備える構成であってもよい。これにより、計測部11は、MEMSとして構成されていない場合であっても、例えば、計測部11により計測された対象物理量を示すデータをデジタルデータとして直接出力することができる。
【0028】
計測部11には、前述した通り、1以上の計測可能方向が予め決められている。以下では、一例として、これら1以上の計測可能方向が、第1計測可能方向AX、第2計測可能方向AY、第3計測可能方向AZの3つの計測可能方向である場合について説明する。第3計測可能方向AZは、挿入方向と一致する方向である。第1計測可能方向AXは、第3計測可能方向AZを、計測部11とともに動く仮想的な三次元直交座標系TCのZ軸の正方向と見做した場合における三次元直交座標系TCのX軸の正方向と一致する方向である。第2計測可能方向AYは、当該場合における三次元直交座標系TCのY軸の正方向と一致する方向である。図1及び図2には、第1計測可能方向AX、第2計測可能方向AY、第3計測可能方向AZのそれぞれを示すため、三次元直交座標系TCが描かれている。すなわち、図1及び図2では、三次元直交座標系TCのX軸の正方向が、第1計測可能方向AXを示し、三次元直交座標系TCのY軸の正方向が、第2計測可能方向AYを示し、三次元直交座標系TCのZ軸の正方向が第3計測可能方向AZを示している。なお、以下では、一例として、図1及び図2に示したように、第1計測可能方向AXが、矩形平板形状である計測部11が有する面のうち最も面積が広い2つの面と、第3計測可能方向との両方と直交する場合について説明する。この場合、第2計測可能方向AYは、当該2つの面と平行であり、且つ、第3計測可能方向と直交する。また、以下では、説明の便宜上、当該2つの面のうちの第1計測可能方向AX側の面を、計測部11の対象面と称して説明する。
【0029】
本体部12は、計測部11を搭載する部材である。本体部12の形状は、挿入方向に向かって計測装置1を見た場合において長手方向を有する形状である。以下では、説明の便宜上、挿入方向に向かって計測装置1を見た場合における本体部12の長手方向を、単に長手方向と称して説明する。本体部12の形状は、例えば、製造誤差による歪み、ねじ孔による凹凸等を除いて全体として略直方体形状である。図1及び図2に示した例では、矩形平板形状の計測部11は、直方体形状の本体部12が有する面のうち最大の面積を有する面に対して、計測部11の対象面が45°で交差するように、且つ、計測部11の対象面が挿入方向と平行になるように搭載されている。この場合、第1計測可能方向AX及び第2計測可能方向AYのそれぞれは、挿入方向に向かって計測装置1を見ると、長手方向に対して45°で交差している。図4は、挿入方向に向かって計測装置1を見た場合における3つの計測可能方向の一例を示す図である。図4には、第1計測可能方向AX及び第2計測可能方向AYが、長手方向と45°で交差していることが明示的に示されている。これらにより、ユーザは、後述するアンカー部13を用いて、3つの計測可能方向を、3つの計測方向と容易に一致させることができる。何故なら、ユーザは、管状構造物MTへの計測装置1の挿入時における管状構造物MTに対する計測装置1の傾きによって、アンカー部13を用いた場合に3つの計測可能方向がいずれの方向を向くかを容易に判断することができるからである。なお、ユーザは、アンカー部13を用いて、3つの計測可能方向のうちの少なくとも1つの計測可能方向と、3つの計測方向のうちの少なくとも1つの計測方向とを一致させることにより、当該少なくとも1つの計測方向についての対象物理量を計測装置1に計測させてもよい。
【0030】
アンカー部13は、管状構造物MT内において計測装置1を動かないように固定(又は支持)する部材である。アンカー部13は、1以上の第1アンカー131と、1以上の第2アンカー132を含んで構成される。なお、以下では、一例として、図1及び図2に示したように、アンカー部13が第1アンカー131を1つ備えるとともに、アンカー部13が第2アンカー132を2つ備える場合について説明する。また、以下では、説明の便宜上、これら2つの第2アンカー132を区別する必要が無い場合に限り、まとめて単に第2アンカー132と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、第1アンカー131と第2アンカー132とを区別する必要が無い場合に限り、まとめて単にアンカーと称して説明する。
【0031】
第1アンカー131は、本体部12に設けられ、第2アンカー132とともに計測装置1を管状構造物MT内において動かないように支持する部材である。第1アンカー131は、後述する付勢部14により付勢力を加えられることにより、本体部12から離れる方向に付勢される。以下では、説明の便宜上、第1アンカー131が付勢部14により付勢される方向を、第1付勢方向PR1と称して説明する。また、以下では、一例として、第1付勢方向PR1が、長手方向と平行な方向である場合について説明する。なお、第1アンカー131は、本体部12から突出していてもよく、本体部12に収容可能であってもよい。第1アンカー131は、本体部12に収容可能である場合、例えば、付勢部14により付勢されることによって本体部12から突出する。以下では、一例として、図1及び図2に示したように、第1アンカー131が本体部12から突出している場合について説明する。
【0032】
第1アンカー131は、付勢部14により加えられる付勢力に応じて、本体部12から突出する突出量が変化する。より具体的には、第1アンカー131は、管状構造物MT内に計測装置1が挿入されている場合、付勢部14により加えられる付勢力に応じて、本体部12から管状構造物MTの内壁に向かって突出する突出量が変化する。第1アンカー131が本体部12から突出する突出量の最小値及び最大値は、予め決められている。例えば、第1アンカー131の本体部12からの突出量は、付勢部14により付勢力が加えられている場合、最大値であり、付勢部14により付勢力が加えられていない場合、最小値である。なお、第1アンカー131の本体部12からの突出量と、付勢部14により加えられる付勢力との関係は、他の関係であってもよい。例えば、第1アンカー131の本体部12からの突出量は、付勢部14により加えられる付勢力に応じて、3段階以上に離散的に変化してもよく、3段階以上に連続的に変化してもよい。
【0033】
第2アンカー132は、本体部12に設けられ、第1アンカー131とともに計測装置1を管状構造物MT内において動かないように支持する部材である。第2アンカー132は、本体部12から突出していてもよく、本体部12に収容可能であってもよい。第2アンカー132は、本体部12に収容可能である場合、例えば、手動又はアクチュエーターによって本体部12から突出する。以下では、一例として、図1及び図2に示したように、第2アンカー132が常に本体部12から第2付勢方向PR2に向かって突出している場合について説明する。また、第2アンカー132は、例えば、付勢部14により付勢されない。この場合、第2アンカー132の本体部12からの突出量は、変化しない。ここで、第2付勢方向PR2は、例えば、第1付勢方向PR1と反対の方向である。なお、第2付勢方向PR2は、第1付勢方向PR1と反対の方向に代えて、本体部12から離れる方向のうち、管状構造物MT内において計測装置1を動かないように支持可能な他の方向であってもよい。
【0034】
第2アンカー132は、前述した通り、付勢部14により第1アンカー131に加えられる付勢力の増大に応じて、第1アンカー131により押されて管状構造物MTの内壁を押し付ける。すなわち、第2アンカー132は、第1アンカー131とともに管状構造物MTの内壁を押し付けることにより、計測装置1を管状構造物MT内において動かないように支持する。このため、前述の本体部12は、挿入方向に向かって計測装置1を見た場合、第1アンカー131と、第2アンカー132との間に位置する。なお、計測装置1が複数の第1アンカー131と複数の第2アンカー132とを備える場合、且つ、挿入方向に向かって計測装置1を見た場合、本体部12は、複数の第1アンカー131のうちの少なくとも1つと、複数の第2アンカー132の少なくとも1つとの間に位置する。
【0035】
付勢部14は、第1アンカー131を本体部12から離れる方向に向かって付勢する。この一例において、付勢部14は、第1アンカー131を本体部12から第1付勢方向PR1に向かって付勢する。また、付勢部14は、外部からの入力に応じて、第1アンカー131を付勢する付勢力を変化させる。ここで、外部からの入力は、例えば、空気、水、油等の圧力であるが、これに代えて、電流、電圧、電力等の大きさであってもよく、他の種類の入力であってもよい。以下では、一例として、外部からの入力が、空気の圧力である場合について説明する。この場合、付勢部14は、外部から空気が供給される供給管PPを含み、供給管PPから供給される空気の圧力に応じて第1アンカー131の付勢力を変化させる。なお、計測装置1は、付勢部14を備えない構成であってもよい。この場合、計測装置1には、付勢部14に相当する外付けの部材が取り付けられる。また、付勢部14は、供給管PPを含まない構成であってもよい。この場合、付勢部14は、供給管PPに相当する外付けの部材が取り付けられる。
【0036】
供給管PPは、付勢部14に接続され、付勢部14に空気を供給することが可能な構成であれば、如何なる構成であってもよい。図1及び図2に示した例では、供給管PPは、樹脂製の管であるが、アルミニウム製のメッシュ状のパイプであってもよく、他の素材によって構成されるパイプであってもよい。
【0037】
付勢部14は、供給管PPから供給される空気の圧力の増大に応じて第1アンカー131への付勢力を変化させることが可能な構成であれば、如何なる構成であってもよい。このため、付勢部14は、当該圧力の増大に応じて当該付勢力を増大させる構成であってもよく、当該圧力の増大に応じて当該付勢力を減少させる構成であってもよい。なお、付勢部14の構成は、外部からの入力の種類に応じて変化する。例えば、外部からの入力が電圧の大きさであった場合、付勢部14は、電圧の大きさに応じて駆動するアクチュエーター等であるが、これに限られるわけではない。
【0038】
ここで、ユーザは、管状構造物MT内において計測装置1の位置が動かないように計測装置1を固定する場合において、付勢部14による第1アンカー131への付勢力を増大させて、第1アンカー131の本体部12からの突出量を最大値にすることにより、第1アンカー131を管状構造物MTの内壁に押し付ける。この場合、第2アンカー132も、第1アンカー131に押されて管状構造物MTの内壁を押し付ける。これにより、ユーザは、管状構造物MT内において計測装置1の位置が動かないように計測装置1を固定することができる。一方、ユーザは、管状構造物MTへの計測装置1の挿抜時において、付勢部14による第1アンカー131への付勢力を減少させ、第1アンカー131の本体部12からの突出量を最小値にすることにより、第1アンカー131を管状構造物MTの内壁から離間させる。この場合、第2アンカー132が管状構造物MTの内壁を押し付ける力は、消失又は略消失する。これにより、ユーザは、管状構造物MT内から計測装置1をスムーズに抜き出すことができる。
【0039】
このような計測装置1を管状構造物MT内に常設する場合、ユーザは、第1アンカー131を常に管状構造物MTの内壁に押し付け続ける必要がある。このため、付勢部14は、外部からの入力がない場合において、第1アンカー131へ加える付勢力を増大させる構成であることが望ましい。例えば、図1及び図2に示した例では、第1アンカー131は、第1付勢方向PR1に向かって、ばねによって付勢されている。このため、第1アンカー131の本体部12からの突出量は、付勢部14に空気が供給されていない場合、最大値になる。なお、このような付勢は、ばねに代えて、第1付勢方向PR1に向かって第1アンカー131を付勢可能な他の付勢部材によって行われてもよい。一方、当該例では、付勢部14は、供給管PPから供給される空気の圧力の増大に応じて、第1付勢方向PR1と逆の第2付勢方向PR2に向かって第1アンカー131を移動させ、第1付勢方向PR1に向かう第1アンカー131への付勢力を減少させる。このため、第1アンカー131の突出量は、付勢部14に空気が供給されている場合、最小値になる。付勢部14は、このように当該圧力の増大に応じて第1アンカー131を第2付勢方向PR2へ移動させる部材として、例えば、エアシリンダ及びピストン等を備える。これにより、計測装置1は、第1アンカー131を管状構造物MTの内壁に押し付け続けるために付勢部14へ空気を供給し続けるコンプレッサを用意する必要がなく、常設のし易さを向上させることができる。なお、付勢部14は、外部からの入力がある場合において、第1アンカー131へ加える付勢力を増大させる構成であってもよい。
【0040】
ここで、アンカーは、管状構造物MTの形状に応じた位置に設けられる。管状構造物MTの形状に応じた位置は、本体部12が有する位置のうち、管状構造物MT内において付勢部14が第1アンカー131へ加える付勢力を減少させた場合、計測装置1の3つの計測可能方向のうちの少なくとも1つの計測可能方向が、管状構造物MTの3つの計測方向のうちの少なくとも1つの計測方向と一致するように計測装置1を管状構造物MT内に固定可能な位置である。以下では、一例として、管状構造物MTの形状に応じた位置が、計測装置1が有する位置のうち、管状構造物MT内において付勢部14が第1アンカー131へ加える付勢力を減少させた場合、3つの計測可能方向が、3つの計測方向と一致するように計測装置1を管状構造物MT内に固定可能な位置である場合について説明する。この場合、計測装置1は、管状構造物MT内において付勢部14が第1アンカー131へ加える付勢力を減少させることにより、3つの計測可能方向と、3つの計測方向とが一致するように、管状構造物MT内において計測装置1の位置を固定することができる。
【0041】
図5は、図3に示した管状構造物MTが延伸する延伸方向に向かって管状構造物MT内に位置する計測装置1を見た場合における管状構造物MTの3つの計測可能方向の向きの一例を示す図である。図5に示した例では、管状構造物MTの形状に応じた位置が以下に示す設置位置条件を満たす位置である場合、計測装置1は、3つの計測可能方向と、3つの計測方向とが一致するように、管状構造物MT内において計測装置1の位置を固定することができる。設置位置条件は、以下の条件1~条件3の3つの条件を含む条件のことである。なお、本開示において、設置位置条件が満たされることは、設置位置条件に含まれる全ての条件が満たされることを意味する。設置位置条件に含まれる条件の数及び内容は、管状構造物MTの形状に応じて変わる。このため、設置位置条件は、管状構造物MTの形状に応じた位置を示す条件と換言することができる。
【0042】
条件1)挿入方向に向かって計測装置1を見た場合において、第1アンカー131と第2アンカー132とが互いに反対向きに突出すること。
条件2)挿入方向に向かって計測装置1を見た場合において、第1付勢方向PR1及び第2付勢方向PR2が長手方向と平行であること。
条件3)挿入方向に向かって計測装置1を見た場合において、本体部12が第1アンカー131と第2アンカー132との間に位置すること。
【0043】
図5に示した例では、上記の3つの条件がすべて満たされている。すなわち、当該例では、設置条件が満たされている。そして、この場合、計測装置1は、断面が正方形状の管状構造物MTが有する4つの角のうちの1つの角MAへ第1アンカー131を押し付けることができる。一方、この場合、計測装置1は、当該4つの角のうち当該1つの角と向かい合う角MBへ第2アンカー132を押し付けることができる。すなわち、この場合、アンカーは、付勢部14により第1アンカー131へ加えられる付勢力の減少により、角MAと角MBとの2つの角の間において、すなわち、断面が正方形状の管状構造物MTの対角線上において、第1計測可能方向AXが第1計測方向BXと一致し、且つ、第3計測可能方向AZが第3計測方向BZと一致するように、計測装置1を固定することができる。なお、この場合、第2計測可能方向AYは、第2計測方向BYと一致する。従って、アンカーが管状構造物MTの形状に応じた位置に設けられることにより、計測装置1は、当該3つの計測可能方向と、当該3つの計測方向とが一致するように、管状構造物MT内において計測装置1の位置を固定することができる。
【0044】
なお、上記の設置位置条件は、一例に過ぎず、断面が正方形状の管状構造物MT内において、3つの計測可能方向が、3つの計測方向と一致するように計測装置1の位置を固定することが可能な他の条件であってもよい。例えば、上記の設置位置条件は、正方形状の管状構造物MTの断面の対角線と、計測部11の対象面とが平行となること等であってもよい。この場合も、設置位置条件が満たす位置に設けられたアンカーは、付勢部14が第1アンカー131へ加える付勢力を減少させることにより、角MAと角MBとの2つの角の間において、第1計測可能方向AXが第1計測方向BXと一致し、且つ、第3計測可能方向AZが第3計測方向BZと一致するように、計測装置1を固定することができる。
【0045】
また、上記の設置位置条件が満たされた場合、2つの第2アンカー132は、例えば、図1及び図2に示したように、第3計測可能方向AZに向かって計測装置1を見て重なるように設けられる。しかしながら、2つの第2アンカー132は、第3計測可能方向AZに向かって計測装置1を見て重ならないように設けられる構成であってもよい。これは、上記の設置位置条件が、3つの計測可能方向が、3つの計測方向と一致するように計測装置1の位置を固定することが可能な他の条件でもよいからである。ただし、2つの第2アンカー132のうちの少なくとも一方は、第1アンカー131と反対向きに突出するように設けられる構成であった方が、管状構造物MT内における計測装置1の安定性を向上させることができる。また、計測装置1が2つ以上の第1アンカー131及び2つ以上の第2アンカー132を備える場合、それら2つ以上の第1アンカー131のうちの少なくとも1つと、2つ以上の第2アンカー132のうちの少なくとも1つとは、互いに反対向きに突出していることで、管状構造物MT内における計測装置1の安定性を向上させることができる。
【0046】
ここで、例えば、管状構造物MTの内壁には、管状構造物MTの経年劣化により、凹凸が生じることがある。このため、第1アンカー131の付勢力が変化しない場合、計測装置1は、管状構造物MT内における位置を固定した後、管状構造物MT内から抜き出すことが困難になることがある。また、当該場合、計測装置1は、管状構造物MT内への挿入に、人の力よりも強い力を必要とすることがある。これに対し、計測装置1は、前述したように、付勢部14により第1アンカー131へ加える付勢力を減少させることができる。例えば、図6は、管状構造物MTへ計測装置1を挿入する様子の一例を示す図である。図6に示したように、管状構造物MTへ計測装置1を挿入する場合、計測装置1は、付勢部14によって第1アンカー131へ加える付勢力を減少させることができる。その結果、計測装置1は、管状構造物MTの内部において、管状構造物MTの内壁に生じている凹凸に引っ掛からない程度の大きさになる。これにより、計測装置1は、管状構造物MTの内壁に凹凸が生じている場合であっても、管状構造物MTへの計測装置1の挿入をスムーズに行うことができる。これは、管状構造物MTからの計測装置1の抜き出しにおいても、同様である。従って、計測装置1は、管状構造物MTへの挿抜をスムーズに行うことができる。
【0047】
以上のことから、計測装置1は、管状構造物MTへの挿抜をスムーズに行うことができつつ、管状構造物MT内における位置を所望の位置に固定することができる。
【0048】
<計測装置の使用例>
以下、図7を参照し、計測装置1の使用例について説明する。以下では、一例として、対象物理量が、重力方向に対する地盤の傾斜角である場合について説明する。なお、計測装置1による当該傾斜角の計測方法は、当該傾斜角を計測可能な方法であれば、歪み、角速度等を用いた方法のように既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。
【0049】
ここで、計測装置1は、対象物理量を示すデータを他の装置に出力する。当該他の装置は、例えば、計測装置1によって計測された物理量に基づく解析を行う人によって操作される情報処理装置等であるが、これに限られるわけではない。また、当該情報処理装置は、例えば、ワークステーション、デスクトップPC(Personal Computer)、ノートPC、タブレットPC、多機能携帯電話端末(スマートフォン)、PDA(Personal Digital Assistant)等であるが、これらに限られるわけではない。
【0050】
図7は、山留め壁が設けられた建設現場において計測装置1が使用されている様子の一例を示す図である。図7に示した山留め壁M1は、当該建設現場において設けられた複数の山留め壁のうちの1つである。山留め壁M1の重力方向に対する傾斜角が大きくなるほど、山留め壁M1が倒れる可能性は、高くなる。このため、当該建設現場では、山留め壁M1の重力方向に対する傾斜角の変化を監視し、山留め壁M1が倒れてしまうことを未然に防ぐ必要がある。このような事情は、当該建設現場において設けられたすべての山留め壁についても、同様である。以下では、説明の便宜上、山留め壁M1によって押さえ付けられている地盤を、対象地盤と称して説明する。
【0051】
山留め壁M1の重力方向に対する傾斜角は、対象地盤の重力方向に対する傾斜角によって表すことができる。そこで、以下では、一例として、計測装置1が、対象地盤の重力方向に対する傾斜角を、山留め壁M1の重力方向に対する傾斜角として計測する場合について説明する。この場合、管状構造物MTは、延伸方向が重力方向と一致するように、対象地盤に埋設される。また、計測装置1は、山留め壁M1の重力方向に対する傾斜角そのものを計測する構成であってもよい。この場合、管状構造物MTは、第1計測方向BXと第3計測方向BZとによって張られる仮想的な平面と、重力方向とが平行になるように、山留め壁M1に設けられる。これは、対象物理量の計測を開始する時点で山留め壁M1が重力方向に対して傾いていることがあるためである。
【0052】
対象地盤に埋設された管状構造物MT内には、数珠繋ぎにされた複数の計測装置1が挿入される。図7に示した例では、対象地盤内には、数珠繋ぎにされた2つの計測装置1が挿入されている。ただし、図7では、図が煩雑になるのを防ぐため、対象地盤に埋設された管状構造物MTが省略されている。また、図7では、対象地盤中の位置するこれら2つの計測装置1が見えるように描かれている。以下では、説明の便宜上、これら2つの計測装置1のうちの一方を計測装置1-1と称し、これら2つの計測装置1のうちの他方を計測装置1-2と称して説明する。
【0053】
対象地盤に埋設された管状構造物MT内において、2つの計測装置1は、前述の供給管PPによって接続され、すなわち、供給管PPによって数珠繋ぎされ、延伸方向に向かって並んでいる。換言すると、これら2つの計測装置1は、供給管PPによって接続され、挿入方向に向かって並んでいる。これにより、これら2つの計測装置1は、対象物理量(すなわち、山留め壁M1の重力方向に対する傾斜角)を、2つの異なる高度において計測することができる。なお、2つの計測装置1は、互いに異なる物理量をそれぞれの対象物理量として計測する構成であってもよい。例えば、山留め壁M1の重力方向に対する傾斜角を計測装置1-1が計測し、計測装置1-1よりも低い位置に位置する計測装置1-2が地盤内を流れる地下水の水量を計測する構成であってもよい。これにより、2つの計測装置1は、当該傾斜角と当該水量との2つのパラメータによって、山留め壁M1が倒れそうになっているか否かを他の装置等に判定させることができる。
【0054】
ここで、2つの計測装置1が供給管PPによって数珠繋ぎにされる場合、2つの計測装置1は、1本の供給管PPを共有する。これにより、2つの計測装置1は、設置に要する費用の増大を抑制することができるとともに、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0055】
なお、図7において管状構造物MT内に挿入された2つの計測装置1のうちの一方は、計測装置1と異なる計測装置に置き換えられてもよい。
【0056】
ここで、図8は、対象地盤への管状構造物MTの埋設方法の一例を示す図である。図8に示した例では、山留め壁M1は、重力方向に対して傾斜していない。また、当該例では、対象地盤には、山留め壁M1が有する面のうち対象地盤側の面と接続されたH鋼2が埋設されている。このH鋼2は、2つのフランジを有しており、当該2つのフランジのうちの一方が山留め壁M1と接面している。そして、H鋼2が有する部分のうち当該2つのフランジを繋ぐ平板形状の部分には、管状構造物MTが有する面のうち第2計測可能方向AY側の面が接面している。これにより、計測装置1により計測された対象物理量を示すデータを取得する他の装置は、当該データに基づいて、山留め壁M1が重力方向に対して傾斜しているか否かを判定することができ、その結果、山留め壁M1が倒れる可能性を推定することができる。なお、このような管状構造物MTの対象地盤への埋設方法は、一例に過ぎず、他の方法であってもよい。
【0057】
以上のように、計測装置1は、土留め構造物の一部である又は地中に埋設される管状構造物MTに挿入して使用する計測装置である。計測装置1は、計測部11と、本体部12と、アンカー部13と、付勢部14を備える。計測部11は、対象物理量を計測する。本体部12は、計測部11を搭載する。アンカー部13は、第1アンカー131と、2つの第2アンカー132を含む。第1アンカー131は、本体部12に設けられる。2つの第2アンカー132は、本体部12に設けられる。付勢部14は、第1アンカー131を第1付勢方向PR1に向かって付勢する。また、本体部12は、挿入方向に向かって計測装置1を見た場合、第1アンカー131と、2つの第2アンカー132との間に位置する。また、付勢部14は、外部からの入力に応じて、第1アンカー131を付勢する付勢力を変化させる。また、3つの計測方向は、管状構造物MTに対して予め決められている。また、第1アンカー131と、2つの第2アンカー132とは、管状構造物MTの形状に応じた位置に設けられている。そして、管状構造物MTの形状に応じた位置は、本体部12が有する位置のうち、3つの計測可能方向のうちの少なくとも1つが、3つの計測方向のうちの少なくとも1つと一致するように計測装置1を管状構造物MT内に固定可能な位置である。これにより、計測装置1は、管状構造物MTへの挿抜をスムーズに行うことができつつ、管状構造物MT内における位置を所望の位置に固定することができる。
【0058】
なお、上記において説明した事項は、如何様に組み合わされてもよい。
また、上記において説明した付勢部14は、2つの第2アンカー132のうちの少なくとも一方を第2付勢方向PR2に向かって付勢する付勢部材を含む構成であってもよい。この場合、当該付勢部材によって付勢される第2アンカー132の本体部12からの突出量は、変化する。しかしながら、これは、当該付勢部材の付勢力によって生じる現象である。このため、付勢部14は、当該付勢部材が第2アンカー132へ加える付勢力を変化させない。また、当該付勢部材は、例えば、ばねであるが、これに限られるわけではない。
【0059】
<付記>
[1]
土留め構造物の一部である又は地中に埋設される管状構造物に挿入して使用する計測装置であって、所定の1以上の計測可能方向について、所定の物理量 を計測する計測部と、前記計測部を搭載する本体部と、前記本体部に設けられる 1以上の第1アンカーと、前記本体部に設けられる 1以上の第2アンカーとを含むアンカー部と、前記1以上の第1アンカーを前記本体部から離れる方向に向かって付勢する付勢部と、を備え、前記計測装置には、所定の挿入方向が決められており、前記本体部は、前記挿入方向に向かって前記計測装置を見た場合、前記1以上の第1アンカーのうちの少なくとも1つと、前記1以上の第2アンカーのうちの少なくとも1つとの間に位置し、前記付勢部は、外部からの入力に応じて、前記1以上の第1アンカーを付勢する付勢力を変化させ、ユーザが前記物理量を計測したい所望の1以上の計測方向は、前記管状構造物に対して予め決められており、前記1以上の第1アンカーと、前記1以上の第2アンカーとは、前記管状構造物の形状に応じた位置に設けられ、前記管状構造物の形状に応じた位置は、前記本体部が有する位置のうち、前記1以上の計測可能方向のうちの少なくとも1つが、前記1以上の計測方向のうちの少なくとも1つと一致するように前記計測装置を前記管状構造物内に固定可能な位置である、計測装置。
[2]
前記付勢部は、前記1以上の第2アンカーを付勢しない、[1]に記載の計測装置。
[3]
前記付勢部は、前記1以上の第2アンカーのうちの少なくとも1つを前記本体部から離れる方向に向かって付勢する付勢部材を含む、[1]又は[2]に記載の計測装置。
[4]
前記本体部の形状は、前記挿入方向に向かって前記計測装置を見た場合において長手方向を有する形状である、[1]から[3]のうちいずれか一項に記載の計測装置。
[5]
前記管状構造物が延伸する延伸方向と直交する方向において前記管状構造物を切断した場合の前記管状構造物の断面の形状は、正方形であり、前記挿入方向は、前記管状構造物に前記計測装置を挿入する場合において前記延伸方向と一致させる方向であり、前記1以上の計測可能方向は、前記挿入方向と直交する方向であり、且つ、前記長手方向に対して45°で交差する第1計測可能方向を含み、前記1以上の計測方向は、正方形の前記断面が有する4辺のうちの第1辺と平行な第1計測方向を含み、前記管状構造物の形状に応じた位置は更に、前記本体部が有する位置のうち、前記付勢部が前記付勢力を増大させた場合、正方形の前記断面の対角線と前記長手方向とが平行となる ように前記計測装置を前記管状構造物内に固定可能な位置である、[4]に記載の計測装置。
[6]
前記1以上の第1アンカーのうちの少なくとも1つと、前記1以上の第2アンカーのうちの少なくとも1つとは、前記長手方向と平行に、且つ、互いに反対向きに前記計測装置から突出している、[4]又は[5]に記載の計測装置。
[7]
前記付勢部は、前記外部からの入力に応じて、前記付勢力を減少させる、[1]から[6]のうちいずれか一項に記載の計測装置。
[8]
前記計測部は、前記1以上の計測可能方向のうちの1つの重力方向に対する傾斜角を前記物理量として計測する、[1]から[7]のうちいずれか一項に記載の計測装置。
[9]
前記計測部は、MEMSとして構成されている、[8]に記載の計測装置。
[10]
前記外部からの入力は、前記外部から供給される空気の圧力であり、前記付勢部は、前記空気が供給される供給管を含む、[1]から[9]のうちいずれか一項に記載の計測装置。
[11]
前記挿入方向は、前記管状構造物に前記計測装置を挿入する場合において、前記管状構造物が延伸する延伸方向と一致させる方向であり、前記計測装置は、前記供給管によって他の計測装置と接続され、前記挿入方向に向かって前記他の計測装置と並んでおり、前記供給管は、前記他の計測装置へ前記空気を供給する他の供給管と一体に構成されている、[10]に記載の計測装置。
[12]
前記他の計測装置は、前記計測部と、前記本体部と、前記アンカー部と、前記付勢部とを備える、11]に記載の計測装置。
[13]
所定の物理量を計測する計測部と、前記計測部を搭載する本体部と、前記本体部に設けられる1以上の第1アンカーと、前記本体部に設けられる1以上の第2アンカーとを含むアンカー部と、前記1以上の第1アンカーを前記本体部から離れる方向に向かって付勢する付勢部と、を備え、前記付勢部は、前記1以上の第1アンカーを付勢する付勢力を変化させる、計測装置。
【0060】
以上、本開示の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1、1-1、1-2…計測装置、2…H鋼、11…計測部、12…本体部、13…アンカー部、14…付勢部、131…第1アンカー、132…第2アンカー、AX…第1計測可能方向、AY…第2計測可能方向、AZ…第3計測可能方向、BX…第1計測方向、BY…第2計測方向、BZ…第3計測方向、M1…壁、MA…角、MB…角、MT…管状構造物、PP…供給管、PR1…第1付勢方向、PR2…第2付勢方向、TC…三次元直交座標系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8