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  • 特開-温度センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131353
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/16 20060101AFI20240920BHJP
   G01K 7/22 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01K1/16
G01K7/22 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041562
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】杉山 達雄
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056DA01
2F056DA08
2F056QF08
(57)【要約】
【課題】 低熱伝導の基材であっても基材の影響を回避し、配線からの排熱を抑制して高い測温特性を得ることができる温度センサを提供する。
【解決手段】 絶縁性基板2と、絶縁性基板の上面に設けられた感熱素子3と、絶縁性基板の上面に形成され感熱素子に一端が接続された一対のパターン配線5と、絶縁性基板の下面であって感熱素子の直下に配され絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成された下面集熱膜と、パターン配線上に形成された絶縁性膜6と、少なくともパターン配線上の絶縁性膜を覆って絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成された上面伝熱膜7と、絶縁性基板を上下に貫通していると共に下面集熱膜と上面伝熱膜とに接続され絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成されたスルーホール9とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板と、
前記絶縁性基板の上面に設けられた感熱素子と、
前記絶縁性基板の上面に形成され前記感熱素子に一端が接続された一対のパターン配線と、
前記絶縁性基板の下面であって少なくとも前記パターン配線の直下に配され前記絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成された下面集熱膜と、
少なくとも前記パターン配線上に形成された絶縁性膜と、
少なくとも前記パターン配線上の前記絶縁性膜を覆って前記絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成された上面伝熱膜と、
前記絶縁性基板を上下に貫通していると共に前記下面集熱膜と前記上面伝熱膜とに接続され前記絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成されたスルーホールとを備えていることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記パターン配線の前記上面伝熱膜下に配された部分が、折り返して延在していることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記上面伝熱膜が、前記感熱素子を囲んで形成されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記スルーホールが、前記パターン配線の近傍に複数形成されていることを特徴とする温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱応答性及び測温特性を有する温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスエポキシ(ガラエポ)基板やFPC基板等をベースにサーミスタ等の感熱素子を搭載した温度センサでは、被測定物との接触面に、集熱を目的とした金属膜等の集熱膜を設けた温度センサが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、絶縁性フィルムと、絶縁性フィルムの表面にサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部と、薄膜サーミスタ部の上及び下の少なくとも一方に複数の櫛部を有して互いに対向してパターン形成された一対の櫛型電極と、一対の櫛型電極に接続され絶縁性フィルムの表面にパターン形成された一対のパターン電極と、絶縁性フィルムの裏面であって薄膜サーミスタ部の直下に絶縁性フィルムよりも熱伝導率の高い材料でパターン形成された集熱膜とを備えている温度センサが記載されている。
さらに、特許文献2にも、絶縁性基板の一面に感熱膜と電極とを形成すると共に絶縁性基板の他面に金属等の集熱膜を形成した感熱素子を備えた温度センサが記載されている。
【0004】
このような従来の温度センサ101は、例えば図3及び図4に示すように、被測定物Sに設置される温度センサであって、PCB基板102と、PCB基板102の上面に設けられた感熱素子103と、PCB基板102の下面であって少なくとも感熱素子103の直下に配され金属等の集熱膜104と、PCB基板102の上面に形成され感熱素子103に一端が接続された一対のパターン配線105と、感熱素子103を樹脂で封止した素子保護部103aとを備えている。
【0005】
この温度センサ101では、被測定物Sに集熱膜104を接触させた状態で設置される。
なお、一対のパターン配線105の他端は、一対の外部のリード線106にハンダ107で接続され、接続部分が樹脂封止部108で封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-138773号公報
【特許文献2】実全平4-3325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
温度センサの使用温度域は、その用途に応じて異なり、温度域毎に使用可能な基板材質にも制限がある。特に近年、自動車のEV化に伴って、使用温度域が~200℃域の要求が多くなっており、~150℃において対応可能なAlベース基板やFPC基板等を用いた温度センサでは対応が困難であり、パワーデバイス用の基板材質等を用いる必要がある。しかしながら、このような基板材質は、低熱伝導で厚い基板のため、測温特性が悪くなってしまう問題があった。
そのため、例えば従来の上記温度センサ101では、集熱膜104によって熱応答性を高めているが、~200℃域の対応のために低熱伝導かつ厚いPCB基板102を使用しなければならないと共に、パターン配線105及びリード線106からの排熱によって熱応答性が低下してしまう問題があった。
【0008】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、低熱伝導の基材であっても基材の影響を回避し、配線からの排熱を抑制して高い測温特性を得ることができる温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る温度センサは、絶縁性基板と、前記絶縁性基板の上面に設けられた感熱素子と、前記絶縁性基板の上面に形成され前記感熱素子に一端が接続された一対のパターン配線と、前記絶縁性基板の下面であって少なくとも前記パターン配線の直下に配され前記絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成された下面集熱膜と、少なくとも前記パターン配線上に形成された絶縁性膜と、少なくとも前記パターン配線上の前記絶縁性膜を覆って前記絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成された上面伝熱膜と、前記絶縁性基板を上下に貫通していると共に前記下面集熱膜と前記上面伝熱膜とに接続され前記絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成されたスルーホールとを備えていることを特徴とする。
【0010】
この温度センサでは、絶縁性基板を上下に貫通していると共に下面集熱膜と上面伝熱膜とに接続され絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成されたスルーホールを備えているので、下面集熱膜で受けた被測定物の熱がスルーホールを介して上面伝熱膜に伝わることで、上面伝熱膜下の絶縁性膜を介してパターン配線も多く加温される。このようにパターン配線が、下面集熱膜と上面伝熱膜とに挟まれることで加温され、パターン配線の他端側からの排熱が抑制されることで、高い熱応答性が得られ、測温特性が向上し、高精度な温度測定が可能になる。したがって、低熱伝導の絶縁性基板であっても、スルーホールで接続された下面集熱膜と上面伝熱膜との間にパターン配線が介在することで、基板(基材)の影響を回避し、高い測温特性を得ることができる。
【0011】
第2の発明に係る温度センサは、第1の発明において、前記パターン配線の前記上面伝熱膜下に配された部分が、折り返して延在していることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、パターン配線の上面伝熱膜下に配された部分が、折り返して延在しているので、パターン配線が上面伝熱膜下で真っ直ぐに延在している場合に比べて、上面伝熱膜下のパターン配線が長くなり、パターン配線が上面伝熱膜から熱が多くなることで、パターン配線がより多く加温される。
【0012】
第3の発明に係る温度センサは、第1又は第2の発明において、前記上面伝熱膜が、前記感熱素子を囲んで形成されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、上面伝熱膜が、感熱素子を囲んで形成されているので、上面伝熱膜が、周囲から感熱素子に対しても加温することで、より熱応答性を向上させることができる。
【0013】
第4の発明に係る温度センサは、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記スルーホールが、前記パターン配線の近傍に複数形成されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、スルーホールが、パターン配線の近傍に複数形成されているので、パターン配線をより加温し易くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、絶縁性基板を上下に貫通していると共に下面集熱膜と上面伝熱膜とに接続され絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成されたスルーホールを備えているので、パターン配線が、下面集熱膜と上面伝熱膜とに挟まれることで加温され、パターン配線の他端側からの排熱が抑制されることで、高い熱応答性が得られ、測温特性が向上し、高精度な温度測定が可能になる。
したがって、本発明の温度センサでは、低熱伝導の絶縁性基板であっても、スルーホールで接続された下面集熱膜と上面伝熱膜との間にパターン配線が介在することで、基板(基材)の影響を回避し、高い測温特性を得ることができる。特に、測温特性の向上により、自動車等の~200℃域の高温使用に対しても対応可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る温度センサの一実施形態において、内部を透過して示す平面図である。
図2】本実施形態において、被測定物に設置した状態で内部を透過して示す温度センサの側面図である。
図3】本発明に係る温度センサの従来例において、内部を透過して示す平面図である。
図4】本発明の従来例において、被測定物に設置した状態で内部を透過して示す温度センサの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る温度センサの一実施形態を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態の温度センサ1は、図1及び図2に示すように、被測定物Sに設置される温度センサであって、絶縁性基板2と、絶縁性基板2の上面に設けられた感熱素子3と、絶縁性基板2の上面に形成され感熱素子3に一端が接続された一対のパターン配線5と、絶縁性基板2の下面であって少なくともパターン配線5の直下に配され絶縁性基板2よりも熱伝導率の高い材料で形成された下面集熱膜4と、少なくともパターン配線5上に形成された絶縁性膜6と、少なくともパターン配線5上の絶縁性膜6を覆って絶縁性基板2よりも熱伝導率の高い材料で形成された上面伝熱膜7と、絶縁性基板2を上下に貫通していると共に下面集熱膜4と上面伝熱膜7とに接続され絶縁性基板2よりも熱伝導率の高い材料で形成されたスルーホール9とを備えている。
【0018】
上記パターン配線5の上面伝熱膜7下に配された部分は、複数回折り返して延在している。
すなわち、一対のパターン配線5は、上面伝熱膜7下で3回折り返したジグザグ状に延在している。
また、一対のパターン配線5は、感熱素子3を中心に互いに反対側に配されている。
【0019】
また、パターン配線5の他端は、外部のリード線106の芯線106aをハンダ107で接続するために幅広なパッド部5aとなっている。
なお、パッド部5a上には、上面伝熱膜7は形成されていない。
また、絶縁性膜6は、パッド部5a以外のパターン配線5及びスルーホール9の部分を覆って絶縁性基板2上に形成されている。
【0020】
上記上面伝熱膜7は、感熱素子3を囲んで形成されている。
すなわち、上面伝熱膜7は、中央に感熱素子3を配置するための長孔状の孔部7aを有した矩形状に形成されている。
上記下面集熱膜4は、絶縁性基板2の下面全体に成膜されている。
上面伝熱膜7及び下面集熱膜4は、例えば銅箔等の金属膜である。
【0021】
上記絶縁性基板2は、例えばPCB基板やパワーデバイス用基材で形成されている。
上記絶縁性膜6は、例えばポリイミドやエポキシ樹脂で形成されている。
上記スルーホール9は、パターン配線5の近傍に複数形成されている。
すなわち、スルーホール9は、感熱素子3から先端側に延びる一対のパターン配線5の間と、パッド部5a側に延びる一対のパターン配線5の近傍との3箇所に設けられている。
また、スルーホール9は、銅等の金属で上下を電気的に導通可能に形成されている。
【0022】
上記感熱素子3は、例えばチップサーミスタ、フレーク型サーミスタ、薄膜サーミスタ等であり、本実施形態では、感熱素子3としてチップサーミスタを採用している。
また、本実施形態の温度センサ1は、孔部7a上に形成され感熱素子3を樹脂でドーム状に封止した素子保護部8と、ハンダ107,リード線106の先端及び芯線106aを覆って絶縁性基板2の上全体に形成された樹脂封止部10とを備えている。
上記素子保護部8及び樹脂封止部10は、例えばポリイミドやエポキシ樹脂で形成されている。
【0023】
このように本実施形態の温度センサ1では、絶縁性基板2を上下に貫通していると共に下面集熱膜4と上面伝熱膜7とに接続され絶縁性基板2よりも熱伝導率の高い材料で形成されたスルーホール9を備えているので、下面集熱膜4で受けた被測定物Sの熱がスルーホール9を介して上面伝熱膜7に伝わることで、上面伝熱膜7下の絶縁性膜6を介してパターン配線5も多く加温される。
【0024】
このようにパターン配線5が、下面集熱膜4と上面伝熱膜7とに挟まれることで加温され、パターン配線5の他端側からの排熱が抑制されることで、高い熱応答性が得られ、測温特性が向上し、高精度な温度測定が可能になる。したがって、低熱伝導の絶縁性基板2であっても、スルーホール9で接続された下面集熱膜4と上面伝熱膜7との間にパターン配線5が介在することで、基板(基材)の影響を回避し、高い測温特性を得ることができる。
【0025】
また、パターン配線5の上面伝熱膜7下に配された部分が、折り返して延在しているので、パターン配線5が上面伝熱膜7下で真っ直ぐに延在している場合に比べて、上面伝熱膜7下のパターン配線5が長くなり、パターン配線5が上面伝熱膜7から熱が多くなることで、パターン配線5がより多く加温される。
【0026】
また、上面伝熱膜7が、感熱素子3を囲んで形成されているので、上面伝熱膜7が、周囲から感熱素子3に対しても加温することで、より熱応答性を向上させることができる。
さらに、スルーホール9が、パターン配線5の近傍に複数形成されているので、パターン配線5をより加温し易くなる。
【0027】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1,101…温度センサ、2…絶縁性基板、3…感熱素子、4…下面集熱膜、5,105…パターン配線、6…絶縁性膜、7…上面伝熱膜、9…スルーホール
図1
図2
図3
図4