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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131355
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】減圧調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A47J27/00 109G
A47J27/00 109S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041565
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】飯村 尚之
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055BA05
4B055BA07
4B055BA09
4B055CB02
4B055CB08
4B055CD08
4B055CD63
4B055DB14
4B055GA04
4B055GB25
4B055GC33
4B055GC40
4B055GD04
(57)【要約】
【課題】本発明は、構成部品の欠落などによる減圧の不具合を検知することができる減圧調理器を提供する。
【解決手段】本発明に係る減圧調理器10は、加熱手段51を有し、上面が開口した調理器本体20と、前記調理器本体に収容される内釜21と、前記調理器本体を閉じる蓋体30と、前記内釜を気密に覆う内蓋31と、吸引手段41を有し、前記内蓋と前記吸引手段とを接続する配管491-496中に、圧力センサー42と1又は複数の構成部品44,46,47を具える減圧手段40と、制御装置50と、を具えた減圧調理器であって、前記制御装置は、前記吸引手段を作動させた後、第1時間後の前記圧力センサーが検出した第1圧力値と、前記第1時間よりも長い第2時間後に前記圧力センサーが検出した第2圧力値を比較することで、前記内釜の減圧が正常に行なわれているかどうかを判断する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段を有し、上面が開口した調理器本体と、
前記調理器本体に収容される内釜と、
前記調理器本体を閉じる蓋体と、
前記内釜を気密に覆う内蓋と、
吸引手段を有し、前記内蓋と前記吸引手段とを接続する配管中に、圧力センサーと1又は複数の構成部品を具える減圧手段と、
制御装置と、
を具えた減圧調理器であって、
前記制御装置は、前記吸引手段を作動させた後、第1時間後の前記圧力センサーが検出した第1圧力値と、前記第1時間よりも長い第2時間後に前記圧力センサーが検出した第2圧力値を比較することで、前記内釜の減圧が正常に行なわれているかどうかを判断する、
減圧調理器。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1圧力値と前記第2圧力値の差分が所定の閾値以下であれば減圧異常と判断する、
請求項1に記載の減圧調理器。
【請求項3】
前記制御装置は、前記減圧異常と判断した場合、前記第1圧力値及び/又は前記第2圧力値から、異常の発生箇所を特定する、
請求項2に記載の減圧調理器。
【請求項4】
前記第2時間は20秒以下である、
請求項3に記載の減圧調理器。
【請求項5】
報知手段を具え、
前記制御装置は、前記異常の発生箇所を前記報知手段により報知する、
請求項3に記載の減圧調理器。
【請求項6】
前記圧力センサーは、前記構成部品と前記吸引手段との間に配置される、
請求項3に記載の減圧調理器。
【請求項7】
前記圧力センサーは、前記配管から分岐した枝管に配置される、
請求項6に記載の減圧調理器。
【請求項8】
前記枝管は、前記配管よりも小径である、
請求項7に記載の減圧調理器。
【請求項9】
前記制御装置は、前記減圧異常と判断した場合、前記吸引手段の吸引量を増やす、
請求項3に記載の減圧調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧状態で調理や保温を行なうことができる減圧調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炊飯器や保温ジャーなどの調理器として、調理中や保温中に内釜内を減圧する減圧調理器が提案されている(たとえば特許文献1参照)。たとえば、ご飯を保温する際に、ご飯の酸化や黄ばみ、乾燥、においは、内釜内の空気、具体的には酸素が一因であるため、内釜中の空気を減らすことで、酸化などを防ぐことができる。
【0003】
減圧を行なうために、減圧調理器には、真空ポンプを主体とし、弁、配管などの種々の構成部品を含む減圧手段が配備される。内釜を気密に塞ぐ内蓋には、これら配管が接続され、真空ポンプを作動させると、内釜内の空気が強制的に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-195485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
減圧手段の種々の構成部品や内蓋などの欠落、装着忘れや故障などが発生すると、空気漏れにより、真空ポンプを作動させても減圧を行なうことができない。
【0006】
本発明の目的は、構成部品の欠落などによる減圧の不具合を検知することができる減圧調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る減圧調理器は、
加熱手段を有し、上面が開口した調理器本体と、
前記調理器本体に収容される内釜と、
前記調理器本体を閉じる蓋体と、
前記内釜を気密に覆う内蓋と、
吸引手段を有し、前記内蓋と前記吸引手段とを接続する配管中に、圧力センサーと1又は複数の構成部品を具える減圧手段と、
制御装置と、
を具えた減圧調理器であって、
前記制御装置は、前記吸引手段を作動させた後、第1時間後の前記圧力センサーが検出した第1圧力値と、前記第1時間よりも長い第2時間後に前記圧力センサーが検出した第2圧力値を比較することで、前記内釜の減圧が正常に行なわれているかどうかを判断する。
【0008】
前記制御装置は、前記第1圧力値と前記第2圧力値の差分が所定の閾値以下であれば減圧異常と判断することができる。
【0009】
前記制御装置は、前記減圧異常と判断した場合、前記第1圧力値及び/又は前記第2圧力値から、異常の発生箇所を特定することができる。
【0010】
前記第2時間は20秒以下とすることが望ましい。
【0011】
報知手段を具え、
前記制御装置は、前記異常の発生箇所を前記報知手段により報知することができる。
【0012】
前記圧力センサーは、前記構成部品と前記吸引手段との間に配置することができる。
【0013】
前記圧力センサーは、前記配管から分岐した枝管に配置することができる。
【0014】
前記枝管は、前記配管よりも小径とすることができる。
【0015】
前記制御装置は、前記減圧異常と判断した場合、前記吸引手段の吸引量を増やすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の減圧調理器によれば、減圧開始後の第1時間と第2時間に検出される第1圧力値と第2圧力値を比較することで、減圧が正常に進行しているかどうかを判断できる。具体的には、第1圧力値と第2圧力値の差分が所定の閾値内であれば、第1時間から第2時間に掛けて減圧が進んでいないため、構成部品の欠落、装着忘れ、故障と判断できる。また、減圧異常と判断された場合、圧力センサーから不具合を生じている構成部品までの経路の体積が、第1圧力値及び/又は第2圧力値に反映されるから、第1圧力値及び/又は第2圧力値を参照することで、異常の発生箇所を特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る減圧保温ジャーの蓋体を開いた状態を示す斜視図である。
図2図2は、蓋体を閉じた状態の減圧保温ジャーの縦断面図である。
図3図3は、蓋体を閉じた状態の減圧保温ジャーを背面から見た斜視図であって、カバーを外し、減圧手段等の配置を視認し易くした図である。
図4図4は、減圧保温ジャーのブロック図である。
図5図5は、調圧ユニットのブロック図である。
図6図6は、減圧開始後の圧力センサーの検出値を示すグラフである。
図7図7は、減圧開始後の圧力センサーの検出値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る減圧調理器10について、図面を参照しながら説明を行なう。減圧調理器10とは、調理中、保温中などに調理物が収容される内釜21を減圧状態に保持できる調理器である。調理器の種類は、炊飯器、保温ジャー、ブレンダー、フードプロセッサー、スープジャー、クッカーなどのキッチン電化製品を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0019】
以下の実施形態では、減圧調理器10として、図1乃至図3に示す減圧保温ジャーを例に挙げて説明を行なう。減圧保温ジャー11は、保温機能と減圧保温機能を有する減圧調理器であって、商用電源に接続することで内釜21を加熱するヒーター51がオンになり、この状態から真空ボタン53(図3参照)を操作することで、吸引手段となる真空ポンプ41が作動して、内釜21内を減圧する。
【0020】
減圧保温ジャー11は、調理物が投入される内釜21を調理器本体20に収容して使用される。調理器本体20は、上面が開口しており、蓋体30が開閉可能に取り付けられる。蓋体30は、内面側に内蓋31が着脱可能となっている。内蓋31は、内蓋パッキン32が装着されており、蓋体30を閉じた状態で、内釜21を気密に塞ぐ。内蓋31には、図1図2に示すように、減圧手段40の配管491が開口しており、図2に示すように内蓋31を閉じた状態で、配管491は内釜21と連通する。
【0021】
減圧保温ジャー11は、図2に示すように、内釜21を加熱するヒーター51(加熱手段)と、内釜21の温度を測定する温度センサー52を具える。ヒーター51は内釜21の肩部を加熱し、温度センサー52は、内釜21の底部の温度を測定する。なお、本実施形態の減圧保温ジャー11は、上記のとおり、商用電源に接続することでヒーター51をオン操作するものであり、ヒーター51をオン・オフ操作や温度調整する操作ボタンは具えていない。
【0022】
減圧保温ジャー11は、保温中、食品の酸化、黄ばみなどの変色、乾燥、においの発生を抑えるために、内釜21内を減圧する減圧手段40を具える。図4は、減圧手段40のブロック図を示している。減圧手段40は、たとえば、真空ポンプ41、圧力センサー42、調圧ユニット43を含む構成とすることができる。
【0023】
真空ポンプ41は、配管496側から空気を吸引し、大気放出する吸引手段の一例であり、減圧ポンプ、ピストンなどであってもよい。本実施形態では、真空ポンプ41は、図2図3示すように、調理器本体20の周面、具体的には背面側に配備している。なお、図3は、減圧手段40の構成を視認し易くするために、減圧手段40を覆うカバー22,33(図2参照)を取り外している。真空ポンプ41には、配管496が接続されており、配管496側の空気を吸引して、外部に放出する。
【0024】
圧力センサー42は、空間の圧力(気圧)を測定するセンサーである。図示の実施形態では、圧力センサー42は、図3図4に示すように、真空ポンプ41の配管496から分岐した枝管497に配置している。枝管497を採用しているのは、内釜21内の蒸気が流入しても、圧力センサー42側に水分が流れ込まないようにするためである。枝管497は、図3に示すように、配管496よりも小径とすることが望ましい。枝管497を小径とすることで、減圧異常でも真空ポンプ41が作動している間は圧力センサー42の検出値が大気圧まで戻らない、或いは、大気圧に戻るまでに時間が掛かるから、構成部品の欠落などを精度よく行なうことができる。
【0025】
調圧ユニット43は、減圧時には真空ポンプ41を内釜21と接続し、非減圧時には内釜21を大気開放する構成部品である。本実施形態では、図2図3に示すように、調圧ユニット43は、蓋体30の上面後方側に配置している。たとえば、調圧ユニット43は、内釜21を大気開放又は真空ポンプ41と切り替えて接続する弁を含む構成とすることができるが、これに限定されるものではない。具体的実施形態として、ブロック図5に示すように、調圧ユニット43は、三方電磁弁44、二方電磁弁46、トラップ47を配管493-495で接続した構成を挙げることができる。
【0026】
三方電磁弁44と二方電磁弁46は、内釜21を大気開放又は真空ポンプ41との接続に切り替える弁である。
【0027】
三方電磁弁44は、Tポートタイプ電磁弁を採用できるが、これに限定されるものではない。三方電磁弁44は、通電時、Aポート441とRポート442を連通し、非通電時にはAポート441とPポート443を連通する。Aポート441は、配管491を介して内釜21と接続されており、Rポート442は、配管493に接続されている。また、Pポート443は、配管492を介して栓パッキン45に接続されている。栓パッキン45は、減圧保温ジャー11が減圧状態のまま通電が遮断されたときに、ユーザーが手動で開放し、内釜21の負圧状態を解除して、蓋体30を開けることができるようにする栓である。
【0028】
二方電磁弁46は、たとえば、常時閉電磁弁を採用できるが、これに限定されるものではない。二方電磁弁46は、配管493,495から分岐した配管494にPポート461が接続されており、Aポート462は大気開放している。そして、通電により二方電磁弁46は、Pポート461と大気開放ポートであるAポート462を遮断し、非通電時にはPポート461を遮断する。
【0029】
減圧時には、三方電磁弁のAポート441とRポート442を接続し、二方電磁弁46はPポート461とAポート462を遮断する。これにより、内釜21は、配管491,493,495,次に説明するトラップ47、配管496を介して真空ポンプ41に接続される。この状態で真空ポンプ41を作動させることで、内釜21の減圧が進行する。
【0030】
減圧を解除する際には、真空ポンプ41を停止し、三方電磁弁はAポート441とRポート442を接続したまま、二方電磁弁46のPポート461を大気開放ポートであるAポート462と接続する。これにより、内釜21は、配管494,493,491を介して大気開放され、減圧が解除される。
【0031】
なお、二方電磁弁46は常時閉電磁弁としており、また、三方電磁弁44はAポート441がPポート443に接続されるが、Pポート443は栓パッキン45に塞がれている。このため、減圧状態のまま減圧保温ジャー11の電源が遮断されると、内釜21の減圧状態は保持される。このように電源が遮断されても、内釜21を減圧状態としているのは、食品の酸化等を防ぐためである。しかしながら、内釜21内が負圧のままであると、蓋体30を開くことができない。このため、非通電時に蓋体30を開く場合には、ユーザーが手動で栓パッキン45を外し、三方電磁弁44のPポート443を大気開放する。これにより、大気開放したPポート443とAポート441が連通し、内釜21を大気圧に戻して、蓋体30を開くことができる。
【0032】
配管495,496間には、トラップ47が配置されている。トラップ47は、内釜21から吸引された空気中に含まれる蒸気を結露させて捕集する装置であって、水分が真空ポンプ41や圧力センサー42に流入することを抑える構成部品である。トラップ47は、取り外して洗浄可能な構成としており、図4ではトラップ47を取り外した状態を示している。トラップ47は、図4中、符号481,482で示すベースに着脱可能となっている。ベース481は配管495、ベース482は配管496に接続され、三方電磁弁44を通過した蒸気を含む空気は、配管495からベース481を通ってトラップ47に入り、蒸気が捕集された後、ベース482、配管496を通って真空ポンプ41から大気放出される。
【0033】
上記構成の減圧保温ジャー11には、減圧を開始するための操作手段として図3に示す真空ボタン53を具える。また、減圧保温ジャー11の動作状態を示す表示部と、音声或いはビープ音で減圧調理器10の状態を報知するスピーカーなどから構成できる報知手段54を具える。なお、報知手段54は、表示部又はスピーカーの一方でもよい。また、表示部は、液晶表示、デジタル表示、LED54aの点灯、点滅による表示などを採用できる。
【0034】
上記した減圧手段40やヒーター51、温度センサー52、真空ボタン53、報知手段54(表示部やスピーカー)は、減圧調理器10の適所に配置された制御装置50により制御される。図2図3では、制御装置50は、真空ポンプ41の下方に配置している。制御装置50は、マイコンやメモリ等から構成することができ、メモリには、減圧調理器10の各種プログラム等が記憶されている。たとえば、制御装置50は、保温を行なう場合には、温度センサー52により測定された内釜21の温度に基づいて、ヒーター51のオン、オフ制御を行なう。また、減圧を行なう場合には、圧力センサー42の検出値に基づいて、真空ポンプ41や電磁弁44,46の制御を行なう減圧プログラムを実行する。
【0035】
減圧保温ジャー11を商用電源に接続すると、ヒーター51による加熱が行なわれる。図2図3に示すように、蓋体30を塞いだ状態で、ユーザーが真空ボタン53を操作すると、制御装置50は、減圧プログラムを実行する。具体的には、制御装置50は、三方電磁弁44、二方電磁弁46に通電を行ない、内釜21は、真空ポンプ41と接続される。この状態で、制御装置50は、真空ポンプ41を作動させる。これにより、内釜21内の空気は、調圧ユニット43を通じて真空ポンプ41に吸引され、内釜21内が減圧される。吸引された空気は、トラップ47を通過する間に結露して水蒸気が除去され、真空ポンプ41に至る。内釜21の気圧は、圧力センサー42により測定され、制御装置50は、圧力センサー42の検出値が予め設定された設定圧力となるまで真空ポンプ41を作動させる。
【0036】
圧力センサー42の検出値が設定圧力となった後は、制御装置50は、たとえば、所定時間毎、或いは、圧力センサー42の検出値が設定圧力から所定値小さくなったときに真空ポンプ41を作動させ、内釜21内の減圧状態を維持する。
【0037】
なお、減圧状態は、減圧プログラムが終了、解除、通電遮断により中止等されることにより終了する。たとえば、減圧状態の保温中にユーザーが蓋体30を開こうとした場合、内釜21内が負圧のままでは蓋体30を開くことができないから、制御装置50は、調圧ユニット43を制御して、真空ポンプ41の動作を止め、電磁弁44,46を制御して、内釜21を大気開放し、内釜21内を大気圧に戻す制御を行なう。
【0038】
図6は、上記減圧保温ジャー11で減圧プログラムを実行し、真空ポンプ41を作動させた場合の圧力センサー42の検出値を示すグラフである。図6は、真空ポンプ41の作動開始から10秒間のグラフとしている。なお、図6は例示の目的で開示されるグラフであり、時間、圧力値の大きさ、傾きなどは、これに限定されないことは理解されるべきでる。たとえば、減圧に要する時間や圧力値は、内釜21の容積や内釜21に投入された調理物の種類、体積などによって変化する。
【0039】
図6の線αは、減圧調理器10の減圧手段40、蓋体30の内蓋31、内蓋パッキン32など減圧に関連する構成部品に異常がなく、正常に減圧が実行された場合の圧力値のグラフである。線αを参照すると、真空ポンプ41の作動後、約1秒遅れで大気圧(約101kPa)から減圧が開始され、その後、約2秒までは急激に減圧(圧力値:bkPa)が進む。そして、測定されている約10秒まで緩やかに減圧が進む(圧力値:ckPa)。10秒移行は図示していないが、予め設定された圧力(たとえば約70kPa)になるまで、緩やかに減圧される。
【0040】
一方、図6の線βは、調圧ユニット43の構成部品の欠落、配管外れ、電磁弁44,46が大気開放しているなど、調圧ユニット43が真空ポンプ41を大気連通させる不具合のある減圧異常を発生させた際の圧力値のグラフである。調圧ユニット43の不具合として、具体的には、最も真空ポンプ41に近いトラップ47を取り外した、トラップ47の装着忘れ状態としている。調圧ユニット43に不具合があっても、真空ポンプ41を作動させると、最初は約1秒遅れで大気圧から減圧が開始される(圧力値:akPa)。これは、真空ポンプ41と調圧ユニット43を結ぶ配管496の減圧が進むためである。しかしながら、その後、線βに示すように、圧力値:akPaからそれ以上の減圧の進行が止まることが観察される。
【0041】
図6の線γは、内蓋31を装着せずに減圧異常を発生させたときの圧力値のグラフである。真空ポンプ41を作動させると、約1秒遅れで減圧が開始される。そして、線αと同様に、約2秒までは急激に減圧が進む(圧力値:bkPa)。しかしながら、内蓋31が装着されていない、すなわち、調圧ユニット43よりも上流側が大気連通しているから、線γに示すように、圧力値:bkPaからそれ以上の減圧は進行せず、減圧が止まる。線βに比べて減圧が進行したのは、真空ポンプ41から内蓋31までの間に調圧ユニット43や配管491-496があり、その間の減圧が進行したためである。
【0042】
上記線α~線γを参照してわかるとおり、正常に減圧された線αは、最初に減圧が進んだ後(約2秒まで)、さらに減圧が進む。具体的には、たとえば約5秒(「第1時間」と称する)の圧力値(「第1圧力値」と称する)と約10秒(「第2時間」と称する)の圧力値(「第1圧力値」と称する)に差がある。一方、減圧異常の線β、線γは、最初に減圧が進んだ後(約2秒まで)、減圧の進行が止まる、すなわち、第1時間の第1圧力値と第2時間の第2圧力値にはほとんど差が生じない。これら知見に基づき、発明者らは、第1圧力と第2圧力を比較することで、減圧手段40や内蓋31など減圧に関連する構成部品の異常の有無を判断できると考え、本発明に至った。
【0043】
なお、第1時間、第2時間は、正常な減圧と異常な減圧で、第1圧力と第2圧力の差の有無を確認できれば、上記時間に限定されるものではない。減圧異常は、早期に検知されることが望ましいから、第1時間は、できるだけ減圧開始時刻に近い時間とし、第1時間と第2時間の間隔は短い時間とする。たとえば、減圧開始から第1時間までを約5秒~約10秒、第1時間と第2時間の間隔を約5秒~約10秒とすることが好適である。この場合、減圧開始から第2時間までは約20秒以下とすることができる。
【0044】
制御装置50は、圧力センサー42が測定する第1時間の第1圧力値と、第2時間の第2圧力値を取得し、第1圧力値と第2圧力値を比較する。第1圧力値と第2圧力値のたとえば差分が所定の閾値を越えていれば、線αに示すように、第1時間と第2時間で減圧が進行しているから、減圧が正常に進行していると判断できる。一方、第1時間と第2時間のたとえば差分が所定の閾値以下であれば、減圧異常であると判断できる。
【0045】
そして、減圧が正常に進行している場合には、減圧プログラムに沿って減圧を続行し、減圧異常である場合には、たとえば減圧異常であることを報知手段54である表示部に表示(表示部がLED54aの場合は点灯や点滅)、スピーカーから発報(たとえばビープ音)する。これにより、ユーザーは減圧異常が発生していることを認識でき、構成部品の点検を行ない、正しく装着等して、改めて減圧プログラムを実行すればよい。
【0046】
なお、制御装置50が、減圧異常であると判断した場合には、真空ポンプ41をそのまま作動させておいてもよいし、停止させてもよい。たとえば、空気の漏れが少ない場合、真空ポンプ41の出力を大きくして、吸引量を増やすことで、減圧状態を維持できることがある。このため、制御装置50は、減圧異常と判断したときに、真空ポンプ41の吸引量を大きくするよう制御することができる。
【0047】
上記実施形態において、図6の線β、線γを比較すると、線βは第1圧力値、第2圧力値が共に圧力値:約akPaで止まっているのに対し、線γは第1圧力値、第2圧力値が共に圧力値:約bkPaである。圧力値が約akPaの異常発生箇所は、調圧ユニット43、圧力値が約bkPaの異常発生箇所は、内蓋31であることから、制御装置50は、減圧異常と判断したときの第1圧力値及び/又は第2圧力値の値から、異常発生箇所を特定することができる。そして、制御装置50は、特定した異常発生箇所を報知手段54により報知することもできる。たとえば、表示部に減圧異常の報知だけでなく、「内蓋を確認してください」、「調圧ユニットを確認してください」などのメッセージを表示し、異常発生箇所を特定して報知することで、ユーザーは、いろいろな箇所を調べることなく指摘箇所を点検すればよいから、早期に減圧異常を是正できる。表示部がLED54aの場合には、たとえば点滅の間隔や色の組合せにより異常発生箇所を特定することもできる。
【0048】
なお、本実施形態では、減圧手段40は、調圧ユニット43を下流側からトラップ47、二方電磁弁46、三方電磁弁44の3つの構成部品から形成している。そして、上記した図6では、トラップ装着忘れ時の圧力値のグラフを採用した。しかしながら、真空ポンプ41からトラップ47、二方電磁弁46、三方電磁弁44までの夫々の配管492-495を含めた経路の体積が異なる。このため、予め構成部品毎に第1圧力値、第2圧力値の大きさを測定し、制御装置50に記憶させておくことで、制御装置50は、第1圧力値及び/又は第2圧力値から、調圧ユニット43のどの構成部品で減圧異常が発生したかを特定することもできる。
【0049】
図7は、図6のグラフに、二方電磁弁46の不具合時の圧力値を線β1、三方電磁弁44の不具合時の圧力値をβ2として追加している。二方電磁弁46の不具合は、たとえば、配管494の外れや二方電磁弁46のPポート461がAポート462と連通して大気開放したまま復帰しない状態が挙げられる。また、三方電磁弁44の不具合は、配管491,493の外れを挙げることができる。
【0050】
線β、線β1、線β2を比較すると、線βは、第1圧力値、第2圧力値が共にakPa、線β1はa1kPa、線β2はa2kPaとなっている。従って、制御装置50は、第1圧力値及び/又は第2圧力値の大きさが、akPaのときにはトラップ47の装着忘れ、a1kPaのときには二方電磁弁46の不具合、a2kPaのときには三方電磁弁44の不具合と判断できる。従って、制御装置50は、特定した異常発生箇所を、より具体的に報知手段54である表示部に表示、スピーカーから発報等することができ、ユーザーは、より早く減圧異常を是正できる。
【0051】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0052】
たとえば、減圧調理器10、調圧ユニット43の構成は上記実施形態に限定されるものではない。また、減圧異常を検知する圧力値や異常発生箇所も上記実施形態に限定されないことは理解されるべきである。
【符号の説明】
【0053】
10 減圧調理器
11 減圧保温ジャー
20 調理器本体
21 内釜
30 蓋体
31 内蓋
40 減圧手段
41 吸引手段(真空ポンプ)
42 圧力センサー
43 調圧ユニット
51 加熱手段(ヒーター)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7