(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131357
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】巻線界磁式回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20240920BHJP
H02K 9/22 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H02K9/19 B
H02K9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041570
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧 泰洋
(72)【発明者】
【氏名】土井 孝之
(72)【発明者】
【氏名】村上 聡
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB02
5H609PP02
5H609PP07
5H609PP09
5H609QQ05
5H609QQ20
5H609QQ23
5H609RR48
5H609RR59
(57)【要約】
【課題】巻線界磁式回転電機において界磁巻線全体を効果的に冷却可能とする。
【解決手段】ステータと、ロータと、冷媒流路と、を備え、ロータは、周方向で設けられている複数のティース部を有するロータコアと、複数のティース部に巻回される界磁巻線と、を有し、複数のティース部の間に形成される複数のスロット内に、界磁巻線を固定する樹脂部と、樹脂部の樹脂材料よりも熱伝導率の高い放熱部材とが、設けられ、樹脂部は、複数のスロット内において、界磁巻線及び放熱部材に接し、放熱部材は、軸方向に延在し、軸方向端部において冷媒を介して放熱可能である、巻線界磁式回転電機が開示される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータと同軸かつ径方向に隙間を設けて回転可能に配置されるロータと、
冷媒を供給する冷媒流路と、を備え、
前記ロータは、
周方向で設けられている複数のティース部を有するロータコアと、
前記複数のティース部に巻回される界磁巻線と、を有し、
前記複数のティース部の間に形成される複数のスロット内に、前記界磁巻線を固定する樹脂部と、前記樹脂部の樹脂材料よりも熱伝導率の高い放熱部材とが、設けられ
前記樹脂部は、前記複数のスロット内において、前記界磁巻線及び前記放熱部材に接し、
前記放熱部材は、軸方向に延在し、軸方向端部において前記冷媒を介して放熱可能である、巻線界磁式回転電機。
【請求項2】
前記放熱部材の前記軸方向端部は、前記ロータコアの軸方向端面よりも軸方向外側に延在する、請求項1に記載の巻線界磁式回転電機。
【請求項3】
前記放熱部材の前記軸方向端部は、軸方向に交差する面内に延在する放熱表面を有し、
前記冷媒は、前記冷媒流路から前記放熱表面に向けて供給される油を含む、請求項1に記載の巻線界磁式回転電機。
【請求項4】
前記放熱部材は、ベーパーチャンバーを含む、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の巻線界磁式回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻線界磁式回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
界磁巻線の軸方向端部(ロータコア端面から軸方向に突出する部分)に対して軸方向外側から液体冷媒を噴射する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/095842号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、界磁巻線は、ロータコアの軸方向全体にわたって延在するが、界磁巻線の軸方向中央部には、界磁巻線の軸方向端部に供給される油が到達せず、界磁巻線の軸方向中央部の熱は油に直接的に放出できない。このため、上記のような従来技術では、界磁巻線全体を効果的に冷却することが難しい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、巻線界磁式回転電機において界磁巻線全体を効果的に冷却可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、ステータと、
前記ステータと同軸かつ径方向に隙間を設けて回転可能に配置されるロータと、
冷媒を供給する冷媒流路と、を備え、
前記ロータは、
周方向で設けられている複数のティース部を有するロータコアと、
前記複数のティース部に巻回される界磁巻線と、を有し、
前記複数のティース部の間に形成される複数のスロット内に、前記界磁巻線を固定する樹脂部と、前記樹脂部の樹脂材料よりも熱伝導率の高い放熱部材とが、設けられ
前記樹脂部は、前記複数のスロット内において、前記界磁巻線及び前記放熱部材に接し、
前記放熱部材は、軸方向に延在し、軸方向端部において前記冷媒を介して放熱可能である、巻線界磁式回転電機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、巻線界磁式回転電機において界磁巻線全体を効果的に冷却することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例による回転電機用の駆動装置を含む車両駆動システムを示す構成図である。
【
図2】回転電機の断面の一部を示す概略的な断面図である。
【
図4】軸方向に垂直な面で切断した際のロータの中央部の断面図である。
【
図7】回転軸を含む平面で切断した際のロータの一部を示す断面斜視図である。
【
図8】ロータの軸方向端部における冷却方法の説明図であり、ロータの軸方向端部を含むロータの一部の断面図である。
【
図9】放熱部材の放熱機能の説明図であり、放熱部材を模式的に示す図である。
【
図10】変形例の説明図であり、ロータの軸方向端部を含むロータの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。また、図面では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0010】
図1は、本実施例による回転電機用の駆動装置5を含む車両駆動システム1を示す構成図である。
図2は、回転電機3の断面の一部を示す概略的な断面図である。
【0011】
車両駆動システム1は、低圧バッテリ2Aと高圧バッテリ2Bを含む2電源構成であり、回転電機3と、駆動装置5とを含む。
【0012】
低圧バッテリ2Aは、例えば鉛バッテリであり、定格電圧が例えば12Vである。
【0013】
高圧バッテリ2Bは、例えばリチウムイオンバッテリであり、低圧バッテリ2Aより定格電圧が有意に高く、例えば定格電圧が40V以上である。本実施例では、一例として、高圧バッテリ2Bの定格電圧は、300V以上であるとする。なお、高圧バッテリ2Bは、燃料電池等の形態であってもよい。
【0014】
回転電機3は、巻線界磁型であり、ロータ310と、ステータ320とを含む。ロータ310は、ステータ320の径方向内側に、ステータ320と同軸かつ径方向に隙間を設けて配置される。ロータ310は、ロータコア312と、ロータ巻線316とを有する。ロータコア312は、シャフト部314に同軸で固定される。なお、ロータコア312は、
図2に示すように、径方向外側に突出するティース部3122を有し、ティース部3122に、ロータ巻線316を形成する導体線が巻回される。また、ステータ巻線322は、
図2に示すように、ステータコア321のティース部3210まわりに巻装される。ロータ310の更なる詳細は、後述する。
【0015】
駆動装置5は、マイクロコンピュータ50(以下、「マイコン50」と称する)と、電気回路部60とを含む。
【0016】
マイコン50は、例えばECU(Electronic Control Unit)として実現されてよい。マイコン50は、CAN(controller area network)のようなネットワーク6を介して、車両内の各種の電子部品(他のECUやセンサ)に接続される。
【0017】
マイコン50は、ネットワーク6を介して、上位ECU(図示せず)からの制御指令等の各種指令を受信する。マイコン50は、制御指令に基づいて、電気回路部60を介して回転電機3を制御する。マイコン50は、低圧バッテリ2Aからの電力に基づいて、動作する。
【0018】
電気回路部60は、平滑コンデンサ62と、電力変換回路部63と、給電回路部64とを含む。
【0019】
平滑コンデンサ62は、高圧バッテリ2Bの高電位側ライン20と低電位側ライン22の間に設けられる。平滑コンデンサ62の両端には、パッシブ放電用の抵抗R0が接続されてよい。
【0020】
電力変換回路部63は、インバータの形態であり、例えば3相のブリッジ回路を形成する。電力変換回路部63は、高電位側ライン20と低電位側ライン22の間に、平滑コンデンサ62に対して並列となる態様で、接続される。電力変換回路部63は、高電位側のアームの各スイッチング素子SW3と低電位側のアームの各スイッチング素子SW4を備える。マイコン50は、駆動回路部52を介して各スイッチング素子SW3、SW4を制御する。
【0021】
給電回路部64は、ブリッジ回路部641と、駆動回路部642とを含む。
【0022】
ブリッジ回路部641は、高電位側ライン20と低電位側ライン22の間に、平滑コンデンサ62及びパッシブ放電用の抵抗R0に対して並列となる態様で、接続される。ブリッジ回路部641は、対のスイッチング素子SW1、SW2と、対のダイオードD1、D2を含む。
【0023】
スイッチング素子SW1は、ダイオードD1の高電位側のカソードに接続される態様で、ダイオードD1に直列に接続される。スイッチング素子SW1とダイオードD1の間には、ロータ巻線316の一端が接続される。また、スイッチング素子SW2は、ダイオードD2の低電位側のアノードに接続される態様で、ダイオードD2に直列に接続される。スイッチング素子SW2とダイオードD2の間には、ロータ巻線316の他端が接続される。以下、対のスイッチング素子SW1、SW2のうちの、スイッチング素子SW1及びそれに関連する構成には、区別のために、「高電位側」を付す場合があり、スイッチング素子SW2及びそれに関連する構成には、「低電位側」を付す場合がある。
【0024】
対のスイッチング素子SW1、SW2は、駆動回路部642を介して、オン/オフ状態が切り替えられる。対のスイッチング素子SW1、SW2は、駆動回路部642による制御下で、ロータ巻線316に対する通電状態を変化させる。スイッチング素子SW1、SW2は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であるが、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等のような他の形態であってもよい。
【0025】
駆動回路部642は、マイコン50からの制御信号に基づいて、高電位側のスイッチング素子SW1のゲートを駆動するとともに、マイコン50からの制御信号に基づいて、低電位側のスイッチング素子SW2のゲートを駆動する。
【0026】
次に、
図3以降を参照して、本実施例の回転電機3におけるロータ310の特徴的な構成を説明する。
【0027】
図3は、回転電機3のロータ310の斜視図である。
図4は、軸方向に垂直な面で切断した際のロータ310の中央部の断面図である。
図5は、軸方向に視たロータ310の平面図であり、
図6は、一の放熱部材390の斜視図である。
図7は、回転軸Iを含む平面で切断した際のロータ310の一部を示す断面斜視図である。
【0028】
以下の説明において、軸方向とは、ロータ310の回転軸Iが延在する方向を指し、径方向とは、回転軸Iを中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、回転軸Iから離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸Iに向かう側を指す。また、軸方向外側とは、ステータ320の軸方向の中心から離れる側を指し、軸方向内側とは、ステータ320の軸方向の中心に近づく側を指す。また、周方向とは、回転軸Iまわりの回転方向に対応する。
【0029】
ロータ310は、ステータ320(
図2参照)の径方向内側に、ステータ320と同軸かつ径方向に隙間を設けて配置される。ロータ310は、ロータコア312と、ボビン313と、シャフト部314と、エンドプレート315と、ロータ巻線316と、樹脂部317と、を有する。
【0030】
ロータコア312は、シャフト部314に同軸で固定される。ロータコア312は、例えば電磁鋼板を積層して形成されてよい。ロータコア312は、
図4に示すように、径方向外側に突出するティース部3122を有し、ティース部3122に、ロータ巻線316を形成する導体線が巻回される。この場合、周方向でティース部3122間に形成されるスロット3123(
図4参照)内には、ロータ巻線316を形成する導体線が延在する。
【0031】
ボビン313は、絶縁材料により形成される。ボビン313は、
図7に示すように、ロータコア312の軸方向端部に設けられる。ロータ巻線316は、軸方向端部3162においてボビン313により保持される態様で、ロータコア312に巻回される。
【0032】
シャフト部314は、回転軸Iを形成する。シャフト部314には、ロータコア312が固定される。シャフト部314は、中空構造であってよく、油路(中空の軸心油路)3142を形成してよい。
【0033】
エンドプレート315は、ロータコア312の軸方向端面(ティース部3122の端面)を覆う態様で設けられる。
【0034】
ロータ巻線316は、スロット収容部3161(
図4参照)と、軸方向端部3162(
図3参照)とを含む。スロット収容部3161は、スロット3123内に延在する。軸方向端部3162は、ロータコア312の軸方向端面から軸方向に突出する。なお、ロータ巻線316の軸方向端部3162は、径方向内側よりも径方向外側の方が軸方向外側に突出する形態であってもよい。
【0035】
本実施例では、ロータ巻線316は、樹脂部317により接合される。具体的には、スロット収容部3161は、スロット3123内に延在する樹脂部317に接合する。なお、軸方向端部3162は、樹脂部317に接合してもよいし、接合しなくてもよい。
【0036】
樹脂部317は、樹脂材(絶縁材料)により形成される。樹脂部317は、スロット3123内に延在する。樹脂部317は、スロット3123内に隙間なく充填されてもよい。樹脂部317は、スロット3123内に注入されるモールド樹脂材料を硬化させて形成されてもよいし、他の方法で形成されてもよい。樹脂部317は、上述したように、スロット3123内においてロータ巻線316のスロット収容部3161に接合する。樹脂部317は、ロータ巻線316を固定するとともに、ロータ巻線316に係る電気的絶縁性を高める機能を有してもよい。
【0037】
本実施例では、樹脂部317は、更に、放熱部材390に接合する。従って、本実施例では、樹脂部317は、ロータ巻線316とともに、放熱部材390を固定する機能も有する。
【0038】
本実施例では、ロータ310は、更に、放熱部材390を含む。放熱部材390は、比較的高い熱伝導率を有する。放熱部材390は、樹脂部317の樹脂材料よりも熱伝導率が有意に高い。放熱部材390は、比較的高い熱伝導率の銅により形成されてもよいが、好ましくは、ベーパーチャンバーの形態である。なお、ベーパーチャンバーに代えて、同様の原理のヒートパイプが利用されてもよい。ベーパーチャンバーの場合、例えば銅の熱伝導率が386W/mK程度であるのに対して、2000W/mK~10000W/mKの熱伝導率を有する。従って、放熱部材390の熱伝導率を効果的に高めることができる。以下では、特に言及しない限り、放熱部材390は、ベーパーチャンバーであるとして説明を続ける。
【0039】
放熱部材390は、ロータコア312のスロット3123に配置される。放熱部材390は、スロット3123における軸方向中央部(ロータコア312の軸方向中央部)で熱を受け取り、受けた熱を軸方向両側端部へと移動させ、軸方向端部を介して放出する機能(以下、単に「放熱機能」とも称する)を有する。
【0040】
放熱部材390は、好ましくは、スロット3123ごとに1つずつ設けられる。ただし、変形例では、放熱部材390は、複数のスロット3123の一部だけに設けられてもよいし、一のスロット3123に複数設けられてもよい。以下では、特に言及しない限り、放熱部材390は、スロット3123ごとに1つずつ設けられるものとし、各スロット3123に設けられる各放熱部材390は同じ構成を有するものとする。そして、以下では、一の放熱部材390(及び一のスロット3123との関係)について代表的に説明する。
【0041】
放熱部材390は、
図7に示すように、スロット3123内において軸方向に延在する。放熱部材390は、ロータコア312の軸方向端面よりも軸方向外側まで軸方向に延在する。なお、放熱部材390は、ロータ巻線316の軸方向端部3162よりも軸方向外側まで軸方向に延在してよい。
【0042】
具体的には、放熱部材390は、スロット3123内に延在する中央部3901と、軸方向端部3902とを有し、軸方向端部3902がロータコア312の軸方向端面よりも軸方向外側に露出する。中央部3901は、軸方向に対して垂直な平面で切断した際の断面形状が等しくなる態様で、軸方向に延在してよい。一のスロット3123に配置される放熱部材390の中央部3901は、軸方向に視て、当該一のスロット3123の周方向両側のティース部3122に巻かれたロータ巻線316に対して周方向で隙間を介して隣り合ってよい。この際、中央部3901の断面形状の長手方向は、軸方向に視て、回転軸Iを通る径方向に延在してよい。
【0043】
軸方向端部3902は、中央部3901の軸方向両端部から連続する態様で形成されてよい。軸方向端部3902は、樹脂部317により封止されてもよいが、好ましくは、少なくとも一部が樹脂部317から露出される。
【0044】
放熱部材390は、好ましくは、
図6等に示すように、軸方向端部3902において、周方向及び径方向に延在する放熱表面3904を有する。放熱表面3904は、軸方向外側に向く。なお、放熱表面3904は、軸方向に対して垂直な平面内に延在してもよいし、軸方向に対して僅かに傾斜した平面内に延在してもよい。
【0045】
次に、
図8から
図10を参照して、本実施例による回転電機3の冷却方法について説明する。
【0046】
図8は、ロータ310の軸方向端部311における冷却方法の説明図であり、ロータ310の軸方向端部311を含むロータ310の一部の断面図である。
図8には、油供給装置8を含む油の供給系の概略図が併せて示されている。
【0047】
本実施例では、ロータ310の軸方向端部311は、油(「液体冷媒」の一例)により冷却される。具体的には、油供給装置8が設けられ、油供給装置8は、
図8に模式的に示すように、回転電機3等に油を圧送するオイルポンプ80を含む。オイルポンプ80は、回転電機3を収容するケース(図示せず)に支持されてよい。オイルポンプ80は、回転電機3の動作時等に回転される機械式であってもよいし、電動式であってよい。また、油供給装置8は、機械式オイルポンプと、電動式オイルポンプの組み合わせを含んでもよい。また、油供給装置8は、オイルポンプ80から吐出される油の温度を低下させるためのオイルクーラや、ストレーナ等を含んでよい。
【0048】
本実施例では、油供給装置8は、オイルポンプ80から吐出される油を、ロータ310の軸方向端部311に供給する油路84を有する。油路84は、ケース(図示せず)に形成されてもよいし、パイプ等のような管状部材により形成されてもよい、ケース内の油路と管状部材との組み合わせにより実現されてもよい。油路84は、一端がオイルポンプ80に連通し、他端がロータ310の軸方向端部311の周辺空間に連通する。
【0049】
例えば、油路84は、ロータ310の軸方向端部311に軸方向外側に軸方向に対向する噴射孔(図示せず)を有してよい。この場合、噴射孔から油は、オイルポンプ80により高められた油圧によって、ロータ310の軸方向端部311(放熱部材390の放熱表面3904を含む)に軸方向に当たるように噴射されてよい(
図8の矢印R20参照)。あるいは、油路84は、シャフト部314内の油路(中空の軸心油路)3142に連通し、ロータ310の軸方向端部311に径方向で対向する噴射孔3143を有してよい。この場合、噴射孔3143から油は、遠心力によって、ロータ310の軸方向端部311に当たるように噴射されてよい(
図8の矢印R22参照)。あるいは、噴射孔3143から油は、遠心力によって、ロータ310の軸方向端部311よりもわずかに軸方向外側に噴射されてよい。なお、噴射孔3143は、周方向の複数の位置に設けられてよい。噴射孔3143から油は、ステータ320のステータ巻線322の端部(コイルエンド部)にもかかるように噴射されてもよい。なお、
図8では、X方向X2側の軸方向端部311に係る油路84は、そこを通る油の流れにより模式的に示されている。これは、X方向X1側の軸方向端部311に係る油路についても同様であってよい。
【0050】
本実施例では、放熱部材390は、軸方向端部3902において油を介して放熱可能である。具体的には、放熱部材390は、上述したように、ロータコア312の軸方向端面から軸方向外側に露出しており、ロータ310の回転時等、上述した油供給装置8から供給される油に当たることができる。これにより、上述した放熱機能が実現される。
【0051】
なお、本実施例では、放熱部材390の放熱表面3904は、軸方向に垂直な面内に延在するが、径方向内側に向かうほど軸方向内側に位置する態様で傾斜してもよい。この場合、放熱表面3904は、噴射孔3143から油が当たるように形成されてもよい。また、放熱表面3904は、噴射孔3143に径方向に対向する段差面又は傾斜面等を有してもよい。
【0052】
図9は、放熱部材390の放熱機能の説明図であり、放熱部材390を模式的に示す図である。
図9には、熱の移動態様が矢印R90、R91で模式的に示されるとともに、冷媒の移動が矢印R100、R101、R102で模式的に示されている。
【0053】
図9に示す例では、放熱部材390は、気密空間39を形成する薄板397の中空構造である。この場合、薄板397は、中央部3901に係る部分が、スロット3123において、回転軸Iを含む平面内に延在し、軸方向端部3902に係る部分が、軸方向に交差する平面内に延在する。なお、薄板397は、高い熱伝導率を有する材料(例えば銅)により形成されてよい。放熱部材390は、内部にウィック層398を有する。また、放熱部材390は、内部に冷媒となる液体(例えば純水等)が封入される。
【0054】
放熱部材390は、軸方向中央部で熱を受けると(矢印R90)、ウィック層398内の液体(冷媒)が気化し、吸熱が実現される。なお、放熱部材390に対して軸方向中央部で熱を与えるのは、主にロータ巻線316の軸方向中央部であってよい。液体が気化すると、放熱部材390の軸方向両端へと気体の一部が移動し(矢印R100)、放熱部材390の放熱表面3904で凝縮し(矢印R101)、放熱が実現される(矢印R91)。凝縮した液体は、ウィック層398の毛細管現象により軸方向中央部へと移動し(矢印R102)、軸方向中央部で受ける熱(矢印R90)により再び気化する。このような吸熱と放熱のサイクルの繰り返しにより効率的な冷却を実現できる。
【0055】
なお、
図9に示す例では、ウィック層398は、気密空間39内の特定の領域に配置されているが、ウィック層398の配置や構成は、上述した冷媒輸送機能を適切に実現するように適合されてよい。
【0056】
このようにして本実施例によれば、放熱部材390を設けることで、ロータ巻線316の軸方向端部3162の熱を外部へと効率的に放出できるだけでなく、ロータ巻線316の軸方向中央部の熱を外部へと効率的に放出することもできる。その結果、本実施例によれば、回転電機3においてロータ巻線316全体を効果的に冷却できる。
【0057】
また、本実施例によれば、放熱部材390の軸方向端部3162は、上述したように、周方向に延在する放熱表面3904を有する。これにより、軸方向に噴射される油に放熱部材390が当たりやすくなり、放熱部材390を介した放熱サイクルを効果的に促進できる。なお、変形例では、放熱表面3904には、フィンのような凹凸が形成されてもよい。この場合、放熱表面3904の表面積が増加し、放熱部材390を介した放熱サイクルを効果的に促進できる。
【0058】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0059】
例えば、上述した実施例では、樹脂部317は、ロータ巻線316の軸方向端部3162を覆わない態様で設けられるが、
図10に示す変形例の樹脂部317Aのように、ロータ巻線316の軸方向端部3162を覆う態様で設けられてもよい。この場合、軸方向端部3162は、カバー部材318により覆われてよく、軸方向でカバー部材318と軸方向端部3162の間に樹脂部317Aの樹脂材料が充填されてもよい。この場合、樹脂部317Aは、射出成形により形成されてもよい。かかる変形例において、樹脂部317Aは、放熱部材390の放熱表面3904を露出するように形成されてもよい。この場合、放熱部材390の放熱表面3904は、カバー部材318に設けられてもよい開口部を介して軸方向に露出されてもよい。この場合、カバー部材318を設ける構成においても、油供給装置8からの油を直接的に放熱表面3904に当てることができる。
【符号の説明】
【0060】
3・・・回転電機(巻線界磁式回転電機)、320・・・ステータ、310・・・ロータ、312・・・ロータコア、3122・・・ティース部、314・・・シャフト部、316・・・ロータ巻線(界磁巻線)、317・・・樹脂部、390・・・放熱部材、3902・・・軸方向端部、3904・・・放熱表面、84・・・油路(冷媒流路)、80・・・オイルポンプ(ポンプ)