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  • 特開-化粧板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131358
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27D 5/00 20060101AFI20240920BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240920BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240920BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20240920BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20240920BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240920BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20240920BHJP
   B27M 1/08 20060101ALI20240920BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 38/18 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B27D5/00
B05D7/00 A
B05D7/24 301T
B05D3/12 C
B05D3/06 102B
B05D3/12 E
B05D3/00 D
B05D1/28
B27M1/08 E
B27M3/00 N
B32B38/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041571
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 駿佑
【テーマコード(参考)】
2B002
2B250
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
2B002AA03
2B002AA07
2B002AA10
2B002AB03
2B002BA02
2B002BA04
2B002BA15
2B002BB03
2B002BB08
2B002BB12
2B250BA02
2B250CA11
2B250DA01
2B250EA02
2B250EA13
2B250FA28
2B250FA33
2B250GA03
2B250HA01
2B250HA03
4D075AC02
4D075AC43
4D075AC77
4D075AC80
4D075AC88
4D075AE03
4D075BB05Z
4D075BB20Z
4D075BB24Z
4D075BB33Z
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB50Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB05
4D075CB07
4D075CB11
4D075CB16
4D075DA04
4D075DB11
4D075DB48
4D075DC31
4D075EA21
4D075EA25
4D075EA33
4D075EA41
4D075EB22
4D075EB38
4D075EC02
4D075EC37
4F100AK01A
4F100AK42
4F100AT00
4F100CA13B
4F100CC00B
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ54
4F100HB00B
4F100JB14A
4F100JL10B
(57)【要約】
【課題】表面の平滑性が非常に優れた鏡面性の化粧板を、生産効率良く得られる製造方法を提供する。
【解決手段】フィルム上に紫外線硬化樹脂組成物を塗布する塗布工程と、基材上に少なくとも着色剤層を有する積層体を用意する工程と、前記フィルムの樹脂塗布面を積層体の着色剤層に当接するラミネート工程と、ラミネートしたフィルムを介して紫外線を照射する樹脂の硬化工程と、フィルムを剥離しながら巻き取る剥離工程と、を備え、前記フィルムの紫外線硬化樹脂塗布面が非易接着層であり、ウェーブスキャン装置におけるショートウェーブ値で1.5以下であることを特徴とする化粧板の製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム上に紫外線硬化樹脂組成物を塗布する塗布工程(A)と、基材上に少なくとも着色剤層を有する積層体を用意する工程(B)と、前記フィルムの樹脂塗布面を積層体の着色剤層に当接するラミネート工程(C)と、ラミネートしたフィルムを介して紫外線を照射する樹脂の硬化工程(D)と、フィルムを剥離しながら巻き取る剥離工程(E)と、を備え、前記フィルムの紫外線硬化樹脂塗布面が非易接着層であり、ウェーブスキャン装置におけるショートウェーブ値で1.5以下であることを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項2】
前記フィルムがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1記載の化粧板の製造方法。
【請求項3】
前記フィルムの紫外線硬化樹脂塗布面が、ウェーブスキャン装置におけるDOI値で80以上であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の化粧板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡面性に優れた化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石膏ボード、珪酸カルシウム板などの無機質板や合板、MDF、パーチィクルボードなどの木質板を基材とする化粧材が知られている。これらの化粧材は基材のみではデザイン性が劣るため、基材の表面に、印刷紙や化粧シートを貼着するなどして化粧層を設け、美観を向上させている。しかしながら、こうした化粧層は下地の凹凸を拾うため、その上にトップコート層を塗布した場合でも、平滑性や外観面で劣るといった問題があった。
【0003】
そのため、化粧材の表面をより平坦にして外観を向上させる方法として、平滑なフィルム表面を化粧材のトップコート層に転写する方法が知られている。例えば特開2013-202847には、ポリエチレンテレフタレート系フィルムを転写用フィルムとして用いた化粧シートが開示されている。
【0004】
こうした転写手法を用いた化粧シートを基材に貼り合わせることで、平滑性に優れた化粧材を得ることができるようになってきた。しかしながら、高級感を求める消費者に人気が高まっている鏡面仕上げを安定して付与することは非常に難しく、表面平滑性をより向上させ、高い鏡面仕上げを得るには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-202847
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、表面の平滑性が非常に優れた鏡面性の化粧板を、生産効率良く得られる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するため、請求項1の発明は、フィルム上に紫外線硬化樹脂組成物を塗布する塗布工程(A)と、基材上に少なくとも着色剤層を有する積層体を用意する工程(B)と、前記フィルムの樹脂塗布面を積層体の着色剤層に当接するラミネート工程(C)と、ラミネートしたフィルムを介して紫外線を照射する樹脂の硬化工程(D)と、フィルムを剥離しながら巻き取る剥離工程(E)と、を備え、前記フィルムの紫外線硬化樹脂塗布面が非易接着層であり、ウェーブスキャン装置におけるショートウェーブ値で1.5以下であることを特徴とする化粧板の製造方法を提供する。
【0008】
また請求項2の発明は、前記フィルムがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1記載の化粧板の製造方法を提供する。
【0009】
また請求項3の発明は、前記フィルムの紫外線硬化樹脂塗布面が、ウェーブスキャン装置におけるDOI値で80以上であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の化粧板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、表面の平滑性が非常に優れた化粧板を生産効率良く得られるため、鏡面性を有する化粧板の製造方法として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化粧板の製造方法(以下本製造方法という)は、以下の工程を有する。すなわち、フィルム上に紫外線硬化樹脂組成物を塗布する塗布工程(A)と、基材上に少なくとも着色剤層を有する積層体を用意する工程(B)と、前記フィルムの樹脂塗布面を積層体の着色剤層に当接するラミネート工程(C)と、ラミネートしたフィルムを介して紫外線を照射する樹脂の硬化工程(D)と、フィルムを剥離しながら巻き取る剥離工程(E)の5工程である。
【0012】
本製造工程の工程(A)は、フィルム上に紫外線硬化樹脂組成物を塗布する工程である。ここで用いるフィルム(以下本フィルムという)は、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムという)、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリアミドフィルム等の合成樹脂フィルムを用いることができる。これらの中では強度、透光性、入手性の点でPETフィルムが好ましい。また本フィルムの少なくとも片面は、易接着層を有していない非易接着層であり、本発明で用いる紫外線硬化型樹脂組成物(以下本UV塗料という)は非易接着層に塗布する。
【0013】
本フィルムの厚みは、25~150μmが好ましく、30~100μmが更に好ましい。25μm以上とすることで、フィルム搬送時のうねりや伸びを抑えることができ、150μm以下とすることで十分な光透過性を確保し、製造コストも抑えることができる。
【0014】
本フィルムのUV塗料塗工面は、ウェーブスキャン装置(商品名:BYK Gardner社製)を用いて測定する。この装置は、レーザー光の反射光により対象表面を光学的に測定できる。具体的には、レーザーの点光源を測定面上でスキャンさせることで、波長の明/暗パターンを測定し、光学的プロファイルを検出できる。検出された光学的プロファイルは、周波数フィルターを通してスペクトル解析され、表面のストラクチャーを解析できる。特定スペクトルは、ショートウェーブ(以下SWという)が波長0.3~1.2mmである。また人間の目の分解能に近い0.3mm以下の特定スペクトルから、写像鮮明性としてDOIが数値化される。
【0015】
本フィルムのUV塗料塗工面は、ウェーブスキャン装置におけるSW値で1.5以下であり、1.0以下が好ましく、0.5以下が更に好ましく、0.3以下が特に好ましい。1.5以下とすることで、十分な平滑性により転写する表面を鏡面にできる。DOI値は80以上が好ましく、85以上が更に好ましく、90以上が特に好ましい。80以上とすることで、十分な平滑性により転写する表面を鏡面にできる。
【0016】
本フィルムにUV塗料を塗布する方法としては、特に制限はなく、公知のスプレーコーター、ロールコーター、ダイコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、スピンコーター、リバースコーター、グラビアコーター、ワイヤーバーなどにより形成できる。これらの中では、幅広い粘度範囲のUV塗料を、厚み精度良く塗工できる点でダイコーターによる塗布が好ましい。
【0017】
本UV塗料は化粧材の表面に転写されるため、化粧材のトップコートとなる。本UV塗料の膜厚は10~100μmが好ましく、20~80μmが更に好ましく、30~60μmが特に好ましい。10μm以上とすることで下地の凹凸を吸収して鏡面性を確保することが期待でき、100μm以下とすることで十分な硬化性を確保し生産性の高いラインスピードを維持できる。
【0018】
本UV塗料は、紫外線硬化型のバインダー樹脂を含む。紫外線硬化型のバインダー樹脂として例えばオリゴマーでは、ウレタン(メタ)アクリレート(以下ウレアクという)、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリル系(メタ)アクリレート、ジエン系(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
本UV塗料には、オリゴマー以外の成分として低分子量のバインダーを用いても良い。例えば脂肪族、脂環族、ポリエーテル骨格、水酸基及びアミノ基等の官能基を有する(メタ)アクリレートや、アクリルアミド化合物を挙げることができ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。官能基数としては反応性の点で多官能であることが好ましい。例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。。
【0020】
本UV塗料には光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0021】
本UV塗料の粘度は、1,000~30,000mPa・sが好ましく、3,000~20,000mPa・sが更に好ましく、5,000~15,000mPa・sが特に好ましい。この範囲とすることで、UV塗料を厚み精度良く塗工できる。
【0022】
本UV塗料は無溶剤であることが好ましい。無溶剤とすることで乾燥工程を省略でき、製造ラインの構成をより簡略化できる。また溶剤の揮発をなくせる点で、環境対応の上でも好ましい。ここで無溶剤とは、UV塗料中に希釈を目的として意図的に溶剤を配合することを除くことであり、UV塗料の各成分に微量に含まれる揮発成分までをも除くことは意味せず、その溶剤含有量としては5重量%以下、典型的には1重量%以下を指す。
【0023】
本製造工程の工程(B)は、基材上に少なくとも着色剤層を有する積層体を用意する工程である。ここで用いる基材は特に制限されず、無機質系基材、木質系基材、有機質系基材等が挙げられる。具体的には無機質系基材として、例えばセメント板、ケイ酸カルシウム板、ケイ酸マグネシウム板、石膏板等が挙げられる。また木質系基材としては、例えば合板、インシュレーションボード、MDF(中密度繊維板)、ハードボード、パーティクルボード等が挙げられる。更に有機質系基材としては、例えばフェノール樹脂板、ポリカーボネート板、アクリル樹脂板、硬質塩化ビニル板等が挙げられる。
【0024】
前記基材の中では、無機質基材系が強度に優れ、また不燃性を有する点で好ましい。また無機質基材の中では、ケイ酸カルシウム板が軽量で、耐水性、加工性、耐衝撃性、寸法安定性に優れる点で特に好ましい。基材の厚みは、強度と取扱い性の点で3~25mmが好ましく、3~12mmが更に好ましい。また基材の密度は0.5~2.0g/cmが好ましい。この範囲であれば、後述のプライマーが基材に吸い込まれず、化粧材が軽量で取り扱いやすくなる。
【0025】
本発明で用いる基材(以下本基材という)には、着色剤層の下地処理として、プライマー層と隠蔽層が設けられることが好ましい。プライマー層は、基材表面にプライマーを塗布することにより形成される。プライマー層は、基材表面の平滑性向上、基材からのアルカリ成分溶出の防止に寄与する。プライマーとしては、例えばイソシアネート系、イソシアヌレート系、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等が挙げられる。これらの中では、不燃性と耐熱性が良好な点でイソシアヌレート系が好ましい。
【0026】
隠蔽層は前記プライマー層の上に設けられ、着色剤層に含まれるインクを受けるインク受理層となる。隠蔽層は基材の色を隠蔽し、着色剤層の本来の色を発現させることで美観の向上に寄与する。例えばイソシアネート系、イソシアヌレート系、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系等のバインダー樹脂に、酸化チタン等の白色の顔料を加えて隠蔽性を向上させることができる。これらのバインダーの中では、プライマー層と着色剤層との密着性に優れるウレタン系が好ましく、被着材に含まれる水分と反応して強固に結合できる湿気硬化型のウレタン樹脂が特に好ましい。
【0027】
着色剤層は、化粧板の美観を向上させる目的で形成する。着色剤層は、石目柄や木目柄などの絵柄であっても、無地であっても良い。アクリル系樹脂を主成分とすることで、隠蔽層とトップコート層との密着性が良好となる。
【0028】
本製造工程の工程(C)は、前記フィルムの樹脂塗布面を積層体の着色剤層に当接するラミネート工程である。ラミネートする際の圧力は線圧で0.05~1.0MPaが好ましく、0.1~0.5MPaが更に好ましく、0.15~0.3MPaが特に好ましい。この範囲とすることで、化粧材の凹凸をUV塗料で平坦化することができ、ゆがみの少ない鏡面仕上げが可能となる。
【0029】
ラミネートする際のスピードは、3~20m/minが好ましく、5~18m/minが更に好ましく、10~15m/minが特に好ましい。この範囲とすることで、UV塗料が着色剤層に十分濡れて紫外線硬化後に十分な下地密着性を確保でき、また化粧材の凹凸をUV塗料で平坦化することができるため、ゆがみの少ない鏡面仕上げが可能となる。また、積層板側にUV樹脂を塗布する場合と比較し、ラミネート時にフィルムとUV樹脂間で発生しやすい気泡の巻き込みを回避できるため、ラミネート工程が安定化でき、ラミネート速度を早くできる。結果として、単位時間当たりの生産量を上げることができる。
【0030】
本製造工程の工程(D)は、ラミネートしたフィルムを介して紫外線を照射する樹脂の硬化工程である。紫外線硬化させる光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、無電極紫外線ランプ等の公知の光源を使用できる。これらの中では放射効率が高く、平行光に転換しやすい点で高圧水銀ランプが好ましい。
【0031】
本UV塗料を紫外線硬化させる照射条件としては、照射強度100mW/cm~2000mW/cm、露光量50~1000mJ/cmが例示されるが、ラインスピードやUV樹脂の硬化特性により適宜選択される。
【0032】
本製造工程の工程(E)は、フィルムを剥離しながら巻き取る剥離工程である。本UV樹脂の塗布面は非易接着層であるため、紫外線硬化後の硬化皮膜は容易に剥離できる。剥離された本フィルムはそのまま巻き取られることで、効率的に回収できる。
【0033】
本製造方法で製造した化粧板の表面をウェーブスキャン装置で測定した場合はSW値が1.5以下が好ましく、1.0以下が更に好ましく、0.5以下が特に好ましい。またDOI値は80以上が好ましく、85以上が好ましく、90以上が特に好ましい。SW値が1.5以下で、且つDOI値が80以上であれば十分な鏡面性を有している。
【0034】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。
【実施例0035】
転写フィルムとして、巾300mmの表1に示すフィルムA~Dを準備した。転写フィルムの塗布面は、ウェーブスキャン3(商品名:BYK Gardner社製)を用い、SW値及びDOI値を測定した。測定方向はフィルムの巻き出し方向に対し、平行及び垂直の2方向とした。UV塗料としてはZ-987-1(商品名:アイカ工業社製、ウレタンアクリレートオリゴマーと光重合開始剤含有の無溶剤型紫外線硬化樹脂)を用い、ダイコーターにより厚み50μmで塗布した。
【0036】
積層体
厚さ6mmのケイ酸カルシウム板を基材とし、イソシアネート系プライマーを用いプライマー層を形成し、熱風乾燥した。その後、プライマー層の上に二酸化チタンを含む湿気硬化型ウレタン塗料を用いて、隠蔽層を形成した。更にその上からアクリル塗料を主成分としたインクを用いて石目柄を印刷し、着色剤層を形成して積層体とした。
【0037】
製造条件
ラミネートスピード10m/minでフィルムの樹脂塗布面を積層体の着色剤層にラミネートし、線圧0.2MPaで圧締した。その後、高圧水銀灯を光源とし、300mW/cm、400mJ/cmの照射条件でUV塗料を紫外線硬化させ、その後フィルムを剥離して巻き取った。
【0038】
表1
【0039】
評価方法は以下の通りとした。
【0040】
SW値:UV塗料が転写された化粧板表面を、ウェーブスキャン3(商品名:BYK Gardner社製)を用い、ライン進行方向に対し平行及び垂直の2方向で測定した。
評価方法は、0.5以下を◎、0.5超~1.5を○、1.5超を×とした。
【0041】
DOI値:UV塗料が転写された化粧板表面を、ウェーブスキャン3(商品名:BYK Gardner社製)を用い、ライン進行方向に対し平行及び垂直の2方向で測定した。
評価方法は、90超を◎、80~90を○、80未満を×とした。
【0042】
表面外観:化粧板の仕上がり外観を目視で確認した。
評価方法は、うねりや表面凹凸が無く十分な鏡面性が確保できている場合を〇、うねりや表面凹凸はあまり感じられないものの鏡面性が十分ではない場合を△、うねりや表面凹凸が見られる場合を×とした。
【0043】
評価結果を表2に示す。
表2
【0044】
実施例の製造方法で製造した化粧板は、非常に良好な鏡面性を有していた。
【0045】
一方、易接着層に塗布した比較例1はUV塗料が剥離せず、SW値とDOI値が外れたフィルムを用いた比較例2及び3は、SW値が大きく、また鏡面性も充分ではなく、いずれも本願発明に適さないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】製造ラインの横断面図
【符号の説明】
【0047】
1 コンベアローラー
2 積層体
3 積層体の着色剤層面
4 フィルム巻き出し
5 フィルム
6 バックアップローラー
7 ダイコーター
8 フィルムのUV樹脂面
9 ラミネートローラー
10 UV照射光源
11 UV樹脂(トップコーコート)が剥離されたフィルム
12 フィルム巻き取り
13 フィルムから剥離されたUV樹脂(トップコート)付きの化粧板


図1