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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131364
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】コイルユニット
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20240920BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240920BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J50/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041580
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】勝谷 仁
(57)【要約】
【課題】非接触電力伝送での出力密度の増大及び不要放射の低減によって、結合係数を向上させることができるコイルユニットを提供する。
【解決手段】コイルユニットは、車両に搭載される受電装置4の受電部15と、制御装置17とを備える。受電部15は、直列に接続される二次側コイル及び二次側キャパシタを備える。二次側コイルは送電装置2から非接触で伝送される交流電力を受け取る。二次側コイルは、送電装置2の一次側コイルから非接触で伝送される交流電力を受け取る際に、一次側コイルに対して逆相の通電電流を生じさせる。二次側キャパシタの容量は、二次側コイル及び二次側キャパシタに応じた2つの共振点のうち高周波側の共振点RPHに応じて設定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置の送電側コイルから非接触で伝送される交流電力を受け取る際に、前記送電側コイルに対して逆相の通電電流を生じさせるコイルを備える
コイルユニット。
【請求項2】
所定の同一方向から見る状態にて、前記コイルの巻き方向は、前記送電側コイルの巻き方向に対して逆方向に設定される
請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項3】
前記コイルに直列に接続される共振用のキャパシタを備え、
前記キャパシタの容量は、前記コイル及び前記キャパシタに応じた2つの共振点のうち高周波側の共振点に応じて設定される
請求項1又は請求項2に記載のコイルユニット。
【請求項4】
前記高周波側の共振点に対応する周波数を、前記送電装置による電力伝送の要求周波数に設定する制御装置を備える
請求項3に記載のコイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池を搭載する車両での充給電に関する研究開発が行われている。
従来、非接触での電力伝送により車両の外部から車両に電力を供給する非接触電力伝送システムでは、車両の外部の送電側コイルと車両の受電側コイルとに対して漏洩磁束(つまり、送電側コイル及び受電側コイルと鎖交する主磁束以外の磁束)を低減する構成が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-234496号公報
【特許文献2】特開2014-193013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池を搭載する車両での充給電に関する技術においては、充給電の出力及び効率を向上させることが望まれている。例えば、上記従来技術の非接触電力伝送システムでは、地上高を低くする等の車両形状の変更を必要とすること無しに、出力密度を増大させるとともに不要放射の発生を抑制することによって、結合係数を向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、非接触電力伝送での出力密度の増大及び不要放射の低減によって、結合係数を向上させることができるコイルユニットを提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1):本発明の一態様に係るコイルユニット(例えば、実施形態でのコイルユニット10)は、送電装置(例えば、実施形態での送電装置2)の送電側コイル(例えば、実施形態での一次側コイル8a)から非接触で伝送される交流電力を受け取る際に、前記送電側コイルに対して逆相の通電電流を生じさせるコイル(例えば、実施形態での二次側コイル15a)を備える。
【0007】
(2):上記(1)に記載のコイルユニットでは、所定の同一方向から見る状態にて、前記コイルの巻き方向は、前記送電側コイルの巻き方向に対して逆方向に設定されてもよい。
【0008】
(3):上記(1)又は(2)に記載のコイルユニットは、前記コイルに直列に接続される共振用のキャパシタ(例えば、実施形態での二次側キャパシタ15c)を備え、前記キャパシタの容量は、前記コイル及び前記キャパシタに応じた2つの共振点のうち高周波側の共振点(例えば、実施形態での共振点RPH)に応じて設定されてもよい。
【0009】
(4):上記(3)に記載のコイルユニットは、前記高周波側の共振点に対応する周波数を、前記送電装置による電力伝送の要求周波数に設定する制御装置(例えば、実施形態での制御装置17)を備えてもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記(1)によれば、送電側コイルに対して逆相の通電電流を生じさせるコイルを備えることによって、磁界結合と電界結合による位相をずらし、磁界結合係数と電界結合係数の打ち消し合いを抑制することができる。電界結合による結合係数の低減を抑制することによって、出力密度を向上させることができる。
例えば送電側コイルに対して同相の通電電流を生じさせるコイルを備える場合に比べて、送電側コイルとコイルとの間のギャップの増大に伴う結合係数の低下を抑制することができ、結合係数を向上させることができる。さらに、送電側コイル及びコイルの周辺の磁束密度が不要な放射によって増大することを抑制することができる。
【0011】
上記(2)の場合、送電側コイルに対して逆相の通電電流を生じさせるコイルを容易に設けることができる。
【0012】
上記(3)の場合、例えばキャパシタの容量が反共振点に応じて設定される場合に比べて、主磁束を阻害するような漏洩磁束の発生を抑制し、コイルへ伝達される磁束の減少を抑制することができる。漏洩磁束による結合係数の低下を抑制することによって、出力密度を向上させることができる。
【0013】
上記(4)の場合、非接触電力伝送での出力密度の増大及び不要放射の低減によって、結合係数を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態のコイルユニットを備える非接触電力伝送システムの構成を示す図。
図2】本発明の実施形態での非接触電力伝送システムの送電部及び受電部の構成を示す図。
図3】本発明の実施形態での送電装置の一次側コイルと受電装置の二次側コイルとを示す斜視図。
図4】本発明の実施形態のコイルユニットでのインピーダンスと周波数との対応関係の例を示すグラフ図。
図5】本発明の実施形態のコイルユニットでのインピーダンス及び位相と周波数との対応関係の実測例を示すグラフ図。
図6】本発明の実施形態のコイルユニット及び第1比較例の各々での磁束密度分布の例を示す図。
図7】本発明の実施形態のコイルユニット及び第2比較例の各々での結合係数kと、一次側コイルと二次側コイルとの間のギャップとの対応関係の例を示すグラフ図。
図8】本発明の実施形態のコイルユニット及び第2比較例の各々での磁束密度分布の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るコイルユニットについて、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態のコイルユニット10を備える非接触電力伝送システム1の構成を示す図である。図2は、実施形態での非接触電力伝送システム1の送電部8及び受電部15の構成を示す図である。
実施形態のコイルユニット10は、例えば、非接触での電力伝送により車両等の移動体の外部から移動体に電力を供給する非接触電力伝送システム1の一部を構成する。実施形態のコイルユニット10は、例えば、車両等の移動体に搭載されている。車両は、例えば、電気自動車、ハイブリッド車両及び燃料電池車両等の電動車両である。
【0016】
(非接触電力伝送システム)
図1に示すように、実施形態の非接触電力伝送システム1は、例えば、車両の走行路等に設置される送電装置2と、車両に搭載される駆動制御装置3及び受電装置4とを備える。
【0017】
送電装置2は、例えば、電源部6と、送電電力変換部7と、送電部8とを備える。なお、送電装置2は、例えば、車両の走行路での所定の電力伝送区間に複数の少なくとも送電部8を備えてもよい。
電源部6は、例えば、商用電源等の交流電源と、交流電力を直流電力に変換するAC-DCコンバータと、電力平滑用のキャパシタとを備える。電源部6は、交流電源から供給される交流電力をAC-DCコンバータによって直流電力に変換する。
【0018】
送電電力変換部7は、例えば、直流電力を交流電力に変換するインバータを備える。送電電力変換部7のインバータは、例えば2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成されるブリッジ回路と、電圧平滑用のキャパシタとを備える。各スイッチング素子は、例えば、SiC(Silicon Carbide)のMOSFET(Metal Oxide Semi-conductor Field Effect Transistor)等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタである。整流素子は、例えば、各トランジスタに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタは、ブリッジ回路に並列に接続される。
【0019】
送電部8は、例えば、磁界共鳴又は電磁誘導等の磁界結合により、高周波の磁界の変化によって電力を送る。図2に示すように、送電部8は、例えば、直列に接続される一次側コイル8a、一次側抵抗8b及び一次側キャパシタ8cによって形成される共振回路を備える。送電部8は、例えば、共振回路に流れる電流Itを検出する電流センサ等のセンサを備える。
【0020】
例えば、送電装置2は、予め設定される駆動周波数又は受電装置4から受け取る希望周波数の情報に応じて、送電電力変換部7の各スイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)のスイッチングを制御することによって、車両の受電装置4への電力伝送を行う。
【0021】
図1に示すように、車両の駆動制御装置3は、例えば、蓄電装置11と、蓄電電圧変換部12と、電力変換部13と、回転電機14とを備える。車両の受電装置4は、例えば、受電部15と、受電電力変換部16とを備える。駆動制御装置3及び受電装置4は、例えば、共通の制御装置17を備える。
なお、例えば蓄電装置11を動力源として駆動する電気自動車等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていなくてもよい。例えば蓄電装置11及び内燃機関を動力源として駆動するハイブリッド車両等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていてもよい。
【0022】
蓄電装置11は、蓄電電圧変換部12に接続される。蓄電装置11は、車両の外部の送電装置2から非接触で伝送される電力によって充電される。蓄電装置11は、蓄電電圧変換部12及び電力変換部13を介して回転電機14との間で電力を授受する。
蓄電装置11は、例えば、リチウムイオンバッテリ等のバッテリと、バッテリの電流を検出する電流センサ及びバッテリの電圧を検出する電圧センサとを備える。
なお、例えば電気自動車等において蓄電電圧変換部12を備えていない場合、蓄電装置11は、後述する電力変換部13及び受電電力変換部16に接続される。
【0023】
蓄電電圧変換部12は、電力変換部13及び受電電力変換部16に接続される。蓄電電圧変換部12は、例えば、昇圧及び降圧の双方向の電圧変換を行う電圧制御器を備える。電圧制御器は、双方向の電圧変換によって蓄電装置11の充電及び放電時に入力電力及び出力電力を変換する。蓄電電圧変換部12の電圧制御器は、例えば、1対の第1リアクトルと、第1素子モジュールと、電圧平滑用のキャパシタとを備える。
【0024】
1対の第1リアクトルは、相互に逆極性に磁気結合されることによって複合型リアクトルを形成する。1対の第1リアクトルは、第1素子モジュールの各相のハイサイドアームとローサイドアームとの接続点に接続される。
第1素子モジュールは、例えば2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第1ブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタである。整流素子は、例えば、各トランジスタに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタは、蓄電装置11に並列に接続される。
蓄電電圧変換部12は、直列に接続される抵抗及びトランジスタを備える。抵抗及びトランジスタは、第1ブリッジ回路に並列に接続される。
【0025】
電圧制御器の1対の第1リアクトル及び第1素子モジュールは、いわゆる2相のインターリーブによって電圧変換を行う。2相のインターリーブでは、1対の第1リアクトルに接続される2相のトランジスタのうちで第1の相のトランジスタのスイッチング制御の1周期と、第2の相のトランジスタのスイッチング制御の1周期とは、相互に半周期だけずらされる。
【0026】
電力変換部13は、回転電機14に接続される。電力変換部13は、例えば、直流電力と交流電力との変換を行う電力変換器を備える。電力変換器は、例えば、第2素子モジュールと、電圧平滑用のキャパシタとを備える。
第2素子モジュールは、例えば、3相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第2ブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタである。整流素子は、例えば、各トランジスタに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタは、第2ブリッジ回路に並列に接続される。
【0027】
第2素子モジュールは、電力の授受によって回転電機14の動作を制御する。第2素子モジュールは、例えば回転電機14の力行時には、正極及び負極の直流端子から入力される直流電力を3相交流電力に変換して、3相交流電力を3相の交流端子から回転電機14に供給する。第2素子モジュールは、回転電機14の3相のステータ巻線への通電を順次転流させることによって回転駆動力を発生させる。
第2素子モジュールは、例えば回転電機14の回生時には、回転電機14の回転に同期がとられた各相のスイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)の駆動によって、3相のステータ巻線から入力される3相交流電力を直流電力に変換する。第2素子モジュールは、3相交流電力から変換された直流電力を、蓄電電圧変換部12を介して蓄電装置11に供給することが可能である。
【0028】
回転電機14は、例えば、車両の走行駆動用に設けられる3相交流のブラシレスDCモータである。回転電機14は、界磁用の永久磁石を有する回転子と、回転子を回転させる回転磁界を発生させる3相のステータ巻線を有する固定子とを備える。3相のステータ巻線は、電力変換部13の3相の交流端子に接続される。
回転電機14は、電力変換部13から供給される電力により力行動作することによって回転駆動力を発生させる。回転電機14は、例えば、車両の車輪に連結可能である場合、電力変換部13から供給される電力により力行動作することによって走行駆動力を発生させる。回転電機14は、車両の車輪側から入力される回転動力により回生動作することによって発電電力を発生させてもよい。回転電機14は、車両の内燃機関に連結可能である場合、内燃機関の動力によって発電してもよい。
【0029】
受電部15は、受電電力変換部16に接続される。受電部15は、例えば、磁界共鳴又は電磁誘導などの磁界結合により、送電部8から伝えられる高周波の磁界の変化によって電力を受け取る。図2に示すように、受電部15は、例えば、直列に接続される二次側コイル15a、二次側抵抗15b及び二次側キャパシタ15cによって形成される共振回路を備える。受電部15は、例えば、共振回路に流れる電流Irを検出する電流センサ等のセンサを備える。
【0030】
図1に示す受電電力変換部16は、電力変換部13に接続される。受電電力変換部16は、交流電力を直流電力に変換する、いわゆるフルブリッジレス型(又はブリッジレス及びトーテムポール型)の力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路を備える。いわゆるブリッジレスPFCは、ブリッジ接続される複数のダイオードによるブリッジ整流器を備えていないPFCであって、いわゆるトーテムポールPFCは、同方向に直列に接続(トーテムポール接続)される同一導電型の一対のスイッチング素子を備えるPFCである。
【0031】
受電電力変換部16は、例えば、2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第3ブリッジ回路と、電圧平滑用のキャパシタとを備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタである。整流素子は、例えば、各トランジスタに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタは、第3ブリッジ回路に並列に接続される。
【0032】
例えば、受電部15及び受電電力変換部16を備える受電装置4は、送電装置2による電力伝送の周波数の情報に応じて、受電電力変換部16の各スイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)のスイッチングを制御することによって、送電装置2から伝送される電力を受け取る。
【0033】
制御装置17は、例えば、車両の駆動制御装置3及び受電装置4を統合的に制御する。制御装置17は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECUである。なお、制御装置17の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0034】
制御装置17は、例えば、各スイッチング素子をオン(導通)及びオフ(遮断)に駆動するタイミングを示す制御信号を生成するとともに、制御信号に基づいて各スイッチング素子を実際にオン及びオフに駆動するためのゲート信号を生成する。
例えば、制御装置17は、受電装置4の各スイッチング素子のスイッチングを制御することによって、送電装置2から受け取る交流電力を直流電力に整流しつつ、入力電圧及び入力電流の力率改善を行う。
【0035】
例えば、制御装置17は、受電装置4の複数のスイッチング素子を同期的にオン及びオフに駆動する同期整流動作と、二次側コイル15aを短絡する短絡動作とによって、目標出力に応じた出力を制御する。
例えば、制御装置17は、送電装置2から送られる電力によって受電部15に発生する電流、つまり二次側コイル15aに流れる電流Irの大きさ及び位相に応じて同期整流動作を制御する。制御装置17は、受電電力変換部16の複数のスイッチング素子を、いわゆるゼロ電圧スイッチング(ZVS:Zero Voltage Switching)のソフトスイッチングで制御する。ゼロ電圧スイッチング(ZVS)では、各スイッチング素子は、各相のデッドタイム期間のオフ状態での出力容量(寄生容量)の放電によって両端電圧がゼロにされてからターンオン(オフ状態からオン状態への切り換え)が実行される。
例えば、制御装置17は、受電電力変換部16の各相のハイサイドアームでゼロ電圧スイッチング(ZVS)の同期整流動作を継続させつつ、各相のローサイドアームのみオンにすることで短絡動作を制御する。
【0036】
例えば、制御装置17は、送電装置2による電力伝送に要求する周波数(要求周波数)を、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの間の距離に関連する車両の最低地上高及び車両での受電装置4の搭載レイアウト、送電装置2と受電装置4との間の電力伝送の状態、電力伝送の所望の効率及び出力(電力)等に基づいて設定する。
制御装置17は、送電装置2と車両との間の適宜の通信によって、要求周波数を送電装置2に送信する。送電装置2と車両との間の通信は、例えば、送電装置2及び受電装置4の各コイル8a,15a間での誘起電圧による通信又は送電装置2及び車両の各々に追加的に設けられる通信装置による無線通信等である。
【0037】
実施形態のコイルユニット10は、例えば、車両に搭載される受電装置4の受電部15と、制御装置17とを備える。
図3は、実施形態での送電装置2の一次側コイル8aと受電装置4の二次側コイル15aとを示す斜視図である。
図3に示すように、所定の同一方向Fから見る状態にて、受電装置4の二次側コイル15aの巻き方向は、送電装置2の一次側コイル8aの巻き方向に対して逆方向に設定される。所定の同一方向Fは、例えば、一次側コイル8a及び二次側コイル15aの対向する方向等である。つまり、送電装置2の一次側コイル8aと受電装置4の二次側コイル15aとは、電力伝送時に互いに逆相の通電電流を生じさせるように設けられる。
【0038】
図4は、実施形態のコイルユニット10でのインピーダンスZと周波数との対応関係の例を示すグラフ図である。図4に示す実線は電力伝送の効率が最大となる最適負荷抵抗を有する場合であり、破線は負荷抵抗が無い場合である。
図4に示すように、実施形態のコイルユニット10でのインピーダンスZの周波数特性は、受電装置4の直列に接続される二次側コイル15a、二次側抵抗15b及び二次側キャパシタ15cによって形成される共振回路に応じた2つの共振点を有する。低周波側でインピーダンスZが極小となる共振点RPLは同相の共振モードを示し、高周波側でインピーダンスZが極小となる共振点RPHは逆相の共振モードを示す。2つの共振点RPL,RPHの間でインピーダンスZが極大となる反共振点ARPは同相の共振モードと逆相の共振モードとの切り換わりを示す。
【0039】
コイルユニット10での二次側キャパシタ15cの容量は、例えば、所定の常温状態で高周波側の共振点RPHに対応する周波数(高周波モードの周波数)fhiが、送電装置2の要求周波数となるように設定される。
例えば、下記数式(1)に示すように、高周波モードの周波数fhiと、一次側コイル8a及び二次側コイル15aの各々の固有周波数fとは、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの結合係数kによって記述される。なお、固有周波数f0は、例えば、85kH等の所定周波数に設定される。
【0040】
【数1】
【0041】
上記数式(1)に基づき、共振点を高周波モードの周波数fhiに合わせるために、一次側キャパシタ8cの容量C1及び二次側キャパシタ15cの容量C2は、下記数式(2)に示すように設定される。下記数式(2)において、各容量C1,C2は、高周波モードの周波数fhiと、一次側コイル8aの自己インダクタンスLと、二次側コイル15aの自己インダクタンスLと、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの結合係数kとによって記述される。
制御装置17は、インピーダンスZの周波数特性での2つの共振点RPL,RPHのうち高周波側の共振点RPHに対応する周波数fhiを、送電装置2による電力伝送に対する要求周波数に設定する。
【0042】
【数2】
【0043】
図5は、実施形態のコイルユニット10でのインピーダンス及び位相と周波数との対応関係の実測例を示すグラフ図である。図5に示すインピーダンス及び位相は、例えば、所定抵抗値(例えば、1Ω等)のシャント抵抗にて、受電部15の共振回路に流れる電流Irを計測することによって得られる。
図5に示すように、高周波モードの周波数fhiで位相差がゼロ及びインピーダンスが極小になること、つまり共振点となることが認められる。
【0044】
図6は、実施形態のコイルユニット10及び第1比較例の各々での磁束密度分布(一次側コイル8a及び二次側コイル15aの対向方向に平行な断面での磁束密度分布)の例を示す図である。実施形態のコイルユニット10では、二次側キャパシタ15cの容量は高周波側の共振点RPHに対応する容量C2に設定される。第1比較例では、二次側キャパシタ15cの容量は反共振点ARPに対応する容量に設定される。
図6に示すように、例えば一次側コイル8aの近傍領域A等において、第1比較例では、主磁束を打ち消すような漏洩磁束が生じることによって、二次側コイル15aへ伝達される磁束が減少することが認められる。これに対して実施形態では、主磁束を阻害するような漏洩磁束の発生が抑制されることによって、二次側コイル15aへ伝達される磁束の減少が抑制されることが認められる。
【0045】
図7は、実施形態のコイルユニット10及び第2比較例の各々での結合係数kと、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの間のギャップとの対応関係の例を示すグラフ図である。図8は、実施形態のコイルユニット10及び第2比較例の各々での磁束密度分布(一次側コイル8a及び二次側コイル15aの対向方向に平行な断面での磁束密度分布)の例を示す図である。
実施形態のコイルユニット10では、送電装置2の一次側コイル8aと受電装置4の二次側コイル15aとは、電力伝送時に互いに逆相の通電電流を生じさせるように、いわゆる差動型に設けられる。第2変形例では、送電装置2の一次側コイル8aと受電装置4の二次側コイル15aとは、電力伝送時に互いに同相の通電電流を生じさせるように、いわゆる和動型に設けられる。第2変形例では、対向方向等の所定の同一方向から見る状態にて、受電装置4の二次側コイル15aの巻き方向は、送電装置2の一次側コイル8aの巻き方向に対して同方向に設定される。
【0046】
図7に示すように、実施形態では、第2変形例に比べて、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの間のギャップの増大に伴う結合係数kの低下が抑制されていることが認められる。
下記数式(3)に示すように、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの結合係数kは、磁界結合係数kmと電界結合係数kcとの差によって記述される。実施形態では、差動型により磁界結合と電界結合による位相をずらすことによって、各結合係数km,kcの打ち消し合いを抑制し、電界結合による結合係数kの低減を抑制する。
【0047】
【数3】
【0048】
図8に示すように、例えば一次側コイル8a及び二次側コイル15aの周辺領域B等において、第2比較例では、不要な放射によって周辺の磁束密度が増大していることが認められる。これに対して実施形態では、不要な放射が低減されていることによって、周辺の磁束密度の増大が抑制されていることが認められる。
【0049】
上述したように、実施形態のコイルユニット10によれば、一次側コイル8aに対して逆相の通電電流を生じさせる二次側コイル15aを備えることによって、磁界結合と電界結合による位相をずらし、磁界結合係数kmと電界結合係数kcの打ち消し合いを抑制することができる。電界結合による結合係数kの低減を抑制することによって、出力密度を向上させることができる。
例えば一次側コイル8aに対して同相の通電電流を生じさせる二次側コイルを備える場合に比べて、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの間のギャップの増大に伴う結合係数kの低下を抑制することができ、結合係数kを向上させることができる。さらに、一次側コイル8a及び二次側コイル15aの周辺の磁束密度が不要な放射によって増大することを抑制することができる。
【0050】
所定の同一方向Fから見る状態にて、受電装置4の二次側コイル15aの巻き方向は、送電装置2の一次側コイル8aの巻き方向に対して逆方向に設定されることによって、一次側コイル8aに対して逆相の通電電流を生じさせる二次側コイル15aを容易に設けることができる。
【0051】
二次側キャパシタ15cの容量は、インピーダンスZの周波数特性での2つの共振点RPL,RPHのうち高周波側の共振点RPHに対応する容量C2に設定されることにより、例えば二次側キャパシタ15cの容量が反共振点ARPに応じて設定される場合に比べて、主磁束を阻害するような漏洩磁束の発生を抑制することができる。漏洩磁束による結合係数kの低下を抑制して、二次側コイル15aへ伝達される磁束の減少を抑制することによって、出力密度を向上させることができる。
高周波側の共振点RPHに対応する周波数を、送電装置2による電力伝送の要求周波数に設定する制御装置17を備えることにより、非接触電力伝送での出力密度の増大及び不要放射の低減によって、結合係数kを向上させることができる。
【0052】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
上述した実施形態では、非接触電力伝送システム1は、蓄電装置11の入出力電力を変換する蓄電電圧変換部12を備えるとしたが、これに限定されず、蓄電電圧変換部12は省略されてもよい。
例えば、蓄電装置11及び内燃機関を動力源として駆動するハイブリッド車両等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備え、蓄電装置11を動力源として駆動する電気自動車等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていなくてもよい。
【0053】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1…非接触電力伝送システム、2…送電装置、3…駆動制御装置、4…受電装置、6…電源部、7…送電電力変換部、8…送電部、8a…一次側コイル(送電側コイル)、10…コイルユニット、11…蓄電装置、12…蓄電電圧変換部、13…電力変換部、14…回転電機、15…受電部、15a…二次側コイル(コイル)、15c…二次側キャパシタ(キャパシタ)、16…受電電力変換部、17…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8