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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131368
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   H10B 63/10 20230101AFI20240920BHJP
   H10N 70/20 20230101ALI20240920BHJP
【FI】
H10B63/10
H10N70/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041586
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 大三郎
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083FZ10
5F083GA10
5F083JA36
5F083JA37
5F083JA39
5F083JA60
5F083KA01
5F083KA05
5F083KA11
5F083LA12
5F083LA16
5F083LA20
5F083MA06
5F083MA16
5F083ZA01
5F083ZA13
(57)【要約】
【課題】一つの実施形態は、柔軟に設計できる半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【解決手段】一つの実施形態によれば、積層体と柱状構造体とを有する半導体記憶装置が提供される。積層体は、複数の導電層が互いに離間して積層される。柱状構造体は、積層体内を積層方向に延びる。柱状構造体は、抵抗変化膜と半導体膜と絶縁膜と抵抗膜とを有する。抵抗変化膜は、積層体内を積層方向に延びる。半導体膜は、抵抗変化膜と導電層との間で積層方向に延びる。絶縁膜は、半導体膜と導電層との間で積層方向に延びる。抵抗膜は、抵抗変化膜と半導体膜との間で積層方向に延びる。複数の導電層と抵抗変化膜及び半導体膜とが交差する複数の交差位置に複数のメモリセルが形成される。複数のメモリセルのそれぞれにおいて、抵抗膜は、抵抗変化膜より厚い。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電層が絶縁層を介して積層された積層体と、
前記積層体内を積層方向に延びる柱状構造体と、
を備え、
前記柱状構造体は、
前記積層体内を前記積層方向に延びる抵抗変化膜と、
前記抵抗変化膜と前記導電層との間で前記積層方向に延びる半導体膜と、
前記半導体膜と前記導電層との間で前記積層方向に延びる絶縁膜と、
前記抵抗変化膜と前記半導体膜との間で前記積層方向に延びる抵抗膜と、
を有し、
前記複数の導電層と前記抵抗変化膜及び前記半導体膜とが交差する複数の交差位置に複数のメモリセルが形成され、前記複数のメモリセルのそれぞれにおいて、前記抵抗膜は、前記抵抗変化膜より厚い
半導体記憶装置。
【請求項2】
前記抵抗変化膜は、相変化材料で形成され、
前記抵抗膜は、高抵抗材料で形成される
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記抵抗膜は、相変化しない
請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記抵抗膜は、Ge原子を含む
請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記抵抗膜は、P、As、Sb、Biを含む群から選択される1以上の元素を不純物としてさらに含む
請求項4に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記抵抗膜の電気伝導率は、4S/cm以上40S/cm以下である
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記複数の導電層と前記半導体膜とが交差する複数の位置に複数のメモリセルが形成され、
前記複数のメモリセルのうち選択メモリセルに対応する導電層に印加される電圧は、非選択メモリセルに対応する導電層に印加される電圧より低い
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
前記半導体膜は、
前記導電層に対応する第1の部分と、
前記第1の部分に対して前記積層方向に隣接する第2の部分と、
を有し、
前記第1の部分の厚さは、前記第2の部分の厚さより薄い
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記抵抗膜の厚さは、10nm以上である
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の導電層が互いに離間して積層された積層体内を抵抗変化膜及び半導体膜が積層方向に延びる半導体記憶装置では、複数の導電層と抵抗変化膜及び半導体膜とが交差する複数の交差位置に複数のメモリセルが形成される。半導体記憶装置では、柔軟に設計できることが望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】V. Sousa, G. Navarron. Castellani, M. Coue, O. Cueto, C. Sabbione, P. Noe1, L. Perniola, S. Blonkowski, P. Zuliani, R. Annunziata “Operation Fundamentals in 12Mb Phase Change Memory Based on Innovative Ge-rich GST Materials Featuring High Reliability Performance”, 2015 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers, p.T98-T99
【非特許文献2】Huai-Yu Cheng, Simone Raoux and Yi-Chou Chen, “The impact offilm thickness and melt-quenched phase on the phasetransition characteristics of Ge2Sb2Te5”, J. Appl. Phys. 107, 074308 (2010), p.074308-1 to 074308-9
【非特許文献3】鳩山道夫, “第1編 電子工業材料, 半導体材料”, 材料試験」第6巻第41号, p. 60-69
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、柔軟に設計できる半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、積層体と柱状構造体とを有する半導体記憶装置が提供される。積層体は、複数の導電層が互いに離間して積層される。柱状構造体は、積層体内を積層方向に延びる。柱状構造体は、抵抗変化膜と半導体膜と絶縁膜と抵抗膜とを有する。抵抗変化膜は、積層体内を積層方向に延びる。半導体膜は、抵抗変化膜と導電層との間で積層方向に延びる。絶縁膜は、半導体膜と導電層との間で積層方向に延びる。抵抗膜は、抵抗変化膜と半導体膜との間で積層方向に延びる。複数の導電層と抵抗変化膜及び半導体膜とが交差する複数の交差位置に複数のメモリセルが形成される。複数のメモリセルのそれぞれにおいて、抵抗膜は、抵抗変化膜より厚い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る半導体記憶装置の概略構成を示す図。
図2】実施形態におけるストリングの構成を示す回路図。
図3】実施形態におけるメモリセルアレイの構成を示す斜視図。
図4】実施形態におけるメモリセルアレイの構成を示す断面図。
図5】実施形態におけるメモリセルの構成を示す断面図、平面図、及び回路図。
図6】実施形態におけるメモリセルの電流経路を示す図。
図7】実施形態の第1の変形例における抵抗膜の特性を示す図。
図8】実施形態の第2の変形例におけるライト時の選択メモリセル付近の電流密度分布を示す図。
図9】実施形態の第2の変形例におけるライト時の選択メモリセル付近の温度分布を示す図。
図10】実施形態の第3の変形例におけるライト時の抵抗変化膜の温度分布を示す図。
図11】実施形態の第4の変形例におけるライト時のストリングSTR内の抵抗分圧を示す図。
図12】実施形態の第5の変形例におけるリード時のメモリセルのセット・リセット状態間の電流変化を示す図。
図13】実施形態の第5の変形例におけるリード時のメモリセルのセット・リセット状態の電流経路を示す図。
図14】メモリセルアレイの構成を示す断面図。
図15】ストリング内の抵抗分圧を示す図。
図16】メモリセルの動作抵抗条件を示す図。
図17】抵抗変化膜の特性を示す図。
図18】抵抗膜が抵抗変化膜より薄い場合におけるメモリセルの電流経路を示す図。
図19】ライト時の抵抗変化膜の温度分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる半導体記憶装置を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(実施形態)
実施形態にかかる半導体記憶装置は、複数の導電層が絶縁層を介して積層された積層体内を抵抗変化膜及び半導体膜が積層方向に延び、複数の導電層と抵抗変化膜及び半導体膜とが交差する複数の交差位置に複数のメモリセルが形成されるが、柔軟に設計できるようにするための工夫が施される。
【0009】
半導体記憶装置は、半導体メモリとも呼ばれる。半導体メモリは、大型コンピュータの主記憶から、パーソナルコンピュータPC、家電製品、携帯電話等、至る所で利用されている。半導体メモリの種類としては、揮発性のDRAM(DynamicRAM)、SRAM(StaticRAM)、不揮発性のMROM(MaskROM)、NAND型フラッシュメモリ、NOR型フラッシュメモリ等のFlash EEPROM等が市場に出まわっている。
【0010】
DRAMは揮発性メモリであるにも関らず、その低コスト性(SRAMに比べてセル面積が1/4未満)、高速性(FlashEEPROMより速い)の点で優れており、PC市場、携帯市場で大きなマーケットを有する。
【0011】
一方、書き換え可能で電源を切ることが可能な不揮発性のFlash EEPROMは、近年、携帯電話や、各種カード、SSD等で市場が非常に大きくなりつつある。特に3次元フラッシュメモリは、コントロールゲート(ワード線)を積層後、穴を一括で形成してメモリセルを埋め込む為、コスト削減が可能になり、現在のマーケットの主流になっている。
【0012】
しかし、動作を保証可能な書き換え回数(W/E回数)が10の4乗から3乗回程度しかなく、書き込む時間がマイクロ秒、ミリ秒程度必要で、しかも高い12V~22Vの電圧が必要で、微細化の点、性能の点で改善の余地がある。
【0013】
これに対して、新規メモリとして、近年、強誘電体メモリ(FeRAM)、磁気抵抗メモリ(MRAM)、相変化メモリ(PCM)、抵抗変化メモリ(ReRAM)等の開発が盛んである。この内、MRAM、PCM、ReRAMは、メモリセルの情報記憶素子の抵抗を変化させることにより、情報を記憶する。
【0014】
磁気抵抗メモリ(MRAM)はこの抵抗変化率が200%程度と小さい上、反磁界の問題があり、スケーリングが困難であるが、相変化メモリ(PCM)、抵抗変化メモリ(ReRAM)は抵抗値が2桁から5桁変化し、多値化が可能な点、記憶素子サイズ縮小により、書込み電流、読み出し電流が削減出来、高集積化に向く点等、NOR型フラッシュメモリ、NAND型フラッシュメモリの代替になる可能性がある。これらPCM,ReRAM等の抵抗変化メモリは、3次元積層することでNAND型フラッシュメモリ以上に低コスト化出来るポテンシャルをもつ。
【0015】
これらを3次元積層する方式として、積層体内を柱状構造体が積層方向に延びる抵抗変化型で不揮発性の半導体記憶装置が考えられる。積層体では、ワード線としての導電層と絶縁層とが基板に垂直な方向に交互に複数層積層される。積層体が基板に垂直な方向に穴開口された内部に柱状構造体が形成される。柱状構造体では、穴開口の外周から内周に向かって、ゲートとしての絶縁膜(ゲート絶縁膜)、チャネルとしての半導体膜(チャネル半導体膜)、相変化材料等の抵抗変化膜、コアとしての絶縁膜(コア絶縁膜)が順に成膜され構成される。複数の導電層と抵抗変化膜及び半導体膜とが交差する複数の交差位置に複数のメモリセルが形成される。複数のメモリセルがチェーン状に接続されチェーン型の3次元構造(等価回路的にトランジスタと相変化材料の並列接続を複数直列接続した構造)が形成される。
【0016】
動作としては、選択メモリセルのセルトランジスタをオフし、非選択メモリセルのセルトランジスタをオンする。ワード線WL0~WLn(nは、任意の2以上の整数)のうち、ワード線WL2のセルを選択する場合、ストリング選択信号SG,非選択ワード線WL0~WL1,WL3~WLnに対応するトランジスタをオンさせ、選択ワード線WL2に対応するトランジスタをオフさせる。ソース線SL=0V、ビット線BL=Highにして、ストリングに電圧を印可する。
【0017】
抵抗変化膜の抵抗がチャネル半導体膜のオン抵抗に比べて十分大きい場合、非選択メモリセルでオンしているトランジスタはチャネル半導体膜に電流が流れ、選択メモリセルでオフしているトランジスタではチャネル半導体膜に電流が流れず、抵抗変化膜に迂回して電流が流れる。
【0018】
このため、ライト動作では、ストリングの任意のメモリセルの抵抗変化膜に電流、電圧を印可でき、抵抗変化膜を発熱させ、昇温できるので、抵抗変化膜の抵抗値を高抵抗―>低抵抗(セット動作)、又は、低抵抗―>高抵抗(リセット動作)に遷移させることができる。
【0019】
リード動作では、同様にビット線BL-ソース線SL間に電圧を印可して、選択メモリセルの抵抗変化膜の抵抗値をリードすることができる。
【0020】
しかし、選択メモリセルの抵抗変化膜の抵抗がチャネル半導体膜のオン抵抗にほぼ等しい場合、非選択メモリセルの抵抗変化膜にも電流が流れ発熱し誤動作する可能性がある。
【0021】
選択メモリセルの抵抗変化膜の抵抗がチャネル半導体膜のオン抵抗より低いと、ビット線BL-ソース線SL間に印可された電圧に対する選択メモリセルの抵抗変化膜の分圧が十分で無く下がる為、発熱せず動作しなくなる可能性がある。
【0022】
すなわち、チェーン型の3次元構造の相変化メモリなどの半導体記憶装置においては、相変化材料等の抵抗変化膜の抵抗がチャネル半導体膜のオン抵抗に比べて十分大きいことが求められ得る。これは、相変化材料の等の抵抗変化膜の原子材料、組成に制約が生じるという課題をもたらす。
【0023】
上記の課題を解決するために、半導体記憶装置においては、次のような構成(1)~(7)を採用可能である。
【0024】
(1)半導体記憶装置において、積層体内を柱状構造体が積層方向に延びる。積層体では、複数のワード線と絶縁層が基板の垂直方向に交互に複数層積層される。積層体が基板垂直方向に穴開口された内部に柱状構造体が形成される。柱状構造体では、外周から中心に向かって、ゲート絶縁膜、チャネル半導体膜、抵抗膜、抵抗変化膜、コア絶縁膜が順に成膜され構成される。複数の導電層と抵抗変化膜及びチャネル半導体膜とが交差する複数の交差位置に複数のメモリセルが形成される。各メモリセルにおいて、抵抗膜の厚みは、抵抗変化膜の厚みより厚い。
【0025】
(2)構成(1)において、抵抗変化膜は、相変化材料で形成され、抵抗膜は、相変化しない高抵抗材料で形成されてもよい。
【0026】
(3)構成(2)において、抵抗膜は、Ge原子を含み、Ge原子にP、As、Sb、Biを含む群から選択される1以上の元素を不純物としてさらに含んでもよい。
【0027】
(4)構成(2)において、抵抗膜の電気伝導率は、4S/cm以上40S/cm以下であってもよい。
【0028】
(5)構成(2)において、複数のメモリセルのうち選択メモリセルに対応する導電層(ワード線)に印加される電圧は、非選択メモリセルに対応する導電層(ワード線)に印加される電圧より低い。
【0029】
(6)構成(2)において、導電層(ワード線)と接する部分の半導体膜(チャネル)の厚みは、絶縁層と接する部分の半導体膜の厚みより薄い。
【0030】
(7)構成(1)において、抵抗膜の厚みは、10nm以上であってもよい。
【0031】
構成(1)~(7)を採用可能である半導体記憶装置によれば、次の効果(A)~(D)を実現可能である。
【0032】
(A)構成(1)により、等価回路的に、各メモリセルは、セルトランジスタと高抵抗材料等の抵抗素子(抵抗膜)と相変化材料等の抵抗変化素子(抵抗変化膜)との並列接続で構成され、それが積層方向に直列接続されてストリングが構成される。この構成により、抵抗変化膜の抵抗率が所望の抵抗率からずれた場合でも、選択メモリセルで所望の発熱、昇温を発生させることができ、抵抗変化膜を所望の温度以上に加熱でき、その抵抗を変化させることが可能となる。これにより、抵抗変化膜に適用可能な材料の範囲を拡大できる。
【0033】
(B)動作としては、選択ワード線を低い電位に設定し選択セルトランジスタをオフさせ、その他非選択メモリセルはワード線を高い電位に設定し非選択メモリセルのセルトランジスタをオンさせる。ストリングの両端に電圧を印可すると、非選択メモリセルでは、オンしているチャネル半導体膜に電流が流れ、抵抗膜に阻まれて抵抗変化膜の側には電流が流れ難く、非選択メモリセルの抵抗変化膜の相変化が起こらず記憶データが保持される。選択メモリセルにおいては、セルトランジスタがオフしてチャネル半導体膜が超高抵抗になる為、仕方なく抵抗変化膜側に電流が流れ、抵抗膜が10nm以上と厚く、抵抗変化膜の厚みが抵抗膜より薄い為、チャネル半導体膜から抵抗膜に侵入した電流が抵抗変化膜に抜ける電流は少なく、抵抗膜に流入した電流の大部分は、積層方向に流れ、選択セルトランジスタのオフが終了しチャネル半導体膜の抵抗が下がる隣接セルとの境界でチャネル半導体膜側に戻る。そして非選択メモリセルのチャネル半導体膜を通してセルストリング端に電流が流出する。
【0034】
(C)効果(B)により、選択メモリセルでは、主に抵抗膜に流れる電流Iと抵抗膜に印可される電圧Vによる発熱P=IVによる昇温により隣接の抵抗変化膜を所望の温度(例えば、900K程度)に昇温させ抵抗変化膜を溶融させた後、ストリング両端の電位差をゆっくり減少させ徐冷することにより結晶状態に出来、抵抗値を低抵抗にする(セット動作させる)ことが出来る。あるいは、溶融後、ストリング両端の電位差を急激に減らし急冷することにより、アモルファス状態にすることができ、高抵抗にする(リセット動作させる)ことが出来る。
【0035】
(D)効果(C)により、相変化材料等の抵抗変化膜の電気抵抗率が有る程度低くても高抵抗材料等の抵抗膜が厚いと電流が抵抗変化膜に流れず動作が可能となる。例えば、GeSbTe等の相変化材料は溶融点付近に昇温すると電気抵抗率が下がる傾向があるので本実施形態は有効と言える。
【0036】
なお、抵抗変化膜の膜厚に比べて抵抗膜の膜厚が厚いと有効であるし抵抗膜の膜厚が10nm以上であると有効である。
【0037】
また、抵抗膜の材料は、電気伝導率が4S/cm~40S/cm程度である材料が好ましく、例えば、Ge原子にP、As、Sb、Bi等の不純物が含まれる材料が有望である。GeはGeSbTeと整合性が良い。
【0038】
また、半導体記憶装置は、ワード線直下(基板に水平で開口穴の中央方向)のチャネル半導体膜の不純物ノードが低くセルトランジスタがカットオフし易く、ワード線間の絶縁層直下のチャネル半導体膜の不純物ノードが高く且つ厚みが厚く、チャネル半導体膜から高抵抗材料に迂回する時のチャネル半導体膜の抵抗が低いものがより望ましい。
【0039】
以下、図面を参照として、実施形態を説明する前に、実施形態に関係する発明者の先願の問題と考案対処例の説明を簡潔に行う。
【0040】
先願のメモリセルアレイ905は、図14に示すように構成され得る。図14は、メモリセルアレイ905の構成を示す断面図である。図14では、ビット線BLの延在方向をY方向とし、メモリセルMCの積層方向をZ方向とし、Y方向及びZ方向に垂直な方向をX方向とする。メモリセルアレイ905は、基板(図示せず)の+Z側において、柱状のストリングSTRがXY方向に2次元的に配列されるとともに、積層体922が柱状のストリングSTRで貫通されて3次元的なメモリセルの配列として構成される。各ストリングSTRは、断面視において、中心から外側に向かって、コア絶縁膜942、抵抗変化膜943、チャネル半導体膜944、絶縁膜945が順に同心円状に配される。
【0041】
先願のメモリセルアレイ905における各メモリセルMCは、等価的に、セルトランジスタと抵抗変化素子との並列接続を含む。メモリセルを選択するには、選択ワード線WL2にLレベルを供給し、非選択ワード線WL0~WL1,WL3~WLn及び選択ゲートSGにHレベルを供給する。ソース線SL=0V、ビット線BL=Hレベルにする。これにより、選択メモリセルでセルトランジスタがオフして抵抗変化膜943に電圧が印加され、非選択メモリセルでセルトランジスタがオンして実質的に抵抗変化膜943に電圧が印加されない。
【0042】
この時、第一に、抵抗変化膜943の抵抗がチャネル半導体膜944のオン抵抗に比べて十分大きい場合、セルトランジスタがオンしている非選択メモリセルMCでは、チャネル半導体膜944に電流が流れる。セルトランジスタがオフしている選択メモリセルMCでは、チャネル半導体膜944に電流が流れず、抵抗変化膜943に迂回して電流が流れる。
【0043】
この時、第二に、選択メモリセルMCの抵抗変化膜943の抵抗が有る程度大きいと、図15(a)、図15(b)に示すように、ストリングSTRに印可された電圧ΔVALLに対してある程度の分圧ΔVSLが選択メモリセルMCの抵抗変化膜943に印可され発熱しリセット動作又はセット動作が実現出来る。選択メモリセルMCの抵抗変化膜943の抵抗が更に高いと、分圧ΔVSLは大きいが、電流が小さいため昇温は小さくなるし、抵抗変化膜943の抵抗が低いと、分圧ΔVSLが小さくなり、選択メモリセルMCでの発熱昇温が小さくなり動作しない。図15(a)は、チャネル半導体膜944の電位のZ位置に応じた変化をグラフで示し、図15(b)は、チャネル半導体膜944の電流密度分布のZ位置に応じた変化をYZ断面図で示す。図15(a)及び図15(b)は、互いにZ位置が揃えて示される。図15(a)及び図15(b)では、ワード線WL2に対応するメモリセルMCが選択メモリセルである場合が例示される。
【0044】
すなわち、図16に示すように、抵抗変化膜943の抵抗には、適正範囲が存在する。抵抗変化膜943の高抵抗状態の抵抗と低抵抗状態の抵抗とは、それぞれ、セルトランジスタのオン抵抗とオフ抵抗との間の値であることが求められる。図16は、動作抵抗条件を示す図である。セルトランジスタのオン抵抗は、セルトランジスタがオンしている状態におけるチャネル半導体膜944の抵抗である。セルトランジスタのオフ抵抗は、セルトランジスタがオフしている状態におけるチャネル半導体膜944の抵抗である。
【0045】
しかしながら、抵抗変化膜943の材料(例えば、相変化材料)は、図17(a)に示す様に高温で電気伝導率が上がる特徴がある。純粋なGeSbTe(GST)構造では900Kの溶融動作付近で所望の低い電気伝導率を得るのが難しい。
【0046】
また、相変化材料等の抵抗変化膜943へ不純物(例えば、Ge)をドーピングして、抵抗変化膜943の抵抗率を上げることで抵抗変化膜943を発熱させ所望の温度(例えば、900K付近)に昇温して溶融動作させることも考えられる。例えば、図17(b)は、非特許文献1で開示された相変化材料の抵抗率・温度特性であり、相変化材料へ不純物(例えば、Ge)をドーピングした場合の特性の変化を示す。図17(b)に示すように、GSTに不純物を入れて電気抵抗率を上げる方法は、不純物を過剰にドーピングすることになりやすいことなどにより、制御が難しい。
【0047】
あるいは、抵抗変化膜943を薄膜化し抵抗変化膜943の抵抗率を上げることで抵抗変化膜943を発熱させ所望の温度(例えば、900K付近)に昇温して溶融動作させることも考えられる。例えば、図17(c)は、非特許文献2で開示された相変化材料の抵抗率・温度特性であり、相変化材料の膜を薄膜化した場合の特性の変化を示す。この方法は、図17(c)に示す様に、GSTの膜厚や温度で電気抵抗率が変わる為、世代が変わる毎(メモリホールサイズが変わる毎)に電気抵抗率調整が必要になることなどにより、制御が難しい。
【0048】
上記問題に対して、図18に考察対処したメモリセルMCの構造例を示す。相変化材料等の抵抗変化膜943の電気抵抗率が所望の電気抵抗率より低い場合、チャネル半導体膜944aと抵抗変化膜943との間に高抵抗材料等の抵抗膜946を挿入させて、抵抗膜946で発熱させて昇温させる方式である。この例では8nmの抵抗変化膜943に対して2nmの抵抗膜946を挿入している。
【0049】
しかしながらこの構造では、点線の矢印で示すように、チャネル半導体膜944aから抵抗膜946に入った電流は、抵抗膜946が薄い為、選択メモリセルMCの上部で、抵抗の低い抵抗変化膜943に抜けて、選択メモリセルMCの下部で、また抵抗変化膜943から抵抗膜946を抜けて、チャネル半導体膜944aに流れてしまう。発熱ピークポイントが選択メモリセルMCの上下に発生し、選択メモリセルMCの抵抗変化膜943を集中的に昇温させにくいという問題が発生する。
【0050】
この様子を図19に示す。図19(a)から図19(d)に抵抗膜946の電気伝導率σ946を温度900Kで16(S/cm)→4(S/cm)→1(S/cm)→0.25(S/cm)と下げた場合について、図19(a)から図19(d)のそれぞれで抵抗変化膜943の電気伝導率σ943を振って、Z位置での温度を示す。
【0051】
図19(a)から図19(d)のそれぞれにおいて、実線は、抵抗変化膜943の電気伝導率σ943が温度900Kで16(S/cm)であり、温度300Kで0.266(S/cm)である場合におけるライト時の抵抗変化膜943の温度分布をZ方向に示す。点線は、抵抗変化膜943の電気伝導率σ943が温度900Kで80(S/cm)であり、温度300Kで1.33(S/cm)である場合におけるライト時の抵抗変化膜943の温度分布をZ方向に示す。一点鎖線は、抵抗変化膜943の電気伝導率σ943が温度900Kで320(S/cm)であり、温度300Kで5.3(S/cm)である場合におけるライト時の抵抗変化膜943の温度分布をZ方向に示す。二点鎖線は、抵抗変化膜943の電気伝導率σ943が温度900Kで960(S/cm)であり、温度300Kで16(S/cm)である場合におけるライト時の抵抗変化膜943の温度分布をZ方向に示す。
【0052】
図19(a)に示す様に、抵抗膜946の電気伝導率σ946=16S/cmであり抵抗変化膜943の電気伝導率σ943である場合、選択メモリセルのZ位置範囲ΔZSLでは、所望の温度Tth(例えば、900K程度)に昇温する。SGT等の抵抗変化膜943の電気伝導率σ943を16(S/cm)→80(S/cm)→320(S/cm)→960(S/cm)と上げていくと、ピーク温度が所望の温度Tthから下がってしまう。
【0053】
これに対して、図19(d)に示すように、抵抗膜946の電気伝導率σ946を0.25S/cmに下げて、抵抗変化膜943の電気伝導率σ943を960(S/cm)に上げると、抵抗膜946の部分で発熱するが、選択メモリセルMCの上下(この図では左右)で発熱が2分割され、結果として温度ピークが所望の温度Tth(例えば、900K程度)まで上がらない問題が発生する。
【0054】
次に、実施形態について説明する。実施形態に係る半導体記憶装置1は、図1に示すように構成され得る。図1は、半導体記憶装置1の概略構成を示す図である。半導体記憶装置1は、通信媒体2を介して、ホスト3と接続可能である。半導体記憶装置1は、例えば、抵抗変化型メモリである。通信媒体2は、例えば、シリアル通信線である。ホスト3は、例えば、コントローラ又はCPUである。半導体記憶装置1、通信媒体2、ホスト3を含む構成は、メモリシステム4として構成され得る。メモリシステムは、SDカード等のメモリカードでもよいし、SSD等のストレージシステムでもよいし、eMMCデバイスでもよい。ホスト3は、コントローラでもよいし、CPUでもよい。
【0055】
半導体記憶装置1は、メモリセルアレイ5、ロウデコーダ6、センスアンプ7、周辺回路8、及びインターフェース部(I/F部)13を有する。周辺回路8は、ドライバ9、シーケンサ10、アドレスレジスタ11、コマンドレジスタ12を含む。メモリセルアレイ5は、複数のメモリセルが配列される。複数のメモリセルは、複数のワード線と複数のビット線とを用いてアクセス可能である。複数のワード線は、それぞれがロウアドレスに対応付けられる。複数のビット線は、それぞれがカラムアドレスに対応付けられる。コマンドレジスタ12は、I/F部13を介してホスト3から受けるホスト要求に含まれるコマンドを保持する。アドレスレジスタ11は、I/F部13を介してホスト3から受けるホスト要求に含まれるアドレスを保持する。
【0056】
シーケンサ10は、コマンドレジスタ12に保持されるコマンドを実行し、メモリセルアレイ5に対するデータのライト動作又はリード動作を制御する。シーケンサ10による制御に応じて、ロウデコーダ6は、アドレスレジスタ11に保持されるアドレスをデコードし、デコードされたロウアドレスに対応するワード線を選択可能である。シーケンサ10による制御に応じて、ドライバ9は、ワード線を選択するための電圧を生成してロウデコーダ6へ供給する。シーケンサ10による制御に応じて、センスアンプ6は、アドレスレジスタ11に保持されるアドレスをデコードし、デコードされたカラムアドレスに対応するビット線を選択可能である。
【0057】
メモリセルアレイ5において複数のメモリセルを3次元的に配列することを考える場合、抵抗変化型メモリ、例えば相変化メモリ(PCM)に適用出来る構成として、鎖接続型メモリがあげられる。鎖接続型メモリでは、複数のメモリセルMC0~MCn(nは任意の4以上の整数)が直列接続されて図2に示すようなストリングSTRとして構成される。図2は、ストリングSTRの構成を示す回路図である。
【0058】
メモリセルMCは、抵抗変化素子Rと、抵抗素子r1と、セルトランジスタMT及び抵抗素子r2,r3の直列接続との並列接続を含む。抵抗変化素子Rは、一端が抵抗素子r2を介して抵抗素子r1の一端に接続される。抵抗変化素子Rは、他端が抵抗素子r3を介して抵抗素子r1の他端に接続される。
【0059】
メモリセルMCの一端は、セルトランジスタMTのソース(又はドレイン)、抵抗素子r1の一端、抵抗素子r2の一端にそれぞれ接続される。抵抗素子r2の他端は、抵抗変化素子Rの一端に接続される。メモリセルMCの他端は、セルトランジスタMTのドレイン(又はソース)、抵抗素子r1の他端、抵抗素子r3の一端にそれぞれ接続される。抵抗素子r3の他端は、抵抗変化素子Rの他端に接続される。
【0060】
抵抗変化素子Rは、高抵抗状態と低抵抗状態との間で抵抗値が変化可能であり、可変抵抗素子として機能する。抵抗変化素子Rの高抵抗状態の抵抗値をRHRとし、低抵抗状態の抵抗値をRLRとすると、抵抗素子r1,r2,r3の抵抗値r1,r2,r3は、次の数式1、数式2を満たす。
r1<r2+RHR+r3・・・数式1
r2+RLR+r3<r1・・・数式2
【0061】
数式1、数式2に動作抵抗条件(図16参照)を組み合わせると、次の数式3が成り立つ。
Ron<r2+RLR+r3<r1<r2+RHR+r3<Roff・・・数式3
【0062】
数式3において、Ronは、セルトランジスタMTのオン状態におけるチャネル半導体膜42の抵抗である。Roffは、セルトランジスタMTのオフ状態におけるチャネル半導体膜42の抵抗である。
【0063】
直列接続された複数のメモリセルMC0~MCnの一端にストリング選択トランジスタSGを介してビット線BLが接続され、他端にソース線SLが接続されて、ストリングSTRが構成される。各メモリセルMC0~MCnのセルトランジスタMTのゲートには、ワード線WL0~WLnが接続される。
【0064】
ロウデコーダ6は、複数のワード線WLのうち、選択ワード線WLに選択電圧VWSELを供給し、非選択ワード線WLに非選択電圧VWUSELを供給する。これにより、選択メモリセルMCのセルトランジスタMTがオフされ、非選択メモリセルMCのセルトランジスタMTがオンされる。センスアンプ7によりビット線BLとソース線SLとの間に電圧が印可されると、非選択メモリセルMCのセルトランジスタMTはオンしている為、非選択メモリセルMCの抵抗変化素子Rには電圧が印可されず、選択メモリセルMCのセルトランジスタMTはオフしているので、ビット線BL及びソース線SL間の印可電圧のほとんどが選択メモリセルMCの抵抗素子r1とセルトランジスタMT及び抵抗素子r2,r3の直列接続とに印可できる。
【0065】
これにより、抵抗変化素子Rが高抵抗状態であれば、数式1が成り立ち、選択メモリセルMCの電流が主として抵抗素子r1へ流れて抵抗素子r1が発熱し抵抗変化素子Rを所定温度まで昇温して溶融させ得る。これにより、選択メモリセルMCの抵抗変化素子Rへのデータのライトが出来る。
【0066】
あるいは、抵抗変化素子Rが低抵抗状態であれば、数式2が成り立ち、選択メモリセルMCの電流が主として抵抗変化素子Rへ流れて抵抗変化素子Rが発熱し所定温度まで昇温して溶融し得る。これにより、選択メモリセルMCの抵抗変化素子Rへのデータのライトが出来る。
【0067】
また、選択メモリセルMCの電圧V及び電流Iを検知することで、選択メモリセルMCの抵抗変化素子Rの抵抗を検知できるので、データのリードが出来る。
【0068】
この構造は、複数のメモリセルMCがチェーン状に接続された構成を含むため、3次元のフラッシュに類似した構造で実現出来る。
【0069】
3次元フラッシュ型のメモリセルアレイに対して、円筒状のチャネル半導体膜と板状のワード線WLとの間の絶縁膜を、電荷蓄積膜を含む絶縁膜から電荷蓄積膜を含まないゲート絶縁膜にし、円筒状のチャネル半導体膜の内側に抵抗変化膜を埋め込む。これにより、抵抗変化型のメモリセルアレイ5を3次元的に構成できる。この構成において、選択メモリセルMCのセルトランジスタMTを選択的にオフにすれば、選択メモリセルMCの抵抗変化膜(抵抗変化素子R)にアクセス可能になる。この様に3次元フラッシュ型のメモリセルアレイ5と同等に、複数のワード線WLを積層後、一括加工でメモリホールを形成し、メモリホール内にゲート絶縁膜、チャネル半導体膜、抵抗膜、抵抗変化膜等を埋め込めば形成出来、コストの大幅な削減が実現出来る。
【0070】
例えば、メモリセルアレイ5は、図3及び図4に示すように構成され得る。図3は、メモリセルアレイ5の概略構成を示す斜視図である。図4は、メモリセルアレイ5の構成を示す断面図である。図3及び図4では、ビット線BLの延在方向をY方向とし、メモリセルトランジスタMCの積層方向をZ方向とし、Y方向及びZ方向に垂直な方向をX方向とする。
【0071】
メモリセルアレイ5では、ワード線WLと絶縁層222とがZ方向に交互に複数回積層されて、積層体22が構成される。ワード線WLは、XY方向に略板状に延びる導電層で形成され得る。絶縁層222は、XY方向に略板状に延びる。積層体22がZ方向に穴開口されたメモリホール内にストリング(柱状構造体)STRが構成される。ストリングSTRでは、メモリホール内の外周から内周に向かって、ゲート絶縁膜、チャネル半導体膜、高抵抗材料等の抵抗膜、相変化材料等の抵抗変化膜、コア絶縁膜が順に成膜され構成される。複数のワード線(複数の導電層)WLとストリングSTRとが交差する複数の交差位置に複数のメモリセルが形成される。ストリングSTRは、XY方向に複数配列される。
【0072】
図3に示すように、基板21の+Z側において、柱状のストリングSTRがXY方向に2次元的に配列されるとともに、積層体22が柱状のストリングSTRで貫通されて3次元的なメモリセルの配列として構成される。
【0073】
この構造により、等価回路的に、各メモリセルMCは、セルトランジスタMTと抵抗膜に対応する抵抗素子r1と抵抗変化膜に対応する抵抗変化素子Rとの並列接続(図2参照)で構成され、それがZ方向に直列接続された鎖接続型のストリングSTRが構成される。
【0074】
ソース線SLは、XY方向に延びる板状の導電膜で構成される。ソース線SLは、金属を主成分とする材料で形成されてもよいし、導電性が付与された半導体で構成されてもよい。あるいは、ソース線SLは、図示しないが、基板21の表面近傍に配され、不純物を含み導電性が付与された半導体領域で構成されてもよい。ソース線SLは、所定の電位が周辺回路8から供給され得る。
【0075】
また、基板21の+Z側には、積層体22を含む複数の積層体が配され得る。複数の積層体は、分離部STを間にして互いにY方向にずれた位置に配され得る。分離部STは、少なくとも積層体22に接する面が絶縁物質で形成され、積層体22を他の積層体から電気的に分離している。分離部STは、XZ方向に沿って延びた略フィン形状を有する。なお、図示しないが、分離部STは、XZ方向に平板状の2つの絶縁部と、2つの絶縁部に挟まれたXZ方向に平板状の電極部とを有するように形成されてもよい。この電極部は、ソース線SLへの電圧の供給のための所定の配線の一部として用いられてもよい。
【0076】
積層体22では、ワード線WLと絶縁層222とが交互に繰り返し積層されている。ワード線WLは、XY方向に延びる板状の導電膜で構成される。積層体22では、複数のワード線WLがZ方向に互いに離間して配置されている。各ワード線WLは、導電物(例えば、タングステンなどの金属)を主成分とする材料で形成され得る。各絶縁層222は、絶縁物(例えば、シリコン酸化物)を主成分とする材料で形成され得る。
【0077】
積層体22の最上の絶縁層222には、ストリング選択線SGが積層されている。ストリング選択線SGは、XY方向に延びる板状の導電膜で構成される。ストリング選択線SGは、導電物(例えば、タングステンなどの金属)を主成分とする材料で形成され得る。各ストリング選択線SGは、分断膜SHEによりY方向に分断される。分断膜SHEは、ワード線WLの上方(+Z側)に設けられ、Y方向及びZ方向に延在し、積層体22の最上の絶縁層222に達している。分断膜SHEは、絶縁物(例えば、シリコン酸化物)で形成され得る。これにより、各ストリング選択線SGは、互いに電気的に絶縁される。
【0078】
ストリングSTRは、柱状であり、積層体22をZ方向に貫通する。各ストリングSTRは、Z方向に延びる。複数のストリングSTRは、XY方向に2次元的に配列され得る(図11参照)。各ストリングSTRは、柱状主部40bとワード線WLにおける柱状主部40bに交差する部分と柱状上部40aとストリング選択線SGにおける柱状上部40aに交差する部分とを含む。柱状上部40aは、柱状主部40bの+Z側に配され、柱状主部40bに接続されている。
【0079】
柱状上部40aとストリング選択線SGとが交差する位置には、ストリング選択トランジスタSGが構成される。柱状主部40bとワード線WLとが交差する位置には、メモリセルMCのセルトランジスタMTが構成される。
【0080】
柱状主部40bは、図5(a)及び図5(b)に示すように、コア絶縁膜42、抵抗変化膜43、抵抗膜46、チャネル半導体膜44、及び絶縁膜45を有する。図5(a)は、メモリセルMCの構成を示す断面図である。図5(b)は、メモリセルMCの構成を示す平面図であり、図5(a)をB-B線に沿って切った場合の断面を示す。図5(c)は、各メモリセルMCの等価回路を示す。
【0081】
コア絶縁膜42は、ストリングSTRの中心軸近傍に配され、ストリングSTRの中心軸に沿って延びている。コア絶縁膜42は、絶縁物(例えば、シリコン酸化物)を主成分とする材料で形成され得る。コア絶縁膜42は、ZY断面視において略I字形状を有し、ZX断面視において略I字形状を有する。
【0082】
抵抗変化膜43は、コア絶縁膜42とワード線WLとの間に配され、コア絶縁膜42を外側から囲むように配されストリングSTRの中心軸に沿って延びている。抵抗変化膜43は、相変化による抵抗変化特性を示す材料で形成され得る。例えば、抵抗変化膜43は、カルコゲナイド系の材料(Ge、Sb、Te)で形成され得る。抵抗変化膜43は、おおむね柱状であり、略円筒状の形状を有する。
【0083】
抵抗変化膜43は、動作抵抗条件(数式3参照)を満たすような材料及び/又は膜厚で形成され得る。抵抗変化膜43の高抵抗状態の抵抗と低抵抗状態の抵抗とは、それぞれ、セルトランジスタMTのオン抵抗とオフ抵抗との間の値であることが求められる。セルトランジスタMTのオン抵抗は、セルトランジスタMTがオンしている状態におけるチャネル半導体膜44の抵抗である。セルトランジスタMTのオフ抵抗は、セルトランジスタMTがオフしている状態におけるチャネル半導体膜44の抵抗である。
【0084】
抵抗膜46は、動作抵抗条件(数式3参照)を満たすような材料及び/又は膜厚で形成され得る。抵抗膜46は、抵抗変化膜43とチャネル半導体膜44との間に配され、抵抗変化膜43を外側から囲むように配されストリングSTRの中心軸に沿って延びている。抵抗膜46は、電気伝導率が4S/cm~40S/cm程度である材料で形成され得る。抵抗膜46は、例えば、Ge原子にP、As、Sb、Bi等の不純物が含まれる材料で形成される。Geは相変化材料(例えば、GeSbTe)と整合性が良い。抵抗膜46は、おおむね柱状であり、略円筒状の形状を有する。抵抗膜46の厚さは、抵抗変化膜43の厚さより厚い。
【0085】
チャネル半導体膜44は、抵抗変化膜43とワード線WLとの間に配され、抵抗膜46を外側から囲むように配されストリングSTRの中心軸に沿って延びている。チャネル半導体膜44は、半導体(例えば、ポリシリコン)を主成分とする材料で形成され得る。チャネル半導体膜44は、ワード線WLのZ位置で略円状の溝を有する略円筒状の形状を有する。チャネル半導体膜44は、メモリセルMCに対応する部分の厚さがメモリセルMC間に対応する部分の厚さより薄い。チャネル半導体膜44の下端(-Z側の端部)は、ソース線SLに電気的に接続される。
【0086】
絶縁膜45は、チャネル半導体膜44とワード線WLとの間に配され、抵抗変化膜43を外側から囲むように配されストリングSTRの中心軸に沿って延びている。絶縁膜45は、絶縁物(例えば、シリコン酸化物)を主成分とする材料で形成され得る。
【0087】
柱状主部40bでは、図5(a)に一点鎖線で囲って示すように、ワード線WLと交差する領域がメモリセルMCとして機能する。メモリセルMCとして機能する領域のうち、図5(a)にピッチの小さい点線で囲って示すように、ワード線WL/絶縁膜45/チャネル半導体膜44がストリングSTRの径方向に積層された部分がセルトランジスタMTとして機能し、図5(a)に2点鎖線で囲って示すように、抵抗変化膜43が抵抗変化素子Rとして機能する。図5(a)にピッチの大きい点線で囲って示すように、抵抗膜46が、抵抗変化素子Rに並列接続される抵抗素子r1及び抵抗変化素子Rに直列接続される抵抗素子r2,r3として機能する(図5(c)参照)。
【0088】
図4に示す柱状上部40aは、柱状主部40b上(+Z側)に配される。柱状上部40aは、ワード線WL0とストリング選択線SGとの間のZ位置からストリング選択線SGより高いZ位置まで延びている。柱状上部40aがストリング選択線SGと交差する位置には、ストリング選択トランジスタSGが構成される。柱状上部40aは、チャネル半導体膜44及び絶縁膜45を有する。
【0089】
ストリング選択線SGの上(+Z側)には、層間絶縁膜23が配されている。層間絶縁膜23は、絶縁物(例えば、シリコン酸化物)を主成分とする材料で形成され得る。
【0090】
層間絶縁膜23の上には、ビット線BLが配されている。ビット線BLは、Y方向に延びたライン状の導電膜で構成される。ビット線BLは、導電物(例えば、タングステン、銅、アルミニウムなどの金属)を主成分とする材料で形成され得る。
【0091】
ビット線BLとチャネル半導体膜44との間には、図示しないコンタクトプラグが配されていてもよい。この場合、コンタクトプラグは、上端でビット線BLに接触し、下端でチャネル半導体膜44に接触し、ビット線BL及びチャネル半導体膜44を電気的に接続することができる。コンタクトプラグは、導電物(例えば、タングステンなどの金属)を主成分とする材料で形成され得る。
【0092】
この構成により、相変化材料等の抵抗変化膜43の電気抵抗率が有る程度低くても高抵抗率材料等の抵抗膜46が抵抗変化膜43より厚ければ、抵抗変化膜43に流れず動作が可能となる。例えば、GeSbTe等の抵抗変化膜43は溶融付近に昇温すると電気抵抗率が下がる傾向があるので、本実施形態は有効と言える。本実施形態は、抵抗変化膜43の厚さに比べて抵抗膜46の厚さが厚いと有効であるし、抵抗膜46の厚さが10nm以上であると有効である。また、世代が進み抵抗変化膜43の厚みが変わって抵抗変化膜43の電気伝導率が変わっても動作する。即ち、抵抗変化膜43の動作可能な電気伝導率の範囲が広がる。また、本実施形態は、ワード線WLと略同じZ位置のチャネル半導体膜44の不純物ノードが低くセルトランジスタMTがカットオフし易く、ワード線WL間のZ位置のチャネル半導体膜44は不純物ノードが高く、厚みも厚い。チャネル半導体膜44から抵抗膜46に電流が迂回する時のチャネル半導体膜44の抵抗が低いものがより望ましい。
【0093】
例えば、選択メモリセルMCに対応するワード線WLを低い電位に設定し、選択メモリセルMCのセルトランジスタMTをオフさせる。非選択メモリセルMCに対応するワード線WLを高い電位に設定し、非選択メモリセルMCのセルトランジスタMTをオンさせる。ストリングSTRの両端に電圧を印可するとする。
【0094】
非選択メモリセルMCでは、図6(a)に点線で示すように、セルトランジスタMTがオン状態であり、チャネル半導体膜44に電流が流れ、抵抗膜46に阻まれて抵抗変化膜43には電流が流れ難い。非選択メモリセルMCでは、抵抗変化膜43の相変化が起こらず記憶データが保持される。図6は、メモリセルMCの電流経路を示す図であり、図6(a)は、非選択メモリセルMCの電流経路を示し、図6(b)は、選択メモリセルMCの電流経路を示す。
【0095】
選択メモリセルにおいては、図6(b)に点線で示すように、セルトランジスタMTがオフ状態であり、チャネル半導体膜44のチャネル領域44aが超高抵抗になる為、仕方なく抵抗膜46側に電流が流れる。抵抗膜46が例えば10nm以上と厚く、抵抗変化膜43の厚みが抵抗膜46より薄い為、チャネル半導体膜44から抵抗膜46に侵入した電流のうち、抵抗変化膜43に抜ける電流は少なく、その大部分は、抵抗膜46内をZ方向に流れる。電流は、選択セルトランジスタMTのチャネル領域44aをZ方向に通過し終わりチャネル半導体膜44の抵抗が下がる隣接メモリセルMCとの境界近傍のZ位置において、チャネル半導体膜44側に戻る。そして、電流は、非選択メモリセルMCのチャネル半導体膜44を通してストリングSTRの端部に流出する。
【0096】
上記動作により、選択メモリセルMCでは、主に抵抗膜46に流れる電流I及び抵抗変化膜43に印可される電圧Vに応じて発熱P=IVが発生する。発熱Pによる昇温により、隣接メモリセルMCの抵抗変化膜43が所望の温度Tth(例えば、900K程度)に昇温され抵抗変化膜43を溶融された後、ストリングSTR両端の電位差がゆっくり減少され徐冷される。これにより、抵抗変化膜43を結晶状態に出来、低抵抗状態に(セット動作)させることが出来る。
【0097】
あるいは、溶融後、ストリングSTR両端の電位差が急激に減らされ急冷されることにより、抵抗変化膜43をアモルファス状態に出来、高抵抗状態に(リセット動作)させることが出来る。
【0098】
以上のように、実施形態では、半導体記憶装置1の各ストリングSTRにおいて、抵抗膜46が抵抗変化膜43より厚い。複数のワード線(複数の導電層)WLとストリングSTRとが交差する複数の交差位置に複数のメモリセルが形成される。これにより、各メモリセルMCへのライト時に抵抗膜46に電流を流して発熱させ抵抗変化膜43を所望の温度Tth(例えば、900K以上)に昇温させることができ、徐冷(セット動作)又は急冷(リセット動作)させることができる。すなわち、各メモリセルMCへのライト時における発熱・昇温を主として抵抗膜46で行う。これにより、動作抵抗条件(数式3参照)による抵抗変化膜43の材料の制約を緩和でき、動作抵抗条件を満たしながら抵抗変化膜43に適用可能な材料の範囲を拡大できる。これにより、半導体記憶装置1において、各メモリセルMCへのライト動作の信頼性を向上しながら、その設計自由度を拡大できる。したがって、半導体記憶装置1を柔軟に設計できる。
【0099】
なお、実施形態の第1の変形例として、抵抗膜46は、数式3に示されるような動作抵抗条件を満たす任意の高抵抗材料で形成可能であり、例えば、図7(a)~図7(c)に示すようなGe原子を含む高抵抗材料で形成されてもよい。図7は、実施形態の第1の変形例における抵抗膜の材料を示す図である。図7(a)は、非特許文献3に記載された、300KにおけるGe原子の比抵抗と不純物濃度との関係を示す図である。図7(b)は、元素の周期律表である。図7(c)は、非特許文献3に記載された、Ge原子の電気伝導度の温度依存性を異なる複数の不純物濃度について示す図である。
【0100】
抵抗膜46は、所望の温度(例えば、900K以上)における電気伝導率が4S/cm以上40S/cm以下である材料が望ましい。図7(a)に示す300KにおけるGe原子の比抵抗の値から、900Kで電気伝導率が4S/cm以上40S/cm以下になり得る元素としてGe原子を例示することができる。抵抗膜46は、Ge原子を含んでもよい。Ge原子は抵抗変化膜43の材料(例えば、GeSbTe)と整合性が良い。
【0101】
抵抗膜46は、その電気伝導度を調節するために、さらに不純物を含んでもよい。チャネル半導体膜44がN型である場合、図7(b)の周期律表に太線で囲って示すように、抵抗膜46がN型半導体になる様にGe原子にP、As、Sb、Bi等の不純物が含まれる材料が有望である。抵抗膜46は、P、As、Sb、Biを含む群から選択される1以上の元素を不純物としてさらに含んでもよい。
【0102】
図7(a)で示される300Kの比抵抗と不純物濃度との関係と、図7(c)に示される電気伝導度の温度依存性とを考慮すると、抵抗膜46の不純物濃度(又は不純物密度)は、1e14/cm~1e16/cmが望ましい。
【0103】
このように、抵抗膜46が、Ge原子を含み、P、As、Sb、Biを含む群から選択される1以上の元素を不純物としてさらに含むことで、各メモリセルMCへのライト時に抵抗膜46に電流を流して発熱させ抵抗変化膜43を所望の温度(例えば、900K以上)に昇温させることが容易になる。すなわち、半導体記憶装置1において、各メモリセルMCへのライト時における発熱・昇温を主として抵抗膜46で適切に行うことができ、動作抵抗条件を満たしながら抵抗変化膜43に適用可能な材料の範囲を拡大できる。
【0104】
実施形態の第2の変形例として、選択メモリセルMCは、図8(c)、図9(c)に示すように動作してもよい。
【0105】
図8は、ライト時の選択メモリセル付近の電流密度分布を示す図である。図8(c)は、実施形態の第2の変形例における選択メモリセルMC付近の電流密度分布を示す。図8(a)は、図14に相当する構成における選択メモリセルMC付近の電流密度分布を示す。図8(b)は、図18の構成における選択メモリセルMC付近の電流密度分布を示す。
【0106】
図9は、ライト時の選択メモリセル付近の温度分布を示す図である。図9(c)は、実施形態の第2の変形例における選択メモリセルMC付近の温度分布を示す。図8(a)は、図14に相当する構成における選択メモリセルMC付近の電流密度分布を示す。図8(b)は、図18の構成における選択メモリセルMC付近の電流密度分布を示す。
【0107】
図14に相当する構成では、ストリングSTRが抵抗膜46を含まず抵抗変化膜943の外周がチャネル半導体膜944で覆われ、チャネル半導体膜944が図18のチャネル半導体膜944aに置き換わっている。図14に相当する構成では、ライト時(例えば、リセット動作時)において、図8(a)、図9(a)に示す様に、相変化材料(例えば、GST)等の抵抗変化膜943にある程度の電気抵抗率を有する材料を適用出来ると、抵抗変化膜943に迂回電流が流れ、抵抗変化膜943の抵抗で発熱して選択メモリセルMC部分を選択的に昇温させることが可能になる。ただし、これは、抵抗変化膜943に適用可能な材料がある程度の電気抵抗率を有する材料に限定されることになる。
【0108】
図18の構成では、ストリングSTRが抵抗変化膜943より薄い抵抗膜946を含む。図18の構成では、相変化材料等の抵抗変化膜943が所望の電気抵抗率より低くて、その替わりに例えば2nm程度の高抵抗材料の抵抗膜946を抵抗変化膜943とチャネル半導体膜944aとの間に挿入される。図18の構成では、ライト時(例えば、リセット動作時)において、図8(b)、図9(b)に示す様に、チャネル半導体膜944aから流入した電流は抵抗膜946を超えて抵抗変化膜943に直ぐに抜けてしまっている。これにより昇温温度が下がり、更に昇温範囲が広くブロードな温度上昇になってしまう。更に電流を増やして昇温しても隣接セル温度が上がり、動作特性のばらつき(Disturbance)を生じさせ得る。
【0109】
一方、実施形態の第2の変形例の構造では、ストリングSTRが抵抗変化膜43より厚い抵抗膜46を含む。例えば、抵抗変化膜43=2nm、抵抗膜46=10nmとする。実施形態の第2の変形例の構造では、図8(c)、図9(c)に示すように、チャネル半導体膜44から抵抗膜46に入った電流は抵抗膜46が厚い為、抵抗変化膜43に抜けるより、抵抗膜46をZ方向に流れ、選択メモリセルMCと-Z側の隣接メモリセルMCとの間のZ位置でチャネル半導体膜44に抜ける。これにより、実施形態の第2の変形例の構造では、抵抗変化膜43で発熱して、その熱は抵抗変化膜43側で籠るので、抵抗変化膜43の温度のピークが高くなる。これら効果は抵抗変化膜43が薄いほど、等価抵抗として、抵抗膜46に対して高くなるのでより抵抗膜46に電流が流れて効率が上がる。
【0110】
このように、ストリングSTRが抵抗変化膜43より厚い抵抗膜46を含むことで、ライト時(例えば、リセット動作時)に抵抗膜46に電流を流して発熱させ抵抗変化膜43を所望の温度(例えば、900K以上)に昇温させることが容易になる。すなわち、半導体記憶装置1において、各メモリセルMCへのライト時における発熱・昇温を主として抵抗膜46で適切に行うことができ、動作抵抗条件を満たしながら抵抗変化膜43に適用可能な材料の範囲を拡大できる。
【0111】
実施形態の第3の変形例として、選択メモリセルMCは、図10(c)、図10(d)に示すように動作してもよい。図10は、ライト時の抵抗変化膜の温度分布を示す図である。図10(a)は、図14の構成におけるライト時の抵抗変化膜の温度分布を示す。図10(b)は、図18の構成におけるライト時の抵抗変化膜の温度分布を示す。図10(c)、図10(d)は、実施形態の第3の変形例の構造におけるライト時の抵抗変化膜の温度分布を示す。
【0112】
図10(a)では、抵抗変化膜943の膜厚がD943=10nmである場合における抵抗変化膜943の温度分布が実線で示される。図10(b)では、抵抗変化膜943の膜厚がD943=8nmであり、抵抗膜946の膜厚がD946=2nmである場合における抵抗変化膜943の温度分布が実線で示される。
【0113】
図10(c)では、抵抗変化膜43の膜厚がD43=1nmであり、抵抗膜46の膜厚がD46=12nmである場合における抵抗変化膜43の温度分布が実線で示される。抵抗変化膜43の膜厚がD43=1nmであり、抵抗膜46の膜厚がD46=10nmである場合における抵抗変化膜43の温度分布が一点鎖線で示される。抵抗変化膜43の膜厚がD43=2nmであり、抵抗膜46の膜厚がD46=10nmである場合における抵抗変化膜43の温度分布が点線で示される。
【0114】
図10(d)では、抵抗変化膜43の膜厚がD43=2nmであり、抵抗膜46の膜厚がD46=8nmである場合における抵抗変化膜43の温度分布が一点鎖線で示される。抵抗変化膜43の膜厚がD43=2nmであり、抵抗膜46の膜厚がD46=6nmである場合における抵抗変化膜43の温度分布が実線で示される。
【0115】
図14の構成では、相変化材料等の抵抗変化膜943が例えば16S/cmと高抵抗ならば、図10(a)に示すように、選択メモリセルMCのZ位置範囲ΔZSLにおいてピーク温度が所望の温度Tth(例えば、900K)に達するが、抵抗率制御が困難であり、抵抗変化膜943に適用可能な材料が限定されやすい。
【0116】
図18の構成では、抵抗変化膜943の膜厚がD943=8nmであり、抵抗膜946の膜厚がD946=2nmであり、選択メモリセルMCにおいて電流が抵抗膜946を抜けて抵抗変化膜943へ流れやすい。このため、図18の構成では、図10(b)に示すように、選択メモリセルMCのZ位置範囲ΔZSLにおいて、温度ピークがブロードで500K程度しか昇温せず、所望の温度Tth(例えば、900K)に達しない。
【0117】
実施形態の第3の変形例の構成では、抵抗変化膜43の膜厚をD43=2nm→1nmと薄くしていき、抵抗膜46の膜厚をD46=6nm→12nmと厚くしていくと、選択メモリセルMCにおいて電流が抵抗膜46内を流れるようになる。すなわち、実施形態の第3の変形例の構成では、図10(d)の実線→図10(d)の一点鎖線→図10(c)の点線→図10(c)の一点鎖線→図10(c)の実線と、抵抗変化膜43の薄膜化及び抵抗膜46の厚膜化を行うと、抵抗膜46の発熱で抵抗変化膜43を昇温しやすくなる傾向にある。例えば、抵抗膜46の膜厚が10nm以上になると、ピーク温度が所望の温度Tth(例えば、900K)に達する。
【0118】
このように、ストリングSTRが抵抗変化膜43より厚い抵抗膜46を含むことで、ライト時(例えば、リセット動作時)に抵抗膜46に電流を流して発熱させ抵抗変化膜43を所望の温度(例えば、900K以上)に昇温させることが容易になる。すなわち、半導体記憶装置1において、各メモリセルMCへのライト時における発熱・昇温を主として抵抗膜46で適切に行うことができ、動作抵抗条件を満たしながら抵抗変化膜43に適用可能な材料の範囲を拡大できる。
【0119】
実施形態の第4の変形例として、選択メモリセルMCは、図11(c)に示すように動作してもよい。図11は、ライト時のストリングSTR内の抵抗分圧を示す図である。図11(a)は、図14の構成におけるライト時のストリングSTR内の抵抗分圧を示す。図11(b)は、図18の構成におけるライト時のストリングSTR内の抵抗分圧を示す。図11(c)は、実施形態の第4の変形例の構造におけるライト時のストリングSTR内の抵抗分圧を示す。
【0120】
図11(a)では、抵抗変化膜943の膜厚がD943=10nmである場合におけるストリングSTR内の抵抗分圧が実線で示される。図11(b)では、抵抗変化膜943の膜厚がD943=8nmであり、抵抗膜946の膜厚がD946=2nmである場合におけるストリングSTR内の抵抗分圧が実線で示される。
【0121】
図11(c)では、抵抗変化膜43の膜厚がD43=1nmであり、抵抗膜46の膜厚がD46=12nmである場合におけるストリングSTR内の抵抗分圧が実線で示される。抵抗変化膜43の膜厚がD43=2nmであり、抵抗膜46の膜厚がD46=10nmである場合におけるストリングSTR内の抵抗分圧が点線で示される。
【0122】
図14の構成では、ライト時に、ストリングSTR両端に電圧ΔVALL(例えば、4V)が印可される場合、図11(a)に示すように、チャネル半導体膜944における選択メモリセルMCのZ位置範囲ΔZSLの両端に比較的大きな分圧ΔVSL1(例えば、2V)がかかる。図14の構成では、ライト時に抵抗変化膜943で発熱昇温しやすいが、抵抗率制御が困難であり、抵抗変化膜943に適用可能な材料が限定されやすい。
【0123】
図18の構成では、抵抗変化膜943の膜厚がD943=8nmであり、抵抗膜946の膜厚がD946=2nmであり、選択メモリセルMCにおいて電流が抵抗膜946を抜けて抵抗変化膜943へ流れやすく、高い等価抵抗が得られにくい。このため、図18の構成では、図11(b)に示すように、チャネル半導体膜944における選択メモリセルMCのZ位置範囲ΔZSLの両端にかかる分圧ΔVSL2が比較的小さい。図18の構成では、ライト時に抵抗変化膜943で発熱昇温しにくく、セット動作・リセット動作の実現が困難である。
【0124】
実施形態の第4の変形例の構成では、抵抗変化膜43の膜厚をD43=2nm→1nmと薄くしていき、抵抗膜46の膜厚をD46=10nm→12nmと厚くしていくと、選択メモリセルMCにおいて電流が抵抗膜46内を流れやすくなる。すなわち、実施形態の第4の変形例の構成では、図10(c)の点線→図10(c)の実線と、抵抗変化膜43の薄膜化及び抵抗膜46の厚膜化を行うと、チャネル半導体膜944における選択メモリセルMCのZ位置範囲ΔZSLの両端にかかる分圧がΔVSL3→ΔVSL4と大きくなる。すなわち、実施形態の第4の変形例の構成では、抵抗変化膜43の薄膜化及び抵抗膜46の厚膜化を行うと、ライト時に抵抗変化膜943で発熱昇温しやすくなり、セット動作・リセット動作の実現が容易になる。
【0125】
このように、ストリングSTRが抵抗変化膜43より厚い抵抗膜46を含むことで、ライト時に抵抗膜46にかかる分圧を大きくして発熱させ昇温でき、抵抗変化膜43を所望の温度(例えば、900K以上)に昇温させることが容易になる。すなわち、半導体記憶装置1において、各メモリセルMCへのライト時における発熱・昇温を主として抵抗膜46で適切に行うことができ、動作抵抗条件を満たしながら抵抗変化膜43に適用可能な材料の範囲を拡大できる。
【0126】
実施形態の第5の変形例として、選択メモリセルMCは、リード時に、図12(c)、図12(d)に示すように動作してもよい。図12は、リード時のメモリセルMCのセット・リセット状態間の電流変化を示す図であり、ストリングSTRの両端に電圧が印加された際に選択メモリセルMCを流れるリード電流の変化が例示される。
【0127】
図12(a)は、図14の構成におけるリード時のメモリセルMCのセット・リセット状態間の電流変化を示す。図12(b)は、図18の構成におけるリード時のメモリセルMCのセット・リセット状態間の電流変化を示す。図12(c)、図12(d)は、それぞれ、実施形態の第5の変形例の構造におけるリード時のメモリセルMCのセット・リセット状態間の電流変化を示す。
【0128】
図12(a)では、抵抗変化膜943の膜厚がD943=10nmである場合における選択メモリセルMCのセット状態(低抵抗状態)の抵抗に応じたリード電流IL1が実線で示され、リセット状態(高抵抗状態)の抵抗に応じたリード電流IH1が点線で示される。図12(b)では、抵抗変化膜943の膜厚がD943=8nmであり、抵抗膜946の膜厚がD946=2nmである場合における選択メモリセルMCのセット状態(低抵抗状態)の抵抗に応じたリード電流IL2が実線で示され、リセット状態(高抵抗状態)の抵抗に応じたリード電流IH2が点線で示される。
【0129】
図12(c)では、抵抗変化膜43の膜厚がD43=2nmであり、抵抗膜46の膜厚がD46=10nmである場合における選択メモリセルMCのセット状態(低抵抗状態)の抵抗に応じたリード電流IL3が実線で示され、リセット状態(高抵抗状態)の抵抗に応じたリード電流IH3が点線で示される。
【0130】
図12(d)では、抵抗変化膜43の膜厚がD43=1nmであり、抵抗膜46の膜厚がD46=12nmである場合における選択メモリセルMCのセット状態(低抵抗状態)の抵抗に応じたリード電流IL4が実線で示され、リセット状態(高抵抗状態)の抵抗に応じたリード電流IH4が点線で示される。
【0131】
図14の構成では、リード時に、ストリングSTR両端に所定電圧が印加される場合、図12(a)に示すように、セット状態(低抵抗状態)のリード電流IL1とリセット状態(高抵抗状態)のリード電流IH1との電流比がある程度大きく(例えば、1~2桁程度)取れるので問題ない。
【0132】
図18の構成では、リード時に、ストリングSTR両端に所定電圧が印加される場合、図12(b)に示すように、セット状態(低抵抗状態)のリード電流IL2とリセット状態(高抵抗状態)のリード電流IH2との電流比がある程度大きく(例えば、1~2桁程度)取れるので問題ない。
【0133】
実施形態の第5の変形例の構成では、各メモリセルMCは、等価的に、抵抗変化膜43と抵抗膜46との並列抵抗になる(図5(c)参照)。
【0134】
このため、実施形態の第5の変形例の構成では、リード時に、ストリングSTR両端に所定電圧が印加される場合、抵抗変化膜43がセット状態(低抵抗状態)であれば、図13(a)に示すように、選択メモリセルMCを流れる電流の一部が抵抗膜46に流れ、残りの一部が抵抗膜46から抵抗変化膜43に抜けて流れる。図13は、実施形態の第5の変形例におけるリード時のメモリセルMCのセット・リセット状態の電流経路を示す図である。図13は、選択メモリセルMC内における電流パスの位置を示す。抵抗変化膜43がリセット状態(高抵抗状態)であれば、図13(b)に示すように、選択メモリセルMCを流れる大部分の電流が抵抗膜46に流れる。
【0135】
すなわち、実施形態の第5の変形例の構成では、リード時に、ストリングSTR両端に所定電圧が印加される場合、図12(c)に示すように、セット状態(低抵抗状態)のリード電流IL3とリセット状態(高抵抗状態)のリード電流IH3との電流比が比較的小さく(例えば、2倍程度)なる。あるいは、図12(d)に示すように、セット状態(低抵抗状態)のリード電流IL4とリセット状態(高抵抗状態)のリード電流IH4との電流比が比較的小さく(例えば、2倍程度)なる。電流比が比較的小さくなっても、セット状態(低抵抗状態)のリード電流とリセット状態(高抵抗状態)のリード電流とが2値判定されるのであれば、メモリとしては問題なくリード動作可能である。
【0136】
このように、ストリングSTRが抵抗変化膜43より厚い抵抗膜46を含むことで、リード時にセット状態(低抵抗状態)のリード電流とリセット状態(高抵抗状態)のリード電流とが2値判定させリード動作させることが可能である。すなわち、半導体記憶装置1において、各メモリセルMCからのリード動作を適切に行うことができ、動作抵抗条件を満たしながら抵抗変化膜43に適用可能な材料の範囲を拡大できる。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0138】
1 半導体記憶装置、22,922 積層体、43,943 抵抗変化膜、44,944,944a チャネル半導体膜、46,946 抵抗膜、STR ストリング。
図1
図2
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図6
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