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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131374
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】端末装置、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/36 20090101AFI20240920BHJP
   H04W 76/10 20180101ALI20240920BHJP
【FI】
H04W36/36
H04W76/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041592
(22)【出願日】2023-03-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度 総務省 戦略的情報通信研究開発推進事業(国際標準獲得型(5G高度化))、「製造分野における5G高度化技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】加藤 凜太郎
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067EE04
5K067EE10
5K067EE24
5K067JJ39
(57)【要約】
【課題】ハンドオーバーの際にスキャンすべきスキャンチャネルを適切に選択することが可能な端末装置、方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】本開示に係る端末装置11は、通信接続を遷移した際の接続元アクセスポイント情報と、接続先アクセスポイント情報と、遷移回数と、の関係を示す遷移情報をリストにまとめて遷移情報リストを生成する遷移情報生成部1134と、遷移情報リストに含まれる複数の遷移情報を接続元アクセスポイント情報に基づいて複数のクラスにクラス化し、クラスごとに遷移情報に対する優先度を遷移回数に基づいて決定する優先度決定部11331と、通信接続を遷移する際にスキャンするチャネル番号とチャネル数とスキャンの順番とを、端末装置11が接続中の接続中アクセスポイント情報と遷移情報リストとに基づいて決定し選択するチャネル選択部11332と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信接続を遷移した際の接続元アクセスポイント情報と、接続先アクセスポイント情報と、遷移回数と、の関係を示す遷移情報をリストにまとめて遷移情報リストを生成する遷移情報生成部と、
前記遷移情報リストに含まれる複数の遷移情報を前記接続元アクセスポイント情報に基づいて複数のクラスにクラス化し、前記クラスごとに前記遷移情報に対する優先度を前記遷移回数に基づいて決定する優先度決定部と、
前記通信接続を遷移する際にスキャンするチャネル番号とチャネル数と前記スキャンの順番とを、自装置が接続中の接続中アクセスポイント情報と前記遷移情報リストとに基づいて決定し選択するチャネル選択部と、
を備える端末装置。
【請求項2】
前記順番で前記チャネル番号を前記チャネル数だけ前記スキャンした結果、取得した通信品質に基づいて前記通信接続を遷移する際の接続先アクセスポイントを選択し、前記接続先アクセスポイントに接続する、
請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記通信品質は、RSSI、自装置と前記接続先アクセスポイントを介して接続する対向する装置との間の遅延時間、スループット、可用帯域、およびパケットロス率のうちの少なくともいずれか1つを含む、
請求項2に記載の端末装置。
【請求項4】
前記接続元アクセスポイント情報は、接続元アクセスポイントの識別情報と、前記接続元アクセスポイントへ接続した際に使用した接続元チャネル番号と、を含み、
前記接続先アクセスポイント情報は、接続先アクセスポイントの識別情報と、前記接続先アクセスポイントへ接続した際に使用した接続先チャネル番号と、を含む、
請求項1に記載の端末装置。
【請求項5】
前記遷移情報生成部は、
所定の接続元アクセスポイント情報と所定の接続先アクセスポイント情報との組合せが前記遷移情報リストに存在する場合、前記組合せに対応する所定の遷移回数をカウントアップし、
前記所定の接続元アクセスポイント情報と前記所定の接続先アクセスポイント情報との組合せが前記遷移情報リストに存在しない場合、前記所定の接続元アクセスポイント情報と、前記所定の接続先アクセスポイント情報と、前記所定の遷移回数を、前記遷移情報リストに新規に追加し、前記所定の遷移回数には1回を記憶する、
請求項1に記載の端末装置。
【請求項6】
前記遷移情報生成部は、
所定の接続先アクセスポイントへ接続した期間が所定の期間以上であり、且つ、所定の接続元アクセスポイント情報と所定の接続先アクセスポイント情報との組合せが前記遷移情報リストに存在する場合、前記組合せ対応する所定の遷移回数をカウントアップし、
所定の接続先アクセスポイントへ接続した期間が前記所定の期間以上であり、且つ、前記所定の接続元アクセスポイント情報と前記所定の接続先アクセスポイント情報との組合せが前記遷移情報リストに存在しない場合、前記所定の接続元アクセスポイント情報と、前記所定の接続先アクセスポイント情報と、前記所定の遷移回数を、前記遷移情報リストに新規に追加し、前記所定の遷移回数には1回を記憶する、
請求項1に記載の端末装置。
【請求項7】
前記チャネル選択部は、
前記遷移情報リストのうちから前記接続中アクセスポイント情報と前記接続元アクセスポイント情報とが一致するクラスを選択し、
前記選択したクラスの前記優先度に基づいて前記通信接続を遷移する際に前記スキャンする前記チャネル番号と前記チャネル数と前記スキャンの順番と決定し選択する、
請求項1に記載の端末装置。
【請求項8】
現在の通信を継続するための第1無線通信インターフェースと、
前記通信接続を遷移するための第2無線通信インターフェースと、
をさらに備える、
請求項1に記載の端末装置。
【請求項9】
通信接続を遷移した際の接続元アクセスポイント情報と、接続先アクセスポイント情報と、遷移回数と、の関係を示す遷移情報をリストにまとめて遷移情報リストを生成することと、
前記遷移情報リストに含まれる複数の遷移情報を前記接続元アクセスポイント情報に基づいて複数のクラスにクラス化し、前記クラスごとに前記遷移情報に対する優先度を前記遷移回数に基づいて決定することと、
前記通信接続を遷移する際にスキャンするチャネル番号とチャネル数と前記スキャンの順番とを、自装置が接続中の接続中アクセスポイント情報と前記遷移情報リストとに基づいて決定し選択することと、
を備える方法。
【請求項10】
通信接続を遷移した際の接続元アクセスポイント情報と、接続先アクセスポイント情報と、遷移回数と、の関係を示す遷移情報をリストにまとめて遷移情報リストを生成することと、
前記遷移情報リストに含まれる複数の遷移情報を前記接続元アクセスポイント情報に基づいて複数のクラスにクラス化し、前記クラスごとに前記遷移情報に対する優先度を前記遷移回数に基づいて決定することと、
前記通信接続を遷移する際にスキャンするチャネル番号とチャネル数と前記スキャンの順番とを、自装置が接続中の接続中アクセスポイント情報と前記遷移情報リストとに基づいて決定し選択することと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端末装置、方法、およびプログラムに関し、特に、ハンドオーバーの際にスキャンすべきスキャンチャネルを適切に選択することが可能な端末装置、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造現場では、生産性の向上やコスト削減のためにファクトリーオートメーション(FA:Factory Automation)化が進められており、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)や自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)等の移動体が導入されてきている。さらに近年では、AGVやAMR等の移動体は、製造現場に留まらず、オフィスや病院といった幅広い分野においても利用が注目されている。これらの移動体は、現場を移動しながらタスクを行うので、有線通信を使用することは困難であり、一般的には無線通信を使用してタスクを行う。
【0003】
無線通信には、キャリア5G/LTE(Long Term Evolution)に代表されるパブリックネットワークやローカル5G/無線LAN(Local Area Network)に代表されるノンパブリックネットワーク等がある。現場では導入コストの低い、例えば、無線LANが広く普及している。移動体は、無線LANを使用して無線通信する場合、無線通信の接続先である接続先アクセスポイント(AP:Access Point)を切替えるハンドオーバーを実行しながら、サーバー等の制御側と通信を継続する必要がある。しかしながら、ハンドオーバーの際には、適切なタイミングでAPを切替えられないことによる引きずり現象、適切なAPに切替えられないことによるピンポン現象、ハンドオーバーの失敗、またはハンドオーバーを実施中の瞬断等のようなことが起きるという課題が有る。
【0004】
上述の課題により、データの送受信が適切に行えずに無線接続が切断した場合、移動体はフェールセーフにより非常停止状態となる。移動体が非常停止状態になった場合、例えば、タクトタイムを守ることができず、業務に影響を及ぼすので生産性が低下する。また、移動体を非常停止状態から人手を介して復旧する場合、人件費等による費用(コスト)が増加する。なお、タクトタイム(TT:Takt Time)とは、1つの製品の製造にかける時間のことで、ピッチタイムとも呼ばれる。よって、移動体は、ハンドオーバーの際に適切なAPにハンドオーバーを実施することが必要である。
【0005】
適切なAPにハンドオーバーを実施するための方法として、特許文献1は、過去のAPとの接続の実績を履歴情報として記録しておき、ハンドオーバーが必要となった際に履歴情報を参照し、必要最小限の手順にてAPと認証及び接続を行う方法を開示している。しかしながら、特許文献1が開示する技術は、端末の移動ルートが一意的であることが前提条件となっている。端末の移動ルートが一意的である場合、次にハンドオーバーが生じて利用するAPは、APの配置関係(位置関係)に応じて一意的に決まることもある。一方で、AGVやAMR等の移動体はタスクに応じて無軌道に移動するので、特許文献1に記載の履歴情報はそのまま適用できない。なぜなら、特許文献1に記載の技術では、直後のAPを利用回数で順位付けして接続・リトライ処理としているが、利用回数が多いからと言って、その時その方向に移動体が移動するとは限らないからである(移動体はタスクに応じて無軌道に移動する)。なお、移動体は、リトライ処理をしているうちに非常停止状態となる。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術は、GPS(Global Positioning System)測位結果で得られた位置ごとに、無線APとその接続履歴・品質情報をデータベース(DB:Data Base)として保有し、DBを参照して接続先APを決定する方法を開示している。しかしながら、特許文献2に記載の技術は、ハンドオーバーを行う方法は開示しておらず、また、無軌道に移動する移動体を考慮した方法ではない。また、特許文献2に記載の品質情報は、最近の接続時間における品質情報であり、過去の時点の品質情報を含む。製造現場では、例えば、金属体による反射や製造ラインの稼働状況により、無線環境が時々刻々と変化するため、過去の時点の品質情報を用いるのは好ましくはない。過去のある時点では品質がよい場合でも、DFS:(Dynamic Frequency Selection)によりチャネル(CH:CHannel)が変わり、APの品質情報が現在の品質と異なる場合がある。また、現在ではAPが停止している可能性もある。このようなことは、例えば、屋外の建屋間を移動する場合、屋外で使用可能なW56帯のチャネルを使用するAPで発生する可能性がある。また、特許文献2に記載の技術はGPSを使用するが、GPSは、地下、屋内、または、空が広く見えない場所などでは使用できない(測位できない)。よって、特許文献2に記載の技術を使用しても、スキャンすべきチャネルを適切に選択することは難しい。
【0007】
なお、DFSとは、レーダー波を検知した場合、チャネルを変更し、変更前のチャネルを30分間利用停止し、チャネルを切替えた後に干渉が再度発生しないかどうかを1分間スキャンするものである。また、オートチャネル設定のAPでも、チャネルが変わり、APの品質が現在の品質と異なることもある。また、DBに登録されている位置情報であってGPS測位結果で得られた位置情報は、APに接続した際の端末の位置情報であり、現在の端末の位置に近いとしても、当該位置が次に接続したいAPを示すとは限らない。
【0008】
以上を考慮して、移動体のルートやユースケースに依存されないハンドオーバーの接続候補先を選択する必要がある。加えて、移動体においては、品質劣化が生じる前に、予めリアルタイムで使用可能なハンドオーバーの接続候補先のAPを探索しておく必要もある。
【0009】
ここで、ハンドオーバーの接続候補先を探索する方法としては、スキャンを実施する方法がある。ただし、全てのチャネルをスキャンすると時間を要し、移動体はその間の移動によって適切なハンドオーバー候補先でなくなることがある。一方、1チャネルずつスキャンすることで、特定チャネルのスキャン時間を短縮することはできるが、移動体の位置での適切なチャネルをスキャンしておらず、結果としてハンドオーバーの接続候補先を見つけられないことがある。このため、移動体においては、ハンドオーバーの際にスキャン対象とするチャネル番号とチャネル数とスキャンの順番(優先順位)とを適切に決定する必要がある。
【0010】
特許文献3には、「移動端末と当該移動端末が接続中の基地局との間の通信品質の低下に応じ、管理装置が、移動端末と接続中の基地局の識別情報と、相関テーブルに記憶された、複数の基地局相互間のハンドオーバーのし易さを表す相関情報とに基づいて、複数の基地局の中から移動端末の接続先候補となる基地局を選択し、選択された接続先候補となる基地局から通信品質が所定の条件を満たす基地局を選択し、当該基地局を移動端末の接続先となる基地局として決定し、接続中の基地局および決定された接続先の基地局に対し、移動端末の接続先を切り替えるための指示を出力する。」ことが開示されている。特許文献3には、ハンドオーバーの際にスキャン対象とするチャネル番号とチャネル数とスキャンの順番(優先順位)とを適切に決定することは開示されていない。
【0011】
特許文献4には、「異なる位置に設置された複数の基地局と接続可能な無線通信端末に、現在位置において通信可能な基地局を走査して検出する基地局走査手段と、同時に検出された基地局を記憶手段に同時検出情報として記録する同時検出基地局記録手段と、接続候補抽出手段と、抽出された接続候補基地局と接続して通信を行う第1通信手段とを備える。接続候補抽出手段は、同時検出情報に基づいて、現在接続している接続中基地局と同時に検出される可能性のある基地局を、接続候補基地局として抽出する。」ことが開示されている。特許文献4には、ハンドオーバーの際にスキャン対象とするチャネル番号とチャネル数とスキャンの順番(優先順位)とを適切に決定することは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4799263号公報
【特許文献2】特許第6021368号公報
【特許文献3】特開2018-139339号公報
【特許文献4】特開2010-081118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のとおり、移動体においては、ハンドオーバーの際にスキャン対象とするチャネル番号とチャネル数とスキャンの順番(優先順位)とを適切に決定する必要があるという課題があった。
【0014】
本開示の目的は、上述した課題を解決する端末装置、システム、方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示に係る端末装置は、
通信接続を遷移した際の接続元アクセスポイント情報と、接続先アクセスポイント情報と、遷移回数と、の関係を示す遷移情報をリストにまとめて遷移情報リストを生成する遷移情報生成部と、
前記遷移情報リストに含まれる複数の遷移情報を前記接続元アクセスポイント情報に基づいて複数のクラスにクラス化し、前記クラスごとに前記遷移情報に対する優先度を前記遷移回数に基づいて決定する優先度決定部と、
前記通信接続を遷移する際にスキャンするチャネル番号とチャネル数と前記スキャンの順番とを、自装置が接続中の接続中アクセスポイント情報と前記遷移情報リストとに基づいて決定し選択するチャネル選択部と、
を備える。
【0016】
本開示に係る方法は、
通信接続を遷移した際の接続元アクセスポイント情報と、接続先アクセスポイント情報と、遷移回数と、の関係を示す遷移情報をリストにまとめて遷移情報リストを生成することと、
前記遷移情報リストに含まれる複数の遷移情報を前記接続元アクセスポイント情報に基づいて複数のクラスにクラス化し、前記クラスごとに前記遷移情報に対する優先度を前記遷移回数に基づいて決定することと、
前記通信接続を遷移する際にスキャンするチャネル番号とチャネル数と前記スキャンの順番とを、自装置が接続中の接続中アクセスポイント情報と前記遷移情報リストとに基づいて決定し選択することと、
を備える。
【0017】
本開示に係るプログラムは、
通信接続を遷移した際の接続元アクセスポイント情報と、接続先アクセスポイント情報と、遷移回数と、の関係を示す遷移情報をリストにまとめて遷移情報リストを生成することと、
前記遷移情報リストに含まれる複数の遷移情報を前記接続元アクセスポイント情報に基づいて複数のクラスにクラス化し、前記クラスごとに前記遷移情報に対する優先度を前記遷移回数に基づいて決定することと、
前記通信接続を遷移する際にスキャンするチャネル番号とチャネル数と前記スキャンの順番とを、自装置が接続中の接続中アクセスポイント情報と前記遷移情報リストとに基づいて決定し選択することと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、ハンドオーバーの際にスキャンすべきスキャンチャネルを適切に選択することが可能な端末装置、方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態1に係る端末装置を例示するブロック図である。
図2】実施の形態1に係る端末装置を例示するブロック図である。
図3】実施の形態1に係る端末装置の動作を例示するフローチャートである。
図4】実施の形態1に係る端末装置の動作を例示するフローチャートである。
図5】実施の形態1に係る遷移情報リストを例示する図である。
図6】実施の形態1に係る遷移情報リストを例示する図である。
図7】実施の形態2に係る遷移情報リストを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明を省略する。
【0021】
[実施の形態1]
<装置の概要構成>
図1は、実施の形態1に係る端末装置を例示するブロック図である。
図1は、実施の形態1に係る端末装置の最小構成を示す。
【0022】
図1に示すように、実施の形態1に係る端末装置11は、遷移情報生成部1134と優先度決定部11331とチャネル選択部11332とを備える。優先度決定部11331とチャネル選択部11332は、スキャンチャネル選択部1133に含まれる。
【0023】
遷移情報生成部1134は、例えば、ハンドオーバーによって通信接続を遷移した際の接続元アクセスポイント情報と、接続先アクセスポイント情報と、遷移回数と、の関係を示す遷移情報をリストにまとめて遷移情報リストを生成する。
【0024】
優先度決定部11331は、遷移情報リストに含まれる複数の遷移情報を接続元アクセスポイント情報に基づいて複数のクラスにクラス化する。優先度決定部11331は、クラス化したクラスごとに遷移情報に対する優先度を遷移回数に基づいて決定する。なお、遷移情報リストと、どのようにクラス化するか等の詳細は後述する。
【0025】
チャネル選択部11332は、通信接続を遷移する際にスキャンするチャネル番号とチャネル数と前記スキャンの順番とを、自装置が現在接続中の接続中アクセスポイント情報と前記遷移情報リストとに基づいて決定し選択する。
【0026】
端末装置11は、チャネル選択部11332が決定した順番でチャネル番号をチャネル数だけスキャンする。端末装置11は、スキャンした結果、取得した通信品質に基づいて通信接続を遷移する際の接続先アクセスポイントを選択し、接続先アクセスポイントに接続する。なお、チャネル選択部11332が決定したスキャンする順番が、同じ順番(番号)の場合、同時にスキャンすることを意味する。
【0027】
<装置の詳細構成>
図2は、実施の形態1に係る端末装置を例示するブロック図である。
図2は、実施の形態1に係る端末装置の詳細構成を示す。
【0028】
図2に示すように、実施の形態1に係る端末装置11は、無線通信部111と無線品質取得部112と無線通信制御部113と切替実行部114とを備える。
【0029】
無線通信部111は、少なくとも2つ以上の無線通信インターフェースを有し、少なくとも1つ以上のインターフェースを用いて無線通信を行う。具体的には、無線通信部111は、第1無線通信I/F1111と第2無線通信I/F1112とを有し、それぞれのI/Fを介して接続中の無線LANのAPで設定されているチャネルで無線通信を行う。すなわち、各無線通信I/Fは、接続するAPを介して、対向する装置とそれぞれ無線リンクを形成し無線通信を行う。
【0030】
第1無線通信インターフェース1111は、現在の通信を継続するために使用され、第2無線通信インターフェース1112は、通信接続を遷移するために使用されてもよい。なお、インターフェースをI/Fと記載することもある。また、無線通信I/Fの数は2つに限定されない。
【0031】
実施の形態1では、無線アクセス技術(RAT:Radio Access Technology)として無線LANを用いているが、これには限定されない。無線通信を行うためのI/FのRATとして、例えば、キャリア5G、LTE、ローカル5Gを伴わせて用いてもよい。
【0032】
無線品質取得部112は、複数の無線リンクの各々の通信品質を取得する。無線品質取得部112は、第1無線通信インターフェース1111および/または第2無線通信インターフェース1112を介して接続中の無線LANのAPで設定されているチャネルを、例えば、定期的にスキャンして通信品質を測定し取得する。通信品質は、例えば、RSSI、端末装置と接続先APを介して接続する対向する装置との間の遅延時間、スループット、混雑状況(可用帯域)、パケットロス率のうちの少なくともいずれか1つによって評価される。
【0033】
無線通信制御部113は、無線通信用I/F選択部1131とハンドオーバー用I/F選択部1132とスキャンチャネル選択部1133と遷移情報生成部1134とを有する。
【0034】
無線通信用I/F選択部1131は、どのI/Fを使用して無線通信を実施するかを、無線品質取得部112が取得した通信品質に基づいて決定する。ハンドオーバー用I/F選択部1132は、どのI/Fを使用してハンドオーバーを実施するかを、無線品質取得部112が取得した通信品質に基づいて決定する。
【0035】
スキャンチャネル選択部1133は、遷移情報生成部1134の情報に基づいてスキャンするスキャンチャネルの優先度とチャネル数を決定する。遷移情報生成部1134は、端末装置11におけるチャネルの遷移情報や遷移回数を記憶して遷移情報リストを生成する。また、遷移情報生成部1134は、スキャンするスキャンチャネルの対象範囲(チャネル番号)や1度に実施するチャネル数の初期設定情報を記憶する。
【0036】
切替実行部114は、無線通信制御部113の決定に基づいて、無線通信部111が有する少なくとも2つ以上の無線通信インターフェースの切替えを実行する。また、切替実行部114は、無線通信制御部113の決定に基づいて、少なくとも1つ以上の無線通信インターフェースを操作してハンドオーバーを実行する。
【0037】
<動作>
図3は、実施の形態1に係る端末装置の動作を例示するフローチャートである。
図3は、実施の形態1に係る端末装置の周期的な動作を示す。
【0038】
図3に示すように、端末装置11の無線通信部111が通信を実施する(ステップS101)。この例では、第1無線通信I/F1111を「通信を実施する通信I/F」とし、第2無線通信I/F1112を「待機I/F」とする。
【0039】
待機I/Fは、通信を実施する通信I/Fが運用状態の間、待機状態で待機する。また、待機I/Fは、通信I/Fが運用状態を停止し、または待機状態に移行すると、待機状態から運用状態に状態遷移する。
【0040】
第1無線通信I/F1111および第2無線通信I/F1112のそれぞれのI/Fで形成される無線リンクの無線通信品質を無線品質取得部112が取得する(ステップS102)。無線通信品質を無線通信品質情報または通信品質と称することもある。なお、通信品質の取得は定期的に実行されてもよい。
【0041】
ステップS102の後、無線通信用I/F選択部1131が、ステップS102で取得した通信品質に基づいて無線通信I/Fを切替えるか否かを判断する(ステップS103)。すなわち、無線通信用I/F選択部1131は、他のI/F(待機I/F)の方が、通信品質が高く、切替えた方が良いか否かを判断する。無線通信用I/F選択部1131は、例えば、接続中の第1無線通信I/F1111の通信品質に対する待機中の第2無線通信I/F1112(待機I/F)の通信品質の差または比率が所定の閾値を超過した場合、切替えを実施する。
【0042】
ステップS103において、無線通信用I/F選択部1131が、切替えが有ると判断した場合(ステップS103:Yes)、切替実行部114は無線通信I/Fの切替えを実施する(S104)。
【0043】
ステップS103において、無線通信用I/F選択部1131が、切替えが無いと判断した場合(ステップS103:Nо)、ハンドオーバー用I/F選択部1132がステップS102で取得した無線通信品質に基づいてハンドオーバーを実行するか否かを決定する(ステップS105)。すなわち、ハンドオーバー用I/F選択部1132は、待機I/Fを、現在とは異なる無線LANのAPへハンドオーバーを実行したほうが良いか否かを決定する。ハンドオーバー用I/F選択部1132は、例えば、待機中の第2無線通信I/F1112(待機I/F)の通信品質に対する接続中の第1無線通信I/F1111の通信品質の差または比率が所定の閾値を超過した場合、もしくは、待機I/Fの通信品質が、取得できる最大値に対して一定以上小さい場合、ハンドオーバーを実行したほうが良いと決定する、または、ハンドオーバーを実行することを決定する。
【0044】
ステップS105において、ハンドオーバー用I/F選択部1132が、ハンドオーバーの実行が無いと決定した場合(ステップS105:Nо)、一連のフローを終了して開始へ戻り、次の周期で再度、ステップS101を実行する。
【0045】
ステップS105において、ハンドオーバー用I/F選択部1132が、ハンドオーバーの実行が有ると決定した場合(ステップS105:Yes)、遷移情報生成部1134が生成した遷移情報に基づいて、スキャンチャネル選択部1133が算出した一度にスキャンするスキャンチャネルとチャネル数等とを取得する(ステップS106)。つまり、ハンドオーバー用I/F選択部1132は、スキャン対象とするスキャンチャネルのチャネル番号とチャネル数とスキャンの順番(優先順位)とを取得する。
【0046】
無線通信制御部113は、取得したチャネル番号とチャネル数とスキャンの順番(優先順位)とに基づいて、対象チャネルをスキャンする(ステップS107)。具体的には、無線通信制御部113は、優先順位が第1番目(優先順位が最も高い)のチャネル番号のチャネルをスキャンする。
【0047】
このとき、無線通信制御部113は、スキャンした結果、スキャンした対象チャネルの通信品質が所定の閾値以上の通信品質を有する場合(ステップS108:Yes)、当該対象チャネルを選択する(ステップS109)。一方、無線通信制御部113は、スキャンした対象チャネルの通信品質が所定の閾値以上の通信品質を有さない場合(ステップS108:Nо)、今回のフローを終了した後に開始に戻る。そして、次の周期のステップS107で、優先順位が第2番目のチャネル番号のチャネルをスキャンする。以下、同様にして、通信品質が所定の閾値以上のチャネルを見つけるまでスキャンを実行する。
【0048】
切替実行部114は、選択したチャネル番号のチャネルを使用してハンドオーバーを実行し(ステップS110)、一連のフローを終了し、開始に戻る。
【0049】
図4は、実施の形態1に係る端末装置の動作を例示するフローチャートである。
図4は、ハンドオーバーの実行を決定し、遷移情報を登録する動作を示す。
【0050】
図4に示すように、ハンドオーバーの実行を決定した後、待機I/Fが、現在接続中のアクセスポイントのアクセスポイント情報を確認する(ステップS201)。現在接続中のアクセスポイントのアクセスポイント情報とは、接続元アクセスポイント情報のことである。接続元アクセスポイント情報は、少なくとも接続元アクセスポイントの識別情報と、無線チャネル情報と、を含む。接続元アクセスポイント情報は、例えば、BSSID(Basic Service Set Identifier)である。無線チャネル情報は、例えば、接続元アクセスポイントへ接続した際に使用した接続元チャネル番号である。
【0051】
ステップS201の後、切替実行部114がハンドオーバーを実行する(ステップS202)。
【0052】
ハンドオーバーを実行後、次に接続したアクセスポイントのアクセスポイント情報を確認する(ステップS203)。次に接続したアクセスポイントのアクセスポイント情報とは、接続先アクセスポイント情報のことである。接続先アクセスポイント情報は、少なくとも接続先アクセスポイントの識別情報と、無線チャネル情報と、を含む。接続先アクセスポイント情報は、例えば、BSSIDである。無線チャネル情報は、例えば、接続先アクセスポイントへ接続した際に使用した接続先チャネル番号である。
【0053】
ステップS203の後、端末装置11は、無線接続や無線認証に失敗せず、接続先アクセスポイントへ接続した期間が所定の期間以上であるか否かを確認する(ステップS204)。ステップS204の処理を行う理由は、電波が不安定などの理由で接続と切断を頻繁に繰り返すものを過剰にカウントしないためである。所定の期間は、例えば、通信品質を取得する周期以上の期間としてもよい。所定の期間を一定期間と称することもある。
【0054】
端末装置11は、ステップS204がNоの場合、処理フローを終了する。端末装置11は、ステップS204がYesの場合、ステップS203の処理(ハンドオーバーを実行後、次に接続した接続先アクセスポイントのアクセスポイント情報を確認する)を、再度、行ってもよい。ただし、この処理フローは、図4には図示していない。
【0055】
ステップS204の処理がYesの場合、端末装置11(遷移情報生成部1134)は、遷移情報が後述する遷移情報リストに存在するか否かを確認する(ステップS205)。
【0056】
該当の接続元アクセスポイント情報と接続先アクセスポイント情報との組合せ(遷移情報)が、遷移情報が遷移情報リストに存在する場合(ステップS205:Yes)、端末装置11は、遷移情報リスト内の組合せに対応する遷移情報をカウントアップする(ステップS206)。
【0057】
上記組合せが遷移情報リストに存在しない場合(ステップS205:Nо)、端末装置11は、接続元アクセスポイント情報と接続先アクセスポイント情報と遷移回数を含む当該遷移情報を遷移情報リストに新規に追加する(ステップS207)。このとき、遷移回数には1回を記憶する。なお、遷移情報は、現在接続中のアクセスポイントのアクセスポイント情報とハンドオーバー実行後に接続した接続先アクセスポイントのアクセスポイント情報との組合せに関する情報である。
【0058】
<遷移情報リスト>
図5は、実施の形態1に係る遷移情報リストを例示する図である。
図5は、遷移情報生成部が生成するアクセスポイントの遷移情報リストの一例である。
【0059】
図5に示すように、遷移情報リストは、複数の遷移情報を有する。遷移情報は、少なくとも、現在接続中であるアクセスポイントのAP情報と、ハンドオーバーを実行後に接続したアクセスポイントのAP情報と、ハンドオーバーにより遷移した遷移回数と、を有する。なお、現在接続中であるアクセスポイントのAP情報を、接続元アクセスポイント情報と称し、ハンドオーバーの実行後に接続したアクセスポイントのAP情報を、接続先アクセスポイント情報と称することもある。
【0060】
遷移情報リストにおいて、第1行目に示された遷移情報は、以下の情報を示す。
端末装置11が、「識別情報:BSSID-1」を有するアクセスポイントと「チャネル:CH1」を使用して通信をしていた状態から、「識別情報:BSSID-2」を有するアクセスポイントと「チャネル:CH6」を使用する通信へハンドオーバーを実行して遷移する様子を示す。また、「遷移回数:100」は、この遷移が「100回」行われたという接続実績を示す。
【0061】
遷移情報リストにおいて、第2行目の情報は、以下の遷移情報を示す。
端末装置11が、「識別情報:BSSID-1」を有するアクセスポイントと「チャネル:CH1」を使用して通信をしていた状態から、「識別情報:BSSID-3」を有するアクセスポイントと「チャネル:CH11」を使用する通信へハンドオーバーを実行して遷移する様子を示す。また、「遷移回数:10」は、この遷移が「10回」行われたという接続実績を示す。
【0062】
遷移情報リストにおいて、第3行目の情報は、以下の遷移情報を示す。
端末装置11が、「識別情報:BSSID-1」を有するアクセスポイントと「チャネル:CH1」を使用して通信をしていた状態から、「識別情報:BSSID-4」を有するアクセスポイントと「チャネル:CH100」を使用する通信へハンドオーバーを実行して遷移する様子を示す。また、「遷移回数:25」は、この遷移が「25回」行われたという接続実績を示す。
【0063】
図6は、実施の形態1に係る遷移情報リストを例示する図である。
図6は、ハンドオーバー等で通信接続を遷移する際に、遷移情報に基づいてスキャン対象とするチャネル数や優先順位が決定される例を示す。この例では、「優先度(パターン1)」ついて説明する。
【0064】
端末装置11は、遷移情報リストに含まれる複数の遷移情報を接続元アクセスポイント情報に基づいて複数のクラスにクラス化する。すなわち、端末装置11は、接続元アクセスポイント情報のうちの接続元アクセスポイントの識別情報に基づいてクラス化する。具体的には、接続元アクセスポイント情報の「識別情報:BSSID-1」をクラス1とし、接続元アクセスポイント情報の「識別情報:BSSID-2」をクラス2としてクラス化する。このようにして、遷移情報リスト内の全ての情報を接続元アクセスポイント情報の識別情報に基づいてクラス化する。
【0065】
端末装置11は、クラスごとに、例えば、遷移情報リストのクラス化された情報のうちのNo.1の行(クラス1の情報)について、遷移回数に基づいてクラス分けを実行、すなわち、優先度を決定する。クラス分けとは、同一クラス内の優先度を決定することをいう。クラス分けは、例えば、クラス内の遷移回数が最大のものに対するその他の遷移回数の比が閾値以下の場合、クラス分けを実行して優先度を分ける。例えば、閾値を50%(パーセント)とした場合を考える。この場合、BSSID-1のアクセスポイントからBSSID-2のアクセスポイントに遷移した遷移回数が100回であり、BSSID-1のアクセスポイントからBSSID-4のアクセスポイントに遷移した遷移回数が25回である。クラス1内の遷移回数が最大のものがBSSID-2の100回であり、それに対して50%以下(50回)がクラスBになる。よって、遷移回数が最大のもの(100回)に対するその他の遷移回数(25回)の比は25%であり、閾値である50%以下であるので優先度を分ける。その結果、BSSID-1のアクセスポイントからBSSID-2のアクセスポイントに遷移したもののクラスを「クラス1-A」と決定し、BSSID-1のアクセスポイントからBSSID-4のアクセスポイントに遷移したもののクラスを「クラス1-B」と決定する。これにより、同一クラス内の優先度を分ける。同様にして、クラス1-Bの遷移回数の最大のものがBSSID-4の25回であり、それに対して50%以下であるBSSID-3の10回は、クラス1-Cになる。すなわち、BSSID-1のアクセスポイントからBSSID-3のアクセスポイントに遷移したもののクラスを「クラス1-C」と決定する。このようにして、BSSID-1のアクセスポイントからBSSID-2のアクセスポイントに遷移した遷移回数が100回で最大値の場合の優先度は、クラス1-Aとなる。また、BSSID-1のアクセスポイントからBSSID-3のアクセスポイントに遷移した遷移回数が10回の優先度は、クラス1-Cとなる。また、BSSID-1のアクセスポイントからBSSID-4のアクセスポイントに遷移した遷移回数が25回の優先度は、クラス1-Bとなる。1つのクラス(遷移情報リストのNo.1の行(クラス1))内が3つの優先度に分かれる。
【0066】
なお、図6のパターン1に示すクラス分けを実施する前に、チャネルの遷移回数(接続実績)を所定の条件の下で加算してもよい。例えば、遷移情報リストのNo.1の遷移先AP情報の中に、識別情報が「BSSID-m」であり、チャネルが「CH11」であり、遷移回数が「80」であるものが存在する場合、BSSID-3の遷移回数(10)にBSSID-mの遷移回数(80)を加算したもの(=90)を、CH11の遷移回数としてもよい。そして、この場合、BSSID-3とBSSID-mの優先度は、クラス1-Aとなる。
【0067】
また、図6の上位クラス、例えばクラス1-Aやクラス2-A等については、スキャンの頻度に重み付けをしてもよい。重み付けをすることにより、例えば、スキャンを、(クラス1-A)→(クラス1-B)→(クラス1-A)→(クラス1-C)→(クラス1-A)の順番で実行してもよい。また、例えば、スキャンを、(クラス2-A)→(クラス2-B)→(クラス2-A)→(クラス2-C)→(クラス2-A)の順番で実行してもよい。
【0068】
端末装置11は、ハンドオーバー等で通信接続を遷移する際に、スキャンするチャネル番号とチャネル数とスキャンの順番とを、自装置が接続中の接続中アクセスポイント情報と遷移情報リストとに基づいて決定し選択する。具体的には、端末装置11は、以下の動作を行う。
i) 端末装置11は、現在接続中のアクセスポイントの識別情報に基づいて、遷移情報リスト内のどのクラスに位置するのかを認識する。例えば、アクセスポイントの識別番号が「BSSID-1」の場合、クラス1であると認識する。
ii) 端末装置11は、遷移情報リスト内のクラス1の優先度を確認し、優先度が1番目に高いクラスがクラス1-Aであり、2番目に高いクラスがクラス1-Bであり、3番目に高いクラスがクラス1-Cであると認識する。
iii) 端末装置11は、通信接続を遷移する際に、最初にクラス1-Aに対応するチャネルCH6をスキャンする。次に、端末装置11は、クラス1-Bに対応するチャネルCH100をスキャンする。次に、端末装置11は、クラス1-Cに対応するチャネルCH11をスキャンする。
【0069】
端末装置11は、現在接続中のアクセスポイントの識別番号が「BSSID-2」の場合、クラス2であると認識し、遷移情報リストに基づいて、スキャンするチャネル番号とチャネル数とスキャンの順番とを決定する。端末装置11は、このようにして、自身が現在接続中のアクセスポイントが、遷移情報リスト内のクラス1~n(ただし、nは整数)のうちのどのクラスなのかを認識し、スキャンするチャネル番号とチャネル数とスキャンの順番とを決定する。
【0070】
これにより、ハンドオーバーを実行する際に、スキャン対象とするクラス別の優先順位とクラス内のチャネル数を決定することができる。そして、ハンドオーバー候補先を探索するスキャンは、このクラスごとの優先順位の順番で実行することで適切にスキャンすることができる。
【0071】
その結果、実施の形態1によれば、ハンドオーバーの際にスキャンすべきスキャンチャネルを適切に選択することが可能な端末装置、方法、およびプログラムを提供することができる。
【0072】
<まとめ>
実施の形態1に係る端末装置11は、ハンドオーバーの際にスキャンするチャネル番号とチャネル数とスキャンの順番とを、端末装置11が現在接続中の接続中アクセスポイント情報と遷移情報リストとに基づいて決定する。接続中アクセスポイント情報は、現在接続中のアクセスポイントの識別情報と、当該アクセスポイントへ接続した際に使用したチャネル番号と、を示す。
【0073】
よって、例えば、図6に示す遷移情報リストを参照すると、端末装置11は、現在接続中のアクセスポイントの識別情報が「BSSID-1」である場合、優先度が最大値を示す「クラス1-A」に対応する「BSSID―2」のアクセスポイントが使用するチャネル「CH6」をスキャンする。チャネル「CH6」の通信品質が、例えば、所定の閾値以上の通信品質を有さない場合、次の周期で、チャネル「CH100」をスキャンする。チャネル「CH100」の通信品質が所定の閾値以上の通信品質を有さない場合、さらに次の周期で、チャネル「CH11」をスキャンする。このようにして、通信品質が所定の閾値以上の通信品質を有するチャネルを選択して、選択したチャネルを使用してハンドオーバーを実行する。
【0074】
このようにして、決定されたクラス別の優先順位とクラス内のチャネル数でスキャンを実行することにより、履歴情報を参照して接続先アクセスポイントを決定する方法と比べて、スキャン時間を短縮することできる。
【0075】
また、実施の形態1に係る端末装置11は、ランダムではなく、遷移情報リスト中の遷移情報に基づいて生成したクラスなので、スキャンタイミングにおいて、よりハンドオーバー候補先となり得るアクセスポイントを探索しやすい。
【0076】
また、実施の形態1に係る端末装置11は、過去のDBや履歴情報で一意にアクセスポイントを決定するのではないので、無軌道な移動体において、期待されていない方向に存在するアクセスポイントと接続する可能性を低減することができる。
【0077】
また、実施の形態1に係る端末装置11は、図3で示した周期(終了の後で開始に遷移することで周期的な動作となり、開始から終了までが1つの周期となる)で無線通信品質を取得するため、リアルタイムの通信品質に基づいてハンドオーバーを実行できる。
【0078】
また、実施の形態1に係る端末装置11は、第1無線通信I/F1111で通信を継続しつつ、待機I/Fである第2無線通信I/F1112でハンドオーバーを実行するので、切断が発生せず移動体の停止を防ぐことができる。
【0079】
<特徴>
端末装置11は、遷移情報リストのうちから接続中アクセスポイント情報と接続元アクセスポイント情報とが一致するクラスを選択する。
端末装置11は、選択したクラスの優先度に基づいて通信接続を遷移する際にスキャンするチャネル番号とチャネル数とスキャンの順番と決定し選択する。
【0080】
[変形例]
図6の「優先度(パターン2)」ついて説明する。
実施の形態1の変形例では、遷移情報リストの遷移回数の多い順に優先度(パターン2)を決定する。これにより、チャネルCH6→チャネルCH100→チャネルCH11の順番でスキャンする。
【0081】
なお、1回当たりにスキャンするチャネルの数は、例えば、設定ファイルで保存していてもよい。ただし、重複チャネルは省くようにする。例えば、遷移回数が以下の順番であってチャネル数を4つとした場合、チャネルCH6、チャネルCH11、チャネルCH100、チャネルCH1を選択し、重複チャネルCH6を省くようにしてもよい。スキャンするチャネル数が1つであり、次の周期で前回と同じチャネルをスキャンする場合、当該同じチャネルはスキャンを省略(スキップ)してもよい。以下のような順番の場合、(BSSID-Y:CH6)のスキャンは、前回と同じチャネルなのでスキップしてもよい。
(順番)
BSSID-2:CH6
BSSID-3:CH11
BSSID-4:CH100
BSSID-X:CH6
BSSID-Y:CH6(スキップ)
BSSID-Z:CH1
ただし、X、Y、Zは、2~4以外の整数とする。
【0082】
また、端末装置11は、自装置が決定した優先度(優先順位)とスキャンするチャネル数の組合せによるスキャン実施数が、所定の回数以上となった場合、もしくは、クラス内の全てのチャネルをスキャンしてもハンドオーバーすることが可能な適切なアクセスポイントを見つけることができない場合、全てのチャネルを対象にしてスキャンを実施してもよい。
【0083】
また、端末装置11は、複数の待機I/F(例えば、複数の第2無線通信I/F1112)を有してもよい。この場合、待機I/Fごとに別の優先度のクラスをスキャンし、一度に多くのチャネルをスキャンするので、単位時間当たりにスキャンするチャネルの数が増加し効率が向上する。また、この場合、一方の待機I/Fは優先度のクラスをスキャンし、他方の待機I/Fは全てのチャネルをスキャンしてもよい。
【0084】
[実施の形態2]
図7は、実施の形態2に係る遷移情報リストを例示する図である。
図7に示す時刻αは最も過去の時刻であり、時刻βは中間の時刻であり、時刻γは最新の時刻である。
実施の形態2に係る端末装置21は、実施の形態1に係る端末装置11と比べて、遷移情報リストに「接続時間」と「開始時刻」が追加されている点が異なる。
【0085】
アクセスポイントのチャネル設定は固定が望ましい。1つ目の理由は、アクセスポイントのチャネル設定をオートにした場合、チャネルが変わったときに端末装置の通信が一時的に切れてしまうことがあるからである。2つ目の理由は、無線LANを屋外で使用する場合は2.4GHzもしくは5GHzの(原則として)W56の帯域を使用する必要があるが、W56の帯域(W53の帯域も)は、DFS(Dynamic Frequency Selection)という機能の搭載が義務化されており、レーダーを検知すると別のチャネルに変更され、再検知の間は通信が停止するからである。
【0086】
そこで、実施の形態2では、図7に示すように、遷移情報リストに「接続時間」と「開始時刻」を追加する。「接続時間」は、所定のチャネルを使用した通信の接続時間を示し、「開始時刻」は、所定のチャネルを使用した通信の開始時刻を示す。新たに追加した「接続時間」と「開始時刻」を用いて「合計接続時間」や「最新接続時間」を計算できる。
【0087】
例えば、図7のBSSID-5のチャネルがチャネルCH120→チャネルCH100→チャネルCH104へと変化した場合を考える。そして、チャネルCH120は、開始時刻αから1000分(min)だけ使用され、チャネルCH100は、開始時刻βから500分だけ使用され、チャネルCH104は、開始時刻γから300分だけ使用されたものとする。
【0088】
この場合、BSSID-5のアクセスポイントの遷移回数は、合計回数、すなわち、10回+3回+2回=15回となる。また、合計接続時間は、1000分+500分+300分=1800分となる。
【0089】
なお、使用したチャネルCHが変化した際、一番過去のチャネルCHを破棄してもよい(図7では、取消線で示す)。また、最新のチャネルCHにおける合計接続時間が過去のチャネルCHにおける合計接続時間を超えた場合、過去のチャネルCHを破棄して最新のチャネルCHのみを考慮してもよい。
【0090】
尚、上記の実施の形態では、本開示をハードウェアの構成として説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。本開示は、各構成要素の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0091】
上記の実施の形態において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実態のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(具体的にはフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(具体的には光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(具体的には、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM))、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0092】
さらに、動作は特定の順序で描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作が示された特定の順序または連続した順序で実行されること、または示されたすべての動作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。特定の状況では、マルチタスクと並列処理が有利な場合がある。同様に、いくつかの特定の実施の形態の詳細が上記の議論に含まれているが、これらは本開示の範囲に対する制限としてではなく、特定の実施の形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施の形態の文脈で説明される特定の特徴は、単一の実施の形態に組合せて実装されてもよい。逆に、単一の実施の形態の文脈で説明される様々な特徴は、複数の実施の形態で別々にまたは任意の適切な組合せで実装されてもよい。
【0093】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記によって限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0094】
尚、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0095】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
通信接続を遷移した際の接続元アクセスポイント情報と、接続先アクセスポイント情報と、遷移回数と、の関係を示す遷移情報をリストにまとめて遷移情報リストを生成する遷移情報生成部と、
前記遷移情報リストに含まれる複数の遷移情報を前記接続元アクセスポイント情報に基づいて複数のクラスにクラス化し、前記クラスごとに前記遷移情報に対する優先度を前記遷移回数に基づいて決定する優先度決定部と、
前記通信接続を遷移する際にスキャンするチャネル番号とチャネル数と前記スキャンの順番とを、自装置が接続中の接続中アクセスポイント情報と前記遷移情報リストとに基づいて決定し選択するチャネル選択部と、
を備える端末装置。
(付記2)
前記順番で前記チャネル番号を前記チャネル数だけ前記スキャンした結果、取得した通信品質に基づいて前記通信接続を遷移する際の接続先アクセスポイントを選択し、前記接続先アクセスポイントに接続する、
付記1に記載の端末装置。
(付記3)
前記通信品質は、RSSI、自装置と前記接続先アクセスポイントを介して接続する対向する装置との間の遅延時間、スループット、可用帯域、およびパケットロス率のうちの少なくともいずれか1つを含む、
付記2に記載の端末装置。
(付記4)
前記接続元アクセスポイント情報は、接続元アクセスポイントの識別情報と、前記接続元アクセスポイントへ接続した際に使用した接続元チャネル番号と、を含み、
前記接続先アクセスポイント情報は、接続先アクセスポイントの識別情報と、前記接続先アクセスポイントへ接続した際に使用した接続先チャネル番号と、を含む、
付記1に記載の端末装置。
(付記5)
前記遷移情報生成部は、
所定の接続元アクセスポイント情報と所定の接続先アクセスポイント情報との組合せが前記遷移情報リストに存在する場合、前記組合せに対応する所定の遷移回数をカウントアップし、
前記所定の接続元アクセスポイント情報と前記所定の接続先アクセスポイント情報との組合せが前記遷移情報リストに存在しない場合、前記所定の接続元アクセスポイント情報と、前記所定の接続先アクセスポイント情報と、前記所定の遷移回数を、前記遷移情報リストに新規に追加し、前記所定の遷移回数には1回を記憶する、
付記1に記載の端末装置。
(付記6)
前記遷移情報生成部は、
所定の接続先アクセスポイントへ接続した期間が所定の期間以上であり、且つ、所定の接続元アクセスポイント情報と所定の接続先アクセスポイント情報との組合せが前記遷移情報リストに存在する場合、前記組合せ対応する所定の遷移回数をカウントアップし、
所定の接続先アクセスポイントへ接続した期間が前記所定の期間以上であり、且つ、前記所定の接続元アクセスポイント情報と前記所定の接続先アクセスポイント情報との組合せが前記遷移情報リストに存在しない場合、前記所定の接続元アクセスポイント情報と、前記所定の接続先アクセスポイント情報と、前記所定の遷移回数を、前記遷移情報リストに新規に追加し、前記所定の遷移回数には1回を記憶する、
付記1に記載の端末装置。
(付記7)
前記チャネル選択部は、
前記遷移情報リストのうちから前記接続中アクセスポイント情報と前記接続元アクセスポイント情報とが一致するクラスを選択し、
前記選択したクラスの前記優先度に基づいて前記通信接続を遷移する際に前記スキャンする前記チャネル番号と前記チャネル数と前記スキャンの順番と決定し選択する、
付記1に記載の端末装置。
(付記8)
現在の通信を継続するための第1無線通信インターフェースと、
前記通信接続を遷移するための第2無線通信インターフェースと、
をさらに備える、
付記1に記載の端末装置。
(付記9)
通信接続を遷移した際の接続元アクセスポイント情報と、接続先アクセスポイント情報と、遷移回数と、の関係を示す遷移情報をリストにまとめて遷移情報リストを生成することと、
前記遷移情報リストに含まれる複数の遷移情報を前記接続元アクセスポイント情報に基づいて複数のクラスにクラス化し、前記クラスごとに前記遷移情報に対する優先度を前記遷移回数に基づいて決定することと、
前記通信接続を遷移する際にスキャンするチャネル番号とチャネル数と前記スキャンの順番とを、自装置が接続中の接続中アクセスポイント情報と前記遷移情報リストとに基づいて決定し選択することと、
を備える方法。
(付記10)
通信接続を遷移した際の接続元アクセスポイント情報と、接続先アクセスポイント情報と、遷移回数と、の関係を示す遷移情報をリストにまとめて遷移情報リストを生成することと、
前記遷移情報リストに含まれる複数の遷移情報を前記接続元アクセスポイント情報に基づいて複数のクラスにクラス化し、前記クラスごとに前記遷移情報に対する優先度を前記遷移回数に基づいて決定することと、
前記通信接続を遷移する際にスキャンするチャネル番号とチャネル数と前記スキャンの順番とを、自装置が接続中の接続中アクセスポイント情報と前記遷移情報リストとに基づいて決定し選択することと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
(付記11)
前記優先度決定部は、前記接続元アクセスポイント情報のうちの接続元アクセスポイントの識別情報に基づいてクラス化する、
付記1に記載の端末装置。
(付記12)
前記優先度決定部は、前記クラスごとに、前記遷移回数に基づいて優先度を決定する、
付記1に記載の端末装置。
(付記13)
前記優先度決定部は、前記クラスごとに、前記遷移回数が最大のものに対するその他の遷移回数の比が所定の閾値以下の場合、優先度を分ける、
付記1に記載の端末装置。
(付記14)
前記優先度決定部は、前記クラスごとに、前記遷移回数に多い順に優先度を決定する、
付記1に記載の端末装置。
【符号の説明】
【0096】
11…端末装置
111…無線通信部
1111…第1無線通信I/F
1112…第2無線通信I/F
112…無線品質取得部
113…無線通信制御部
1131…無線通信用I/F選択部
1132…ハンドオーバー用I/F選択部
1133…スキャンチャネル選択部
11331…優先度決定部
11332…チャネル選択部
1134…遷移情報生成部
114…切替実行部
α、β、γ…開始時刻
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7