(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131380
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ワイヤソー切断装置
(51)【国際特許分類】
B26D 1/46 20060101AFI20240920BHJP
B28D 1/08 20060101ALI20240920BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20240920BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240920BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20240920BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B26D1/46 501D
B28D1/08
B28D7/02
B24B27/06 S
B24B55/06
E04G23/08 D
E04G23/08 J
B26D1/46 501B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041602
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】502263905
【氏名又は名称】ダイヤモンド機工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000165424
【氏名又は名称】株式会社コンセック
(71)【出願人】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 立
(72)【発明者】
【氏名】向井 啓通
(72)【発明者】
【氏名】垣中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】上條 宏明
(72)【発明者】
【氏名】平田 豪
(72)【発明者】
【氏名】神田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】綿川 文治
(72)【発明者】
【氏名】大下 貴史
(72)【発明者】
【氏名】眞野 敬英
【テーマコード(参考)】
2E176
3C047
3C069
3C158
【Fターム(参考)】
2E176AA02
2E176AA17
2E176DD22
2E176DD58
3C047FF09
3C047HH12
3C069AA01
3C069BA06
3C069BB03
3C069BC02
3C069BC04
3C069CA07
3C069DA07
3C069EA01
3C158AA05
3C158AC05
3C158DA03
(57)【要約】
【課題】円筒壁の切断に適したワイヤソー切断装置を提供する。
【解決手段】ワイヤソー切断装置10は、ワイヤWを用いて、円筒壁100を内側面102から切断する。ワイヤソー切断装置10は、ワイヤWを巻回して回転させるワイヤ駆動部と、内側面102で開口し対象物の径方向に延在する一対のコア孔Hのそれぞれに先端を挿入可能な一対のアーム部材11と、各アーム部材11の一方の端部に設けられ、対象物の切断時にワイヤを巻回する先端プーリ57と、先端プーリ57をアーム部材11の延在方向に移動させるためにアーム部材11を駆動させる可動機構部45と、を備え、各アーム部材11は、他方の端部から先端プーリ57が設けられた端部に向かって当該各アーム部材11の間隔が拡がるように延在する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを用いて、対象物を切断するワイヤソー切断装置において、
前記ワイヤを巻回して回転させるワイヤ駆動部と、
前記対象物の切断時に前記ワイヤを巻回する先端プーリを先端に備える一対のアーム部材と、
前記アーム部材を、前記先端プーリが前記対象物を切断する切断位置及び前記先端プーリが前記対象物から離れた待避位置との間で前進及び後退させる可動機構部と、を備え、
前記各アーム部材は、他方の端部から前記先端プーリが設けられた前記端部に向かって当該各アーム部材の間隔が拡がるように延在することを特徴とするワイヤソー切断装置。
【請求項2】
前記アーム部材を進退させる開口部を有し先端が湾曲したカバーをさらに備え、
前記カバーは、前記対象物の切断時に、前記対象物の曲面に当接する、請求項1に記載のワイヤソー切断装置。
【請求項3】
一対の待機用プーリをさらに備え、
非切断時に、前記ワイヤは、前記先端プーリから外れ、前記各待機用プーリに掛け渡され、
切断時に、前記先端プーリが前記各待機用プーリの間に前進することにより、前記先端プーリに巻回される、請求項1に記載のワイヤソー切断装置。
【請求項4】
前記ワイヤを前記対象物に押し付ける張力を前記ワイヤに付与する張力付与部と、
待機用プーリと、変換プーリとをさらに備え、
前記先端プーリは、前記アーム部材の延在方向と平行な第1面内において前記ワイヤを巻回し、
前記ワイヤ駆動部と前記張力付与部とは、前記第1面と直交する第2面内において前記ワイヤを巻回し、
前記待機用プーリは、前記第1面内において前記ワイヤを巻回するように、1対の前記アーム部材の外側に配置され、
前記変換プーリは、前記ワイヤの巻回方向を、前記第1面内と前記第2面内との間で変換する、請求項1に記載のワイヤソー切断装置。
【請求項5】
前記アーム部材は、中空形状の棒状部を有し、
前記棒状部の一方の端部には前記先端プーリが設けられ、他方の端部には前記棒状部内の粉塵を含む空気を吸引するための集塵ホースが連結される、請求項1に記載のワイヤソー切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤによって切断を行なうワイヤソー切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートブロック等を切断する場合に、ワイヤを高速回転させて切断するワイヤソーを用いる場合がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、本体部と、本体部に間隔をおいて取り付けられた一対のスタンド部とを有したワイヤソー切断装置が記載されている。このワイヤソー切断装置において、本体部は、ワイヤを巻回する駆動プーリ及び第1プーリを内蔵するケース部材を備えている。各スタンド部は、集塵装置に接続される中空のオフセットスタンドと、オフセットスタンドの先端部に取り付けられワイヤを巻回する先端プーリとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ワイヤソー切断装置の各スタンド部は、平行に延在している。ワイヤソー切断装置は、スタンド部を、コンクリートブロックの平面で開口し、且つコンクリートブロック内に平行に延在する一対の孔に挿入する。
【0005】
一方、切断対象には、平行に延在する孔が形成されるとは限らない。例えば円筒状のコンクリートブロックをワイヤソー切断装置によって切断する際、コンクリートブロックの径方向に延在する孔を形成するとともに、ワイヤソー切断装置のスタンド部をこれらの孔に挿入してブロックを切り出すことがある。しかし、上記ワイヤソー切断装置では、このような孔にスタンド部を挿入しにくいといった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのワイヤソー切断装置は、ワイヤを用いて、対象物を内側面から切断するワイヤソー切断装置において、前記ワイヤを巻回して回転させるワイヤ駆動部と、前記対象物の切断時に前記ワイヤを巻回する先端プーリを先端に備える一対のアーム部材と、前記アーム部材を、前記先端プーリが前記対象物を切断する切断位置及び前記先端プーリが前記対象物から離れた待避位置との間で前進及び後退させる可動機構部と、を備え、前記各アーム部材は、他方の端部から前記先端プーリが設けられた前記端部に向かって当該各アーム部材の間隔が拡がるように延在する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、円筒壁の切断に適したワイヤソー切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態におけるワイヤソー切断装置を含む解体システムの上面図である。
【
図2】実施形態におけるワイヤソー切断装置の斜視図である。
【
図3】実施形態におけるワイヤソー切断装置の側面図である。
【
図4】実施形態におけるワイヤソー切断装置の上面図である。
【
図5】実施形態におけるガイド部材の模式図である。
【
図6】実施形態におけるワイヤソー切断装置の背面図である。
【
図7】実施形態のワイヤソー切断装置の切断開始前の動作の説明図である。
【
図8】実施形態のワイヤソー切断装置の切断開始直後の動作の説明図である。
【
図9】実施形態のワイヤソー切断装置の切断途中の動作の説明図である。
【
図10】実施形態のワイヤソー切断装置の切断途中であって、一方のアーム部材の先端が孔の端部に到着した時の動作の説明図である。
【
図11】実施形態のワイヤソー切断装置の切断終了時の動作の説明図である。
【
図12】実施形態のワイヤソー切断装置の切断終了後にアーム部材を戻す途中の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図12を参照して、ワイヤソー切断装置の一実施形態を説明する。ワイヤソー切断装置は切断対象物(以下、対象物という)を解体する解体システムに含まれる。本実施形態では、解体システムを、原子炉の内部コンクリートを分割して解体するものとして説明する。内部コンクリートは、切断前において円筒状の形状を有する。内部コンクリートは、放射性廃棄物であって、高耐震性を有するために高密度で太径(例えば直径30mm等)の鉄筋を用いた鉄筋コンクリートで構成されている。内部コンクリートの切断は、作業者によって遠隔操作で行われる。作業者は、カメラにより解体システム1を撮像した画像をモニターで確認しながら、各装置を操作することが可能である。
【0010】
<解体システム>
図1は、解体システム1の概略を示す。解体システム1は、回転ステージ2、穿孔装置3及びワイヤソー切断装置10を備える。内部コンクリートである円筒壁100は、水平方向(
図1中、XY平面と平行な方向)における断面が環状の形状を有している。円筒壁100の切断が進むに伴い、円筒壁100の水平方向の断面は、半円状や扇形(又は台形)の形状となる。円筒壁100は、凸曲面である外側面(図示略)及び凹曲面である内側面102を有する。内側面102は曲面であって、外側面に比べ曲率が大きい。内側面102は内側の空間101を画定する。
【0011】
内側の空間101には、回転ステージ2が設けられている。回転ステージ2は、作業床に載置されている。回転ステージ2を載置した作業床は、昇降装置(図示略)により、円筒壁100の内側面102に沿って、円筒壁100の処理対象位置に向かって昇降する。回転ステージ2は、支持フレーム5及びステージ本体6を備える。ステージ本体6は、支持フレーム5によって支持されながら旋回装置(図示略)により正方向及び逆方向(図中の矢印方向)に回転する。ステージ本体6は、上面からみて、円形、半円形、又は
図1のように略台形又は扇形状の形状を有する。
【0012】
ステージ本体6には、穿孔装置3及びワイヤソー切断装置10が設置されている。ステージ本体6は、穿孔装置3及びワイヤソー切断装置10を載せた状態で、穿孔処理又は切断処理が行われる目標位置まで回転する。穿孔装置3は、水平方向に延在するコア孔Hを円筒壁100に形成する穿孔処理を行う。
【0013】
例えば、穿孔装置3は、コアビットを回転させることにより穿孔処理を行う装置である。穿孔装置3は、水平方向に延在するコア孔Hを、鉛直方向において同じ位置且つ所定間隔で形成する。本実施形態のコア孔Hは、円筒壁100の内側面102で開口するとともに、円筒壁100の径方向に延在する。換言すると、1対のコア孔Hは内側面102から奥に向かうにつれて間隔が拡がる。隣り合う1対のコア孔Hの延在方向は異なる方向であって、それらがなす相対角度は、0°以上90°未満である。本実施形態では、各コア孔Hは、約18°の角度ごとに形成される。
【0014】
上記旋回装置は、ステージ本体6を回転させることにより、ワイヤソー切断装置10をコア孔Hの形成位置まで移動させる。ワイヤソー切断装置10のうち内側面102に向かい合う面を正面、正面の反対側の面を背面とする。ワイヤソー切断装置10は、ワイヤー(
図1では図示略)が掛けられる一対のアーム部材11L,11Rを備えている。
【0015】
アーム部材11L,11Rは、切断前の状態において背面側の退避位置にある。アーム部材11L,11Rは、背面側から正面側へ移動可能である。なお、各アーム部材11L,11Rを区別しないで説明する場合には、単にアーム部材11という。
【0016】
ワイヤソー切断装置10は、円筒壁100の切断処理で各アーム部材11を、正面側に突出させる。アーム部材11に巻回されたワイヤは、略台形又は扇形のブロック110の下面を円筒壁100から切り出す。
【0017】
<ワイヤソー切断装置>
図2~
図6を参照して、ワイヤソー切断装置10の構成について説明する。
図2は、ワイヤソー切断装置10を正面からみた斜視図である。ワイヤソー切断装置10は、本体部20及び架台部40を備える。本体部20は、架台部40の上方に配置される。
【0018】
<架台部>
架台部40は、基台部41及びカバー43を備える。基台部41は、正面、背面及び上面に開口を有する。本体部20に収容されたワイヤは基台部41の上面の開口を介して基台部41の内部に配置される。カバー43は、アーム部材11を進退させる開口部43Aを有する。各アーム部材11は、カバー43の開口部43Aを介して前進及び後退する。
【0019】
カバー43は、基台部41の正面の開口に位置する。カバー43は、前方に突出した突出部44を備える。突出部44は正面からみて四角枠状の形状を有している。開口部43Aは突出部44に設けられる。突出部44は、1対の湾曲部44Aを有する。湾曲部44Aは、突出部44の上壁部及び下壁部である。湾曲部44Aの先端には、可撓性材料からなる当接部44Bが設けられる。可撓性材料は、例えばポリウレタンフォーム(スポンジ)、又はエラストマーである。当接部44Bは円筒壁100に当接する。湾曲部44Aの曲率は、円筒壁100の内側面102の曲率とほぼ同じである。
【0020】
図3は、各アーム部材11の一部を正面側に突出させた状態を示す。各アーム部材11は棒状部51を有する。棒状部51は、断面が四角枠状の中空状の部材である。棒状部51は、一方の端部11Aに集塵部52を備えている。集塵部52には集塵ホース(図示略)が接続可能になっている。棒状部51の側面にはラック53が設けられている。
【0021】
基台部41には、アーム部材11を前後に移動させる可動機構部45が設けられている。可動機構部45は、アーム部材11L,11Rに1つずつ設けられている。可動機構部45は、正逆回転可能なモータ46、回転軸48、及びピニオンギア47を備えている。回転軸48はモータ46の回転軸に連結している。回転軸48にはピニオンギア47が設けられている。ピニオンギア47は、アーム部材11の側面に沿って設けられたラック53に噛合する。モータ46が正逆回転することにより、回転軸48及びピニオンギア47に回転力が伝えられる。ピニオンギア47及びラック53はモータ46の回転運動を直進運動に変換する。これにより、アーム部材11は前後に移動する。
【0022】
図4に示すように、アーム部材11L,11Rは、左右が反転した同じ構造を有している。アーム部材11L,11Rの延在方向は、異なる方向である。アーム部材11L、11Rは、一方の端部11Aから他方の端部11Bに向かってそれらの間隔が大きくなるように可動機構部45に取り付けられている。本実施形態において、アーム部材11L,11Rは、それらの長手方向に沿った中心軸XL,XRのなす相対角度θAが18°である。アーム部材11L,11Rは、可動機構部45により、背面側の最大退避位置(
図2に示す位置)から正面側の最大突出位置の間で移動可能となっている。
【0023】
各アーム部材11は、その先端に、ガイド部材58A,58B(
図5参照)及び先端プーリ57を備える。先端プーリ57は、固定部材56を介して棒状部51に回転可能に取り付けられている。先端プーリ57は、切断時に、アーム部材11の延在方向と平行な第1面においてワイヤを巻回する。
【0024】
図5に示すように、ガイド部材58A,58Bは、先端プーリ57の厚み(高さ)分の間隔を空けて、上下に設けられている。ガイド部材58A,58Bは、滑り部材としての2個のボールキャスタ59A,59Bが設けられている。ボールキャスタ59A,59Bは、垂直軸から角度θ1だけ離間した位置に設けられている。そして、各ボールキャスタ59A,59Bの先端にはボール60が設けられている。ボール60は、棒状部51の径方向外側に突出している。これらのボール60は、各アーム部材11がコア孔Hに挿入された場合に、コア孔Hの内周面に当接する。このとき、ボール60は、コア孔Hの内周面に当接することによって転がりながら棒状部51の先端を支持する。
【0025】
<本体部>
次に
図6を参照して、本体部20について説明する。本体部20は、ベース部材21、ケース部材22、補助ベース部材24及びフレーム部材F1,F2(
図2参照)を備えている。
【0026】
ベース部材21は、上面及び下面が開口した直方体形状のブロック部材である。ベース部材21の上方には、開口の一部を覆うようにケース部材22が配置されている。ケース部材22は、全体として、横が約1.5m、縦が約1.3m、幅が約0.3mの直方体形状をしている。ケース部材22は、開口を有する収容空間23を内側に有している。収容空間23の開口は、透明な板部材(図示略)で構成されている。
【0027】
ケース部材22の収容空間23には、駆動プーリ25、第1プーリ26、第2プーリ27及び第3プーリ28が収容されている。各プーリ25~28には、ワイヤWが巻回される。ワイヤは、公知の乾式ワイヤソー切断装置に用いられるダイヤモンドワイヤである。駆動プーリ25及び各プーリ26~28は、第1面と直交する第2面(垂直面)内においてワイヤを巻回する。
【0028】
駆動プーリ25は、ワイヤ駆動部として機能する。駆動プーリ25は、他のプーリ26~28よりも大きい直径を有している。駆動プーリ25には、背面に位置する駆動モータ30(
図2及び
図3参照)が連結されている。駆動プーリ25が回転することにより、ワイヤWは他のプーリ26~28に向かって送り出される。本実施形態では駆動モータ30としてサーボモータを用いる。
【0029】
第1プーリ26は、張力付与部であるテンションプーリとして機能する。第1プーリ26には、張力調整部が設けられている。ケース部材22の側面には、第1プーリ26の回転軸が貫通するスリットが形成されている。このスリットは、被覆部材29によって覆われている。張力調整部は、第1プーリ26をスリットに沿って移動させる。これにより、第1プーリ26は、第1プーリ26に掛けられたワイヤWに所定の張力を付与する。
【0030】
第2プーリ27は、巻き取りプーリとして機能する。本体部20は、連動して移動する2つの第2プーリ27を有する。各第2プーリ27は、第1プーリ26と同様に、垂直方向に移動可能に配置されている。つまり、第2プーリ27の回転軸は、ケース部材22の側面に形成されたスリットに貫通している。第2プーリ27は、切断終了時にワイヤWを巻き取る。
【0031】
第3プーリ28は、駆動プーリ25及び第2プーリ27の間、各第2プーリ27の間、第2プーリ27及び第1プーリ26の間に位置する。第3プーリ28はガイドプーリとして機能する。本体部20において、ワイヤWは、駆動プーリ25、第3プーリ28、第2プーリ27、第3プーリ28、第2プーリ27、第3プーリ28、第1プーリ26の順に巻回されている。
【0032】
次に、ワイヤWをアーム部材11に掛ける機構について説明する。
図2に示すように、架台部40には、ベース部材21及び補助ベース部材24が取り付けられている。補助ベース部材24の上面にはフレーム部材F1,F2が固定されている。補助ベース部材24には、ガイドバー31,32が設けられている。ガイドバー31,32には、第1プーリ26及び第2プーリ27を移動させる移動機構が設けられている。移動機構は、張力を調整しながら第1プーリ26の位置を移動させる移動用モータ34を有している。移動用モータ34は、ワイヤソー切断装置10の目標とする切断速度及び張力に応じた速度で第1プーリ26を移動させる。また移動機構は、ワイヤWを巻き取るために第2プーリ27を移動させる移動用モータ(図示略)が取り付けられている。
【0033】
図6に示すように、ベース部材21の下面には、一対の取付部材35L,35Rが設けられている。取付部材35L,35Rには各変換プーリ37が回転可能に取り付けられている。これらの変換プーリ37は、ケース部材22内に位置する駆動プーリ25及び第1プーリ26から送り出されたワイヤWを巻回する。変換プーリ37は、ワイヤの巻回方向を、第1面内と第2面内との間で変換する。
【0034】
さらに取付部材35L,35Rの下面には、待機用プーリ38が回転可能に取り付けられている。待機用プーリ38には、非切断時であって、各アーム部材11に設けられた先端プーリ57にワイヤWが巻かれていない場合に、ワイヤWが巻かれている。さらに、この待機用プーリ38は、変換プーリ37から送り出されたワイヤWの延在方向を、前後方向から左右方向に変換する。各アーム部材11は、各待機用プーリ38の間を前進及び後退する。
【0035】
<ワイヤソー切断装置の動作>
図7~
図12を参照して、ワイヤソー切断装置10の動作について説明する。これらの図は、切断方法を説明するための断面図である。これらの図において、ワイヤソー切断装置10については、断面ハッチングを省略している。また、ここでは、切断対象物である円筒壁100の一部を切り出す際に、円筒壁100を水平方向に切断(水平切断)する場合について説明する。さらに、見やすくするために、水平方向に切断された部分のハッチングを省略している。
【0036】
図7は、円筒壁100の切断前の状態を示す。水平切断においては、先ず穿孔装置3が一対のコア孔Hを形成する。コア孔Hは、アーム部材11L,11Rの相対角度θAに対応する間隔で形成される。
【0037】
ワイヤソー切断装置10は、アーム部材11L,11Rを、先端プーリ57が円筒壁100から離れた待避位置に配置する。つまり、先端プーリ57が待機用プーリ38(
図7では図示略)の先端と同一、若しくはその後方に位置するように配置する。ワイヤWは、待機用プーリ38の間で弛まない状態に保持されている。
【0038】
回転ステージ2は、コア孔Hのそれぞれの中心線とアーム部材11L,11Rの中心軸とが整合するように、ワイヤソー切断装置10を配置する。このとき、カバー43は湾曲部44Aを有するため、湾曲部44Aと円筒壁100の内側面102との隙間が小さくなる。また当接部44Bは内側面102に当接する。
【0039】
作業者は、ワイヤソー切断装置10を制御する制御部(図示略)に指示を入力する。制御部は、集塵装置(図示略)を駆動することによって吸引処理を開始する。具体的には、各アーム部材11の集塵部52に接続された集塵装置を稼働させる。これにより、集塵部52に接続された集塵ホースを介して、カバー43、基台部41、ケース部材22の内部の空気が排出される。
【0040】
また、制御部は駆動モータ30を駆動させて駆動プーリ25を回転させる。これにより、駆動プーリ25に巻回されたワイヤWが高速回転する。制御部は、移動用モータ34を駆動して第1プーリ26の位置を調整する。これにより、ワイヤWの張力が調整される。
【0041】
図8は、各アーム部材11の動作を中心に説明する図であるため、本体部20、架台部40及びモータ46等の図示を省略している。
図8では、ワイヤソー切断装置10は、右側のアーム部材11Rを先に前進させることによって切断を開始している。制御部は、右側の可動機構部45Rのモータ46を駆動する。これにより、アーム部材11Rが前進する。このとき、アーム部材11Rの先端プーリ57は、対象物を切断する位置である切断位置に配置される。
【0042】
アーム部材11Rの先端プーリ57が、待機用プーリ38の先端よりも前に突出した場合には、先端プーリ57が、高速回転しているワイヤWを引っ掛ける。そして、アーム部材11Rがさらに前進すると、先端プーリ57は、ワイヤWを引っ張りながらコア孔Hに進入する。このとき、ワイヤWの張力に応じて第1プーリ26がケース部材22内で垂直方向に移動し、ワイヤWの長さ及び張力を調整する。
【0043】
アーム部材11Rのガイド部材58A,58Bが、コア孔Hに挿入されると、ボール60がコア孔Hの内周面を当接しながら滑る。これにより、アーム部材11Rがコア孔Hにガイドされる。
【0044】
アーム部材11Rの前進に応じて、アーム部材11Rの先端プーリ57に巻回されたワイヤWが、高速回転して円筒壁100を切断する。円筒壁100の切断が開始されると粉塵(切断粉)が発生する。この粉塵は、空気とともに集塵部52に接続されたホースを介して、稼働中の集塵装置に吸引されることにより、ワイヤソー切断装置10の外部に排出される。
【0045】
図9は、両方のアーム部材11L,11Rがさらに前進した状態を示す。制御部は、右側の可動機構部45Rを駆動してから所定時間が経過した後(例えばアーム部材11Rが50mm先行して前進した後)、左側の可動機構部45Lのモータ46を駆動する。これにより、アーム部材11Lが前進する。アーム部材11Lの先端プーリ57は切断位置に配置される。この場合においても、右側のアーム部材11Rと同様に、アーム部材11Lは、ガイド部材58A,58Bのボール60によってコア孔Hの内周面にガイドされながらコア孔H内を前進する。
【0046】
アーム部材11Lが前進すると、先端プーリ57が、ワイヤWを引っ張りながら前進する。この場合においても、ワイヤWの張力に応じて第1プーリ26が移動し、ワイヤWの長さ及び張力を調整する。アーム部材11L,11Rの前進移動に伴い、高速回転したワイヤWが、円筒壁100を切断する。
【0047】
このように各アーム部材11のうち一方が、先行して前進することによって円筒壁100を切断する。これにより、ワイヤWには、各アーム部材11が前進する力が押し付け力として加わるため、各アーム部材11を横並びで移動させる場合に比べて、効率的に切断することができる。
【0048】
また、各アーム部材11が前進及び後退しない場合には、各アーム部材11をコア孔Hに挿入及び退出させるためクレーン又はフォークリフト等によってワイヤソー切断装置10を円筒壁100に近付けたり遠ざけたりする。アーム部材11を移動させる可動機構部45を設けることによって、本体部20及び架台部40の位置を変更することなく各アーム部材11だけを移動させることができる。このため、各アーム部材11をコア孔Hに挿入及び退出するのに要する時間を短縮化することができる。
【0049】
図10は、一方のアーム部材11Rがコア孔Hの端に到達した状態を示す。制御部は、右側の可動機構部45Rのモータ46を停止する。これにより、アーム部材11Rは前進を停止する。制御部は、左側の可動機構部45Lのモータ46の駆動を続ける。
【0050】
図11は、一方のアーム部材11Lに加え、他方のアーム部材11Rがコア孔Hの端に到達した状態を示す。制御部は、左側の可動機構部45Lのモータ46を停止するとともに、駆動モータ30を停止する。これにより、コア孔Hの間において、ブロック110(
図1参照)の下面が円筒壁100から切り出される。
【0051】
図12は、アーム部材11L,11Rを後退させる図である。制御部は、可動機構部45L,45Rのモータ46を切断時とは逆方向に回転させる。これにより、アーム部材11L,11Rは後退する。ここで、制御部は、右側のアーム部材11Rを、左側のアーム部材11Lよりも早めに後退させるようにしてもよい。
【0052】
本体部20は、アーム部材11L,11Rの後退に伴い、第2プーリ27を移動させることによりワイヤWを巻き取る。このとき、本体部20は、第1プーリ26を移動させることにより、ワイヤWの長さ及び張力を調整する。ワイヤWは円筒壁100から抜け出す方向に移動する。
【0053】
制御部は、アーム部材11L,11Rを円筒壁100から退出させると、駆動モータ30を停止してワイヤWの回転を停止する。また、制御部は、各可動機構部45のモータ46及び集塵装置を停止する。ワイヤWは、アーム部材11L,11Rの先端プーリ57から外れて、待機用プーリ38の間で張力が加わった状態になる。
【0054】
装置の回転移動は、回転ステージ2のステージ本体6を回転させることにより、ワイヤソー切断装置10を次の目標位置に移動させる。このため、クレーンやフォークリフトがワイヤソー切断装置10を目標位置まで移動させる場合に比べ、移動時間を短縮化することができる。そして、制御部は、ワイヤソー切断装置10を制御して、一対のコア孔Hの間であって切断されていない部分を切断させる。さらに、鉛直方向において異なる位置を切断する場合には、昇降装置が作業床を昇降させる。
【0055】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)各アーム部材11は、端部11Aから先端プーリ57が設けられた端部11Bに向かって、各アーム部材11の間隔が拡がるように延在する。このため、ワイヤソー切断装置10は、円筒壁100の径方向に延在するコア孔Hの中心軸に沿って、コア孔Hの端までアーム部材11を挿入することができる。また、ワイヤソー切断装置10は、各アーム部材11を前進及び後退させる可動機構部45を備える。このため、各アーム部材11をコア孔Hに挿入及び退出させるために、ワイヤソー切断装置10を円筒壁100の内側面102に対して近づけたり遠ざけたりする必要がない。よって、コア孔Hの間のコンクリートを効率よく切断することができる。
【0056】
(2)架台部40に設けられたカバー43は、円筒壁100の内側面102に当接する湾曲部44Aを備える。湾曲部44Aは、円筒壁100の切断時に架台部40と円筒壁100の内側面102との隙間を埋める。このため、架台部40と円筒壁100の内側面102との隙間から、切断に伴う粉塵等が周囲に飛散することを抑制することができる。
【0057】
(3)各アーム部材11は、可動機構部45によって前進することにより、待機用プーリ38の間に張られたワイヤWを、各先端プーリ57に巻回する。そして、各先端プーリ57に巻回されたワイヤWにより円筒壁100を切断する。また、各アーム部材11は、可動機構部45によって後退することにより、ワイヤWを各先端プーリ57から外して切断前の状態に戻す。このため、作業者が手作業でワイヤWをアーム部材11に掛ける必要が無く、次の切断を効率的に行なうことができる。また、ワイヤWの摩耗等によりワイヤWを交換する場合には、本体部20のみを、架台部40から分離して交換することができる。
【0058】
(4)先端プーリ57はアーム部材11の延在方向と平行な第1面においてワイヤWを巻回する。また、駆動プーリ25、第1プーリ26、第2プーリ27及び第3プーリ28は、第1面に対して垂直な第2面内においてワイヤWを巻回する。このため、アーム部材11がワイヤWを巻回する面及び各プーリ25~28がワイヤWを巻回する面を、同一面内又は平行に配置する場合に比べ、ワイヤソー切断装置10をアーム部材11と平行な水平面においてコンパクトにすることができる。
【0059】
(5)アーム部材11は、アーム部材11の端部11Aに、集塵ホースが連結される集塵部52を備える。このため、アーム部材11は、アーム部材11の中空状の棒状部51を介してカバー43内の粉塵を集塵装置に送り出すことができる。
【0060】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
<解体システム>
・上記実施形態では、ワイヤソー切断装置10を回転ステージ2に載置した。これに代えて、楊重装置(図示略)がワイヤソー切断装置10を吊り下げるとともに、ワイヤソー切断装置10を、各アーム部材11をコア孔Hに挿入可能な目標位置に移動させるようにしてもよい。楊重装置は穿孔装置3を吊り下げてもよい。
【0061】
・上記実施形態では、ワイヤソー切断装置10を、解体システム1を構成するものとして説明したが、これに限定されない。例えば、ワイヤソー切断装置10は、コンクリートブロックを切断するものとして単独で用いることができる。
【0062】
・上記実施形態では、ワイヤソー切断装置10の切断の対象物を、原子炉の内部コンクリートに例示して説明したが、これに限定されない。また、対象物は円筒壁100に限定されない。例えば、コア孔Hの延在角度が0°超90°未満であれば、対象物は直方体のコンクリート構造体であってもよい。また、コンクリート構造体に限らず、鉄製等、他の材料からなる構造体であってもよい。
【0063】
<本体部>
・上記実施形態では、第1プーリ26とともに、第2プーリ27を設ける。切断領域に応じたワイヤWの長さによっては、第2プーリを省略したり第2プーリを固定したりしてもよい。また、第1プーリ26、第2プーリ27及び第3プーリ28は、本体部20の大きさに応じて適宜変更してもよい。
【0064】
・上記実施形態では、先端プーリ57が各アーム部材11の延在方向と平行な第1面内においてワイヤWを巻回し、駆動プーリ25及び第1プーリ26が、第1面と直交する第2面内においてワイヤWを巻回した。これに代えて、駆動プーリ25及び第1プーリ26は、第1面と同一平面又は平行な面である第2面内においてワイヤWを巻回するようにしてもよい。この場合、変換プーリ37及び待機用プーリ38からなる方向転換部を省略することができる。
【0065】
<可動機構部>
・ワイヤWを巻回する先端プーリ57を設けたアーム部材11の先端を前後に移動させる構成は、ラック53とピニオンギア47とを用いた構成に限られない。例えば、エアシリンダやアクチュエータを用いて、アーム部材11を前後に移動させてもよい。さらに、先端プーリ57を前後に移動させる機構は、アーム部材11を前後に直線移動させる場合に限られない。例えば、アーム部材11を、伸縮可能な構成にして、切断時には伸長し、切断終了後には、縮小させる構成としてもよい。具体的には、アーム部材を、断面が四角形状の大きさの異なる2つの中空形状の管部材を入れ子状にして構成する。そして、切断時には、アーム部材の管部材をスライドさせることにより延長(先端を孔の奥に前進)させ、切断終了後に、入れ子状に戻すことにより縮小(先端を後退)させる。
【0066】
・上記実施形態では、ワイヤソー切断装置10は、非切断時に、先端プーリ57から外れたワイヤWを掛ける待機用プーリ38を備える。これに代えて、待機用プーリ38を省略してもよい。そして、アーム部材11の先端プーリ57が常にワイヤWを巻回した状態に維持されるようにしてもよい。
【0067】
<架台部>
・上記実施形態では、カバー43は湾曲部44Aを有する突出部44を備えるようにした。これに代えて、突出部44は、湾曲部44Aではなく、上面からみて先端が直線状に延在する上壁部及び下壁部を備えるようにしてもよい。この場合であっても当接部44Bを円筒壁100の内側面102に当接することにより、粉塵の飛散を抑制することができる。
【0068】
<アーム部材>
・上記実施形態では、切断時において、アーム部材11Rをアーム部材11Lよりも先に前進させる。また、切断後、アーム部材11Rをアーム部材11Lよりも先に後退させる。コア孔Hにおける各アーム部材11の移動方法は、これに限られない。例えば、切断時及び切断後に、アーム部材11の先端が横並びとなるように、2つのモータ46を駆動させてもよい。
【0069】
・上記実施形態のワイヤソー切断装置10は、各アーム部材11を挿入しながら、アーム部材11の先端の先端プーリ57に巻回したワイヤWで円筒壁100を切断した。切断方法は、アーム部材11を挿入しながら切断する場合に限られない。例えば、アーム部材11を、切断前に(先に)コア孔Hに挿入する。この場合、ワイヤWを、先端プーリ57に巻回し、アーム部材11の基元部に位置するように配置する。そして、切断時には、コア孔Hの側面及び円筒壁100の側面にワイヤWを配置した状態から、ワイヤWに張力を加えて切断を行なう。
【0070】
<集塵部>
・上記実施形態では、アーム部材11の集塵部52に集塵ホースを連結するようにした。これに代えて、架台部40に設けられたカバー43に集塵ホースを連結するようにしてもよい。この態様においても、架台部40内の粉塵を、集塵ホースを介して吸引することができる。
【符号の説明】
【0071】
H…コア孔、10…ワイヤソー切断装置、11,11L,11R…アーム部材、20…本体部、21…ベース部材、22…ケース部材、24…補助ベース部材、25…駆動プーリ、26…第1プーリ、27…第2プーリ、28…第3プーリ、29…被覆部材、30…駆動モータ、31,32…ガイドバー、34…移動用モータ、35L,35R…取付部材、37…変換プーリ、38…待機用プーリ、40…架台部、41…基台部、43…カバー、44…突出部、44A…湾曲部、44B…当接部、45,45L,45R…可動機構部、46…モータ、47…ピニオンギア、48…回転軸、51…棒状部、52…集塵部、53…ラック、57…先端プーリ、58A,58B…ガイド部材、60…ボール、100…円筒壁。