(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131391
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】アニメーションホログラムの表示装置及び表示方法
(51)【国際特許分類】
G03H 1/22 20060101AFI20240920BHJP
G11B 7/0065 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G03H1/22
G11B7/0065
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041626
(22)【出願日】2023-03-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G網におけるホログラフィ通信のための高効率圧縮伝送技術の研究開発 研究開発項目1 ホログラフィの高効率圧縮技術の研究開発 研究開発項目1-c)ホログラフィに適したビデオベース圧縮技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】小磯 諒太
【テーマコード(参考)】
2K008
5D090
【Fターム(参考)】
2K008AA08
2K008AA17
2K008CC03
2K008FF24
2K008HH25
5D090BB16
5D090LL01
5D090LL03
(57)【要約】
【課題】複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ再生光を照射して各コマのアニメーションを再生するアニメーションホログラムの表示装置及び表示方法を提供する。
【解決手段】干渉縞形成媒体20に近接配置されて再生光を透過又は遮蔽する光学シャッタ10と、再生光を光学シャッタ越しに干渉縞形成媒体20へ照射する再生光源30とを具備し、光学シャッタ10は、再生するコマの干渉縞を照射する再生光を透過させ、再生しないコマの干渉縞を照射する再生光を遮蔽する。再生するコマの切り替えに同期して再生光を一時的に消灯できる。光学シャッタ10が電子シャッタであれば、再生するコマの干渉縞と対向する領域を開口し、再生しないコマの干渉縞と対向する領域を閉口する。光学シャッタ10がシャッタ用マスクであって開口部が固定的に設けられていれば、再生するコマ毎に干渉縞と開口部とが対向するように位置決めされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ再生光を照射して各コマを再生するアニメーションホログラムの表示装置において、
干渉縞形成媒体に近接配置されて再生光を透過又は遮蔽する光学シャッタと、
再生光を光学シャッタ越しに干渉縞形成媒体へ照射する照明手段とを具備し、
前記光学シャッタは、再生するコマの干渉縞を照射する再生光を透過させ、再生しないコマの干渉縞を照射する再生光を遮蔽することを特徴とするアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項2】
再生するコマの切り替え時に光学シャッタの開閉動作に同期して再生光を一時的に消灯する手段を更に具備したことを特徴とする請求項1に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項3】
前記光学シャッタが電子シャッタであり、再生するコマの干渉縞と対向する領域を開口し、再生しないコマの干渉縞と対向する領域を閉口することを特徴とする請求項1又は2に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項4】
前記電子シャッタが液晶シャッタであることを特徴とする請求項3に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項5】
前記電子シャッタがMEMSシャッタであることを特徴とする請求項3に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項6】
前記光学シャッタがシャッタ用マスクであって開口部が固定的に設けられ、再生するコマ毎に、対応する干渉縞と開口部とが対向するように位置決めされることを特徴とする請求項1又は2に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項7】
前記電子シャッタの前記各干渉縞の境界と対向する領域が常に閉口状態であることを特徴とする請求項3に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項8】
前記液晶シャッタが、各コマの干渉縞毎に画素電極が形成されたセグメント方式であることを特徴とする請求項4に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項9】
前記液晶シャッタが、ドット状の画素電極が均一に配置されたドットマトリックス方式であることを特徴とする請求項4に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項10】
前記シャッタ用マスクを干渉縞形成媒体に対して平行移動させる手段を具備し、
前記平行移動させる手段は再生するコマ毎に、対応する干渉縞と開口部とが対向する位置までシャッタ用マスクを平行移動させることを特徴とする請求項6に記載のアニメーションホログラムの表示装置。
【請求項11】
複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ再生光を照射して各コマを再生するアニメーションホログラムの表示方法において、
干渉縞形成媒体に近接配置されて再生光を透過又は遮蔽する光学シャッタ越しに干渉縞形成媒体へ照射し、
前記光学シャッタは、再生するコマの干渉縞を照射する再生光を透過させ、再生しないコマの干渉縞を照射する再生光を遮蔽することを特徴とするアニメーションホログラムの表示方法。
【請求項12】
前記光学シャッタが電子シャッタであり、再生するコマの干渉縞と対向する領域を開口し、再生しないコマの干渉縞と対向する領域を閉口することを特徴とする請求項11に記載のアニメーションホログラムの表示方法。
【請求項13】
前記光学シャッタがシャッタ用マスクであって開口部が固定的に設けられ、
再生するコマ毎に、対応する干渉縞と開口部とが対向する位置までシャッタ用マスクを平行移動させることを特徴とする請求項11に記載のアニメーションホログラムの表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニメーションホログラムの表示装置及び表示方法に係り、特に、複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ再生光を照射して各コマのアニメーションを再生するアニメーションホログラムの表示装置及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログホログラム及び全方向視差高解像度計算機合成ホログラムは、干渉縞形成媒体に微細な干渉縞パターンを形成することで広い観察範囲と大きなサイズとを両立する高品質な立体映像を再生できる一方、単一の干渉縞形成媒体に固定の干渉縞パターンを記録するという特性上、静止画のみで再生像の切り替えができないという特徴がある。
【0003】
特許文献1には、1枚の干渉縞形成媒体を用いて複数の再生像を切り替え可能にするために、
図12のように、コンピュータホログラフィによって計算された複数のホログラムの各々の干渉縞データの一部を所定の空間分割パターンに従って抽出し、各干渉縞データの一部を一つに統合することにより干渉縞形成媒体を生成する技術が開示されている。
【0004】
このようにして生成した干渉縞形成媒体へ、
図13に示すように、干渉縞データの空間分割パターンと同一のパターンのパターン照明(構造化照明)を切り替えながら順次に照射すれば、複数のホログラム再生像を切り替え可能なアニメーションホログラムが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2021-057938号
【特許文献2】特願2022-043137号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K. Matsushima and S. Nakahara: Extremely high-definition full-parallax computer-generated hologram created by the polygon-based method, App. Opt. 48, H54-H63 (2009).
【非特許文献2】近藤暁靖, 松島恭治: シルエット近似を用いた全方向視差CGH の隠面消去, 信学論D-II J87-D-II, 7, 1487-1495 (2004).
【非特許文献3】K. Nakamoto, K. Matsushima: Exact mask-based occlusion processing in large-scale computer holography for 3D display, SPIE Digital Optical Technologies 2019, Munich, Germany, SPIE Proc. 11062, 1106204(2019.6.24).
【非特許文献4】A. Stein, Z. Wang, and J. Jr, "Computer-generated holograms: A simplified ray-tracing approach," Comput. Phys. 6, 389‐392 (1992).
【非特許文献5】H. Ando, T. Sogawa and H. Gotoh, Appl. Phys. Lett. 73(1998)566.
【非特許文献6】Color Animated Full-parallax High-definition Computer-generated Hologram,SIGGRAPH Asia 2022,2022/12.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、空間分割パターンと同一パターンの構造化照明を切り替えているが、光の広がりにより構造化照明の光が所望の領域外に漏れ出すことにより、所望のホログラムの再生像以外の再生像が重畳表示されてしまうという課題がある。
【0008】
加えて、構造化照明を干渉縞形成媒体の空間分割パターンに寸分の狂いもなく正確に位置合わせを行う必要があるため、位置合わせに時間を要することや、何らかの衝撃によって構造化照明にずれが生じてしまった場合に正しい映像が再生できなくなるといった問題がある。
【0009】
本発明の目的は、上記の技術課題を解決し、アニメーションホログラム表示装置の干渉縞形成媒体に光学シャッタを近接配置し、再生光を各コマの干渉縞毎に透過又は遮蔽することで所望の領域外への光漏れを抑制し、異なるコマの再生像が重畳表示されることによる品質劣化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体へ再生光を照射して各コマを再生するアニメーションホログラム表示装置において、以下の構成を具備した点に特徴がある。
【0011】
(1)干渉縞形成媒体に近接配置されて再生光を透過又は遮蔽する光学シャッタと、再生光を光学シャッタ越しに干渉縞形成媒体へ照射する照明手段とを具備し、光学シャッタは、再生するコマの干渉縞を照射する再生光は透過し、再生しないコマの干渉縞を照射する再生光は遮蔽するようにした。
【0012】
(2) 再生するコマの切り替え時に光学シャッタの開閉動作に同期して再生光を一時的に消灯するようにした。
【0013】
(3)光学シャッタの各干渉縞の境界と対向する領域を常に遮蔽状態とした。
【0014】
なお、本発明は上記の特徴的な構成を備えるアニメーションホログラムの表示装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとするアニメーションホログラムの表示方法としても実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果が達成される。
【0016】
(1)再生しようするコマの干渉縞以外への光漏れを抑制できるので複数コマの再生像が重畳表示されることによる品質劣化を抑制できる。また、構造化照明を用いずに各干渉縞へ照射される再生光を高精度に切り替えられるので、従来必要であった光源の精密な位置合わせが不要となる。
【0017】
(2) 再生するコマの切り替えに同期して再生光を一時的に消灯すれば、前のコマの再生像と次のコマの再生像とが重畳表示されることによる品質劣化を抑制できる。
【0018】
(3) 各干渉縞の境界部分と対向する領域を常に遮蔽状態とすれば光漏れを抑制できるので、複数コマの再生像が重畳表示されることによる品質劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明を適用したアニメーションホログラム表示装置の構成を模式的に示した図である。
【
図2】本発明を適用したアニメーションホログラム表示装置の他の構成を模式的に示した図である。
【
図3】本発明を適用したアニメーションホログラム表示装置において再生するコマを切り替える方法を示した図である。
【
図4】第1実施形態が採用するセグメント方式の液晶シャッタの構造を示した図である。
【
図5】ドットマトリクス方式の液晶シャッタの例を示した図である。
【
図6】ドットマトリクス方式の液晶シャッタにおいて干渉縞の境界部分に対向する部分を常に閉口する例を示した図である。
【
図7】第2実施形態に係るアニメーションホログラム表示装置の構成を模式的に示した図である。
【
図8】第2実施形態における2コマの再生方法を示した図(その1)である。
【
図9】第2実施形態における2コマの再生方法を示した図(その2)である。
【
図10】第2実施形態における4コマの再生方法を示した図(その1)である。
【
図11】第2実施形態における4コマの再生方法を示した図(その2)である。
【
図12】コマ毎に空間分割した干渉縞を多重化により1枚に統合する従来例を示した図である。
【
図13】各コマの干渉縞を統合した1枚の干渉縞にコマ毎に固有の照射パターンで再生光を照射してアニメーションを再生する従来例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明を適用したアニメーションホログラム表示装置1の主要部の構成を示した機能ブロック図であり、ここでは本発明の説明に不要な構成は図示を省略している。
【0021】
アニメーションホログラム表示装置1は、再生する複数のコマに対応する干渉縞が空間分割多重化された干渉縞形成媒体20へ再生光源30から再生光を照射して各コマを再生する。ここでは再生コマ数が「2」であって、干渉縞形成媒体20にはコマ1に対応する干渉縞21とコマ2に対応する干渉縞22とが格子(市松模様)状に空間分割多重化されている場合を例にして説明する。
【0022】
干渉縞形成媒体20は、3Dモデルを入力としてコンピュータホログラフィによって計算された2コマ分の干渉縞を、前記
図12と同様の手法により空間分割多重化することで形成できる。このような干渉縞は、非特許文献1が開示するように再生対象となる3Dポリゴンメッシュモデルに含まれるポリゴンを面光源として扱い、各面光源から干渉縞形成媒体20への光波伝搬計算を実施することによって形成される。
【0023】
その際、正しい陰面消去で3Dモデルを表示するため、ポリゴン法の陰面消去手法として、非特許文献2が開示するシルエット法や、非特許文献3が開示するサーフェースマスク法を採用し、マスクを用いた光波の遮蔽を行い、遮蔽関係を考慮した上で干渉縞形成媒体20までの光波伝搬を計算する。
【0024】
なお、3Dモデルとしてポリゴンメッシュモデルではなく点群モデルを入力として計算する場合は、非特許文献4が開示する点光源法を採用し、点群を点光源として扱って伝搬計算を実施する。
【0025】
こうして伝搬計算された物体光と呼ばれる3Dモデルに関する光波分布に対して、再生時の再生光源と位置や波長が同一の参照光を計算機上で足し合わせることにより干渉計算を行う。干渉計算によって得た振幅分布または位相分布を量子化した干渉縞のデータに対して空間分割多重した上で、レーザ描画装置又は電子線描画装置を用いたリソグラフィ技術やその他微細加工技術を用いることで干渉縞形成媒体20が生成される。
【0026】
本実施例では干渉縞として計算機合成ホログラムを用いるが、実物体を被写体として光の干渉を生じさせ、その干渉縞を記録したアナログホログラムを用いても良い。
【0027】
干渉縞形成媒体20の光源側には、各コマの干渉縞と対向する領域毎に再生光を透過又は遮蔽する光学シャッタ10が近接配置されている。制御装置40は、再生するコマ毎に光学シャッタ10の各コマの干渉縞と対向する領域の開閉を制御することで再生光を透過又は遮蔽する。前記光学シャッタ10としては、後に詳述するように電子シャッタ10Aや移動式のシャッタ用マスク10Bを用いることができる。
【0028】
なお、光学シャッタ10の構造によってはシャッタ機構の開閉動作時に他のコマの干渉縞へ光が透過されてしまうことがある。そのため、
図2に一例を示すように同期装置50を更に設け、制御装置40による光学シャッタ10の開閉動作に同期して再生光源30を消灯することで複数のコマの再生像が同時に再生されることを防ぐようにしても良い。
【0029】
前記同期装置50は制御装置40による光学シャッタ10の開閉信号を入力とし、再生光源30に点灯もしくは消灯するための信号を出力する。光学シャッタ10の方式によってはシャッタ機構の開閉動作時に光が漏れてしまう場合があるが、同期装置50により開閉動作時に再生光源を消灯すれば光の漏れを防ぎ、前のコマの再生像と次のコマの再生像との重畳を防ぐことができる。
【0030】
なお、シャッタ機構の開閉動作時にあえて光を漏れさせることにより、切り替え前の再生像を消しながら、重ねて次の再生像を映し出すといったクロスディゾルブ(クロスフェード)エフェクトのような映像効果を狙った再生像切り替えを実現したい場合には同期装置50は不要となる。
【0031】
再生光源30は、制御装置40又は同期装置50からの入力信号に基づいて点灯又は消灯可能な照明機器である。基本的に計算もしくは記録時に用いた参照光と波長が一致する光源を用いるが、干渉縞形成媒体20が体積型ホログラムであってホログラム側で波長選択性を持っている場合はこの限りではない。また、本実施例では干渉縞形成媒体20の前面に光源30を配置するが、干渉縞形成媒体20に透過型のホログラムを利用するのでればバックライトとして用いてもよい。
【0032】
図3は、本発明の第1実施形態に係るアニメーションホログラム表示装置1の主要部の構成を示した図であり、前記と同一の符号は同一又は同等部分を表している。本実施形態は、光学シャッタ10として電子シャッタ10Aを採用した点に特徴がある。
【0033】
制御装置40は、予め設定した更新頻度で電子シャッタ10Aの各部を自動的に開閉させることで、1コマ目の開閉パターンと2コマ目の開閉パターンとを逆にする。あるいは入力ボタン等の入力デバイスへの手動操作により任意のタイミングで電子シャッタ10Aの開閉パターンを切り替えるようにしても良い。
【0034】
このような制御装置40は、CPU、ROM、RAM、バス、インタフェース等を備えた汎用のコンピュータやサーバに、以下に詳述する各機能を実現するアプリケーション(プログラム)を実装することで構成できる。あるいはアプリケーションの一部をハードウェア化またはソフトウェア化した専用機や単能機としても構成できる。
【0035】
図4は、液晶式の電子シャッタ10Aの構成を示した図であり、対向配置した表裏一対の透明画素電極103a,103b間に液晶分子102を封止し、更に偏光方向が相互に直行する表裏一対の偏光板101a,101bで並列に挟み込んで構成される。このような電子シャッタ10Aを用いれば、画素電極103(103a,103b)に電圧を印加して液晶分子102の向きを変更することで、画素電極103(103a,103b)のパターンに応じて再生光の透過及び遮蔽を領域毎に制御できる。
【0036】
電子シャッタ10Aは、透明画素電極103a,103bの電極パターンを
図4に示すように干渉縞形成媒体20の干渉縞の大きさに一致させるセグメント方式でも良いし、あるいは
図5に示すようにドットパターンを採用し、より緻密な制御を可能にするドットマトリックス方式であっても良い。また、液晶式の電子シャッタ10Aに代えてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シャッタを用いてもよい。
【0037】
なお、電子シャッタ10Aとしてドットマトリックス方式を採用するのであれば、
図6に示すように、干渉縞の境界部分に対向する領域120は常に遮蔽することで、所望の領域外に光が照射されることを防ぐことができる。
【0038】
本実施形態によれば、再生しようするコマの干渉縞以外への光漏れを電子シャッタ10Aで抑制できるので複数コマの再生像が重畳表示されることによる品質劣化を抑制できる。また、構造化照明を用いずに各干渉縞へ照射される再生光を高精度に切り替えられるので、光源の精密な位置合わせが不要となる。
【0039】
図7は、本発明の第2実施形態に係るアニメーションホログラム表示装置1の主要部の構成を示した図であり、前記と同一の符号は同一又は同党部分を表している。本実施形態は、光学シャッタ10として移動式のシャッタ用マスク10Bを採用した点に特徴がある。
【0040】
移動機構60は、前記シャッタ用マスク10Bを水平(X)方向及び垂直(Y)方向の少なくとも一方へ平行移動させる。制御装置40は、再生するコマに応じて移動機構60を制御することでシャッタ用マスク10Bを平行移動させる。
【0041】
図8は、干渉縞形成媒体20の各干渉縞とシャッタ用マスク10Bにおける開口部110及び閉口部111との関係を示した図であり、干渉縞形成媒体20では2コマ分の干渉縞(1,2)が4行×4列の配列で8個ずつ市松模様に空間分割多重化されている。シャッタ用マスク10Bでは、各干渉縞に対応する4行×4列に1列追加した4行×5列の配列で開口部110及び閉口部111が10個ずつ市松模様に配置されている。制御装置40は、再生するコマに応じてシャッタ用マスク10Bを水平(X)方向へ移動させる。
【0042】
このような構成において、1コマ目を再生する際は、
図9の左側に示すように、干渉縞形成媒体20の各干渉縞とマスク10Bの第2列~第5列の各開閉部とが対向するようにマスク10を位置決めして光源30から再生光を照射する。これによりコマ1の干渉縞のみに再生光が照射されるのでコマ1を再生できる。
【0043】
2コマ目を再生する際は、
図9の右側に示すように、干渉縞形成媒体20の各干渉縞とマスク10の第1列~第4列の各開閉部とが対向するようにシャッタ用マスク10Bを図中右方向へ1列分だけ平行移動させて光源30から再生光を照射する。これによりコマ2の干渉縞のみに再生光が照射されるのでコマ2を再生できる。
【0044】
なお、マスク10を垂直(Y)方向へ移動させるのであれば、干渉縞に対応する4行×4列に1行追加した5行×4列の配列で開口部110及び閉口部111を市松模様に配置すれば良い。
【0045】
図10は、干渉縞形成媒体20の各干渉縞とシャッタ用マスク10Bの開口部110との他の関係を示した図である。ここでは干渉縞形成媒体20に4コマ分の干渉縞(1,2,3,4)が4行×4列の配列で4個ずつ市松模様に空間分割多重化されており、再生するコマに応じてシャッタ用マスク10Bを水平(X)及び垂直(Y)の各方向へ移動させる場合を例にして説明する。
【0046】
本実施形態では、各コマに4個ずつ割り当てられた干渉縞がいずれも、絶対位置は異なるものの3行×3列の矩形領域の4隅に配置されている。したがって、各コマに割り当てられた4個の干渉縞の相対位置はコマ間で一致している。シャッタ用マスク10Bではその略中央部に、前記各コマに割り当てられた4個の干渉縞の相対位置と同じ相対位置の4か所に開口部110が設けられ、それ以外は閉口されている。
【0047】
このような構成において、1コマ目を再生する際は
図11の左上に示すように、干渉縞形成媒体20の1コマ目の4か所の干渉縞とシャッタ用マスク10Bの4か所の開口部110とがそれぞれ対向するようにマスク10Bが位置決めされる。2コマ目を再生する際は同図右上に示すように、2コマ目の4か所の干渉縞とシャッタ用マスク10Bの4か所の開口部110とがそれぞれ対向するようにマスク10が右方向へ平行移動される。
【0048】
同様に、3コマ目を再生する際は同図右下に示すように、干渉縞形成媒体20の3コマ目の4か所の干渉縞とマスク10の4か所の開口部110とがそれぞれ対向するようにマスク10が垂直方向へ平行移動される。4コマ目を再生する際は同図左下に示すように、4コマ目の4か所の干渉縞とマスク10の4か所の開口部110とがそれぞれ対向するようにシャッタ用マスク10Bが左方向へ平行移動される。1コマ目へ戻る際は、1コマ目の4か所の干渉縞とマスク10Bの4か所の開口部110とがそれぞれ対向するようにシャッタ用マスク10Bが上方向へ平行移動される。
【0049】
本実施形態によれば、再生しようするコマの干渉縞以外への光漏れをマスク10Bで抑制できるので複数コマの再生像が重畳表示されることによる品質劣化を抑制できる。また、構造化照明を用いずに各干渉縞へ照射される再生光を高精度に切り替えられるので、光源の精密な位置合わせが不要となる。
【0050】
そして、上記の各実施形態によれば、アニメーションホログラムにおいて所望の領域外への光漏れを抑制し異なる再生像の重畳による品質劣化を抑制することができるのみならず、精密な光源の位置合わせが不要となるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、包括的で持続可能な産業化を推進する」や目標11「都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1…アニメーションホログラム表示装置,10…光学シャッタ,10A…電子シャッタ,10B…シャッタ用マスク,20…干渉縞形成媒体,21…コマ1に対応する干渉縞,22…コマ2に対応する干渉縞,30…再生光源,40…制御装置,50…同期装置,60…移動機構,101a,101b…偏光板,102…液晶分子,103a,103b…透明画素電極,110…開口部,111…閉口部