(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131394
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】積層体及び乗物用内装材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/12 20060101AFI20240920BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240920BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B32B27/12
B32B27/32 E
B60R13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041629
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】501383048
【氏名又は名称】ジェイソフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋一
【テーマコード(参考)】
3D023
4F100
【Fターム(参考)】
3D023BB03
3D023BD01
3D023BE05
3D023BE31
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK42A
4F100AL01C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DG15A
4F100EH20
4F100EH23
4F100GB33
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】CPPフィルムの省略により軽量化と製造コストの削減を実現することが可能な積層体を提供する。
【解決手段】本発明の積層体(10)は、不織布(11)と、不織布(11)に積層されて一体化される合成樹脂層(12)とを有し、合成樹脂層(12)は、一方の面が不織布(11)に重ね合わされる第1樹脂層(13)と、第1樹脂層(13)の他方の面に重ね合わされる第2樹脂層(14)とを有する2層構造で形成され、第1樹脂層(13)と第2樹脂層(14)とは、それぞれポリプロピレン系樹脂により形成され、且つ、共押出しラミネート層(12)である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布と、前記不織布に積層されて一体化される合成樹脂層とを有し、
前記合成樹脂層は、一方の面が前記不織布に重ね合わされる第1樹脂層と、前記第1樹脂層の他方の面に重ね合わされる第2樹脂層とを有する2層構造で形成され、
前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とは、それぞれポリプロピレン系樹脂により形成され、且つ、共押出しラミネート層である
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記合成樹脂層は、8μm以上30μm以下の厚さを有する
請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層は、それぞれ、4μm以上20μm以下の厚さを有する
請求項1記載の積層体。
【請求項4】
前記第1樹脂層は、ポリプロピレン単独重合体により形成され、
前記第2樹脂層は、ポリプロピレン単独重合体又はポリプロピレン共重合体により形成されている
請求項1記載の積層体。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の前記積層体が裏打ち材として設けられていることを特徴とする乗物用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の乗物に用いられる積層体及び乗物用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の室内には、天井材(天井用内装材)が設けられている。天井材は、一般的に、軽量であることが求められており、また、車室内を快適な温度に維持するための断熱性や、車室外からの騒音を遮断する吸音性が求められることもある。
【0003】
このような自動車用の天井材が、特開2014-51114号公報(特許文献1)に記載されている。この特許文献1に記載されている天井材は、芯材となるウレタン発泡体と、ウレタン発泡体の表側(室内側)に積層される表皮材(積層シート)と、ウレタン発泡体の裏側に積層される裏打ち材とを有する。なお、裏打ち材は、裏面材、裏材、又は裏打ちシートと呼ばれることもある。
【0004】
特許文献1の天井材では、ウレタン発泡体の補強のために、ガラス繊維層(ガラス繊維マット層)が、ウレタン発泡体の表面及び裏面に、熱硬化性の接着層を介して接着されている。更に、ウレタン発泡体に接着された表面側のガラス繊維層には、上述した表皮材が接着層を介して接着されており、裏面側のガラス繊維層には、上述した裏打ち材が接着層を介して接着されている。このような特許文献1の天井材は、上型と下型を備える成形金型を用いて熱プレス成形工程を行うことによって製造される。
【0005】
また特許文献1では、車室側に露出する表皮材が、スパンレース不織布と、ポリプロピレン製のフィルムとが、着色された樹脂層(着色樹脂層)によって貼り合わされた3層構造を有する。特許文献1には、スパンレース不織布の裏側に着色樹脂層が設けられていることにより、スパンレース不織布の目付量を小さくしても、天井材の内部が透けて見えることを防止できるため、外観不良を防ぐことができることが説明されており、また、裏打ち材については、不織布やプラスチックシート等で構成されていることが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の裏打ち材は、一般的に、不織布とCPPフィルム(無延伸ポリプロピレンフィルム)との間に、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を溶融して押し出すことによって、不織布とCPPフィルムとが熱可塑性樹脂によってラミネートされた3層構造で形成されている。
【0008】
また、従来の裏打ち材において、不織布は、裏打ち材の上述した断熱性や吸音性を高めるために、また、天井材を成形する熱プレス成形工程において、天井材と成形金型との間の離型性を確保するために用いられている。CPPフィルムは、非通気性を備えており、天井材の熱プレス成形工程において、天井材の上述した接着層を形成する熱硬化型接着剤が裏打ち材にしみ込むことや、裏打ち材からしみ出すことを防止するために配されている。
【0009】
例えば、天井材の成形工程において、例えば熱硬化型接着剤が裏打ち材を通って成形金型の表面(キャビティ面)にしみ出してしまうと、その熱硬化型接着剤が成形金型に付着して固まるという不具合が生じる。このような接着剤のしみ出しが蓄積されると、成形体を所定の形状に成形できなくなる等の問題を生じさせる。また、成形金型に付着した接着剤を除去するためには、多大なコストや時間が必要となるという問題もあった。このような接着剤のしみ出しによる問題を回避するために、従来の裏打ち材では、CPPフィルムを不織布に積層することが必要とされている。
【0010】
一方、離型に用いられる裏打ち材、及び、その裏打ち材を有する自動車用の天井材については、更なる軽量化や製造コストの削減が求められていた。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、CPPフィルムを用いなくても、熱プレス成形工程で接着剤のしみ出しを防止することが可能で、且つ、CPPフィルムの省略により軽量化と製造コストの削減を実現することが可能な積層体、及びその積層体が設けられている乗物用内装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明により提供される積層体は、不織布と、前記不織布に積層されて一体化される合成樹脂層とを有し、前記合成樹脂層は、一方の面が前記不織布に重ね合わされる第1樹脂層と、前記第1樹脂層の他方の面に重ね合わされる第2樹脂層とを有する2層構造で形成され、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とは、それぞれポリプロピレン系樹脂により形成され、且つ、共押出しラミネート層であることを特徴とする。
【0013】
本発明の積層体において、前記合成樹脂層は、8μm以上30μm以下の厚さを有することが好ましい。
【0014】
また、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層は、それぞれ、4μm以上20μm以下の厚さを有することが好ましい。
【0015】
更に、前記第1樹脂層は、ポリプロピレン単独重合体により形成され、前記第2樹脂層は、ポリプロピレン単独重合体又はポリプロピレン共重合体により形成されていることが好ましい。
【0016】
更に本発明によれば、上述した構成を有する前記積層体が裏打ち材として設けられている乗物用内装材が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層体(例えば、裏打ち材)及び乗物用内装材(例えば、自動車用天井材)によれば、熱プレス成形工程で接着層を形成する合成樹脂のしみ出しを防止することができ、且つ、CPPフィルムを用いずに形成されているため、従来の製品に比べて軽量化と製造コストの削減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例に係る裏打ち材の積層構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示した裏打ち材、基材部、表皮材を一体化する熱プレス成形を模式的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る裏打ち材の積層構造を模式的に示す断面図である。
図1に示す積層体10は、金型を用いて成形体を成形(熱プレス成形)するときに、成形金型50から成形体を剥離させ易くするために、成形体の少なくとも一部を形成するとともに金型の内面(キャビティ面)に接するように配される離型性を備えた積層体(又は、離型用積層体)10である。
【0020】
本実施形態において、
図1の積層体10は、自動車の天井材1(
図2を参照)に用いられる裏打ち材10であり、この裏打ち材10は、後述するように、基材部20及び表皮材30とともに成形金型50内にセットされた状態で、後述する熱プレス成形工程が行われることにより、裏打ち材10、基材部20、及び表皮材30が順番に積層されて一体化された天井材1を形成することができる。この場合、裏打ち材10は、天井材1の裏面を形成する部材である。
【0021】
本実施形態の裏打ち材(積層体)10は、不織布11と、不織布11の一方の面に積層されて一体化される合成樹脂層12とを有する。
不織布11は、繊維を織らずに、繊維同士を交絡、溶着、又は接着等により結合させたシート状の部材である。不織布11は、
図2に示すような天井材1の熱プレス成形工程において、天井材1の最も裏面側に配されていることにより、天井材1を成形金型50(下型52)から離型させ易くすることができる。
【0022】
本実施形態において、この裏打ち材10の不織布11は、融点が140℃以上である合成繊維を主成分として含む不織布11により形成されている。また、この不織布11としては、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、又は、SMS不織布が好適に使用される。
【0023】
スパンレース不織布は、繊維が高圧の水流で絡み合わされて結合された不織布であり、高い柔軟性を有し、また、嵩高性に優れている。本実施形態において、スパンレース不織布を形成する繊維の材質には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、レーヨン、又はポリプロピレンが用いられる。このようなスパンレース不織布が用いられることにより、裏打ち材10の不織布11が、高い嵩高性と伸縮性を備えることができる。このため、本実施形態の裏打ち材10を用いて天井材1の熱プレス成形を行うときに、裏打ち材10を変形させ易くして、裏打ち材10を所要の形状に安定して成形できる。また、天井材1を成形金型50から離型させ易くすることができる。
【0024】
この場合、スパンレース不織布は、20g/m2以上50g/m2以下の目付量(坪量)となるように形成されることが好ましい。目付量を20g/m2以上にすることにより、不織布11の強度を安定して確保でき、また、高い嵩高性を確保し易くすることができる。目付量を50g/m2以下にすることにより、不織布11を伸縮させ易くすること、また、裏打ち材10及び天井材1を軽量化し易くすることができる。
【0025】
スパンボンド不織布は、ノズルから紡糸された連続状の長繊維をコンベアベルト等の上に集積してウェブ状に形成し、その後、エンボス加工等によって繊維同士を融着させることによって得られる。スパンボンド不織布は、高い強度と柔軟性を有しており、また、製造コストを低く抑えることができる。本実施形態において、スパンボンド不織布を形成する繊維の材質には、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリプロピレンが用いられる。
【0026】
SMS不織布は、スパンボンド不織布(S)、メルトブロー不織布(M)、及びスパンボンド不織布(S)が重ね合わされた3層構造の不織布であり、高い強度と優れた柔軟性を有する。本実施形態において、SMS不織布のスパンボンド不織布及びメルトブロー不織布を形成する繊維の材質には、ポリプロピレンが用いられる。
【0027】
上述したようなスパンボンド不織布又はSMS不織布が裏打ち材10に用いられることにより、天井材1の熱プレス成形を行うときに、裏打ち材10を所要の形状に安定して変形させることができ、また、天井材1を成形金型50から離型させ易くすることができる。
この場合、スパンボンド不織布又はSMS不織布は、6g/m2以上30g/m2以下の目付量(坪量)となるように形成されることが好ましい。目付量を6g/m2以上にすることにより、不織布11の強度を安定して確保できる。目付量を30g/m2以下にすることにより、不織布11を伸縮させ易くすること、また、裏打ち材10及び天井材1を軽量化し易くすることができる。
【0028】
なお本発明において、裏打ち材10の不織布11は、上述したスパンレース不織布、スパンボンド不織布、又はSMS不織布であることが好ましいが、特に限定されるものではなく、ニードルパンチ不織布やサーマルボンド不織布等のその他の不織布を用いて裏打ち材が形成されてもよい。また本発明において、裏打ち材を形成する不織布の厚さ、不織布を形成する繊維の繊度等は特に限定されない。
【0029】
裏打ち材10の合成樹脂層12は、不織布11に対し、不織布11の成形金型50に接触する面(天井材1の裏面を形成する面)とは反対側の面に積層されている。この合成樹脂層12は、不織布11に接触する第1樹脂層13と、第1樹脂層13の不織布11に接触する側とは反対側(
図1の上側)の面に重ねられる第2樹脂層14とを有する2層構造で形成されている。
【0030】
ここで、本発明の経緯について簡単に説明する。本発明者等は、従来の裏打ち材に配されていた非通気性のCPPフィルムを省略することによって天井材の軽量化及びコスト削減を図るため、裏打ち材の不織布に対し、押出しラミネートによって合成樹脂を直接積層して貼り合わせることに着想して研究を重ねた。
【0031】
しかし、押出しラミネートで不織布に1つの合成樹脂層を形成して裏打ち材を作製した場合、天井材の熱プレス成形工程で裏打ち材の不織布が伸ばされるときに、押出しラミネートされた1層の合成樹脂層が不織布の伸びに追従して、合成樹脂層に、合成樹脂層を貫通する複数の細かいピンホールを生じさせることが確認された。このように1つの合成樹脂層に複数のピンホールが形成されると、天井材の熱プレス成形工程において、基材部に塗布した接着剤が、裏打ち材の合成樹脂層のピンホールを通過して、裏打ち材からしみ出すという不具合を生じさせる。
【0032】
そこで、本発明者等は、更に実験及び検討を重ねた結果、裏打ち材の不織布に対し、共押出しラミネートによって、ポリプロピレンからなる2つの合成樹脂層を積層することによって、合成樹脂層を薄く形成しても、2つの合成樹脂層の両方を貫通するピンホールの形成を防止できることを見出し、更に様々な条件等を精査することによって本発明を完成させた。
【0033】
すなわち、本実施形態において、裏打ち材10に設けられる合成樹脂層12は、ポリプロピレン系樹脂により形成される第1樹脂層13と、ポリプロピレン系樹脂により形成される第2樹脂層14を有しており、また、第1樹脂層13と第2樹脂層14が共押出しラミネートによって不織布11に積層された共押出しラミネート層12により形成されている。
【0034】
このように主成分が同じポリプロピレンの2層からなる共押出しラミネート層12が不織布11に積層されて一体化されることにより、第1樹脂層13と第2樹脂層14との間に境界部(境界面)を設けることができる。これによって、天井材1の熱プレス成形工程において、不織布11が伸ばされるときに、共押出しラミネート層12の第1樹脂層13が不織布11の伸びに追従したとしても、共押出しラミネート層12の第2樹脂層14を、不織布11の伸びに追従させなくすること、又は、第1樹脂層13よりも不織布11の伸びに追従させ難くすることができる。
【0035】
その結果、共押出しラミネート層12の第1樹脂層13に、不織布11の伸びに起因してピンホールが形成されても、第2樹脂層14にピンホールが形成されることはなく、また、第2樹脂層14によって第1樹脂層13に形成されたピンホールを埋めること(又は覆うこと)ができる。
【0036】
従って、2つの第1樹脂層13及び第2樹脂層14で形成される本実施形態の共押出しラミネート層12は、不織布11が熱プレス成形工程で伸ばされても、従来のCPPフィルムのように、接着剤のしみ出しを安定して防止することができる。また、第1樹脂層13及び第2樹脂層14が、安価で強度を確保し易いポリプロピレン系樹脂で形成されることにより、共押出しラミネート層12が高い強度を有することができ、また、裏打ち材10及び天井材1の製造コストの増大を抑制できる。
【0037】
特に本実施形態において、合成樹脂層(共押出しラミネート層)12の不織布11に接触させる第1樹脂層13は、ポリプロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)により形成されている。第1樹脂層13の材質がホモポリプロピレンであることにより、後述する共押出ラミネート成形法により、第1樹脂層13を一定の厚さで安定して形成でき、また、第1樹脂層13を不織布11に強固に接着できる。更に、第1樹脂層13を含む合成樹脂層12が、天井材1の熱プレス成形工程で求められる耐熱性及び成形性を備えることができる。
【0038】
不織布11から離れて設けられる第2樹脂層14は、ポリプロピレン単独重合体又はポリプロピレン共重合体(コポリマーポリプロピレン)により形成されている。これにより、第2樹脂層14を一定の厚さで、且つ、第1樹脂層13に直接接着させて安定して形成できる。また、第1樹脂層13にピンホールが形成されても、そのピンホールを第2樹脂層14で容易に埋めること(又は、覆うこと)ができる。なお本発明において、ポリプロピレン共重合体は、ブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)でもよく、又は、ランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)でもよい。
【0039】
本実施形態の合成樹脂層(共押出しラミネート層)12は、8μm以上30μm以下の厚さで形成されている。合成樹脂層12が8μm以上の厚さを有することにより、合成樹脂層12(第1樹脂層13及び第2樹脂層14)を安定して形成できる。また、合成樹脂層12によって、接着剤のしみ出しを安定して阻止できる。合成樹脂層12が30μm以下の厚さを有することにより、裏打ち材10及び天井材1を軽量化し易くし、また、製造コストの削減に貢献できる。
【0040】
この場合、第1樹脂層13及び第2樹脂層14は、それぞれ、4μm以上20μm以下の厚さで形成されている。第1樹脂層13及び第2樹脂層14が、それぞれ4μm以上の厚さを有することにより、裏打ち材10を製造するときに、第1樹脂層13及び第2樹脂層14の厚さ管理を行い易くすることができるため、第1樹脂層13と第2樹脂層14をそれぞれ所要の厚さで安定して形成できる。また、第1樹脂層13及び第2樹脂層14が、それぞれ適切な強度を安定して有することができる。
【0041】
第1樹脂層13及び第2樹脂層14が、それぞれ20μm以下の厚さを有することにより、裏打ち材10及び天井材1を軽量化し易くし、また、製造コストの削減に貢献できる。更にこの場合、第2樹脂層14は、第1樹脂層13と同じ厚さで形成されていることが好ましい。これにより、後述する天井材1の熱プレス成形工程において第1樹脂層13にピンホールが形成されたときに、第1樹脂層13のピンホールを第2樹脂層14で安定して埋める(又は覆う)ことができる。
【0042】
次に、本実施形態の裏打ち材10を製造する方法について説明する。
本実施形態において、裏打ち材(積層体)10の製造は、Tダイを備えた共押出し装置を用いて、共押出ラミネート成形法により行われる。
【0043】
先ず、第1樹脂層13を形成する第1合成樹脂(ホモポリプロピレン)と、第2樹脂層14を形成する第2合成樹脂(ホモポリプロピレン又はコポリマーポリプロピレン)とを準備する。
【0044】
続いて、準備した第1合成樹脂及び第2合成樹脂を、例えば290℃以上350℃以下の温度で溶融させて、その溶融状態の第1合成樹脂及び第2合成樹脂を共押出し装置のTダイから押出すことによって、第1樹脂層13と第2樹脂層14とを形成する。
【0045】
それと同時に、Tダイの下方に不織布11を供給して、第1樹脂層13及び第2樹脂層14を不織布11に順番に重ね合わせて、圧着ロール等によって圧着する。これにより、第1樹脂層13及び第2樹脂層14を形成すると同時に、第1樹脂層13及び第2樹脂層14を不織布11に積層することができる。
【0046】
このように第1樹脂層13及び第2樹脂層14を共押出しすることにより、第1樹脂層13及び第2樹脂層14を、それぞれ20μm以下の厚さでそれぞれ形成できるとともに、第1樹脂層13及び第2樹脂層14の合計の厚さを30μm以下にすることができる。また、接着剤等を用いることなく、第1樹脂層13及び第2樹脂層14を不織布11に順番に積層して一体化することができる。
これによって、
図1に示した本実施形態の裏打ち材10を製造できる。このように製造された本実施形態の裏打ち材10は、従来の裏打ち材に用いられているCPPフィルムが積層されていなくても、従来の裏打ち材と同程度の伸縮性、強度、成形性(加工性)を備えている。なお本発明において、裏打ち材を製造する方法及び手段は、特に限定されるものではない。
【0047】
次に、製造された裏打ち材10を用いて自動車用天井材(内装材)1を製造する方法について、
図2を参照しながら説明する。なお
図2では、天井材1の表面側を上側とし、裏面側を下側として示している。
自動車用天井材1の製造では、成形金型50を用いて、天井材1を形成する裏打ち材10、基材部20、及び表皮材30に熱プレス成形を行うことによって、裏打ち材10、基材部20、及び表皮材30を一体化する熱プレス成形工程が行われる。熱プレス成形とは、加工対象物を加熱しながら加圧することによって、所望の形状に成形する工程である。この熱プレス成形で用いられる成形金型50は、上型51と下型52とを有しており、上型51の内面(キャビティ面)と下型52の内面(キャビティ面)は、それぞれ天井材1を成形可能な形状に形成されている。
【0048】
本実施形態において、成形金型50の上型51と下型52の間には、
図2に示すように、天井材1を形成する裏打ち材10、基材部20、及び表皮材30が下から順番に重ねられた状態でセットされる。なお、裏打ち材10、基材部20、及び表皮材30を重ねる順番は、上下に反対であってもよい。
【0049】
この場合、基材部20には、
図2に示すように、ウレタン発泡体21の表面及び裏面に、接着層を形成する熱硬化型の液体接着剤22が塗布(又は積層)された状態で、ウレタン発泡体21の表面(
図2の上面)側に第1ガラス繊維マット層23が重ね合わされるとともに、ウレタン発泡体21の裏面(
図2の下面)側に第2ガラス繊維マット層24が重ね合わされている。更に、第1ガラス繊維マット層23の表面には、表皮材30を接着する熱硬化型接着剤22(又は積層)が塗布されており、第2ガラス繊維マット層24の裏面には、裏打ち材10を接着する熱硬化型接着剤22が塗布されている。なお本発明において、基材部は特に限定されるものではない。
【0050】
表皮材30は、基材部20に貼り合わせられる裏面と、裏面の反対側に配される表面とを有しており、表皮材30の表面は、天井材1が自動車のボディに取り付けられたときに天井材1の車室内に表出する面を形成する。本実施形態において、表皮材30は、特に限定されるものではないが、生地や織物等のような軽量で良好な外観品質を有する部材を用いて形成されることが好ましい。
【0051】
上述したような裏打ち材10、基材部20、及び表皮材30を、成形金型50の上型51と下型52の間にセットした後、裏打ち材10、基材部20、及び表皮材30を加熱するとともに、上型51と下型52によって裏打ち材10、基材部20、及び表皮材30を加圧することによって熱プレス成形を行う。これによって、基材部20の接着剤22が、基材部20のウレタン発泡体21、第1ガラス繊維マット層23、及び第2ガラス繊維マット層24を互いに接着するとともに、裏打ち材10及び表皮材30を基材部20に接着して、裏打ち材10、基材部20、及び表皮材30を一体化することができる。それとともに、裏打ち材10、基材部20、及び表皮材30を上型51及び下型52に対応する所定の形状に変形させることができる。
【0052】
また、本実施形態の裏打ち材10では、ポリプロピレン系樹脂製の第1樹脂層13及び第2樹脂層14からなる合成樹脂層12が、裏打ち材10の基材部20に接着する面に設けられている。これにより、上述した熱プレス成形において裏打ち材10が伸ばされるときに、合成樹脂層12の第1樹脂層13が不織布11の伸びに追従することによって第1樹脂層13にピンホールが形成されたとしても、第2樹脂層14で第1樹脂層13に形成されたピンホールを埋めること(又は覆うこと)ができるため、ピンホールが合成樹脂層12の全体を貫通するように形成されることを防止できる。これにより、上述した熱プレス成形において、基材部20の熱硬化型接着剤22が、裏打ち材10の合成樹脂層12を越えて不織布11にしみ出すことを阻止して、熱硬化型接着剤22が、裏打ち材10を越えて成形金型50のキャビティ面に付着することを防止できる。
【0053】
上述のような熱プレス成形が行われることによって、裏打ち材10、基材部20、及び表皮材30が積層一体化された自動車用天井材1が成形される。また、熱プレス成形工程後には、成形された天井材1が、成形金型50から取り出される。このとき、成形された天井材1の裏面には裏打ち材10が設けられているため、天井材1を成形金型50(特に、下型52)から離型し易くすることができる。
以上によって、本実施形態の自動車用天井材1が製造される。
【0054】
製造された本実施形態の自動車用天井材1では、従来の天井材に必要とされていたCPPフィルムを用いることなく、裏打ち材10、基材部20、及び表皮材30が一体的に積層されているため、従来の天井材に比べて、天井材1の軽量化を実現することができる。また、天井材1の製造コストを削減できるため、安価な天井材1を提供することが可能となる。
【0055】
更に本実施形態の天井材1では、従来のCPPフィルムを用いなくても、上述したように、ポリプロピレン系樹脂製の第1樹脂層13及び第2樹脂層14からなる合成樹脂層12によって、熱硬化型接着剤22のしみ出しを安定して防止できる。このため、熱プレス成形工程において、接着剤22が成形金型50に付着して固まるという不具合を生じさせることもない。
【実施例0056】
以下に実施例を示して、本発明を更に具体的に説明する。
【0057】
実施例1~実施例3として、不織布11に、共押出ラミネート成形法で第1樹脂層13及び第2樹脂層14を有する合成樹脂層12を積層することによって、
図1に示す積層構造を有する3種類の裏打ち材10を作製した。以下の表1に、実施例1~実施例3で作製した各裏打ち材10における不織布11及び合成樹脂層12の具体的な構成を示す。
【0058】
また比較のために、実施例1と同じ不織布に対し、押出ラミネート成形法により、ホモポリプロピレンからなる1層の合成樹脂層を積層して一体化することによって、比較例1の裏打ち材を作製した。また、比較例1の裏打ち材では、ホモポリプロピレンの合成樹脂層を15μmの厚さで形成した。
【0059】
【0060】
次に、実施例1~実施例3の裏打ち材10及び比較例1の裏打ち材を、
図2に示すように、基材部20及び表皮材30とともに成形金型50の上型51と下型52の間にセットして、成形金型50による熱プレス成形を行うことにより、実施例1~実施例3の裏打ち材10を有する天井材1と、比較例1の裏打ち材を有する天井材とを製造した。
【0061】
実施例1~実施例3の裏打ち材10を用いて製造された各天井材1を観察したところ、何れの天井材1においても、裏打ち材10、基材部20、及び表皮材30がしっかりと接合されており、また、皺等の成形不良が発生しておらず、良好な外観品質を有していた。また、天井材1に一体化された裏打ち材10の不織布11に、接着剤22がしみ出しているような痕跡は確認されなかった。
【0062】
更に、熱プレス成形工程後に、実施例1~実施例3の裏打ち材10に熱プレス成形を行った成形金型50の下型52を観察したところ、表1に示したように、下型52のキャビティ面に接着剤22の付着は確認できなかった。一方、比較例1の裏打ち材に熱プレス成形を行った成形金型50の下型52を観察したところ、下型52のキャビティ面に、接着剤が部分的に付着して固まっていることが確認された。
【0063】
すなわち、比較例1の裏打ち材では、1層のホモポリプロピレンの合成樹脂層が不織布に積層されているものの、その合成樹脂層で接着剤のしみ出しを防止することができなかったが、実施例1~実施例3の裏打ち材10では、比較例1と同じ厚さの合成樹脂層12が、ポリプロピレ系樹脂の第1樹脂層13と第2樹脂層14の2つの層で形成されていることにより、熱プレス成形時に、合成樹脂層12で接着剤22のしみ出しを安定して防止できていることが確認された。
【0064】
なお、本発明は、上述した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
例えば、上述した実施形態及び実施例では、離型性を備えた積層体が、自動車用天井材の裏打ち材である場合について説明したが、本発明の積層体は、これに限定されるものではなく、例えば自動車のドアトリムやフロアトリム等の内装材における裏打ち材として適用することも可能である。更に、本発明の積層体は、乗物として自動車を例示したが、例えば、自動車以外の車両、列車、飛行機、船舶等のような乗物の内装材に用いられてもよい。