(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131397
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電子写真用光輝性トナー、二成分現像剤、画像形成方法及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
G03G 9/09 20060101AFI20240920BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G03G9/09
G03G9/08 391
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041632
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中島 一比古
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA06
2H500AA14
2H500BA24
2H500CB06
2H500CB07
2H500CB12
2H500EA02C
2H500EA58C
2H500EA60C
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、飛散による画像不良を抑制させた電子写真用光輝性トナー、二成分現像剤、画像形成方法及び画像形成システムを提供することである。
【解決手段】本発明の電子写真用光輝性トナーは、トナー母体粒子を含む電子写真用光輝性トナーであって、前記トナー母体粒子が、被覆層を有する光輝性顔料、及び結着樹脂を含有し、前記被覆層を有する光輝性顔料の、十点平均粗さに基づく算術平均値Rが、0.07~0.30μmの範囲内であることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー母体粒子を含む電子写真用光輝性トナーであって、
前記トナー母体粒子が、被覆層を有する光輝性顔料、及び結着樹脂を含有し、
前記被覆層を有する光輝性顔料の、十点平均粗さに基づく算術平均値Rが、0.07~0.30μmの範囲内である
ことを特徴とする電子写真用光輝性トナー。
【請求項2】
振動数40Hz、3時間でキャリアと撹拌する前と後の、前記電子写真用光輝性トナーの体積抵抗率を、それぞれ、ρVA[Ω・cm]、ρVB[Ω・cm]とするとき、下記式で表される、前記体積抵抗率の常用対数の変化率P[%]が、5%以下である
(式) 変化率P[%]=100×(logρVA-logρVB)/logρVA
ことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用光輝性トナー。
【請求項3】
前記被覆層が、無機化合物を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用光輝性トナー。
【請求項4】
前記無機化合物が、ケイ素化合物である
ことを特徴とする請求項3に記載の電子写真用光輝性トナー。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子写真用光輝性トナーを含有する
ことを特徴とする二成分現像剤。
【請求項6】
電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤を用いる画像形成方法であって、
前記電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤が、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子写真用光輝性トナー、又は請求項5に記載の二成分現像剤である
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
記録媒体が、連続状である
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成方法。
【請求項8】
電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤を有する画像形成システムであって、
前記電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤が、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子写真用光輝性トナー、又は請求項5に記載の二成分現像剤である
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項9】
記録媒体が、連続状である
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用光輝性トナー、二成分現像剤、画像形成方法及び画像形成システムに関する。より詳しくは、飛散による画像不良を抑制させた電子写真用光輝性トナー等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成において、様々な顧客ニーズに応えて、商業印刷分野で見られる高付加価値画像の出力が求められている。
例えば、電子写真方式で蒸着紙に出力される画像にも、メタリックペーパー並みの光輝性が求められる。電子写真方式の画像形成において、光輝性を有する画像の形成は、電子写真用トナーに光輝性顔料を含有させた電子写真用光輝性トナーを用いて行われる。なお、本明細書では、「電子写真用光輝性トナー」とのことを、単に「光輝性トナー」又は「トナー」ともいう。
【0003】
一般的に、光輝性トナーは、光輝性顔料の周りに結着樹脂を有しており、当該結着樹脂が記録媒体に固定化することにより、記録媒体上にトナーによる画像が形成される。
【0004】
一方、光輝性トナーは、帯電を目的として、現像機内で撹拌される。そのため、撹拌時に、結着樹脂が剥がれてしまい、光輝性顔料が露出してしまう場合がある。一般的に、光輝性顔料は、金属等の比較的電気抵抗の小さい材料を用いているため、光輝性顔料が露出してしまうと光輝性トナーの電気抵抗値が大きく変化しやすい。そして、光輝性トナーの電気抵抗値が大きく変化すると、トナー画像が転写される際に、光輝性トナーが飛散してしまい、画質が低下しやすいという問題がある。
【0005】
特許文献1では、トナー粒子の、表面積に対する光輝性顔料の露出面積が、20%以下である電子写真用トナーについての技術が開示されている。当該技術は、トナーの製造時の光輝性顔料の露出面積に着目している。一方、現像機内で撹拌されることにより、新たに光輝性顔料が露出してしまう現象については検討されておらず、飛散による画像不良の問題があった。
【0006】
特許文献2では、シリカ、アルミナ又はチタニアにより表面を被覆された光輝性金属顔料を含む光輝性トナーについての技術が開示されている。当該技術は、光輝性金属顔料の表面を金属酸化物で被覆することにより、光輝性トナーの誘電損失率を低く抑え、画質を向上させている。ただし、当該技術においても、現像機内で撹拌されることにより、新たに光輝性顔料が露出してしまう現象については検討されておらず、飛散による画像不良の問題があった。
【0007】
特許文献3では、表面にシリカコート層を有する板状の顔料を含有するトナーについての技術が開示されている。当該技術では、シリカコート層を有することにより、顔料の屈曲を抑制できる。そして、記録媒体にトナー画像が定着する際に、広い定着温度範囲に渡り画質を向上させている。ただし、当該技術においても、現像機内で撹拌されることにより、新たに光輝性顔料が露出してしまう現象については検討されておらず、飛散による画像不良の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-45323号公報
【特許文献2】特開2014-38131号公報
【特許文献3】特開2017-97019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、飛散による画像不良を抑制させた電子写真用光輝性トナー、二成分現像剤、画像形成方法及び画像形成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、電子写真用光輝性トナーにおいて、トナー母体粒子が、被覆層を有する光輝性顔料、及び結着樹脂を含有し、被覆層を有する光輝性顔料の、十点平均粗さに基づく算術平均値Rが、特定の範囲内であることにより、飛散による画像不良を抑制できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0011】
1.トナー母体粒子を含む電子写真用光輝性トナーであって、
前記トナー母体粒子が、被覆層を有する光輝性顔料、及び結着樹脂を含有し、
前記被覆層を有する光輝性顔料の、十点平均粗さに基づく算術平均値Rが、0.07~0.30μmの範囲内である
ことを特徴とする電子写真用光輝性トナー。
【0012】
2.振動数40Hz、3時間でキャリアと撹拌する前と後の、前記電子写真用光輝性トナーの体積抵抗率を、それぞれ、ρVA[Ω・cm]、ρVB[Ω・cm]とするとき、下記式で表される、前記体積抵抗率の常用対数の変化率P[%]が、5%以下である
(式) 変化率P[%]=100×(logρVA-logρVB)/logρVA
ことを特徴とする第1項に記載の電子写真用光輝性トナー。
【0013】
3.前記被覆層が、無機化合物を含有する
ことを特徴とする第1項に記載の電子写真用光輝性トナー。
【0014】
4.前記無機化合物が、ケイ素化合物である
ことを特徴とする第3項に記載の電子写真用光輝性トナー。
【0015】
5.第1項から第4項までのいずれか一項に記載の電子写真用光輝性トナーを含有する
ことを特徴とする二成分現像剤。
【0016】
6.電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤を用いる画像形成方法であって、
前記電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤が、第1項から第4項までのいずれか一項に記載の電子写真用光輝性トナー、又は第5項に記載の二成分現像剤である
ことを特徴とする画像形成方法。
【0017】
7.記録媒体が、連続状である
ことを特徴とする第6項に記載の画像形成方法。
【0018】
8.電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤を有する画像形成システムであって、
前記電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤が、第1項から第4項までのいずれか一項に記載の電子写真用光輝性トナー、又は第5項に記載の二成分現像剤である
ことを特徴とする画像形成システム。
【0019】
9.記録媒体が、連続状である
ことを特徴とする第8項に記載の画像形成システム。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記手段により、飛散による画像不良を抑制させた電子写真用光輝性トナー、二成分現像剤、画像形成方法及び画像形成システムを提供することができる。
【0021】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0022】
なお、本明細書において、電子写真用光輝性トナーのことを、単に、「光輝性トナー」又は「トナー」ともいう。本発明の電子写真用光輝性トナーは、トナー母体粒子を含む。トナー母体粒子は、表面に外添剤を付着させることが好ましい。また、トナー母体粒子は、被覆層を有する光輝性顔料、及び結着樹脂を含む。
【0023】
また、本明細書において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するもののことをいう。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、トナー粒子の集合体のことをいう。
【0024】
光輝性顔料は、自身のみでは記録媒体上に固定化できない。そのため、光輝性顔料の周りに結着樹脂を被覆させたトナー粒子とすることにより、記録媒体上に固定化できる。また、光輝性顔料は、比較的電気抵抗の小さい材料が用いられる一方、結着樹脂は、比較的電気抵抗が大きい。そのため、トナー粒子における結着樹脂の厚さ等を適宜選択することによって、トナー粒子の帯電特性を調整できる。
【0025】
電子写真方式において、トナーは、現像機内で撹拌されて帯電した後、感光体に供給される。しかし、現像機内の撹拌等の衝撃がトナーに加わると、結着樹脂が光輝性顔料から剥がれてしまい、トナーの帯電特性が変化してしまうことがある。
【0026】
本発明では、被覆層を有する光輝性顔料の十点平均粗さに基づく算術平均値Rが、0.07~0.30μmの範囲内である。つまり、被覆層を有する光輝性顔料の表面が適度な凹凸を有する。これにより、アンカー効果で、結着樹脂が光輝性顔料から剥がれにくくなる。その結果、現像機内の撹拌等の衝撃がトナーに加わっても、トナーの帯電特性が安定すると考えられる。
【0027】
なお、「アンカー効果」とは、材料表面の微細な凹凸に、接着剤等が入り込んで硬化することにより、接着力が高まる効果のことをいう。
図1に示されているように、光輝性顔料における被覆層2の微細な凹凸に、結着樹脂3が入り込んで硬化することにより、光輝性顔料と結着樹脂との接着性が高まると考えられる。
【0028】
電子写真方式において、感光体に供給されたトナーは、感光体と記録媒体との間に形成された転写電界によって、静電気力を受け、記録媒体上に移動する。現像機内の撹拌等の衝撃によりトナーの帯電特性が変化すると、生じる静電気力が大きすぎる、又は小さすぎてしまい、記録媒体上の所望の位置に移動できず飛散してしまう。本発明のトナーは、現像機内の撹拌等の衝撃がトナーに加わっても、帯電特性が安定しているため、トナーの飛散を抑制できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図3】転写により、トナーが、感光体又は1次転写ベルトから記録媒体に移動する過程を表す模式図
【
図4】十点平均粗さに基づく算術平均値Rの算出方法において用いられる各用語の意味を表す説明図
【
図5】ドラムタンデム方式の画像形成装置の一例を示す断面概要図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の電子写真用光輝性トナーは、トナー母体粒子を含む電子写真用光輝性トナーであって、前記トナー母体粒子が、被覆層を有する光輝性顔料、及び結着樹脂を含有し、前記被覆層を有する光輝性顔料の、十点平均粗さに基づく算術平均値Rが、0.07~0.30μmの範囲内であることを特徴とする。
この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0031】
本発明の実施形態としては、現像機内の撹拌等の衝撃がトナーに加わっても、光輝性顔料に被覆された樹脂層がはがれにくく、トナーの帯電特性が安定する観点から、振動数40Hz、3時間でキャリアと撹拌する前と後の、前記電子写真用光輝性トナーの体積抵抗率を、それぞれ、ρVA[Ω・cm]、ρVB[Ω・cm]とするとき、下記式で表される、前記体積抵抗率の常用対数の変化率P[%]が、5%以下であることが好ましい。
(式) 変化率P[%]=100×(logρVA-logρVB)/logρVA
【0032】
本発明の実施形態としては、被覆層の材料は、光輝性顔料から剥がれにくい観点から、前記被覆層が、無機化合物を含有することが好ましく、被覆される無機化合物は透明性が高いことが望ましい。また、無機化合物が、ケイ素化合物であることが好ましい。
【0033】
本発明の二成分現像剤は、本発明の前記電子写真用光輝性トナーを含有することを特徴とする。
【0034】
本発明の画像形成方法は、電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤を用いる画像形成方法であって、前記電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤が、本発明の電子写真用光輝性トナー、又は二成分現像剤であることを特徴とする。
また、記録媒体が、連続状である場合でも、飛散による画像不良を十分に抑制できる。
【0035】
本発明の画像形成システムは、電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤を有する画像形成システムであって、前記電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤が、本発明の電子写真用光輝性トナー、又は二成分現像剤であることを特徴とする。
また、記録媒体が、連続状である場合でも、飛散による画像不良を十分に抑制できる。
【0036】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態及び態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0037】
1.電子写真用光輝性トナーの概要
本発明の電子写真用光輝性トナーは、トナー母体粒子を含む電子写真用光輝性トナーであって、前記トナー母体粒子が、被覆層を有する光輝性顔料、及び結着樹脂を含有し、前記被覆層を有する光輝性顔料の、十点平均粗さに基づく算術平均値Rが、0.07~0.30μmの範囲内であることを特徴とする。
【0038】
なお、本明細書において、電子写真用光輝性トナーのことを、単に、「光輝性トナー」又は「トナー」ともいう。本発明の電子写真用光輝性トナーは、トナー母体粒子を含む。トナー母体粒子は、表面に外添剤を付着させることが好ましい。また、トナー母体粒子は、被覆層を有する光輝性顔料、及び結着樹脂を含有する。
【0039】
本明細書において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するもののことをいう。本発明に係る「トナー母体粒子」は、被覆層を有する光輝性顔料及び結着樹脂を含有し、その他必要に応じて、ワックス、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。
「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、トナー粒子の集合体のことをいう。
【0040】
図2に、トナー母体粒子の断面模式図を示す。光輝性顔料1は、その表面に更に被覆層2を有する。トナー母体粒子10は、被覆層2を有する光輝性顔料1と、結着樹脂3を含有し、被覆層2を有する光輝性顔料1は、その周りを結着樹脂3で被覆されている。
本発明のトナーは、トナー母体粒子10に、必要に応じて外添剤を付着させることが好ましい。
【0041】
前述のとおり、本発明のトナーは、現像機内の撹拌等の衝撃がトナーに加わっても、帯電特性が安定しているため、トナーの飛散を抑制できると考えられる。トナー母体粒子の構成とトナーの帯電特性について、更に詳しく説明する。
【0042】
従来使用されている光輝性顔料は、厚さの薄い扁平状、すなわち、薄片状や鱗片状の形状をしたものが多い。このような形状であることにより、光輝性顔料の表面で反射した反射光の方向が揃うため、光輝性が発現する。得られる画像の光輝性を向上させるためには、光輝性顔料の表面で反射した反射光の方向が揃うことが好ましい。光輝性顔料は、記録媒体の表面に平行に配列(配向)されることが好ましい。
【0043】
光輝性顔料は、自身のみでは記録媒体上に固定化できない。そのため、光輝性顔料の周りを結着樹脂で被覆したトナー粒子とすることにより、記録媒体上に固定化できる。ただし、結着樹脂が比較的厚すぎると、トナー粒子への入射光や光輝性顔料からの反射光が、結着樹脂中又は結着樹脂の表面で、屈折したり吸収されたりして、光輝性が低下してしまう。また、結着樹脂の厚さにムラがあると、トナー粒子中の光輝性顔料が記録媒体の表面に平行に配列されず、光輝性が低下してしまう。そのため、被覆する結着樹脂の厚さを比較的薄くし、厚さのムラを低減させることが好ましい。
【0044】
一方で、結着樹脂の厚さを比較的薄くし、厚さのムラを低減させると、現像機内の撹拌等の衝撃がトナーに加わった際に、結着樹脂が剥がれやすい。そして、結着樹脂が剥がれると、トナーの帯電特性が大きく変化してしまう。そのため、トナー母体粒子は、結着樹脂の厚さを比較的薄くし、厚さのムラを低減させ、かつ結着樹脂が剥がれにくい構成とする必要がある。
【0045】
また、電子写真方式では、感光体に供給されたトナーは、感光体と記録媒体との間に形成された転写電界によって、静電気力を受け、記録媒体上に移動する。カラー印刷では、1次転写ベルト上にY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のトナー像を重ね合わせる、中間転写方式が主流である。中間転写方式の場合は、感光体に供給されたトナーは、1次転写ベルト上に移動した後、記録媒体上に移動する。
【0046】
図3は、転写により、トナーが、感光体又は1次転写ベルトから記録媒体へ移動する過程を表す模式図である。
感光体から直接記録媒体に転写する場合は、感光体11と転写ベルト15との間に転写電界が形成される。中間転写方式を用いる場合は、1次転写ベルト11と2次転写ベルト15との間に転写電界が形成される。トナー12は、この転写電界によって、静電気力14を受け、記録媒体13上に移動する。
【0047】
記録媒体がほとんど帯電していない場合は、推測されるトナーの帯電量に対応する転写電界を形成することで、トナーが記録媒体上の所望の位置に移動する。しかし、記録媒体がある程度帯電している場合は、記録媒体の帯電量も考慮して転写電界を形成する必要がある。
【0048】
記録媒体が連続する形態である場合、具体的には、記録媒体がロール状に巻き取られている場合、ロールから繰り出された記録媒体は、帯電しやすい。そして、その帯電量を考慮すると、記録媒体がほとんど帯電していない場合と比較して、転写電界の値が大きくなってしまう。転写電界の値が大きくなると、トナーが感光体又は1次転写ベルトから記録媒体へ移動する際に生じる剥離帯電の帯電量が大きくなる。
【0049】
この状況下で、トナーの結着樹脂が剥がれてしまい、トナーの帯電性が過剰に高まってしまうと、剥離帯電の影響をより受けやすくなってしまう。その結果、トナーが記録媒体上の所望の位置に移動できず、飛散してしまう。
そのため、記録媒体が連続する形態である場合には、トナーの結着樹脂をより剥がれにくくする必要があると考えられる。
【0050】
本発明では、被覆層を有する光輝性顔料の十点平均粗さに基づく算術平均値Rが、0.07~0.30μmの範囲内である。つまり、被覆層を有する光輝性顔料の表面が適度な凹凸を有する。これにより、アンカー効果で、結着樹脂が光輝性顔料から剥がれにくくなる。その結果、現像機内の撹拌等の衝撃がトナーに加わっても、トナーの帯電特性が安定すると考えられる。そして、記録媒体が連続する形態であっても、トナーの飛散による画像不良を抑制できると考えられる。
【0051】
2.トナー母体粒子の構成
本発明に係るトナー母体粒子は、被覆層を有する光輝性顔料及び結着樹脂を含有する。また、トナー母体粒子は、必要に応じて、離型剤(ワックス)や、その他添加剤を含有してもよい。
トナー母体粒子の構造は、単層であっても、二層以上の複数層であってもよい。
【0052】
(1)被覆層を有する光輝性顔料
本発明に係る光輝性顔料は、被覆層を有する。
被覆層を有する光輝性顔料の十点平均粗さに基づく算術平均値Rは、0.07~0.30μmの範囲内である。
【0053】
被覆層を有する光輝性顔料がトナー母体粒子に含有される場合、「被覆層を有する光輝性顔料の表面」とは、被覆層又は光輝性顔料における結着樹脂との界面のことをいう。
光輝性顔料は、必ずしもその表面全てが被覆されていなくてもよく、一部光輝性顔料が露出していてもよい。
【0054】
光輝性顔料の形状は、扁平状であることが好ましい。光輝性顔料が扁平状であることにより、光輝性顔料の表面と記録媒体の表面とが平行になり、優れた光輝性を発揮しやすい。
【0055】
「扁平状」とは、所定の厚さを有しており、厚さ方向に直交する面方向に沿った少なくとも二方向の寸法が、厚さの寸法よりも大きい形状のことをいう。扁平状の物体は、平面の上に安定して置くことができる。
例えば、扁平状は、球や直方体等の立体形状のものを一方向で押しつぶしたような形状である。薄片状、鱗片状、板状等の形状が、扁平状に含まれる。さらに、具体的には、光輝性顔料における数平均円相当径が、数平均最大厚さよりも長い場合、扁平状であるといえる。
【0056】
(1.1)光輝性顔料
光輝性顔料の材料の例として、金属(合金を含む)、金属化合物、ガラス、結晶性化合物、鉱物等が挙げられる。より具体的には、光輝性顔料の構成材料の例として、アルミニウム、黄銅、青銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、銅、銀、金、白金などの金属粉末が挙げられる。光輝性顔料の構成材料の例として、酸化チタンや黄色酸化鉄を被覆した雲母、硫酸バリウム、層状ケイ酸塩、層状アルミニウムのケイ酸塩などの被覆薄片状無機結晶基質が挙げられる。光輝性顔料の構成材料の例として、単結晶板状酸化チタン、塩基性炭酸塩、酸オキシ塩化ビスマス、天然グアニン、薄片状ガラス粉、金属蒸着された薄片状ガラス粉等が挙げられる。
これらは、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。また、色調調整のために、染料や顔料などの各種色材を併用してもよい。
【0057】
中でも、コストや安定性、入手容易性及び光輝性の観点から、金属鱗片であることが好ましい。また、アルミニウム鱗片であることがより好ましく、アルミニウム金属単体の金属鱗片であることが更に好ましい。
【0058】
金属鱗片の例として、下記のものが挙げられる。
金属又は合金をプラスチックフィルム上に真空蒸着し、得られる金属薄膜をプラスチックフィルムから剥離し、剥離した金属薄膜を粉砕又は撹拌して得られるものが挙げられる。また、金属又は合金の粉末と、溶媒とを混合し、媒体撹拌ミル、ボールミル、アトライター等で、当該粉末を展延又は粉砕して得られるもの等が挙げられる。
【0059】
アルミニウム鱗片として、市販品を用いてもよい。市販品として、「アルペースト(登録商標)WXM-0630」、「EMERAL(登録商標)EMR-D5660」、及び「WJC-U75C」(以上、東洋アルミニウム社製)が挙げられる。「METALURE(登録商標)W-52012 IL」及び「Ultravario Aqua PG-24001」(以上、ECKART社製)が挙げられる。「エルジー(登録商標)neo Silver#500(銀色)」、「Gold#500(金色)」(以上、尾池工業社製)等が挙げられる。
【0060】
光輝性顔料の平均長軸径は、3~30μmの範囲内であることが好ましく、5~15μmの範囲内であることがより好ましい。
【0061】
記録媒体における光輝性顔料の専有面積が広ければ広いほど、また、光輝性顔料の専有面が、記録媒体表面に対して平行かつ一様に広がっているほど、より多くの光を反射できる。そのため、記録媒体上の画像形成箇所において、トナー粒子を隙間なく配列させることが好ましい。
【0062】
ただし、トナー粒子の粒径が大きすぎると、トナー粒子間に隙間が生じやすくなる。トナー粒子の粒径が小さすぎると、トナー粒子の形状がより球体に近くなり、光輝性顔料が記録媒体の表面に平行に配列しづらくなる。そのため、トナー粒子の粒径を適度な範囲内に調整することが好ましく、光輝性顔料の平均長軸径を上記範囲内とすることが好ましい。
【0063】
平均長軸径が3μm以上であることにより、トナー粒子が記録媒体の表面に平行に配列しやすく、良好な光輝性が得られる。
平均長軸径が30μm以下であることにより、トナー粒子が記録媒体の表面に配列した際に、トナー粒子間に隙間が生じづらくなり、良好な光輝性が得られる。また、トナー粒子の製造時や画像形成時に、外力を受けても、光輝性顔料が変形しづらい。
【0064】
光輝性顔料の平均長軸径は、下記の方法により測定できる。
走査型電子顕微鏡(SEM)、例えば「JSM-7401F」(日本電子(株)製)を用いて、電子顕微鏡写真を得る。電子顕微鏡写真において、長軸径を測定し、1000個の光輝性顔料における個数平均長軸径を算出する。
【0065】
光輝性顔料の平均厚さは、25~500nmの範囲内であることが好ましく、80~350nmの範囲内であることがより好ましい。平均厚さが25nm以上であることにより、光輝性顔料の表面に入射した光が、光輝性顔料を透過しづらく、表面で反射しやすくなるため、良好な光輝性が得られる。また、トナー粒子の製造時や画像形成時に、外力を受けても、光輝性顔料が変形しづらい。一方、平均厚さが、500nm以下であることにより、光輝性顔料が記録媒体の表面に平行に配列しやすくなるため、良好な光輝性が得られる。
【0066】
光輝性顔料が、アルミニウム鱗片である場合、平均厚さは、金属成分1g当たりの水面拡散面積WCA(m2/g)を測定し、下記式により算出できる。
(式)平均厚さt(nm)=400/[WCA(m2/g)]
上記平均厚さの算出方法は、例えば、Aluminium Paint and Powder,J.D.Ed-wards & R.I.Wray著、第3版、Reinhold Publishing Corp.New Yorkの第16~22頁に記載されている。
【0067】
「水面拡散面積」とは、リーフィング現象を利用して、乾燥したアルミニウム鱗片を水面上に均一に拡散させ隙間のない状態に被覆したときの、単位質量当たりのアルミニウム粉体が占める面積のことをいう。
なお、「リーフィング現象」とは、アルミニウム鱗片を、ビヒクルを用いて塗料とし、塗膜を作製したとき、塗膜表面にアルミニウム粉体が浮上配列する現象のことをいう。
【0068】
水面拡散面積は、一定の予備処理を行ったのち、JIS K 5906-1998に従って求めることができる。なお、本発明において、アルミニウム鱗片は、リーフィングタイプであってもノンリーフィングタイプであってもよい。ノンリーフィングタイプの場合、試料を5%ステアリン酸のミネラルスピリット溶液で予備処理を行う以外の操作方法は、全てリーフィングタイプの場合と同様である。試料の予備処理については、塗料原料時報、第156号、第2~16頁(1980.9.1旭化成工業(株)発行)に記載されている。
【0069】
光輝性発現の観点から、光輝性顔料の含有量は、結着樹脂の全質量に対して、25~140質量%の範囲内であることが好ましく、40~120質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0070】
(1.2)被覆層
被覆層は、光輝性顔料の表面に入射する光又は光輝性顔料の表面で反射する光に対して吸収性を示さない、すなわち、透明性が高いものであれば、特に制限されない。
被覆層の材料は、有機化合物であっても無機化合物であってもよい。また、被覆層は、単層であっても、二層以上の複数層であってもよい。
【0071】
被覆層の材料が有機化合物である場合、低分子有機化合物であっても、高分子有機化合物であってもよく、特に制限されない。
低分子有機化合物の例として、飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸、高度不飽和脂肪酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、ミリスチン酸、アラキジン酸、リノール酸、ラウリン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、トリフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、ブチル酸ホスフェート、オクチルホスホン酸、ラウリルホスホン酸、オクチルホスファイト、オクタデシルホスファイト、オクタデシルホスホン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0072】
高分子有機化合物の分子量は、特に制限されないが、1000~1000000の範囲内であることが好ましい。
【0073】
高分子有機化合物を構成する単量体の例として、(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、エチレン、プロピレン、無水マレイン酸、ジメチルシロキサン、ビニルアルコール等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又はその両者を示す。
【0074】
これらの単量体は、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。これらの単量体を二種以上併用する場合、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、又は交互コポリマーであってもよい。
【0075】
被覆層の材料は、光輝性顔料から剥がれにくく、また、光輝性顔料を保護する観点から、無機化合物であることが好ましい。さらに、無機化合物は、透明性が高いことが好ましい。
被覆層の材料が無機化合物である場合、金属酸化物であることが好ましい。金属酸化物の例として、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化チタン(チタニア)、酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、酸化スズ、二酸化セリウム、酸化バナジウム(IV)、酸化マンガン、酸化鉛、酸化クロム、酸化鉄、酸化タングステン、並びにこれらの混合物及び合金が挙げられる。
【0076】
例えば、光輝性顔料がアルミニウムであり、かつ被覆層の金属酸化物がシリカである場合、被覆層が適度な粗さを有することにより、被覆層と結着樹脂との接着力が高まる。そして、結着樹脂が被覆層から剥がれにくくなる。具体的には、被覆層を有する光輝性顔料の十点平均粗さに基づく算術平均値Rを、適当な値に調整することにより、被覆層と結着樹脂との接着力を高めることができる。
【0077】
また、例えば、光輝性顔料がアルミニウムであり、かつ被覆層の金属酸化物がアルミナである場合、被覆層が適度な粗さを有することにより、被覆層と光輝性顔料との接着力が高まる。そして、被覆層が光輝性顔料から剥がれにくくなる。具体的には、被覆層を有する光輝性顔料の十点平均粗さに基づく算術平均値Rを、適当な値に調整することにより、被覆層と光輝性顔料との接着力を高めることができる。
【0078】
トナー母体粒子の粗さ曲線を得る際に用いるサンプルを、イオンミリングやミクロトームによって切断する。そして、その断面を、EDS(エネルギー分散型X線分光法)で解析することにより、被覆層の構成材料を識別できる。サンプルについては、詳しくは後述する。
【0079】
被覆層の厚さは、特に制限されない。ただし、光輝性の観点から、光輝性顔料はより薄くすることが好ましく、被覆層もより薄くすることが好ましい。被覆層の厚さは、20~350nmの範囲内であることが好ましく、20~200nmの範囲内であることがより好ましく、20~120nmの範囲内であることが更に好ましい。
【0080】
(1.3)被覆層を有する光輝性顔料の十点平均粗さに基づく算術平均値R
本発明に係る被覆層を有する光輝性顔料の十点平均粗さに基づく算術平均値Rは、0.07~0.30μmの範囲内である。十点平均粗さに基づく算術平均値Rが上記範囲内であることにより、光輝性顔料の表面が、適度に凹凸を有する。そして、アンカー効果で、結着樹脂が光輝性顔料から剥がれにくい。
【0081】
被覆層を有する光輝性顔料の表面は、高さ、深さ、間隔の異なる山や谷が連続した複雑な形状をしている。被覆層を有する光輝性顔料の表面の形状を表す指標の一つとして、表面性状(粗さ曲線、うねり曲線及び断面曲線)が挙げられる。
【0082】
本発明では、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて断面画像を取得する。その断面画像から、被覆層を有する光輝性顔料の被覆層又は光輝性顔料における結着樹脂との界面をたどって、輪郭を抽出し、これを「断面曲線」とする。この断面曲線から、ガウシアンフィルタを使用して、うねり成分を抽出し、断面曲線からうねりデータを減算させて、粗さ曲線を得る。断面曲線から粗さ曲線を得る際には、2μmをカットオフ値としたガウシアンフィルタを用いる。この粗さ曲線から、下記方法で、十点平均粗さに基づく算術平均値Rを算出する。
【0083】
図4は、十点平均粗さに基づく算術平均値Rの算出方法において用いられる各用語の意味を表す説明図である。
粗さ曲線21において、平均線(X)22の方向に基準長さ23をとる。基準長さ23は、2.5μmとする。この長さがとれないサンプルは、計測対象外とする。
【0084】
選択した部分の平均線(X)22から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高24を、それぞれ、Yp1~Yp5とする。また、最も深い谷底から5番目までの谷底の標高25をYv1~Yv5とする。Yp1~Yp5の各絶対値の平均値と、Yv1~Yv5の各絶対値の平均値との和を求める。
十点平均粗さは、下記式で表される値である。
(式) 十点平均粗さ=(Yp1+Yp2+Yp3+Yp4+Yp5+Yv1+Yv2+Yv3+Yv4+Yv5)/5
【0085】
ここでの、「山頂」は、被覆層における結着樹脂との界面が、結着樹脂側に入り込み、凸状を形成していることを意味する。「谷底」は、被覆層における結着樹脂との界面が、光輝性顔料側にめり込み、凹状を形成していることを意味する。
【0086】
同様の手順で、1000個のトナー母体粒子に含有されている被覆層を有する光輝性顔料について、それぞれ、十点平均粗さを算出する。そして、これらの十点平均粗さに基づいて算術平均値を算出し、その値を、本発明における「十点平均粗さに基づく算術平均値R」とする。
【0087】
十点平均粗さに基づく算術平均値Rの値が小さいほど、被覆層を有する光輝性顔料の表面の平滑性が高いことを示す。また、十点平均粗さに基づく算術平均値Rの値が大きいほど、被覆層を有する光輝性顔料の表面の平滑性が低いことを示す。
【0088】
トナー母体粒子の粗さ曲線を得る際に用いるサンプルは、下記の方法で作製できる。
なお、トナー母体粒子の表面に外添剤を付着させ、トナー粒子とした状態でも、サンプルは、同様の方法で作製できる。
【0089】
真空電子染色装置「VSC1R1」(フィルジェン(株)製)を用いて、トナー母体粒子を、3%の四酸化ルテニウム(RuO4)蒸気で、室温で、10分間染色する。染色後のトナー母体粒子を、光硬化性樹脂「D-800」(日本電子社製)中に分散させて硬化処理を行う。そして、トナー母体粒子を光硬化性樹脂中に包埋する。
【0090】
トナー母体粒子を包埋した光硬化性樹脂を、剃刀を用いて平板状に加工する。イオンミリング用試料ホルダーに、熱可塑性ワックスを用いて、平板状の光硬化性樹脂を固定する。イオンミリング加工装置「SM-09010」(日本電子社製)により、平板状の光硬化性樹脂にイオンミリング加工を行い、断面観察用のサンプルを作製する。
なお、イオンミリング加工は、加速電圧/5.0kV、ビーム電流/60μA、設定時間/12時間、イオン種/Ar+の条件で行う。
【0091】
断面観察用のサンプルの断面の様子を、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて観察する。観察するトナー母体粒子は、トナー母体粒子の質量平均粒径から±3.0μm以内のものを1000個選ぶ。そして、10000倍の倍率で撮影を行い、断面画像を得る。
【0092】
被覆層を有する光輝性顔料の表面は、断面画像のコントラストから識別できる。例えば、数値計算ソフト(商品名:MATLAB(登録商標)、MathWork社製)を用いて、被覆層を有する光輝性顔料の被覆層又は光輝性顔料における結着樹脂との界面をたどって、輪郭を抽出し、断面曲線を得る。そして、断面曲線から、ガウシアンフィルタを使用して、うねり成分を抽出し、断面曲線からうねりデータを減算させて、粗さ曲線を得る。なお、断面画像から粗さ曲線を得るまでの一連の工程の全てを、数値計算ソフト(商品名:MATLAB(登録商標)、MathWork社製)で行うことができる。
【0093】
被覆層を有する光輝性顔料の十点平均粗さに基づく算術平均値Rは、0.07~0.2μmの範囲内であることが好ましく、0.08~0.15μmの範囲内であることがより好ましい。
【0094】
また、トナー母体粒子の粗さ曲線を得る際に用いる上記サンプルを、イオンミリングやミクロトームによって切断する。そして、その断面を、EDS(エネルギー分散型X線分光法)で解析することにより、被覆層の構成材料を識別できる。
【0095】
(2)結着樹脂
本発明に係る光輝性顔料は、自身のみでは記録媒体上に固定化できない。そのため、光輝性顔料の周りに結着用の樹脂を被覆させたトナー母体粒子とすることにより、記録媒体上に固定化させることができる。
【0096】
(2.1)結着樹脂の材料
結着樹脂の材料は、特に制限されず、公知のトナーに通常用いられる結着樹脂を用いることができる。具体的には、ポリエステル、スチレン-アクリル樹脂等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、これらの樹脂を二種以上含む複合樹脂等が挙げられる。低温定着性、耐久性、及び保存性の両立の観点から、ポリエステルであることが好ましい。
【0097】
(2.1.1)ポリエステル
ポリエステルは、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であることが好ましい。
【0098】
2価のアルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール、下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
これらは、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0099】
脂肪族ジオールは、炭素数が2~20の範囲内であることが好ましく、炭素数が2~15の範囲内であることがより好ましい。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0100】
また、下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であることが好ましい。
【0101】
【0102】
式(I)中、OR及びROはオキシアルキレン基である。Rは、それぞれ、エチレン又はプロピレン基である。x及びyは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数である。xとyの和の値は、1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。また、xとyの和の値は、16以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、6以下であることが更に好ましく、4以下であることが特に好ましい。
【0103】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0104】
2価のカルボン酸系化合物としては、例えば、ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物、アルキル基の炭素数が1~3の範囲内であるアルキルエステルの誘導体等が挙げられる。
【0105】
ジカルボン酸は、炭素数が3~30の範囲内であることが好ましく、3~20の範囲内であることがより好ましく、3~10の範囲内であることが更に好ましい。ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸、等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0106】
低温定着性、耐久性、及び保存性の両立の観点から、カルボン酸成分は、テレフタル酸又はフマル酸を含むことが好ましい。テレフタル酸又はフマル酸の含有量は、カルボン酸成分の全質量に対して、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。テレフタル酸及びフマル酸が併用されている場合は、両者の全質量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0107】
3価以上のカルボン酸系化合物としては、例えば、3価以上のカルボン酸、3価のカルボン酸の無水物、アルキル基の炭素数が1~3の範囲内であるアルキルエステルの誘導体等が挙げられる。
【0108】
3価以上のカルボン酸は、炭素数が4~20の範囲内であることが好ましく、7~15の範囲内であることがより好ましく、8~12の範囲内であることが更に好ましく、9~10の範囲内であることが特に好ましい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)等が挙げられる。
【0109】
耐高温オフセット性の観点から、3価以上のカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。また、低温定着性の観点から、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
【0110】
なお、ポリエステルの分子量及び軟化点を調整する観点から、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、適宜含有されていてもよい。
【0111】
カルボン酸成分とアルコール成分との質量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、0.6~1.1の範囲内であることが好ましく、0.7~1.05の範囲内であることがより好ましく、0.75~1.05の範囲内であることが更に好ましい。
【0112】
ポリエステルは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気下で重縮合させて合成できる。必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等を用いてもよい。重縮合時の温度条件は、130~250℃の範囲内であることが好ましく、170~240℃の範囲内であることがより好ましい。
【0113】
エステル化触媒としては、例えば、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)等のチタン化合物等が挙げられる。中でも、錫化合物であることが好ましい。
【0114】
エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の全質量に対して、0.01~1.5質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~1質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0115】
エステル化助触媒としては、例えば、没食子酸等が挙げられる。
エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の全質量に対して、0.001~0.5質量%の範囲内であることが好ましく、0.01~0.1質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0116】
重合禁止剤としては、例えば、t-ブチルカテコール等が挙げられる。
重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の全質量に対して、0.001~0.5質量%の範囲内であることが好ましく、0.01~0.1質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0117】
ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性ポリエステルとしては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法により、フェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルが挙げられる。中でも、ポリエステルをポリイソシアネートでウレタン伸長したウレタン変性ポリエステルであることが好ましい。
【0118】
ポリエステルの含有量は、結着樹脂の全質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0119】
(2.1.2)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂は、原料の単量体として、少なくとも、スチレン、又はα-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体を含む付加重合体である。以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて、「スチレン系化合物」という。
【0120】
ワックスの分散性を向上させる観点から、スチレン系化合物の含有量は、原料の単量体の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。また、低温定着性を向上させる観点から、スチレン系化合物の含有量は、95質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
【0121】
スチレン系樹脂は、原料の単量体として、アルキルエステルの炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、スチレン-アクリル樹脂であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル等が挙げられる。
これらは、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0122】
なお、本明細書において、「(イソ)」は、この基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両者を示す。
【0123】
低温定着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキルエステルの炭素数は、7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。また、保存安定性の観点から、アルキルエステルの炭素数は、12以下であることが好ましく、10以下であることが好ましい。
なお、「アルキルエステルの炭素数」とは、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数のことをいう。
【0124】
低温定着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、原料の単量体の全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。また、ワックスの分散性を向上させる観点から、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
【0125】
スチレン-アクリル樹脂の原料の単量体は、スチレン系化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外に、その他の単量体を含んでいてもよい。その他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類等が挙げられる。
【0126】
スチレン系樹脂の原料の単量体の付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、重合禁止剤、架橋剤等の存在下で行うことができる。また、有機溶媒存在下又は無溶媒下で行うことができる。付加重合反応時の温度条件は、110~200℃の範囲内であることが好ましく、140~170℃の範囲内であることがより好ましい。
【0127】
有機溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、原料の単量体の全質量に対して、10~50質量%の範囲内であることが好ましい。
【0128】
(2.1.3)複合樹脂
低温定着性、耐久性、及び保存性の両立の観点から、結着樹脂は、ポリエステルとスチレン系樹脂が化学結合した複合樹脂であることが好ましい。ポリエステルとスチレン系樹脂は、それぞれの原料の単量体のいずれとも反応し得る両反応性の単量体を介して、化学結合される。
【0129】
両反応性の単量体は、分子内に、エチレン性不飽和結合と一種以上の官能基を有することが好ましい。官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基が挙げられる。中でも、ヒドロキシ基又はカルボキシ基であることが好ましく、カルボキシ基であることがより好ましい。
【0130】
両反応性の単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸であることが好ましい。
これらは、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0131】
ただし、重合禁止剤と共に用いた場合、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸系化合物は、両反応性の単量体ではなく、ポリエステルの原料の単量体として機能する。
【0132】
また、両反応性の単量体は、アルキル基の炭素数が6以下である(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。これらは一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0133】
エステル交換反応の反応性の観点から、(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。アルキル基の炭素数は、2~6の範囲内であることが好ましく、3~4の範囲内であることがより好ましい。また、アルキル基は、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0134】
ポリエステルとスチレン系樹脂との分散性、及びトナーの耐久性の観点から、両反応性の単量体の含有量は、ポリエステルのアルコール成分の全モル数に対して、1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましい。また、低温定着性の観点から、両反応性の単量体の含有量は、ポリエステルのアルコール成分の全モル数に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
【0135】
ポリエステルとスチレン系樹脂との分散性、及びトナーの耐久性の観点から、両反応性の単量体の含有量は、スチレン系樹脂の原料の単量体の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、低温定着性の観点から、両反応性の単量体の含有量は、スチレン系樹脂の原料の単量体の全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。なお、スチレン系樹脂の原料の単量体の全質量には、重合開始剤の質量も含まれる。
【0136】
複合樹脂は、例えば、下記の方法により合成できる。両反応性の単量体は、トナーの耐久性、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、スチレン系樹脂の原料の単量体の付加重合反応の際、共に用いることが好ましい。
【0137】
複合樹脂は、例えば、工程(A)と工程(B)とを有する方法により合成できる。工程(A)は、ポリエステルの原料の単量体による重縮合反応の工程である。工程(B)は、スチレン系樹脂の原料の単量体と、両反応性の単量体とによる付加重合反応の工程である。
【0138】
工程(A)の後に工程(B)を行っても、工程(B)の後に工程(A)を行っても、工程(A)と工程(B)を同時に行ってもよい。中でも、工程(A)の後に工程(B)を行うことが好ましい。また、工程(A)と工程(B)は、同一容器内で行うことが好ましい。
【0139】
重縮合反応の工程(A)を行う代わりに、予め重合した重縮合系樹脂を用いてもよい。
また、工程(A)と工程(B)を並行して進行させる場合、ポリエステルの原料の単量体を含有させた混合物中に、スチレン系樹脂の原料の単量体を含有させた混合物を滴下し、反応させてもよい。
【0140】
耐久性の観点から、複合樹脂は、ワックスを予め含有させたワックス内添複合樹脂であることが好ましい。ワックス内添複合樹脂は、ワックスの存在下でポリエステルの原料の単量体の重縮合反応、又はスチレン系樹脂の原料の単量体の付加重合反応を行うことにより得られる。
【0141】
ワックスは、後述のワックスと同様のものを用いることができる。中でも、低温定着性の観点から、パラフィンワックスであることが好ましい。
【0142】
複合樹脂におけるワックスの含有量は、ポリエステルの原料の単量体、スチレン系樹脂の原料の単量体及び両反応性の単量体の全質量に対して、0.5~15質量%の範囲内であることが好ましく、1~10質量%の範囲内であることがより好ましく、1.5~7質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0143】
複合樹脂の合成の段階でワックスを用いる場合、重縮合反応をワックスの存在下で行うことが好ましい。例えば、工程(A)の際に、ポリエステルの原料の単量体と共にワックスを添加し、重縮合反応を行うことが好ましい。
【0144】
複合樹脂におけるスチレン系樹脂とポリエステルの質量比(スチレン系樹脂/ポリエステル)は、ワックス分散性の観点から、3/97以上であることが好ましく、7/93以上であることがより好ましく、10/90以上であることが更に好ましい。また、耐久性、低温定着性及び保存性の両立の観点から、複合樹脂におけるスチレン系樹脂とポリエステルの質量比は、45/55以下であることが好ましく、35/65以下であることがより好ましく、30/70以下であることが更に好ましく、25/75以下であることが特に好ましい。
【0145】
なお、上記の計算において、ポリエステルの質量は、ポリエステルの原料の単量体の全質量である。両反応性の単量体の質量は、ポリエステルの原料の単量体の全質量に含まれる。また、スチレン系樹脂の質量は、スチレン系樹脂の原料の単量体の全質量であり、重合開始剤の質量は、スチレン系樹脂の原料の単量体の全質量に含まれる。
【0146】
(2.2)結着樹脂の物性
耐久性及び耐高温オフセット性の観点から、結着樹脂の軟化点は、100℃以上であることが好ましく、105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが更に好ましい。また、溶融混練時における光輝性顔料の破壊を抑制する観点から、結着樹脂の軟化点は、135℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましく、125℃以下であることが更に好ましい。
【0147】
結着樹脂の軟化点は、例えば、次の方法で測定できる。
フローテスターとして、例えば、「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用いる。1gの結着樹脂の試料を、昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対してのフローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0148】
保存安定性の観点から、結着樹脂のガラス転移温度は、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。また、低温定着性の観点から、結着樹脂のガラス転移温度は、80℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましい。
【0149】
結着樹脂のガラス転移温度は、例えば、次の方法で測定できる。示差走査熱量計として、例えば、「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いる。0.01~0.02gの範囲内の結着樹脂の試料を、アルミパンに計量し、200℃まで昇温する。そして、200℃から、降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線と、ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度を、ガラス転移温度とする。
【0150】
帯電の立ち上がり性の観点から、結着樹脂の酸価は、1mgKOH/g以上であることが好ましく、5mgKOH/g以上であることがより好ましく、10mgKOH/g以上であることが更に好ましい。また、吸湿性の観点から、25mgKOH/g以下であることが好ましく、22mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0151】
結着樹脂の酸価は、例えば、JIS-K-0070-1992の方法に基づき測定できる。ただし、測定溶媒のみ、JIS-K-0070-1992に規定のエタノールとエーテルの混合溶媒を、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(体積比))に変更する。
【0152】
また、結着樹脂が複数の樹脂からなる場合は、各樹脂の物性の加重平均値が上記範囲内となることが好ましい。
【0153】
(2.3)結着樹脂の構造
結着樹脂の構造は、特に制限されず、単層であっても、二層以上の複数層であってもよい。二層以上の複数層の構造としては、コア・シェル構造や多層構造が挙げられる。
【0154】
(3)ワックス
トナー母体粒子は、必要に応じてワックスを含有してもよい。ワックスを含有することにより、例えば、後述の画像形成装置を用いて画像を形成する場合に、中間転写体上に転写されたトナー像を記録媒体上に転写することができる。また、中間転写体上にトナー粒子が残留するのを抑制できる。
ワックスとしては、公知の種々のワックスを用いることができる。
【0155】
ワックスとしては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス;脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類;脂肪酸類;高級アルコール類;脂肪酸金属塩等が挙げられる。中でも、耐久性の観点から、カルナウバワックスであることが好ましい。
これらは、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0156】
トナーの転写性の観点から、ワックスの融点は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。また、低温定着性の観点から、ワックスの融点は、160℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることが更に好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
【0157】
ワックスの融点は、例えば、次の方法で測定できる。
示差走査熱量計として、例えば、「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いる。0.01~0.02gの範囲内のワックスの試料を、アルミパンに計量し、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温する。そして、200℃から降温速度5℃/分で-10℃まで冷却する。次に、試料を、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温し測定する。得られる融解吸熱カーブから観察される、吸熱の最高ピーク温度を、ワックスの融点とする。
【0158】
トナーの低温定着性及び耐オフセット性、並びにワックスの結着樹脂中への分散性の観点から、ワックスの含有量は、結着樹脂の全質量に対して、0.5~15質量%の範囲内であることが好ましく、1~10質量%の範囲内であることがより好ましく、1.5~7質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0159】
(4)その他添加剤
トナー母体粒子は、必要に応じて、その他添加剤を含有してもよい。その他添加剤としては、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等が挙げられる。また、本発明に係るトナー母体粒子は、上記光輝性顔料以外の有色着色剤を更に含有してもよい。
【0160】
(4.1)荷電制御剤
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、スチレン-アクリル樹脂等が挙げられる。
【0161】
ニグロシン染料としては、例えば、「ニグロシン(登録商標)ベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロン(登録商標)N-01」、「ボントロン(登録商標)N-04」、「ボントロン(登録商標)N-07」、「ボントロン(登録商標)N-09」、「ボントロン(登録商標)N-11」(以上、オリヱント化学工業(株)製)等が挙げられる。
4級アンモニウム塩化合物としては、例えば、「ボントロン(登録商標)P-51」(オリヱント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド「COPYCHARGEPXVP435」(クラリアント社製)等が挙げられる。
【0162】
ポリアミン樹脂としては、例えば、「AFP-B」(オリヱント化学工業(株)製)等が挙げられる。
イミダゾール誘導体としては、例えば、「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等が挙げられる。
スチレン-アクリル樹脂としては、例えば、「FCA-701PT」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
【0163】
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、ベンジル酸化合物の金属化合物、サリチル酸化合物の金属化合物、銅フタロシアニン染料、4級アンモニウム塩、有機金属化合物等が挙げられる。
【0164】
含金属アゾ染料としては、例えば、「バリファーストブラック3804」、「ボントロン(登録商標)S-31」、「ボントロン(登録商標)S-32」、「ボントロン(登録商標)S-34」、「ボントロン(登録商標)S-36」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(以上、保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
ベンジル酸化合物の金属化合物としては、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等が挙げられる。
【0165】
サリチル酸化合物の金属化合物としては、例えば、「ボントロン(登録商標)E-81」、「ボントロン(登録商標)E-84」、「ボントロン(登録商標)E-88」、「ボントロン(登録商標)E-304」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
4級アンモニウム塩としては、例えば、「COPYCHARGENXVP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。
【0166】
帯電安定性の観点から、荷電制御剤の含有量は、結着樹脂の全質量に対して、0.01~10質量%の範囲内であることが好ましく、0.2~5質量%の範囲内であることがより好ましく、0.2~3質量%の範囲内であることが更に好ましく、0.2~2質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0167】
(4.2)有色着色剤
トナー母体粒子は、必要に応じて、有色着色剤を更に含有してもよい。有色着色剤は、トナーの色に応じて、下記に示すような公知の無機又は有機の着色剤を使用できる。有色着色剤の含有量は、結着樹脂の全質量に対して、1~30質量%の範囲内であることが好ましく、2~20質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0168】
有色着色剤としては、具体的に、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤、黒色着色剤、白色着色剤等が挙げられる。これらは、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0169】
イエロー着色剤としては、イエロー色のトナーに通常用いられる公知のイエロー着色剤を使用できる。例えば、染料としてC.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等、顔料としてC.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185等が挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0170】
マゼンタ着色剤としては、マゼンタ色のトナーに通常用いられる公知のマゼンタ着色剤を使用できる。例えば、染料としてC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等、顔料としてC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222等が挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0171】
シアン着色剤としては、シアン色のトナーに通常用いられる公知のシアン着色剤を使用できる。例えば、染料としてC.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等、顔料としてC.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同60、同62、同66、同76、同15:3等が挙げられる。これらの混合物も使用できる。
【0172】
黒色着色剤としては、黒色のトナーに通常用いられる公知の黒色着色剤を使用できる。例えば、カーボンブラック、磁性体、チタンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられる。磁性体としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これら強磁性金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金等が挙げられる。また、熱処理することにより強磁性を示す合金としては、例えば、マンガン-銅-アルミニウム、マンガン-銅-スズなどのホイスラー合金、二酸化クロム等が挙げられる。
【0173】
白色着色剤としては、白色のトナーに通常用いられる公知の白色着色剤を使用できる。白色着色剤は、無機化合物であっても、有機化合物であってもよい。無機化合物としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクサイト等が挙げられる。有機化合物としては、例えば、ポリスチレン粒子、尿素ホリマリン樹脂粒子等が挙げられる。
【0174】
3.トナー母体粒子の粒径
トナー母体粒子の粒径は、体積基準メジアン粒径(D50)として、5~50μmの範囲内であることが好ましく、10~30μmの範囲内であることがより好ましく、12~30μmの範囲内であることが更に好ましい。
なお、本発明において、体積基準メジアン粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が、粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0175】
体積基準メジアン粒径(D50)は、例えば、下記の方法で測定できる。
【0176】
測定機:「コールター(登録商標)マルチサイザーII」(ベックマンコールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:「コールター(登録商標)マルチサイザーアキュコンプバージョン1.19」(ベックマンコールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター(株)製)
分散液:電解液に「エマルゲン(登録商標)109P」(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
【0177】
分散条件:上記分散液5mLに、トナー粒子試料10mgを添加し、超音波分散機「US-1」((株)エスエヌディー製、出力:80W)にて1分間分散させる。その後、上記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
【0178】
測定条件:上記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、上記試料分散液を加える。3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積基準メジアン粒径(D50)を求める。
【0179】
4.外添剤
トナー母体粒子は、表面に外添剤を付着させることが好ましい。外添剤を付着させることにより、トナーの帯電性、流動性、アンチブロック性等を制御できる。
【0180】
外添剤は、無機微粒子であっても、有機微粒子であってもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛などのステアリン酸化合物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などのチタン酸化合物等、が挙げられる。
【0181】
有機微粒子としては、例えば、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の樹脂微粒子;スチレン、メチルメタクリレートなどの単独重合体、又はこれらの共重合体からなる微粒子等、が挙げられる。
これらは、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0182】
中でも、外添剤は、シリカであることが好ましい。トナーの転写性の観点から、外添剤は、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
【0183】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0184】
トナーの帯電性、流動性及び転写性の観点から、外添剤の平均粒径は、10~250nmの範囲内であることが好ましく、15~200nm範囲内であることがより好ましく、15~90nmの範囲内であることが更に好ましい。
【0185】
上記平均粒径は、個数平均粒径である。個数平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値として算出できる。
【0186】
トナーの帯電性、流動性及び転写性の観点から、外添剤の含有量は、トナー母体粒子の全質量に対して、0.05~5質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~3質量%の範囲内であることがより好ましく、0.3~3質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0187】
トナーの流動性及び耐久性の観点から、外添剤によるトナー母体粒子の被覆率は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、95%以上であることが特に好ましい。また、感光体へ外添剤が移行するのを防止する観点から、外添剤によるトナー母体粒子の被覆率は、200%以下であることが好ましく、170%以下であることがより好ましく、150%以下であることが更に好ましい。
【0188】
外添剤によるトナー母体粒子の被覆率は、下記式より算出できる。また、外添剤を二種以上併用した場合の、外添剤による総被覆率は、各外添剤について算出した被覆率の総和とする。
【0189】
(式)被覆率(%)=(√3/2π)×{(D・ρt)/(d・ρs)}×C×100
式中、各記号は、下記に示すとおりである。
D:トナー母体粒子の体積基準メジアン粒径(D50)[μm]
d:外添剤の個数平均粒径[μm]
ρt:トナー母体粒子の比重
ρs:外添剤の比重
C:トナー母体粒子に対する外添剤の質量比(外添剤/トナー母体粒子)
【0190】
5.電子写真用光輝性トナーの体積抵抗率
トナーは、撹拌等の衝撃が加わっても、帯電特性が安定することが好ましい。
具体的には、振動数40Hz、3時間でキャリアと撹拌する前と後の、前記電子写真用光輝性トナーの体積抵抗率を、それぞれ、ρVA[Ω・cm]、ρVB[Ω・cm]とするとき、下記式で表される、前記体積抵抗率の常用対数の変化率Pが、5%以下であることが好ましい。
(式) 変化率P[%]=100×(logρVA-logρVB)/logρVA
【0191】
振動数40Hzで3時間撹拌する前と後の、トナーの体積抵抗率は、下記の方法で測定できる。
【0192】
トナーの撹拌は、下記の方法で行う。
100mLのヘッドスペース用バイアル(AGILENT社製)に、後述するキャリア90g及びトナー10gを仕込み、振動数40Hzで3時間撹拌する。30μmの目開きの篩を用い、得られた現像剤を、トナーとキャリアに分離する。分離したトナーを、「振動数40Hz、3時間でキャリアと撹拌した後のトナー」とする。
【0193】
振動数40Hz、3時間で撹拌する前と後の、それぞれのトナーについて、サンプルを作製する。各トナー3gに、980.7N/cm2(100kgf/cm2)の荷重を10秒かけて、厚さ約2mm、40φの円盤状の各サンプルを成形する。そして、各サンプルを、20℃・50%RHにて一晩調湿する。
【0194】
体積抵抗率[Ω・cm]は、例えば、高抵抗測定装置「5451」(株式会社エーディーシー製)にて測定できる。測定条件は、主電極径11mm、印加電圧1000V、ディスチャージ時間1分、チャージ時間1秒、測定間隔10秒ごととする。サンプルの厚さは、デジタルマノメーターで測定する値を入力する。
【0195】
振動数40Hz、3時間で撹拌する前のトナーの体積抵抗率を、ρVA[Ω・cm]、振動数40Hzで3時間撹拌した後のトナーの体積抵抗率をρVB[Ω・cm]とする。このとき、これらの体積抵抗率の常用対数は、それぞれ、logρVA、logρVBと表される。そして、体積抵抗率の常用対数の変化率P[%]は、上記式で表される。
【0196】
変化率Pが小さいほど、撹拌等の衝撃が加わっても、トナーの帯電特性が安定していることを示す。具体的には、変化率Pが5%以下であることにより、撹拌等の衝撃が加わっても、トナーの帯電特性が安定し、飛散による画像不良をより抑制できる。
なお、変化率Pは、十点平均粗さに基づく算術平均値Rと、被覆層の材料を適宜選択することにより、調整できる。
【0197】
体積抵抗率の測定に用いるキャリアは、以下の方法で作製する。
MnO換算で19.0モル%、MgO換算で2.8モル%、SrO換算で1.5モル%、Fe2O3換算で75.0モル%になるように各原材料を適量配合する。この原材料に水を加え、湿式ボールミルで10時間粉砕、混合し、乾燥させ、950℃で4時間保持する。その後、湿式ボールミルで24時間粉砕を行ったスラリーを、造粒し、乾燥する。次いで、得られた粒子を、撹拌装置を内蔵した焼成炉内に、容積の5割量で添加する。粒子を、周速10m/s、1300℃にて4時間保持する。その後、粒子を解砕し、粒子径35mmに粒度を調整し、芯材粒子を得る。
【0198】
得られる芯材粒子を100質量部と、メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸メチル(共重合比5/5)の樹脂微粒子を2.5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入する。これらを、125℃で45分間、風速10m/sで撹拌混合する。機械的衝撃力の作用で、芯材粒子の表面に樹脂被覆層を形成する。その後、風速2m/sに下げて冷却を行い、樹脂で被覆されたキャリアを得る。
【0199】
6.電子写真用光輝性トナーの製造方法
上記電子写真用光輝性トナーのうち、光輝性顔料における被覆層がケイ素化合物である場合、本発明の電子写真用光輝性トナーの製造方法は、光輝性顔料を溶媒に溶解し、スラリーを調製する工程、及び前記スラリーを、撹拌レイノルズ数が8000~22000の範囲内で撹拌しながら、前記スラリーに前記ケイ素化合物を添加する工程、を有することが好ましい。
【0200】
ただし、本発明の電子写真用光輝性トナーの製造方法は、上記方法に制限されない。特に、光輝性顔料における被覆層の形成方法は、被覆層の材料の種類に応じて、適宜選択することが好ましい。
【0201】
被覆層が、ケイ素化合物である場合、まず、光輝性顔料を溶媒に溶解し、スラリーを調製する。そして、スラリーを撹拌しながら、当該スラリーにケイ素化合物を添加する。スラリーの撹拌において、撹拌レイノルズ数を適宜選択することにより、形成される被覆層の凹凸を制御できる。すなわち、被覆層を有する光輝性顔料の十点平均粗さに基づく算術平均値Rを制御できる。
【0202】
攪拌レイノルズ数(攪拌Re数)は、以下の式により算出できる。
(式) 攪拌Re数=(ρ×n×d2)/μ
ρ:25℃における光輝性顔料含有分散液(スラリー)の密度(kg/m3)
n:攪拌回転数(毎秒回転数[rps])
d:攪拌翼の直径[m]
μ:25℃における光輝性顔料含有分散液(スラリー)の粘度[kg/m・s]
【0203】
被覆層がチタニア又はアルミナである場合、ケイ素化合物の代わりにチタン化合物又はアルミ化合物を添加する以外は、上記と同様の方法で、被覆層を形成することができる。
【0204】
トナーの製造方法は、特に制限されないが、トナー母体粒子の粒径及び形状の制御が容易である観点から、乳化凝集法を利用した製造方法であることが好ましい。
【0205】
このような製造方法は、下記各工程を含むことが好ましい。
(1A)結着樹脂粒子の分散液を調製する結着樹脂粒子分散液調製工程
(1B)光輝性顔料粒子の分散液を調製する光輝性顔料粒子分散液調製工程
(2)結着樹脂粒子及び光輝性顔料粒子が存在している水系媒体中に、凝集剤を添加し、塩析を進行させると同時に凝集、融着を行い、会合粒子を形成する会合工程
(3)会合粒子の形状制御をすることによりトナー母体粒子を形成する熟成工程
(4)水系媒体からトナー粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤等を除去する濾過、洗浄工程
(5)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程
(6)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
(1A)及び(1B)の工程について説明する。
【0206】
(1A)結着樹脂粒子分散液調製工程
本工程では、従来公知の乳化重合などにより樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させて結着樹脂粒子を形成する。一例として、結着樹脂を構成する重合性単量体を水系媒体中へ投入、分散させる。そして、重合開始剤により、これらの重合性単量体を重合させ、結着樹脂粒子の分散液を調製する。
【0207】
結着樹脂粒子分散液を得る方法として、上記の方法の他に、例えば、溶媒を用いることなく、水性媒体中において分散処理を行う方法が挙げられる。また、結着樹脂(結晶性樹脂等)を酢酸エチルなどの溶媒に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水性媒体中に乳化分散させる。その後、脱溶媒処理を行う方法が挙げられる。
【0208】
必要に応じて、結着樹脂に、離型剤(ワックス)をあらかじめ含有させておいてもよい。分散性の観点から、適宜公知の界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸などのアニオン系界面活性剤)の存在下で、重合させてもよい。結着樹脂粒子分散液とは別に、離型剤粒子分散液を光輝性顔料粒子分散液調製工程と同様の方法で調製し、上記(2)の会合工程の水系媒体中に存在させるようにしてもよい。
【0209】
分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、50~300nmの範囲内であることが好ましい。分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて、動的光散乱法により測定できる。
【0210】
(1B)光輝性顔料粒子分散液調製工程
本工程では、光輝性顔料を水系媒体中に微粒子状に分散させる。
ここでの、光輝性顔料は、既に被覆層を形成したものであってもよいし、被覆層を形成していないものであってもよい。
【0211】
被覆層が主にケイ素化合物で構成される場合は、光輝性顔料を水系媒体中に微粒子状に分散させた後、光輝性顔料の表面に被覆層を形成できる。具体的には、光輝性顔料を溶媒(水系媒体)中に分散し、スラリー(分散液)を調製する。そして、スラリー(分散液)を、撹拌レイノルズ数が8000~22000の範囲内で撹拌しながら、当該スラリーに、ケイ素化合物を添加する。このような方法で被覆層を形成することにより、被覆層を有する光輝性顔料の表面粗さを制御できる。
【0212】
光輝性顔料の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の光輝性顔料粒子の個数基準のメジアン径は、10~300nmの範囲内であることが好ましく、50~200nmの範囲内であることがより好ましい。光輝性顔料粒子の個数基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定できる。
【0213】
(1A)及び(1B)の工程で用いられる水系媒体としては、水、又は水を主成分として、アルコール類、グリコール類などの水溶性溶媒、界面活性剤、分散剤などの任意成分が配合されているものが挙げられる。中でも、水系媒体は、水及び界面活性剤を混合したものであることが好ましい。
【0214】
界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウムなどの脂肪酸石けん、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。
【0215】
界面活性剤は、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。中でも、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤であることが好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムであることがより好ましい。
【0216】
界面活性剤の含有量は、水系媒体の全質量に対して、0.01~10質量%の範囲内であることが好ましく、0.04~1質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0217】
(2)会合工程から(6)外添剤添加工程までの工程については、従来公知の種々の方法にしたがって行うことができる。
【0218】
(2)会合工程において使用される凝集剤は、特に制限されないが、金属塩であることが好ましい。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩等の一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどが挙げられる。中でも、より少量で凝集を進めることができる観点から、金属塩は二価の金属塩であることがより好ましい。これらは、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0219】
7.二成分現像剤
本発明のトナーは、例えば、本発明のトナーとキャリア粒子とを含有する、電子写真用の二成分現像剤として使用できる。二成分現像剤は、本発明のトナーと下記キャリア粒子とを混合することにより、得られる。
【0220】
混合の際に用いられる混合装置は、特に制限されず、例えば、ナウターミキサー、Wコーン及びV型混合機等が挙げられる。二成分現像剤中のトナーの含有量(トナー濃度)は、特に制限されず、4.0~12.0質量%の範囲内であることが好ましい。
【0221】
(1)キャリア粒子
本発明に係る二成分現像剤に含まれるキャリア粒子の主要な役割の一つは、現像ボックス内でトナーと撹拌及び混合され、トナーに所望の電荷を与えることである。
【0222】
また、キャリア粒子の別の役割は、現像機と感光体の間で電極として働き、電荷を帯びたトナーを感光体上の静電荷像に運び、トナー画像を形成させる担体物質(すなわちキャリア)として機能することである。
【0223】
キャリア粒子は,磁気力によりマグネットローラー上に保持され、現像に作用した後、再び現像ボックスに戻り、新たなトナーと再び撹拌及び混合され、ある一定期間繰り返し使用される。
【0224】
したがって、所望の画像特性(画像濃度、カブリ、白斑、階調性、解像力等)を安定に維持するためには、当然のことながら、キャリアの特性が使用期間中、安定であることが要求される。
【0225】
本発明に係るキャリアを構成するキャリア粒子は、後述するように鉄、フェライト、マグネタイト等の金属粉体である芯材粒子の表面を被覆用樹脂で被覆されていることが好ましい。
【0226】
すなわち、キャリア粒子は、少なくとも磁性体により構成され、公知のものを使用できる。例えば、キャリア粒子の構成としては、少なくとも磁性体からなる芯材粒子の表面に樹脂を被覆した被覆型キャリア粒子、樹脂中に磁性体微粉末が分散されてなる分散型キャリア粒子等が挙げられる。
【0227】
キャリア粒子の平均粒径は、トナー母体粒子と同様の方法で測定される体積基準メジアン粒径(D50)として、10~500μmの範囲内であることが好ましく、30~100μmの範囲内であることがより好ましい。
【0228】
キャリア粒子は、感光体に対するキャリア粒子の付着を抑制する観点から、被覆型キャリア粒子であることが好ましい。被覆型キャリア粒子について説明する。
【0229】
(1.1)芯材粒子
被覆型キャリア粒子における芯材粒子は、少なくとも磁性体、例えば、磁場によってその方向に強く磁化する物質、によって構成される。磁性体の例としては、鉄、ニッケル及びコバルトなどの強磁性を示す金属、これらの金属を含む合金又は化合物、及び、熱処理することにより強磁性を示す合金、が挙げられる。これらの磁性体は、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0230】
強磁性を示す金属、及び、これらの金属を含む合金又は化合物の例としては、鉄、下記式(a)で表わされるフェライト、及び下記式(b)で表わされるマグネタイトが挙げられる。式(a)及び式(b)中のMは、1価又は2価の金属を表し、具体的には、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Sr、Zn、Cd又はLiが挙げられる。これらの金属は、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
式(a):MO・Fe2O3
式(b):MFe2O4
【0231】
また、熱処理することにより強磁性を示す合金の例としては、マンガン-銅-アルミニウム及びマンガン-銅-錫などのホイスラー合金、並びに、二酸化クロムが挙げられる。
【0232】
芯材粒子の磁化は、飽和磁化が30~75A・m2/kgの範囲内であり、残留磁化が5.0A・m2/kg以下であることが好ましい。このような磁気特性を有することにより、キャリア粒子が部分的に凝集するのを防止でき、現像剤搬送部材の表面に二成分現像剤が均一分散される。そして、濃度ムラがなく、均一で高精細のトナー画像を形成できる。
【0233】
芯材粒子に用いられる磁性体としては、好適な磁気特性が得られる観点から、フェライトであることが好ましい。フェライトは、空孔を有する多孔質粒子であり、さらに、空孔に樹脂を充填した粒子であることが好ましい。フェライトをこのような構成とすることにより、比重を比較的小さくすることができる。そして、現像機内における撹拌の衝撃力によるキャリアの割れや欠けを抑制でき、優れた耐久性のキャリアが得られる。
【0234】
(1.2)キャリア被覆用樹脂
被覆型キャリア粒子を構成する被覆用樹脂として、キャリア粒子の芯材粒子の被覆に利用される公知の樹脂を使用できる。キャリア粒子の水分吸着性を低減させ、被覆用樹脂の層と芯材粒子との密着性を高める観点から、被覆用樹脂は、シクロアルキル基を有する樹脂であることが好ましい。
【0235】
シクロアルキル基の例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。中でも、シクロアルキル基は、シクロヘキシル基又はシクロペンチル基であることが好ましい。さらに、被覆用樹脂の層と芯材粒子(例えば、フェライト粒子)との密着性の観点から、シクロアルキル基は、シクロへキシル基であることがより好ましい。
【0236】
被覆用樹脂は、例えば、シクロアルキル基を有する単量体を含む重合性化合物を、重合して得られる。シクロアルキル基を有する単量体は、特に制限されないが、メタクリル酸のシクロアルキルエステルであることが好ましい。被覆用樹脂は、当該単量体とシクロアルキル基を有しない単量体、例えば、メタクリル酸のアルキルエステルとの共重合体であってもよい。ただし、メタクリル酸のアルキルエステルは、環状構造を有していないことが好ましい。
【0237】
被覆用樹脂の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)により測定できる。ポリスチレン基準として、被覆用樹脂の質量平均分子量は、10000~800000の範囲内であることが好ましく、100000~750000の範囲内であることがより好ましい。
【0238】
被覆用樹脂におけるシクロアルキル基の含有量は、10~90質量%の範囲内であることが好ましい。被覆用樹脂におけるシクロアルキル基の含有量は、例えば、熱分解-ガスクロマトグラフ/質量分析(P-GC/MS)や、1H-NMR等によって測定できる。
【0239】
キャリア粒子における被覆用樹脂の層の厚さは、キャリアの耐久性と帯電性(低電気抵抗化)との両立の観点から、0.05~4.0μmの範囲内であることが好ましく、0.2~3.0μmの範囲内であることがより好ましい。
【0240】
8.画像形成方法
本発明の画像形成方法は、電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤を用いる画像形成方法であって、前記電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤が、上記電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤であることを特徴とする。
【0241】
本発明のトナーは、公知の電子写真方式を利用した画像形成方法に利用される。また、前述のとおり、本発明のトナーは、結着樹脂が光輝性顔料から剥がれにくく、現像機内の撹拌等の衝撃がトナーに加わっても、トナーの帯電特性が安定する。そのため、記録媒体が枚葉状の場合だけでなく、搬送ローラーなどと摩擦帯電を起こしやすい連続状記録媒体の場合においても、トナーの飛散による画像不良を十分に抑制できると考えられる。
具体的には、下記の工程を有する画像形成方法において利用されることが好ましい。
【0242】
1)像保持体表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程
2)像保持体表面に形成された静電荷像をトナーにより現像し、光輝性トナー像を形成する現像工程
3)光輝性トナー像を被転写体表面に転写する転写工程
4)被転写体表面に転写された光輝性トナー像を定着する定着工程
【0243】
なお、3)の転写工程は、像保持体から被転写体への光輝性トナー像の転写を媒介する中間転写体を用いたものであってもよい。
また、転写後の像保持体表面の残留トナーを除去するクリーニング工程を更に有していてもよい。
【0244】
得られる画像は、光輝性トナー像の上層に、少なくとも、有色トナーにより形成される有色トナー像を有することが好ましい。すなわち、カラーメタリック色を有する画像であることが好ましい。本発明のトナーにより形成される光輝性トナー像は、光輝性が高いため、有色トナー像の下層に用いても、その光輝性が画像において十分発揮される。そして、良好なカラーメタリック画像を形成できる。
【0245】
記録媒体は、一般的に使用されているものを使用できる。記録媒体は、「メディア」、「記録材」、「記録紙」、「記録用紙」とも呼ばれる。記録媒体は、例えば、画像形成装置等による公知の画像形成方法により形成したトナー画像を保持するものであれば、特に制限されない。記録媒体としては、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、コート紙等の塗工された印刷用紙や、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布、軟質透明フィルム、ユポ紙等の合成紙等が挙げられる。本発明は、特に、色紙、黒紙、透明のフィルム等の特殊な記録媒体に、画像を出力する場合において、効果が顕著である。
【0246】
具体的な画像形成方法については、用いる画像形成装置と合わせて後述する。
【0247】
9.画像形成装置
本発明のトナーを用いて画像を形成する場合に使用される画像形成装置について説明する。
【0248】
画像形成装置としては、例えば、ドラムタンデム方式のものが挙げられる。ドラムタンデム方式では、現像機及び感光体を有する画像形成ユニットを、トナー毎(本発明のトナー及び有色トナー)に搭載する。そして、感光体毎に形成されたトナー像を、順次中間転写体上に転写して重ね合わせる。その後、一括して記録媒体上に転写し、熱ローラー方式で定着させ、可視画像(定着画像)を形成する。
【0249】
図5は、本発明において好適に用いられるドラムタンデム方式の画像形成装置の一例を示す断面概要図である。なお、
図5では、本発明のトナーと、有色トナーとして、イエロートナー(By)、マゼンタトナー(Bm)、シアントナー(Bc)、及び、黒トナー(Bk)を用いる場合の一例を示す。
なお、本発明のトナーを用いて画像を形成する場合に使用される画像形成装置には、これに制限されない。
【0250】
図5で示される画像形成装置GSは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるものである。画像形成装置GSは、中間転写体36の移動方向に沿って、光輝性トナー及び有色トナー(イエロー、マゼンタ、シアン及び黒色)を用いてトナー像を形成する画像形成ユニットを配置する。各画像形成ユニットの感光体上に形成した光輝性トナー像及び有色トナー像を、中間転写体上に多重転写して重ね合わせた後、記録媒体上に一括転写する。
【0251】
画像読取装置SC上に載置された原稿画像は、光学系により走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。ラインイメージセンサCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行う。その後、画像書込手段としての露光光学系33に画像データ信号を送る。
【0252】
中間転写体36は、特に制限されず、ドラム式のものや無端ベルト式のものを使用できる。中間転写体として、無端ベルト式のものを使用する場合について説明する。
【0253】
中間転写体36の周縁部には、5組のプロセスユニット100が設けられている。プロセスユニット100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒色(K)の各色トナー像、及び光輝性トナー像(W)を形成する。プロセスユニット100は、
図5の矢印で示す鉛直方向の中間転写体36の回転方向に対して、中間転写体36に沿って垂直方向に縦列配置される。プロセスユニット100は、イエロー(Y)用のプロセスユニットY、マゼンタ(M)用のプロセスユニットM、シアン(C)用のプロセスユニットC、黒色(K)用のプロセスユニットK及び光輝性トナー像(W)用のプロセスユニットWの順に配置されている。
【0254】
5組のプロセスユニット100は、いずれも共通した構造である。それぞれ、感光体ドラム31、帯電手段としての帯電器32、画像書込手段としての露光光学系33、現像装置(現像機)34及び感光体クリーニング手段としての感光体クリーニング装置190を有する。
【0255】
感光体ドラム31は、例えば、アルミニウム等の金属製の部材によって形成される円筒状の基体の外周に、感光層を形成したものである。金属製の部材の外形は、40~100mmの範囲内であることが好ましい。感光層の厚さは、20~40μmの範囲内であることが好ましい。感光体ドラム31は、不図示の駆動源からの動力により、基体を接地された状態で、矢印の方向に回転する。回転の線速度は、80~280mm/sの範囲内であることが好ましく、220mm/s程度であることがより好ましい。
【0256】
感光体ドラム31の周りには、帯電手段としての帯電器32、画像書込手段としての露光光学系33及び現像装置(現像機)34を一組とした画像形成部が配置される。これらは、
図5の矢印にて示す感光体ドラム31の回転方向に対して配置される。
【0257】
帯電手段としての帯電器32は、感光体ドラム31の回転軸に平行な方向で、感光体ドラム31と対峙し近接して取り付けられる。帯電器32は、感光体ドラム31の感光層に対し、所定の電位を与えるコロナ放電電極としての放電ワイヤを備える。帯電器32は、トナーと同極性のコロナ放電によって帯電作用を生じさせ、感光体ドラム31に対し一様な電位を与える。なお、本実施形態においては、マイナス帯電である。
【0258】
画像書込手段である露光光学系33は、不図示の半導体レーザー(LD)光源から発光されるレーザー光を、回転多面鏡(符号なし)により主走査方向に回転走査する。そして、fθレンズ(符号なし)、反射ミラー(符号なし)等を経たレーザー光により、感光体ドラム31上に、画像信号に対応する電気信号による露光(画像書込)を行う。感光体ドラム31の感光層に、原稿画像に対応する静電荷像を形成する。
【0259】
現像手段としての現像装置34は、感光体ドラム31の帯電極性と同極性に帯電されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒色(K)の各色、並びに光輝性トナー像(W)の二成分現像剤を収容する。各色の二成分現像剤は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒色(K)、並びに光輝性トナー像(W)に対応して、イエロートナー(By)、マゼンタトナー(Bm)、シアントナー(Bc)及び黒トナー(Bk)、並びに本発明の光輝性トナーを含有する。
【0260】
現像装置34は、現像ローラー34aを備えている。現像ローラー34aは、円筒状であり、かつ非磁性の、ステンレス又はアルミニウム材で形成されることが好ましい。現像ローラー34aの厚さは、0.5~1mmの範囲内であることが好ましく、外径は、15~25mmの範囲内であることが好ましい。
【0261】
現像ローラー34aは、突き当てコロ(不図示)により、感光体ドラム31と所定の間隙を空けて非接触に保たれることが好ましい。所定の間隙は、100~1000μmの範囲内であることが好ましい。現像ローラー34aは、感光体ドラム31の回転方向と同方向に回転するようになっている。現像時、現像ローラー34aに対してトナーと同極性の直流電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳する現像バイアス電圧を印加する。これにより、感光体ドラム31上の露光部に対して反転現像が行われる。なお、本実施形態において、トナーと同極性はマイナス極性である。
【0262】
中間転写体36としては、樹脂ベルトを用いることが好ましい。樹脂ベルトは、体積抵抗率が1.0×107~1.0×109Ω・cmの範囲内であることが好ましく、表面抵抗率が1.0×1010~1.0×1012Ω/□の範囲内であることが好ましい。
【0263】
樹脂ベルトとしては、エンジニアリングプラスチックに導電材料を分散させた、半導電性の樹脂フィルムを用いることが好ましい。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、変性ポリイミド、熱硬化ポリイミド、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ナイロンアロイ等が挙げられる。樹脂フィルムの厚さは、0.05~0.5mmの範囲内であることが好ましい。
【0264】
樹脂ベルトとしては、この他に、シリコーンゴム、ウレタンゴム等に導電材料を分散させた、半導電性のゴムベルトが挙げられる。ゴムベルトの厚さは、0.5~2mmの範囲内であることが好ましい。
【0265】
中間転写体36は、テンションローラー36a及び二次転写部材と対峙するバックアップローラー36Bを含む複数のローラー部材により巻回される。中間転写体36は、鉛直方向に回動可能に支持されている。
【0266】
各色の第1の転写手段としての一次転写ローラー37は、例えば、シリコーン、ウレタン等の発泡ゴムを用いたローラー状の導電性部材からなる。一次転写ローラー37は、中間転写体36を挟んで各色の感光体ドラム31に対向して設けられ、中間転写体36の背面を押圧して感光体ドラム31との間に転写域を形成する。一次転写ローラー37には、定電流制御により、トナーと反対極性の直流定電流が印加される。なお、本実施形態において、トナーと反対極性は、プラス極性である。転写域に形成される転写電界によって、感光体ドラム31上のトナー像が、中間転写体36上に転写される。
【0267】
中間転写体36上に転写されたトナー像は、記録媒体Pに転写される。中間転写体36の周上には、パッチ像トナーの濃度を測定する検知センサ38が設置されている。
【0268】
中間転写体36上の残留トナーをクリーニングするために、クリーニング装置190Aが設けられている。
【0269】
二次転写部材37A上のパッチ像トナーをクリーニングするために、二次転写装置70に、クリーニングブレード71が設けられている。
【0270】
次に、
図5に示す画像形成装置を用いた画像形成方法について説明する。
【0271】
画像記録のスタートにより、不図示の感光体駆動モーターが始動する。イエロー(Y)の感光体ドラム31が、図の矢印で示す方向へ回転し、Yの帯電器32によってYの感光体ドラム31に電位が付与される。
【0272】
Yの感光体ドラム31は、電位を付与された後、Yの露光光学系33によって第1の色信号、すなわち、Yの画像データに対応する電気信号による露光(画像書込)が行われる。Yの感光体ドラム31上に、イエロー(Y)の画像に対応する静電荷像が形成される。この静電荷像は、Yの現像装置34により反転現像され、Yの感光体ドラム31上にイエロートナー(By)からなるトナー像(By)が形成される。Yの感光体ドラム31上に形成されたYのトナー像(By)は、一次転写ローラー37により、中間転写体36上に転写される。
【0273】
次いで、マゼンタ(M)の帯電器32によって、Mの感光体ドラム31に電位が付与される。Mの感光体ドラム31は、電位を付与された後、Mの露光光学系33によって第1の色信号、すなわち、Mの画像データに対応する電気信号による露光(画像書込)が行われる。Mの感光体ドラム31上に、マゼンタ(M)の画像に対応する静電荷像が形成される。この静電荷像は、Mの現像装置34により反転現像され、Mの感光体ドラム31上にマゼンタトナー(Bm)からなるトナー像(Bm)が形成される。Mの感光体ドラム31上に形成されたMのトナー像(Bm)は、一次転写ローラー37により、Yのトナー像(By)に重ね合わせて中間転写体36上に転写される。
【0274】
同様のプロセスにより、シアン(C)の感光体ドラム31上に形成されたシアントナー(Bc)からなるトナー像(Bc)と、黒色(K)の感光体ドラム31上に形成された黒トナー(Bk)からなるトナー像(Bk)が、順次中間転写体36上に重ね合わせて形成される。中間転写体36の周面上に、トナー像(By)、トナー像(Bm)、トナー像(Bc)及びトナー像(Bk)からなる重ね合わせの有色トナー像が形成される。
【0275】
次いで、光輝性トナー像(W)の感光体ドラム31が、図の矢印で示す方向へ回転し、Wの帯電器32によって、Wの感光体ドラム31に電位が付与される。Wの感光体ドラム31は、電位を付与された後、Wの露光光学系33によって第1の色信号、すなわち、Wの画像データに対応する電気信号による露光(画像書込)が行われる。Wの感光体ドラム31上に、光輝性トナー像(W)のトナー像に対応する静電荷像が形成される。この静電荷像は、Wの現像装置34により反転現像され、Wの感光体ドラム31上に、光輝性トナーからなる光輝性トナー像が形成される。
【0276】
Wの感光体ドラム31上に形成された光輝性トナー像は、一次転写ローラー37により中間転写体36上に転写される。これにより、中間転写体36の周面上に、トナー像(By)、トナー像(Bm)、トナー像(Bc)及びトナー像(Bk)からなる重ね合わせの有色トナー像が形成される。さらに、その有色トナー像上に、光輝性トナー像が形成される。
【0277】
転写後の、それぞれの感光体ドラム31の周面上に残ったトナーは、感光体クリーニング装置190が有するクリーニングブレードにより、クリーニングされる。
【0278】
一方、給紙カセット50A、50B及び50C内に収容された記録紙としての記録媒体Pは、給紙カセット50A、50B及び50Cにそれぞれ設けられる送り出しローラー51及び給紙ローラー52Aにより給紙される。記録媒体Pは、搬送路52上を搬送ローラー52B、52C及び52Dによって搬送される。記録媒体Pは、レジストローラ53を経て、トナーと反対極性の電圧が印加される二次転写部材37Aに搬送される。なお、本実施形態において、トナーと反対極性は、プラス極性である。
【0279】
二次転写部材37Aの転写域において、中間転写体36上に形成された重ね合わせの有色トナー像と、有色トナー像上の光輝性トナー像が、記録媒体P上に一括して転写される。このとき、光輝性トナー像が、記録媒体P側となるように転写される。これにより、記録媒体上に光輝性トナー像及び有色トナー像が、この順に積層された画像が得られる。
【0280】
記録媒体Pは、定着装置47の加熱ローラー47aと加圧ベルト47bとにより形成されるニップ部において加熱加圧される。そして、記録媒体Pは、排紙ローラー54に挟持されて機外の排紙トレイ55上に載置される。なお、ニップ部において加熱加圧されることにより、トナーが記録媒体Pに定着する。
【0281】
二次転写部材37Aにより、記録媒体P上に光輝性トナー像及び有色トナー像が転写される。その後、記録媒体Pを曲率分離した中間転写体36上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置190Aにより除去される。
【0282】
二次転写部材37A上のパッチ像トナーは、二次転写装置70のクリーニングブレード71によりクリーニングされる。
【0283】
10.画像形成システム
本発明の画像形成システムは、電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤を有する画像形成システムであって、前記電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤が、上記電子写真用光輝性トナー又は二成分現像剤であることを特徴とする。
【0284】
本発明の「画像形成システム」とは、画像形成の各工程で必要な手段要素として用いられる、所定の機能を有する機器又は装置、トナー又は二成分現像剤、記録媒体等の集合体のことをいう。そして、これら全体として、画像形成の機能を果たす。各手段要素は、それぞれ離れた異なる場所に個別に配置してもよい。また、一つの装置として、一定の空間に集めて配置し、システム装置としてもよい。
【0285】
本発明の画像形成システムは、画像を形成する機器又は装置として、上記画像形成装置を用いてもよい。ただし、上記トナー又は二成分現像剤を用いて画像を形成する形態又は態様のシステムであれば、上記画像形成装置を構成する各手段は限定されない。すなわち、本発明の画像形成システムにおいて用いる装置は、必ずしも、トナー専用の電子写真画像形成装置でなくてもよい。
【0286】
また、本発明の画像形成システムは、記録・複写情報を電子的データとして記録・保存する手段、及び当該電子的データを無線通信する手段を備えてもよい。例えば、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)等の無線通信により、情報処理手段とデータ送受信を行うための無線インターフェースを有する形態であることも好ましい。
【0287】
前述のとおり、本発明のトナーは、結着樹脂が光輝性顔料から剥がれにくく、現像機内の撹拌等の衝撃がトナーに加わっても、トナーの帯電特性が安定する。そのため、記録媒体が枚葉状の場合だけでなく、連続状の場合においても、トナーの飛散による画像不良を十分に抑制できると考えられる。
【実施例0288】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
また、下記実施例において、特記しない限り操作は室温(25℃)で行われた。
【0289】
1.トナーの作製
(1)各種ポリエステル分散液の調製
(1.1)非晶性ポリエステル粒子分散液〔a1〕の調製
撹拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、下記モノマー〔1〕のうち、フマル酸ジメチル及びトリメリット酸無水物以外のモノマーを投入した。そして、投入したモノマー全質量に対して、0.25質量%のジオクチル酸スズを投入した。
【0290】
<モノマー〔1〕>
ビスフェノールAエチレンオキサイド2.2モル付加物
40モル部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2.2モル付加物
60モル部
テレフタル酸ジメチル 60モル部
フマル酸ジメチル 15モル部
ドデセニルコハク酸無水物 20モル部
トリメリット酸無水物 5モル部
【0291】
窒素ガス気流下、235℃で6時間反応させた後、200℃に降温して、上記量のフマル酸ジメチル及びトリメリット酸無水物を加え、1時間反応させた。温度を220℃まで5時間かけて昇温し、10kPaの圧力下で所望の分子量になるまで重合させ、淡黄色透明な非晶性ポリエステル〔A1〕を得た。
非晶性ポリエステル〔A1〕は、重量平均分子量が35000、数平均分子量が8000、ガラス転移温度(Tg)が56℃であった。
【0292】
次いで、下記成分をセパラブルフラスコに入れ、十分に混合、溶解した。そして、40℃で加熱攪拌しながら、イオン交換水を、送液ポンプを用いて送液速度8g/分で滴下し、送液量が580質量部になったところで滴下を止めた。
非晶性ポリエステル〔A1〕 200.0質量部
メチルエチルケトン 100.0質量部
イソプロピルアルコール 35.0質量部
10質量%アンモニア水溶液 7.0質量部
【0293】
その後、減圧下で溶媒除去を行い、非晶性ポリエステル粒子分散液を得た。上記非晶性ポリエステル粒子分散液に、イオン交換水を加えて固形分量が25質量%となるように調整し、非晶性ポリエステル粒子分散液〔a1〕を調製した。
非晶性ポリエステル粒子分散液〔a1〕中の非晶性ポリエステル〔A1〕の体積基準の平均粒径は、156nmであった。
【0294】
(1.2)結晶性ポリエステル粒子分散液〔c1〕の調製
撹拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に下記モノマー〔2〕を入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した。
【0295】
<モノマー〔2〕>
ドデカン二酸 50モル部
1,6-ヘキサンジオール 50モル部
【0296】
次いで、上記モノマー〔2〕の全質量に対して、0.25質量%のチタンテトラブトキサイド(Ti(O-n-Bu)4)を投入した。
【0297】
窒素ガス気流下、170℃で3時間撹拌し反応させた後、温度を更に210℃まで1時間かけて昇温した。そして、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間撹拌し、反応させて、結晶性ポリエステル〔C1〕を得た。
結晶性ポリエステル〔C1〕は、重量平均分子量が25000、数平均分子量が8500、融点が71.8℃であった。
【0298】
次いで、下記成分をセパラブルフラスコに入れ、60℃で、十分に混合、溶解した。
結晶性ポリエステル〔C1〕 200.0質量部
メチルエチルケトン 120.0質量部
イソプロピルアルコール 30.0質量部
【0299】
その後、下記成分を滴下した。
10質量%アンモニア水溶液 8.0質量部
【0300】
加熱温度を67℃に下げ、攪拌しながら、イオン交換水送液ポンプを用いて送液速度8g/分で滴下し、送液量が580質量部になったところで、イオン交換水の滴下を止めた。
【0301】
その後、減圧下で溶媒除去を行い、結晶性ポリエステル粒子分散液を得た。上記結晶性ポリエステル粒子分散液に、イオン交換水を加えて固形分量が25質量%となるように調整し、結晶性ポリエステル粒子分散液〔c1〕を調製した。
結晶性ポリエステル粒子分散液〔c1〕の中の結晶性ポリエステル〔C1〕の体積基準の平均粒径は、198nmであった。
【0302】
(2)離型剤分散液〔W1〕の調製
下記成分を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー「ゴーリンホモジナイザー」(ゴーリン社製)で、内液温度120℃にて離型剤を溶解した。その後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却して、離型剤分散液を得た。
パラフィンワックス 270.0質量部
アニオン性界面活性剤 13.5質量部
(有効成分60質量%、パラフィンワックスに対して3質量%)
イオン交換水 21.6質量部
【0303】
上記離型剤分散液に、イオン交換水を加えて固形分量が20質量%になるように調整し、離型剤分散液〔W1〕を調製した。
離型剤分散液〔W1〕中の粒子の体積平均粒径は215nmであった。
なお、上記パラフィンワックスとして、「HNP0190(融解温度:85℃)」(日本精蝋株式会社製)、上記アニオン性界面活性剤として、「ネオゲン(登録商標)RK」(第一工業製薬株式会社製)を用いた。
【0304】
(3)顔料分散液の調製
(3.1)顔料分散液〔1〕の調製
(3.1.1)被覆層を有する光輝性顔料《1》の作製
(3.1.1.1)光輝性顔料含有分散液(スラリー)〔1〕の調製
まず、下記成分を混合し、よくかき混ぜ、スラリー〔1〕を調製した。25℃におけるスラリー〔1〕の粘度は、約10mPa・sであり、液密度は約830kg/m3であった。
なお、光輝性顔料としては、市販のフレーク状アルミニウム顔料(東洋アルミニウム(株)製、製品名「7670NS」を使用した。
イソプロピルアルコール 1000.0質量部
光輝性顔料(固形分) 100.0質量部
【0305】
このスラリー〔1〕を約4.5L容量の丸底フラスコへ投入した。そして、攪拌レイノルズ数が19000となるように、3枚プロペラ攪拌翼「マリン翼」(東京理化器械社製)を用いて攪拌しながら、50℃になるまで加温した。
【0306】
なお、前記攪拌レイノルズ数(攪拌Re数)は、以下の式により算出した。
(式) 攪拌Re数=(ρ×n×d2)/μ
ρ:25℃における光輝性顔料含有分散液(スラリー)の密度(kg/m3)
n:攪拌回転数(毎秒回転数[rps])
d:攪拌翼の直径[m]
μ:25℃における光輝性顔料含有分散液(スラリー)の粘度[kg/m・s]
【0307】
以降の工程においても、攪拌レイノルズ数を保ちながら撹拌下で実施した。
その後、モノエタノールアミンを加え、スラリー〔1〕の25℃におけるpH値が8.0~10の範囲内となるように調整した。
【0308】
(3.1.1.2)被覆層の形成
上記で得られたスラリー〔1〕に、下記成分を徐々に加え、更に50℃で5時間撹拌した。
テトラエトキシシラン(以下、「TEOS」と略す。)
5.0質量部
【0309】
上記の反応終了後、スラリー〔1〕をフィルターで固液分離し、固形分が50質量%となるように、イソプロピルアルコールで濃度調整を行った。そして、厚さ0.1μmの被覆層を形成し、光輝性顔料を被覆層によって覆うことにより、被覆層を有する光輝性顔料《1》を作製した。
【0310】
(3.1.2)顔料分散液〔1〕の調製
下記成分を混合し、ホモジナイザー「ウルトラタラックス」(IKA社製)により60分間分散させた。
被覆層を有する光輝性顔料《1》 40.0質量部
アニオン性界面活性剤 15.0質量部
イオン交換水 195.0質量部
【0311】
上記の水系分散液に、イオン交換水を加えて、固形分量が15質量%となるように調整し、顔料分散液〔1〕を調製した。
【0312】
(3.2)顔料分散液〔2〕~〔8〕の調製
(3.2.1)被覆層を有する光輝性顔料《2》~《8》の作製
被覆層を有する光輝性顔料《1》の作製において、撹拌レイノルズ数を適宜変更した以外は同様の方法で、被覆層を有する光輝性顔料《2》~《6》及び《8》を作製した。
【0313】
また、被覆層を有する光輝性顔料《1》の作製において、TEOSをアルミニウム-sec-ブトキシドに変更し、撹拌レイノルズ数を適宜変更した以外は、同様の方法で、被覆層を有する光輝性顔料《7》を作製した。
【0314】
(3.2.2)顔料分散液〔2〕~〔8〕の調製
顔料分散液〔1〕の調製と同様の方法で、顔料分散液〔2〕~〔8〕を調製した。
【0315】
(4)トナー母体粒子の作製
(4.1)トナー母体粒子〔1〕の作製
下記成分を、2Lの円筒ステンレス容器に入れ、ホモジナイザー「ウルトラタラックスT50」(IKA社製)により、回転数4000rpmでせん断力を加えながら10分間分散させて混合した。
非晶性ポリエステル粒子分散液〔a1〕 1280.0質量部
結晶性ポリエステル粒子分散液〔c1〕 160.0質量部
離型剤分散液〔W1〕 200.0質量部
顔料分散液〔1〕 335.0質量部
アニオン性界面活性剤 40.0質量部
イオン交換水 1500.0質量部
【0316】
その後、凝集剤として、下記成分を30分かけて徐々に添加した。滴下終了後、ホモジナイザーの回転数を5000rpmとして、10分間撹拌し、原料と凝集剤を十分に混合した。
2質量%硫酸アルミニウム水溶液 100.0質量部
【0317】
その後、反応容器に撹拌器及びマントルヒーターを設置し、スラリーが充分に撹拌されるように撹拌器の回転数を調整しながら、54℃にて凝集粒子の成長を促進させた。また、この際、0.3mol/Lの硝酸及び1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液により、原料分散液のpHを2.2~3.5の範囲内に調整した。
【0318】
次に、56℃に昇温させ、光学顕微鏡及びマルチサイザーIIで粒子の大きさ及び形態を確認しながら、あらかじめ混合しておいた下記成分の混合液を20分間かけて投入した。
非晶性ポリエステル粒子分散液〔a1〕 160.0質量部
アニオン性界面活性剤 15.0質量部
【0319】
なお、上記2回投入したアニオン性界面活性剤として、いずれも、「ダウファックス2A1」(ダウ・ケミカル社製)を用いた。「ダウファックス2A1」は、希釈して20%水溶液として使用した。
【0320】
次いで、50℃に30分間保持した後、反応容器に、下記成分を添加した後、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、原料分散液のpHを9.0に制御した。
20質量%EDTA(エチレンジアミン四酢酸)水溶液
8.0質量部
【0321】
その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で85℃まで昇温し、85℃で保持した。粒度計「FPIA-3000」(マルバーン社製)を使用して測定した形状係数が、0.970になった時点で降温速度10℃/分で冷却し、トナー母体粒子分散液〔1〕を得た。
【0322】
その後、トナー母体粒子分散液〔1〕を濾過して得られた固形分を、イオン交換水で十分洗浄した。次いで、40℃にて乾燥して、トナー母体粒子〔1〕を作製した。
得られたトナー母体粒子の体積平均粒径は12.2μmであった。
【0323】
(4.2)トナー母体粒子〔2〕~〔8〕の作製
トナー母体粒子〔1〕の作製において、顔料分散液を〔2〕~〔8〕に変更した以外は同様の方法で、トナー母体粒子〔2〕~〔8〕を作製した。
【0324】
(5)トナーの作製(外添剤の添加)
(5.1)トナー〔1〕の作製
下記成分を、ヘンシェルミキサー型式「FM20C/I」(日本コークス工業(株)製)に添加した。そして、羽根先端周速が50m/sとなるよう回転数を設定し、20分間撹拌してトナー〔1〕を作製した。
トナー母体粒子 100.0質量部
シリカ微粒子 0.8質量部
【0325】
(5.2)トナー〔2〕~〔8〕の作製
トナー〔1〕の作製と同様の方法で、トナー〔2〕~〔8〕を作製した。
【0326】
2.評価
(1)十点平均粗さに基づく算術平均値Rの測定
真空電子染色装置「VSC1R1」(フィルジェン(株)製)を用いて、各トナーを、3%の四酸化ルテニウム(RuO4)蒸気で、室温で、10分間染色した。染色後の各トナーを、光硬化性樹脂「D-800」(日本電子社製)中に分散させて硬化処理を行った。そして、各トナーを光硬化性樹脂中に包埋した。
【0327】
各トナーを包埋した光硬化性樹脂を、剃刀を用いて平板状に加工した。イオンミリング用試料ホルダーに、熱可塑性ワックスを用いて、平板状の各光硬化性樹脂を固定した。イオンミリング加工装置「SM-09010」(日本電子社製)により、平板状の各光硬化性樹脂にイオンミリング加工を行い、断面観察用の各サンプルを作製した。
なお、イオンミリング加工は、加速電圧/5.0kV、ビーム電流/60μA、設定時間/12時間、イオン種/Ar+の条件で行った。
【0328】
断面観察用の各サンプルの断面の様子を、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて観察した。観察するトナーは、トナー母体粒子の質量平均粒径から±3.0μm以内のものを1000個選んだ。そして、10000倍の倍率で撮影を行い、断面画像を得た。
【0329】
各被覆層を有する光輝性顔料の表面は、断面画像のコントラストから識別した。数値計算ソフト(商品名:MATLAB(登録商標)、MathWork社製)を用いて、被覆層を有する光輝性顔料の被覆層又は光輝性顔料における結着樹脂との界面をたどって、輪郭を抽出し、断面曲線を得た。
各トナーについて、それぞれ、得られた断面曲線から、「MATLAB(登録商標)」を用いて、粗さ曲線を得た。そして、さらに、上記方法で、十点平均粗さに基づく算術平均値Rを算出した。
【0330】
(2)体積抵抗率の常用対数の変化率Pの測定
(キャリアの作製)
MnO換算で19.0モル%、MgO換算で2.8モル%、SrO換算で1.5モル%、Fe2O3換算で75.0モル%になるように各原材料を適量配合した。この原材料に水を加え、湿式ボールミルで10時間粉砕、混合し、乾燥させ、950℃で4時間保持した。その後、湿式ボールミルで24時間粉砕を行ったスラリーを、造粒し、乾燥した。次いで、得られた粒子を、撹拌装置を内蔵した焼成炉内に、容積の5割量で添加した。粒子を、周速10m/s、1300℃にて4時間保持した。その後、粒子を解砕し、粒子径35mmに粒度を調整し、芯材粒子を得た。
【0331】
得られた芯材粒子を100質量部と、メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸メチル(共重合比5/5)の樹脂微粒子を2.5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入した。これらを、125℃で45分間、風速10m/sで撹拌混合した。機械的衝撃力の作用で、芯材粒子の表面に樹脂被覆層を形成した。その後、風速2m/sに下げて冷却を行い、樹脂で被覆されたキャリアを得た。
【0332】
(体積抵抗率の測定)
100mLのヘッドスペース用バイアル(AGILENT社製)に、上記で得られたキャリア90g及びトナー10gを仕込み、振動数40Hzで3時間撹拌した。30μmの目開きの篩を用い、得られた現像剤を、トナーとキャリアに分離した。分離したトナーを、「振動数40Hzで3時間撹拌した後のトナー」とした。
【0333】
振動数40Hz、3時間で撹拌する前と後の、それぞれのトナーについて、サンプルを作製した。各トナー3gに、980.7N/cm2(100kgf/cm2)の荷重を10秒かけて、厚さ約2mm、40φの円盤状の各サンプルを成形した。そして、各サンプルを、20℃・50%RHにて一晩調湿した。
【0334】
体積抵抗率[Ω・cm]は、高抵抗測定装置「5451」(株式会社エーディーシー製)にて測定した。測定条件は、主電極径11mm、印加電圧1000V、ディスチャージ時間1分、チャージ時間1秒、測定間隔10秒ごととした。サンプルの厚さは、デジタルマノメーターで測定する値を入力した。
【0335】
振動数40Hz、3時間で撹拌する前のトナーの体積抵抗率を、ρVA[Ω・cm]、振動数40Hz、3時間で撹拌した後のトナーの体積抵抗率をρVB[Ω・cm]とした。そして、体積抵抗率の常用対数の変化率P[%]を、上記式より算出した。
【0336】
(3)明度L*の測定
市販のカラー複写機「bizhub PRESS C71cf」(コニカミノルタ社製)を用いて、付着量5g/m2、定着温度180℃で、記録媒体上に出力した。なお、定着温度、トナー付着量、システム速度を自由に設定できるように改造し、定着温度185℃、システム速度270mm/secにて、画像形成を行った。この画像形成装置では、記録媒体がロール状に巻かれた状態から画像形成装置内を搬送され、トナー画像が形成された後に再びロール状に巻かれる。このように、ロール状に巻かれて設置され、印刷後には再びロール状に巻かれて格納される記録媒体に画像を形成した。
記録媒体には、厚さ40μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(透明、PET)を用いた。
【0337】
そして、変角光度計(ゴニオフォトメーター)「GP-200」を用いて、入射角60度、反射角60度で、「L*a*b*表色系」における明度L*を測定した。明度L*が300以上のものを、合格とした。明度L*が300以上であれば、十分な量のトナーが、記録媒体である紙に付着していると判断できる。
【0338】
上記評価結果を、表Iに示す。
【0339】
【0340】
実施例と比較例から、本発明の電子写真用光輝性トナーは、明度L*に優れ、飛散による画像不良を抑制できることがわかる。
トナー〔1〕~〔4〕の比較から、十点平均粗さに基づく算術平均値Rが、小さいほど、明度L*が向上することがわかる。
【0341】
トナー〔7〕及び〔8〕から、十点平均粗さに基づく算術平均値Rと被覆層の材料を適宜選択することにより、体積抵抗率の常用対数の変化率Pを、5%以下にすることができる。そして、飛散による画質の悪化を防げることがわかる。
【0342】
トナー〔1〕~〔4〕及び〔8〕から、被覆層が、ケイ素化合物を含有することにより、明度L*に優れ、飛散による画像不良を抑制できることがわかる。