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特開2024-131410眼科装置、眼科装置の制御方法、プログラム、及び記録媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131410
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】眼科装置、眼科装置の制御方法、プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A61B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041649
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】山部 将
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏太
(72)【発明者】
【氏名】松井 拓也
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA10
4C316AB02
4C316AB11
4C316AB12
4C316AB16
4C316AB19
4C316FA08
4C316FA18
4C316FB05
4C316FB21
4C316FB24
4C316FB26
4C316FY02
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】単一のオートフォーカス手法で撮影野の広い範囲にピントの合った画像を生成する。
【解決手段】実施形態の眼科装置1は、眼底Efの第1の位置に向けてスリット光を投射しつつ撮影を行って得られた画像に基づき条件を決定してフォーカス調整を実行した後にスリットスキャンを実行して第1のスリットスキャン画像を生成する。また、眼科装置1は、眼底Efの第2の位置に向けてスリット光を投射しつつ撮影を行って得られた画像に基づき条件を決定してフォーカス調整を実行した後にスリットスキャンを実行して第2のスリットスキャン画像を生成する。更に、眼科装置1は、第1のスリットスキャン画像と第2のスリットスキャン画像とを合成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、
被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を光スキャナーによって移動しつつ前記眼底の撮影を行うスリットスキャンを前記プロセッサの制御の下に実行する撮影ユニットと、
前記撮影ユニットのフォーカス調整を前記プロセッサの制御の下に実行するフォーカス調整ユニットと
を含み、
前記プロセッサは、
前記眼底の第1の位置に向けて前記スリット光を投射しつつ第1の撮影を行うように前記撮影ユニットを制御し、且つ、前記第1の位置と異なる第2の位置に向けて前記スリット光を投射しつつ第2の撮影を行うように前記撮影ユニットを制御する撮影制御と、
前記第1の撮影で取得された第1の画像に基づいて第1のフォーカス調整条件を決定し、且つ、前記第2の撮影で取得された第2の画像に基づいて第2のフォーカス調整条件を決定する条件決定処理と、
前記第1のフォーカス調整条件に基づく第1のフォーカス調整を行うように前記フォーカス調整ユニットを制御し、且つ、前記第2のフォーカス調整条件に基づく第2のフォーカス調整を行うように前記フォーカス調整ユニットを制御するフォーカス調整制御と、
前記第1のフォーカス調整で達成された第1のフォーカス状態の下に第1のスリットスキャンを行うように前記撮影ユニットを制御し、且つ、前記第2のフォーカス調整で達成された第2のフォーカス状態の下に第2のスリットスキャンを行うように前記撮影ユニットを制御するスリットスキャン制御と、
前記第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像と、前記第2のスリットスキャンで取得された第2のスリットスキャン画像とを合成する画像合成処理と
を実行する、
眼科装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記第1のスリットスキャン画像に基づいて、前記第1の位置と異なる第3の位置を決定する位置決定処理を更に実行し、
前記第2の位置は、前記第3の位置に基づき決定される、
請求項1の眼科装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記位置決定処理において、
前記第1のスリットスキャン画像を複数の部分画像に分割し、
前記複数の部分画像のそれぞれのコントラスト値を算出し、
前記複数の部分画像について算出された複数のコントラスト値に基づいて前記第3の位置を決定する、
請求項2の眼科装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記複数のコントラスト値のうちの最小値に対応する部分画像を特定し、前記最小値に対応する前記部分画像の位置を前記第3の位置に設定する、
請求項3の眼科装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記複数の部分画像のそれぞれについて、当該部分画像における最大輝度と最小輝度との差を前記最大輝度と前記最小輝度との和で除算した値を求めて当該部分画像のコントラスト値に設定する、
請求項3の眼科装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記画像合成処理において、
前記第1のスリットスキャン画像を第1の部分画像群に分割し、
前記第2のスリットスキャン画像を第2の部分画像群に分割し、
前記第1の部分画像群と前記第2の部分画像群との間の対応付けを行い、
前記第1の部分画像群のうちの第1の部分画像のコントラスト値と、前記第1の部分画像に対応する前記第2の部分画像群のうちの第2の部分画像のコントラスト値とに基づいて、前記第1の部分画像に対応する第1の重みと、前記第2の部分画像に対応する第2の重みとを算出し、
前記第1の重み及び前記第2の重みに基づいて前記第1の部分画像と前記第2の部分画像とを合成する、
請求項3の眼科装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記位置決定処理において、
前記第1のスリットスキャン画像の空間周波数分布を求め、
前記空間周波数分布において空間周波数の低い位置を前記第3の位置に設定する、
請求項2の眼科装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記位置決定処理において、
前記第1のスリットスキャン画像から血管分布を求め、
前記血管分布において血管が不連続な位置を前記第3の位置に設定する、
請求項2の眼科装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記位置決定処理において、
前記第1のスリットスキャン画像を前記眼底の過去画像と比較して相違箇所を特定し、
前記相違箇所を前記第3の位置に設定する、
請求項2の眼科装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記位置決定処理において、
前記第1のスリットスキャン画像を予め作成された正常眼底モデルと比較して相違箇所を特定し、
前記相違箇所を前記第3の位置に設定する、
請求項2の眼科装置。
【請求項11】
ユーザーインターフェイスを更に含み、
前記プロセッサは、
前記眼底の画像と前記第3の位置を示す情報とを表示装置に表示させ、
前記ユーザーインターフェイスを用いて指定された前記眼底の前記画像中の位置を前記第2の位置に設定する、
請求項2~10のいずれかの眼科装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記第3の位置を前記第2の位置に設定する、
請求項2~10のいずれかの眼科装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記撮影制御において、予め設定された前記第1の位置に向けて前記スリット光を投射しつつ前記第1の撮影を行うように前記撮影ユニットを制御し、且つ、予め設定された前記第2の位置に向けて前記スリット光を投射しつつ前記第2の撮影を行うように前記撮影ユニットを制御する、
請求項1の眼科装置。
【請求項14】
プロセッサと、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を光スキャナーによって移動しつつ前記眼底の撮影を行うスリットスキャンを前記プロセッサの制御の下に実行する撮影ユニットと、前記撮影ユニットのフォーカス調整を前記プロセッサの制御の下に実行するフォーカス調整ユニットとを含む眼科装置を制御する方法であって、
前記プロセッサに、
前記眼底の第1の位置に向けて前記スリット光を投射しつつ第1の撮影を行うように前記撮影ユニットを制御する第1の撮影制御と、
前記第1の撮影で取得された第1の画像に基づいて第1のフォーカス調整条件を決定する第1の条件決定処理と、
前記第1のフォーカス調整条件に基づく第1のフォーカス調整を行うように前記フォーカス調整ユニットを制御する第1のフォーカス調整制御と、
前記第1のフォーカス調整で達成された第1のフォーカス状態の下に第1のスリットスキャンを行うように前記撮影ユニットを制御する第1のスリットスキャン制御と、
前記第1の位置と異なる第2の位置に向けて前記スリット光を投射しつつ第2の撮影を行うように前記撮影ユニットを制御する第2の撮影制御と、
前記第2の撮影で取得された第2の画像に基づいて第2のフォーカス調整条件を決定する第2の条件決定処理と、
前記第2のフォーカス調整条件に基づく第2のフォーカス調整を行うように前記フォーカス調整ユニットを制御する第2のフォーカス調整制御と、
前記第2のフォーカス調整で達成された第2のフォーカス状態の下に第2のスリットスキャンを行うように前記撮影ユニットを制御する第2のスリットスキャン制御と、
前記第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像と、前記第2のスリットスキャンで取得された第2のスリットスキャン画像とを合成する画像合成処理と
を実行させる、
方法。
【請求項15】
前記プロセッサに、前記第1のスリットスキャン画像に基づいて前記第1の位置と異なる第3の位置を決定する位置決定処理を更に実行させ、
前記第2の位置は、前記第3の位置に基づき決定される、
請求項14の方法。
【請求項16】
プロセッサと、メモリと、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を光スキャナーによって移動しつつ前記眼底の撮影を行うスリットスキャンを前記プロセッサの制御の下に実行する撮影ユニットと、前記撮影ユニットのフォーカス調整を前記プロセッサの制御の下に実行するフォーカス調整ユニットとを含む眼科装置に実行させるためのプログラムであって、
前記プロセッサに、
前記眼底の第1の位置に向けて前記スリット光を投射しつつ第1の撮影を行うように前記撮影ユニットを制御する第1の撮影制御と、
前記第1の撮影で取得された第1の画像に基づいて第1のフォーカス調整条件を決定する第1の条件決定処理と、
前記第1のフォーカス調整条件に基づく第1のフォーカス調整を行うように前記フォーカス調整ユニットを制御する第1のフォーカス調整制御と、
前記第1のフォーカス調整で達成された第1のフォーカス状態の下に第1のスリットスキャンを行うように前記撮影ユニットを制御する第1のスリットスキャン制御と、
前記第1の位置と異なる第2の位置に向けて前記スリット光を投射しつつ第2の撮影を行うように前記撮影ユニットを制御する第2の撮影制御と、
前記第2の撮影で取得された第2の画像に基づいて第2のフォーカス調整条件を決定する第2の条件決定処理と、
前記第2のフォーカス調整条件に基づく第2のフォーカス調整を行うように前記フォーカス調整ユニットを制御する第2のフォーカス調整制御と、
前記第2のフォーカス調整で達成された第2のフォーカス状態の下に第2のスリットスキャンを行うように前記撮影ユニットを制御する第2のスリットスキャン制御と、
前記第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像と、前記第2のスリットスキャンで取得された第2のスリットスキャン画像とを合成する画像合成処理と
を実行させる、
プログラム。
【請求項17】
請求項16のプログラムが記録された、コンピュータ可読な非一時的記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科装置、眼科装置の制御方法、プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
眼底撮影のための眼科装置としては、眼底カメラや走査型レーザー検眼鏡(SLO)が知られている。一方、特許文献1には、スリット光を用いて眼底を照明し、その戻り光をローリングシャッター型の撮像装置(CMOS)で検出することによって眼底画像を生成するように構成された眼科装置が開示されている。この眼科装置は、眼底に対するスリット光の投射位置の移動と、撮像装置による戻り光の検出(撮影)とを同期的に繰り返し実行して収集された複数の画像を合成することによって、簡素な構成で眼底画像を取得することが可能である。このような撮影手法(モダリティ)はスリットスキャンなどと呼ばれる。
【0003】
眼底撮影のための眼科装置はオートフォーカス機能を有している。眼科装置に広く使用されているオートフォーカス手法は、スプリット指標を用いた手法である(特許文献2を参照)。また、一般的なオートフォーカス手法としてコントラスト検出式と位相差検出式がある。なお、特許文献2には、スプリット指標を用いたフォーカス調整機能とコントラスト検出式のフォーカス調整機能とを組み合わせた発明が記載されている。
【0004】
眼底撮影で得られる画像は、その全体にピントが合っていることが望ましく、少なくとも診断のために重要な部分にピントが合っていることが望ましいが、例えば網膜剥離眼においては、眼底表面と網膜剥離部の双方にピントを合わせることができないことがある。この場合、従来の眼科装置によれば、例えば、スプリット指標を用いたオートフォーカスによって撮影野の中心に位置する部位にピントを合わせて撮影が行われ、更に、別のオートフォーカス手法(コントラスト検出式)で網膜剥離部にピントを合わせて撮影が行われる。しかし、スプリット指標を用いたフォーカス調整機能に加えて別のフォーカス調整機能を準備する必要があるため、眼科装置の構成(ハードウェア、ソフトウェア)の複雑化を招いてしまう。なお、スプリット指標を用いたオートフォーカスでは、スプリット指標の投影位置にピントを合わせることしかできないため、任意の位置(例えば、網膜剥離部)にピントを合わせることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7831106号明細書
【特許文献2】特開2013-252319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の1つの目的は、単一のオートフォーカス手法で撮影野の広い範囲にピントの合った画像を生成するための新規な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る実施形態の1つの態様は、プロセッサと、撮影ユニットと、フォーカス調整ユニットとを含む眼科装置である。撮影ユニットは、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を光スキャナーによって移動しつつ眼底の撮影を行うスリットスキャンをプロセッサの制御の下に実行するように構成されている。フォーカス調整ユニットは、撮影ユニットのフォーカス調整をプロセッサの制御の下に実行するように構成されている。プロセッサは、撮影制御と、条件決定処理と、フォーカス調整制御と、スリットスキャン制御と、画像合成処理とを実行するように構成されている。撮影制御において、プロセッサは、被検眼の眼底の第1の位置に向けてスリット光を投射しつつ第1の撮影を行うように撮影ユニットを制御し、且つ、第1の位置と異なる第2の位置に向けてスリット光を投射しつつ第2の撮影を行うように撮影ユニットを制御する。条件決定処理において、プロセッサは、第1の撮影で取得された第1の画像に基づいて第1のフォーカス調整条件を決定し、且つ、第2の撮影で取得された第2の画像に基づいて第2のフォーカス調整条件を決定する。フォーカス調整制御において、プロセッサは、第1のフォーカス調整条件に基づく第1のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニットを制御し、且つ、第2のフォーカス調整条件に基づく第2のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニットを制御する。スリットスキャン制御において、プロセッサは、第1のフォーカス調整で達成された第1のフォーカス状態の下に第1のスリットスキャンを行うように撮影ユニットを制御し、且つ、第2のフォーカス調整で達成された第2のフォーカス状態の下に第2のスリットスキャンを行うように撮影ユニットを制御する。画像合成処理において、プロセッサは、第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像と、第2のスリットスキャンで取得された第2のスリットスキャン画像とを合成する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る実施形態のいくつかの態様によれば、単一のオートフォーカス手法で撮影野の広い範囲にピントの合った画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
図2】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
図3】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
図4】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
図5】実施形態に係る眼科装置の動作の非限定的な例について説明するための概略図である。
図6A】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
図6B】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
図7】実施形態に係る眼科装置が形成する光路の非限定的な例について説明するための概略図である。
図8】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
図9】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
図10】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
図11】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
図12A】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
図12B】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
図12C】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
図12D】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
図13A】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
図13B】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
図14】実施形態に係る眼科装置が実行する画像合成処理の非限定的な例について説明するための概略図である。
図15】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するためのフローチャートである。
図16】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するためのフローチャートである。
図17】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するためのフローチャートである。
図18】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するためのフローチャートである。
図19】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するための概略図である。
図20】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するためのフローチャートである。
図21】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するための概略図である。
図22】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するための概略図である。
図23】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するための概略図である。
図24】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するためのフローチャートである。
図25】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するための概略図である。
図26】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するためのフローチャートである。
図27】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係る実施形態のいくつかの非限定的な態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
本開示に係るいずれかの態様に任意の公知技術を組み合わせることができる。例えば、本明細書で引用する文献に開示されている任意の事項を、本開示に係るいずれかの態様に組み合わせることができる。また、本開示に関連する技術分野における任意の公知技術を、本開示に係るいずれかの態様に組み合わせることができる。例えば、本開示に関連する技術又は当該技術に応用可能な技術について本願の出願人により開示された任意の技術事項(特許出願、論文などにおいて開示された事項)を、本開示に係るいずれかの態様に組み合わせることができる。
【0012】
本開示に記載された様々な態様のうちのいずれか2つ以上の態様を、少なくとも部分的に組み合わせることが可能である。
【0013】
本開示において説明される要素の機能の少なくとも一部は、回路構成(circuitry)又は処理回路構成(processing circuitry)を用いて実装される。回路構成又は処理回路構成は、開示された機能の少なくとも一部を実行するように構成及び/又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路構成、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。プロセッサは、トランジスタ及び/又は他の回路構成を含む、処理回路構成又は回路構成とみなされる。本開示において、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、開示された機能の少なくとも一部を実行するハードウェア、又は、開示された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されたハードウェアであってよく、或いは、記載された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラム及び/又は構成された既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが或るタイプの回路構成とみなされ得るプロセッサである場合、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、このソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために使用される。
【0014】
実施形態に係る眼科装置の第1の態様は、プロセッサと、撮影ユニットと、フォーカス調整ユニットとを含んでいる。
【0015】
撮影ユニットは、プロセッサの下にスリットスキャンを実行するように構成されている。スリットスキャンは、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を光スキャナーによって移動しつつ被検眼の眼底の撮影を行う撮影方式である。
【0016】
フォーカス調整ユニットは、撮影ユニットのフォーカス調整をプロセッサの制御の下に実行するように構成されている。
【0017】
プロセッサは、撮影制御と、条件決定処理と、フォーカス調整制御と、スリットスキャン制御と、画像合成処理とを実行するように構成されている。
【0018】
撮影制御において、プロセッサは、被検眼の眼底の所定位置に向けてスリット光を投射しつつ撮影を行うように撮影ユニットを制御する。本態様では、プロセッサは、少なくとも、被検眼の眼底の第1の位置に向けてスリット光を投射しつつ第1の撮影を行うように撮影ユニットを制御し、且つ、第1の位置と異なる第2の位置に向けてスリット光を投射しつつ第2の撮影を行うように撮影ユニットを制御する。ここで、被検眼の眼底の所定位置を目標としたスリット光の投射及び眼底の撮影を実行する回数(撮影回数)は、2回以上の任意の回数であってよい。
【0019】
条件決定処理において、プロセッサは、撮影制御により実行された撮影で取得された画像に基づいてフォーカス調整条件を決定する。本態様では、プロセッサは、少なくとも、第1の撮影で取得された第1の画像に基づいて第1のフォーカス調整条件を決定し、且つ、第2の撮影で取得された第2の画像に基づいて第2のフォーカス調整条件を決定する。ここで、フォーカス調整条件を決定する処理の実行回数は、典型的には撮影回数に等しいが、それ未満であってもよい。
【0020】
フォーカス調整制御において、プロセッサは、条件決定処理で決定されたフォーカス調整条件に基づくフォーカス調整を実行するようにフォーカス調整ユニットを制御する。本態様では、プロセッサは、少なくとも、第1のフォーカス調整条件に基づく第1のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニットを制御し、且つ、第2のフォーカス調整条件に基づく第2のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニットを制御する。ここで、フォーカス調整の実行回数は、典型的にはフォーカス調整条件を決定する処理の実行回数に等しいが、それ未満であってもよい。
【0021】
スリットスキャン制御において、プロセッサは、フォーカス調整制御により実行されたフォーカス調整で達成されたフォーカス状態の下にスリットスキャンを実行するように撮影ユニットを制御する。本態様では、プロセッサは、少なくとも、第1のフォーカス調整で達成された第1のフォーカス状態の下に第1のスリットスキャンを行うように撮影ユニットを制御し、且つ、第2のフォーカス調整で達成された第2のフォーカス状態の下に第2のスリットスキャンを行うように撮影ユニットを制御する。ここで、スリットスキャンの実行回数は、典型的にはフォーカス調整の実行回数に等しいが、それ未満であってもよい。
【0022】
画像合成処理において、プロセッサは、被検眼の眼底に対して複数回のスリットスキャンを適用することによって取得された複数の画像を合成する。スリットスキャンで取得された画像をスリットスキャン画像と呼ぶ。本態様では、プロセッサは、少なくとも、第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像と、第2のスリットスキャンで取得された第2のスリットスキャン画像とを合成する。ここで、合成されるスリットスキャン画像の個数は、典型的にはスリットスキャンの実行回数に等しいが、それ未満であってもよい。
【0023】
第1の態様によれば、ピント合わせの目標となる位置(スリット光の投射目標位置)を変えつつ取得された複数のスリットスキャン画像の合成画像を生成するように構成されているので、撮影野の広い範囲にピントの合った画像を生成することができ、例えば、撮影野全体にピントの合った画像を生成することが可能である。
【0024】
しかも、第1の態様は、スリット光の投射目標位置を光スキャナーで移動することによって撮影野の任意の位置をフォーカス目標(ピント合わせの目標)とすることが可能な新規なオートフォーカス手法を用いている。撮影野における特定位置(典型的には、撮影野の中心位置)にしかピントを合わせることができないスプリット指標を用いた従来のオートフォーカス手法においては、第1の態様のように撮影野の広い範囲にピントの合った画像を生成することはできない。
【0025】
加えて、第1の態様は、眼底に対するオートフォーカス手法として、スリット光を用いた新規なオートフォーカス手法のみを使用している。したがって、2つ以上のフォーカス調整機能を準備する必要がない。したがって、装置構成の複雑化を招くことなく、撮影野の広い範囲にピントの合った画像を生成することが可能である。しかも、第1の態様に導入されているスリット光を用いた新規なオートフォーカス手法は、スリットスキャンに使用されるハードウェア(光スキャナーなど)を用いて行われるものであるから、装置構成の更なる簡略化が図られている。
【0026】
実施形態に係る眼科装置の第2の態様は、第1の態様に係る眼科装置であって、プロセッサは、位置決定処理を更に実行するように構成されている。位置決定処理において、プロセッサは、第1のスリットスキャン画像に基づいて、第1の位置と異なる第3の位置を決定する。この第3の位置に基づいて第2の位置が決定される。
【0027】
第3の位置に基づく第2の位置の決定を行う主体は任意であってよい。例えば、眼科装置のユーザー、眼科装置、及び別の装置のうちのいずれか1つ又はいずれか2つ以上の組み合わせによって、第3の位置に基づく第2の位置の決定が行われる。後述する第11及び第12の態様は、その非限定的な例を提供する。
【0028】
第2の態様によれば、第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像に基づいて第2の撮影のためのスリット光の投射目標位置(第2の位置)が決定される。つまり、被検眼の眼底の実際の撮影画像を参照して、更なる撮影のためのスリット光の投射目標位置が決定される。したがって、スリット光の投射目標位置の決定の好適化を図ることができる。例えば、スリット光の投射目標位置の決定の高精度化、スリット光の投射目標位置の決定の高確度化、スリット光の投射目標位置の決定の自由度の向上、スリット光の投射目標位置の決定の容易化などを図ることが可能である。
【0029】
また、第2の態様によれば、第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像に基づき第2の撮影のためのスリット光の投射目標位置を決定するように構成されているので、スリット光の投射目標位置の決定のみを目的とした撮影を別途に行う必要が無い。したがって、合成画像を生成するための一連の処理の簡略化を図ることができ、また、当該処理に要求されるリソースやコストの増大の抑制を図ることができる。
【0030】
実施形態に係る眼科装置の第3の態様は、第2の態様に係る眼科装置であって、プロセッサは、位置決定処理において、第1のスリットスキャン画像を複数の部分画像に分割するサブ処理と、これら複数の部分画像のそれぞれのコントラスト値を算出するサブ処理と、これら複数の部分画像について算出された複数のコントラスト値に基づいて第3の位置を決定するサブ処理とを実行する。
【0031】
第3の態様に係る手法は、フォーカス状態が良好な部分は高コントラストで表現される一方、フォーカス状態が不良な部分は低コントラストで表現されることを利用している。第3の態様によれば、第2の態様の1つの非限定的な具体例を提供することができる。第3の態様に係る手法は、画像を構成する画素の値から容易に求められるコントラスト値を利用した簡便なものである。したがって、合成画像を生成するための一連の処理の簡略化に更に寄与するとともに、当該処理に要求されるリソースやコストの増大の抑制に更に寄与するものである。
【0032】
実施形態に係る眼科装置の第4の態様は、第3の態様に係る眼科装置であって、プロセッサは、複数のコントラスト値に基づいて第3の位置を決定するサブ処理において、これら複数のコントラスト値のうちの最小値に対応する部分画像を特定するサブ処理と、この最小値に対応する部分画像の位置を特定するサブ処理とを実行する。最小値に対応する部分画像の位置は、当該部分画像における任意の位置であってよく、例えば、中心、重心、外縁上の位置(例えば、頂点、辺の中心など)などであってよい。第4の態様では、このようにして特定された位置が第3の位置に設定される。
【0033】
第4の態様によれば、第3の態様の1つの非限定的な具体例を提供することができる。第4の態様に係る手法は、コントラスト値の大きさの比較と、部分画像における位置の特定とを組み合わせた簡便なものである。したがって、合成画像を生成するための一連の処理の簡略化に更に寄与するとともに、当該処理に要求されるリソースやコストの増大の抑制に更に寄与するものである。
【0034】
実施形態に係る眼科装置の第5の態様は、第3又は第4の態様に係る眼科装置であって、プロセッサは、複数の部分画像のそれぞれについて、その部分画像における最大輝度と最小輝度との差を最大輝度と最小輝度との和で除算した値を算出する:[(最大輝度)-「最小輝度」/「(最大輝度)+(最小輝度)」。第5の態様では、このようにして算出された値がこの部分画像のコントラスト値として用いられる。
【0035】
第5の態様によれば、第3又は第4の態様の1つの非限定的な具体例を提供することができる。第5の態様に係る演算は、輝度値の加算、減算、及び除算を組み合わせた簡便なものである。したがって、合成画像を生成するための一連の処理の簡略化に更に寄与するとともに、当該処理に要求されるリソースやコストの増大の抑制に更に寄与するものである。
【0036】
実施形態に係る眼科装置の第6の態様は、第3~第5の態様のいずれかに係る眼科装置であって、プロセッサは、画像合成処理において、第1のスリットスキャン画像を第1の部分画像群(複数の部分画像)に分割するサブ処理と、第2のスリットスキャン画像を第2の部分画像群(複数の部分画像)に分割するサブ処理と、第1の部分画像群と第2の部分画像群との間の対応付けを行うサブ処理とを実行する。
【0037】
第6の態様に係る画像合成処理のここまでのサブ処理が示す情報処理の態様は、第1のスリットスキャン画像の分割と第2のスリットスキャン画像の分割とを行った後に第1の部分画像群と第2の部分画像群との間の対応付けを行う態様に限定されず、例えば、部分画像間の対応付けを行いながら第1のスリットスキャン画像の分割及び/又は第2のスリットスキャン画像の分割を実行する態様や、第1のスリットスキャン画像における複数の位置と第2のスリットスキャン画像における複数の位置との間の対応付けを行った後に第1のスリットスキャン画像の分割及び第2のスリットスキャン画像の分割を実行する態様なども含んでいる。画像合成処理のここまでのサブ処理が示す情報処理の態様は、互いに対応付けられた第1の部分画像群と第2の部分画像群とが得られるものであればよく、そのための情報処理の態様は任意であってよい。
【0038】
第6の態様のプロセッサは、画像合成処理において、更に、第1の部分画像群のうちの第1の部分画像のコントラスト値と、第1の部分画像に対応する第2の部分画像群のうちの第2の部分画像のコントラスト値とに基づいて、第1の部分画像に対応する第1の重みと、第2の部分画像に対応する第2の重みとを算出するサブ処理と、第1の重み及び第2の重みに基づいて第1の部分画像と第2の部分画像とを合成するサブ処理とを実行する。第1の部分画像群と第2の部分画像群との間の対応付けに基づく第1の部分画像と第2の部分画像との組に対してこれらのサブ処理を適用することによって、第1のスリットスキャン画像と第2のスリットスキャン画像との合成画像を構築することができる。
【0039】
第6の態様に係る画像合成処理が3つ以上のスリットスキャン画像を合成する態様も含んでいること、及び、第6の態様に係る画像合成処理を3つ以上のスリットスキャン画像を合成する態様に適用可能であることは、当業者であれば理解することができるであろう。上記した2つのスリットスキャン画像を合成する場合をより一般的に表現すると、次のようになる。N個のスリットスキャン画像を合成する場合(Nは2以上の整数)、プロセッサは、まず、N個のスリットスキャン画像のそれぞれを部分画像に分割してN個の部分画像群を生成し、N個の部分画像群の間における部分画像の対応付けを行う。この対応付けは、例えば、N個の部分画像群から1つずつ部分画像を抽出して組を形成することによって行われる。なお、全ての部分画像群から1つずつ部分画像を抽出する必要はない。プロセッサは、各組について、その組に属する複数の部分画像のコントラスト値に基づいて、その組に属する各部分画像に対応する重みを算出する。更に、プロセッサは、その組に属する複数の部分画像に対応する重みに基づいて、その組に属する複数の部分画像を合成する。このような一連の処理を、N個の部分画像群から形成された複数の組のそれぞれに対して適用することにより、N個のスリットスキャン画像の合成画像を構築することができる。
【0040】
第6の態様によれば、複数のスリットスキャン画像を合成する処理の1つの非限定的な具体例を提供することができる。第6の態様に係る演算は、画像の分割、画像間の対応付け、コントラスト値に基づく重みの算出、及び重みに基づく画像の合成を組み合わせた簡便なものである。したがって、合成画像を生成するための一連の処理の簡略化に更に寄与するとともに、当該処理に要求されるリソースやコストの増大の抑制に更に寄与するものである。
【0041】
第6の態様に係る画像合成処理を別の態様に適用することも可能である。例えば、以下に説明する第7~第10の態様のいずれかに対して第6の態様に係る画像合成処理を適用することができる。なお、第7~第10の態様は、第3~第5の態様に係るスリット光の投射目標位置(フォーカス目標位置又はその候補)の決定方法(コントラスト値を利用した決定方法)の代わりに採用可能な方法を提供するものである。なお、第3~第5及び第7~第10の態様のうちのいずれか2つ以上を組み合わせることによって、スリット光の投射目標位置を決定する処理の品質(精度、確度、再現性など)の向上を図ることが可能である。
【0042】
実施形態に係る眼科装置の第7の態様は、第2の態様に係る眼科装置であって、プロセッサは、位置決定処理において、第1のスリットスキャン画像の空間周波数分布を求めるサブ処理と、この空間周波数分布において空間周波数の低い位置を特定して第3の位置に設定するサブ処理とを実行する。
【0043】
第7の態様に係る手法は、フォーカス状態が良好な部分は空間周波数が高く表現される一方、フォーカス状態が不良な部分は空間周波数が低く表現されることを利用している。第7の態様によれば、第2の態様の1つの非限定的な具体例を提供することができる。第7の態様に係る手法は、画像から容易に求められる空間周波数分布を利用した簡便なものである。したがって、合成画像を生成するための一連の処理の簡略化に更に寄与するとともに、当該処理に要求されるリソースやコストの増大の抑制に更に寄与するものである。
【0044】
実施形態に係る眼科装置の第8の態様は、第2の態様に係る眼科装置であって、プロセッサは、位置決定処理において、第1のスリットスキャン画像から血管分布を求めるサブ処理と、この血管分布において血管が不連続な位置を特定して第3の位置に設定するサブ処理とを実行する。
【0045】
第8の態様に係る手法は、網膜剥離部では血管(又は、別の連続的形状を有する組織)の像が不連続になる可能性があること、及び、剥離した網膜は眼底表面から離れた位置にあるためピントが合っていない可能性があることを利用したものである。第8の態様によれば、第2の態様の1つの非限定的な具体例を提供することができる。第8の態様に係る手法は、例えば、眼底画像から血管を検出するための画像処理技術を利用して実現することができる。したがって、合成画像を生成するための一連の処理の簡略化に更に寄与するとともに、当該処理に要求されるリソースやコストの増大の抑制に更に寄与するものである。
【0046】
実施形態に係る眼科装置の第9の態様は、第2の態様に係る眼科装置であって、プロセッサは、位置決定処理において、第1のスリットスキャン画像を被検眼の眼底の過去画像と比較して相違箇所を特定するサブ処理を実行する。特定された相違箇所が第3の位置に設定される。
【0047】
第9の態様に係る手法は、眼底において時間的に変化した箇所(例えば、網膜剥離部)にピントが合っていない可能性があることを利用したものである。第9の態様によれば、第2の態様の1つの非限定的な具体例を提供することができる。第9の態様に係る手法は、例えば、2つの画像を比較するための画像処理技術を利用して実現することができる。したがって、合成画像を生成するための一連の処理の簡略化に更に寄与するとともに、当該処理に要求されるリソースやコストの増大の抑制に更に寄与するものである。
【0048】
実施形態に係る眼科装置の第10の態様は、第2の態様に係る眼科装置であって、プロセッサは、位置決定処理において、第1のスリットスキャン画像を予め作成された正常眼底モデルと比較して相違箇所を特定するサブ処理を実行する。特定された相違箇所が第3の位置に設定される。
【0049】
いくつかの態様において、正常眼底モデルは、複数の健常眼の眼底を計測して得られたデータセットに統計演算を適用して生成された、健常眼の眼底の標準的形態を示すモデルであってよい。別のいくつかの態様において、正常眼底モデルは、フォーカス状態に影響を与える又はその可能性のある異常(例えば、網膜剥離)を有しない複数の眼底を計測して得られたデータセットに統計演算を適用して生成された、眼底の標準的形態を示すモデルであってよい。別のいくつかの態様において、正常眼底モデルは、或る特定の健常眼(又は、フォーカス状態に影響を与える若しくはその可能性のある異常を有しない、或る特定の眼)の眼底の形態を表すモデルであってよい。この特定の眼に基づく正常眼底モデルには匿名化が施されている。ここに挙げた正常眼底モデルは例示に過ぎず、これら以外の正常眼底モデルを作成し使用することができる。
【0050】
第10の態様に係る手法は、眼底において異常のある箇所(例えば、網膜剥離部)にピントが合っていない可能性があることを利用したものである。第10の態様によれば、第2の態様の1つの非限定的な具体例を提供することができる。第10の態様に係る手法は、例えば、画像とモデルとを比較ための情報処理技術を利用して実現することができる。したがって、合成画像を生成するための一連の処理の簡略化に更に寄与するとともに、当該処理に要求されるリソースやコストの増大の抑制に更に寄与するものである。
【0051】
実施形態に係る眼科装置の第11の態様は、第2~第10の態様のいずれかに係る眼科装置であって、ユーザーインターフェイスを更に含んでいる。このユーザーインターフェイスは、眼科装置のユーザーが情報入力や指示を行うための機能を有しており、例えば、操作デバイス、音声入力デバイス、視線入力デバイスなどの入力デバイスを含んでいてよい。更に、ユーザーインターフェイスは、表示デバイスなどの出力デバイスを含んでいてもよい。
【0052】
第11の態様のプロセッサは、被検眼の眼底の画像と第3の位置を示す情報とを表示装置に表示させる。表示される眼底画像は、第1のスリットスキャン画像であってもよいし、別の画像であってもよい。この別の画像は、本実施形態に係る眼科装置により生成された画像でもよいし、別の眼科装置により生成された画像でもよい。また、表示される画像の種別は、スリットスキャン画像でもよいし、別の種類の画像(例えば、眼底カメラ画像、SLO画像、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)画像など)でもよい。第3の位置を示す情報は、例えば、眼底画像にオーバーレイ表示される画像情報であってよいが、それに限定されない。表示装置は、第11の態様の眼科装置の要素であってもよいし、第11の態様の眼科装置の周辺機器であってもよい。前者の場合、表示装置は、ユーザーインターフェイスに含まれる表示デバイスであってよい。
【0053】
第11の態様のプロセッサは、更に、ユーザーインターフェイスを用いて指定された被検眼の眼底の画像中の位置を第2の位置に設定する。すなわち、第11の態様では、ユーザーは、表示装置に表示された眼底画像及び第3の位置を示す情報を参照することによって眼底画像における所望の位置(ピントを合わせたい位置)を決定し、この所望の位置を指定するための操作をユーザーインターフェイスによって行う。プロセッサは、ユーザーが指定した位置を、第2の撮影のために行われるピント合わせの目標となる位置(スリット光の投射目標位置)、つまり第2の位置、に指定する。
【0054】
第11の態様(又は、別の態様)において、位置決定処理により決定される第3の位置、及び/又は、プロセッサにより表示される第3の位置を示す情報は、フォーカス状態が不十分な範囲を示す情報であってよい。非限定的な例として、第3の位置及び/又はそれを示す情報は、第1のスリットスキャン画像においてコントラスト値が所定の閾値よりも小さい範囲、第1のスリットスキャン画像において空間周波数が所定の閾値よりも小さい範囲、第1のスリットスキャン画像において血管の不連続性の程度を示すパラメータの値が所定の閾値よりも大きい範囲、第1のスリットスキャン画像において過去画像に対する相違の程度を示すパラメータの値が所定の閾値よりも大きい範囲、第1のスリットスキャン画像において正常眼底モデルに対する相違の程度を示すパラメータの値が所定の閾値よりも大きい範囲などがある。
【0055】
第11の態様によれば、ユーザーは、眼科装置により自動で求められたフォーカス状態が不十分な位置(第3の位置)を眼底画像とともに観察し、所望の位置を指定することができる。つまり、ユーザーは、眼科装置により求められた第3の位置、被検眼の眼底の状態、被検眼の眼底の画像の状態(フォーカス状態)などを参照しながら、所望の位置を指定することができる。ユーザーの指示を受けた眼科装置は、ユーザーにより指示された位置を目標としてフォーカス調整を実行した後に眼底撮影を実行する。これにより、ユーザーが所望する位置にピントの合った画像が得られる。加えて、第11の態様によれば、更なる撮影のためのフォーカス目標位置を決定する工程の一部を自動で行うように構成されているので、合成画像を生成するために実行される一連の工程の効率化や容易化を図ることができる。
【0056】
実施形態に係る眼科装置の第12の態様は、第2~第10の態様のいずれかに係る眼科装置であって、プロセッサは、第3の位置を第2の位置に設定する。すなわち、第12の態様のプロセッサは、位置決定処理により自動で決定されたフォーカス目標位置の候補(スリット光の投射目標位置)を、更なる撮影のためのフォーカス目標位置に採用する。
【0057】
第12の態様によれば、更なる撮影のためのフォーカス目標位置を決定する工程の全てを自動で行うように構成されているので、合成画像を生成するために実行される一連の工程の効率化や容易化を図ることができる。
【0058】
実施形態に係る眼科装置の第13の態様は、第1の態様に係る眼科装置であって、プロセッサは、撮影制御において、予め設定された第1の位置に向けてスリット光を投射しつつ第1の撮影を行うように撮影ユニットを制御し、且つ、予め設定された第2の位置に向けてスリット光を投射しつつ第2の撮影を行うように撮影ユニットを制御する。
【0059】
より一般に、N個のスリットスキャン画像を合成する場合において(Nは2以上の整数)、第13の態様では、N個のスリットスキャン画像にそれぞれ対応するN個のフォーカス目標位置が予め決定される。N個の位置は、デフォルト設定されてもよいし、ユーザー又は眼科装置が設定してもよい。N個のフォーカス目標位置は順序付けられているものとする。プロセッサは、この順序にしたがってフォーカス目標位置を変更しつつ、各フォーカス目標位置に基づくフォーカス調整及びスリットスキャンを実行する。これにより、N個のフォーカス目標位置にそれぞれ対応するN個のスリットスキャン画像が得られる。プロセッサは、これらN個のスリットスキャン画像の合成画像を構築する。合成画像を構築する方法は任意であってよく、例えば、本開示に記載された画像合成方法のうちのいずれか、又は、別の画像合成方法であってよい。
【0060】
第13の態様によれば、合成画像を生成するために実行される処理の効率化や容易化を図ることができる。
【0061】
第1~第12の態様に係る任意の事項を第13の態様に組み合わせることが可能である。例えば、N個のフォーカス目標位置を決定するために、予め取得された被検眼の眼底画像に対して、第3~第5及び第7~第10の態様のいずれかに係る手法を適用することができる。また、第13の態様で得られた複数のスリットスキャン画像を合成するために第6の態様に係る画像合成処理を用いることができる。
【0062】
本開示に係る任意の事項及び/又は任意の公知技術に係る事項を第1~第13の態様に組み合わせることが可能である。そのような組み合わせによって得られる眼科装置は、組み合わされた事項による作用及び効果、並びに、当該事項の組み合わせによる相乗的な作用及び効果を更に奏するものとなる。
【0063】
実施形態に係る別の態様は、眼科装置を制御する方法を提供する。この眼科装置は、プロセッサと、撮影ユニットと、フォーカス調整ユニットとを含む。撮影ユニットは、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を光スキャナーによって移動しつつ被検眼の眼底の撮影を行うスリットスキャンを、プロセッサの制御の下に実行する。フォーカス調整ユニットは、撮影ユニットのフォーカス調整をプロセッサの制御の下に実行する。本態様に係る方法は、眼科装置のプロセッサに次の処理を実行させる:被検眼の眼底の第1の位置に向けてスリット光を投射しつつ第1の撮影を行うように撮影ユニットを制御する第1の撮影制御;第1の撮影で取得された第1の画像に基づいて第1のフォーカス調整条件を決定する第1の条件決定処理;第1のフォーカス調整条件に基づく第1のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニットを制御する第1のフォーカス調整制御;第1のフォーカス調整で達成された第1のフォーカス状態の下に第1のスリットスキャンを行うように撮影ユニットを制御する第1のスリットスキャン制御;第1の位置と異なる第2の位置に向けてスリット光を投射しつつ第2の撮影を行うように撮影ユニットを制御する第2の撮影制御;第2の撮影で取得された第2の画像に基づいて第2のフォーカス調整条件を決定する第2の条件決定処理;第2のフォーカス調整条件に基づく第2のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニットを制御する第2のフォーカス調整制御;第2のフォーカス調整で達成された第2のフォーカス状態の下に第2のスリットスキャンを行うように撮影ユニットを制御する第2のスリットスキャン制御;第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像と、第2のスリットスキャンで取得された第2のスリットスキャン画像とを合成する画像合成処理。
【0064】
本態様に係る方法によれば、第1の態様に係る眼科装置と同様に、撮影野の広い範囲にピントの合った画像を生成することができ、例えば、撮影野全体にピントの合った画像を生成することが可能である。また、本態様に係る方法によれば、第1の態様に係る眼科装置と同様に、スリット光の投射目標位置を光スキャナーで移動することによって撮影野の任意の位置をフォーカス目標とすることが可能な新規なオートフォーカス手法を用いている。撮影野における特定位置(典型的には、撮影野の中心位置)にしかピントを合わせることができないスプリット指標を用いた従来のオートフォーカス手法においては、本態様のように撮影野の広い範囲にピントの合った画像を生成することはできない。加えて、本態様に係る方法は、第1の態様に係る眼科装置と同様に、装置構成の複雑化を招くことなく、撮影野の広い範囲にピントの合った画像を生成することが可能である。しかも、本態様に導入されているスリット光を用いた新規なオートフォーカス手法は、スリットスキャンに使用されるハードウェア(光スキャナーなど)を用いて行われるものであるから、装置構成の更なる簡略化が図られている。
【0065】
実施形態に係る方法の1つの態様は、上記方法であって、眼科装置のプロセッサに、第1のスリットスキャン画像に基づいて第1の位置と異なる第3の位置を決定する位置決定処理を更に実行させる。この位置決定処理により決定された第3の位置は、第2の撮影のためのフォーカス目標位置である第2の位置を決定するために用いられる。
【0066】
本態様に係る方法によれば、第2の態様に係る眼科装置と同様に、スリット光の投射目標位置の決定の好適化を図ることができる。例えば、スリット光の投射目標位置の決定の高精度化、スリット光の投射目標位置の決定の高確度化、スリット光の投射目標位置の決定の自由度の向上、スリット光の投射目標位置の決定の容易化などを図ることが可能である。更に、本態様に係る方法によれば、第2の態様に係る眼科装置と同様に、合成画像を生成するための一連の処理の簡略化を図ることができ、また、当該処理に要求されるリソースやコストの増大の抑制を図ることができる。
【0067】
本開示に係る任意の事項(例えば、実施形態に係る眼科装置に関する任意の事項)、及び/又は、任意の公知技術に係る事項を、実施形態に係る眼科装置の制御方法に組み合わせることが可能である。そのような組み合わせによって得られる眼科装置の制御方法は、組み合わされた事項による作用及び効果、並びに、当該事項の組み合わせによる相乗的な作用及び効果を更に奏するものとなる。
【0068】
実施形態に係る更に別の態様は、眼科装置に実行させるためのプログラムを提供する。この眼科装置は、プロセッサと、メモリと、撮影ユニットと、フォーカス調整ユニットとを含む。撮影ユニットは、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を光スキャナーによって移動しつつ被検眼の眼底の撮影を行うスリットスキャンを、プロセッサの制御の下に実行する。フォーカス調整ユニットは、撮影ユニットのフォーカス調整をプロセッサの制御の下に実行する。本態様に係るプログラムは、眼科装置のプロセッサに次の処理を実行させる:被検眼の眼底の第1の位置に向けてスリット光を投射しつつ第1の撮影を行うように撮影ユニットを制御する第1の撮影制御;第1の撮影で取得された第1の画像に基づいて第1のフォーカス調整条件を決定する第1の条件決定処理;第1のフォーカス調整条件に基づく第1のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニットを制御する第1のフォーカス調整制御;第1のフォーカス調整で達成された第1のフォーカス状態の下に第1のスリットスキャンを行うように撮影ユニットを制御する第1のスリットスキャン制御;第1の位置と異なる第2の位置に向けてスリット光を投射しつつ第2の撮影を行うように撮影ユニットを制御する第2の撮影制御;第2の撮影で取得された第2の画像に基づいて第2のフォーカス調整条件を決定する第2の条件決定処理;第2のフォーカス調整条件に基づく第2のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニットを制御する第2のフォーカス調整制御;第2のフォーカス調整で達成された第2のフォーカス状態の下に第2のスリットスキャンを行うように撮影ユニットを制御する第2のスリットスキャン制御;第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像と、第2のスリットスキャンで取得された第2のスリットスキャン画像とを合成する画像合成処理。
【0069】
本態様に係るプログラムによれば、第1の態様に係る眼科装置と同様に、撮影野の広い範囲にピントの合った画像を生成することができ、例えば、撮影野全体にピントの合った画像を生成することが可能である。また、本態様に係るプログラムによれば、第1の態様に係る眼科装置と同様に、スリット光の投射目標位置を光スキャナーで移動することによって撮影野の任意の位置をフォーカス目標とすることが可能な新規なオートフォーカス手法を用いている。撮影野における特定位置(典型的には、撮影野の中心位置)にしかピントを合わせることができないスプリット指標を用いた従来のオートフォーカス手法においては、本態様のように撮影野の広い範囲にピントの合った画像を生成することはできない。加えて、本態様に係るプログラムは、第1の態様に係る眼科装置と同様に、装置構成の複雑化を招くことなく、撮影野の広い範囲にピントの合った画像を生成することが可能である。しかも、本態様に導入されているスリット光を用いた新規なオートフォーカス手法は、スリットスキャンに使用されるハードウェア(光スキャナーなど)を用いて行われるものであるから、装置構成の更なる簡略化が図られている。
【0070】
本開示に係る任意の事項(例えば、実施形態に係る眼科装置に関する任意の事項、実施形態に係る眼科装置の制御方法に関する任意の事項)、及び/又は、任意の公知技術に係る事項を、実施形態に係るプログラムに組み合わせることが可能である。そのような組み合わせによって得られるプログラムは、組み合わされた事項による作用及び効果、並びに、当該事項の組み合わせによる相乗的な作用及び効果を更に奏するものとなる。
【0071】
実施形態に係る更に別の態様は、コンピュータ可読な非一時的記録媒体を提供する。この記録媒体には、実施形態に係る任意の態様のプログラムが記録されている。本態様に係る記録媒体は、それに記録されているプログラムと同様の作用及び効果を奏するものである。また、本開示に係る任意の事項(例えば、実施形態に係る眼科装置に関する任意の事項、実施形態に係る眼科装置の制御方法に関する任意の事項、実施形態に係るプログラムに関する任意の事項)、及び/又は、任意の公知技術に係る事項を、実施形態に係る記録媒体に組み合わせることが可能である。そのような組み合わせによって得られる記録媒体は、組み合わされた事項による作用及び効果、並びに、当該事項の組み合わせによる相乗的な作用及び効果を更に奏するものとなる。
【0072】
本開示に係る実施形態のカテゴリーは、眼科装置、眼科装置の制御方法、プログラム、及び記憶媒体に限定されるものではない。例えば、本開示が眼科撮影方法や眼科情報処理方法などのカテゴリーの実施形態を提供することが可能であることや、本開示を眼科以外の分野にも応用することが可能であることは、当業者であれば理解することができるであろう。
【0073】
実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例を図1に示す。本例の眼科装置1は、スリットスキャン方式のモダリティを用いて生体眼の眼底を画像化する眼科イメージング機能を有する。眼科装置1は、撮影ユニット2、フォーカス調整ユニット3、プロセッサ4、メモリ5、及びユーザーインターフェイス6を含む。眼科装置1に含まれるハードウェア要素は、特に言及しない限り、既存のスリットスキャン型の眼科イメージング装置のハードウェア要素と同様であってよい。
【0074】
撮影ユニット2は、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつローリングシャッター型のイメージセンサー(撮像装置)で撮影を行うことによってスリットスキャンを実行可能に構成されている。換言すると、撮影ユニット2は、スリット状の照明光(スリット光)の照射位置(照射範囲)を移動させながら被検眼の眼底を照明し、1次元的に又は2次元的に受光素子が配列されたイメージセンサーによって眼底からの戻り光を受光するように構成されている。プロセッサ4の制御の下に、戻り光の受光結果は、スリット光の照射位置の移動タイミングに同期して、スリット光の照射位置に対応した戻り光の受光位置にある受光素子から信号(データ)が読み出される。イメージセンサーからの信号読み出しはローリングシャッター方式で行われる。撮影ユニット2の具体的な構成については、その非限定的な例を後述する。
【0075】
いくつかの態様では、ローリングシャッター型のイメージセンサーの代わりに、グローバルシャッター型のイメージセンサーと、機械的なスリット絞りとを組み合わせた撮像ユニット(撮像装置)を用いることによって、ローリングシャッター型のイメージセンサーと同様の撮影動作を行うことができる。
【0076】
フォーカス調整ユニット3は、撮影ユニット2のフォーカス調整(ピント合わせ)を行うための構成を含んでいる。本実施形態のフォーカス調整は、既存のフォーカス調整技術を用いて実行されてよい。例えば、被写体(被検眼の眼底)とイメージセンサーとの間に配置されているレンズの焦点距離(焦点の位置)を変化させることによって、及び/又は、レンズとイメージセンサーとの間の距離を変化させることよって、フォーカス調整を行うことができる。
【0077】
プロセッサ4は、メモリ5及び/又は他の記憶装置に記憶されているプログラムにしたがって処理を実行することにより本実施形態に係る機能を実現する。
【0078】
メモリ5は、各種のコンピュータプログラムや各種のデータを記憶している。例えば、メモリ5には、眼科装置1に所定の動作を実行させるための制御プログラム及び/又は制御データや、眼科装置1に所定の演算処理を実行させるための演算プログラム及び/又は演算データが格納されている。メモリ5に格納されるプログラムやデータはこれらに限定されない。また、メモリ5には、眼科装置1により取得されたデータが保存される。例えば、眼科装置1により生成されたデータや、眼科装置1が外部から取得したデータがメモリ5に保存される。典型的な実施形態において、メモリ5は、不揮発性メモリと揮発性メモリとを含んでいる。
【0079】
ユーザーインターフェイス6は、眼科装置1とそのユーザーとの間で情報をやりとりするための要素(ハードウェア要素、ソフトウェア要素、プロトコル)である。ユーザーインターフェイス6は、例えば、ユーザーから眼科装置1に情報を提供するための手段である入力部(操作部)と、眼科装置1からユーザーに情報を提供するための手段である出力部とを含んでいる。入力部のハードウェア要素の非限定的な例として、操作パネル、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ダイアル、スキャナー、光学文字認識(OCR)デバイス、マイクロフォン、カメラ(ビデオカメラ)などがある。出力部のハードウェア要素の非限定的な例として、ディスプレイ、プリンタ、スピーカーなどがある。ユーザーインターフェイス6は、タッチスクリーンのように入力機能と出力機能とが一体化されたデバイスを含んでいてもよい。
【0080】
図示は省略するが、眼科装置1は、既存の同種の眼科装置と同様に、被検眼Eに対する撮影ユニット2のアライメント(位置合わせ)を行うための要素を備えている。眼科装置1により実行されるアライメントの方法は任意であってよく、例えば、特開2013-248376号公報に記載された2つ以上の前眼部カメラを用いて被検眼Eの位置を求めるステレオアライメントであってよいし、被検眼Eの正面画像(例えば前眼部Eaの観察画像)を解析して被検眼Eの位置を求める方法でもよいし、前眼部Ea(角膜)にアライメント指標を投影して被検眼Eの位置を求める方法でもよい。眼科装置1は、アライメントの手法に応じたハードウェア要素及びソフトウェア要素を備えている。図示は省略するが、眼科装置1は、既存の同種の眼科装置と同様に、撮影ユニット2を3次元的に移動するための移動機構を備えている。
【0081】
撮影ユニット2の構成の非限定的な例を図2に示す。図2は側面図である。図2において、光学系の光軸(対物レンズ46の光軸)に沿った方向をZ方向(前後方向、作動距離方向)とし、Z方向に直交する1つの方向(本例では左右方向、水平方向)をX方向とし、Z方向及びY方向の双方に垂直な方向(本例では上下方向、鉛直方向)をY方向とする。
【0082】
本例の撮影ユニット2は、光源10、照明光学系20、光スキャナー30、撮影光学系40、及び撮像装置50を含んでいる。照明光学系20は、光源10から発せられた光からスリット光を生成して被検眼Eの眼底Efに投射する。光源10を照明光学系20の要素とみなしてもよい。光スキャナー30は、照明光学系20により眼底Efに投射されるスリット光の位置(投射位置)を移動する。光スキャナー30を照明光学系20の要素とみなしてもよい。撮影光学系40は、照明光学系20により眼底Efに投射されたスリット光の戻り光を撮像装置50に導く。撮像装置50を撮影光学系40の要素とみなしてもよい。
【0083】
光源10は、可視領域の光を発生する可視光源(例えば、白色光を発生する白色光源)を含んでいてよい。光源10は、赤外領域(近赤外領域)の光を発生する赤外光源(近赤外光源)を含んでいてもよい。光源10は、異なる波長帯の光を切り替えて出力することが可能であってもよい。光源10は、任意の種類の光源を含んでいてよく、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、ハロゲンランプ、及びキセノンランプのうちの1つ以上を含んでいてよい。被検眼Eに対する撮影ユニット2のアライメントが適切な状態において、光源10は、眼底Ef及び虹彩のそれぞれに対して光学的に非共役な位置に配置される。いくつかの態様では、プロセッサ4の制御の下に、光源10は、スリットスキャンのために可視光を出力し、フォーカス調整のために近赤外光又は可視光を出力する。
【0084】
照明光学系20は、光源10により発せられた光からスリット状の照明光(スリット光)を生成して被検眼Eの眼底Efに投射する。本例において、照明光学系20は、虹彩絞り21、スリット開口絞り(スリット)22、リレーレンズ23、光スキャナー30、リレーレンズ31、ホールミラー45、及び対物レンズ46を含む。リレーレンズ23は1つ以上のレンズを含み、リレーレンズ31は1つ以上のレンズを含み、対物レンズ46は1つ以上のレンズを含む。
【0085】
撮影光学系40は、照明光学系20(及び光スキャナー30)により被検眼Eの眼底Efに投射された照明光(スリット光)の戻り光を撮像装置50に導く。本例において、撮影光学系40は、対物レンズ46、ホールミラー45、フォーカスレンズ47、及び結像レンズ48を含む。フォーカスレンズ47は1つ以上のレンズを含み、結像レンズ48は1つ以上のレンズを含む。
【0086】
光源10から出力された光(具体的には、この光の一部)は、虹彩絞り21に形成された開口部、スリット開口絞り22に形成された開口部、及びリレーレンズ23を通過して光スキャナー30に導かれる。
【0087】
被検眼Eに対する撮影ユニット2のアライメントが適切な状態において、虹彩絞り21(具体的には、虹彩絞り21に形成された開口部)は、被検眼Eの虹彩(瞳孔)に対して光学的に略共役な位置に配置される。
【0088】
虹彩絞り21には、照明光学系20の光軸から離隔した位置に1つ以上の開口部が形成されている。例えば、図3に示す非限定的な例に係る虹彩絞り21には、照明光学系20の光軸Oを中心とした円周方向に沿って所定の寸法(所定の長さ及び所定の幅)を有する2つの開口部21A及び21Bが形成されている。
【0089】
虹彩絞り21の開口部は、被検眼Eの瞳孔における照明光の入射状態(入射位置、入射形状)を規定する。例えば、開口部21A及び21Bが形成された虹彩絞り21が用いられる場合には、被検眼Eの瞳孔中心に略一致するように照明光学系20の光軸O(対物レンズ46の光軸)が配置された状態において(つまり、アライメントが適切な状態において)、瞳孔中心から偏心した位置(具体的には、瞳孔中心に対して点対称に配置された2つの位置)を通じて照明光(スリット光)を眼底Efに導くことができる。
【0090】
いくつかの態様では、光源10からの光を偏向する光学素子を光源10と虹彩絞り21との間に設けることによって、虹彩絞り21の開口部とスリット開口絞り22の開口部(スリット)とを結ぶ方向における光量分布を最適化してもよい。また、光源10と虹彩絞り21の開口部との間の相対位置を変更可能に構成することによって、虹彩絞り21の開口部を通過する光の光量分布を可変にしてもよい。
【0091】
被検眼Eに対する撮影ユニット2のアライメントが適切な状態において、スリット開口絞り22(具体的には、スリット開口絞り22に形成された開口部(スリット))は、被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置に配置される。
【0092】
スリット開口絞り22には、後述するイメージセンサー51からローリングシャッター方式で信号読み出しが行われるライン方向(ロウ(row)方向)に対応した方向を長手方向とする開口部(スリット)が形成されている。例えば、図4に示す非限定的な例に係るスリット開口絞り22には、照明光学系20の光軸Oを含む領域に所定の寸法(所定の長さ及び所定の幅)を有する開口部(スリット)22Aが形成されている。
【0093】
スリット開口絞り22に形成された開口部(スリット)は、被検眼Eの眼底Efにおけるスリット光の投射像の形状を規定する。スリット開口絞り22に形成されたスリットの長手方向をスリット長方向と呼ぶことがある。また、スリット開口絞り22に形成されたスリットの短手方向をスリット幅方向と呼ぶことがある。
【0094】
スリット開口絞り22は、移動機構22Mにより、照明光学系20の光軸に沿う方向に移動可能である(図2を参照)。移動機構22Mは、プロセッサ4の制御の下に動作する。プロセッサ4は、被検眼Eの状態(例えば、屈折力(屈折度数、視度)、眼底形状など)に応じて移動機構22Mを制御するように構成されてよい。
【0095】
虹彩絞り21の開口部を通過した光は、スリット開口絞り22の開口部を通過することによってスリット状の照明光(スリット光)に変換される。スリット光は、リレーレンズ23を介して光スキャナー30に導かれ、光スキャナー30により偏向され、リレーレンズ31を介してホールミラー45に導かれる。
【0096】
ホールミラー45は、既存の眼底カメラなどに用いられる光学部材であり、照明光学系20の光路と撮影光学系40の光路とを結合する光路結合部材として機能する。ホールミラー45の中心位置には開口部(又は、光透過部)が形成されている。例えば、この開口部の外縁は円形である。照明光学系20の光軸と撮影光学系40の光軸とは、ホールミラー45の開口部において交差している。ホールミラー45の開口部の周囲には反射部(ミラー部)が形成されている。
【0097】
リレーレンズ31を介してホールミラー45に導かれたスリット光は、反射部により反射され、対物レンズ46により屈折されて被検眼Eに入射する。被検眼Eに入射したスリット光は、眼底Efに投射される。
【0098】
いくつかの態様において、眼底Efにおけるスリット光の投射像(投射領域)の形状は略スリット形状であり、このスリット形状の投射像の長手方向はX方向に略一致している。この場合、光スキャナー30は、眼底Efにおけるスリット光の投射像をY方向に移動させるように、虹彩絞り21及びスリット開口絞り22によって生成されたスリット光を偏向する。なお、眼底Erにおけるスリット光の投射像の長手方向の向きはX方向に限定されず、光スキャナー30による投射像の移動方向はY方向に限定されない。
【0099】
被検眼Eに対する撮影ユニット2のアライメントが適切な状態において、光スキャナー30は、被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置に配置される。これにより、被検眼Eの瞳孔内の位置(又は瞳孔の近傍位置)をピボット(スキャン軸、偏向中心軸)としてスリット光をY方向に偏向することができ、眼底Efの所定のスキャン範囲を仮想的に分割して形成される複数のスリット状の部分領域に対して逐次にスリット光を投射することが可能になる。つまり、眼底Efのスリットスキャンを行うことが可能になる。
【0100】
眼底Efに投射されたスリット光の反射光は、被検眼Efの瞳孔を介して被検眼Eから出射し、撮影ユニット2に入射する。被検眼Eから撮影ユニット2に入射した光(戻り光)は、対物レンズ46を介してホールミラー45に導かれる。この戻り光は、ホールミラー45の開口部を通過し(又は、光透過部を透過し)、フォーカスレンズ47及び結像レンズ48を介して撮像装置50に導かれて検出される。
【0101】
光スキャナー30は、例えば、スリット光を1次元的又は2次元的に偏向することが可能である。1次元偏向用の光スキャナー30は、所定の方向を基準とした所定の偏向角度範囲においてスリット光を偏向する。この偏向角度範囲は、眼底Efにおけるスリット光の移動方向(例えば、Y方向)に対応した方向において定義されている。2次元偏向用の光スキャナー30は、例えば、互いに異なる偏向方向を提供する2つの光スキャナーを組み合わせたものである。光スキャナー30に使用される光偏向デバイスの種類は任意であってよく、例えばガルバノスキャナーであってよい。
【0102】
フォーカスレンズ47は、移動機構47Mにより、撮影光学系40の光軸に沿う方向に移動可能である(図2を参照)。移動機構47Mは、プロセッサ4の制御の下に動作する。プロセッサ4は、被検眼Eの状態(例えば、屈折力、眼底形状など)に応じて移動機構47Mを制御するように構成されてよい。
【0103】
撮像装置50は、撮影光学系40によって導かれてきた戻り光を検出するイメージセンサー51を含んでいる。撮像装置50は、プロセッサ4の制御の下に、戻り光を検出したイメージセンサー51から信号読み出しを行うことができる。
【0104】
イメージセンサー51は、ピクセル化された受光器としての機能を実現する。被検眼Eに対する撮影ユニット2のアライメントが適切な状態において、イメージセンサー51の受光面(検出面、撮像面)は、被検眼Eの眼底Efに対して光学的に略共役な位置に配置される。イメージセンサー51が光電変換により生成した信号は、プロセッサ4の制御の下に、ローリングシャッター方式で読み出される。
【0105】
いくつかの態様において、イメージセンサー51はCMOSイメージセンサーを含む。この場合、イメージセンサー51においては、ロウ(row)方向に配列されたピクセル群が複数個設けられており、これら複数のピクセル群がカラム(column)方向に配列されている。より具体的には、イメージセンサー51は、2次元的に配列された複数のピクセルと、複数の垂直信号線と、水平信号線とを含む。各ピクセルは、フォトダイオードと、キャパシタとを含む。垂直信号線は、ロウ方向(水平方向)に直交するカラム方向(垂直方向)に配列されたピクセル群ごとに設けられている。各垂直信号線は、戻り光の検出結果に対応した電荷が蓄積されたピクセル群に対して選択的に電気的に接続される。水平信号線は、複数の垂直信号線に対して選択的に電気的に接続される。各ピクセルは、戻り光の検出結果に対応した電荷を蓄積し、蓄積された電荷は、例えばロウ方向のピクセル群ごとに順次に読み出される。例えば、ロウ方向のラインごとに、各ピクセルに蓄積された電荷に対応した電圧が垂直信号線に供給される。複数の垂直信号線は、選択的に水平信号線に対して電気的に接続される。上記したロウ方向のラインごとの読み出し動作を垂直方向に順次に行うことで、2次元的に配列された複数のピクセルから検出結果を読み出すことができる。
【0106】
このようなイメージセンサー51からの検出結果の読み出しをローリングシャッター方式で行うことにより、ロウ方向に延びる所望の仮想的な開口形状に対応した受光像が取得される。この制御は公知であり、例えば米国特許第7831106号明細書などに開示されている。
【0107】
眼科装置1により実行されるスリットスキャンについて説明する。図5は、眼底Efにおけるスリット光の投射像の位置(投射範囲)IPと、イメージセンサー51の受光面SRにおける仮想的な開口範囲OPとを模式的に表す。
【0108】
眼科装置1は、光スキャナー30を用いてスリット光を偏向することにより、眼底Efにおけるスリット光の投射範囲IPをスリット長方向(例えば、X方向、ロウ方向、水平方向)に対して垂直な方向(例えば、Y方向、カラム方向、垂直方向)に移動させる。
【0109】
プロセッサ4によるイメージセンサー51からの信号読み出しにおいては、信号読み出しの対象となるピクセル群をライン単位で逐次に切り替えることによって、仮想的な開口範囲OPが逐次に設定される。開口範囲OPは、例えば、スリット光の戻り光が受光面SRに投射される範囲IP´と一致するように、又は、この範囲IP´よりも広い範囲になるように設定される。プロセッサ4は、スリット光の投射範囲IPを移動するための制御と、開口範囲OPを移動するための制御とを並行的に実行する。例えば、プロセッサ4は、これらの制御を同期的に実行する。このようなスリットスキャンによれば、不要な散乱光の影響を受けることなく、簡素な構成によって、高いコントラストを有する高品質の眼底画像を取得することが可能である。
【0110】
いくつかの実施形態では、光スキャナー30とホールミラー45との間に、有害反射光を除去するための黒点を設けることができる。黒点は、対物レンズ46によるスリット光の反射に起因する中心ゴーストの位置に対して光学的に略共役な位置に配置される。
【0111】
既存の同種の眼科装置では、眼底Efに投射されるフォーカス調整用指標(スプリット指標)を生成するフォーカス指標投影光学系が光スキャナーとホールミラーとの間に設けられ、更に、フォーカス指標投影光学系を移動するための機構が設けられている。既存の同種の眼科装置は、フォーカス指標光学系から出力された光(フォーカス指標光)を眼底Efに投射し、その眼底反射光を撮影光学系及び撮像装置によって検出し、取得された画像におけるスプリット指標の位置をシャイネルの原理にしたがって特定し、特定されたスプリット指標の位置に基づきフォーカス指標投影光学系と撮影光学系のフォーカスレンズとをそれぞれの光軸に沿う方向に移動することによってフォーカス調整を実行する。このように、フォーカス指標投影光学系及びこの移動機構は、既存の同種の眼科装置に設けられている、フォーカス調整のためにのみ使用されるハードウェア要素、つまりフォーカス調整専用のハードウェア要素である。
【0112】
これに対し、本例に係る眼科装置1は、少なくとも、このようなフォーカス調整専用ハードウェア要素を備えていない点において、既存の同種の眼科装置と相違している。眼科装置1は、フォーカス調整専用ハードウェア要素の代わりに、後述する新規な技術によってフォーカス調整を実行する。この新規な技術は、既存の同種の眼科装置にも設けられているハードウェア要素を新規な方法で利用するものである。いくつかの態様に係る新規な技術では、フォーカス調整専用ハードウェア要素は不要である。また、別のいくつかの態様では、フォーカス指標投影光学系とその移動機構とを組み合わせを含むハードウェア要素のような、複雑且つ大規模なフォーカス調整専用ハードウェア要素は不要である。
【0113】
プロセッサ4は、様々な制御処理や様々な演算処理を実行するように構成されている。プロセッサ4は、少なくとも、撮影部(撮影ユニット2、フォーカス調整ユニット3)の制御を実行するように構成されている。例えば、プロセッサ4は、図5を参照して説明したスリットスキャンを撮影ユニット2に実行させる(スリットスキャン制御)。
【0114】
本実施形態の眼科装置1は、新規なフォーカス調整を実行するために、撮影制御(スリット光投射制御)、フォーカス調整条件決定処理(条件決定処理)、及びフォーカス調整制御を含む一連の処理を実行するように構成されていてよい。眼科装置1は、この一連の処理を実行することによって(すなわち、新規なソフトウェア要素を備えた構成を採用することによって)、フォーカス調整専用ハードウェア要素を用いずに、又は、複雑且つ大規模なフォーカス調整専用ハードウェア要素を用いずに、フォーカス調整を実行することが可能である。
【0115】
プロセッサ4の構成の非限定的な例を図6Aに示す。本例のプロセッサ4は、撮影制御部410と、フォーカス処理部420と、画像合成部430とを含んでいる。本例のフォーカス処理部420は、図6Aに示すように投射制御部421とフォーカス調整条件決定部422とフォーカス調整制御部423とを含んでいる。
【0116】
図6Bに示すフォーカス処理部420Aは、フォーカス処理部420の別の態様である。フォーカス処理部420Aは、フォーカス処理部420と同様の投射制御部421、フォーカス調整条件決定部422、及びフォーカス調整制御部423に加えて、投射目標位置決定部424を含んでいる。
【0117】
撮影制御部410は、被検眼Eの眼底Efを撮影するために撮影ユニット2の制御を実行する。撮影制御部410は、例えば、フォーカス調整条件の決定に用いられる画像を取得するための制御(上記の撮影制御)と、スリットスキャンを行うための制御(上記のスリットスキャン制御)とを実行する。この場合、前者の制御(撮影制御)は、撮影制御部410と投射制御部421との協働によって実行されるが、実施形態はそのような態様に限定されない。撮影制御部410は、少なくとも撮影ユニット2の制御を実行可能に構成されており、更にフォーカス調整ユニット3の制御を実行可能に構成されていてもよい。
【0118】
フォーカス処理部420は、フォーカス調整専用ハードウェア要素を用いることなく又は複雑且つ大規模なフォーカス調整専用ハードウェア要素を用いることなく実行される新規なフォーカス調整のための処理を実行する。
【0119】
非限定的な例に係るフォーカス処理部420は、スリット光投射制御を実行するように構成された投射制御部421と、フォーカス調整条件決定処理を実行するように構成されたフォーカス調整条件決定部422と、フォーカス調整制御を実行するように構成されたフォーカス調整制御部423とを含む。
【0120】
投射制御部421によって実行されるスリット光投射制御は、フォーカス調整のためのスリット光を被検眼Eの眼底Efに投射するために実行される撮影ユニット2の制御処理である。スリット光投射制御の態様は任意であってよく、そのいくつかの非限定的な例を後に説明する。投射制御部421によりスリット光が投射された眼底Efの撮影は、例えば、撮影制御部410の制御の下に撮像装置50によって行われる。
【0121】
フォーカス調整条件決定部422によって実行されるフォーカス調整条件決定処理は、スリット光投射制御により眼底Efに投射されたスリット光の戻り光を検出した撮像装置50からの出力に基づいてフォーカス調整条件を決定するために実行される演算処理である。フォーカス調整条件決定処理の態様は任意であってよく、そのいくつかの非限定的な例を後に説明する。
【0122】
フォーカス調整条件決定処理により生成されたフォーカス調整条件は、被検眼Eの視度データ又はそれと等価な情報を含んでいる。本例とは別のフォーカス調整方法が用いられる場合においても同様に、そのフォーカス調整処理において生成される情報は、被検眼Eの視度データ又はそれと等価な情報を含んでいる。
【0123】
フォーカス調整制御は、フォーカス調整条件決定処理により決定されたフォーカス調整条件に基づいて撮影ユニット2のフォーカス状態を調整するために実行されるフォーカス調整ユニット3の制御処理であり、フォーカス調整制御部423によって実行される。フォーカス調整制御の態様は任意であってよく、そのいくつかの非限定的な例を後に説明する。
【0124】
図2に示す例においては、フォーカス調整ユニット3は、撮影ユニット2の要素のうち、スリット開口絞り22を移動する移動機構22Mと、フォーカスレンズ47を移動する移動機構47Mとを含む。
【0125】
この場合、フォーカス調整条件決定処理は、照明光学系20のフォーカス調整を行うための(つまり、照明光学系20の焦点位置を調整するための)移動機構22Mの制御条件と、撮影光学系40のフォーカス調整を行うための(つまり、撮影光学系40の焦点位置を調整するための)移動機構47Mの制御条件とを決定するように実行される。移動機構22Mの制御条件は、スリット開口絞り22を移動する方向及び量(距離)を示す情報を含む。移動機構47Mの制御条件は、フォーカスレンズ47を移動する方向及び量(距離)を示す情報を含む。これらの制御条件は、対象要素の移動方向及び移動量に対応した別の情報を含んでいてもよく、例えば、移動機構22M(移動機構47M)に送信される制御信号の内容(例えば、制御パルスの個数)を示す情報を含んでいてよい。
【0126】
更に、フォーカス調整制御は、フォーカス調整条件決定処理により決定された移動機構22Mの制御条件に基づき移動機構22Mを制御し、且つ、移動機構47Mの制御条件に基づき移動機構47Mを制御するように実行される。
【0127】
いくつかの態様では、ここに説明したようにフォーカスレンズ47を移動することによって撮影光学系40のフォーカス調整を行っているが、別のいくつかの態様では撮像装置50(イメージセンサー51)を移動することによって撮影光学系40のフォーカス調整を行ってもよい。後者の態様では、撮像装置50(イメージセンサー51)を移動するための移動機構が設けられ、フォーカス調整条件決定処理はこの移動機構の制御条件を決定し、フォーカス調整制御はこの制御条件に基づき当該移動機構を制御することによって撮像装置50(イメージセンサー51)を移動する。
【0128】
いくつかの態様では、投射制御部421は、まず、光スキャナー30によるスリット光の偏向方向を所定の方向に固定する。つまり、投射制御部421は、光スキャナー30の反射面(ミラー面)の向きを所定の向きに固定する。
【0129】
このように光スキャナー30の動作(ミラー面の向きを変える動作)を停止した状態で、投射制御部421は、スリット光を眼底Efに投射するように撮影ユニット2を制御する。撮影ユニット2は、撮影光学系40及び撮像装置50により、光スキャナー30の動作を停止した状態で眼底Efに投射されたスリット光を検出する。これにより得られた画像はフォーカス調整条件決定部422に入力される。
【0130】
フォーカス調整条件決定部422は、この画像を解析することによってフォーカス調整条件を決定する。より具体的には、フォーカス調整条件決定部422は、光スキャナー30の動作を停止した状態で取得された画像を解析することにより、光スキャナー30の動作を停止した状態で眼底Efに投射されたスリット光の像(つまり、このスリット光に対応するスリット光像)の位置を特定する処理と、特定されたスリット光像の位置に基づいてフォーカス調整条件を決定する処理とを実行する。フォーカス調整条件決定部422が実行するこれらの処理については、その非限定的な例を後述する。
【0131】
いくつかの態様では、投射制御部421は、被検眼Eの眼底Efに投射される位置が異なる少なくとも2つのスリット光を出力するように撮影ユニット2を制御する。ここでは2つのスリット光(第1のスリット光及び第2のスリット光)を用いる場合について説明するが、3つ以上のスリット光を用いる場合についても同様の要領で実行できることは、当業者であれば理解することができるであろう。第1のスリット光及び第2のスリット光は、例えば、順次に又は同時に出力される。
【0132】
被検眼Eの眼底Efにおける投射位置が異なる第1のスリット光及び第2のスリット光を生成する方法は任意である。いくつかの態様では、図3に示す2つの開口部21A及び21B(第1の開口部21A及び第2の開口部21Bと呼ぶ)を有する虹彩絞り21を利用することができる。なお、これらの態様は、例えば、光スキャナー30によるスリット光の偏向方向が所定の方向に固定された状態(つまり、光スキャナー30のミラー面の向きが所定の向きに固定された状態)で実行されてよい。
【0133】
例えば、第1の開口部21Aを通過した光に基づき生成されるスリット光を第1のスリット光として使用し、第2の開口部21Bを通過した光に基づき生成されるスリット光を第2のスリット光として使用することによって、被検眼Eの眼底Efにおける投射位置が異なる第1のスリット光及び第2のスリット光を生成することができる。
【0134】
そのために採用可能な1つの構成例では、第1の開口部21Aを遮閉及び開放するための第1のシャッターと、第2の開口部21Bを遮閉及び開放するための第2のシャッターとが設けられており、投射制御部421の制御の下に第1の開口部21A及び第2の開口部21Bを交互に遮閉/開放することによって、被検眼Eの眼底Efにおける投射位置が異なる第1のスリット光と第2のスリット光とを逐次に生成することができる。例えば、第1の開口部21Aを開状態とし且つ第2の開口部21Bを閉状態とすることによって第1のスリット光を選択的に生成することができ、第1の開口部21Aを閉状態とし且つ第2の開口部21Bを開状態とすることによって第2のスリット光を選択的に生成することができる。また、双方の開口部21A及び21Bを開放することによって第1のスリット光と第2のスリット光とを同時に生成することができる。
【0135】
本態様で使用される第1のシャッター及び第2のシャッターは、既存の同種の眼科装置に設けられているフォーカス調整専用ハードウェア要素(フォーカス指標投影光学系及びその移動機構)と比較して、極めてシンプルで小規模なデバイスである。
【0136】
別の構成例では、光源10が、第1の開口部21Aのみを通過する光を発する第1の光源と、第2の開口部21Bのみを通過する光を発する第2の光源とを含んでおり、投射制御部421の制御の下に第1の光源と第2の光源とを交互に点灯させることによって、被検眼Eの眼底Efにおける投射位置が異なる第1のスリット光と第2のスリット光とを逐次に生成することができる。例えば、第1の光源を点灯状態とし且つ第2の光源を消灯状態とすることによって第1のスリット光を選択的に生成することができ、第1の光源を消灯状態とし且つ第2の光源を点灯状態とすることによって第2のスリット光を選択的に生成することができる。また、第1の光源及び第2の光源の双方を点灯することによって第1のスリット光と第2のスリット光とを同時に生成することができる。
【0137】
本態様で使用される第1の光源及び第2の光源は、既存の同種の眼科装置に設けられているフォーカス調整専用ハードウェア要素(フォーカス指標投影光学系及びその移動機構)と比較して、極めてシンプルで小規模なデバイスである。
【0138】
第1のスリット光及び第2のスリット光を生成するための別のいくつかの態様では、光スキャナー30を利用することができる。本態様では、投射制御部421は、光スキャナー30のミラー面を第1の向きに配置することによって第1のスリット光を生成し、第2の向きに配置することによって第2のスリット光を生成することによって、被検眼Eの眼底Efにおける投射位置が異なる第1のスリット光及び第2のスリット光を生成することができる。本態様では、ハードウェア要素の追加を行うことなく第1のスリット光及び第2のスリット光を生成することができる。
【0139】
以上に説明したいずれかの方法又は別の方法により、投射制御部421は、被検眼Eの眼底Efに投射される位置が異なる第1のスリット光及び第2のスリット光を撮影ユニット2に出力させる。
【0140】
撮影ユニット2は、撮影光学系40及び撮像装置50により、被検眼Eの眼底Efにおける第1のスリット光の投影像(第1のスリット光像)が描出されている第1の画像と、被検眼Eの眼底Efにおける第2のスリット光の投影像(第2のスリット光像)が描出されている第2の画像とを取得する。第1のスリット光及び第2のスリット光が逐次に生成された場合、つまり、被検眼Eの眼底Efに対する第1のスリット光の投射と第2のスリット光の投射とが別々に行われた場合、第1の画像と第2の画像とは別々の画像である。また、第1のスリット光及び第2のスリット光が同時に生成された場合、つまり、被検眼Eの眼底Efに対する第1のスリット光の投射と第2のスリット光の投射とが同時に行われた場合には、第1の画像と第2の画像とは同じ画像である。
【0141】
フォーカス調整条件決定部422は、第1の画像から第1のスリット光像を検出し、第1の画像における第1のスリット光像の位置を示す第1の位置情報を求める。同様に、フォーカス調整条件決定部422は、第2の画像から第2のスリット光像を検出し、第2の画像における第2のスリット光像の位置を示す第2の位置情報を求める。例えば、第1の位置情報は、第1の画像に定義されている座標系(例えば、ピクセル位置を表現する座標系)で表される1つ以上の座標であり、第2の位置情報は、第2の画像に定義されている座標系(例えば、ピクセル位置を表現する座標系)で表される1つ以上の座標である。
【0142】
フォーカス調整条件決定部422は、第1のスリット光像と第2のスリット光像との相対位置に基づいてフォーカス調整条件を決定する。より具体的には、フォーカス調整条件決定部422は、第1の位置情報に示された第1のスリット光像の座標(第1の座標)と、第2の位置情報に示された第2のスリット光像の座標(第2の座標)との差を求め、この座標の差に基づいてフォーカス調整条件を決定することができる。
【0143】
本例に係るフォーカス調整の原理及びいくつかの非限定的な具体例について説明する。
【0144】
そのために、まず、フォーカス調整で使用されるスリット光を被検眼Eの眼底Efに投射する照明光学系20の光路について説明する。図7は、図2図4に示す光学系によって形成される光路の非限定的な例を表す。図7の上段は平面図であり、下段は側面図である。また、図7の各光路は、虹彩絞り21の2つの開口部21A及び21Bを物点位置とした場合の光路である。
【0145】
光源10により出力された光は、虹彩絞り21を照明する。虹彩絞り21の第1の開口部21Aを通過した光(第1の光)の一部がスリット開口絞り22のスリット22Aを通過することによって第1のスリット光が生成される。同様に、虹彩絞り21の第2の開口部21Bを通過した光(第2の光)の一部がスリット開口絞り22のスリット22Aを通過することによって第2のスリット光が生成される。
【0146】
ここで、第1の開口部21Aを通過する第1の光は、例えば、前述した第1のシャッターが開状態であるときに第1の開口部21Aを通過した光、又は、前述した第1の光源から発せられて第1の開口部21Aを通過した光であってよい。同様に、第2の開口部21Bを通過する第2の光は、例えば、前述した第2のシャッターが開状態であるときに第2の開口部21Bを通過した光、又は、前述した第2の光源から発せられて第2の開口部21Bを通過した光であってよい。
【0147】
照明光学系20において、虹彩絞り21(第1の開口部21A及び第2の開口部21B)と、光スキャナー30と、ホールミラー45とは、互いに光学的に略共役な位置関係で配置されている。アライメントが適切な状態において、照明光学系20のこれらの要素は、前眼部Ea(例えば、瞳孔)に対して光学的に略共役な位置に配置される。
【0148】
虹彩絞り21及びスリット開口絞り22により生成された第1のスリット光は、リレーレンズ23によりリレーされて光スキャナー30のミラー面において結像するとともに、このミラー面によって偏向される。光スキャナー30により偏向された第1のスリット光は、リレーレンズ31によりリレーされてホールミラー45の反射部(ミラー部)において結像するとともに、この反射部によって偏向される。ホールミラー45により偏向された第1のスリット光は、対物レンズ46により収束光に変換されて被検眼Eに入射し、前眼部Ea(例えば、瞳孔)において一旦結像し、眼底Efに投射される。第1のスリット光が眼底Efに投射されている状態において撮影光学系40及び撮像装置50を用いた撮影を行うことにより、第1のスリット光に対応する第1のスリット光像が描出されている画像(前述した第1の画像)が得られる。
【0149】
同様に、虹彩絞り21及びスリット開口絞り22により生成された第2のスリット光が眼底Efに投射されている状態において撮影光学系40及び撮像装置50を用いた撮影を行うことにより、第2のスリット光に対応する第2のスリット光像が描出されている画像(前述した第2の画像)が得られる。
【0150】
照明光学系20のピントが眼底Efに合っている場合、図8に示すように、第1のスリット光L1及び第2のスリット光L2は、眼底Efの略同じ位置に投射される。換言すると、照明光学系20のピントが眼底Efに合っている場合、第1のスリット光L1と第2のスリット光L2との交差位置Cは眼底Ef上に配置される。
【0151】
一方、照明光学系20のピントが眼底Efに合っていない場合には、図9に示すように、第1のスリット光L1が投射される眼底Ef上の位置と、第2のスリット光L2が投射される眼底Ef上の位置とが異なる。換言すると、照明光学系20のピントが眼底Efに合っていない場合、第1のスリット光L1と第2のスリット光L2との交差位置Cは、眼底Efから離隔した位置に配置される。
【0152】
なお、図9の上段の図は、第1のスリット光L1と第2のスリット光L2との交差位置Cが眼底Efよりも前側(前眼部Ea側)に配置されている状態、つまり、眼底Efに対していわゆる「前ピン」の状態を表している。下段の図は、第1のスリット光L1と第2のスリット光L2との交差位置Cが眼底Efよりも後側に配置されている状態、つまり、眼底Efに対していわゆる「後ピン」の状態を表している。
【0153】
図8に示すように照明光学系20のピントが眼底Efに合っている場合、第1のスリット光L1と第2のスリット光L2とが眼底Efの略同じ位置に投射される。その場合に取得される眼底画像の例を図10に示す。図10の眼底画像には、第1のスリット光L1の眼底投影像である第1のスリット光像G1と、第2のスリット光L2の眼底投影像である第2のスリット光像G2とが、略同じ位置に描出されている。
【0154】
一方、図9に示すように照明光学系20のピントが眼底Efに合っていない場合、第1のスリット光L1と第2のスリット光L2とが眼底Efの互いに異なる位置に投射される。その場合に取得される眼底画像の例を図11に示す。
【0155】
図11の左側の眼底画像は、図9の上段の場合のような「前ピン」の場合に得られる画像である。この眼底画像には、第1のスリット光L1の眼底投影像である第1のスリット光像G1と、第2のスリット光L2の眼底投影像である第2のスリット光像G2とが互いに異なる位置に描出されている。より具体的には、この眼底画像のフレームの上下方向における中心位置よりも下側に第1のスリット光像G1が描出されており、且つ、上側に第2のスリット光像G2が描出されている。
【0156】
また、図11の右側の眼底画像は、図9の下段の場合のような「後ピン」の場合に得られる画像である。この眼底画像には、第1のスリット光L1の眼底投影像である第1のスリット光像G1と、第2のスリット光L2の眼底投影像である第2のスリット光像G2とが互いに異なる位置に描出されている。より具体的には、この眼底画像のフレームの上下方向における中心位置よりも上側に第1のスリット光像G1が描出されており、且つ、下側に第2のスリット光像G2が描出されている。
【0157】
このように、本例に係るフォーカス調整(オートフォーカス)は、既存のスリットスキャン方式の眼底撮影モダリティが備えているハードウェア要素を利用して実行されるため、既存の同種の眼科装置のような(複雑且つ大規模な)フォーカス調整専用ハードウェア要素を用いる必要がない。更に、本例に係るフォーカス調整によれば、眼底Efに対する撮影ユニット2のピントがずれている方向を特定することが可能である(つまり、フォーカス状態が前ピンであるか後ピンであるかを判別することが可能である)。加えて、詳細については後述するが、本例に係るフォーカス調整によれば、眼底Efに対して撮影ユニット2のピントがずれている量を求めることも可能である。
【0158】
詳細については後述するが、いくつかの態様では、第1のスリット光L1と第2のスリット光とを別々に眼底Efに投射することによって第1のスリット光像G1が描出された第1の画像と第2のスリット光像G2が描出された第2の画像とを取得し、これら2つの画像を比較することによってフォーカス状態に関するパラメータ(例えば、ピントのズレ方向及び/又はズレ量)を特定することができる。
【0159】
別のいくつかの態様では、特性(例えば、波長、強度(光量))が異なる第1のスリット光L1と第2のスリット光L2とを同時に眼底Efに投射することによって1つの画像を取得し、この画像における第1のスリット光像G1と第2のスリット光像G2との相対位置に基づいてフォーカス状態に関するパラメータ(例えば、ピントのズレ方向及び/又はズレ量)を特定することができる。なお、第1のスリット光L1と第2のスリット光とを別々に眼底Efに投射する場合において、特性が異なる第1のスリット光L1と第2のスリット光L2とを眼底Efに投射してもよい。
【0160】
フォーカス調整条件決定部422は、図8図11を参照して説明した上記原理に基づいてフォーカス調整条件(被検眼Eの視度データ)を決定する。フォーカス調整条件決定部422は、スリット光投射制御により被検眼Eの眼底Efに投射されたスリット光(例えば、第1のスリット光L1、第2のスリット光L2)の戻り光を検出した撮像装置50からの出力(例えば、第1の画像、第2の画像)に基づいてフォーカス調整条件を決定するように構成される。
【0161】
いくつかの態様では、フォーカス調整条件決定部422は、スリット光投射制御により被検眼Eの眼底Efに投射されたスリット光(例えば、第1のスリット光L1、第2のスリット光L2)の戻り光を検出した撮像装置50により生成された画像(例えば、第1の画像、第2の画像)中のスリット光像(例えば、第1のスリット光像G1、第2のスリット光像G2)の位置に基づいてフォーカス調整条件を決定するように構成されてよい。
【0162】
眼底画像中のスリット光像の位置を求める方法は任意である。いくつかの態様のフォーカス調整条件決定部422は、撮影ユニット2によるスリット光の投射位置の移動方向に対応する第1の方向に沿ったスリット光像の少なくとも一部の画像領域の輝度プロファイルに基づいてスリット光像の位置を決定する。
【0163】
いくつかの態様において、スリット開口絞り22のスリット22Aのスリット長方向はX方向に対応しており、スリット光の投射位置の移動方向(スキャン方向)はY方向である。撮影ユニット2により取得される眼底画像においてX方向に対応する方向を同じくX方向と呼び、Y方向に対応する方向も同じくY方向と呼ぶことにする。眼底画像に描出されるスリット光像の長手方向はX方向である。
【0164】
フォーカス調整条件決定部422は、まず、スリット光像の輝度プロファイルを生成する。この輝度プロファイルは、スリット光像の全体に対して定義されてもよいし、スリット光像の一部の画像領域に対して定義されてもよい。また、フォーカス調整条件決定部422は、輝度プロファイルを生成するための準備として、眼底画像の少なくとも一部にセグメンテーションを適用して眼底画像中のスリット光像を特定することによって、輝度プロファイル生成処理を適用する範囲を決定してもよい。フォーカス調整条件決定部422により生成される輝度プロファイルは、スキャン方向(実空間におけるY方向)に対応した第1の方向(眼底画像におけるY方向)における輝度の分布を表す。
【0165】
図12Aに示す眼底画像からに描出されているスリット光像Gの輝度プロファイルを生成する場合について説明する。図12Aにおいて、X方向(+X方向)は右方向であり、Y方向(+Y方向)は下方向であるとする。
【0166】
フォーカス調整条件決定部422は、まず、輝度プロファイルを生成するための解析領域Hを眼底画像に対して設定する(図12Bを参照)。前述したように、セグメンテーションを利用して解析領域Hを設定してもよいし、既定の位置に解析領域Hを設定してもよい。
【0167】
例示的な解析領域Hには、複数のピクセルがX方向及びY方向に(つまり、2次元的に)配列されている。換言すると、解析領域Hには、Y方向に沿ったピクセル列が複数個含まれており、これら複数のピクセル列がX方向に配列されている。フォーカス調整条件決定部422は、解析領域Hに2次元的に配列されている複数のピクセルの輝度値をX方向に加算することによって、Y方向に沿った輝度プロファイルを生成することができる。
【0168】
別のいくつかの態様では、Y方向に沿った線状の解析領域(1次元的な解析領域)を設定し、この1次元的な解析領域の輝度プロファイルを生成してもよい。この方法は簡便であるというメリットはあるものの、1次元的な解析領域にノイズが混入している場合にはその影響が輝度プロファイルにそのまま反映されるというデメリットがある。したがって、2次元的な解析領域(H)を用いる方法には、ノイズの影響を小さくすることができるという利点がある。また、2次元的な解析領域(H)を用いる方法によれば、スリット光像Gの輝度と他の画像領域の輝度との違い(一般的に、前者は大きく、後者は小さい)を強調することができるため、輝度プロファイルの品質(例えば、精度、確度、再現性)の向上を図ることが可能になる。
【0169】
スリット光像Gの輝度プロファイルの例を図12Cに示す。いくつかの態様において、フォーカス調整条件決定部422は、輝度プロファイルPの最大値(MAX)と最小値(MIN)とを求め、それらの中間(真ん中)の値THを求める:TH=(MAX-MIN)/2。フォーカス調整条件決定部422は、輝度プロファイルPと直線「輝度=TH」との交点を求める。このような交点は2つ存在する。2つの交点のY座標をY1及びY2とする。フォーカス調整条件決定部422は、特定された2つの交点のY座標Y1及びY2の中間(真ん中)の値Y(G)を求める:Y(G)=abs(Y1-Y2)/2。ここで、abs(α)は値αの絶対値を表す。本態様では、このようにして得られた値Y(G)が、スリット光像Gの位置(代表位置、重心位置)として採用される(図12Dを参照)。
【0170】
スリット光像の位置を求める方法は上記方法に限定されない。例えば、上記方法では、輝度プロファイルの最大値(MAX)と最小値(MIN)との中間の値TH(TH=(MAX-MIN)/2)を求めているが、より一般に、演算式「TH=(MAX-MIN)/R」を用いることができる。ここで、Rは、予め設定された実数、又は、輝度プロファイル(又はそれと同等の情報)に基づき設定された実数であってよい。
【0171】
また、いくつかの態様では、輝度プロファイルの曲線下面積(AUC)を考慮することによってスリット光像の位置を求めてもよい。例えば、輝度プロファイル全体の曲線下面積をAとしたとき、曲線下面積Aを所定の比率に分割するY座標を求め、このY座標をスリット光像の位置(代表位置、重心位置)として採用することができる。具体例として、輝度プロファイル全体の曲線下面積Aを1:1に分割するY座標をスリット光像として求めることができる。
【0172】
別のいくつかの態様では、値THは固定値であってもよい。この固定値THを決定する方法は任意である。例えば、固定値THは、臨床的に収集された多数のデータに統計演算を適用することによって求められてもよいし、模型眼を利用した測定で得られたデータに基づき求められてもよいし、レイトレーシングなどのコンピュータシミュレーションを利用して求められてもよいし、これらの任意の組み合わせによって求められてもよいし、別の手法を用いて求められてもよい。
【0173】
フォーカス調整条件決定部422は、このようにして取得されたスリット光像の位置情報に基づいてフォーカス調整条件を決定する。
【0174】
まず、スリット光像の位置(Y座標)からフォーカス調整条件(スリット開口絞り22の位置の調整量、フォーカスレンズ47の位置の調整量)を決定するために実行される処理の原理について、図13A及び図13Bを更に参照しつつ説明する。
【0175】
図13Aは、照明光学系により被検眼Eの眼底Efに投射される光の経路を表している。符号100は被検眼Eの光軸E0上にある所定のターゲット100を示す。符号110はターゲット100と被検眼Eとの間にある光学系を示し、この光学系110の焦点距離をFとする。被検眼Eの眼軸長をLとし、屈折力をDとする。
【0176】
ターゲット100から照射された光(平行光)120が光学系110を経由して被検眼Eに投射される場合を考える。被検眼Eに入射する光120の高さ(光軸E0からの距離)をhとする。被検眼Eに入射した光120は、眼球光学系(角膜、水晶体など)により屈折され、眼底Efにおける位置130に投射される。
【0177】
ここで、図2図4に示す光学系において、光120の高さhは、被検眼Eの瞳孔に対して光学的に略共役に配置される虹彩絞り21の2つの開口部21A及び21Bの間の距離の半分の値となる。
【0178】
被検眼Eが正視(0ディオプター)である場合、眼底Efにおける光120の投射位置130は眼底Efの中心(つまり、光軸E0上)に配置される。これに対し、被検眼Eが正視でない場合、眼底Efにおける光120の投射位置130は、光軸E0から距離Δだけ偏位した位置となる(偏位量Δ>0)。
【0179】
被検眼Eの屈折力Dに相当する眼底Efに対する共役点を符号140で示す。被検眼Eからこの共役点140までの距離をL´で示す。ここで、L´=1000/Dである。そうすると、図13Aから分かるようにΔ/L=h/L´であるから、Δ=L×h/L´となる。前述したように光120の高さhは虹彩絞り21により決定される固定値であるから、眼底Efにおける光120の投射位置130の被検眼Eの光軸E0に対する偏位量Δは、被検眼Eの屈折力D(つまり、被検眼Eと共役点140との間の距離L´)、及び、被検眼Eの眼軸長Lに依存して変化する。なお、ターゲット100の形状がリング状や弧状である場合においても同様に、眼底Efにおける光120の投射位置130が被検眼Eの光軸E0に対して偏位する量はΔで表される。
【0180】
図13Bは、被検眼Eの光軸E0に対してΔだけ偏位した眼底Ef上の位置に投影されたターゲット像(ターゲット100の投影像)を光軸E0と同軸に配置された撮影光学系で撮影する場合における光の経路を表している。符号160は撮像面(撮像装置50の撮像面)を示し、符号150は被検眼Eと撮像面160との間にある光学系を示す。この光学系150の焦点距離は、図13Aの光学系110のそれと同じくFとする。
【0181】
被検眼Eが正視である場合、眼底Efの投射位置130から出射した光170は、光学系150を経由し、撮像面160と光軸E0とが交差する位置において結像する。これに対し、被検眼Eが正視でない場合には、撮像面160における光170の結像位置は、光軸E0から距離Δ´だけ偏位した位置となる(偏位量Δ´>0)。このとき、光軸E0に沿った方向(Z方向)における結像位置も偏位する。
【0182】
図13Bから分かるようにΔ/L=Δ´/Fであるから、Δ´=F×Δ/Lとなる。上記のようにΔ=L×h/L´であるから、Δ´=F×h/L´となる。更に、L´=1000/Dであるから、Δ´=F×h×D/1000となる。
【0183】
したがって、特定の経線における被検眼Eの屈折力Dは次式により表される:D=(1000×Δ´)/(F×h)。ここで、Fは撮影光学系の焦点距離であり、hは虹彩絞り21の2つの開口部21A及び21Bの間の距離の半分の値であり、ともに既知である。よって、撮像面160における光170の偏位量Δ´を取得することで、特定の経線における被検眼Eの屈折力Dが得られる。
【0184】
本例に係る眼科装置1と同種の既存の眼科装置は、被検眼の屈折力と、フォーカス調整用光学素子(前述したフォーカス指標投影光学系、及びフォーカスレンズ)の調整量(移動距離)との間の関係を表す情報を予め有しており、この情報を参照することによって被検眼の屈折力に応じたフォーカス調整を行っている。
【0185】
同様に、いくつかの態様の眼科装置1は、被検眼の屈折力と、フォーカス調整用光学素子(図2図4に示す光学系においてはスリット開口絞り22及びフォーカスレンズ47)の調整量(移動距離)との間の関係を表す情報を予め有している。眼科装置1は、この情報を参照することによって、撮像装置50により生成された画像中のスリット光像の位置に基づいてフォーカス調整条件を決定することができる。このフォーカス調整条件は、スリット開口絞り22の移動方向及び移動量(又は、これらに対応する情報)と、フォーカスレンズ47の移動方向及び移動量(又は、これらに対応する情報)とを含んでいる。
【0186】
別のいくつかの態様の眼科装置1は、2つのスリット光像の相対位置(Y方向における間隔)と、フォーカス調整用光学素子の調整量との間の関係を表す情報を予め有している。この場合、眼科装置1は、この情報を参照することによって、撮像装置50により生成された画像中のスリット光像の位置に基づいてフォーカス調整条件を決定することができる。
【0187】
より一般に、本例に係る眼科装置1は、スリット光が投射されている眼底Efを撮影して生成された情報(典型的には、画像)から取得可能な任意の情報に基づいてフォーカス調整条件を決定するように構成されていてよい。
【0188】
フォーカス調整制御部423は、例えば上記のいずれかの要領でフォーカス調整条件決定部422により決定されたフォーカス調整条件に基づいてフォーカス調整ユニット3の制御(フォーカス調整制御)を実行する。本例のフォーカス調整制御は、フォーカス調整条件に含まれるスリット開口絞り22の移動方向及び移動量(又は、これらに対応する情報)に基づいて移動機構22Mを制御する処理と、フォーカス調整条件に含まれるフォーカスレンズ47の移動方向及び移動量(又は、これらに対応する情報)に基づいて移動機構47Mを制御する処理とを含んでいる。
【0189】
いくつかの態様では、スリット開口絞り22とフォーカスレンズ47とを単一の移動機構で駆動するように構成されていてよい。この場合、フォーカス調整条件決定部422は、1つのフォーカス調整条件を決定するように構成されていてよく、且つ、フォーカス調整制御部423は、この1つのフォーカス調整条件に基づいてこの単一の移動機構を制御するように構成されていてよい。
【0190】
上記の例示的な態様では、眼科装置1は、スリット光投射制御において、被検眼Eの眼底Efに投射されるスリット光を撮影ユニット2の光軸(アライメントが適切な状態では、撮影ユニット2の光軸Oは被検眼Eの光軸E0に略一致される)に対して所定距離(高さh)だけ離隔した位置(虹彩絞り21の開口部21A又は21B)から発するように撮影ユニット2の制御を行う。
【0191】
更に、眼科装置1は、フォーカス調整条件決定処理において、この所定距離(高さh)と、撮影ユニット2の撮像装置50により生成された画像におけるスリット光像の位置(偏位量Δ´)と、撮影ユニット2の焦点距離(F)とに基づいてフォーカス調整条件(スリット開口絞り22の移動方向及び移動量又はこれらに対応する情報、並びに、フォーカス調整条件に含まれるフォーカスレンズ47の移動方向及び移動量又はこれらに対応する情報)を決定する。
【0192】
そして、眼科装置1は、フォーカス調整条件決定処理により得られたフォーカス調整条件に基づいてフォーカス調整ユニット3(移動機構22M及び移動機構47M)の制御を行う。以上、実施形態に係るフォーカス調整のいくつかの非限定的な態様について説明した。
【0193】
次に、プロセッサ4の画像合成部430について説明する。画像合成部430は、2つ(又は3つ以上)のスリットスキャン画像を合成する処理(画像合成処理)を実行するように構成されている。画像合成処理の手法は任意の公知技術を利用したものであってよい。画像合成処理のいくつかの例を以下に説明する。以下の例では、2つのスリットスキャン画像(第1及び第2のスリットスキャン画像)を合成する場合について説明するが、3つ以上のスリットスキャン画像を合成する場合についても同様の手法を利用することが可能である。
【0194】
画像合成処理の例を説明する。本例の画像合成部430は、第1のスリットスキャン画像を複数の部分画像に分割する。これら複数の部分画像を第1の部分画像群と呼ぶ。同様に、画像合成部430は、第2のスリットスキャン画像を複数の部分画像に分割することによって第2の部分画像群を形成する。
【0195】
スリットスキャン画像を分割する処理の例について、図14を参照しながら説明する。符号700はスリットスキャン画像を示す。スリットスキャン画像700は、所定の寸法を有する2次元画像である。画像合成部430は、予め決められた寸法を有する格子状パターン(グリッド)によって、スリットスキャン画像700を縦横に配列された複数の矩形状(例えば正方形状)の領域(部分画像)に分割する。すなわち、スリットスキャン画像700は、格子状パターンが示す複数の区画にそれぞれ対応する複数の部分画像に分割される。
【0196】
格子状パターンの間隔(区画の寸法、部分領域の寸法)は、任意に設定されてよい。例えば、格子状パターンの間隔は、分割されるスリットスキャン画像の寸法に基づき設定されてもよいし、デフォルト値であってもよいし、ユーザー又はコンピュータ(例えば、プロセッサ4)により設定されてもよい。
【0197】
格子状パターンを用いた分割処理をスリットスキャン画像700に適用することにより、複数の部分画像710(i,j)が得られる。ここで、(i,j)は、X方向及びY方向に配列された複数の部分画像の位置を示すインデックスであり、「i」はX方向の位置を示す正の整数(又は、非負の整数)であり、「j」はY方向の位置を示す正の整数(又は、非負の整数)である。部分画像710(i,j)は、スリットスキャン画像700を分割して得られた複数の部分画像のうち、X方向における順序が第i番目、且つ、Y方向における順序が第j番目の部分画像である。このようにして得られた複数の部分画像710(i,j)を、スリットスキャン画像700の部分画像群と呼ぶ。
【0198】
本態様では、被検眼Eの眼底Efに対して複数回のスリットスキャンが適用されて複数のスリットスキャン画像が得られる。画像合成部430は、複数のスリットスキャン画像のそれぞれに画像分割処理を適用することによって複数の部分画像群を取得する。更に、画像合成部430は、複数の部分画像群の間の対応付け処理を行う。この対応付け処理は、位置に基づく対応付けである。なお、複数のスリットスキャン画像に適用される画像分割処理は、同じパラメータ(例えば、同じ格子状パターン)を用いた処理であってもよいし、異なるパラメータを用いた処理であってもよい。画像分割処理のための前処理として、スリットスキャン画像間の位置の調整(レジストレーション)や寸法の調整を行ってもよい。
【0199】
いくつかの例では、画像合成部430は、必要に応じて上記前処理を行った後、第1のスリットスキャン画像に画像分割処理を適用して第1の部分画像群を取得し、且つ、第2のスリットスキャン画像に画像分割処理を適用して第2の部分画像群を取得する。更に、画像合成部430は、第1の部分画像群と第2の部分画像群との間の対応付け処理を行う。第1のスリットスキャン画像と第2のスリットスキャン画像とは等しい寸法を有し、且つ、第1の部分画像群及び第2の部分画像群は同じ格子状パターンを用いた画像分割処理によって取得されたものとする。また、第1の部分画像群は複数の部分画像720(i,j)からなり、第2の部分画像群は複数の部分画像730(i,j)からなり、複数の部分画像720(i,j)の個数と複数の部分画像730(i,j)の個数とは等しいものとする。この場合、画像合成部430は、複数の部分画像720(i,j)と複数の部分画像730(i,j)との間の対応付け処理を、同じインデックスを有する部分画像同士を対応付けることによって行う。すなわち、各インデックス(i,j)について、第1の部分画像群における部分画像720(i,j)と、第2の部分画像群における部分画像730(i,j)とが対応付けられる。
【0200】
部分画像群間の対応付け処理の後、画像合成部430は、各部分画像のコントラスト値を算出する。例えば、画像合成部430は、部分画像に含まれる複数の画素の輝度の値を比較して最大値(最大輝度BMax)及び最小値(最小輝度BMin)を特定し、最大輝度BMaxと最小輝度BMinとの差(BMax-BMin)を最大輝度と最小輝度との和(BMax+BMin)で除算した値を算出する。このようにして算出された値(BMax-BMin)/(BMax+BMin)が、この部分画像のコントラスト値として用いられる。これにより、各スリットスキャン画像の各部分画像に対してコントラスト値が割り当てられる。
【0201】
次に、画像合成部430は、上記の対応付け処理によって対応付けられた2つ(又は、3つ以上)の部分画像のコントラスト値に基づいて、これら部分画像を合成するための重みの値を決定する。そして、画像合成部430は、決定された重みに基づいて部分画像同士の合成を行うことにより、2つ(又は、3つ以上)のスリットスキャン画像の合成画像を生成する。
【0202】
いくつかの態様では、コントラスト値が大きい部分画像に対して、大きい値の重みが割り当てられる。これにより、フォーカス状態が良好な部分画像の合成比率を大きくすることができる。また、いくつかの態様では、所定の閾値よりも小さいコントラスト値を有する部分画像の重みがゼロに設定される。これにより、フォーカス状態が極めて不良な部分画像を除外して合成画像を作成することができる。なお、重みの決定方法はこれらに限定されるものではない。
【0203】
以上に説明した画像合成処理は非限定的な例であり、画像合成部430は、2つ以上の画像を合成するための任意の処理を実行可能に構成されていてよい。
【0204】
次に、図6Bに示す投射目標位置決定部424について説明する。投射目標位置決定部424は、被検眼Eの眼底Efにスリットスキャンを適用して生成されたスリットスキャン画像に基づいて、更なるスリットスキャンのために実行されるフォーカス調整におけるスリット光の投射目標位置を決定するように構成されている。
【0205】
眼科装置1は、投射目標位置決定部424により決定された投射目標位置をユーザーが変更できるように構成されてもよい。例えば、プロセッサ4は、投射目標位置決定部424により決定された投射目標位置を、この投射目標位置の決定に使用されたスリットスキャン画像とともに、ユーザーインターフェイス6の表示デバイスに表示させる。ユーザーは、ユーザーインターフェイス6の操作デバイスを用いて投射目標位置を移動するための操作を行うことができる。
【0206】
投射目標位置決定部424が実行する処理の例を説明する。本例の投射目標位置決定部424は、まず、被検眼Eの眼底Efのスリットスキャン画像を複数の部分画像に分割し、各部分画像のコントラスト値を算出し、複数の部分画像について算出された複数のコントラスト値に基づいて投射目標位置を決定するように構成されている。
【0207】
スリットスキャン画像を複数の部分画像に分割する処理は、任意の手法で実行されてよく、例えば、図14を参照して説明した上記手法(格子状パターンを用いた画像分割処理)を用いることができる。
【0208】
部分画像のコントラスト値を算出する処理は、任意の手法で実行されてよく、例えば、上記手法と同様に、部分画像における最大輝度と最小輝度との差を最大輝度と最小輝度との和で除算した値をコントラスト値として用いることができる。
【0209】
複数の部分画像に対応する複数のコントラスト値に基づいて投射目標位置を決定する処理は、任意の手法で実行されてよく、例えば、これら複数のコントラスト値のうちの最小値に対応する部分画像を特定し、この最小値に対応する部分画像の位置を投射目標位置として用いることができる。
【0210】
投射目標位置決定部424が投射目標位置を決定するために実行する処理は、コントラスト値を利用する上記態様に限定されない。別の態様において、投射目標位置決定部424は、スリットスキャン画像の空間周波数分布を求め、この空間周波数分布において空間周波数の低い位置を特定し、この低空間周波数位置を投射目標位置に設定するように構成されていてもよい。更に別の態様において、投射目標位置決定部424は、スリットスキャン画像から血管分布を求め、この血管分布において血管が不連続な位置を特定し、この血管不連続位置を投射目標位置に設定するように構成されていてもよい。更に別の態様において、投射目標位置決定部424は、スリットスキャン画像を被検眼Eの眼底Efの過去画像と比較して相違箇所を特定し、この相違箇所を投射目標位置に設定するように構成されていてもよい。更に別の態様において、投射目標位置決定部424は、スリットスキャン画像を予め作成された正常眼底モデルと比較して相違箇所を特定し、この相違箇所を投射目標位置に設定するように構成されていてもよい。ここに説明したいくつかの手法は、投射目標位置を決定する処理の非限定的な例であり、これら以外の任意の手法を用いることが可能である。
【0211】
本実施形態に係る眼科装置1が実行する動作について、いくつかの非限定的な例を説明する。
【0212】
眼科装置1の動作の第1の例を図15に示す。
【0213】
まず、被検眼Eの眼底Efの撮影準備として、眼科装置1は、眼底Efに対する撮影ユニット2のアライメントを実行する(S1)。アライメントによって、眼底Efを撮影するための適切な位置に撮影ユニット2の光学系が配置される。アライメントで達成された眼底Efと撮影ユニット2との間の相対位置(適切なアライメント状態)を維持するためにトラッキングを行ってもよい。
【0214】
アライメントの完了後、眼科装置1は、本動作例に係る動作モード(合成画像生成モード)での撮影を開始する(S2)。本動作例の合成画像生成モードでは、フォーカス調整及びスリットスキャンの組み合わせが繰り返し実行される。
【0215】
合成画像生成モードにおいて、眼科装置1は、まず、眼底Efに対する第1回目のフォーカス調整を実行する(S3)。第1回目のフォーカス調整は、例えば、眼底Efの中心位置を目標として行われる。
【0216】
第1回目のフォーカス調整の完了後、眼科装置1は、眼底Efに対して第1回目のスリットスキャンを適用する(S4)。第1回目のスリットスキャンで生成されたスリットスキャン画像は、メモリ5に保存される(S5)。
【0217】
ステップS3~S5は、ステップS6において眼底Efの撮影(フォーカス調整及びスリットスキャンの組み合わせの繰り返し)は完了したとユーザー又はプロセッサ4により判断されるまで、繰り返し実行される(S6:No)。なお、ステップS1の後にトラッキングを行わない場合には、アライメントを再度行ってからステップS3~S5を行うようにしてもよい。
【0218】
繰り返しがN回行われる場合(Nは2以上の整数)、第n回目のフォーカス調整の目標位置と、第n回目のフォーカス調整の目標位置とは、互いに相違している。ここで、n及びnは、1以上N以下の範囲([1、N])に属する互いに異なる整数である(つまり、1≦n≦N、1≦n≦N、n≠n)。このように、本動作例のN回のスリットスキャンは、眼底Efにおいて互いに異なる複数の位置にそれぞれピントを合わせた状態で行われる。これにより、ステップS3~S5の繰り返し回数に等しい個数のスリットスキャン画像が取得され、これらスリットスキャン画像は、互いに異なる複数のフォーカス位置(眼底Efにおける複数の位置)にそれぞれ対応している。なお、繰り返し回数Nは、予め設定されていてもよいし、動作中にユーザー又は眼科装置1によって決定されてもよい。
【0219】
ステップS6において撮影は完了したと判断されると(S6:Yes)、眼科装置1は、画像合成部430により、ステップS3~5の繰り返しによって取得された複数のスリットスキャン画像を合成する(S7)。以上で、本動作例に係る処理は終了である(エンド)。本動作例で生成された合成画像は、例えば、メモリ5に保存され、別の記憶装置に保存され、ユーザーインターフェイス6の表示デバイスに表示され、別のデバイスにより出力され、別の装置に送信され、プロセッサ4により加工され、別のプロセッサにより加工される。
【0220】
第1の動作例によれば、フォーカス調整の目標となる位置(フォーカス調整のためのスリット光の投射目標位置)を変化させつつ複数回のスリットスキャンを眼底Efに適用し、それにより取得された複数のスリットスキャン画像の合成画像を生成することができるので、眼底Efの撮影野(スリットスキャンの適用領域)の広い範囲(例えば、撮影野全体)に対してピントの合った画像を生成することができる。
【0221】
更に、第1の動作例は、フォーカス調整の目標となる位置を光スキャナー30によって移動する新規なオートフォーカス手法を用いており、撮影野内の所望の位置を目標としてフォーカス調整を行うことが可能であるから、眼底Efの所望の位置にピントの合ったスリットスキャン画像及び合成画像を取得することができる。
【0222】
加えて、第1の動作例は、この新規なオートフォーカス手法のみを用いているので、装置構成の複雑化を招くことなく、撮影野の広い範囲にピントの合った画像を取得することが可能である。しかも、この新規なオートフォーカス手法は、スリットスキャンに使用されるハードウェアを用いて行われるものであるから、装置構成の更なる簡略化を図ることが可能である。
【0223】
第1の動作例により達成されるこれらの効果は、以下に説明する各種の動作例においても奏されるものである。
【0224】
眼科装置1の動作の第2の例を図16に示す。なお、後述する第3の動作例(図17)及び第4の動作例(図18)は、この第2の動作例の変形である。
【0225】
第2の動作例では、まず、第1の動作例のステップS1~S4と同様に、眼科装置1は、アライメント(S11)を実行した後に合成画像生成モードでの撮影を開始し(S12)、被検眼Eの眼底Efに対する第1回目のフォーカス調整(S13)及び第1回目のスリットスキャン(S14)を実行する。
【0226】
次に、眼科装置1は、ステップS14のスリットスキャンで生成されたスリットスキャン画像を、ユーザーインターフェイス6の表示デバイスに表示する(S15)。
【0227】
いくつかの態様では、ユーザーが、表示されたスリットスキャン画像を確認し、同じフォーカス位置でのスリットスキャンを再度行うか否かを判断し、ユーザーインターフェイス6の操作デバイスを用いてその判断の結果を入力する(S16)。この判断は、対応するフォーカス位置(例えば、眼底Efの中心)にピントが合っているか否かの評価を含んでいてよい。
【0228】
別のいくつかの態様では、再スキャンを行うか否かをプロセッサ4が判定する(S16)。この判定処理は、任意のフォーカス状態評価方法を用いて実行されてよい。例えば、プロセッサ4は、対応するフォーカス位置を含む画像領域に対して前述のコントラスト値を用いた評価方法及び/又は前述の空間周波数を用いた評価方法(及び/又は別の評価方法)を適用することによって、対応するフォーカス位置におけるフォーカス状態の評価値を算出する処理と、この評価値の大きさに基づき再スキャンを行うか否かを決定する処理とを実行するように構成されてよい。
【0229】
自動判定の別の例として、プロセッサ4は、機械学習を用いて再スキャンを行うか否か判定するように構成されてよい。いくつかの例では、フォーカス状態の評価結果を示すラベルが付された多数の画像を含む学習データ(教師データ、訓練データ)と、ニューラルネットワークなどの数理モデルとが準備され、学習データを用いた機械学習を数理モデルに適用して判定モデルが構築される。この判定モデルは、画像(スリットスキャン画像)を入力として受け付けて、フォーカス状態の評価結果(又は、それに基づき導出される、再スキャンを行うか否かの判定結果)を出力として生成するように構成されている。
【0230】
別のいくつかの態様では、プロセッサ4は、上記と同様の判定処理を実行し、この判定処理の結果をユーザーインターフェイス6の表示デバイスに表示させる。このとき、プロセッサ4は、この判定処理の対象であるスリットスキャン画像を更に表示させてもよい。ユーザーは、表示された情報を参照して再スキャンを判断し、ユーザーインターフェイス6の操作デバイスを用いてその判断の結果を入力する(S16)。
【0231】
ステップS16において再スキャンを行うと判定された場合(S16:Yes)、ステップS13~S16が再度実行される。なお、ステップS11の後にトラッキングを行わない場合には、アライメントを再度行ってからステップS13~S16を行うようにしてもよい。
【0232】
ステップS16において再スキャンを行わないと判定された場合(S16:No)、このフォーカス位置でのスリットスキャンは終了となり、スリットスキャン画像がメモリ5に保存される(S17)。
【0233】
最後に実行されたスリットスキャンで撮影完了でない場合(S18:No)、処理はステップS19に移行する。一方、最後に実行されたスリットスキャンで撮影完了である場合(S18:Yes)、処理はステップS20に移行する。
【0234】
ステップS18で撮影完了でないと判断された場合(S18:No)、ユーザー又はプロセッサ4(投射目標位置決定部424)は、次のスリットスキャンに適用されるフォーカス目標位置を指定する(S19)。続いて、眼科装置1は、ステップS19で指定されたフォーカス目標位置に基づくフォーカス調整を実行し(S13)、スリットスキャンを実行する(S14)。更に、眼科装置1は、ステップS15~S18(場合によっては、ステップS13及びS14も)を実行する。ステップS13~S19の一連の処理は、ステップS18で撮影完了と判定されるまで繰り返される(S18:Yes)。なお、ステップS11の後にトラッキングを行わない場合には、アライメントを再度行ってからステップS13~S19を行うようにしてもよい。
【0235】
ステップS18で撮影完了と判定されると(S18:Yes)、プロセッサ4(画像合成部430)は、ステップS13~19の繰り返しによって取得された複数のスリットスキャン画像を合成する(S20)。
【0236】
プロセッサ4は、ステップS20で生成された合成画像をユーザーインターフェイス6の表示デバイスに表示させる(S21)。ユーザー又はプロセッサ4は、この合成画像の品質を評価する(S22)。この画像品質評価処理は、例えば、複数回のフォーカス調整に対応する複数のフォーカス位置にピントが合っているか否かを判定する処理を含んでいてよい。
【0237】
合成画像の品質は良好でないと評価された場合(S22:No)、ステップS13~S22の一連の処理が再度実行される。なお、ステップS11の後にトラッキングを行わない場合には、アライメントを再度実行した後にステップS13~S22を実行するようにしてもよい。
【0238】
合成画像の品質は良好であると評価された場合(S22:Yes)、この合成画像がメモリ5に保存される(S23)。以上で、本動作例に係る処理は終了である(エンド)。本動作例で生成された合成画像は、例えば、別の記憶装置に保存され、ユーザーインターフェイス6の表示デバイスに表示され、別のデバイスにより出力され、別の装置に送信され、プロセッサ4により加工され、別のプロセッサにより加工される。
【0239】
第2の動作例によれば、第1の動作例に係る効果に加えて、各フォーカス位置にピントが合ったスリットスキャン画像を確実に取得することができ、更に、そのような複数のスリットスキャン画像の合成画像を取得することが可能である。したがって、眼底Efの撮影野(スリットスキャンの適用領域)の広い範囲(例えば、撮影野全体)に対してピントの合った画像を確実にすることが可能である。
【0240】
眼科装置1の動作の第3の例を図17に示す。第3の動作例は、第2の動作例の1つの変形であり、第2の動作例のステップS18において「No」と判断された場合に、プロセッサ4(投射目標位置決定部424)が、次のスリットスキャンのためのフォーカス調整におけるフォーカス目標位置の候補を決定する(S25)。
【0241】
更に、第3の動作例では、プロセッサ4は、ステップS25で決定されたフォーカス目標位置の候補を示す情報を、スリットスキャン画像とともに、ユーザーインターフェイス6の表示デバイスに表示させる(S26)。
【0242】
ステップS26で実行される情報表示の態様の1つの例を図19に示す。本例では、被検眼Eの眼底Efのスリットスキャン画像800に、フォーカス目標位置の候補を示す画像810がオーバーレイ表示されている。なお、ステップS26で実行される情報表示の態様は本例に限定されるものではなく、任意であってよい。
【0243】
第3の動作例によれば、第1の動作例に係る効果及び第2の動作例に係る効果に加えて、フォーカス目標位置の候補を眼科装置1がユーザーに提供することによって、次のフォーカス調整におけるフォーカス目標位置をユーザーが決定する作業を支援することが可能である。
【0244】
眼科装置1の動作の第4の例を図18に示す。第4の動作例は、第2の動作例の1つの変形であり、第2の動作例のステップS18において「No」と判断された場合に、プロセッサ4(投射目標位置決定部424)が、次のスリットスキャンのためのフォーカス調整におけるフォーカス目標位置を決定する(S28)。なお、フォーカス目標位置の候補を決定する第3の動作例に対し、第4の動作例は、フォーカス目標位置を決定する点において相違している。
【0245】
プロセッサ4は、ステップS25で決定されたフォーカス目標位置を示す情報を、スリットスキャン画像とともに、ユーザーインターフェイス6の表示デバイスに表示させてもよい。
【0246】
第4の動作例によれば、第1の動作例に係る効果及び第2の動作例に係る効果に加えて、フォーカス目標位置の決定を自動化することが可能である。
【0247】
本実施形態に係る眼科装置1のいくつかの非限定的な特徴について説明する。
【0248】
本実施形態の眼科装置1は、プロセッサ4と、撮影ユニット2と、フォーカス調整ユニット3とを含んでいる。撮影ユニット2は、被検眼Eの眼底Efに対するスリット光の投射位置を光スキャナー30によって移動しつつ眼底Efの撮影を行うスリットスキャンをプロセッサ4の制御の下に実行する。フォーカス調整ユニット3は、撮影ユニット2のフォーカス調整をプロセッサ4の制御の下に実行する。
【0249】
プロセッサ4は、撮影制御(撮影制御部410、投射制御部421)と、条件決定処理(フォーカス調整条件決定部422)と、フォーカス調整制御(フォーカス調整制御部423)と、スリットスキャン制御(撮影制御部410)と、画像合成処理(画像合成部430)とを実行する。
【0250】
撮影制御において、プロセッサ4は、被検眼Eの眼底Efの第1の位置に向けてスリット光を投射しつつ第1の撮影を行うように撮影ユニット2を制御し、且つ、第1の位置と異なる第2の位置に向けてスリット光を投射しつつ第2の撮影を行うように撮影ユニット2を制御する。
【0251】
条件決定処理において、プロセッサ4は、第1の撮影で取得された第1の画像に基づいて第1のフォーカス調整条件を決定し、且つ、第2の撮影で取得された第2の画像に基づいて第2のフォーカス調整条件を決定する。
【0252】
フォーカス調整制御において、プロセッサ4は、第1のフォーカス調整条件に基づく第1のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニット3を制御し、且つ、第2のフォーカス調整条件に基づく第2のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整3ユニットを制御する。
【0253】
スリットスキャン制御において、プロセッサ4は、第1のフォーカス調整で達成された第1のフォーカス状態の下に第1のスリットスキャンを行うように撮影ユニット2を制御し、且つ、第2のフォーカス調整で達成された第2のフォーカス状態の下に第2のスリットスキャンを行うように撮影ユニット2を制御する。
【0254】
画像合成処理において、プロセッサ4は、第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像と、第2のスリットスキャンで取得された第2のスリットスキャン画像とを合成する。
【0255】
換言すると、プロセッサ4は、被検眼Eの眼底Efの第1の位置に向けてスリット光を投射しつつ第1の撮影を行うように撮影ユニット2を制御し、第1の撮影で取得された第1の画像に基づいて第1のフォーカス調整条件を決定し、第1のフォーカス調整条件に基づく第1のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニット3を制御し、第1のフォーカス調整で達成された第1のフォーカス状態の下に第1のスリットスキャンを行うように撮影ユニット2を制御する。更に、プロセッサ4は、第1の位置と異なる第2の位置に向けてスリット光を投射しつつ第2の撮影を行うように撮影ユニット2を制御し、第2の撮影で取得された第2の画像に基づいて第2のフォーカス調整条件を決定し、第2のフォーカス調整条件に基づく第2のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整3ユニットを制御し、第2のフォーカス調整で達成された第2のフォーカス状態の下に第2のスリットスキャンを行うように撮影ユニット2を制御する。加えて、プロセッサ4は、第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像と、第2のスリットスキャンで取得された第2のスリットスキャン画像とを合成する。
【0256】
本実施形態の眼科装置1のプロセッサ4(投射目標位置決定部424)は、第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像に基づいて、第1のフォーカス調整の目標位置である第1の位置とは異なる眼底Efにおける第3の位置を決定する位置決定処理を実行するように構成されていてよい。更に、第2のフォーカス調整の目標位置である第2の位置は、この第3の位置に基づいて決定されてよい。
【0257】
本実施形態の眼科装置1のプロセッサ4(投射目標位置決定部424)は、位置決定処理において、第1のスリットスキャン画像を複数の部分画像に分割し、複数の部分画像のそれぞれのコントラスト値を算出し、複数の部分画像について算出された複数のコントラスト値に基づいて第3の位置を決定するように構成されていてよい。
【0258】
本実施形態の眼科装置1のプロセッサ4(投射目標位置決定部424)は、位置決定処理において、第1のスリットスキャン画像を分割して得られた複数の部分画像に対応する複数のコントラスト値のうちの最小値に対応する部分画像を特定し、この最小値に対応する部分画像の位置を第3の位置に設定するように構成されていてよい。
【0259】
本実施形態の眼科装置1のプロセッサ4(投射目標位置決定部424)は、位置決定処理において、第1のスリットスキャン画像を分割して得られた複数の部分画像のそれぞれについて、その部分画像における最大輝度と最小輝度との差を最大輝度と最小輝度との和で除算した値を求めて、その部分画像のコントラスト値に設定するように構成されていてよい。
【0260】
本実施形態の眼科装置1のプロセッサ4(画像合成部430)は、画像合成処理において、第1のスリットスキャン画像を第1の部分画像群に分割し、第2のスリットスキャン画像を第2の部分画像群に分割し、第1の部分画像群と第2の部分画像群との間の対応付けを行い、第1の部分画像群のうちの第1の部分画像のコントラスト値と第1の部分画像に対応する第2の部分画像群のうちの第2の部分画像のコントラスト値とに基づいて第1の部分画像に対応する第1の重みと第2の部分画像に対応する第2の重みとを算出し、第1の重み及び第2の重みに基づいて第1の部分画像と第2の部分画像とを合成するように構成されていてよい。
【0261】
本実施形態の眼科装置1のプロセッサ4(投射目標位置決定部424)は、位置決定処理において、第1のスリットスキャン画像の空間周波数分布を求め、この空間周波数分布において空間周波数の低い位置を第3の位置に設定するように構成されていてよい。
【0262】
本実施形態の眼科装置1のプロセッサ4(投射目標位置決定部424)は、位置決定処理において、第1のスリットスキャン画像から血管分布を求め、この血管分布において血管が不連続な位置を第3の位置に設定するように構成されていてよい。
【0263】
本実施形態の眼科装置1のプロセッサ4(投射目標位置決定部424)は、位置決定処理において、第1のスリットスキャン画像を眼底Efの過去画像と比較して相違箇所を特定し、この相違箇所を第3の位置に設定するように構成されていてよい。
【0264】
本実施形態の眼科装置1のプロセッサ4(投射目標位置決定部424)は、位置決定処理において、第1のスリットスキャン画像を予め作成された正常眼底モデルと比較して相違箇所を特定し、この相違箇所を第3の位置に設定するように構成されていてよい。
【0265】
本実施形態の眼科装置1は、ユーザーインターフェイス6を更に含んでいてよい。更に、プロセッサ4は、位置決定処理において、眼底Efの画像と第3の位置を示す情報とを表示装置(例えば、ユーザーインターフェイス6の表示デバイス)に表示させ、ユーザーインターフェイス6を用いて指定された眼底Efの画像中の位置を第2の位置に設定するように構成されていてよい。
【0266】
本実施形態の眼科装置1のプロセッサ4(投射目標位置決定部424)は、位置決定処理において、第3の位置をそのまま第2の位置に設定するように構成されていてよい。
【0267】
本実施形態の眼科装置1のプロセッサ4(撮影制御部410、投射制御部421)は、撮影制御において、予め設定された第1の位置に向けてスリット光を投射しつつ第1の撮影を行うように撮影ユニット2を制御し、且つ、予め設定された第2の位置に向けてスリット光を投射しつつ第2の撮影を行うように撮影ユニット2を制御するように構成されていてよい。
【0268】
本実施形態の眼科装置1により実行されるフォーカス調整(オートフォーカス)のいくつかの非限定的な具体例を以下に説明する。
【0269】
眼科装置1が実行可能なオートフォーカスのための動作の1つの例を図20に示す。
【0270】
オートフォーカス動作の前に、眼科装置1は、被検眼Eの眼底Efに対する撮影ユニット2のアライメントを実行する(S41)。アライメントの完了後、眼科装置1は、オートフォーカスを開始する(S42)。なお、ステップS41で達成された適切なアライメント状態を維持するためにトラッキングを行ってもよい。
【0271】
本動作例のオートフォーカスでは、まず、投射制御部421が、光スキャナー30のミラー面を所定位置に配置する(S43)。この所定位置は、例えば、ニュートラル位置(0度位置)であってよい。0度位置は、例えば、光スキャナー30のミラー面の可動範囲の中心位置であり、眼底Efの中心にピントを合わせる場合に採用されるミラー面の角度方向(角度位置)である。この所定位置は0度位置に限定されず、任意の位置であってよい。例えば、この所定位置は、投射目標位置決定部424により決定された位置、又は、ユーザーにより指定された位置であってよい。光スキャナー30のミラー面は、所定位置に対応する角度位置に配置される。本動作例のオートフォーカスは、光スキャナー30のミラー面の向きを固定した状態で、つまり、光スキャナー30の動作を停止した状態で、実行される。
【0272】
次に、投射制御部421は、虹彩絞り21の2つの開口部21A及び21Bのうちの一方(例えば、第1の開口部21A)のみから照明光を出力するように光源10及び/又は照明光学系20を制御する。第1の開口部21Aから出射された照明光の一部は、スリット開口絞り22のスリット22Aを通過してスリット光(第1のスリット光)に変換される。第1のスリット光は、リレーレンズ23によりリレーされ、停止状態の光スキャナー30により偏向され、リレーレンズ31によりリレーされ、ホールミラー45のミラー部により偏向され、対物レンズ46により屈折されて被検眼Eに入射し、眼底Efに投射される。撮影光学系40及び撮像装置50は、第1のスリット光が投射されている状態の眼底Efを撮影して画像を生成する(本動作例では第1の撮影と呼ぶ:S44)。
【0273】
本動作例では、ステップS44の第1の撮影で得られた画像を第1の画像と呼ぶ。第1の画像の2つの例を図21に示す。図21の左側の眼底画像200Aは、フォーカス状態が前ピンであるときに得られる画像の例であり、眼底画像200AのY方向の中心位置よりも下方の位置にスリット光像G1(第1のスリット光像G1)が描出されている。また、図21の右側の眼底画像200Bは、フォーカス状態が後ピンであるときに得られる画像の例であり、眼底画像200BのY方向の中心位置よりも上方の位置にスリット光像G1(第1のスリット光像G1)が描出されている。
【0274】
次に、投射制御部421は、虹彩絞り21の2つの開口部21A及び21Bのうちの他方(例えば、第2の開口部21B)のみから照明光を出力するように光源10及び/又は照明光学系20を制御する。第2の開口部21Bから出射された照明光の一部は、スリット開口絞り22のスリット22Aを通過してスリット光(第2のスリット光)に変換される。第2のスリット光は、第1のスリット光と同じ経路を通じて眼底Efに投射される。撮影光学系40及び撮像装置50は、第2のスリット光が投射されている状態の眼底Efを撮影して画像を生成する(本動作例では第2の撮影と呼ぶ:S45)。
【0275】
本動作例では、ステップS45の第2の撮影で得られた画像を第2の画像と呼ぶ。第2の画像の2つの例を図22に示す。図22の左側の眼底画像210Aは、フォーカス状態が前ピンであるときに得られる画像の例であり、眼底画像210AのY方向の中心位置よりも上方の位置にスリット光像G2(第2のスリット光像G2)が描出されている。また、図22の右側の眼底画像210Bは、フォーカス状態が後ピンであるときに得られる画像の例であり、眼底画像210BのY方向の中心位置よりも下方の位置にスリット光像G2(第2のスリット光像G2)が描出されている。
【0276】
本動作例では第1の撮影の後に第2の撮影を実行しているが、別の動作例では第2の撮影の後に第1の撮影を実行してもよい。また、オートフォーカスのために実行される撮影の回数は2回(第1の撮影及び第2の撮影)に限定されず、3回以上であってもよい。3回以上の撮影を行う場合においても本動作例と同様の処理によってオートフォーカスを実行できることは、当業者であれば理解することができるであろう。また、後述のように、オートフォーカスのために実行される撮影の回数は1回のみであってもよい。
【0277】
ステップS44で取得された第1の画像及びステップS45で取得された第2の画像は、フォーカス調整条件決定部422に入力される。
【0278】
フォーカス調整条件決定部422は、随意的な処理として、第1の画像と第2の画像との間のレジストレーション(位置合わせ)を実行してもよい。このレジストレーションは、例えば、第1の画像中の特徴点を検出する処理と、第2の画像中の特徴点を検出する処理と、第1の画像中の特徴点と第2の画像中の特徴点とを基準として第1の画像と第2の画像との間の位置ズレ量を求める処理と、この位置ズレ量を打ち消すように第1の画像と第2の画像との間の相対位置を調整する処理とを含む。レジストレーションの基準として用いられる特徴点は、予め決定された眼底Efのランドマークであり、例えば、視神経乳頭、黄斑、血管などの組織であってもよいし、病変部、治療痕などであってもよい。このようなレジストレーションが施された第1の画像及び第2の画像に対してフォーカス調整条件決定処理を適用することができる。なお、第1の画像と第2の画像との間の位置ズレ量を求める処理までを実行し、この位置ズレ量をフォーカス調整条件決定処理に反映させるようにしてもよい。
【0279】
以下、フォーカス調整条件決定部422が実行する処理の具体例として、フォーカス状態が前ピンである場合について説明する。フォーカス状態が後ピンである場合においても同様の処理を実行することができる。
【0280】
図23を更に参照する。図23の左側の眼底画像200Aは、フォーカス状態が前ピンである場合にステップS44の第1の撮影で取得された画像の例であり、左側の眼底画像210Aは、フォーカス状態が前ピンである場合にステップS45の第2の撮影で取得された画像の例である。
【0281】
フォーカス調整条件決定部422は、ステップS44の第1の撮影で取得された眼底画像200Aを解析して第1のスリット光像G1を検出し、検出された第1のスリット光像G1の位置(Y(G1))を求める(S46)。同様に、フォーカス調整条件決定部422は、ステップS45の第2の撮影で取得された眼底画像210Aを解析して第2のスリット光像G2を検出し、検出された第2のスリット光像G2の位置(Y(G2))を求める(S47)。
【0282】
次に、フォーカス調整条件決定部422は、ステップS46で求められた第1のスリット光像G1の位置と、ステップS47で求められた第2のスリット光像G2の位置との間の相対位置に基づいて、被検眼Eの屈折力を推定する(S48)。
【0283】
次に、フォーカス調整条件決定部422は、ステップS48で求められた被検眼Eの屈折力の推定値に基づいて、スリット開口絞り22の移動条件(移動方向及び移動量)と、フォーカスレンズ47の移動条件(移動方向及び移動量)とを決定する(S49)。
【0284】
ステップS49で決定される移動条件に含まれる移動方向は、第1のスリット光像G1と第2のスリット光像G2との位置関係に基づき決定される。本例では、第1のスリット光像G1が第2のスリット光像G2よりも下方に位置しているから、眼底Efよりも前側(前眼部Ea側)に焦点が位置している(つまり、前ピンである)と判定される。一方、第1のスリット光像G1が第2のスリット光像G2よりも上方に位置している場合には、眼底Efよりも後側に焦点が位置している(つまり、後ピンである)と判定される。なお、前述したように、2つのスリット光像の位置関係と焦点のズレ方向との間の関係は、撮影ユニット2の光学系の構成により決定される既知の情報である。
【0285】
また、ステップS49で決定される移動条件に含まれる移動量は、眼屈折力(視度)とフォーカス調整用光学素子(本動作例ではスリット開口絞り22及びフォーカスレンズ47)の移動量との間の関係が記録された情報に基づき決定される。この情報は、予め作成され、例えばメモリ5に格納されている。
【0286】
フォーカス調整条件決定部422により決定されたフォーカス調整条件(本動作例では、ステップS49で決定されたスリット開口絞り22の移動条件及びフォーカスレンズ47の移動条件)は、フォーカス調整制御部423に送られる。
【0287】
フォーカス調整制御部423は、ステップS49で決定されたフォーカス調整条件に基づいてフォーカス調整ユニット3の制御を行う(S50)。本動作例では、フォーカス調整制御部423は、ステップS49で決定されたスリット開口絞り22の移動条件に基づき移動機構22Mを制御することによって、この移動条件に示された移動方向にこの移動条件に示された移動量だけスリット開口絞り22を移動するとともに、フォーカスレンズ47の移動条件に基づき移動機構47Mを制御することによって、この移動条件に示された移動方向にこの移動条件に示された移動量だけフォーカスレンズ47を移動する。
【0288】
以上に説明した工程により、被検眼Eの屈折力に対応した撮影ユニット2(照明光学系20及び撮影光学系40)の自動的なフォーカス調整が達成される。すなわち、照明光学系20の焦点及び撮影光学系40の焦点の双方が、被検眼Eの眼底Ef(又は、その近傍)に自動で配置される。このオートフォーカスが完了したら(S51)、眼科装置1は、次段階の処理を行うことができる。
【0289】
眼科装置1が実行可能なオートフォーカスのための動作の別の例を図24に示す。
【0290】
図20の動作例では2つのスリット光像の相対位置からフォーカス調整条件を決定しているが、2つのスリット光像の一方を検出できない場合が想定される。例えば、被検眼Eが小瞳孔眼である場合、第1のスリット光及び第2のスリット光の一方が虹彩にケラレてスリット光像が形成されないことが考えられる。また、被検眼Eが白内障眼である場合、第1のスリット光及び第2のスリット光の一方が水晶体混濁部により遮断されてスリット光像が形成されないことや、水晶体混濁部により減弱(減衰)されてスリット光像が不明瞭になることがある。本動作例は、このような問題が生じた場合に適用可能なオートフォーカスを提供するものである。
【0291】
ステップS61~S67は、それぞれ、図20のステップS41~S47と同様の要領で実行される。なお、本動作例のステップS66及びS67では、スリット光像の位置が検出される場合だけでなく、スリット光像が検出されない場合も想定されている。
【0292】
ステップS66において第1のスリット光像の位置が検出されなかった場合、又は、ステップS67において第2のスリット光像の位置が検出されなかった場合(S68:No)、処理はステップS69に移行する。つまり、ステップS66において第1のスリット像の位置の検出に失敗したが、ステップS67において第2のスリット光像の位置の検出に成功した場合、処理はステップS69に移行する。また、ステップS66において第1のスリット像の位置の検出に成功したが、ステップS67において第2のスリット光像の位置の検出に失敗した場合、処理はステップS69に移行する。
【0293】
これに対し、ステップS66において第1のスリット光像の位置の検出に成功し、且つ、ステップS67においても第2のスリット光像の位置の検出に成功した場合(S68:Yes)、処理はステップS70に移行する。
【0294】
なお、図示は省略されているが、ステップS66において第1のスリット光像の位置の検出に失敗し、且つ、ステップS67においても第2のスリット光像の位置の検出に失敗した場合、例えば、眼科装置1はユーザーインターフェイス6によってエラー情報又は警告情報を出力することができる。この場合、眼科装置1は、フォーカス調整(及び、その前工程であるアライメント)を最初からやり直すことができる(つまり、処理をステップS61又はS63に戻すことができる)。或いは、眼科装置1は、オートフォーカスモードからマニュアルフォーカスモードに切り替えることができる。マニュアルフォーカスモードでは、ユーザーは、ユーザーインターフェイス6を用いて、眼底Efの観察画像を参照しながら手動でフォーカス調整を実行する。
【0295】
第1のスリット光像の位置検出及び第2のスリット光像の位置検出の一方のみ成功した場合(S68:No)、フォーカス調整条件決定部422は、検出された一方のスリット光像の位置と、所定の基準位置との間の相対位置に基づいて、被検眼Eの屈折力を推定する(S69)。
【0296】
ステップS69で参照される基準位置を決定する方法は任意である。例えば、この基準位置は、模型眼を利用した測定で得られたデータに基づき求められてもよいし、レイトレーシングなどのシミュレーションを利用して求められてもよいし、健常眼(小瞳孔眼や白内障眼のように本実施形態のオートフォーカスを阻害する可能性のある事情を有しない眼)の測定で得られたデータに基づき求められてもよいし、これらの任意の組み合わせによって求められてもよいし、別の手法を用いて求められてもよい。模型眼を利用する方法では、例えば、ステップS63~S67を実施することによって双方のスリット光像が一致する位置を求め、この位置を基準位置とすることができる。別の方法についても同様の要領で基準位置を決定することが可能である。
【0297】
例えば、図21の左側の眼底画像200Aのスリット光像G1が検出された場合、フォーカス調整条件決定部422は、図25に示すように、このスリット光像G1の位置(Y(G1))を求め、求められたスリット光像G1の位置(Y(G1))の基準位置(Y0)に対する相対位置(ΔY)に基づいて被検眼Eの屈折力を推定する。
【0298】
第1のスリット光像の位置検出及び第2のスリット光像の位置検出の双方が成功した場合(S68:No)、フォーカス調整条件決定部422は、図20のステップS48と同様の要領で、被検眼Eの屈折力を推定する(S70)。
【0299】
次に、フォーカス調整条件決定部422は、ステップS69又はS70で求められた被検眼Eの屈折力の推定値に基づいて、スリット開口絞り22の移動条件(移動方向及び移動量)と、フォーカスレンズ47の移動条件(移動方向及び移動量)とを決定する(S71)。ここで、移動方向はスリット光像と基準位置との位置関係に基づき決定される。移動量の決定方法は図20のステップS49と同様であってよい。
【0300】
次に、フォーカス調整制御部423は、ステップS71で決定されたフォーカス調整条件に基づいてフォーカス調整ユニット3の制御を行う(S72)。この処理は、図20のステップS50と同様の要領で実行される。本動作例のオートフォーカスは以上で完了となる(S73)。
【0301】
図20の動作例及び図24の動作例では、オートフォーカスのために2回の撮影(第1の撮影及び第2の撮影)を実行しているが、図24の動作例の変形では、1回の撮影でオートフォーカスを行うことが可能である。本変形において、眼科装置1は、例えば、虹彩絞り21の2つの開口部21A及び21Bの一方のみから照明光を出力して撮影を行い、この撮影で取得された眼底画像に描出されているスリット光像の位置を求め、このスリット光像の位置と所定の基準位置との相対位置に基づき被検眼の屈折力の推定値を求め、この推定値からフォーカス調整条件を決定し、このフォーカス調整条件に基づきフォーカス調整ユニット3を制御する。本変形で用いられる基準位置は、図24の動作例における基準位置と同様であってよい。
【0302】
眼科装置1が実行可能なオートフォーカスのための動作の更に別の例を図26に示す。
【0303】
図20の動作例及び図24の動作例では、被検眼Eの眼底Efの所定位置(眼底中心、画像フレームの中心)に焦点が合うようにフォーカス調整を実行している。これに対し、本動作例では、眼底Efの任意の位置に焦点が合うようにフォーカス調整を行うことが可能である。それにより、眼底Efの注目部位が明瞭に描出された画像を取得することが可能になる。注目部位は、例えば、視神経乳頭、黄斑、血管などの組織であってもよいし、病変部(網膜剥離部)、治療痕などであってもよい。このように眼底Efの任意の位置にピント合わせを行うことができることは、前述したように本実施形態の眼科装置1の新規な特徴である。この特徴を利用することによって、眼科装置1は、図15図18に例示したような各種の動作を実行することができる。
【0304】
本動作例において、眼科装置1は、まず、被検眼Eの観察画像(ライブ動画像、ライブ映像、時系列画像)の生成及び表示を開始する(S81)。観察画像の生成は、任意の方法で実行されてよく、例えば、アライメントのための手段(例えば、ステレオアライメントのための2つの前眼部カメラ、正面画像を生成するためのカメラ)により、又は反復的なスリットスキャンにより実行される。観察画像の表示は、ユーザーインターフェイス6(表示デバイス)を用いて実行される。眼科装置1は、ステップS81で取得される観察画像に基づいてアライメントを実行する(S82)。
【0305】
いくつかの態様において、ユーザーは、ステップS82のアライメントの完了後に、表示されている観察画像における所望の位置(注目部位の位置、注目位置)をユーザーインターフェイス6(入力部)を用いて指定する(S83)。例えば、ユーザーは、タッチスクリーンに表示されている観察画像における所望の位置にタッチする。或いは、ユーザーは、表示デバイスに表示されている観察画像における所望の位置をポインティングデバイスを用いて指定する。
【0306】
別のいくつかの態様では、プロセッサ4が観察画像を解析して注目位置を決定してもよい。なお、前述した投射目標位置決定部424は、スリットスキャン画像に基づいて注目位置(第3の位置)を決定している。更に別のいくつかの態様では、ユーザー又はプロセッサ4が過去に取得された眼底Efの画像に対して注目位置を指定し、プロセッサ4が当該画像と観察画像との間のレジストレーションを実行して当該注目位置に対応する観察画像中の位置を特定してもよい。この場合、観察画像における当該特定位置がステップS83の注目位置として用いられる。更に別の態様では、アライメントの前に生成された観察画像に対してユーザー又はプロセッサ4が注目位置を指定し、指定された注目位置を基準としたアライメントをプロセッサ4が実行してもよい。
【0307】
眼科装置1は、ステップS83で指定された眼底Efの注目位置に対するオートフォーカスを開始する(S84)。
【0308】
本動作例のオートフォーカスでは、まず、投射制御部421が、ステップS83で指定された眼底Efの注目位置に対応する向きにミラー面を向けるように光スキャナー30を制御する(S85)。光スキャナー30のミラー面の向きは当該向きに固定される。スリットスキャンのための動作(図5など)から分かるように、撮影ユニット2により取得される画像における位置(Y座標)と光スキャナー30のミラー面の向きとの間には既知の関係がある。ステップS85の処理は、この関係を参照して実行される。
【0309】
ステップS83で指定された眼底Efの注目位置に対応する向きに光スキャナー30のミラー面の向きが固定された状態で、投射制御部421は、第1の撮影及び第2の撮影を実行するように撮影ユニット2を制御する(S86、S87)。
【0310】
本動作例のステップS88~S93の処理は、それぞれ、図20の動作例のステップS46~S51の処理と同様の要領で実行される。なお、いくつかの態様では、ステップS88~S93の処理の代わりに、図24の動作例のステップS66~S73の処理を実行してもよい。
【0311】
眼科装置1が実行可能なオートフォーカスのための動作の更に別の例について説明する。本例に係る動作を実行するための構成の非限定的な例を図27に示す。
【0312】
本例に係る眼科装置1は、図2に示す撮影ユニット2の代わりに、図27に示す撮影ユニット2Aを備えている。撮影ユニット2Aは非限定的な例である。撮影ユニット2Aは、被検眼Eの眼底Efに対するスリット光の投射位置を移動しつつローリングシャッター型のイメージセンサー(撮像装置)で撮影を行うことによってスリットスキャンを実行可能に構成されている。なお、ローリングシャッター型のイメージセンサーの代わりに、グローバルシャッター型のイメージセンサーとスリット絞りとを組み合わせた撮像ユニット(撮像装置)を採用してもよい。
【0313】
本例の撮影ユニット2Aは、光源10、照明光学系20A、光スキャナー30、撮影光学系40、及び撮像装置50を含んでいる。光源10、光スキャナー30、撮影光学系40、及び撮像装置50は、それぞれ、図2の撮影ユニット2の対応要素と同一であってよい。光源10及び/又は光スキャナー30を照明光学系20Aの要素とみなしてもよく、撮像装置50を撮影光学系40の要素とみなしてもよい。
【0314】
本例の照明光学系20Aは、図2の照明光学系20の代わりに設けられる。図27に示す例において、照明光学系20Aは、上記実施形態と同様の虹彩絞り21、スリット開口絞り22、及びリレーレンズ23に加えて、虹彩絞り21とスリット開口絞り22との間に配置されたレンズ24を含んでいる。
【0315】
更に、本例の撮影ユニット2Aは、移動機構25Mを含む。移動機構25Mは、光源10、虹彩絞り21、レンズ24、及びスリット開口絞り22を含む可動ユニット25を、照明光学系20の光軸に沿う方向に移動する。移動機構25Mは、プロセッサ4の制御の下に動作する。プロセッサ4は、被検眼Eの状態(例えば、屈折力(屈折度、視度)、眼底形状など)に応じて移動機構25Mを制御するように構成されてよい。
【0316】
本例のプロセッサ4は、前述したプロセッサ4と同様に、投射制御部421、フォーカス調整条件決定部422、及びフォーカス調整制御部423を含んでいる(図6A及び図6Bを参照)。本例のフォーカス調整条件決定部422は、前述した実施形態と同様のフォーカス調整条件決定処理を実行する。すなわち、フォーカス調整条件決定部422は、投射制御部421により実行されるスリット光投射制御により眼底Efに投射されたスリット光の戻り光を検出した撮像装置50からの出力に基づいてフォーカス調整条件を決定するための演算処理を実行する。本例のフォーカス調整条件決定処理は、前述した実施形態と同様の要領で実行されてよい。
【0317】
本例において、照明光学系20A(第1の光学系)は、光源10(光源)と、被検眼Eの虹彩に対して光学的に略共役な位置に配置され、光源10により発せられた光を通過させる開口部が形成された虹彩絞り21(虹彩絞り)と、虹彩絞り21の開口部を通過した光を屈折するレンズ24(レンズ)と、レンズ24により屈折された光からスリット光を生成するためのスリット開口絞り22(スリット絞り)とを含んでおり、スリット開口絞り22により生成されたスリット光を被検眼Eの眼底Efに投射するように構成されている。更に、撮影光学系40(第2の光学系)は、フォーカスレンズ47(フォーカスレンズ)を含んでいる。加えて、照明光学系20Aの焦点位置を調整するための第1のフォーカス調整ユニットは、照明光学系20Aの光軸に沿う方向に可動ユニット25を移動するための移動機構25Mを含む。つまり、第1のフォーカス調整ユニットは、照明光学系20Aの光軸に沿う方向に光源10、虹彩絞り21、レンズ24、及びスリット開口絞り22を一体的に移動するための移動機構25Mを含む。また、撮影光学系40の焦点位置を調整するための第2のフォーカス調整ユニットは、撮影光学系40の光軸に沿う方向にフォーカスレンズ47を移動するための移動機構47Mを含む。そして、フォーカス調整条件決定部422は、移動機構25Mを制御するための条件を決定し、移動機構47Mを制御するための条件を決定する。
【0318】
以上、実施形態において採用可能なフォーカス方法のいくつかの非限定的な例を説明した。これらの例によれば、スリットスキャンを実行する撮影ユニットを用いて被検眼の眼底にスリット光を投射し、このスリット光が投射されている眼底を撮影して得られた情報を利用してフォーカス調整条件を設定してオートフォーカスを行うことが可能であるから、スリットスキャンを実行可能な既存の眼科装置が有するようなフォーカス調整専用ハードウェア要素を設けることなくフォーカス調整を行うことが可能である。少なくとも、これらの例によれば、スリットスキャンを実行可能な既存の眼科装置が有するような複雑且つ大規模なフォーカス調整専用ハードウェア要素を設けることなくフォーカス調整を行うことができる。これにより、眼科装置の小型化、眼科装置の構成の簡略化、眼科装置の製造コストの低減などを図ることが可能になる。
【0319】
<他の実施形態>
実施形態に係る眼科装置のいくつかの非限定的な態様について以上に説明したが、本開示に係る実施形態のカテゴリーは眼科装置に限定されない。眼科装置以外の実施形態のカテゴリーとして、眼科装置を制御する方法、眼底を撮影する方法、プログラム、記録媒体などがある。これらのカテゴリーの実施形態が前述した眼科装置の実施形態によって為し得るものであることや、眼科装置の実施形態と同様の効果を奏するものであることは、当業者であれば理解することができるであろう。
【0320】
以下、これらのカテゴリーのいくつかの非限定的な実施形態について説明する。これらのカテゴリーのいずれかの実施形態に対して、本開示において眼科装置に関して説明した任意の事項や、任意の公知技術を組み合わせることが可能である。
【0321】
いくつかの実施形態に係る、眼科装置を制御する方法は、プロセッサ、撮影ユニット、及びフォーカス調整ユニットを含む眼科装置を制御するものである。ここで、撮影ユニットは、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を光スキャナーによって移動しつつ眼底の撮影を行うスリットスキャンをプロセッサの制御の下に実行するように構成されており、フォーカス調整ユニットは、撮影ユニットのフォーカス調整をプロセッサの制御の下に実行するように構成されている。
【0322】
本実施形態に係る方法は、眼科装置のプロセッサに、第1の撮影制御と、第1の条件決定処理と、第1のフォーカス調整制御と、第1のスリットスキャン制御と、第2の撮影制御と、第2の条件決定処理と、第2のフォーカス調整制御と、第2のスリットスキャン制御と、画像合成処理とを実行させる。
【0323】
眼科装置のプロセッサは、第1の撮影制御において、被検眼の眼底の第1の位置に向けてスリット光を投射しつつ第1の撮影を行うように撮影ユニットを制御し、第1の条件決定処理において、第1の撮影で取得された第1の画像に基づいて第1のフォーカス調整条件を決定し、第1のフォーカス調整制御において、第1のフォーカス調整条件に基づく第1のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニットを制御し、第1のスリットスキャン制御において、第1のフォーカス調整で達成された第1のフォーカス状態の下に第1のスリットスキャンを行うように撮影ユニットを制御する。
【0324】
また、眼科装置のプロセッサは、第2の撮影制御において、第1の位置と異なる第2の位置に向けてスリット光を投射しつつ第2の撮影を行うように撮影ユニットを制御し、第2の条件決定処理において、第2の撮影で取得された第2の画像に基づいて第2のフォーカス調整条件を決定し、第2のフォーカス調整制御において、第2のフォーカス調整条件に基づく第2のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニットを制御し、第2のスリットスキャン制御において、第2のフォーカス調整で達成された第2のフォーカス状態の下に第2のスリットスキャンを行うように撮影ユニットを制御する。
【0325】
更に、眼科装置のプロセッサは、画像合成処理において、第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像と、第2のスリットスキャンで取得された第2のスリットスキャン画像とを合成する。
【0326】
いくつかの実施形態に係る、眼科装置を制御する方法は、更に、眼科装置のプロセッサに、第1のスリットスキャン画像に基づいて第1の位置と異なる第3の位置を決定する位置決定処理を実行させるように構成されてよい。この場合、位置決定処理で決定された第3の位置に基づいて第2の位置が決定される。
【0327】
いくつかの実施形態に係る、眼底を撮影する方法は、まず、被検眼の眼底の第1の位置に向けてスリット光を投射しつつ第1の撮影を行うように撮影ユニットを制御し、第1の撮影で取得された第1の画像に基づいて第1のフォーカス調整条件を決定し、第1のフォーカス調整条件に基づく第1のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニットを制御し、第1のフォーカス調整で達成された第1のフォーカス状態の下に第1のスリットスキャンを行うように撮影ユニットを制御する。
【0328】
また、本実施形態に係る方法は、第1の位置と異なる第2の位置に向けてスリット光を投射しつつ第2の撮影を行うように撮影ユニットを制御し、第2の撮影で取得された第2の画像に基づいて第2のフォーカス調整条件を決定し、第2のフォーカス調整条件に基づく第2のフォーカス調整を行うようにフォーカス調整ユニットを制御し、第2のフォーカス調整で達成された第2のフォーカス状態の下に第2のスリットスキャンを行うように撮影ユニットを制御する。
【0329】
更に、本実施形態に係る方法は、第1のスリットスキャンで取得された第1のスリットスキャン画像と、第2のスリットスキャンで取得された第2のスリットスキャン画像とを合成する。
【0330】
いくつかの実施形態に係るプログラムは、眼科装置に実行させるための新規なプログラムである。この眼科装置は、プロセッサ、撮影ユニット、及びフォーカス調整ユニットを含んでいる。撮影ユニットは、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を光スキャナーによって移動しつつ眼底の撮影を行うスリットスキャンをプロセッサの制御の下に実行するように構成されており、フォーカス調整ユニットは、撮影ユニットのフォーカス調整をプロセッサの制御の下に実行するように構成されている。
【0331】
本実施形態に係るプログラムは、眼科装置のプロセッサに、第1の撮影制御と、第1の条件決定処理と、第1のフォーカス調整制御と、第1のスリットスキャン制御と、第2の撮影制御と、第2の条件決定処理と、第2のフォーカス調整制御と、第2のスリットスキャン制御と、画像合成処理とを実行させる。これらの処理のそれぞれは、上記した眼科装置を制御する方法において当該処理に対応する処理と同じ要領で実行される。
【0332】
いくつかの実施形態に係る記録媒体は、実施形態に係るプログラムが記録された、コンピュータ可読な非一時的記録媒体である。実施形態に係る記録媒体として使用可能な、コンピュータ可読な非一時的記録媒体は、任意の形態の記録媒体であってよく、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、及び半導体メモリのいずれかであってよい。
【0333】
本開示は、いくつかの実施形態及びそのいくつかの態様を提示するものである。これらの実施形態及び態様は、本発明の非限定的な例示に過ぎない。したがって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加など)を、本開示において提示された実施形態や態様に施すことが可能である。
【符号の説明】
【0334】
1 眼科装置
2 撮影ユニット
3 フォーカス調整ユニット
4 プロセッサ
5 メモリ
6 ユーザーインターフェイス
410 撮影制御部
421 投射制御部
422 フォーカス調整条件決定部
423 フォーカス調整制御部
424 投射目標位置決定部
430 画像合成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27