(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131418
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】吸収体構造
(51)【国際特許分類】
A61F 13/535 20060101AFI20240920BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61F13/535 100
A61F13/534 110
A61F13/535 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041671
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 佳祐
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
3B200BB17
3B200CA02
3B200CA11
3B200DB05
3B200DB12
3B200DB18
(57)【要約】
【課題】主に、尿の排出量や排出回数が多くなったときの、スリット部による背モレの発生などを防止し得るようにする。
【解決手段】
吸収体構造は、少なくとも股下部11と背側部12とを長手方向13に連ねた吸収体3を有し、吸収体3は、幅W1,W2方向14の中央部に、長手方向13に延びる溝状のスリット部15を有している。
スリット部15は、内部に、吸収体3の膨張時にスリット部15内の他の部分16よりも局所的に高く膨らむ膨出部17を、単数、または、長手方向13に間隔を置いて複数有している。
膨出部17は、高ポリマー吸収体18で形成され、他の部分16は、少なくとも一部が低ポリマー吸収体19で形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも股下部と背側部とを長手方向に連ねた吸収体を有し、
前記吸収体は、幅方向の中央部に、前記長手方向に延びる溝状のスリット部を有し、
前記スリット部は、内部に、前記吸収体の膨張時に前記スリット部内の他の部分よりも局所的に高く膨らむ膨出部を、単数、または、前記長手方向に間隔を置いて複数有しており、
前記膨出部は、高ポリマー吸収体で形成され、
前記他の部分は、少なくとも一部が低ポリマー吸収体で形成されていることを特徴とする吸収体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収体構造であって、
前記吸収体は、非肌面側に低ポリマー吸収体層を有し、肌面側に高ポリマー吸収体層を有する多層体とされ、
前記膨出部は、前記吸収体の前記低ポリマー吸収体層をなくして、前記高ポリマー吸収体層を残すことで形成され、
前記他の部分は、前記吸収体の前記高ポリマー吸収体層をなくして、前記低ポリマー吸収体層を残すことで形成されていることを特徴とする吸収体構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の吸収体構造であって、
複数の前記膨出部は、膨張時の高さが、前記背側部の側へ進む程高くなることを特徴とする吸収体構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の吸収体構造であって、
複数の前記膨出部は、膨張時の長さが、前記背側部の側へ進む程長くなることを特徴とする吸収体構造。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の吸収体構造であって、
複数の前記膨出部は、膨張時の幅が、前記背側部の側へ進む程広くなることを特徴とする吸収体構造。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の吸収体構造であって、
前記吸収体は、前記スリット部の前記背側部の側の端部周辺が、少なくとも前記低ポリマー吸収体と前記高ポリマー吸収体とが重なった多層部分になっていることを特徴とする吸収体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸収性物品に用いられる吸収体の構造、即ち、吸収性物品の吸収体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつなどの吸収性物品や、下着またはおむつの内側に取付けて使用する吸収性パッドなどの吸収性物品が存在している。これらの吸収性物品は、内部に尿を吸収するための吸収体を有している。
【0003】
このような吸収体は、少なくとも股下部と背側部とを長手方向に連ねた形状とされている(例えば、特許文献1参照)。そして、吸収体には、幅方向の中央部に、長手方向に延びる溝状のスリット部を形成したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸収体のスリット部は、尿を吸収体の長手方向へ誘導して、吸収体の長手方向の全域に行き渡らせるように機能する。そのため、スリット部は、尿の排出量や排出回数が多くなったとき(高排尿時)に、尿を長手方向へ誘導することで、背モレ(背中側への尿のモレ)を招くおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対して、本発明は、
少なくとも股下部と背側部とを長手方向に連ねた吸収体を有し、
前記吸収体は、幅方向の中央部に、前記長手方向に延びる溝状のスリット部を有し、
前記スリット部は、内部に、前記吸収体の膨張時に前記スリット部内の他の部分よりも局所的に高く膨らむ膨出部を、単数、または、前記長手方向に間隔を置いて複数有しており、
前記膨出部は、高ポリマー吸収体で形成され、
前記他の部分は、少なくとも一部が低ポリマー吸収体で形成されている吸収体構造を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記構成によって、尿の排出量や排出回数が多くなったときの、スリット部による背モレの発生を防止することなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態の吸収体構造を有する吸収性物品の平面図である。
【
図2】実施例1にかかる吸収性物品の低排尿時の状態を示す図である。このうち、(a)は吸収体の平面図、(b)は吸収体の長手方向に沿った縦断面図である。
【
図3】
図2の吸収性物品の高排尿時の状態を示す図である。このうち、(a)は吸収体の平面図、(b)は吸収体の長手方向に沿った縦断面図である。
【
図4】
図3(a)のスリット部の端部周辺の部分拡大図である。
【
図5】実施例2にかかる吸収体の、長手方向に沿った縦断面図である。
【
図6】実施例3にかかる吸収体の、長手方向に沿った縦断面図である。このうち、(a)は膨らむ前の初期の状態、(b)は膨らんだ状態である。
【
図7】実施例4にかかる吸収体の、長手方向に沿った縦断面図である。
【
図8】実施例5にかかる吸収体の、スリット部の拡大平面図である。
【
図9】実施例6にかかる吸収体の、長手方向に沿った縦断面図である。
【
図10】比較例にかかる吸収性物品の、背モレが生じた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態の各実施例は、
図1~
図10によって詳細に説明される。
【実施例0011】
【0012】
<構成>この実施例の構成は、以下の通りである。
【0013】
図1は、吸収性パッド1などの吸収性物品2の平面図である。この吸収性パッド1は、下着またはおむつの内側に取付けて使用するものである。
【0014】
ここで、吸収性パッド1は、吸収性を有する補助的な当て物であり、下着またはおむつに対して着脱交換可能に使用される。吸収性パッド1は、夜間や昼間の長時間トイレに行けないような場合に使われる。
【0015】
吸収性物品2は、吸収性を有する物品であり、上記した吸収性パッド1や使い捨ておむつなどが含まれる。これらの吸収性物品2は、内部に吸収体3を備えている。
【0016】
この実施例の吸収体3は、以下のような構造(吸収体構造)を備えても良い。なお、この実施例の吸収体構造は、吸収性パッド1の他にも、おむつなどの吸収性物品2の吸収体3にも適用可能である。
【0017】
そして、この実施例の吸収体構造は、
少なくとも股下部11と背側部12とを長手方向13に連ねた吸収体3を有している。
吸収体3は、幅方向14の中央部に、長手方向13に延びる溝状のスリット部15を有している。
スリット部15は、内部に、吸収体3の膨張時にスリット部15内の他の部分16よりも局所的に高く膨らむ膨出部17を、単数、または、長手方向13に間隔を置いて複数有している。
膨出部17は、高ポリマー吸収体18で形成されている。
他の部分16は、少なくとも一部が低ポリマー吸収体19で形成されている。
【0018】
ここで、股下部11は、使用者の股間の下に設置されて、使用者の股間を覆う部分である。
【0019】
背側部12は、使用者の背中側に設置されて、使用者の臀部を覆う部分である。なお、吸収体3は、使用者の腹側に設置されて、使用者の下腹部を覆う部分(腹側部21)を有しても良い。
【0020】
長手方向13は、吸収性パッド1において、例えば、吸収体3が股下部11から背側部12へ向けて延びる方向である。股下部11および背側部12は、長手方向13に連続して形成される。なお、腹側部21がある場合には、腹側部21、股下部11、背側部12は、この順番に長手方向13に連続して形成される。
【0021】
吸収体3は、使用者の尿を吸収する面状の部材である。吸収体3は、パルプ繊維に高吸収性樹脂(SAP;SUPERABSORBENT POLYMERS)を絡めて分布させた部材としても良い。吸収体3は、上述したSAPが、接触した液体を吸着して膨張することにより、液体を保持する。吸収体3は、肌面側22(
図2(b))を透液性シート23で覆われると共に、非肌面側24(
図2(b))を不透液性シート25で覆われることで、吸収性パッド1とされる。
【0022】
肌面側22は、使用者の肌に接する側である。非肌面側24は、肌面側22とは反対の側である。吸収体3は、透液性シート23によって覆われることで、外部から見えない状態に設置される。なお、吸収性パッド1は、肌面側22の両側部に、立体ギャザーなどを有しても良い。また、吸収性パッド1は、上記したSAPをシート状に形成したSAPシートを、吸収体3と透液性シート23との間に介在させても良い。
【0023】
幅方向14は、吸収性パッド1または吸収体3の面に沿った、長手方向13と直交する方向である。吸収体3は、ほぼ均一な幅を有して、長手方向13に延びる。吸収性パッド1は、吸収体3の周囲を包んだ状態に形成するために、吸収体3よりも長手方向13に若干長く、また、幅方向14に若干幅広くなっている。吸収性パッド1は、均一な幅を有して長手方向13に延びても良い。また、吸収性パッド1は、例えば、股下部11の両側などが使用者の脚の内側に形状に合わせて僅かに幅方向14の内側に括れた形状になっていても良い。
【0024】
幅方向14の中央部は、吸収体3の幅方向14の真ん中の位置である。幅方向14の中央部は、使用者の臀部の体圧がかかり難い位置である。また、幅方向14の中央部とすることで、スリット部15は、少ない本数で尿を効率的に長手方向13へ誘導できる。なお、吸収性パッド1または吸収体3と面直な方向は、厚み方向26(
図2(b))とする。
【0025】
スリット部15は、吸収体3に形成された細長い溝状の凹みである。スリット部15は、細長くすることよって、吸収体3の体積減少を抑制できるので、吸収体3の吸収量の低下が防止される。スリット部15は、全長に亘って均一の幅としても良いし、局所的に幅が狭くなったり、広くなったりする部分があっても良い。この実施例では、スリット部15は、両端部15a,15b以外は全長に亘ってほぼ均一の幅となっている。
【0026】
スリット部15は、例えば、吸収体3の全部または少なくとも一部に積繊されない箇所を設けることや、吸収体3を型押しすることなどによって形成可能である。スリット部15は、吸収体3の肌面側22が凹むように形成されるのが好ましい。
【0027】
なお、スリット部15は、股下部11の側および背側部12の側に、それぞれ端部15a,15bを有している。端部15a,15bは、共に吸収体3の面内に納まる位置に形成される。スリット部15の端部15a,15bは、どのような形状にしても良い。例えば、この実施例では、スリット部15の端部15a,15bは、先細り形状となっている。
【0028】
他の部分16は、スリット部15内の、膨出部17以外の部分である。スリット部15内の他の部分16は、全てを厚み方向26に対して非貫通の状態にしても良い(非貫通部分)。また、スリット部15内の他の部分16は、一部を厚み方向26に対して貫通(貫通部分27)させ、残りを非貫通(非貫通部分)の状態にしても良い。この実施例では、スリット部15は、少なくとも股下部11の大部分が、貫通部分27となっている。そして、スリット部15は、背側部12のほぼ全てが非貫通部分となっている。以下、他の部分16は、背側部12の非貫通部分(溝底面となる一般部分)を指す場合がある。なお、貫通部分27および非貫通部分は、長手方向13の境界を、股下部11と背側部12との境界と一致させても良いし、一致させなくても良い。なお、スリット部15の股下部11を非貫通部分とする場合には、股下部11のスリット部15内の構造は、背側部12と同じ構造にすれば良い。
【0029】
膨出部17は、尿を吸収したときに、スリット部15内で、他の部分16よりも大きく膨らんで、他の部分16よりも上に出っ張る部分(膨出予定部)である。なお、膨出部17は、尿を吸収する前は、他の部分16とほぼ同じ高さに揃えるのが好ましい。また、膨出部17は、尿を吸収したときに、吸収体3の上面とほぼ同じ高さまで膨らめば良い。
【0030】
なお、他の部分16および膨出部17は、吸収体3の構成の範囲内で形成することができる。例えば、上記したように、吸収体3のスリット部15となる部分を、一部積繊しなかったり、型押ししたりすることで、他の部分16および膨出部17は、吸収体3の構成のみで形成される。また、他の部分16および膨出部17は、吸収体3以外の構成を使って形成することができる。例えば、吸収体3は、スリット部15となる部分を、全部貫通させて、そこに別の吸収性の材料を挿入配置しても良い。これによって、他の部分16および膨出部17は、吸収体3以外の構成で形成される。なお、他の部分16および膨出部17は、吸収体3の構成と、吸収体3以外の構成とを組み合わせて形成することもできる。
【0031】
間隔は、膨出部17を複数設けた場合の、複数の膨出部17間の設置距離である。この間隔は、複数の膨出部17の間に他の部分16が介在されることによって形成される。即ち、上記した間隔は、複数の膨出部17の間に位置する他の部分16の長手方向13の寸法となる。
【0032】
なお、図では、理解し易いように、他の部分16および膨出部17は、それぞれブロック状にして、間に僅かな隙間を有する、完全に独立した構成として描かれている。しかし、実際の状態は、これに限るものではなく、他の部分16および膨出部17は、隙間を有さずに連続させても良いし、また、互いの境界は多少入り組んで若干あいまいな状態になっていても良い。
【0033】
高ポリマー吸収体18は、上記した高吸水性樹脂の配合を多くして、吸水性を高めた部材である。膨出部17は、主に、高ポリマー吸収体18で構成される。高ポリマー吸収体18は、吸収体3に使われる高吸水性樹脂と同じものを使っても良いし、異なるものを使っても良い。高ポリマー吸収体18は、例えば、上記したSAPをシート状に形成したSAPシートなどを用いても良い。
【0034】
低ポリマー吸収体19は、上記した高吸水性樹脂の配合を少なくして、高ポリマー吸収体18よりも吸水性を低くした部材である。低ポリマー吸収体19は、吸水によって余り膨らまないようなものとするのが好ましい。非貫通部分は、主に、低ポリマー吸収体19で形成される。なお、貫通部分27には、低ポリマー吸収体19は設置されない。
【0035】
<作用>この実施例の作用は、以下の通りである。
【0036】
例えば、吸収性パッド1などの吸収性物品2は、下着またはおむつの内側に取付けて使用される。吸収性パッド1は、内部に設けられた吸収体3によって尿を吸収する。尿を吸収した吸収性パッド1は、膨らむ。
【0037】
吸収体3には、幅方向14の中央部に長手方向13へ延びるスリット部15が形成されている。そのため、吸収体3のスリット部15は、尿を吸収体3の長手方向13へ誘導して、吸収体3の長手方向13の全域に行き渡らせる。吸収性パッド1は、尿を吸収して膨らむことで、スリット部15の溝が深くなる、または、スリット部15の上部の位置が高くなる。
【0038】
そして、尿の排出量や排出回数が多くなったとき(高排尿時)に、スリット部15はより高くなり、高くなったスリット部15が吸収体3の長手方向13への尿の流れ29をより促進する。そのため、
図10の比較例に示すように、尿の流れ29が、スリット部15の端部15bを越え、更に、吸収体3および吸収性パッド1を越えることで、背中側への尿のモレ(背モレ)を生じることになる。即ち、スリット部15は、背モレを招くおそれがある。
【0039】
そこで、この実施例では、
図1に示すように、スリット部15は、内部に、吸収体3の膨張時にスリット部15内の他の部分16よりも局所的に高く膨らむ膨出部17を、単数、または、長手方向13に間隔を置いて複数有するようにした。膨出部17は、高ポリマー吸収体18で形成しても良い。他の部分16は、少なくとも一部が低ポリマー吸収体19で形成されても良い。
【0040】
<効果>この実施例の効果は、以下の通りである。
【0041】
図2に示すように、吸収体3に設けたスリット部15は、尿を吸収体3の長手方向13へ積極的に誘導することで、尿が吸収体3の幅方向14へ拡がって、幅方向14の各部で吸収される前に吸収性パッド1の横からモレ出すのを防止する。
【0042】
この実施例の吸収体構造は、このようなスリット部15の内部に膨出部17を設けた。すると、
図3(
図4)に示すように、膨出部17は、尿を吸収して、スリット部15の内部で膨らみ、他の部分16よりも高くなる。これにより、膨出部17は、スリット部15内の尿の流れ29を局所的に堰き止める。そのため、膨出部17の位置でスリット部15内の尿の流れ29が一時的に停滞され、停滞された尿は、一部が幅方向14へ拡がって、吸収体3における膨出部17の周囲の部分に吸収される(
図4)。
【0043】
よって、吸収体3は、膨出部17の周囲の部分が尿をしっかり吸収できるようになる。そのため、膨出部17の周囲の部分が尿を吸収しないまま、尿が端部15bに達してしまうのを防止できる。即ち、膨出部17は、スリット部15に沿った尿の流れ29を堰き止めて遅延させ、吸収体3の幅方向14の各部に尿を吸収させる。これにより、吸収体3は、長手方向13と幅方向14との両方向に対してバランス良く尿を吸収できるようになる。膨出部17を複数設けた場合、膨出部17は、多段の堰として機能する。複数の膨出部17は、間隔を有して設置されることで、複数の膨出部17の間に、尿を一時的に溜めることができる。
【0044】
そして、尿の排出量や排出回数が少ないとき(低排尿時)には、
図2に示すように、膨出部17は、十分に膨んでいないことで、堰としての機能が弱くなっている。そのため、スリット部15に沿った尿の流れ29は、膨出部17でほとんど停滞されない。よって、スリット部15は、尿を長手方向13へ導く本来の機能を発揮できる。なお、低排尿時は、ほぼ2~3回程度の排尿回数(または、2~3回相当分の尿の排出量)のときなどとする。
【0045】
これに対し、尿の排出量や排出回数が多くなったとき(高排尿時)には、
図3に示すように、膨出部17は、尿を十分に吸収して高く膨らむ。そのため、スリット部15に沿った尿の流れ29は、膨出部17で、停滞されて遅延する。よって、膨出部17は、尿を堰き止める機能を発揮する。なお、高排尿時は、ほぼ4回程度以上の排尿回数(または、4回相当分以上の尿の排出量)のときなどとする。なお、低排尿時と高排尿時との境界をどのように定めるかは、膨出部17の膨らませ具合によって適宜調整できる。
【0046】
そのため、膨出部17を有するスリット部15は、低排尿時には、尿を長手方向13に積極的に拡散させて、長手方向13の全域にて素早く吸収させる。また、膨出部17を有するスリット部15は、高排尿時には、膨出部17の位置で尿を幅方向14に拡散させて、幅方向14の各部にじっくり吸収させながら、長手方向13へ向けて徐々に導いて行くものとなるため、高排尿時の尿の背モレを防止できる。
【0047】
そして、膨出部17は、高ポリマー吸収体18で形成することにより、低排尿時には余り膨まず、高排尿時には十分に膨んで高くなるように構成できる。また、スリット部15の内部の膨出部17以外の他の部分16は、少なくとも一部を、低ポリマー吸収体19で形成することにより、膨らんだときに膨出部17との高さの差を持たせることができる。
多層体33は、吸収体3が、少なくとも低ポリマー吸収体層31と高ポリマー吸収体層32とを積層した構造になっていることである。なお、吸収体3は、低ポリマー吸収体層31および高ポリマー吸収体層32以外の層を有しても良い。また、上記実施例1では、吸収体3は、単層体になっているが、この実施例と同様に多層体33にしても良い。以下の実施例においても、吸収体3は、上記と同様に、単層体または多層体33にすることができる。
第一削除部34は、多層体33の非肌面側24の低ポリマー吸収体層31がなくなっている部分である。削除は、例えば、吸収体3の製造時に、低ポリマー吸収体層31が積繊されない箇所を設ける場合や、吸収体3の製造後に、低ポリマー吸収体層31を削るように加工する場合などを広く含むことができる。多層体33の非肌面側24から低ポリマー吸収体層31をなくすことで、肌面側22の高ポリマー吸収体層32が残って膨出部17になる。残りの高ポリマー吸収体層32は、更に、一部を減らしたり、増量したりして、膨出部17を調整しても良い。
なお、低ポリマー吸収体層31をなくした部分の高ポリマー吸収体層32は、自重によって自然に非肌面側24へと移動される。または、高ポリマー吸収体層32は、エンボス加工などによって強制的に非肌面側24へ移動させても良い。
第二削除部35は、多層体33の肌面側22の高ポリマー吸収体層32がなくなっている部分である。削除は、例えば、吸収体3の製造時に、高ポリマー吸収体層32が積繊されない箇所を設ける場合や、吸収体3の製造後に、高ポリマー吸収体層32を削るように加工する場合などを広く含むことができる。多層体33の肌面側22から高ポリマー吸収体層32をなくすことで、非肌面側24の低ポリマー吸収体層31が残って他の部分16となる。残りの低ポリマー吸収体層31は、更に、一部を減らしたり、増量したりして、他の部分16を調整しても良い。
低ポリマー吸収体層31は、尿の吸収量が少なく、吸収時の膨らみも小さい。高ポリマー吸収体層32は、尿の吸収量が多く、吸収時の膨らみが大きい。多層体33とされた吸収体3は、非肌面側24に低ポリマー吸収体層31を有し、肌面側22に高ポリマー吸収体層32を有する。これにより、吸収体3は、非肌面側24を、低ポリマー吸収体層31によって、湿り過ぎない状態にできる。また、吸収体3は、肌面側22を、高ポリマー吸収体層32によって、より多くの尿を吸収させることができる。
そして、吸収体3が多層体33となっていることから、低ポリマー吸収体層31および高ポリマー吸収体層32を、長手方向13に沿って交互になくした状態にする。これにより、吸収体3は、内部に、高ポリマー吸収体18の膨出部17と、低ポリマー吸収体19の他の部分16とが並んだ状態のスリット部15が形成される。
そのため、多層体33とされた吸収体3は、その構造を利用することで、スリット部15の内部の膨出部17と他の部分16とを、容易に形成できる。しかも、吸収体3は、低ポリマー吸収体層31と高ポリマー吸収体層32とのなくし方を、自由にすることができる。そのため、低ポリマー吸収体層31と高ポリマー吸収体層32とのなくし方によって、スリット部15は、内部の所望の位置に、所望の大きさとなるように、膨出部17を任意に形成できる。