(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013142
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】酸素飽和度測定装置及び酸素飽和度測定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240124BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115117
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 和夫
(72)【発明者】
【氏名】奥野 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】松井 優貴
(72)【発明者】
【氏名】木口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】荒川 正行
(72)【発明者】
【氏名】大橋 卓
(72)【発明者】
【氏名】久保 光明
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KL05
4C038KX01
4C038KY01
4C117XB01
4C117XC13
4C117XD15
4C117XD17
4C117XD22
4C117XE24
4C117XE37
4C117XJ13
4C117XJ45
(57)【要約】
【課題】被測定者が酸素飽和度を時間的に連続して測定し易く、かつ、呼吸器の状態の改善を図ることができる酸素飽和度測定装置を提供する。
【解決手段】酸素飽和度測定装置10は、被測定者の手首に巻かれるバンド12と、バンド12に取り付けられ手首の動脈の脈波信号を取得し、取得された脈波信号に基づいて手首の動脈の酸素飽和度を測定する第1センサ部11と、第1センサ部11によって測定された酸素飽和度が予め設定された条件を満たす場合に被測定者に対して呼吸器の不調の可能性を示す警告を報知する報知部26と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の手首に巻かれるバンドと、
前記バンドに取り付けられ前記手首の動脈の脈波信号を取得し、取得された前記脈波信号に基づいて前記手首の動脈の酸素飽和度を測定する第1センサ部と、
前記第1センサ部によって測定された酸素飽和度が予め設定された条件を満たす場合に、前記被測定者に対して呼吸器の不調の可能性を示す警告を報知する報知部と、
を備える、酸素飽和度測定装置。
【請求項2】
前記第1センサ部は、前記バンドの内側に取り付けられている、
請求項1に記載の酸素飽和度測定装置。
【請求項3】
測定された前記酸素飽和度が予め設定された基準値に達しない場合に、前記報知部は、指先の位置での酸素飽和度の測定を前記被測定者に促すことを前記警告として報知する、
請求項1又は2に記載の酸素飽和度測定装置。
【請求項4】
前記バンドに取り付けられ前記被測定者の指先の動脈の酸素飽和度を測定する第2センサ部を更に備える、
請求項1又は2に記載の酸素飽和度測定装置。
【請求項5】
前記第2センサ部は、前記バンドの外側に取り付けられている、
請求項4に記載の酸素飽和度測定装置。
【請求項6】
被測定者の手首に巻かれるバンドと、
前記バンドに取り付けられ前記手首の動脈の脈波信号を取得し、取得された前記脈波信号に基づいて前記手首の動脈の酸素飽和度を測定する第1センサ部と、
前記第1センサ部によって測定された酸素飽和度が予め設定された条件を満たす場合に前記被測定者に対して呼吸器の不調の可能性を示す警告を報知する報知部と、
前記バンドに取り付けられ前記被測定者の指先の動脈の酸素飽和度を測定する第2センサ部と、
前記第2センサ部によって測定された酸素飽和度を表示する表示部と、
を備える、酸素飽和度測定装置。
【請求項7】
前記報知部と前記表示部とは、一体である、
請求項6に記載の酸素飽和度測定装置。
【請求項8】
被測定者の手首の動脈の脈波信号を取得し、
取得された前記脈波信号に基づいて前記動脈の酸素飽和度を測定し、
測定された前記酸素飽和度が予め設定された条件を満たす場合に前記被測定者に対して警告を報知する、
酸素飽和度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸素飽和度測定装置及び酸素飽和度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動脈血中の酸素飽和度(SpO2)を測定する装置として、特許文献1のようにパルスオキシメーターを備えたタッチスクリーンインターフェースが開示されている。特許文献1では、被測定者の指先をタッチスクリーンに接触させることによって、指先の動脈血中の酸素飽和度を測定可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、酸素飽和度が所定の範囲内から外れると、被測定者の呼吸器の状態が不調であると推測できる。例えば、酸素飽和度が95%程度~99%程度の予め設定された範囲内である場合、被測定者の呼吸器の状態は正常であると判定され得る。一方、酸素飽和度が例えば94%のように設定された範囲外である場合、被測定者の呼吸器の状態は不調と判定され得る。
【0005】
ここで、被測定者の酸素飽和度を時間的に連続して測定できれば、測定値の時間的な変化を得ることができる。測定値の時間的な変化を用いることによって被測定者の呼吸器の状態をより全体的に診断することが可能になり、結果、呼吸器の状態の改善を図ることができる。酸素飽和度を時間的に連続的に測定するためには、酸素飽和度測定装置が、被測定者の身体上の所定の位置に時間的に連続して装着される必要がある。
【0006】
しかし、特許文献1のように、酸素飽和度測定の際に用いられる被測定者の接触部位が指先である場合、指先に酸素飽和度測定装置が連続して装着されることになる。このため、例えば手指を用いてペンを把持したり電子端末を操作したりといった作業動作や、食事や排泄等の日常生活動作に支障が生じ易い。すなわち、指先の位置で酸素飽和度を測定する場合、時間的に連続して測定し難い。
【0007】
本開示は、上記に着目して成されたものであって、被測定者が酸素飽和度を時間的に連続して測定し易く、かつ、呼吸器の状態の改善を図ることができる酸素飽和度測定装置及び酸素飽和度測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様に係る酸素飽和度測定装置は、被測定者の手首に巻かれるバンドと、バンドに取り付けられ手首の動脈の脈波信号を取得し、取得された脈波信号に基づいて手首の動脈の酸素飽和度を測定する第1センサ部と、第1センサ部によって測定された酸素飽和度が予め設定された条件を満たす場合に被測定者に対して呼吸器の不調の可能性を示す警告を報知する報知部と、を備える。
【0009】
第1の態様によれば、被測定者の手首にバンドが巻かれると共に、バンドに取り付けられた第1センサ部によって、手首の動脈の脈波信号が取得される。また、取得された脈波信号に基づいて手首の動脈の酸素飽和度が測定される。すなわち、手首の位置で酸素飽和度が測定されるので、指先の位置で酸素飽和度が測定される場合と比べ、被測定者の作業動作や日常生活動作が妨げられる状態が生じ難く、かつ、酸素飽和度測定装置を時間的に連続して測定し易い。
【0010】
また、測定された手首の動脈の酸素飽和度が予め設定された条件を満たす場合に、被測定者に対して、呼吸器の不調の可能性を示す警告が、報知される。警告によって、被測定者が例えば医師に対して相談するといった行動が促進されるので、結果、呼吸器の状態の改善を図ることができる。
【0011】
また、第1の態様では、第1センサ部は、バンドの内側に取り付けられていてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、第1センサ部がバンドの内側、すなわち、バンドの、手首に接する側に取り付けられているので、例えば、手首の内側の表面に近い橈骨動脈を測定し易い。
【0013】
また、第1の態様では、測定された酸素飽和度が予め設定された基準値に達しない場合に、報知部は、指先の位置での酸素飽和度の測定を被測定者に促すことを警告として報知してもよい。
【0014】
上記の構成によれば、測定された酸素飽和度が予め設定された基準値に達しない場合に、指先の位置での酸素飽和度の測定を被測定者に促すことが警告として被測定者に対し報知される。このため、測定精度をより高めた酸素飽和度の測定を促すことができる。
【0015】
また、第1の態様では、バンドに取り付けられ被測定者の指先の動脈の酸素飽和度を測定する第2センサ部を更に備えてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、バンドに取り付けられ指先の動脈の酸素飽和度を測定する第2センサ部が、更に設けられる。このため、手首の位置において酸素飽和度を時間的に連続して測定することと、指先の位置において酸素飽和度をより高い測定精度で測定することとの両方を、1つの酸素飽和度測定装置を用いて実現できる。すなわち、指先の動脈の酸素飽和度を測定するための酸素飽和度測定装置を別途用意する必要がない。
【0017】
また、第1の態様では、第2センサ部は、バンドの外側に取り付けられていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、第2センサ部がバンドの外側、すなわち、バンドの、手首に接しない側であって、被測定者が視認し易い位置に取り付けられている。このため、第2センサ部がバンドの内側に取り付けられている場合と比べ、被測定者による第2センサ部の取り扱いが容易になる。
【0019】
本開示の第2の態様に係る酸素飽和度測定装置は、被測定者の手首に巻かれるバンドと、バンドに取り付けられ手首の動脈の脈波信号を取得し、取得された脈波信号に基づいて手首の動脈の酸素飽和度を測定する第1センサ部と、第1センサ部によって測定された酸素飽和度が予め設定された条件を満たす場合に被測定者に対して呼吸器の不調の可能性を示す警告を報知する報知部と、バンドに取り付けられ被測定者の指先の動脈の酸素飽和度を測定する第2センサ部と、第2センサ部によって測定された酸素飽和度を表示する表示部と、を備える。
【0020】
第2の態様によれば、手首の位置において酸素飽和度を時間的に連続して測定することと、指先の位置において酸素飽和度をより高い測定精度で測定することとの両方を、1つの酸素飽和度測定装置を用いて実現できる。
【0021】
また、第2の態様では、報知部と表示部とは、一体であってもよい。
【0022】
上記の構成によれば、報知部と表示部とが別体である場合と比べ、酸素飽和度測定装置の全体の寸法が抑制されるので、酸素飽和度測定装置をコンパクトに構成できる。
【0023】
本開示の第3の態様に係る酸素飽和度測定方法は、被測定者の手首の動脈の脈波信号を取得し、取得された脈波信号に基づいて動脈の酸素飽和度を測定し、測定された酸素飽和度が予め設定された条件を満たす場合に被測定者に対して警告を報知する。
【0024】
第3の態様によれば、第1の態様と同様に、酸素飽和度測定装置を時間的に連続して測定し易く、かつ、呼吸器の状態の改善を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示に係る酸素飽和度測定装置及び酸素飽和度測定方法によれば、被測定者が酸素飽和度を時間的に連続して測定し易く、かつ、呼吸器の状態の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の実施形態に係る酸素飽和度測定装置を説明する斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る酸素飽和度測定装置を説明する断面図である。
【
図3】本実施形態に係る酸素飽和度測定装置のセンサユニットを説明する平面図である。
【
図5】指先の動脈の酸素飽和度の時間的に連続した測定値の変化と手首の動脈の酸素飽和度の時間的に連続した測定値の変化とを説明するグラフである。
【
図6】本実施形態に係る酸素飽和度測定装置を用いた酸素飽和度測定方法を説明するフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係る酸素飽和度測定方法において、第2センサ部を用いて指先の動脈の酸素飽和度を測定する状態を説明する斜視図である。
【
図8】変形例に係る酸素飽和度測定方法において、第2センサ部を用いて指先の動脈の酸素飽和度を測定する状態を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0028】
<酸素飽和度測定装置>
本実施形態に係る酸素飽和度測定装置10の構造を、
図1~
図5を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る酸素飽和度測定装置10は、バンド12と、第1センサ部11と、報知部26と、第2センサ部21と、を備える。
【0029】
(バンド)
図2に示すように、バンド12は、被測定者の手首に巻かれる。バンド12の素材は、例えば樹脂、布地、金属等、任意である。また、バンド12には手首に巻かれた際の長さを調節し且つ固定するための留め金が設けられる。
【0030】
(第1センサ部)
第1センサ部11は、
図1及び
図2に示すように、バンド12の内側、すなわち、バンド12の、手首に接する側に取り付けられる。なお、本開示では、第1センサ部の取り付け位置は、バンド12の内側に限定されず、バンド12の外側であってもよい。第1センサ部11は、手首の動脈の脈波信号を取得すると共に、取得された脈波信号に基づいて手首の動脈の酸素飽和度を測定する。
【0031】
具体的には本実施形態の第1センサ部11は、基部14と、接触部16と、発光素子と、受光素子と、演算部18と、によって構成される。演算部18は、筐体25の内部に収納される。なお、本開示では、第1センサ部11は、手首の動脈の脈波信号を取得できる限り、任意に構成できる。
【0032】
図2中に例示された酸素飽和度測定装置10では、受光素子として、第1の受光素子PD1と第2の受光素子PD2と第3の受光素子PD3と第4の受光素子PD4と第5の受光素子PD5とが設けられている。また、
図2中の手首の内部には、橈骨20、橈骨茎状突起20A、橈側手根屈筋腱22及び橈骨動脈24が例示されている。
【0033】
(基部)
基部14は、バンド12の内面上に設けられる。具体的には本実施形態では、基部14は、バンド12に例えば接着によって固定され得る。ただし、固定方法は接着に限定されず、バンド12との間に固定用の板状部材を介在させ、回路基板が板状部材にネジ止め等によって固定されてもよい。
【0034】
基部14は、バンド12と接触部16との間に平坦な接合面14Aを有する。本実施形態では、基部14の接合面14Aには、発光素子及び受光素子の両方が接合される。本開示では、接合面14Aに、発光素子及び受光素子のうち少なくとも一方が接合されればよい。
【0035】
また、本開示では、基部14は、発光素子及び受光素子が搭載される回路基板そのものであってもよいし、或いは、回路基板と固定用の板状部材との組み合わせ、或いは、回路基板と緩衝部材との組み合わせ等であってもよい。すなわち、本開示の基部14は、発光素子及び受光素子のうち少なくとも一方が接合される接合面14Aを有すればよい。
【0036】
図3に示すように、基部14の接合面14A上には、発光素子及び受光素子が配置される。なお、発光素子及び受光素子が搭載される回路基板の図示は省略する。
【0037】
(発光素子)
発光素子は、例えば発光ダイオード(LED)等の電子部品である。発光素子は、接触部16に対し予め設定された位置に配置され、手首の動脈に対し光を照射する。本実施形態では、発光素子として、第1の発光素子LED1と第2の発光素子LED2と第3の発光素子LED3とが設けられる。第1の発光素子LED1と第2の発光素子LED2と第3の発光素子LED3とは、互いに離れて配置されると共に、手首の周方向に沿って並べられる。なお、本開示では、発光素子の個数は、1つ以上、任意である。
【0038】
図3に示すように、第1の発光素子LED1と第2の発光素子LED2と第3の発光素子LED3とは、いずれも、1つ以上の赤色光源REDと1つ以上の赤外光源IRとが含まれる一組の光源を有する。すなわち、本実施形態では、1つの発光素子から2種類の光が照射される。そして、1つの受光素子が受光する2種類の反射光が、酸素飽和度の測定に用いられる。なお、本開示では、光源の種類は2種類に限定されず、1種類であってもよいし、或いは、3種類以上であってもよい。
【0039】
(酸素飽和度の測定原理)
ここで、2種類の照射光及び2種類の反射光が用いられる本実施形態における酸素飽和度の測定原理を説明する。具体的には、例えば、620nm程度~700nm程度の波長領域の赤色光は、ヘモグロビンに結合する酸素の有無によって、吸光度が大きく変わるという特性を有する。一方、850nm程度~960nm程度の波長領域の近赤外光は、ヘモグロビンに結合する酸素の有無によって、吸光度が大きく変わらないという特性を有する。
【0040】
このため、赤色光の反射光の脈波信号の強度の変化を経時的にモニタし、モニタされた脈波信号に含まれる脈波信号の変動成分(AC)と、変動しない固定成分(DC)とを算出する。そして、変動成分を固定成分で除す(AC/DC)ことによって、赤色光の灌流指標(Perfusion Index,PI)値を、PIREDとして算出する。また、赤色光の場合と同様に、近赤外光の反射光の脈波信号の強度の変化を経時的にモニタすることによって、近赤外光の反射光のPI値(PIIR)を算出する。
【0041】
そして、赤色光のPI値(PIRED)と近赤外光のPI値(PIIR)との比(PIRED/PIIR)を算出する。そして、算出された比(PIRED/PIIR)を以下の式(1)に用いることによって、酸素飽和度を算出することができる。
酸素飽和度[%]=a×(PIRED/PIIR)+b ・・・式(1)
式(1)中の係数a,bは、実験によって求めることができる。なお、本開示では、酸素飽和度の測定方法は、これに限定されず、他の方法であってもよい。
【0042】
(受光素子)
受光素子は、例えばフォトダイオード(PD)等の電子部品である。受光素子は、接触部16に対し予め設定された位置に配置され、接触部16の接触面16Aを介して手首の動脈からの反射光を受光する。第1の受光素子PD1と第2の受光素子PD2と第3の受光素子PD3と第4の受光素子PD4と第5の受光素子PD5とは、互いに離れて配置されると共に、手首の周方向に沿って並べられる。なお、本開示では、受光素子の個数は、1つ以上、任意である。
【0043】
本実施形態では、1つ以上の発光素子と、1つ以上の発光素子に対応する1つ以上の受光素子とによって、1つの「センサユニット」が構成される。本開示では、複数のセンサユニットが設けられてよい。また、1つの「センサユニット」中に含まれる発光素子の個数と、受光素子の個数とは、いずれも任意に設定できる。
【0044】
また、本実施形態に係る酸素飽和度測定装置10は、反射光によって脈波信号の強度が測定される反射型であるが、本開示では反射型に限定されず、透過光によって脈波信号の強度が測定される透過型であってもよい。
【0045】
(遮光部)
図4に示すように、基部14における発光素子と受光素子との間には、遮光部14Bが設けられる。遮光部14Bによって、受光素子が発光素子からの光を直接受光することが防止される。なお、遮光部14Bを用いつつ、発光素子と受光素子との間隔は、可能な限り近づけることが、光路長が短くなり、結果、測定精度を高められる観点から好ましい。
【0046】
(接触部)
接触部16は、バンド12に取り付けられる。また、接触部16は、手首の動脈に対して照射される光と手首の動脈からの反射光とに対する透光性を有する。具体的には例えば、レンズ等の透光性を有する部材が採用され得る。
図4中で発光素子の上側に配置される接触部16は、例えば、照射領域を拡大可能な拡散レンズである。また、図示を省略するが、発光素子の上側に、拡散レンズと共に、又は拡散レンズの代わりに拡散剤が配置されてもよい。また、
図4中で受光素子の上側に配置される接触部16は、例えば、反射光を集めることが可能な集光レンズであってよい。
【0047】
また、接触部16は、バンド12から手首側に突出する接触面16Aを有する。本実施形態では、接触面16Aは、湾曲形状を有する。接触面16Aは、酸素飽和度の測定時、手首の皮膚に接触する。
【0048】
図3及び
図4に示すように、接触部16は、ドーム状である。ドームの外面に相当する接触面16Aでは、
図4中の左右方向(前腕の延びる方向E)における中央部は平坦であると共に、左右の両端部はそれぞれ、一定の曲率を有することによって、角張ることなく円滑に湾曲する。曲率は、例えば0.167以上であることが、被測定者の装着性向上の観点から好ましい。なお、図示を省略するが、同様に、接触部16の手首の周方向Cにおける中央部は、平坦であると共に、左右の両端部はそれぞれ円滑に湾曲する。
【0049】
また、本開示では、接触面は、平坦な部分を有しなくてもよい。接触面は、全体的に一定の曲率を有する状態で、湾曲形状を有してもよい。
【0050】
なお、本明細書では「前腕の延びる方向E」は、橈骨20の延びる方向、尺骨の延びる方向及び動脈の延びる方向のいずれの方向とも重なる。また「前腕の延びる方向E」は、厳密には被測定者毎に異なる。すなわち、「前腕の延びる方向E」は、3次元空間内で座標によって一義的に決定されるものではなく、被測定者毎の橈骨20の延びる方向、尺骨の延びる方向及び動脈の延びる方向に基づいて個別に決定される。
【0051】
(筐体)
筐体25は、バンド12に取り付けられ、被測定者の手首の外側である甲側の表面に接触する。筐体25の素材は、樹脂や金属等、任意である。なお、本開示では、筐体25は必須でない。
【0052】
(演算部)
本実施形態では、演算部18は、筐体25に設けられる。演算部18には受光素子が接続される。演算部18には、反射光の脈波信号のデータが受光素子から経時的に入力される。
【0053】
演算部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、記憶装置、I/Oポート等を備えたコンピュータとして構成される。RAM、記憶装置、I/Oポート等は内部バスを介してCPUとデータ交換可能に構成される。演算部18は、反射光から取得された脈波信号に基づき、光が照射された橈骨動脈24の酸素飽和度を、PI値の比を用いる方法等によって、測定する。
【0054】
(報知部)
図1に示すように、報知部26は、筐体25の手首と反対側の表面に配置される。報知部26は、例えば液晶等によって形成される画像表示装置である。報知部26は、演算部18による演算結果を、被測定者が視認できるように、外部に対して表示する。
【0055】
報知部26には、測定結果を一時的に保存する記憶装置が設けられてもよい。なお、本開示では、筐体25が設けられない場合、演算部は、例えば接触部又は基部に、演算装置の一部として配置できる。同様に、記憶装置も接触部又は基部等、筐体以外の部材に配置できる。本開示では、報知部26が筐体25に設けられない場合であっても、例えば、演算部18に接続され、且つ、外部との通信が可能な通信部を用いることによって、演算部18による算出結果を得ることが可能である。
【0056】
報知部26は、第1センサ部11によって測定された酸素飽和度が予め設定された条件を満たす場合に、被測定者に対して呼吸器の不調の可能性を示す警告を報知する。具体的には、報知部26は、測定された酸素飽和度が予め設定された基準値に達しない場合に、指先の位置での酸素飽和度の測定を被測定者に促すことを警告として報知する。
【0057】
(基準値)
本実施形態では、基準値は、90%の酸素飽和度である。報知部26は、酸素飽和度が90%未満の場合に、指先の位置での酸素飽和度の測定を被測定者に促すことを警告として報知する。すなわち、本実施形態の基準値は、酸素飽和度の下限値である。また、本実施形態の条件は、測定された酸素飽和度が下限値に達しないことである。
【0058】
本実施形態のように基準値が酸素飽和度である場合、警告を報知するか否かの判定の下限値となる基準値は、90%以上、94%以下の範囲内で設定されることが好ましい。
図5中には、指先の位置で第1センサ部11を用いて酸素飽和度を時間的に連続して測定したデータの軌跡が、実線で例示されている。また、手首の位置で第1センサ部11を用いて酸素飽和度を時間的に連続して測定したデータの軌跡が、破線で例示されている。
【0059】
なお、本開示では、警告を報知するか否かの判定の基準値は、90%以上、94%以下の範囲に限定されず、被測定者の呼吸器の状態に応じて適宜変更できる。例えば、特定のウイルス感染症に罹患した患者の場合、酸素飽和度が、慢性的に92%程度~93%程度であり得る。このため、本開示では、基準値の別の例として、基準値を、初期値と、初期値に対する低下分を示す補正値との組み合わせによって設定できる。初期値と補正値とはそれぞれ、被測定者の呼吸器の状態に応じ、被測定者毎に予め設定可能である。
【0060】
具体的には初期値として、例えば設定前の直近の1カ月のような一定の期間内に測定された酸素飽和度の平均値を採用できる。例えば被測定者が特定のウイルス感染症罹患患者である場合、初期値は、例えば92%に設定できるが、実際にはこれに限定されるものではなく、被測定者に応じて、或いは、被測定者の呼吸器の状態に応じて変化し得る。
【0061】
また、補正値は、例えば被測定者の国籍、性別、年齢、身長、体重、及び、現在の呼吸器の状態等の個人的な情報と類似の情報を有する被測定者の集団から得られた臨床データや解析データ等に基づき、経験的に設定できる。補正値は、例えば2%に設定できるが、実際にはこれに限定されるものではなく、被測定者に応じて、或いは、被測定者の呼吸器の状態に応じて変化し得る。
【0062】
上記のように被測定者が特定のウイルス感染症罹患患者であると共に、設定された初期値が例えば92%であると共に設定された補正値が2%である場合、初期値から補正値を減じることによって「90%」の値を得ることができる。得られた「90%」の値は、酸素飽和度測定において警告を報知するか否かの判定の基準値として設定できる。
【0063】
また、本開示者らは、手首の位置での測定精度と指先の位置での測定精度との一致性を、5名の被測定者を対象とするブランド-アルトマン分析によって評価した。具体的には、それぞれの被測定者が息を止めた状態において、第1センサ部11を用いて、手首の位置での酸素飽和度の測定値の時間的な変化と指先の位置での酸素飽和度の測定値の時間的な変化とを取得した。
【0064】
ブランド-アルトマン分析では、5名の被測定者の酸素飽和度の値の平均値を算出すると共に、算出された平均値からのプラスマイナスの誤差の広がりを酸素飽和度が80%以上、100%以下の範囲内で算出した。指先の位置での測定の場合における誤差の広がりは、約3.0%であった。
【0065】
一方、手首の位置での測定の場合における誤差の広がりは、約6.0%であった。すなわち、手首の位置での測定の場合、誤差の広がりが、指先の場合に比べ2倍程度大きくなることが分かった。また、分析の結果、特に、酸素飽和度が90%以下の範囲内において、手首の位置での測定の誤差が、指先の位置での測定の誤差より大きくなることが分かった。
【0066】
図5に示すように、基準値の酸素飽和度が90%未満の場合、手首の位置で測定した際の酸素飽和度の測定精度は、指先の位置で測定した際の測定精度より低くなることが分かる。指先の位置の動脈血の灌流は、手首の位置の動脈血の灌流より大きい。このため、被測定者の呼吸器の状態の判定の精度が低下してしまう。一方、警告を報知するか否かの判定の基準値の酸素飽和度が94%を超える場合、呼吸器の状態が正常と診断される範囲が増えるため、警告の回数が増えてしまう。
【0067】
本開示では、警告を報知するか否かの判定に用いられる条件は、酸素飽和度の下限値に限定されず、任意に設定できる。例えば、呼吸数及び咳込み回数のような、酸素飽和度以外の生体情報を用いて条件が設定されてもよい。例えば、被測定者の呼吸数及び咳込み回数は、脈波信号から取得可能な生体情報である。
【0068】
また、例えば、血管内を流れる動脈の音の音波情報のような、脈波信号以外の任意の血管情報を用いて条件が設定されてもよい。例えば動脈の流れる音が用いられる場合、第1センサ部11は、集音機能を有するマイクを備えてよい。音波情報としては、例えば周波数や振幅を使用できる。また、流れる動脈の音からは、咳込み回数を取得することも可能である。動脈の流れる音からの音波情報に基づき、条件設定の中で使用される基準値を設定できる。
【0069】
本実施形態では、警告は、文字や図形等を含む画像情報である。なお、本開示では、警告は、画像情報に限定されず、例えば特定の報知色の点灯や点滅といった光によって行われてもよい。また、警告は、音や振動であってもよい。
【0070】
(第2センサ部)
図1及び
図2に示すように、第2センサ部21は、バンド12の外側、すなわち、バンド12の、手首に接しない側であって、被測定者が視認し易い位置に取り付けられる。第2センサ部21は、被測定者の指先の動脈の酸素飽和度を測定する。本実施形態の第2センサ部21は、測定部28と、演算部18と、によって構成される。測定部28は、タッチスクリーンインターフェースとしてのパネルを有する。なお、本開示では、第2センサ部の取り付け位置は、バンド12の外側に限定されない。例えば手首と接触している間、第2センサ部への非通電状態が形成される等によってタッチスクリーンの誤作動が防止されれば、バンド12の内側であっても取り付け可能である。
【0071】
測定部28には、不図示の光エネルギー源が設けられ、光エネルギー源から酸素飽和度測定用の2種類の波長の光が、測定部28の内部で照射される。測定部28に被測定者の指先が接触することによって、2種類の波長の光のそれぞれに減衰が生じる。また、測定部28には、減衰した光を検知する不図示の検知部が設けられ、検知部は、演算部18に接続される。演算部18は、減衰した光に基づき、指先の動脈血中の酸素飽和度を測定する。
【0072】
なお、本開示では、第2センサ部は、指先の動脈の酸素飽和度を測定できる限り、任意に構成できる。例えば、第2センサ部における酸素飽和度の測定方法は、測定光の反射型であっても透過型であってもよい。また、第2センサ部には、公知のタッチスクリーンインターフェース技術が適用されてよい。
【0073】
<酸素飽和度測定方法>
次に、本実施形態に係る酸素飽和度測定装置10を用いた酸素飽和度測定方法の一例を、
図2、
図6~
図7を参照して説明する。
【0074】
まず、
図6中のステップS10に示すように、被測定者は、酸素飽和度測定装置10のバンド12を被測定者の手首に巻く。測定対象の動脈は、例えば橈骨動脈24である。なお、本開示では、測定対象の動脈は、橈骨動脈24に限定されず、他の任意の動脈であってもよい。そして、接触面16Aを手首の内側の橈骨茎状突起20Aの近傍の皮膚に接触させる。
【0075】
次に、
図2に示すように、被測定者は、接触部16を橈骨茎状突起20Aと橈側手根屈筋腱22との隙間の窪みの内側に配置する。次に、ステップS20に示すように、被測定者は、第1センサ部11を用いて、被測定者の手首の動脈の脈波信号を取得する。そして、取得された脈波信号に基づいて動脈の酸素飽和度を測定する。
【0076】
具体的には、
図2中の窪みの下側に位置する橈骨動脈24に対し発光素子から光を照射する。そして、橈骨動脈24からの反射光を受光素子によって受光する。そして、反射光から取得された脈波信号に基づき、演算部18は、酸素飽和度を測定する。
【0077】
次に、ステップS30に示すように、演算部18は、測定された酸素飽和度を予め設定された基準値と比較する。比較された酸素飽和度が基準値以上である場合、警告が不要であると判定される。そして、処理は、ステップS20に移行し、酸素飽和度の測定が、繰り返し実行される。一方、比較された酸素飽和度が基準値に達しない場合、ステップS40に示すように、演算部18は、被測定者に対して警告を報知する。
【0078】
ここで、本開示では例えば、警告を報知されるまでの間、第2センサ部21への通電が遮断されると共に、警告が報知された後、第2センサ部21への通電が開始されるように、第2センサ部21への通電が制御されてよい。第2センサ部21への通電が制御されることによって、電力消費を抑制することができる。
【0079】
次に、ステップS50に示すように、被測定者は、第2センサ部21を用いて指先の動脈の酸素飽和度を測定する。具体的には、指先を第2センサ部21の測定部28に接触させる。測定された酸素飽和度の測定値は、表示部としての報知部26に表示される。なお、本開示では、第2センサ部21によって測定された酸素飽和度の測定値を表示する表示部は、本実施形態のように報知部26と一体であってもよいし、或いは、報知部26とは異なって設けられてもよい。
【0080】
次に、
図6中のステップS60に示すように、演算部18は、測定値を記憶装置に保存する。例えば、保存された測定値を後で医師等の診察の際、報知部26に表示させることによって、診察に寄与することができる。
【0081】
なお、本開示では、記憶装置には、例えば、測定に用いられたセンサ部の名称や日時等の任意の追加データが、測定値と共に保存されてもよい。また、本開示では、記憶装置には、第1センサ部11によって測定された測定値が保存されてもよい。また、本開示では例えば、ステップS60の処理後、ステップS20以降の処理が繰り返されてもよい。
【0082】
(作用効果)
第1の態様によれば、被測定者の手首にバンド12が巻かれると共に、バンド12に取り付けられた第1センサ部11によって、手首の動脈の脈波信号が取得される。また、取得された脈波信号に基づいて手首の動脈の酸素飽和度が測定される。すなわち、手首の位置で酸素飽和度が測定されるので、指先の位置で酸素飽和度が測定される場合と比べ、被測定者の作業動作や日常生活動作が妨げられる状態が生じ難く、かつ、酸素飽和度測定装置10を時間的に連続して測定し易い。
【0083】
また、測定された手首の動脈の酸素飽和度が、予め設定された基準値と比較されると共に、測定された酸素飽和度が基準値に達しない場合、被測定者に対して、呼吸器の不調の可能性を示す警告が、報知される。警告によって、被測定者が例えば医師に対して相談するといった行動が促進されるので、結果、呼吸器の状態の改善を図ることができる。
【0084】
また、本実施形態では、第1センサ部11は、バンド12の内側、すなわち、バンド12の、手首に接する側に取り付けられている。このため、手首の内側の表面に近い橈骨動脈24を測定し易い。
【0085】
また、本実施形態では、酸素飽和度が90%未満の場合に、指先の位置での酸素飽和度の測定を被測定者に促すことが、警告として被測定者に対し報知される。このため、測定精度をより高めた酸素飽和度の測定を促すことができる。
【0086】
また、本実施形態に係る酸素飽和度測定装置10は、バンド12に取り付けられ指先の動脈の酸素飽和度を測定する第2センサ部21を更に備える。このため、手首の位置において酸素飽和度を時間的に連続して測定することと、指先の位置において酸素飽和度をより高い測定精度で測定することとの両方を、1つの酸素飽和度測定装置10を用いて実現できる。すなわち、指先の動脈の酸素飽和度を測定するための酸素飽和度測定装置を別途用意する必要がない。
【0087】
また、例えば指先の位置で測定するような高精度の酸素飽和度測定装置が被測定者から離れた場所に置いてある場合であっても、高精度の酸素飽和度測定装置を取るために被測定者が移動する必要が無い。このため、警告が報知された後、指先の動脈の酸素飽和度の測定を速やかに開始できる。また、被測定者が酸素飽和度測定装置を取るために移動する手間を省くことができるので、酸素飽和度を測定する習慣を確立し易い。
【0088】
また、本実施形態では、第2センサ部21は、バンド12の外側、すなわち、バンド12の、手首に接しない側であって、被測定者が視認し易い位置に取り付けられている。このため、第2センサ部21がバンド12の内側に取り付けられている場合と比べ、被測定者による第2センサ部21の取り扱いが容易になる。
【0089】
また、本実施形態では、報知部26と表示部とは、一体である。このため、報知部26と表示部とが別体である場合と比べ、酸素飽和度測定装置の全体の寸法が抑制される。結果、酸素飽和度測定装置をコンパクトに構成できる。
【0090】
また、本実施形態に係る酸素飽和度測定装置10を用いた酸素飽和度測定方法によれば、酸素飽和度測定装置10を時間的に連続して測定しく、かつ、呼吸器の状態の改善を図ることができる。
【0091】
(変形例)
本実施形態では、指先の位置で酸素飽和度を測定するように警告が報知される条件として、被測定者の手首の動脈で測定された酸素飽和度が基準値に達しない場合が例示的に説明されたが、本開示ではこれに限定されない。例えば
図8中には、被測定者の呼吸状態に基づいて警告が報知される、変形例に係る酸素飽和度測定方法が例示されている。
【0092】
変形例に係る酸素飽和度測定方法では、
図6中のステップS20とステップS30との代わりに、
図8中のステップS21とステップS31とを含む点が、本実施形態に係る酸素飽和度測定方法と主に異なる。ステップS21とステップS31とでは、酸素飽和度の代わりに呼吸数が用いられる。ステップS21及びステップS31以外のステップの内容については、
図6中のそれぞれ対応する同名のステップと同様であるため、重複説明を省略する。
【0093】
変形例では、
図8中のステップS21に示すように、被測定者の呼吸数が検知される。呼吸数の検知は、例えば、第1センサ部11を用いて、被測定者の手首の動脈の脈波信号を取得し、取得された脈波信号に基づいて行うことができる。
【0094】
次に、ステップS31に示すように、検知された呼吸数と予め設定された基準値の呼吸数とを比較する。比較された呼吸数が基準値以上である場合、警告は不要であると判定される。警告が不要であると判定された場合、処理は、ステップS21に移行し、呼吸数の測定が繰り返し実行される。
【0095】
一方、比較された呼吸数が基準値に達しない場合、ステップS40に示すように、被測定者に対して警告を報知する。以下、本実施形態と同様の処理が行われる。変形例では、酸素飽和度を測定できない状態であっても、呼吸数を用いて被測定者の呼吸器の状態を判定できる。本開示では、変形例のように、酸素飽和度以外の生体情報を用いて条件を予め設定できる。
【0096】
<その他の実施形態>
本開示は上記の開示された実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本開示を限定するものであると理解すべきではない。例えば、本開示では、手首の動脈の脈波信号を取得する手段は、ベルトが用いられた腕時計型の装置に限定されない。例えば、酸素飽和度測定装置は、手首に近接可能な携帯型の装置であってもよい。また、手首の動脈の脈波信号を取得する手段は、酸素飽和度を測定するための専用の装置である必要はなく、例えば、酸素飽和度測定機能を有する汎用型の装置であってもよい。すなわち、酸素飽和度を測定する方法は、装置に限定されない。
【0097】
また、被測定者の呼吸状態に基づいて警告が報知される場合には、例えば、被測定者の胸部に近接可能な首飾り型の呼吸数測定装置等も採用できる。また、本開示では、報知部は、必須ではない。例えば、第2センサ部によって測定された酸素飽和度が通信機能によって外部に送信されると共に、送信された酸素飽和度が外部に設けられた報知部としての表示装置に表示されてもよい。また、第2センサ部が用いられることなく、本開示が構成されることも妨げられない。
【0098】
本開示は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むと共に、本開示の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0099】
10 酸素飽和度測定装置
11 第1センサ部
12 バンド
14 基部
14A 接合面
14B 遮光部
16 接触部
16A 接触面
18 演算部
20 橈骨
20A 橈骨茎状突起
21 第2センサ部
22 橈側手根屈筋腱
24 橈骨動脈
25 筐体
26 報知部
28 測定部
C 手首の周方向
E 前腕の延びる方向
IR 赤外光源
LED1 第1の発光素子
LED2 第2の発光素子
LED3 第3の発光素子
PD1 第1の受光素子
PD2 第2の受光素子
PD3 第3の受光素子
PD4 第4の受光素子
PD5 第5の受光素子
RED 赤色光源