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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131421
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/235 20060101AFI20240920BHJP
   A47C 1/025 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B60N2/235
A47C1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041676
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】大下 裕樹
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B099BA04
3B099CA18
3B099CA20
3B099CA23
(57)【要約】
【課題】ロックギアの寸法精度のバラツキを許容しつつ、シートバックから高荷重がかかってもロック強度の低下を抑制することができる、シートのリクライニング装置を提供する。
【解決手段】複数のロックギアのそれぞれは、インターナルギア12の径方向に移動可能であり、内歯12eに噛合可能な外歯13aを有する。ロックギア13は、回転カム14のカム面と当接する面部を内周面13fに有し、当該面部には、カム面に向けて膨出する2箇所のギア膨出部13g,13hが含まれる。ギア膨出部13g,13hは、円弧形状で形成され、その中心が、ロック状態でのインターナルギアから径方向内向きの力の合力F1,F2が作用する方向に沿う仮想線L1,L2と、回転カム14からロックギア13へ入力される荷重F3,F4が作用する方向に沿う第2仮想線L3,L4との交点P7,P8またはその近傍に位置するように形成されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションおよびシートバックの内の一方に固定されたガイドブラケットと、
前記シートクッションおよび前記シートバックの内の他方に固定されるとともに、前記ガイドブラケットに対して相対回転可能であって、且つ、内周面に成形された内歯を有するインターナルギアと、
前記インターナルギアの径方向内側に配置され、当該インターナルギアの径方向に移動可能であるとともに、それぞれが前記内歯に噛合可能な外歯を有する複数のロックギアと、
前記複数のロックギアに対して前記径方向内側に配置され、前記インターナルギアの径中心廻りに回動可能であるとともに、前記複数のロックギアの各径方向内側の面である内周面の内の少なくとも一部の面部に対して当接可能なカム面を有し、且つ、前記カム面から前記面部への押圧状態に応じて、前記内歯と前記外歯が噛合したロック状態と、前記内歯と前記外歯との噛合が解除されたアンロック状態とを切り替える回転カムと、
を備え、
前記ガイドブラケットは、前記複数のロックギアの前記径方向での移動をガイドするガイド壁を有し、
前記複数のロックギアの少なくとも1つにおいて、前記内周面の前記面部のうち前記回転カムの前記カム面に対向する部分では、カム面に向けて凸となるように、少なくとも一部が円弧を描くように形成された少なくとも1箇所のギア膨出部を有し、
前記ギア膨出部は、当該ギア膨出部における前記円弧の中心が、前記ロック状態での前記インターナルギアから径方向内向きの力の合力が作用する方向に沿って延びる第1仮想線と、前記回転カムから当該ギア膨出部を通り前記ロックギアへ入力される荷重が作用する方向に沿って延びる第2仮想線と、の交点、または前記第2仮想線上における前記交点と前記ギア膨出部との間の箇所に位置するように形成されている、
シートのリクライニング装置。
【請求項2】
前記複数のロックギアにおける前記ガイド壁との摺動範囲をB1とするとき、前記ギア膨出部における前記円弧の中心は、当該ロックギアの移動方向において、前記摺動範囲における前記外歯が形成された側の端部である摺動外端から、前記摺動範囲における前記摺動外端とは反対側の摺動内端に向けて前記B1の2/3の範囲内に位置するように設定されている、
請求項1に記載のシートのリクライニング装置。
【請求項3】
前記回転カムにおける前記カム面は、前記ロックギアの前記面部との当接箇所において、周辺部分よりも前記面部に向けて膨出するように形成された少なくとも1箇所のカム膨出部を有する、
請求項1に記載のシートのリクライニング装置。
【請求項4】
前記カム膨出部は、少なくとも前記ロックギアの前記面部と当接する部分が円弧を描くように形成されるとともに、当該カム膨出部における前記円弧の中心が、前記回転カムの回転中心に対して所定距離だけ離間して位置するように形成されている、
請求項3に記載のシートのリクライニング装置。
【請求項5】
前記複数のロックギアの内の少なくとも一部のロックギアと、当該ロックギアの移動をガイドする前記ガイド壁と、前記回転カムとの間に楔部材をさらに備え、
前記楔部材は、少なくとも前記カム面と当接する部分が前記カム面に向けて膨出する円弧を描くように形成されている、
請求項1から請求項4の何れかに記載のシートのリクライニング装置。
【請求項6】
前記回転カムにおける前記カム面は、前記ロックギアの前記面部との当接箇所において、周辺部分よりも前記面部に向けて膨出するように形成された少なくとも1箇所のカム膨出部を有する、
請求項2に記載のシートのリクライニング装置。
【請求項7】
前記カム膨出部は、少なくとも前記ロックギアの前記面部と当接する部分が円弧を描くように形成されるとともに、当該カム膨出部における前記円弧の中心が、前記回転カムの回転中心に対して所定距離だけ離間して位置するように形成されている、
請求項6に記載のシートのリクライニング装置。
【請求項8】
前記複数のロックギアの内の少なくとも一部のロックギアと、当該ロックギアの移動をガイドする前記ガイド壁と、前記回転カムとの間に楔部材をさらに備え、
前記楔部材は、少なくとも前記カム面と当接する部分が前記カム面に向けて膨出する円弧を描くように形成されている、
請求項6または請求項7に記載のシートのリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートのリクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両用シート等でリクライニング装置が広く採用されている。シートのリクライニング装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に開示されたシートのリクライニング装置について、図11を用いて説明する。
【0003】
図11に示すように、特許文献1に開示されたシートのリクライニング装置9(以下、「従来技術に係るリクライニング装置9」と記載する。)は、ガイドブラケット91と、インターナルギア92と、複数のロックギア93と、回転カム94と、ロックスプリング(図示を省略。)と、を備える。インターナルギア92は、円環形状の筒部と、筒部の一方の開口(図11の奥側の開口)を塞ぐように形成された底壁と、を有する。そして、インターナルギア92は、筒部の内周面に内歯92eを有する。
【0004】
複数のロックギア93は、インターナルギア92の径方向に移動可能な状態で、インターナルギア92の筒部内方に配置されている。各ロックギア93は、インターナルギア92の径方向外側に移動した際にインターナルギア92の内歯92eに噛合する外歯93aを有する。また、各ロックギア93は、ガイドブラケット91に設けられたガイド部91cの側壁(ガイド壁)に対して摺動して径方向に移動可能となっている。
【0005】
回転カム94は、インターナルギア92の径方向中心廻りに回転可能に設けられている。回転カム94の外周には、複数のロックギア93の径方向内側の面(内周面)93fの一部(当接部93g)に対して当接可能なカム面94cを有する。図11の拡大部分に示すように、リクライニング装置9は、回転カム94のカム面94cがロックギア93における内周面93fの当接部93gに係合してロックギア93を径方向外側へ押圧することにより、インターナルギア92の内歯92eと複数のロックギア93の外歯93aとが噛み合ってロック状態となる。一方、回転カム94のカム面94cとロックギア93における内周面93fの当接部93gとの係合状態が解除された場合には、インターナルギア92の内歯92eに対して複数のロックギア93の外歯93aが径方向内側に離間してアンロック状態となる。
【0006】
このように、リクライニング装置9では、回転カム94が回転操作されることによりロック状態とアンロック状態とが切り替えられて、シートクッションに対するシートバックの角度調整が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-147010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、リクライニング装置では、ガイドブラケット91とインターナルギア92との一方がシートバックに固定され、他方がシートクッションに固定され、車両走行時にはリクライニング装置の内歯92eに外歯93aが噛合してロック状態にある。このとき、車両が衝突するなどしてシートバックからリクライニング装置に高荷重がかかると、ロックギア93の外歯93aが内歯92eから乖離して、ロックギア93が回転することがある。その結果、ロック状態が維持できなくなり、リクライニング装置の外歯93aが破損することが危惧される。ロックギア93の寸法精度にバラツキがあるときにこの傾向は顕著である。
【0009】
図11の拡大部分に示すように、ロックギア93の寸法精度にバラツキがあると、ロックギア93における内周面93fの当接部93gと回転カム94のカム面94cとの係合箇所が設計の狙いから周方向にズレを生じてしまう。ロックギア93における内周面93fの当接部93gと回転カム94のカム面94cとの係合箇所が設計の狙いから周方向にズレを生じてしまった場合には、図12に示すように、内歯92eと外歯93aとが噛合している状態でインターナルギア92から径方向内向きに作用する力の合力F91と、回転カム94からロックギア93に対して作用する荷重F92との交点が、設計の狙いである点P91に対して点P92,P93のように周方向にズレを生じる(矢印C1)。
【0010】
交点が設計の狙い(交点P91)に対してズレた状態(交点P92,P93)でインターナルギア92に対してモーメント入力F9があった場合、交点P92,P93の径方向内外でのガイド部91cからロックギア93への反力に差異が生じる(反力F93,F94)。このような反力F93,F94の差異は、ロックギア93に対して回転力F95を生じさせる。その結果、ロックギア93は、インターナルギア92の内歯92eに対して一部(C2部分)だけで外歯93aが噛合することとなり、他の部分(C3部分)で隙間を生じるに至る。これにより、C2部分でロックギア93が破損することが生じ得る。
【0011】
なお、上記では、ガイドブラケット91がシートクッションに固定され、インターナルギア92がシートバックに固定された形態を一例に説明したが、ガイドブラケット91がシートバックに固定され、インターナルギア92がシートクッションに固定されている場合にも上記同様の問題を生じることが考えられる。
【0012】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、ロックギアの寸法精度のバラツキを許容しつつ、シートバックから高荷重がかかってもロック強度の低下を抑制することができるシートのリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係るシートのリクライニング装置は、ガイドブラケットと、インターナルギアと、複数のロックギアと、回転カムと、を備える。前記ガイドブラケットは、シートクッションおよびシートバックの内の一方に固定されている。前記インターナルギアは、前記シートクッションおよび前記シートバックの内の他方に固定されるとともに、前記ガイドブラケットに対して相対回転可能であって、且つ、内周面に成形された内歯を有する。前記複数のロックギアは、前記インターナルギアの径方向内側に配置され、当該インターナルギアの径方向に移動可能であるとともに、それぞれが前記内歯に噛合可能な外歯を有する。前記回転カムは、前記複数のロックギアに対して前記径方向内側に配置され、前記インターナルギアの径中心廻りに回動可能であるとともに、前記複数のロックギアの各径方向内側の面である内周面の内の少なくとも一部の面部に対して当接可能なカム面を有し、且つ、前記カム面から前記面部への押圧状態に応じて、前記内歯と前記外歯が噛合したロック状態と、前記内歯と前記外歯との噛合が解除されたアンロック状態とを切り替える。
【0014】
前記ガイドブラケットは、前記複数のロックギアの前記径方向での移動をガイドするガイド壁を有する。前記複数のロックギアの少なくとも1つにおいて、前記内周面の前記面部のうち前記回転カムの前記カム面に対向する部分では、カム面に向けて凸となるように、少なくとも一部が円弧を描くように形成された少なくとも1箇所のギア膨出部を有する。
【0015】
前記ギア膨出部は、当該ギア膨出部における前記円弧の中心が、前記ロック状態での前記インターナルギアから径方向内向きの力の合力が作用する方向に沿って延びる第1仮想線と、前記回転カムから当該ギア膨出部を通り前記ロックギアへ入力される荷重が作用する方向に沿って延びる第2仮想線と、の交点、または前記第2仮想線上における前記交点と前記ギア膨出部との間の箇所に位置するように形成されている。
【0016】
上記態様に係るシートのリクライニング装置では、複数のロックギアの少なくとも1つがギア膨出部を有する。そして、ギア膨出部は、少なくとも一部(回転カムのカム面と当接する面部に含まれる部分を含む。)が円弧を描くように形成され、円弧の中心が上記交点またはその近傍(前記第2仮想線上における前記交点と前記ギア膨出部との間の箇所)に位置するように形成されている。このため、上記態様に係るシートのリクライニング装置では、ロックギアの寸法精度にバラツキがあり、ロック状態でのロックギアにおける内周面のギア膨出部に対する回転カムのカム面の係合箇所が設計の狙いから周方向にズレを生じた場合においても、回転カムからロックギアへの荷重はギア膨出部における円弧の中心に向けて入力される。即ち、ロックギアでは、内周面の内のギア膨出部における円弧を描くように形成された部分が回転カムのカム面に対して当接する。ロックギアのギア膨出部における円弧の部分に入力された荷重は円弧の中心に向く。このため、上記態様に係るシートのリクライニング装置では、ロックギアの寸法精度にバラツキがあり、ロック状態でのロックギアにおける内周面のギア膨出部に対する回転カムのカム面の係合箇所が設計の狙いから周方向にズレを生じた場合においても、上記交点の位置が変動することが抑制され、ロックギアに対して図12に示すような回転力が作用することが抑制される。
【0017】
従って、上記態様に係るシートのリクライニング装置では、ロックギアの寸法精度のバラツキを許容しつつ、シートバックから高荷重がかかってもロック強度の低下を抑制することができる。
【0018】
上記態様に係るシートのリクライニング装置において、前記複数のロックギアにおける前記ガイド壁との摺動範囲をB1とするとき、前記ギア膨出部における前記円弧の中心は、当該ロックギアの移動方向において、前記摺動範囲における前記外歯が形成された側の端部である摺動外端から、前記摺動範囲における前記摺動外端とは反対側の摺動内端に向けて前記B1の2/3の範囲内に位置するように設定されていることが好ましい。
【0019】
上記態様に係るシートのリクライニング装置では、ギア膨出部における円弧の中心が上記2/3の範囲内に位置していれば、ガイドブラケットからロックギアへの反力の大きさが円弧の中心よりも径方向外側と径方向内側とで著しい差異が生ずることがない。よって、簡単な構造でリクイニング装置のロック強度の低下を抑制することができる。
【0020】
上記態様に係るシートのリクライニング装置において、前記回転カムにおける前記カム面は、前記ロックギアの前記面部との当接箇所において、周辺部分よりも前記面部に向けて膨出するように形成されるように形成された少なくとも1箇所のカム膨出部を有することが好ましい。この場合に、前記カム膨出部は、少なくとも前記ロックギアの前記面部と当接する部分が円弧を描くように形成されるとともに、当該カム膨出部における前記前記円弧の中心が、前記回転カムの回転中心に対して所定距離だけ離間して位置するように形成されていることが好ましい。
【0021】
上記態様に係るシートのリクライニング装置では、円弧の中心が回転カムの回転中心に対して所定距離だけ離間して位置するように回転カムにおけるカム膨出部が形成されているので、ロック状態においてインターナルギアの内歯とロックギアの外歯との間に大きな荷重が入力されても、ロック強度の低下を抑制することができる。これは、回転カムにおけるカム膨出部の円弧の中心を上記位置となるようにすることで、回転カムからロックギアへ入力される力の方向を安定させることができるためである。
【0022】
上記態様に係るシートのリクライニング装置において、前記複数のロックギアの内の少なくとも一部のロックギアと、当該ロックギアの移動をガイドする前記ガイド壁と、前記回転カムとの間には、楔部材をさらに備えていてもよい。前記楔部材は、少なくとも前記カム面と当接する部分が前記カム面に向けて膨出する円弧を描くように形成されていることが好ましい。
【0023】
上記態様に係るシートのリクライニング装置では、少なくとも一部のロックギアとガイド壁との間に楔部材が介挿されているので、ロック強度を高く維持しながら、ロックギアのガタつきを抑えることができる。
【発明の効果】
【0024】
上記の各態様に係るシートのリクライニング装置では、ロックギアの寸法精度のバラツキを許容しつつ、シートバックから高荷重がかかってもロック強度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係るシートのリクライニング装置の構成を示す展開斜視図である。
図2】(a)はインターナルギアの構成を示す斜視図であり、(b)は回転カムの構成を示す斜視図である。
図3】(a)はロックギアの構成を示す斜視図であり、(b)はガイドブラケットの構成を示す斜視図である。
図4】ロック状態でのリクライニング装置を示す図である。
図5】アンロック状態でのリクライニング装置を示す図である。
図6】ロックギアの詳細構造を示す図である。
図7】回転カムの詳細構造を示す図である。
図8】インターナルギアからの径方向内向きの力の合力と、回転カムからロックギアへの荷重とのかかり方を示す図である。
図9】ガイド壁からロックギアへの力と、その反力とのかかり方を示す図である。
図10】変形例に係るシートのリクライニング装置の構成を示す図(一部拡大図)である。
図11】従来技術に係るシートのリクライニング装置を示す図(一部拡大図)である。
図12】従来技術に係るシートのリクライニング装置において、モーメント入力によって回転カムからロックギアへの荷重がかかる方向がずれることを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0027】
[実施形態]
1.シートのリクライニング装置1の構成
本実施形態に係るシートのリクライニング装置1の構成について、図1から図3を用いて説明する。
【0028】
図1に示すように、シートのリクライニング装置1(以下では、単に「リクライニング装置1」と記載する。)は、ガイドブラケット11と、インターナルギア12と、4つのロックギア13と、回転カム14と、ロックスプリング15と、カム取付けプレート16と、リング17と、を備える。ガイドブラケット11は、シートクッション(図示を省略。)に固定される部材であって、中央に貫通孔11aを有する円環板状の部材である。図3(b)に示すように、ガイドブラケット11は、一方の面(ロックギア13側の面)に、ロックギア13側に向けて突出するように周方向に所定の間隔で成形された4つのガイド部11cを有する。各ガイド部11cの側壁は、ロックギア13がインターナルギア12の径方向に移動する際のガイド壁として機能する。よって、以下では、ガイド部11cの各側壁をガイド壁11eと記載する。
【0029】
図1および図3(b)に示すように、ガイドブラケット11は、貫通孔11aに連続するように形成された2つの切欠き11bを有する。切欠き11bは、ロックスプリング15の外端部15aを係止するための部位である。図1に示すように、ガイドブラケット11は、他方の面(ロックギア13が配された側とは反対側の面)に、ロックギア13が配された側とは反対側に向けて突出形成された2つの凸部11dを有する。凸部11dは、ガイドブラケット11をシートクッションに固定する際に位置決めのために用いられる部位である。
【0030】
図1および図2(a)に示すように、インターナルギア12は、円筒部分の一方の開口が底壁12bで塞がれた構造を有する有底円筒形状の部材である。なお、底壁12bは、円筒部分と一体に形成されている。インターナルギア12の底壁12bは、中心部分に貫通孔12aを有する。図2(a)に示すように、インターナルギア12の底壁12bは、外側面(ガイドブラケット11が配された側とは反対側の面)に、ガイドブラケット11が配された側とは反対側に向けて突出形成された4つの凸部12cを有する。凸部12cは、インターナルギア12をシートバックに固定するために用いられる部位である。
【0031】
図1に示すように、インターナルギア12は、貫通孔12aの周囲の部分からガイドブラケット11側に突出形成された円環形状のリング部12dを有する。リング部12dは、カム取付けプレート16の貫通孔16aに嵌入される。また、インターナルギア12は、円筒部分の内周面に全周にわたって刻設された内歯12eを有する。インターナルギア12の内歯12eは、ロックギア13の外歯13aと噛合可能となるように形成されている。
【0032】
図1および図3(a)に示すように、4つのロックギア13のそれぞれは、外周面に刻設された外歯13aを有する。上述のように、外歯13aは、インターナルギア12の内歯12eに噛合可能となるように形成されている。また、ロックギア13は、内周面側において、周方向の一方側に向けて凹入するように形成された凹入部13bを有する。凹入部13bは、回転カム14の爪部14bの侵入を許す部位である。
【0033】
図3(a)に示すように、ロックギア13の各側壁13dは、ガイドブラケット11のガイド壁11eに沿って摺動可能となるような平面となっている。また、4つのロックギア13の内の対向するように配される2つのロックギア13は、インターナルギア12側に向けて突出形成された凸部13cを有する。凸部13cは、インターナルギア12に対する周方向での移動を所定範囲内に規制するための部位である。
【0034】
図1および図2(b)に示すように、回転カム14は、中心部分に貫通孔14aを有する。貫通孔14aは、小判形状を有し、操作レバーのロッド(図示を省略。)が固定される。回転カム14は、外周に4つの爪部14bを有する。各爪部14bは、上述のようにロックギア13の凹入部13bに侵入可能に設けられている。
【0035】
図2(b)に示すように、回転カム14における外周面は、回転カム14の回動によってロックギア13をインターナルギア12の径方向外側に押圧するためのカム面14cを備えている。カム面14cは、それぞれが回動の径方向外向きに膨出するように形成された膨出部(カム膨出部)14d,14eを有する。
【0036】
また、図1に示すように、回転カム14は、ガイドブラケット11側における貫通孔14aの周囲部分に径方向に延びるように形成された係合溝部14fを有する。係合溝部14fは、ロックスプリング15の内端部15bを係止する部位である。
【0037】
ロックスプリング15は、上述のように、外端部15aがガイドブラケット11の切欠き11bに係止され、内端部15bが回転カム14の係合溝部14fに係止されることによって、ガイドブラケット11に対して回転カム14をロック方向(図1において右回りの方向)に付勢する。
【0038】
図1に示すように、カム取付けプレート16は、中心部分に貫通孔16aを有する。上述のように、カム取付けプレート16は、インターナルギア12のリング部12dに対して貫通孔16aが嵌め込まれることにより、インターナルギア12に回動可能な状態で取り付けられる。カム取付けプレート16は、貫通孔16aの周囲に所定間隔で設けられた4つのダボ16bを有しており、このダボ16bを回転カム14に対して溶接することで、回転カム14に取り付けられている。
【0039】
リング17は、略円環形状を有する部材であって、ガイドブラケット11とインターナルギア12との間に、ロックギア13、回転カム14、およびカム取付けプレート16を配した状態で、ガイドブラケット11とインターナルギア12とを固定する部材である。
【0040】
2.リクライニング装置1におけるロック状態とアンロック状態
リクライニング装置1におけるロック状態とアンロック状態とについて、図4および図5を用いて説明する。図4は、ロック状態でのリクライニング装置1を示し、図5は、アンロック状態でのリクライニング装置1を示す。
【0041】
まず、図4に示すように、リクライニング装置1がロック状態にある場合には、ロックギア13の外歯13aがインターナルギア12の内歯12eに噛合する状態となっている。ロックギア13は、回転カム14のカム面14cから径方向外向きの荷重を受けて、径方向外側へと押圧された状態になる。
【0042】
なお、図4に示すように、リクライニング装置1がロック状態にある場合には、回転カム14の爪部14bはロックギア13の凹入部13bから周方向に脱離した状態にある。
【0043】
次に、図5に示すように、ユーザの操作レバーの操作に伴って回転カム14が矢印A方向に回動されることにより、リクライニング装置1がアンロック状態となる。すなわち、ロック状態からアンロック状態への遷移は、回転カム14が矢印A方向に回動されることにより、回転カム14の爪部14bがロックギア13の凹入部13bに侵入することで、各ロックギア13は径方向内側へと引き込まれる。なお、ロックギア13の径方向内側への移動は、当該ロックギア13の側壁13dがガイドブラケット11のガイド壁11eを摺動することでなされる。
【0044】
上記のように、ロックギア13が径方向内側へと移動することでロックギア13の外歯13aとインターナルギア12の内歯12eとの噛合が解除され、リクライニング装置1はアンロック状態となる。
【0045】
なお、リクライニング装置1をアンロック状態からロック状態へと遷移させる場合には、図5に示す状態から図4に示す状態へと状態変化させればよい。このようにすることで、各ロックギア13がロックスプリング15の付勢力により回転カム14を介して径方向外側へと押し出され、外歯13aがインターナルギア11eに噛合する。そして、回転カム14のカム面14cがロックギア13の径方向内側の面に当接することでロック状態が維持される。
【0046】
3.ロックギア13の詳細構造
ロックギア13の詳細構造について、図6を用いて説明する。なお、以下の説明では、外歯13aが形成されている側を径方向外側とし、反対側を径方向内側とする。そして、この場合の「径方向」は、インターナルギア12の径方向を指している。
【0047】
図6に示すように、ロックギア13は、径方向外側の外周面に外歯13aが形成されている。なお、本明細書では、ロックギア13における外歯13aが形成された外周面よりも径方向内側の部分を径内側部13eと記載する。
【0048】
ロックギア13は、径方向内側に内周面13fを有する。内周面13fは、少なくとも一部の面部が回転カム14のカム面14cと当接する。内周面13fは、上述のように、回転カム14の爪部14bに侵入を許す凹入部13bが設けられた構成を有する。そして、内周面13fは、周辺部分よりもカム面14cに向けて膨出するように形成された2箇所のギア膨出部13g,13hを有する。
【0049】
本実施形態では、一例として、ギア膨出部13gは円弧中心がP1で半径がR1の円弧を描くように形成されており、ギア膨出部13hは円弧中心がP2で半径がR2の円弧を描くように形成されている。
【0050】
ここで、ロックギア13の側壁13dにおいて、ガイドブラケット11のガイド壁11eとの摺動における径方向外側の端部(摺動外端)をP3、径方向内側の端部(摺動内端)をP4とする。そして、側壁13dに沿う方向での摺動外端P3から摺動内端P4までの距離をB1とする。さらに、円弧中心P1を通り中心線L0に直交する仮想線L11と、円弧中心P2を通り中心線L0に直交する仮想線L12とを設定する。
【0051】
上記の場合において、仮想線L11および仮想線L12は、ともに摺動外端P3から摺動内端P4に向けて距離B2だけ離れた箇所までの範囲内に配置される。距離B2は、距離B1の2/3である。即ち、本実施形態では、ギア膨出部13g,13hの各円弧中心P1,P2は、径方向内側であって側壁13dに沿う方向において、摺動外端P3から距離B2(距離B1の2/3)の範囲内に配置されている。円弧中心P1,P2の具体的位置については、後に詳述する。
【0052】
なお、本実施形態では、ロックギア13の当接面13fに2箇所のギア膨出部13g,13hが設けられてなる構成を採用しているが、ギア膨出部の形成箇所数については、1箇所でもよいし、3箇所以上でもよい。また、本実施形態では、ギア膨出部13g,13hの全体が円弧を描くように形成されることとしているが、回転カム14のカム面14cと当接する領域を含んでいれば、必ずしも全体を円弧形状とする必要はない。
【0053】
4.回転カム14におけるカム面14cの詳細構造
回転カム14におけるカム面14cの詳細構造について、図7を用いて説明する。なお、以下の説明においても、径方向外側および径方向内側との記載は上記ロックギア13に関する説明と同義で使用する。
【0054】
図7に示すように、回転カム14のカム面14cは、周辺部分よりもロックギア13における内周面13fの面部(ロック状態でカム面14cに当接する部分)に向けて膨出するように形成されたカム膨出部14d,14eを有する。本実施形態では、一例として、カム膨出部14dは円弧中心がP5で半径がR3の円弧を描くように形成されており、カム膨出部14eは円弧中心がP6で半径がR4の円弧を描くように形成されている。
【0055】
円弧中心P5,P6は、回転カム14の回転中心P0に対して所定距離だけ離間して配置されている。
【0056】
本実施形態では、カム膨出部14dが爪部14bから離間した位置に設けられ、カム膨出部14eが爪部14bの近傍の位置に設けられている。ただし、カム膨出部を設ける位置については、ロックギア13における内周面13fの面部に当接する領域であれば、これに限定されるものではない。
【0057】
また、本実施形態では、回転カム14のカム面14cに2箇所のカム膨出部14d,14eが設けられてなる構成を採用しているが、カム膨出部の形成箇所数については、1箇所でもよいし、3箇所以上でもよい。また、本実施形態では、カム膨出部14d,14eの全体が円弧を描くように形成されることとしているが、ロックギア13における内周面13fの面部に当接する領域を含んでいれば、必ずしも全体を円弧形状とする必要はない。
【0058】
5.ロックギア13におけるギア膨出部13g,13hの円弧中心P1,P2
図6を用いて説明したように、ロックギア13におけるギア膨出部13g,13hの円弧中心P1,P2は、ガイド壁11eとの摺動に係る摺動外端P3を基準とした場合に、径方向内側であって側壁13dに沿う方向において、摺動外端P3から距離B2(距離B1の2/3)の範囲内に配置されている。本実施形態において、円弧中心P1,P2は、ロック状態でのインターナルギア12から径方向内向きの力の合力が作用する方向に沿って延びる線(仮想線)と、回転カム14からギア膨出部13g,13hを通りロックギア13へ入力される荷重F3,F4が作用する方向に沿って延びる線(仮想線)との交点を基準とする位置に配置されている。これについて、図8を用いて説明する。
【0059】
図8に示すように、リクライニング装置1がロック状態である場合において、インターナルギア12から径方向内向きの力の合力F1,F2が作用する方向に沿って第1仮想線L1,L2を引く。また、リクライニング装置1がロック状態である場合において、回転カム14からギア膨出部13g,13hを通りロックギア13へ入力される荷重F3,F4が作用する方向に沿って第2仮想線L3,L4を引く。
【0060】
ここで、インターナルギア12から径方向内向きの力の合力F1が作用する方向に沿って引かれる第1仮想線L1は、ロック状態において、ロックギア13の全ての外歯13aの歯面の内のシート後方側(図8の紙面右側)にかかる力の合成ベクトルに沿う線である。同様に、インターナルギア12から径方向内向きの力の合力F2が作用する方向に沿って引かれる第2仮想線L2は、ロック状態において、ロックギア13の全ての外歯13aの歯面の内のシート前方側(図8の紙面左側)にかかる力の合成ベクトルに沿う線である。
【0061】
図8に示すように、第2仮想線L3,L4は、回転カム14の回転中心P0の近傍であって回転中心P0から所定距離だけ離間した点P9を始点とし、回転カム14からギア膨出部13g,13hを通りロックギア13へ入力される。第2仮想線L3,L4の始点は、図7に示す点P5、P6であってもよい。
【0062】
6.ロック状態でのロックギア13への力の作用
本実施形態に係るリクライニング装置1において、ロックギア13に対する、インターナルギア12、回転カム14、およびガイドブラケット11からの力の作用について、図9を用いて説明する。
【0063】
図9に示すように、インターナルギア12に対して前後方向(図9の左右方向)への回転モーメントが加わっていない状態では、インターナルギア12から径方向内向きの力の合力F1,F2と、回転カム14からロックギア13へ入力される荷重F3,F4とで釣り合っている。
【0064】
一方、インターナルギア12に対してシートの前後方向の一方に向けた回転モーメントが加わると、合力F1と合力F2との釣り合い状態が崩れ、一方の力が増大し、他方の力が低下する。この状態では、ロックギア13の側壁13dからガイドブラケット11のガイド壁11eに入力される力は、図9の左右において、一方が大きくなり、他方が小さくなる。ガイドブラケット11のガイド壁11eからロックギア13の側壁13dに入力される反力についても、ロックギア13の側壁13dからガイドブラケット11のガイド壁11eに入力される力の大小に連動して、一方が大きくなり、他方が小さくなる。
【0065】
しかしながら、本実施形態に係るリクライニング装置1では、ロックギア13における内周面13fの面部(ロック状態でカム面14cに当接する部分)に上述の特徴を有するギア膨出部13g,13hを設けているので、回転カム14から入力される荷重F3,F4は、円弧形状のギア膨出部13g,13hを通りロックギア13へと入力される。よって、本実施形態に係るリクライニング装置1では、ロック状態においてインターナルギア12に対して前後方向の回転モーメントが加わったとしても、図8を用いて説明した交点P7,P8が図12のように周方向にズレてしまうのを抑制することができる。
【0066】
7.効果
本実施形態に係るリクライニング装置1では、複数のロックギア13のそれぞれがギア膨出部13g,13hを有する。そして、ギア膨出部13g,13hは、円弧を描くように形成され、円弧中心P1,P2が第1仮想線L1,L2と第2仮想線L3,L4との交点P7,P8またはその近傍(第2仮想線L3,L4上における交点P7,P8とギア膨出部13g,13hとの間の箇所)に位置するように形成されている。円弧中心P1,P2は、交点であることが好ましいが、交点でなくとも、交点に近い位置であることが好ましい。このため、リクライニング装置1では、ロックギア13の寸法精度にバラツキがあり、ロック状態でのロックギア13における内周面13fのギア膨出部13g,13fに対する回転カム14のカム面14cの係合箇所が設計の狙いから周方向にズレを生じた場合においても、回転カム14からロックギア13への荷重F3,F4はギア膨出部13g,13hの各円弧中心P1,P2に向けて入力される。即ち、ロックギア13では、内周面13fに設けられたギア膨出部13g,13hが回転カム14のカム面14cのカム膨出部14d,14eに対して当接し、回転カム14のカム面14cのカム膨出部14d,14eからロックギア13のギア膨出部13g,13hに入力された荷重F3,F4は円弧中心P1,P2に向く。このとき、第1仮想線L1,L2と第2仮想線L3,L4との交点P7,P8の位置と円弧中心とが一致していれば、ロックギア13の寸法精度にバラツキがある状態でリクライニング装置1にモーメント入力がある場合に、ロックギア13が回転したとしても、その膨出部13g,13hが周方向および径方向に著しくズレることはない。このため、図12で示すようなロックギア13のさらなる回転力を抑制できる。
【0067】
従って、リクライニング装置1では、ロックギア13の寸法精度のバラツキを許容しつつ、シートバックから高荷重がかかってもロック強度の低下を抑制することができる。
【0068】
また、リクライニング装置1では、ギア膨出部13g,13hにおける円弧中心P1,P2が摺動外端P3からB2(B1の2/3)の距離の範囲内に位置する。仮に、ギア膨出部13g,13hにおける円弧中心P1,P2が摺動外端P3からB2(B1の2/3)の距離を超えた径方向内側の領域に設定された場合、モーメントが入力されてロックギアが傾くと、交点が径方向外側にずれ、ロックギア13が回転しやすくなるため、好ましくない。一方、円弧中心P1,P2が摺動外端P3からB2(B1の2/3)の距離の範囲内であれば、インターナルギア12に対して前後方向の回転モーメントが加わってロックギアが交点を中心にガイド壁11eに対して多少傾いたとしても、リクライナにギア膨出部13g,13hの各円弧中心P1,P2の位置に大きな変化はなく、ガイドブラケット11からロックギア13への反力の大きさが円弧中心P1,P2の径方向の内外で大きな差異が生じない。そのため、ロックギア13がインターナルギアの内歯から著しく脱離せず、図12で示すようなロックギア13のさらなる回転力を抑制でき、ロックギア13の外歯13aが破損するまでは至らない。よって、ロックギア13におけるギア膨出部13g,13hを、円弧中心P1,P2が摺動外端P3から距離B2の範囲内に位置するように形成しておけば、ロックギア13の寸法精度にバラツキがあり、ロック状態でのロックギア13における内周面13fのギア膨出部13g,13hに対する回転カム14のカム面14cの係合箇所が設計の狙いから周方向にズレを生じた場合においても、リクライニング装置のロック強度の低下を抑制することができる。円弧中心P1,P2は、第2仮想線L3,L4上であって、B1の2/3の領域にあることが好ましいが、第1仮想線L1,L2と第2仮想線L3,L4との交点P7,P8の位置に近い方がさらに好ましい。
【0069】
また、リクライニング装置1では、円弧中心P5,P6が回転カム14の回転中心P0に対して所定距離だけ離間して位置するように回転カム14におけるカム膨出部14d,14eが形成されているので、ロック状態においてインターナルギア12の内歯12eとロックギア13の外歯13aとの間に大きな荷重が入力されても、ロック強度の低下を抑制することができる。これは、回転カム14におけるカム膨出部14d,14eの円弧中心P5,P6を回転中心P0に対して所定距離だけ離間して位置に配置することで、回転カム14からロックギア13へ入力される力の方向を安定させることができるためである。
【0070】
以上説明のように、本実施形態に係るリクライニング装置1では、ロックギア13の寸法精度のバラツキを許容しつつ、シートバックから高荷重がかかってもリクライニング装置のロック強度の低下を抑制することができる。
【0071】
[変形例]
変形例に係るシートのリクライニング装置(以下では、単に「リクライニング装置」と記載する。)の構成について、図10を用いて説明する。なお、図10では、上記実施形態に係るリクライニング装置1と同様の構成部分には同じ符号を付している。そして、上記実施形態と重複する説明については省略する。
【0072】
図10に示すように、本変形例に係るリクライニング装置2は、上記実施形態に係るリクライニング装置1が備える構成に加えて、2つの楔部材21を備える。各楔部材21は、平面視で一辺が円弧形状の略三角形状を有する。各楔部材21は、円弧形状を有する面が回転カム14のカム面14cに当接するように配されている。即ち、楔部材21では、円弧形状を有する面が回転カム14のカム面14cに当接する当接面21aである。
【0073】
なお、本実施形態では、4つのロックギア13の内の対向する2つのロックギア13に対して、ガイドブラケット11のガイド部11cとの間に楔部材21が介挿された形態を採用する。ただし、4つのロックギア13とガイドブラケット11のガイド部11cとの間の全てに楔部材21を介挿することとしてもよい。
【0074】
図10の拡大部分に示すように、楔部材21の当接面21aは、上記実施形態のギア膨出部13g,13hと同様に、インターナルギア12の径方向における内側に凸となる円弧で形成されている。
【0075】
本変形例に係るリクライニング装置2は、上記実施形態に係るリクライニング装置1と同様の効果を得ることができる。加えて、本変形例に係るリクライニング装置2では、2つのロックギア13とガイド部11cのガイド壁11eとの間に楔部材21が介挿されているので、ロック強度を高く維持しながら、ロックギア13のガタつきを抑えることができる。即ち、楔部材21は、カム面14cと当接する当接面21aが円弧を描くように形成されるとともに、ロックギア13の一部を成すように機能するため、ロック時におけるロック強度を高く維持しながら、インターナルギア12に対するロックギア13のガタつきを抑制することができる。
【0076】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例では、4つのロックギア13を備える構成を採用したが、本発明は、ロックギア13の数についてこれに限定を受けるものではない。例えば、2つまたは3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態および上記変形例では、ガイドブラケット11がシートクッションに固定され、インターナルギア12がシートバックに固定される構成を採用したが、本発明は、逆に、ガイドブラケット11がシートバックに固定され、インターナルギア12がシートクッションに固定される構成を採用することもできる。
【0078】
上記実施形態および上記変形例では、ロックギア13の内周面13fにギア膨出部13g,13fを設け、回転カム14のカム面14cにカム膨出部14d,14eを設けることとしたが、本発明では、カム膨出部14d,14eについては必須の構成ではない。
【0079】
また、上記実施形態および上記変形例では、ロックギア13の内周面13fに2箇所のギア膨出部13g,13hを設けることとしたが、本発明では、少なくとも1箇所のギア膨出部を設ければ足りる。同様に、上記実施形態および上記変形例では、回転カム14のカム面14cに2箇所のカム膨出部14d,14eを設けることとしたが、本発明では、少なくとも1箇所のカム膨出部を設ければ足りる。
【0080】
さらに、上記実施形態および上記変形例では、ロックギア13におけるギア膨出部13g,13hについて、カム面14c側に向けて膨出した外縁部全体が円弧を描くようにしたが、本発明では、少なくともギア膨出部におけるカム面との当接領域について円弧を描くようにしておけば足りる。同様に、上記実施形態および上記変形例では、回転カム14におけるカム膨出部14d,14eについて、内周面13fにおける面部(カム面との当接部分)側に向けて膨出した外縁部全体が円弧を描くようにしたが、本発明では、少なくともカム膨出部における当接面との当接領域について円弧を描くようにしておけば足りる。
【符号の説明】
【0081】
1,2 シートのリクライニング装置
11 ガイドブラケット
11e ガイド壁
12 インターナルギア
12e 内歯
13 ロックギア
13a 外歯
13e 径内側部
13f 内周面
13g,13h 膨出部(ギア膨出部)
14 回転カム
14c カム面
14d,14e 膨出部(カム膨出部)
21 楔部材
21a 当接面
L1,L2 第1仮想線
L3,L4 第2仮想線
P1,P2 円弧中心(ギア膨出部の円弧中心)
P5,P6 円弧中心(カム膨出部の円弧中心)
P7,P8 交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12