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  • 特開-分離装置 図1
  • 特開-分離装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131424
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】分離装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/10 20060101AFI20240920BHJP
   H04B 3/54 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H04B1/10 L
H04B3/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041679
(22)【出願日】2023-03-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「車載ハーネスの軽量化を実現する有線/無線連携通信技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
【テーマコード(参考)】
5K046
5K052
【Fターム(参考)】
5K046AA03
5K046BA05
5K046CC17
5K046PS06
5K046PS22
5K046PS52
5K046PS54
5K046PS57
5K052AA01
5K052BB11
5K052BB15
5K052DD07
5K052DD11
5K052FF32
5K052GG19
(57)【要約】
【課題】電力線通信の行われる電力ラインから分離された電力信号に含まれるノイズを低減することができる分離装置を提供する。
【解決手段】分離装置1は、電力ライン5を流れる通信信号の重畳された電力信号から電力信号を分離するフィルタ11と、電力ライン5を流れる電力信号から通信信号を抽出する結合回路13と、電源ライン5を流れる通信信号に応じた信号の振幅を調整する調整部14と、フィルタ11によって分離された電力信号から、調整部14によって振幅の調整された信号を減算する減算部15と、減算部15から出力された電力信号に含まれる、通信信号に起因するノイズを推定する推定部16と、を備え、調整部14は、推定部16によって推定されたノイズが少なくなるように振幅を適応的に調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ラインを流れる通信信号の重畳された電力信号から電力信号を分離するフィルタと、
前記電力ラインを流れる電力信号から通信信号を抽出する結合回路と、
前記電源ラインを流れる通信信号に応じた信号の振幅を調整する調整部と、
前記フィルタによって分離された電力信号から、前記調整部によって振幅の調整された信号を減算する減算部と、
前記減算部から出力された電力信号に含まれる、通信信号に起因するノイズを推定する推定部と、を備え、
前記調整部は、前記推定部によって推定されたノイズが少なくなるように前記振幅を適応的に調整する、分離装置。
【請求項2】
前記通信信号に応じた信号は、前記結合回路によって抽出された通信信号である、請求項1記載の分離装置。
【請求項3】
前記結合回路は、前記電力ラインを流れる電力信号への通信信号の重畳をも行うものであり、
前記結合回路によって通信信号を重畳する際には、前記通信信号に応じた信号は、前記結合回路によって重畳される通信信号である、請求項1記載の分離装置。
【請求項4】
前記結合回路によって抽出された通信信号を復調する受信部と、
前記結合回路によって重畳される通信信号を変調する送信部と、をさらに備え、
前記結合回路によって通信信号が抽出される場合には、前記送信部は、前記受信部によって復調された通信信号を変調し、前記通信信号に応じた信号は、前記送信部によって変調された通信信号である、請求項3記載の分離装置。
【請求項5】
前記フィルタによって分離された電力信号を遅延させる遅延部をさらに備え、
前記減算部は、前記遅延部によって遅延された電力信号から、前記調整部によって振幅の調整された信号を減算する、請求項1から請求項4のいずれか記載の分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信信号の重畳された電力信号から電力信号を分離する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力信号に通信信号を重畳して通信を行う電力線通信(PLC)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。電力線通信が行われている場合には、例えば、電力線通信の行われている電力ラインからフィルタによって分離された電力信号が、電子機器等において用いられることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-108046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電力ラインからフィルタによって分離された電力信号に、通信用の高周波信号がノイズとして入っていることがありうる。そのような場合には、そのノイズによって電力の供給先の電子機器等が誤動作する可能性が考えられる。特に、電力の供給先の電子機器等に高い安全性が求められる場合には、そのようなノイズを含まない電力信号を電子機器等に供給することが好適である。
【0005】
本発明は、上記状況に応じてなされたものであり、電力線通信用の電力ラインから分離した電力信号に含まれる、通信信号に起因するノイズを低減することができる分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による分離装置は、電力ラインを流れる通信信号の重畳された電力信号から電力信号を分離するフィルタと、電力ラインを流れる電力信号から通信信号を抽出する結合回路と、電源ラインを流れる通信信号に応じた信号の振幅を調整する調整部と、フィルタによって分離された電力信号から、調整部によって振幅の調整された信号を減算する減算部と、減算部から出力された電力信号に含まれる、通信信号に起因するノイズを推定する推定部と、を備え、調整部は、推定部によって推定されたノイズが少なくなるように振幅を適応的に調整する、ものである。
このような構成により、電力ラインから分離された電力信号に含まれる、通信信号に起因するノイズを低減することができ、その電力信号の供給先の電子機器等において、誤動作の発生する可能性を低減することができる。また、そのノイズを低減できるため、電力信号の流れる配線から放射される、通信信号に起因する干渉波も低減することができる。
【0007】
また、本発明の一態様による分離装置では、通信信号に応じた信号は、結合回路によって抽出された通信信号であってもよい。
このような構成により、電力ラインから抽出された通信信号を用いて、電力信号に含まれるノイズを低減することができる。
【0008】
また、本発明の一態様による分離装置では、結合回路は、電力ラインを流れる電力信号への通信信号の重畳をも行うものであり、結合回路によって通信信号を重畳する際には、通信信号に応じた信号は、結合回路によって重畳される通信信号であってもよい。
このような構成により、電力ラインに通信信号を重畳する際に、電力信号に含まれるノイズを低減することができるようになる。
【0009】
また、本発明の一態様による分離装置では、結合回路によって抽出された通信信号を復調する受信部と、結合回路によって重畳される通信信号を変調する送信部と、をさらに備え、結合回路によって通信信号が抽出される場合には、送信部は、受信部によって復調された通信信号を変調し、通信信号に応じた信号は、送信部によって変調された通信信号であってもよい。
このような構成により、ノイズを含まない通信信号を再現することができ、その通信信号を用いて、電力信号に含まれるノイズを低減することができる。
【0010】
また、本発明の一態様による分離装置では、フィルタによって分離された電力信号を遅延させる遅延部をさらに備え、減算部は、遅延部によって遅延された電力信号から、調整部によって振幅の調整された信号を減算してもよい。
このような構成により、フィルタによって分離された電力信号を遅延させることによって、その電力信号に含まれる通信信号と、調整部によって振幅の調整された信号とのタイミングを合わせることができ、ノイズをより適切に低減することができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様による分離装置によれば、電力ラインから分離された電力信号に含まれる、通信信号に起因するノイズを低減することができ、その電力信号の供給先の電子機器等において、誤作動の発生する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態による分離装置の構成を示すブロック図
図2】同実施の形態による分離装置の他の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による分離装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による分離装置は、電力ラインから分離された電力信号に含まれる、通信信号に起因するノイズを適応的に低減するものである。
【0014】
図1は、本実施の形態による分離装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態による分離装置1は、電力線通信の行われる電力ライン5から電力信号を分離するものであり、フィルタ11と、遅延部12と、結合回路13と、調整部14と、減算部15と、推定部16とを備える。分離装置1によって分離された電力信号は、例えば、電子機器2に供給されてもよい。分離装置1から電力が供給される電子機器2は特に限定されないが、例えば、精密測定を行う機器や、オーディオ機器、自動車の電子機器などであってもよい。また、分離装置1によって分離された電力信号は、例えば、通信装置3にも供給されてもよい。また、一例として、分離装置1と、通信装置3の少なくとも一部とによって電力線通信モデムが構成されてもよい。この場合には、分離装置1は、例えば、電力線通信モデムの一部を構成するものであってもよい。
【0015】
フィルタ11は、電力ライン5を流れる通信信号の重畳された電力信号から電力信号を分離する。電力信号は、通常、通信信号よりも低周波の信号である。したがって、フィルタ11は、例えば、チョークコイルなどのローパスフィルタであってもよい。ローパスフィルタの遮断周波数は、電力信号を通過させ、通信信号を遮断するように選択されることが好適である。電力信号は、例えば、50Hzや60Hzなどの交流の信号であってもよく、直流の信号であってもよい。前者の場合には、電力ライン5は、例えば、商用電源であってもよい。また、通信信号の周波数は特に限定されないが、例えば、10kHzから450kHzまでの周波数であってもよく、1MHzから30MHzまでの周波数であってもよく、その他の周波数であってもよい。
【0016】
遅延部12は、フィルタ11によって分離された電力信号を遅延させて、減算部15に出力する。遅延部12の構成は特に限定されないが、遅延部12は、一例として、所定の長さの導電性のケーブルを有していてもよい。このケーブルの長さに応じて、電力信号の遅延時間が決まることになる。電力信号の遅延時間は、減算部15に入力される電力信号に含まれる通信信号の成分と、調整部14によって振幅が調整された信号とのタイミングが合うように決定されることが好適である。したがって、このケーブルの長さは、そのタイミングが合うように適宜、変更されてもよい。また、遅延部12では、例えば、電力信号の遅延の程度を調節できてもよい。この場合には、遅延部12は、例えば、異なる長さの複数のケーブルを有していてもよい。そして、所望の遅延量に応じた長さのケーブルが選択されることによって、電力信号の遅延時間が選択されてもよい。
【0017】
結合回路13は、少なくとも、電力ライン5を流れる電力信号、すなわち通信信号の重畳された電力信号から通信信号を抽出する。また、結合回路13は、例えば、電力ライン5を流れる電力信号への通信信号の重畳をも行ってもよい。本実施の形態では、一例として、結合回路13が、電力ライン5を流れる電力信号からの通信信号の抽出と、電力ライン5を流れる電力信号への通信信号の重畳との両方を行う場合について主に説明するが、結合回路13は、通信信号の抽出のみを行うものであってもよい。結合回路13は特に限定されないが、例えば、パルストランスなどであってもよい。図1で示されるように、結合回路13は、例えば、電力ライン5から抽出した通信信号を通信装置3に出力してもよく、通信装置3から入力された通信信号を電力ライン5に重畳してもよい。
【0018】
調整部14は、電力ライン5を流れる通信信号に応じた信号の振幅を調整し、調整後の信号を減算部15に出力する。この振幅の調整は、推定部16によって推定されたノイズが少なくなるように適応的に行われる。結合回路13によって通信信号が抽出される際には、電力ライン5を流れる通信信号に応じた信号、すなわち振幅の調整対象の信号は、例えば、結合回路13によって抽出された通信信号であってもよい。この場合には、結合回路13で抽出され、通信装置3に出力される通信信号の振幅が調整されてもよい。また、結合回路13によって通信信号が重畳される際には、電力ライン5を流れる通信信号に応じた信号は、例えば、結合回路13によって重畳される通信信号であってもよい。この場合には、通信装置3から結合回路13に出力される、重畳対象の通信信号の振幅が調整されてもよい。
【0019】
調整部14は、例えば、推定部16によってノイズの推定が行われるごとに、そのノイズが少なくなるように調整対象の信号の振幅を調整してもよい。例えば、減算部15における信号の減算の程度が足りない場合には、調整部14は、振幅を増大させるように調整してもよい。また、例えば、減算部15における信号の減算の程度が大きすぎる場合には、調整部14は、振幅を減少させるように調整してもよい。電力線通信を行う通信装置3は、通常、通信信号の送信と、通信信号の受信とを同時に行うことはできず、一方のみを行うことになる。その通信装置3による送受信の切り替えによって、振幅の調整の程度も変更されることになる。そのため、通信装置3は、送受信を切り替えた際に、送受信を切り替えたことを示す送受切替信号を調整部14に出力してもよい。そして、調整部14は、例えば、送受切替信号を受け取った際に、振幅の調整をリセットして、新たな調整を行うようにしてもよい。
【0020】
また、例えば、受信から送信に切り替えられたことを示す送受切替信号を受け取った場合に、調整部14は、通信装置3から出力される通信信号を、振幅の調整対象としてもよい。また、例えば、送信から受信に切り替えられたことを示す送受切替信号を受け取った場合に、調整部14は、結合回路13から出力される通信信号を、振幅の調整対象としてもよい。なお、送受切替信号を受け取らない場合には、調整部14は、例えば、通信装置3から出力される信号と、結合回路13から出力される信号のうち、振幅の大きい方の信号を、振幅の調整対象としてもよい。
【0021】
また、電力ライン5に通信信号を重畳する際にも、減算部15において、電力信号に含まれる通信信号の成分と、調整部14によって振幅が調整された信号とのタイミングが合うようにするため、通信装置3から調整部14に出力される通信信号が遅延されてもよい。すなわち、分離装置1は、通信装置3から調整部14に出力される通信信号を遅延させるための遅延部をさらに備えていてもよい。この遅延部は、遅延部12と同様の構成であってもよい。なお、通信装置3から出力される通信信号のうち、調整部14に出力される通信信号のみが遅延部によって遅延され、結合回路13に入力される通信信号は遅延部によって遅延されないことが好適である。
【0022】
減算部15は、フィルタ11によって分離され、遅延部12によって遅延された電力信号から、調整部14によって振幅の調整された信号を減算する。この処理によって、フィルタ11によって分離された電力信号に含まれる通信信号の成分が低減されることになる。減算部15は、例えば、遅延部12から入力された信号から、調整部14から入力された信号を減算する減算器であってもよい。減算部15からの電力信号は、図1で示されるように、例えば、推定部16、及び電子機器2に出力されてもよい。
【0023】
推定部16は、減算部15から出力された電力信号、すなわち通信信号成分の低減された電力信号に含まれるノイズを推定する。このノイズは、通信信号に起因するノイズである。このノイズの推定は、例えば、ノイズの大きさの推定であってもよい。推定部16は、例えば、減算部15から出力された電力信号をハイパスフィルタに入力し、そのハイパスフィルタの出力に基づいて、ノイズの推定を行ってもよい。この場合には、ハイパスフィルタからの出力のレベルが大きいほど、より大きいノイズのレベルが推定されてもよい。ハイパスフィルタの遮断周波数は、通信信号を通過させ、電力信号を遮断するように選択されることが好適である。また、推定部16は、例えば、減算部15から出力された電力信号をフーリエ変換し、周波数領域における通信信号の周波数帯における信号の大きさに基づいて、ノイズの推定を行ってもよい。この場合には、通信信号の周波数帯における信号の大きさが大きいほど、より大きいノイズのレベルが推定されてもよい。また、電力信号が交流である場合には、例えば、減算部15から出力された電力信号と、その電力信号に振幅及び位相がマッチングする正弦波との差に基づいて、ノイズの推定を行ってもよい。この場合には、その差が大きいほど、より大きいノイズのレベルが推定されてもよい。また、電力信号が直流である場合には、例えば、減算部15から出力された電力信号から直流成分を除いた結果に基づいて、ノイズの推定を行ってもよい。この場合には、電力信号から直流成分を除いた結果のレベルが大きいほど、より大きいノイズのレベルが推定されてもよい。
【0024】
推定部16は、例えば、ノイズの推定を繰り返して行うことが好適である。一例として、推定部16は、ノイズの推定を定期的に繰り返してもよい。この繰り返しの周期は、例えば、電力線通信で送受信されるパケットの時間方向の長さよりも短いことが好適である。ノイズのレベルは、例えば、通信相手などによって変化するからである。
【0025】
次に、本実施の形態による分離装置1の動作について、具体例を用いて説明する。まず、電力ライン5から通信信号を抽出して通信装置3に出力する際の処理について説明する。この場合には、結合回路13は、電力ライン5から通信信号を抽出し、その通信信号を通信装置3、及び調整部14に出力する。通信装置3に出力された通信信号は、通信装置3において復調され、後段の装置(例えば、パソコンなど)に渡されてもよい。後段の装置は、一例として、電子機器2であってもよい。また、調整部14に出力された通信信号は、調整部14で振幅が調整され、その振幅の調整後の通信信号が、減算部15において、フィルタ11で分離され、遅延部12で遅延された電力信号から減算される。その減算後の電力信号は、推定部16、及び電子機器2に出力される。電子機器2は、このようにして供給された電力によって動作することになる。推定部16は、減算部15から出力された電力信号に含まれる、通信信号に起因するノイズを推定し、その推定結果を調整部14に出力する。そして、調整部14は、推定部16によって推定されるノイズが少なくなるように、結合回路13から出力される通信信号の振幅を適応的に調整する。このようにして、減算部15から出力される電力信号に含まれるノイズが低減される。
【0026】
次に、通信装置3から出力された通信信号を電力ライン5に重畳する際の処理について説明する。この場合には、通信装置3は、結合回路13、及び調整部14に通信信号を出力する。結合回路13に入力された通信信号は、結合回路13によって電力ライン5の電力信号に重畳される。また、調整部14に入力された通信信号は、調整部14で振幅が調整され、その振幅の調整後の通信信号が、減算部15において、フィルタ11で分離され、遅延部12で遅延された電力信号から減算される。その減算後の電力信号は、推定部16、及び電子機器2に出力される。推定部16は、減算部15から出力された電力信号に含まれる、通信信号に起因するノイズを推定し、その推定結果を調整部14に出力する。そして、調整部14は、推定部16によって推定されるノイズが少なくなるように、結合回路13から出力される通信信号の振幅を適応的に調整する。このようにして、減算部15から出力される電力信号に含まれるノイズが低減される。なお、通信信号を電力ライン5の電力信号に重畳する際には、通信装置3の通信相手以外の電力線通信システムが送受信する通信信号が電力ライン5を流れている可能性もある。しかしながら、この場合には、フィルタ11において分離された電力信号に含まれる、最も強度の大きい通信信号は、結合回路13によって電力信号に重畳された通信信号であると考えられるため、通信装置3から結合回路13に出力される通信信号の振幅を調整して、フィルタ11によって分離された電力信号から減算することによって、電力信号に含まれる通信信号成分を効果的に低減することができるようになる。
【0027】
以上のように、本実施の形態による分離装置1によれば、電力線通信で用いられる電力ライン5から分離された電力信号に含まれる、通信信号に起因するノイズ成分を低減することができる。そのため、その電力信号の供給先の電子機器2等において、誤作動の発生する可能性を低減することができる。また、減算部15から電子機器2等までの配線から、電力信号に含まれる高周波成分に起因する干渉電波が放射される可能性を低減することもできる。このようにして、電子機器2等への配線が干渉源とならないようにすることもできる。また、遅延部12を備えることによって、減算部15において、電力信号に含まれる通信信号と、調整部14によって振幅の調整された信号とのタイミングを合わせることができ、ノイズをより適切に低減することができるようになる。
【0028】
なお、本実施の形態では、結合回路13によって抽出された通信信号が通信装置3に出力される場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。結合回路13によって抽出された通信信号は、例えば、電力ライン5から分離した電力信号に含まれる通信信号成分の低減の処理にのみ用いられてもよい。この場合には、結合回路13は、例えば、電力信号から通信信号を抽出する処理のみを行い、電力信号に通信信号を重畳する処理は行わなくてもよい。
【0029】
また、本実施の形態では、結合回路13によって電力ライン5から通信信号が抽出される際に、その抽出された通信信号の振幅が直接、調整される場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。結合回路13によって電力ライン5から通信信号が抽出される際に、結合回路13によって電力ライン5から抽出された通信信号の送信時の信号を再現し、その再現した信号の振幅を調整するようにしてもよい。この場合には、通信装置3の少なくとも一部の構成が分離装置1に含まれていてもよい。具体的には、図2で示されるように、分離装置1は、受信部31、及び送信部32をさらに備えており、必要に応じて、制御部33をさらに備えていてもよい。
【0030】
受信部31は、結合回路13によって電力ライン5から抽出された通信信号を復調する。受信部31は、例えば、復調後の通信信号を、後段の装置等(例えば、パソコンなど)に出力してもよい。
【0031】
送信部32は、結合回路13によって電力ライン5に重畳される通信信号を変調する。すなわち、送信部32は、前段の装置等(例えば、パソコンなど)から受け取った電力線通信用の通信信号を変調して、結合回路13、及び調整部14に出力する。
【0032】
また、結合回路13によって通信信号が抽出される際に、受信部31は、抽出された通信信号を復調し、送信部32は、受信部31によって復調された通信信号を変調して調整部14に出力してもよい。この場合には、調整部14において振幅の調整の対象となる、電力ライン5を流れる通信信号に応じた信号は、送信部32によって変調された通信信号となる。したがって、通信信号の送信時の信号を再現し、その再現した信号の振幅を、調整部14によって調整することになる。このようにしても、電力信号に含まれる、通信信号に起因するノイズを低減することができる。上記したように、通常、通信信号の送信と、通信信号の受信の一方のみが行われるため、結合回路13によって通信信号が抽出される際には、送信部32は、電力線通信用の通信信号を変調する必要はないため、受信部31によって復調された通信信号を変調することができる。なお、通信装置3が通信信号を送信する際の処理は、上記説明と同様であり、その説明を省略する。また、制御部33は、例えば、受信部31や送信部32による受信タイミングや送信タイミングに関する制御を行ってもよい。また、制御部33は、例えば、調整部14に送受切替信号を出力してもよい。
【0033】
また、本実施の形態では、分離装置1が遅延部12を有する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。例えば、遅延部12がなくても、電力信号に含まれる、通信信号に起因するノイズを適切に低減できる場合には、分離装置1は、遅延部12を備えていなくてもよい。この場合には、減算部15は、例えば、フィルタ11の出力である電力信号から、振幅の調整された信号を減算してもよい。
【0034】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0035】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。
【0036】
また、以上の実施の形態は、本発明を具体的に実施するための例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲及び均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0037】
1 分離装置
11 フィルタ
12 遅延部
13 結合回路
14 調整部
15 減算部
16 推定部
31 受信部
32 送信部
図1
図2