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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131425
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20240920BHJP
   F04B 39/06 20060101ALI20240920BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20240920BHJP
   H02K 9/04 20060101ALI20240920BHJP
   H02K 3/24 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F04B39/00 106E
F04B39/06 Q
F04C29/00 T
H02K9/04 Z
H02K3/24 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041680
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】武藤 祐介
(72)【発明者】
【氏名】篠原 昂佳
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
5H603
5H609
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB05
3H003AC03
3H003BE09
3H003CE02
3H003CE03
3H003CF06
3H129AA02
3H129AA15
3H129AB03
3H129BB12
3H129BB32
3H129BB33
3H129CC09
3H129CC23
3H129CC27
5H603AA12
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB12
5H603CA05
5H603CB02
5H603CC05
5H603CC17
5H603FA01
5H609BB14
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ12
5H609QQ18
5H609RR38
(57)【要約】
【課題】電動モータの巻線を効果的に冷却することを可能とする電動圧縮機を提供する。
【解決手段】電動圧縮機1は、回転軸5を回転させる電動モータ6と、回転軸5の回転によって駆動される圧縮機構7とを含む。電動モータ6は、ステータコア62及び巻線63を含むと共に本体ハウジング2の内周面に固定された円筒状のステータ61と、ステータ61の内側で回転軸5と一体で回転するロータ64とを含む。また、電動モータ6は、本体ハウジング2に形成された吸入ポート24から流入した冷媒の一部を巻線63に向けて案内するガイド部66を巻線63の外側に有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を回転させる電動モータと、前記回転軸の回転によって駆動される圧縮機構と、前記電動モータ及び前記圧縮機構を収容するハウジングとを含み、前記ハウジングに設けられた吸入ポートから前記ハウジング内に流入した冷媒が前記電動モータを通過した後に前記圧縮機構で圧縮されるように構成され、前記電動モータが、ステータコア及び巻線を含むと共に前記ハウジングの内周面に固定された円筒状のステータと、前記ステータの内側で前記回転軸と一体で回転するロータとを含む電動圧縮機であって、
前記電動モータは、前記吸入ポートから前記ハウジング内に流入した冷媒の一部を前記巻線に向けて案内するガイド部を前記巻線の外側に有する、
電動圧縮機。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記ステータに設けられ、前記ハウジングの内周面近傍を流れる前記冷媒を前記巻線に向けて案内するように構成されている、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記圧縮機構とは反対側において前記巻線から前記回転軸の軸方向に離れた位置にある傾斜部を含み、前記傾斜部は、前記回転軸の軸方向において前記巻線から遠い遠位端部と、前記回転軸の軸方向において前記遠位端部よりも前記巻線に近い近位端部とを有し、前記遠位端部が前記ハウジングの内周面近傍に位置し、前記遠位端部から前記近位端部に向かって内側に傾斜するように形成されている、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記傾斜部は、凹面として形成されている、請求項3に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記ステータコアは、円筒状のヨークと、前記ヨークから内側に延びる複数のティースとを有し、
前記ステータは、それぞれに前記巻線が巻回された状態で前記複数のティースに取り付けられた複数のインシュレータをさらに含み、
前記複数のインシュレータのそれぞれに前記ガイド部が設けられている、
請求項1~4のいずれか一つに記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記複数のインシュレータのそれぞれは、
前記複数のティースのうちの対応するティースに取り付けられると共に外周面に前記巻線が巻回された胴部と、
前記胴部よりも外側に設けられ、前記胴部に巻回された前記巻線の前記吸入ポート側の部分よりも前記回転軸の軸方向に突出した外側突出部と、
を有し、
前記ガイド部は、前記外側突出部の端部又はその近傍に設けられている、
請求項5に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記ステータコアは、前記ヨークを形成するヨーク部材と、前記複数のティースを有するティース部材とが組み合わされて構成されている、請求項5に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関し、特に車両用空調装置に好適に用いられ得る電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動圧縮機の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された電動圧縮機は、電動モータ及び圧縮機構を収容するハウジングを含み、吸入ポートからハウジング内に流入した冷媒が電動モータ及び圧縮機構をこの順に通過し、圧縮機構で圧縮された冷媒が吐出ポートから流出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-51328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成において、電動モータは、自身を通過する冷媒によって冷却され得る。ただし、冷媒の多くは、電動モータとハウジングとの隙間を流れ、電動モータの巻線の近傍を流れる冷媒は少ない。
【0005】
例えば、電動モータの出力が高くなると電動モータの巻線の温度が上昇し、電動モータの巻線の温度が上昇すると電動モータの効率や寿命の低下を招く。そのため、電動モータの巻線を効果的に冷却することが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、電動モータの巻線を効果的に冷却することを可能とする電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、電動圧縮機が提供される。この電動圧縮機は、回転軸を回転させる電動モータと、前記回転軸の回転によって駆動される圧縮機構と、前記電動モータ及び前記圧縮機構を収容するハウジングとを含み、前記ハウジングに設けられた吸入ポートから前記ハウジング内に流入した冷媒が前記電動モータを通過した後に前記圧縮機構で圧縮されるように構成されている。前記電動モータは、ステータコア及び巻線を含むと共に前記ハウジングの内周面に固定された円筒状のステータと、前記ステータの内側で前記回転軸と一体で回転するロータとを含む。また、前記電動モータは、前記吸入ポートから流入した冷媒の一部を前記巻線に向けて案内するガイド部を前記巻線の外側に有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電動モータの巻線を効果的に冷却することを可能とする電動圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る電動圧縮機の概略断面図である。
図2】前記電動圧縮機の電動モータを構成するステータの分解斜視図である。
図3】前記電動圧縮機の電動モータを構成するステータの平面図である。
図4】前記電動圧縮機の電動モータのステータの斜視図である。
図5】前記電動モータにおいて巻線が巻回されるインシュレータの概略構成を示す図である。
図6】インシュレータ近傍における冷媒の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る電動圧縮機1の概略断面図である。実施形態に係る電動圧縮機1は、インバータを一体に有するインバータ一体型電動圧縮機である。電動圧縮機1は、例えば車両に搭載されて車両用空調装置の冷媒回路(冷凍サイクル)の一部を構成し、冷媒を圧縮して吐出するように構成される。なお、以下では、図1における左側を電動圧縮機1の前側、図1における右側を電動圧縮機1の後側として説明する。
【0012】
電動圧縮機1は、本体ハウジング2と、インバータハウジング3と、インバータカバー4とを有する。
【0013】
本体ハウジング2は、2つの有底円筒状のハウジング構成部材の開口端同士を接合することによって形成されている。本体ハウジング2は、前側(図1における左側)の第1端壁部21と、後側(図1における右側)の第2端壁部22と、第1端壁部21と第2端壁部22とを繋ぐ円筒状の側壁部23とを有する。第1端壁部21は、前記2つのハウジング構成部材の一方のハウジング構成部材の底壁部によって形成され、第2端壁部22は、他方のハウジング構成部材の底壁部によって形成されている。側壁部23は、前記2つのハウジング構成部材の円筒状の側壁によって形成されている。
【0014】
本体ハウジング2には、回転軸5、電動モータ6及び圧縮機構7が収容されている。また、本体ハウジング2には、冷媒を本体ハウジング2内に流入させる吸入ポート24と、冷媒を本体ハウジング2から流出させる吐出ポート25とが形成されている。
【0015】
インバータハウジング3は、上面に開口を有する容器状に形成され、その底壁部が本体ハウジング2の第1端壁部21の外側に接合されている。つまり、インバータハウジング3は、本体ハウジング2の前側に配置され、開口が前側を向いた状態で本体ハウジング2と一体化されている。インバータハウジング3の開口は、インバータハウジング3に対して取り外し可能なインバータカバー4によって閉塞されている。インバータハウジング3には、各種電子部品が基板に実装されて形成されたインバータ8が収容されている。
【0016】
回転軸5は、本体ハウジング2内を第1端壁部21側から第2端壁部22側に向かって延びている。すなわち、回転軸5は、本体ハウジング2内を前後方向に延びている。したがって、本実施形態において、回転軸5の軸方向は、電動圧縮機1の前後方向でもある。回転軸5は、前後方向に離隔して配置された第1軸受51及び第2軸受52を介して本体ハウジング2に回転自在に支持されている。
【0017】
電動モータ6は、本体ハウジング2内における第1端壁部21に近い側、すなわち、本体ハウジング2内の前側に収容されている。電動モータ6は、例えば三相交流モータであり、インバータ8によって駆動されて回転軸5を回転させるように構成されている。
【0018】
圧縮機構7は、本体ハウジング2内における第2端壁部22に近い側、すなわち、本体ハウジング2内の後側に収容されている。圧縮機構7は、連結機構9を介して回転軸5の後端部に連結されている。圧縮機構7は、回転軸5の回転によって駆動され、冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を吐出室26に吐出するように構成されている。
【0019】
特に限定されないが、本実施形態においては、スクロール圧縮機構が圧縮機構7として採用されている。つまり、圧縮機構7は、本体ハウジング2に固定された固定スクロール71と、固定スクロール71に対向配置された可動スクロール72とを含む。可動スクロール72は、連結機構9を介して回転軸5の後端に連結されている。連結機構9は、回転軸5の回転運動を可動スクロール72の旋回運転に変換するように構成されている。そして、圧縮機構7は、回転軸5の回転によって可動スクロール72が固定スクロール71に対して旋回運動を行い、これによって、冷媒を取り込んで圧縮し、圧縮した冷媒を吐出室26に吐出するように構成されている。
【0020】
ここで、図1に示されるように、本実施形態において、吸入ポート24は、本体ハウジング2の側壁部23における前側の部分に、具体的には、第1端壁部21と電動モータ6の間に位置する部分に形成されている。また、本体ハウジング2内において、圧縮機構7は、電動モータ6を挟んで吸入ポート24とは反対側に配置されており、吐出室26は、圧縮機構7と第2端壁部22との間に形成されている。そして、吐出ポート25は、第2端壁部22に形成され、その一端が吐出室26内に開口している。
【0021】
そのため、電動圧縮機1において、吸入ポート24から本体ハウジング2内に流入した冷媒は、電動モータ6を通過した後に圧縮機構7で圧縮されるようになっている。具体的には、吸入ポート24から本体ハウジング2内に流入した冷媒は、電動モータ6と本体ハウジング2の内周面との隙間、及び/又は、電動モータ6の内部隙間を通過し、その際に電動モータ6を冷却する。そして、電動モータ6を通過した冷媒が圧縮機構7に取り込まれて圧縮される。圧縮機構7で圧縮された冷媒は、吐出室26に吐出され、吐出ポート25を介して本体ハウジング2内から流出する。
【0022】
次に、電動モータ6について説明する。電動モータ6は、本体ハウジング2の内周面に固定された円筒状のステータ61であって、ステータコア62及び巻線63(ステータコイル)を含むステータ61と、ステータ61の内側(径方向内側)で回転軸5と一体で回転する磁石内蔵のロータ64とで構成されている。
【0023】
また、本実施形態において、電動モータ6は、吸入ポート24から本体ハウジング2内に流入した冷媒の一部を巻線63に向けて案内するガイド部66を有している。ガイド部66は、ステータ61に設けられている。ガイド部66は、圧縮機構7側とは反対側であって且つ巻線63よりも外側(径方向外側;本体ハウジング2の内周面側)に配置されている。つまり、ガイド部66は、より具体的に言えば、吸入ポート24から本体ハウジング2内に流入した冷媒のうち、主に圧縮機構7側に向かって本体ハウジング2の内周面近傍を流れる冷媒を巻線63に向けて案内するように構成されている。
【0024】
ガイド部66は、冷媒流を沿わせるための傾斜部67を含む。傾斜部67は、圧縮機構7側とは反対側において巻線63から回転軸5の軸方向に離れた位置に設けられている。具体的には、傾斜部67は、回転軸5の軸方向において巻線63から遠い遠位端部67aと、回転軸5の軸方向において遠位端部67aよりも巻線63に近い近位端部67bとを有する。遠位端部67aは、本体ハウジング2の内周面近傍に位置している。そして、傾斜部67は、遠位端部67aから近位端部67bに向かって内側(径方向内側)に傾斜するように形成されている。換言すれば、傾斜部67は、遠位端部67aから近位端部67bに向かって回転軸5の軸方向に巻線63に近づくにつれて径方向においても巻線63に近づくように形成されている。特に限定されないが、傾斜部67は、凹面として形成されるのが好ましい。
【0025】
図2図4は、電動モータ6のステータ61を示している。図2は、ステータ61の分解斜視図であり、図3は、ステータ61の平面図であり、図4は、ステータ61の斜視図である。上述のように、ステータ61は、ステータコア62及び巻線63を含む。
【0026】
ステータ61のステータコア62は、円筒状のヨーク62aと、複数(ここでは12個)のティース62bとを有する。複数のティース62bは、ヨーク62aから内側(径方向内側)に延びており、周方向に互いに間隔をあけて設けられている。本実施形態において、ステータコア62は、いわゆる分割コアであり、ヨーク62aを形成するヨーク部材621(外側コア)と、複数のティース62bを有するティース部材622(内側コア)とが組み合わされて構成されている。ヨーク部材621の内周面には、ティース部材622の複数のティース62bの外端部が嵌合される複数(複数のティース62bと同数)の嵌合凹部621aが形成されている。また、ヨーク部材621の外周面には、ステータ61が本体ハウジング2の内周面に固定されたときに本体ハウジング2の内周面との間に冷媒が通過し得る通路を形成する少なくとも一つの溝621bが形成されている。
【0027】
巻線63は、複数(複数のティース62bと同数)の分割巻線部631を含む。複数の分割巻線部631のそれぞれは、インシュレータ65に巻回されて、インシュレータ65を介して複数のティース62bに取り付けられている。インシュレータ65は、例えば絶縁性を有する合成樹脂でボビン状に形成されており、インシュレータ65には、ティース62bが差し込まれる差込孔68が形成されている。なお、巻線63(複数の分割巻線部631)は、所定の電気回路を構成するように配線される。
【0028】
換言すれば、本実施形態において、ステータ61は、ステータコア62及び巻線63に加えて、複数(複数のティース62bと同数)のインシュレータ65を含み、複数のインシュレータ65は、それぞれに巻線63(分割巻線部631)が巻回された状態でステータコア62の複数のティース62bに取り付けられるように構成されている。そして、複数のインシュレータ65のそれぞれにガイド部66が設けられている。
【0029】
ステータ61は、例えば次のようにして組み立てられ得る。まず、複数のインシュレータ65のそれぞれに巻線63(分割巻線部631)が巻回される。次に、巻線63(分割巻線部631)が巻回された複数のインシュレータ65が差込孔68を介してティース部材622の複数のティース62bに取り付けられる。次に、ヨーク部材621とティース部材622とが組み合わされる。このとき、ティース部材622の複数のティース62bの外端部がヨーク部材621の嵌合凹部621aに嵌合される。そして、巻線63(分割巻線部631)が適宜配線されてステータ61が完成する。
【0030】
次に、主に図1及び図5を参照してインシュレータ65についてさらに説明する。図5は、インシュレータ65の概略構成を示す図である。図5中の二点鎖線は、巻線63(分割巻線部631)を示している。なお、図5における左右方向は、電動圧縮機1の前後方向(回転軸5の軸方向)であり、左側が電動圧縮機1の前側、右側が電動圧縮機1の後側である。また、図5における上下方向は、電動モータ6(及び電動圧縮機1)の径方向であり、上側が外側(本体ハウジング2の内周面側)、下側が内側(回転軸5側)である。
【0031】
インシュレータ65は、外周面に巻線63(分割巻線部631)が巻回される胴部651と、胴部651の径方向両端に設けられたフランジ部(第1フランジ部652、第2フランジ部653)とを有する。
【0032】
胴部651にはティース62bが差し込まれる差込孔68が形成されている。つまり、インシュレータ65は、胴部651が複数のティース62bのうちのいずれかに取り付けられるように構成されている。
【0033】
第1フランジ部652は、胴部651の径方向外側(本体ハウジング2の内周面側)の端部に設けられている。第1フランジ部652は、胴部651に巻回された巻線63(分割巻線部631)の前側の部分よりも前方に、換言すれば、胴部651に巻回された巻線63(分割巻線部631)の吸入ポート24側の部分63a(631a)よりも回転軸5の軸方向に突出した外側突出部652aを含む。
【0034】
第2フランジ部653は、胴部651の径方向内側(回転軸5側)の端部に設けられている。第2フランジ部653は、胴部651に巻回された巻線63(分割巻線部631)の前側の部分よりも前方に、換言すれば、胴部651に巻回された巻線63(分割巻線部631)の吸入ポート24側の部分63a(631a)よりも回転軸5の軸方向に突出した内側突出部653aを含む。
【0035】
そして、本実施形態において、ガイド部66は、傾斜部67が巻線63(分割巻線部631)よりも径方向外側で且つ巻線63(分割巻線部631)の吸入ポート24側の部分63a(631a)から回転軸5の軸方向に離れて位置するように、第1フランジ部652の外側突出部652aの端部又はその近傍に設けられている。なお、ガイド部66は、インシュレータ65とは別体で形成されて第1フランジ部652の外側突出部652aに固定されてもよいが、インシュレータ65と一体成形されるのが好ましい。
【0036】
図6は、インシュレータ65近傍の冷媒の流れの一例を示す図である。上述のように、ガイド部66の傾斜部67は、本体ハウジング2の内周面近傍に位置する遠位端部67aから近位端部67bに向かって径方向内側に傾斜するように形成されている。そのため、図6中に矢印で示されるように、吸入ポート24から本体ハウジング2内に流入した冷媒のうち、本体ハウジング2の内周面近傍を流れる冷媒がガイド部66の傾斜部67に沿って流れて巻線63(分割巻線部631)に向かい、巻線63(分割巻線部631)を通過する。これにより、冷媒によって巻線63(分割巻線部631)が冷却される。
【0037】
実施形態に係る電動圧縮機1によれば、例えば以下の効果が得られる。
【0038】
電動モータ6は、吸入ポート24から本体ハウジング2内に流入した冷媒の一部を巻線63に向けて案内するガイド部66を巻線63の外側に有する。吸入ポート24から本体ハウジング2内に流入する冷媒は低温である。そのため、従来技術に比べて、電動モータ6の巻線63が効果的に冷却され得る。したがって、巻線63の温度上昇に伴う電動モータ6の効率の低下や寿命の低下が抑制され得る。
【0039】
ガイド部66は、電動モータ6のステータ61に設けられ、主に本体ハウジング2の内周面近傍を流れる冷媒を巻線63に向けて案内するように構成されている。具体的には、ガイド部66は、冷媒流を沿わせる傾斜部67を含む。傾斜部67は、圧縮機構7とは反対側において巻線63から回転軸5の軸方向に離れた位置に設けられている。傾斜部67は、回転軸5の軸方向において巻線63から離れた遠位端部67aと、回転軸5の軸方向において遠位端部67aよりも巻線63に近い近位端部67bとを有し、遠位端部67aが本体ハウジング2の内周面近傍に位置し、遠位端部67aから近位端部67bに向かって内側(径方向内側)に傾斜するように形成されている。そのため、従来技術では電動モータ6の冷却にあまり寄与していなかった、電動モータ6と本体ハウジング2の内周面との隙間を流れる冷媒を巻線63の冷却に利用することができる。ここで、傾斜部67が凹面として形成されることにより、冷媒が巻線63に向かってより滑らかに流れ得る。
【0040】
電動モータ6のステータ61は、それぞれに巻線63が巻回された状態でステータコア62の複数のティース62bに取り付けられた複数のインシュレータ65を含み、複数のインシュレータ65のそれぞれにガイド部66が設けられている。具体的には、インシュレータ65は、複数のティース62bのうちの対応するティース62bに取り付けられると共に外周面に巻線63(分割巻線部631)が巻回された胴部651と、胴部651よりも外側(径方向外側)に設けられ、胴部651に巻回された巻線63(分割巻線部631)の吸入ポート24側の部分よりも回転5軸の軸方向に突出した外側突出部652aとを有し、ガイド部66は、外側突出部652aの端部又はその近傍に設けられている。そのため、ガイド部66が巻線63に近くの適切な位置に設けられ、吸入ポート24から本体ハウジング2内に流入した冷媒の一部を安定して巻線63に向かわせることができる。
【0041】
また、ステータコア62は、ヨーク62aを形成するヨーク部材621と、複数のティース62bを有するティース部材622とが組み合わされて構成されている。そのため、それぞれに巻線63(分割巻線部631)が巻回された複数のインシュレータ65を複数のティース62bに取り付けること、さらに言えば、複数のティース62bに巻線63を設けること及びステータ61にガイド部66を設けることが容易である。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらなる変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0043】
1…電動圧縮機、2…本体ハウジング、5…回転軸、6…電動モータ、7…圧縮機構、8…インバータ、24…吸入ポート、25…吐出ポート、61…ステータ、62…ステータコア、62a…ヨーク、62b…ティース、63…巻線、64…ロータ、65…インシュレータ、66…ガイド部、67…傾斜部、67a…傾斜部の遠位端部、67b…傾斜部の近位端部、621…ヨーク部材、622…ティース部材、651…インシュレータの胴部、652a…インシュレータの外側突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6