(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131432
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】湯沸器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/20 20220101AFI20240920BHJP
F24H 15/128 20220101ALI20240920BHJP
F24H 15/20 20220101ALI20240920BHJP
F24H 15/355 20220101ALI20240920BHJP
F24H 1/14 20220101ALI20240920BHJP
F24H 9/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F24H9/20 B
F24H15/128
F24H15/20
F24H15/355
F24H1/14 B
F24H9/02 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041687
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174344
【弁理士】
【氏名又は名称】安井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】宮地 克宜
(72)【発明者】
【氏名】光藤 公一
【テーマコード(参考)】
3L034
3L037
【Fターム(参考)】
3L034BA22
3L037AA02
3L037AB02
(57)【要約】
【課題】1つの温度ヒューズで複数箇所の異常を検出できる湯沸器を提供する。
【解決手段】湯沸器はケーシングを備える。ケーシングのバックカバー3の前面には伝熱板40が設けられる。伝熱板40は、排気フードと熱交換器が設けられる上側の位置から、燃焼装置の筒胴部内の燃焼空間まで延び、ケーシングの材質よりも高い伝熱性を有するアルミ製である。このような伝熱板40の上部には、一対のスリットが設けられ、それら一対のスリットから一対のヒューズ取付片211,212が斜め上方に突出する。これらヒューズ取付片211,212に温度ヒューズ51を備えるヒューズ組立50が支持される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面が壁に取り付けられるケーシング内に、バーナを備えた燃焼装置と、前記燃焼装置の上方に設けられ、前記バーナの燃焼排気により通水を加熱する熱交換器と、前記熱交換器の上方に設けられ、前記熱交換器を通過した前記燃焼排気を外部に排出する排気部と、所定以上の温度で溶断する温度ヒューズとを設け、前記温度ヒューズの溶断により緊急停止する湯沸器であって、
前記ケーシング内に設けられ、前記排気部と前記熱交換器が設けられる上側の位置から、前記燃焼装置内であって前記バーナの燃焼面の上方に形成された燃焼空間まで延び、前記ケーシングの材質よりも高い伝熱性を有する金属板を備え、
前記金属板の上部には、前記温度ヒューズを取り付ける為のヒューズ取付部が設けられたこと
を特徴とする湯沸器。
【請求項2】
前記ケーシングは鉄製であり、前記金属板はアルミニウム製であること
を特徴とする請求項1に記載の湯沸器。
【請求項3】
前記ケーシング内において、前記燃焼装置の周囲を取り囲むようにして、前記熱交換器に水を供給する為の給水管が配置されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の湯沸器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯沸器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒胴の周囲に2つの温度ヒューズを相互に異なる位置に組み付け、何れかの温度ヒューズが溶断したときに緊急停止させる給湯装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つの温度ヒューズを使用するので、筒胴への組み付け工数が多くなるという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、1つの温度ヒューズで複数箇所の異常を検出できる湯沸器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の湯沸器は、背面が壁に取り付けられるケーシング内に、バーナを備えた燃焼装置と、前記燃焼装置の上方に設けられ、前記バーナの燃焼排気により通水を加熱する熱交換器と、前記熱交換器の上方に設けられ、前記熱交換器を通過した前記燃焼排気を外部に排出する排気部と、所定以上の温度で溶断する温度ヒューズとを設け、前記温度ヒューズの溶断により緊急停止する湯沸器であって、前記ケーシング内に設けられ、前記排気部と前記熱交換器が設けられる上側の位置から、前記燃焼装置内であって前記バーナの燃焼面の上方に形成された燃焼空間まで延び、前記ケーシングの材質よりも高い伝熱性を有する金属板を備え、前記金属板の上部には、前記温度ヒューズを取り付ける為のヒューズ取付部が設けられたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の湯沸器の前記ケーシングは鉄製であり、前記金属板はアルミニウム製であってもよい。
【0008】
請求項3の湯沸器の前記ケーシング内において、前記燃焼装置の周囲を取り囲むようにして、前記熱交換器に水を供給する為の給水管が配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の湯沸器によれば、何等かの異常でケーシング内の上側に位置する排気部や熱交換器周辺の温度が所定以上になった場合、金属板の上部に取り付けられた温度ヒューズが溶断するので、湯沸器は緊急停止する。他方、熱交換器よりも下方に位置する燃焼装置周辺の温度が所定以上になった場合、燃焼空間まで延びる金属板を伝熱して温度ヒューズが溶断するので、湯沸器は緊急停止する。従って、本願の湯沸器は、一つの温度ヒューズで複数箇所の異常を検知できるので、2つの温度ヒューズを組み付ける従来の構成に比べて、ケーシング内への組み付け工数を削減できる。
【0010】
請求項2の湯沸器によれば、金属板はアルミニウム製なので鉄製のケーシングよりも伝熱性が高い。よって、仮に燃焼装置の壁面が破損した場合、その破損した箇所から溢れ出た火炎や燃焼排気によって金属板が加熱され、ヒューズ取付部に取り付けられた温度ヒューズに速やかに伝熱される。従って、湯沸器は破損した箇所がヒューズ取付部から離れていても異常を速やかに検知できる。
【0011】
請求項3の湯沸器によれば、燃焼装置の周囲には給水管が取り囲むようにして配置される。例えば金属板を用いずに一本の温度ヒューズをケーシングの上側に配置した構成では、燃焼装置が破損した場合にその破損箇所から溢れ出た燃焼排気や火炎は給水管によって遮られる。このため、その周囲の熱気が温度ヒューズにまで届かず溶断されないことから、燃焼装置の異常を検知できない。本願においては、排気部と熱交換器が設けられる上側の位置から燃焼空間まで延びる金属板の上部に温度ヒューズが取り付けられるので、その金属板の伝熱性を利用して、燃焼装置の異常を速やかに検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】湯沸器1(ケーシングは省略)の斜視図である。
【
図4】湯沸器1(ケーシングは省略)の右側面図である。
【
図5】湯沸器1(ケーシングと筒胴は省略)の斜視図である。
【
図6】遮熱板20、伝熱板40、ヒューズ組立50、受け板30が前面に取り付けられたバックカバー3の斜視図である。
【
図7】バックカバー3、伝熱板40、ヒューズ組立50、受け板30の分解斜視図である。
【
図8】
図6に示すバックカバー3の前面の上半分の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に記載される装置構成などは、特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明する為に用いられるものである。本実施形態では、図中に示す前後、左右、上下の向きを使用して説明する。
【0014】
図1~
図5を参照し、湯沸器1の構成を説明する。湯沸器1はケーシング2を備える。ケーシング2は上下方向に延び且つ上部が開口する有底角筒状である。ケーシング2はバックカバー3、フロントカバー4、底板部5を備え、何れも鉄製である。バックカバー3は正面視上下方向に長い略矩形状に形成され(
図6参照)、その上部と下部には取付金具6A,6Bが設けられる。バックカバー3はこれら取付金具6A,6Bを介して壁面(図示略)に取り付けられる。フロントカバー4はバックカバー3に対して前方から取り付けられる(
図1,
図2参照)。フロントカバー4は、バックカバー3と同様に正面視上下方向に長い略矩形状であって、平面視前側に緩やかに膨らむ略円弧状に形成される(
図2参照)。フロントカバー4の前面下部の中央には正面視円形状の開口部9が設けられ、その開口部9の内側から操作ボタン10が前方に突出して設けられる。
【0015】
底板部5はバックカバー3の下部に前方に突出した姿勢で固定され、底面視左右方向に長い略矩形状に形成される。底板部5の前端部は、フロントカバー4の前面形状に合わせ、前側に緩やかに膨らむ略円弧状に形成される。湯沸器1を正面から見た場合に、底板部5には、右から順に、給水口11、出湯口12、ガス接続口13が設けられる。給水口11には外部の水道管(図示略)が接続される。出湯口12には出湯管(図示略)が接続される。ガス接続口13には外部のガス管(図示略)が接続される。
【0016】
図3,
図4に示すように、ケーシング2の内部には下から順に、燃焼装置6、熱交換器7、排気フード8が設けられる。燃焼装置6は筒胴61とバーナユニット62を備える。筒胴61は上下方向に貫通する略四角筒状に形成される。バーナユニット62は筒胴61の下部に設けられる。バーナユニット62は前後方向に並ぶ複数のバーナ65を備える。複数のバーナ65の夫々の燃焼面651は上方に向けられる。筒胴61の内側であって、複数のバーナ65の夫々の燃焼面651の上方には燃焼空間68(
図5中の二点鎖線参照)が形成される。燃焼空間68は燃焼面651と熱交換器7との間に挟まれる空間である。このような燃焼装置6の下側のバーナユニット62の前側と左右両側を覆うように、遮熱板15が配置される。遮熱板15は平面視後方に向けて開口する略U字状に形成される。
【0017】
図3,
図5に示すように、バーナユニット62のうち最も前側に位置するバーナ65の燃焼面651の近傍には、一次熱電対16が設けられる。一次熱電対16はバーナ65の燃焼を検出する。筒胴61の前面の略中央には監視窓611が設けられる。監視窓611は前後方向に貫通する開口である。その監視窓611の近傍には二次熱電対17が設けられる。二次熱電対17の感熱部は監視窓611に臨ませて支持される。一次熱電対16と二次熱電対17の夫々の熱起電力はコントローラ100へ入力される。コントローラ100はバックカバー3の前面の左下部に固定され(
図3参照)、湯沸器1の動作を制御する。
図5に示すように、燃焼面651の近傍であって一次熱電対16の左方にはフレームロッド18が設けられる。フレームロッド18はバーナ65の火炎を検出する。フレームロッド18の検出信号もコントローラ100へ入力される。
【0018】
図5に示すように、熱交換器7は燃焼装置6の上方に設けられる。熱交換器7はフィンチューブ式であり、筐体71、複数のフィン72、伝熱管73を備える。筐体71は上部と下部が開放された略角筒状である。複数のフィン72は筐体71の内側に設けられ、左右方向に面方向を向け且つ互いに間隔を空けて配置される。伝熱管73はこれら複数のフィン72を蛇行状に貫通して取り付けられる。伝熱管73の入口側の一端部には給水管14の一端部が接続される。給水管14は筒胴61の外周に巻回されて下方に延び、その他端部は給水口11に接続される。伝熱管73の出口側の他端部には給湯管(図示略)の一端部が接続される。給湯管も下方に延び、その他端部が出湯口12に接続される。
【0019】
排気フード8は熱交換器7の上部に取り付けられる。排気フード8は上下方向に貫通する略四角筒状に形成され、本体部81と前板部82を備える。本体部81は平面視前側に向けて開口する略U字状に形成され、後壁部811、右壁部812、左壁部813を備える。後壁部811は背面視左右方向に延びる略矩形状に形成される。右壁部812は後壁部811の右端部から前方に突出し、右側面視前後方向に延びる略矩形状に形成される。左壁部813は後壁部811の左端部から前方に突出し、左側面視前後方向に延びる略矩形状に形成される。前板部82は正面視左右方向に延び、その左右両端部が、右壁部812と左壁部813の夫々の前端部に設けられた被固定部(図示略)に対してネジ91,92で前方から固定される。これにより、前板部82は本体部81の開口する前側を閉塞する。右壁部812と左壁部813の間には複数の羽板85が前後方向に並んで渡設される。複数の羽板85の夫々は左右方向に延び且つ面方向を前後方向に向けた状態で、前後方向に間隔を空けて配置される。羽板85は後方から前方に向かって上り傾斜して配置されるので、燃焼排気はケーシング2の上部開口から前側に対して斜め上方に排出される。
【0020】
上記構成を備える湯沸器1において、操作ボタン10を押し操作すると、コントローラ100によって熱交換器7の伝熱管73への通水と複数のバーナ65の燃焼とが開始される。伝熱管73内を流れる水は、熱交換器7のフィン72同士の間を通過する燃焼排気と熱交換することで加熱される。そして、操作ボタン10の回転操作によって設定された温度で、出湯口12に接続された出湯管(図示略)から出湯される。熱交換器7を上方に通過した燃焼排気は、排気フード8の内側を通ってケーシング2の上部開口から排出される。
【0021】
図6~
図8を参照し、バックカバー3の前面に取り付けられる各種部品と、それらの取付構造について説明する。
図6に示すように、バックカバー3は正面視縦長の略矩形状に形成され、その外周部に沿って前方に突出するリブ3Aが設けられる。バックカバー3の前面には、遮熱板20、伝熱板40、ヒューズ組立50、受け板30が前方から順に取り付けられる。
【0022】
遮熱板20について説明する。遮熱板20はバックカバー3の前面に溶接等で固定される。遮熱板20は正面視縦長矩形状に形成され、バックカバー3の前面のほぼ全部を覆う。遮熱板20の前面の上部で且つ左右方向中央部には、左右一対のヒューズ取付片211,212が設けられる(
図7参照)。ヒューズ取付片211,212は左右方向に隙間を空けて配置される。ヒューズ取付片211,212は、遮熱板20を前側に切り起こすことにより細長板状に形成され、側面視斜め上方に向けて突出する。
【0023】
図7に示すように、遮熱板20の上部で且つ左右両側には、折曲片27,28が設けられる。折曲片27,28は前方へ折曲され、遮熱板20の左右方向中間部を中心に左右対称に形成される。折曲片27,28の夫々の前端部は熱交換器7の後面に近接することで、熱交換器7の前後方向の位置が決まる。
図6に示すように、遮熱板20の前面の左上部にはガイド片291が設けられ、その下方にはガイド片292が設けられ、さらにその下方であってコントローラ100付近にはガイド片293が設けられる。ガイド片291~293は遮熱板20が前方に切り起されることによって細長板状に形成される。遮熱板20を前側から見た場合に、ガイド片291は左斜め上方に突出し、ガイド片292,293は前方に突出する。
【0024】
伝熱板40について説明する。伝熱板40は、遮熱板20の前面であって上下方向の中央よりも上側で且つ左右方向の中央部に取り付けられる。伝熱板40はアルミニウム製であり、遮熱板20よりも小さい正面視縦長の略矩形状に形成される。遮熱板20の上部には左右一対の横長のスリット411,412が設けられる。スリット411,412は左右方向に隙間を空けて並び、遮熱板20のヒューズ取付片211,212の各位置に対応して配置される。遮熱板20のヒューズ取付片211,212に対して、伝熱板40のスリット411,412が斜め上方から夫々差し込まれて係止する。これにより、伝熱板40が遮熱板20の前面に取り付けられる。ヒューズ取付片211,212は、バックカバー3の前側に対してスリット411,412から斜め上方に突出する。
【0025】
伝熱板40が遮熱板20の前面に取り付けられた状態において、伝熱板40の上端部は、熱交換器7と排気フード8の接続部分に相対する位置に配置される。他方、伝熱板40の下端部は、燃焼装置6の筒胴61内部の燃焼空間68の上下方向略中央に相対する位置に配置される。このような伝熱板40は、燃焼装置6の筒胴61、熱交換器7、排気フード8の夫々の後面を非接触の状態で後方から覆う。
【0026】
ヒューズ組立50について説明する。ヒューズ組立50は、温度ヒューズ51とヒューズカバー52を備える。温度ヒューズ51は溶断部511とリード線512を備える周知の過熱保護素子である。溶断部511はリード線512の途中に設けられ、温度が所定値を超えると溶断する。ヒューズカバー52は金属製のU字状パイプである。ヒューズカバー52の材質は伝熱性のよい材質であればよく、例えばアルミニウム製でもよい。U字状に屈曲するヒューズカバー52の内側にはスリット状の差込部521が形成される。温度ヒューズ51はヒューズカバー52の内部に挿入され、U字状に屈曲した状態となる。温度ヒューズ51が収納されたヒューズカバー52の同一方向に開口する両端部の夫々からリード線512が外部に引き出され、結束バンド(図示略)で1本に結束される。
【0027】
ヒューズ組立50の取付方法について説明する。
図7に示すように、伝熱板40の前面側において、ヒューズカバー52の両端部が左方に向くように、ヒューズ組立50を横向きの状態にする。この状態で、伝熱板40のスリット411,412から斜め上方に突出するヒューズ取付片211,212に対して、ヒューズカバー52の差込部521を前側から差し込む。これにより、
図8に示すように、ヒューズカバー52がヒューズ取付片211に対して水平に保持される。このようにして、ヒューズ組立50が伝熱板40の前面に取り付けられ、温度ヒューズ51が所定位置に位置決めされる。
【0028】
次いで、ヒューズカバー52の両端部から左方に引き出された2本のリード線512を結束した状態で、ガイド片291の外側に引き回して下方に略直角に折り返し、ガイド片292,293の夫々に外方から接触させつつ下方に引き出す。そして、下方に引き出されたリード線512をコントローラ100に接続する。このようにして、ガイド片291~293は、リード線512を遮熱板20の左端側に寄せつつコントローラ100に向けてガイドする。これにより、湯沸器1は、ケーシング2内において、燃焼装置6や熱交換器7等の各装置にリード線512が干渉するのを防止できる。
【0029】
なお詳述しないが、バーナ65にガスを供給するガス供給管には電磁弁が設けられており、その電磁弁に通電する他のリード線の途中に温度ヒューズ51が電気的に接続されている。温度が所定以上に達して温度ヒューズ51の溶断部511が溶断すると、リード線512における通電が遮断される。これにより、電磁弁への通電が停止して電磁弁が閉弁することにより、バーナ65の燃焼が停止するようになっている。
【0030】
受け板30について説明する。
図7に示すように、受け板30は、バックカバー3の前面において、遮熱板20の上端部よりも上側の領域で且つ左右両側を除く中央部に固定される。受け板30は、上板部31、中板部32、下板部33、右板部35、左板部36を備え、正面視横長矩形状の折曲板である。上板部31は正面視左右方向に長い略矩形状に形成され、その左右両側部には固定穴311,312が設けられる。これら固定穴311,312は、バックカバー3の上部に設けられた固定穴131,132の各位置に対応する。これら固定穴311,312にネジ94,95が前方から差し込まれて固定穴131,132に締結されることで、受け板30がバックカバー3の前面に固定される。中板部32は、上板部31の下端部から前方へ折曲されて排気フード8の後面に近接する。下板部33は、中板部32の前端部から下方へ折曲されて下端部が熱交換器7の後面に近接する。中板部32には、左右両端を除いて略全面で開口する通気孔34が形成される。
【0031】
右板部35は、中板部32と下板部33の夫々の右端部に対して右方から直交して接続し、右側面視上下方向に長い細長矩形状に形成される。右板部35の後端部は遮熱板20の前面に当接する。左板部36は、中板部32と下板部33の夫々の左端部に対して左方から直交して接続し、左側面視上下方向に長い細長矩形状に形成される。左板部36の後端部も遮熱板20の前面に当接する。
【0032】
バックカバー3を正面から見た場合、受け板30の下板部33は、遮熱板20の上端部と重なる。遮熱板20の上端部であって下板部33と重ならない左右両側には、折曲片27,28が配置される。上記の通り、折曲片27,28は熱交換器7の後面と近接する。これにより、熱交換器7とバックカバー3の前面との間は、受け板30の中板部32に設けた通気孔34を除いてほぼ閉塞される。
【0033】
温度ヒューズ51による複数箇所の異常検知について説明する。ここでは、以下の2つの異常が起きた場合を例に説明する。
【0034】
(1)空焚き状態
空焚き状態とは、熱交換器7の伝熱管73における通水が無く、バーナ65が燃焼している状態である。例えば、給水管14への水の供給を制御する制御弁の故障で伝熱管73に水が供給されない場合等に生じ得る。空焚き状態では、熱交換器7の温度が上昇すると共に、排気フード8から排出される燃焼排気の温度も上昇して所定以上となる。この場合、排気フード8の近傍に配置された温度ヒューズ51の溶断部511が直接加熱されて溶断する。これにより、ガス供給管に設けられた電磁弁への通電が停止することで電磁弁が閉弁し、バーナ65が消火されて湯沸器1が緊急停止する。
【0035】
(2)燃焼装置6の故障
湯沸器1の長期使用による経年劣化により、燃焼装置6の筒胴61の壁面に破損が生じた場合を想定する。この場合、その破損箇所から燃焼空間68を流れるバーナ65の燃焼排気が外部に流出し、さらには火炎が溢れ出ることも考えられる。本実施形態では、伝熱板40が燃焼空間68の高さ位置まで延びているので、伝熱板40の下部がそれら燃焼排気や火炎によって加熱される。伝熱板40はアルミ製であって伝熱性の優れた素材であることから、伝熱板40の下部から上方に向けて速やかに伝熱され、ヒューズ取付片211,212に支持されたヒューズ組立50のうち温度ヒューズ51の溶断部511が溶断する。これにより、(1)のときと同様に、ガス供給管に設けられた電磁弁への通電が停止することで電磁弁が閉弁し、バーナ65消火されて湯沸器1が緊急停止する。
【0036】
ところで、本実施形態の燃焼装置6の筒胴61の周囲には、給水管14が螺旋状に取り囲むように配置されている(
図3~
図5参照)。仮に伝熱板40を用いずに、一本の温度ヒューズ51をケーシング2の上側に配置した構成では、燃焼装置6が破損した場合にその破損箇所から溢れ出た燃焼排気や火炎は給水管14によって遮られる。このため、その周囲の熱気が温度ヒューズ51の溶断部511にまで届かず溶断されない可能性がある。本実施形態においては、排気フード8と熱交換器7が設けられるケーシング2の上側の位置から燃焼空間68まで延びる伝熱板40を設け、その上部に温度ヒューズ51が取り付けられるので、その伝熱板40の伝熱性を利用して、燃焼装置6の破損を検知できる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の湯沸器1は、ケーシング2内に、バーナ65を備えた燃焼装置6と、燃焼装置6の上方に設けられ、バーナ65の燃焼排気により通水を加熱する熱交換器7と、熱交換器7の上方に設けられ、熱交換器7を通過した燃焼排気を外部に排出する排気フード8と、所定以上の温度で溶断する温度ヒューズ51とを設け、温度ヒューズ51の溶断により緊急停止するものである。このような湯沸器1のケーシング2内には、伝熱板40が設けられる。伝熱板40は、排気フード8と熱交換器7が設けられる上側の位置から、燃焼装置6の筒胴61内の燃焼空間68まで延び、ケーシング2の材質よりも高い伝熱性を有するアルミ製である。このような伝熱板40の上部には、一対のスリット411,412が設けられ、それらスリット411,412からは一対のヒューズ取付片211,212が斜め上方に突出する。これらヒューズ取付片211,212には温度ヒューズ51を備えるヒューズ組立50が支持される。
【0038】
湯沸器1は上記構成を備えることで、何等かの異常でケーシング2内の上側に位置する排気フード8や熱交換器7周辺の温度が所定以上になった場合、伝熱板40の上部に取り付けられたヒューズ組立50のうち温度ヒューズ51の溶断部511が溶断するので、湯沸器1は緊急停止する。他方、熱交換器7よりも下方に位置する燃焼装置6周辺の温度が所定以上になった場合、燃焼空間68まで延びる伝熱板40を伝熱して温度ヒューズ51の溶断部511が溶断するので、湯沸器1は緊急停止する。従って、湯沸器1は、一つの温度ヒューズ51で複数箇所の異常を検知できるので、2つの温度ヒューズを組み付ける従来の構成に比べて、ケーシング2内への組み付け工数を削減できる。
【0039】
上記説明において、伝熱板40は本発明の「金属板」の一例である。伝熱板40に設けられた一対のスリット411,412と、遮熱板20に設けられた一対のヒューズ取付片211,212は、本発明の「ヒューズ取付部」の一例である。排気フード8は本発明の「排気部」の一例である。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上記実施形態では、伝熱板40に設けられた一対のスリット411,412と、遮熱板20に設けられた一対のヒューズ取付片211,212とによって、本発明の「ヒューズ取付部」を構成しているが、例えば伝熱板40に「ヒューズ取付部」を直接形成してもよい。ヒューズ取付部の形状は、ヒューズ組立50を保持できる形状であればよく、ヒューズ取付片211,212のような細長矩形状には限定されない。
【0041】
上記実施形態では、ヒューズ組立50を伝熱板40に取り付けているが、温度ヒューズ51を取り付ける構造はこれに限らず、例えば温度ヒューズ51を伝熱板40に直接取り付けてもよい。好ましくは温度ヒューズ51に対してケーシング2内の他部材が接触しないようにその周囲を保護した状態で取り付けるのがよい。
【0042】
上記実施形態では、伝熱板40はバックカバー3の前面に取り付けられ、燃焼装置6、熱交換器7、排気フード8の夫々の後面側に配置されているが、伝熱板40の位置はこれに限定されず、例えばフロントカバー4側に配置してもよく、燃焼装置6、熱交換器7、排気フード8の夫々の右側、若しくは左側に配置してもよい。但し、上記実施形態の湯沸器1は壁面に取り付けられるので、その壁面に近接するバックカバー3側における異常な温度上昇を正確且つ速やかに検知する為には、バックカバー3の前面に取り付けられるのが好ましい。
【0043】
上記実施形態では、伝熱板40の上端部の高さ位置は、熱交換器7と排気フード8の接続部分に相対する高さ位置であるが、これよりも高くても低くてもよい。好ましくは、熱交換器7の空焚き状態が起きたときに異常な温度上昇が生じる部分の高さ位置にするのがよい。また、伝熱板40の下端部の高さ位置については、少なくとも燃焼空間68の上下方向の範囲と同等の高さ位置にあればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 湯沸器
2 ケーシング
6 燃焼装置
7 熱交換器
8 排気フード
20 遮熱板
40 伝熱板
51 温度ヒューズ
65 バーナ
68 燃焼空間
211,212 ヒューズ取付片
411,412 スリット