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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131434
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】撮像システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/10 20060101AFI20240920BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240920BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20240920BHJP
【FI】
G01B11/10 H
H04N23/60
H04N23/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041689
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511292161
【氏名又は名称】株式会社エクスビジョン
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】平勢 理士
(72)【発明者】
【氏名】田子 和秀
(72)【発明者】
【氏名】木原 伸次郎
【テーマコード(参考)】
2F065
5C122
【Fターム(参考)】
2F065AA12
2F065AA17
2F065AA26
2F065BB12
2F065BB15
2F065DD03
2F065FF02
2F065HH13
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ09
2F065JJ26
2F065LL59
2F065QQ18
5C122DA12
5C122DA13
5C122EA06
5C122EA67
5C122FA01
5C122FA06
5C122FA17
5C122FA18
5C122GG01
5C122GG26
5C122HB02
5C122HB05
(57)【要約】
【課題】被写体を複数方向から撮像しつつ画像解析の精度を悪化させないようにする。
【解決手段】撮像システムは,ロープ1の走行路に沿ってロープ1を異なる方向から撮像するように設けられ,移動するロープ1の画像データを出力するイメージセンサをそれぞれが含む第1,第2カメラ11,21,ロープ1を挟んでカメラ11,21のそれぞれと対向して設けられ,カメラ11,21のそれぞれに向けて光を照射する第1,第2対向照明装置13,23,ならびにカメラ11,21および対向照明装置13,23のそれぞれの動作を制御する同期信号回路40を備える。同期信号回路40は一対の第1カメラ11および第1対向照明装置13,ならびに一対の第2カメラ21および第2対向照明装置23が同じタイミングに駆動し,かつ第1カメラ11および第1対向照明装置13の対,第2カメラ21および第2対向照明装置23の対のそれぞれが異なるタイミングに駆動するように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の移動路に沿って上記被写体を異なる方向から撮像するように設けられ,上記移動路中を移動する被写体を被写体像に含む画像データを出力するイメージセンサをそれぞれが含む複数台のカメラ,
上記被写体の移動路を挟んで上記複数台のカメラのそれぞれと対向して設けられ,上記複数台のカメラのそれぞれに向けて光を照射する複数台の対向照明装置,ならびに
上記複数台のカメラおよび複数台の対向照明装置のそれぞれの動作を制御する制御装置を備え,
上記制御装置は,対向して設けられる一対の上記カメラおよび上記対向照明装置が同じタイミングに同期して駆動し,かつ複数対の上記カメラおよび上記対向照明装置のそれぞれが異なるタイミングに駆動するように上記複数台のカメラおよび複数台の対向照明装置を制御するものである,
撮像システム。
【請求項2】
上記対向照明装置の発光時間よりも長い時間間隔が,上記対向照明装置同士の駆動タイミング間に確保されている,
請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
上記複数台のカメラの露光時間および上記複数台の対向照明装置の発光時間が等しい,
請求項1または2に記載の撮像システム。
【請求項4】
上記カメラの近傍に配置され,カメラ側から上記被写体に向けて光を照射する前方照明装置が,上記カメラのそれぞれに設けられており,
上記制御装置は,
上記カメラおよび上記前方照明装置が同じタイミングに同期して駆動し,かつ上記カメラおよび上記対向照明装置の駆動タイミングと異なるタイミングに上記カメラおよび上記前方照明装置が駆動するように,上記複数台のカメラおよび複数台の前方照明装置を制御するものである,
請求項1に記載の撮像システム。
【請求項5】
被写体の移動路に沿って上記被写体を異なる方向から撮像するように設けられ,上記移動路中を移動する被写体を被写体像に含む画像データを出力するイメージセンサをそれぞれが含む複数台のカメラ,
上記被写体の移動路を挟んで上記複数台のカメラのそれぞれと対向して設けられ,上記複数台のカメラのそれぞれに向けて光を照射する対向照明装置,ならびに
上記複数台のカメラのそれぞれの動作を制御する制御装置を備え,
上記制御装置は,
上記複数台のカメラのそれぞれが異なるタイミングに駆動するように上記複数台のカメラを制御するものであり,
上記複数台のカメラのそれぞれが,
被写体を撮像するタイミングに同期して,上記カメラに対向して設けられている対をなす一の照明装置が光を照射するように上記複数台の対向照明装置を制御するものである,
撮像システム。
【請求項6】
上記被写体が上記移動路に沿う長手方向を持ち,移動路に沿って移動する線条体であり,
上記複数台のカメラが上記線条体を中心とする同心円上に角度間隔をあけて設けられている,
請求項1または5に記載の撮像システム。
【請求項7】
上記被写体が上記移動路上を移動する複数の同一形状の物体であり,
上記複数台のカメラが上記移動路を挟んで設けられている,
請求項1または5に記載の撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は,カメラを用いてワイヤロープを撮像し,撮像によって得られた画像を用いてワイヤロープの直径を算出するワイヤロープ検査装置を開示する。カメラを用いて撮像されるワイヤロープの画像領域の幅の画素数とワイヤロープの幅の実寸法との換算係数(1画素あたりの実寸法)が設定され,この換算係数を利用してワイヤロープの画像からワイヤロープの幅の実寸法が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2013/145823号公報
【0004】
ワイヤロープを挟んでカメラと光源とを対向して配置することにより,カメラは光源から照射された光がワイヤロープによって遮られることによってできる影を撮像する。安定した(はっきりした)ワイヤロープの輪郭が撮像され,高精度に画像解析を実行することができ,たとえば高精度にワイヤロープの直径を画像から算出することができる。
【0005】
品質保証の観点からは,複数方向からワイヤロープを撮像し,ワイヤロープを複数方向から撮像した画像を用いてワイヤロープの画像解析を実行するのが好ましい。しかしながら,対向して配置されるカメラと光源の対を2対以上設けると,ワイヤロープと対向しない光源からの光によってカメラと光源の対を1対だけ設けたときに取得されるワイヤロープ画像と比べて,取得されるワイヤロープ画像における輪郭がはっきりしなくなる(ぼやける)ことがある。輪郭がはっきりしないと画像解析の精度が悪化することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は,被写体を複数方向から撮像できるようにしつつ,画像解析の精度を悪化させないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による撮像システムは,被写体の移動路に沿って上記被写体を異なる方向から撮像するように設けられ,上記移動路中を移動する被写体を被写体像に含む画像データを出力するイメージセンサをそれぞれが含む複数台のカメラ,上記被写体の移動路を挟んで上記複数台のカメラのそれぞれと対向して設けられ,上記複数台のカメラのそれぞれに向けて光を照射する複数台の対向照明装置,ならびに上記複数台のカメラおよび複数台の対向照明装置のそれぞれの動作を制御する制御装置を備え,上記制御装置は,対向して設けられる一対の上記カメラおよび上記対向照明装置が同じタイミングに同期して駆動し,かつ複数対の上記カメラおよび上記対向照明装置のそれぞれが異なるタイミングに駆動するように上記複数台のカメラおよび複数台の対向照明装置を制御するものである。
【0008】
制御装置は,撮像システムが備える複数台のカメラおよび複数台の対向照明装置の駆動を制御する。撮像システムは対向して配置される一対のカメラおよび対向照明装置を,複数対備えている。一対のカメラおよび対向照明装置は制御装置によって同期駆動され,カメラの撮像タイミング(露光タイミング)に合わせて対向照明装置は発光する。
【0009】
制御装置によってカメラの駆動を制御し,他方,カメラと対をなす対向照明装置については制御装置に代えてカメラによって駆動制御してもよい。対向照明装置をカメラによって制御する撮像システムは,被写体の移動路に沿って上記被写体を異なる方向から撮像するように設けられ,上記移動路中を移動する被写体を被写体像に含む画像データを出力するイメージセンサをそれぞれが含む複数台のカメラ,上記被写体の移動路を挟んで上記複数台のカメラのそれぞれと対向して設けられ,上記複数台のカメラのそれぞれに向けて光を照射する対向照明装置,ならびに上記複数台のカメラのそれぞれの動作を制御する制御装置を備え,上記制御装置は,上記複数台のカメラのそれぞれが異なるタイミングに駆動するように上記複数台のカメラを制御するものであり,上記複数台のカメラのそれぞれが,被写体を撮像するタイミングに同期して,上記カメラに対向して設けられている対をなす一の照明装置が光を照射するように上記複数台の対向照明装置を制御するものである。
【0010】
一実施態様では,上記被写体が上記移動路に沿う長手方向を持ち,移動路に沿って移動する線条体であり,上記複数台のカメラが上記線条体を中心とする同心円上に角度間隔をあけて設けられている。線状体の周面を広い範囲にわたって撮像することができる。
【0011】
他の実施態様では,上記被写体が上記移動路上を移動する複数の同一形状の物体であり,上記複数台のカメラが上記移動路を挟んで設けられている。移動路上を移動する物体(たとえばコンベアによって搬送される物体,自由落下する物体)を複数方向から撮像することができる。
【0012】
この発明によると,複数台のカメラが被写体の移動路に沿って上記被写体を異なる方向から撮像するように設けられているので,被写体の広い範囲(全体,全周)にわたる被写体像を得ることができ,被写体の外観検査,寸法計測等,被写体像を表す画像データを用いたその後の画像解析の精度を高めることができる。
【0013】
一対のカメラと対向照明装置は同じタイミングに同期駆動し,かつ他のカメラと対向照明装置の対とは異なるタイミングに駆動する。被写体の移動路を挟んでカメラと対向して配置される対向照明装置から照射される光は,移動路を移動する被写体によってその一部が遮られ,これによってカメラのイメージセンサには,被写体によって光が遮られた部分に暗い画像部分(影)が,その周囲に明るい画像部分が結像する。イメージセンサに結像する被写体像において輪郭(エッジ)を表す部分に大きな輝度の変化が生じるので,安定した(はっきりした)被写体像の輪郭が撮像され,高精度に画像解析を実行することができる。他の対に含まれる対向照明装置からの光が入射しないので,被写体の輪郭が他の対に含まれる対向照明装置からの光によってはっきりしなくなることもない。
【0014】
一実施態様では,上記対向照明装置の発光時間よりも長い時間間隔が,上記対向照明装置同士の駆動タイミング間に確保されている。他の対に含まれる対向照明装置からの光の影響を確実に無くすことができる。
【0015】
好ましくは,上記複数台のカメラの露光時間および上記複数台の対向照明装置の発光時間が等しい。すなわち,カメラと対向照明装置の対のそれぞれは,カメラと対向照明装置の駆動タイミングが同じであり,かつ駆動時間(カメラの撮像(露光)時間,対向照明装置の発光時間)が等しい。複数対のカメラおよび対向照明装置を,駆動タイミングをずらして制御しやすくすることができる。
【0016】
一実施態様では,上記カメラの近傍に配置され,カメラ側から上記被写体に向けて光を照射する前方照明装置が,上記カメラのそれぞれに設けられており,上記制御装置は,上記カメラおよび上記前方照明装置が同じタイミングに同期して駆動し,かつ上記カメラおよび上記対向照明装置の駆動タイミングと異なるタイミングに上記カメラおよび上記前方照明装置が駆動するように,上記複数台のカメラおよび複数台の前方照明装置を制御するものである。前方照明装置によって被写体に向けてカメラ側から光を照射することによって被写体の表面の様子をカメラによって撮像することができる。カメラおよび前方照明装置は同じタイミングに同期駆動し,かつカメラおよび対向照明装置の対の駆動タイミングと異なるタイミングに駆動するので,前方照明装置が上述した被写体像の輪郭を分かりにくくすることはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施例のワイヤロープの画像計測装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
図2】第1実施例のワイヤロープの画像計測装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
図3】デジタルカメラおよび対向照明装置の駆動のタイミングチャートである。
図4】ワイヤロープシルエット画像を示す。
図5】ワイヤロープシルエット画像を示す。
図6】ワイヤロープシルエット画像を模式的に示す。
図7】ワイヤロープシルエット画像の右側エッジおよび左側エッジを実線により表したワイヤロープ画像を模式的に示す。
図8】第1実施例の変形例の画像計測装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
図9】第1実施例の変形例の画像計測装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
図10】第1実施例のさらに他の変形例の画像計測装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
図11】第2実施例の画像計測装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
図12】第2実施例の画像計測装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
図13】デジタルカメラ,対向照明装置および前方照明装置の駆動のタイミングチャートである。
図14】ワイヤロープ画像を示す。
図15】ワイヤロープ画像を示す。
【実施例0018】
図1図2はワイヤロープの画像計測装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【0019】
ワイヤロープの画像計測装置は,撮像システムと記録/解析装置45とを含む。撮像システムは,ワイヤロープ1が走行する走行路(移動路)を挟んで対向して配置される第1デジタルカメラ11および第1対向照明装置13の対と,同様にワイヤロープ1を挟んで対向して配置される第2デジタルカメラ21および第2対向照明装置23の対と,第1,第2デジタルカメラ11,21の前方に設けられるレンズ12,22と,同期信号回路40とを含む。
【0020】
被測定対象物であるワイヤロープ1(図1図2において円形の断面で示されている)が通過する走行路の一方側に第1デジタルカメラ11が,他方側に第1対向照明装置13が,それぞれ対向して配置されている。第1対向照明装置13から照射される光はワイヤロープ1によってその一部が遮られ,ワイヤロープ1によって遮られなかった光がレンズ12を介して第1デジタルカメラ11のイメージセンサ(図示略)によって受光される(図1)。同様に,第2デジタルカメラ21と第2対向照明装置23もワイヤロープ1が通過する走行路を挟んで対向して配置されており,第2対向照明装置23から照射される光はワイヤロープ1によってその一部が遮られ,ワイヤロープ1によって遮られなかった光がレンズ22を介して第2デジタルカメラ21のイメージセンサ(図示略)によって受光される(図2)。
【0021】
第1デジタルカメラ11と第1対向照明装置13とを結ぶ方向と,第2デジタルカメラ21と第2対向照明装置23とを結ぶ方向は互いに直交しており,かつ第1,第2デジタルカメラ11,21および第1,第2対向照明装置13,23はいずれもワイヤロープ1を中心とする同心円上に配置されており,第1デジタルカメラ11が備えるイメージセンサとワイヤロープ1との間の距離と,第2デジタルカメラ21が備えるイメージセンサとワイヤロープ1との間の距離は等しい。第1デジタルカメラ11によって撮像されるワイヤロープ部分(面)と第2デジタルカメラ21によって撮像されるワイヤロープ部分(面)は互いに異なるものとなる。
【0022】
レンズ12,22には好ましくはテレセントリックレンズが用いられる。テレセントリックレンズを用いることによってレンズ12,22の光軸に対して平行に入射した光だけが第1,第2デジタルカメラ11,21が備えるイメージセンサ上に結像し,歪みのない被写体像を得ることができる。
【0023】
第1,第2デジタルカメラ11,21が備えるイメージセンサは,複数の撮像素子が垂直方向および水平方向の二次元に配列されたエリアセンサであってもよいし,水平方向に配列された複数の撮像素子を備えるラインセンサであってもよい。撮像素子はC-MOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)素子であってもよいし,CCD(Charge-Coupled Device)素子であってもよい。イメージセンサのフレームレートは,走行しているワイヤロープ1の走行速度に応じて任意に設定することができ,たとえば10~500fps程度のフレームレートによってワイヤロープ1を撮像する。イメージセンサの画素数は任意であるが,画素数が多いほど,以下に説明する画像解析を詳細に(細かく)実行することができる。
【0024】
第1,第2デジタルカメラ11,21から出力される画像データは記録/解析装置45に送信される(図1にのみ記録/解析装置45を図示する)。記録/解析装置45は,記録/解析装置45の動作を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit),各種データを一時的に記憶するメモリ,各種データを記憶する記憶媒体,第1,第2デジタルカメラ11,21との間でデータ通信するための通信装置,画像データに基づくワイヤロープ1の画像解析処理(画像を用いたワイヤロープ1の直径dの計測,ワイヤロープ1の表面に形成される隣り合う山部間の長さMの計測など)を実行するコンピュータ装置である。第1,第2デジタルカメラ11,21から送信される画像データは記録/解析装置45の記憶媒体に記憶され,記憶媒体に記憶された画像データを用いてワイヤロープ1の画像解析が実行される。記録/解析装置45の記憶媒体には,第1,第2デジタルカメラ11,21から送信される画像データのほか,記録/解析装置45に解析処理を実行させるためのプログラム,オペレーティングシステム・プログラム等も記憶される。
【0025】
図1図2を参照して,第1デジタルカメラ11および第1対向照明装置13と,第2デジタルカメラ21および第2対向照明装置23は,タイミングを異ならせてそれぞれ同期して駆動する。この第1デジタルカメラ11および第1対向照明装置13の同期駆動,ならびに第2デジタルカメラ21および第2対向照明装置23の同期駆動が,同期信号回路40から出力される同期信号によって制御される。
【0026】
同期信号回路40は所定周波数の基準信号を生成する発振器を備えるもので,発振器が生成する基準信号のうちの一部が,第1,第2デジタルカメラ11,21,および第1,第2対向照明装置13,23に与えられる同期信号として用いられる。第1,第2デジタルカメラ11,21,および第1,第2対向照明装置13,23は,いずれも同期信号回路40から出力される同期信号にしたがうタイミングで駆動する。
【0027】
図3は,同期信号回路40から与えられる同期信号にしたがう,第1,第2デジタルカメラ11,21,および第1,第2対向照明装置13,23の駆動のタイミングチャートを示している。
【0028】
第1デジタルカメラ11および第1対向照明装置13には,同期信号回路40から同じタイミングで同期信号S1,S3が与えられ,これによって第1デジタルカメラ11および第1対向照明装置13は同じタイミングで駆動する(図1)。同様に,第2デジタルカメラ21および第2対向照明装置23には,同期信号回路40から同じタイミングで同期信号S2,S4が与えられ,これによって第2デジタルカメラ21および第2対向照明装置23も同じタイミングで駆動する(図2)。
【0029】
第1デジタルカメラ11および第1対向照明装置13に与えられる同期信号S1,S3の周期と,第2デジタルカメラ21および第2対向照明装置23に与えられる同期信号S2,S4の周期は等しく,たとえば2.5msecの周期を持つ。他方,第1デジタルカメラ11および第1対向照明装置13に与えられる同期信号S1,S3と,第2デジタルカメラ21および第2対向照明装置23に与えられる同期信号S2,S4とは,所定時間たとえば0.5msecだけタイミングがずらされる。
【0030】
たとえば,第1デジタルカメラ11および第1対向照明装置13に与えられる同期信号S1から0.5msec後に,第2デジタルカメラ21および第2対向照明装置23に同期信号S2が与えられる。同様に,第1デジタルカメラ11および第1対向照明装置13に与えられる同期信号S3から0.5msec後に,第2デジタルカメラ21および第2対向照明装置23に同期信号S4が与えられる。この同期信号S1とS2の時間差(駆動時間間隔),および同期信号S3とS4の時間差は,第1,第2デジタルカメラ11,21の露光時間(たとえば0.2msec)および第1,第2対向照明装置13,23の発光時間(たとえば0.2msec)よりも長い時間が確保される。これにより,第1デジタルカメラ11および第1対向照明装置13が駆動され,第1対向照明装置13による照明下において第1デジタルカメラ11によってワイヤロープ1が撮像された後,第1対向照明装置13による照明の影響を受けることなく,第2対向照明装置23による照明下において第2デジタルカメラ21によってワイヤロープ1を撮像することができる。第2デジタルカメラ21によってワイヤロープ1を撮像するときに,第2デジタルカメラ21と対向しない第1対向照明装置13は消灯し,第1対向照明装置13からの光の影響を受けないので,第2デジタルカメラ21によって撮像されるワイヤロープ画像における輪郭がはっきりしなくなることが防止される。第1デジタルカメラ11についても第1デジタルカメラ11と対向しない第2対向照明装置23からの光の影響を受けずにワイヤロープ1を撮像することができる。
【0031】
同期信号回路40から第1デジタルカメラ11および第1対向照明装置13の両方に同期信号S1,S3を与えるのに代えて,第1デジタルカメラ11にのみ同期信号S1,S3を与え,同期信号S1が与えられたときに第1デジタルカメラ11から第1対向照明装置13に制御信号を出力し,第1デジタルカメラ11の露光に連動して第1対向照明装置13から光を照射するようにしてもよい。第2デジタルカメラ21および第2対向照明装置23についても同様である。
【0032】
図4は,第1対向照明装置13による照明下において第1デジタルカメラ11によって撮像されたワイヤロープ1の画像51を示している。図5は,図4に示すワイヤロープ画像51の撮像直後のタイミング(たとえば図3に示す同期信号S1とS2との関係)において,第2対向照明装置23による照明下において第2デジタルカメラ21によって撮像されたワイヤロープ1の画像52を示している。
【0033】
ワイヤロープ1を挟んで一方側に第1デジタルカメラ11が,他方側に第1対向照明装置13がそれぞれ設置されているので(図1参照),第1デジタルカメラ11によって撮像されるワイヤロープ画像51は,第1対向照明装置13から照射される光がワイヤロープ1によって遮られる暗い画像部分(以下,ワイヤロープシルエット画像51Aという)とその周囲の明るい画像部分(以下,背景画像51Bという)を含むものとなる。図4に示すようにワイヤロープ1の幅方向全体が撮像されるように第1デジタルカメラ11は設置される。
【0034】
図5を参照して,第2デジタルカメラ21および第2対向照明装置23についても,ワイヤロープ1を挟んでそれぞれが反対側に設置されているので(図2参照),第2デジタルカメラ21によって撮像されるワイヤロープ画像52にも,ワイヤロープシルエット画像52Aとその周囲の明るい背景画像52Bを含むものとなる。
【0035】
第1デジタルカメラ11および第2デジタルカメラ21は,ワイヤロープ1に対して互いに直交して配置されているので(図1図2),第1デジタルカメラ11では撮像することができない範囲を第2デジタルカメラ21によって撮像することができ,逆に第2デジタルカメラ21では撮像することができない範囲を第1デジタルカメラ11によって撮像することができる。ワイヤロープ1のほぼ全周にわたる外形を2台のデジタルカメラ11,21を用いることで撮像することができるので,たとえば画像計測および計測結果に基づくワイヤロープ1の品質検査の精度を向上させることができる。
【0036】
ワイヤロープ1は走行しており,かつ第1デジタルカメラ11と第2デジタルカメラ21の駆動タイミングがずれているので,図4に示すワイヤロープシルエット画像51Aと図5に示すワイヤロープシルエット画像52Aは厳密にはワイヤロープ1の同じ位置(ワイヤロープ1の長手方向の同じ位置)を撮像するものではない。しかしながら,たとえばワイヤロープ1の走行速度が30m/minとすると,第1デジタルカメラ11が駆動した直後に第2デジタルカメラ21が駆動するまでの時間0.5msecの間のワイヤロープ1の移動距離は0.25mmである。一般的なワイヤロープ1の寸法は直径14mm,山部と山部の間隔は14.47mm程度(ストランド本数が6本の場合)であり,0.25mm程度のずれは微小と考えることができ,図4に示すワイヤロープシルエット画像51Aと図5に示すワイヤロープシルエット画像52Aはワイヤロープ1の同じ位置を撮像したものと考えて支障はない。
【0037】
第1,第2デジタルカメラ11,21から出力される画像データは,記録/解析装置45の記憶媒体に記録される。記憶媒体に記録される画像データを用いて,たとえばワイヤロープ1の直径dを算出することができる。
【0038】
ワイヤロープ1は複数本(たとえば6本)のストランドを撚り合わせて作られるので,隣り合うストランド同士の境界にはらせん状の谷部(溝部,ニップ)が形成され,かつ谷部と谷部の間に山部(クラウン)が形成される。ワイヤロープ1の直径dの測定ではワイヤロープ1の山部に沿うワイヤロープ1の横断面の外接円の直径が用いられる。記録/解析装置45によって実行される画像データを用いたワイヤロープ1の直径dの測定処理においても,ワイヤロープ1の山部に相当する画像部分が直径dの算出に用いられる。
【0039】
図6図7を参照して,ワイヤロープ画像を用いた直径dの算出方法を説明する。図6は第1,第2デジタルカメラ11,21から出力される画像データによって表されるワイヤロープ画像(フレーム画像)53を模式的に示している。ワイヤロープ画像53にはワイヤロープシルエット画像53A(左右のエッジの両方)が含まれる。図7は後述するようにして求められるワイヤロープシルエット画像53Aの右側エッジおよび左側エッジを実線によって表したワイヤロープ画像53である。
【0040】
ワイヤロープ画像53は複数の行単位の画像(以下,ライン画像という)を含む。ライン画像のそれぞれを用いてワイヤロープシルエット画像53Aの左側エッジ位置および右側エッジ位置が決定される(たとえば輝度が変化する位置が左側エッジ位置,右側エッジ位置に決定される)。また,決定された左側エッジ位置と右側エッジ位置から等距離の位置が中点に決定される。複数のライン画像のそれぞれについて求められる複数の中点からワイヤロープシルエット画像53Aの中心線53B(図7において破線で示す)が算出される。
【0041】
ワイヤロープ画像53に含まれるすべてのライン画像について左側エッジ位置と右側エッジ位置が決定されることで,図7に示すように,ワイヤロープシルエット画像53Aの左側エッジおよび右側エッジのそれぞれにサインカーブに類似するエッジ曲線が描かれる。上述したようにワイヤロープ1は複数本のストランドを撚り合わせることによって構成されており,ワイヤロープ1の表面にはワイヤロープ1の長手方向に沿って山部と谷部とが繰り返し現れるからである。
【0042】
たとえば,右側エッジ曲線に対して最小二乗法を用いて直線(エッジ直線)を描くことによって右側エッジ曲線とエッジ直線の複数の交点が生じる。隣り合う2つの交点の中点を山部(山部の頂点が位置する箇所)および谷部(谷部の頂点が位置する箇所)と決定することができる。左側エッジ曲線についても同様に山部および谷部の位置が決定される。
【0043】
上記中心線53Bから上記中点を通って右側エッジ曲線に達するまでの最大距離Lと,上記中心線53Bから上記中点を通って左側エッジ曲線に達するまでの最大距離Lの合計が,ワイヤロープの直径dと決定される。
【0044】
ワイヤロープ画像53に複数の山部が含まれる場合には,隣り合う山部同士の距離Mからワイヤロープ1のピッチも算出することができる。
【0045】
たとえばワイヤロープ1に断線が発生していると,断線が発生した箇所のワイヤロープ画像を用いて算出されるワイヤロープ1の直径dが極端に大きくなることがある(図4参照)。上述したワイヤロープ1の直径dの算出処理はワイヤロープ1に生じている異常検出にも用いることができる。
【0046】
図8および図9は,第1実施例の変形例の画像計測装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【0047】
図8および図9の撮像システムは,第1デジタルカメラ11および第2デジタルカメラ21がワイヤロープ1に対して直交配置されていず,120度の角度をずらして配置されている点が,第1実施例の撮像システム(図1および図2)と異なる。第1実施例の変形例の撮像システムのように,第1,第2デジタルカメラ11,21は必ずしも直交配置されていなくてもよく,この場合でも第1デジタルカメラ11では撮像することができない範囲を第2デジタルカメラ21によって撮像することができる。
【0048】
図10は第1実施例のさらに他の変形例のワイヤロープの画像計測装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【0049】
図10に示す画像計測装置は,ワイヤロープ1を挟んで対向して配置される第1デジタルカメラ11および第1対向照明装置13,ならびに第2デジタルカメラ21および第2対向照明装置23に加えて,同様にワイヤロープ1を挟んで対向して配置される第3デジタルカメラ31および第3対向照明装置33を備えている。第1,第2,第3デジタルカメラ11,21,31は,ワイヤロープ1の周りに120度の角度間隔をあけて配置されている。第1,第2,第3対向照明装置13,23,33も,ワイヤロープ1の周りに120度の角度間隔をあけて配置されている。第3デジタルカメラ31の前方にもレンズ32が設けられる。また,同期信号回路40からは第3デジタルカメラ31および第3対向照明装置33にも同期信号が与えられる。
【0050】
3台のデジタルカメラ11,21,31を設けることによってワイヤロープ1の外観をさらに精度よく撮像することができ,画像計測および計測結果に基づくワイヤロープ1の品質検査の精度を向上させることができる。
【0051】
第3デジタルカメラ31および第3対向照明装置33を備える撮像システムについても,第1実施例の撮像システムと同様に,第3デジタルカメラ31および第3対向照明装置33には同期信号回路40から同じタイミングで同期信号が与えられ,これによって第3デジタルカメラ31および第3対向照明装置33は同じタイミングに駆動する。また,第3デジタルカメラ31および第3対向照明装置33は,第1デジタルカメラ11および第1対向照明装置13の駆動タイミング,ならびに第2デジタルカメラ21および第2対向照明装置23の駆動タイミングとは異なるタイミングに駆動し,第1実施例と同様に,第1,第2,第3デジタルカメラ11,21,31の露光時間および第1,第2,第3対向照明装置13,23,33の発光時間よりも長い駆動時間差が確保される。これによって,第3デジタルカメラ31が露光するタイミングには第3対向照明装置33のみが光を出射し,第3デジタルカメラ31によって撮像されるワイヤロープ画像についてもはっきりした輪郭を撮像することができる。
【0052】
図11および図12は第2実施例のワイヤロープの画像計測装置のハードウエア構成を示すブロック図である。第1実施例の画像計測装置(図1および図2)とは,第1デジタルカメラ11の前方に設けられたレンズ12の周囲に第1前方照明装置14が設けられ,第2デジタルカメラ21の前方に設けられたレンズ22の周囲にも第2前方照明装置24が設けられている点が異なる。同期信号回路40からの同期信号は第1,第2前方照明装置14,24にも与えられる。
【0053】
第1,第2前方照明装置14,24は環状(枠状)の形状を備えるもので,第1,第2デジタルカメラ11,21の視野を遮ることなく,第1,第2デジタルカメラ11,21の前方に向けて光を照射する。第1,第2前方照明装置14,24によって第1,第2デジタルカメラ11,21に対向するワイヤロープ1の表面に光が照射される。
【0054】
図13は,同期信号回路40から与えられる同期信号にしたがう,第1,第2デジタルカメラ11,21,第1,第2対向照明装置13,23,および第1,第2前方照明装置14,24の駆動のタイミングチャートを示している。
【0055】
第1デジタルカメラ11の撮影周期(たとえば2.5msec)の2倍の周期(たとえば5msec)で第1対向照明装置13および第1前方照明装置14は駆動する。これによって第1デジタルカメラ11は,第1対向照明装置13による照明下におけるワイヤロープ1の撮像(図13の同期信号S1,S5のタイミング)と,第1前方照明装置14による照明下におけるワイヤロープ1の撮像(図13の同期信号S3のタイミング)とを交互に繰り返す。同様に,第2デジタルカメラ21の撮影周期の2倍の周期で第2対向照明装置23および第2前方照明装置24は駆動し,第2デジタルカメラ21も,第2対向照明装置23による照明下におけるワイヤロープ1の撮像(図13の同期信号S2,S6のタイミング)と,第2前方照明装置24による照明下におけるワイヤロープ1の撮像(図13の同期信号S4のタイミング)とを交互に繰り返す。
【0056】
第2実施例においても,同期信号S1,S2,S3,S4,S5,S6のタイミングは,第1,第2デジタルカメラ11,21の露光時間,およびすべての照明装置13,14,23,24の発光時間を考慮して互いに重ならないタイミングとされ,これによって,たとえば第1デジタルカメラ11が第1前方照明装置14の照明下においてワイヤロープ1を撮像しているタイミング(同期信号S3のタイミング)では,他の照明装置13,23,24は消灯される。
【0057】
図14は,第1前方照明装置14による照明下において第1デジタルカメラ11によって撮像されたワイヤロープ1の画像54を示している。図15は,図14に示すワイヤロープ画像54の撮像直後のタイミングにおいて,第2前方照明装置24による照明下において第2デジタルカメラ21によって撮像されたワイヤロープの画像55を示している。画像輪郭をぼやけさせることなく,かつデジタルカメラの台数を増やすことなく,ワイヤロープ1の表面画像を撮影することができる。
【0058】
上述の実施例では,ワイヤロープ1を被測定対象物としているが,ワイヤロープ1以外の線条体,たとえばパイプ,ケーブル等を被測定対象物とすることもできるのは言うまでもない。さらに,缶,瓶その他の容器の外観検査(たとえばベルトコンベア上を搬送される缶を撮像することによって得られるシルエット画像を用いた缶の寸法測定,形状検査,異物検査),ねじ,ボルト,ナット,コネクタ等の検査(たとえば自由落下するねじを撮像することによって得られるシルエット画像を用いて多数の同一形状のねじの数を計数したり,異物を検査したりする)にも,上述した画像計測装置(撮像システム)を用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 ワイヤロープ
11,21,31 デジタルカメラ
12,22,32 レンズ
13,23,33 対向照明装置
14,24 前方照明装置
40 同期信号回路(制御装置)
45 記録/解析装置
51,52,53,54,55 ワイヤロープ画像
51A,52A,53A ワイヤロープシルエット画像
51B,52B 背景画像
53B ワイヤロープシルエット画像の中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15