(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131437
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】コイル部品および回路基板
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01F27/29 F
H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041693
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利昌
(72)【発明者】
【氏名】三村 大樹
(72)【発明者】
【氏名】柏 智男
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AA11
5E070AB01
5E070BA12
5E070BB03
5E070CB13
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】金属磁性材料が用いられるとともに高密度実装が可能なコイル部品を提供する。
【解決手段】一態様に係るコイル部品によれば、金属磁性粒子と樹脂を含む磁性基体と、上記磁性基体の内部あるいは表面に設けられる導体部と、上記磁性基体の表面のうち第1面に設けられて上記導体部と接続され、上記第1面に直交する方向に見て、中央部と、上記中央部の外側の少なくとも一部に設けられる外周部とを有し、上記第1面から上記外周部の表面までの距離が上記第1面から上記中央部の表面までの距離よりも小さい外部電極と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属磁性粒子と樹脂を含む磁性基体と、
前記磁性基体の内部あるいは表面に設けられる導体部と、
前記磁性基体の表面のうち第1面に設けられて前記導体部と接続され、前記第1面に直交する方向に見て、中央部と、前記中央部の外側の少なくとも一部に設けられる外周部とを有し、前記第1面から前記外周部の表面までの距離が前記第1面から前記中央部の表面までの距離よりも小さい外部電極と、
を備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記外部電極は、前記外周部が前記中央部の外側の全周に設けられることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記外部電極は、前記中央部における構成の積み重ねが前記外周部における構成の積み重ねよりも多いことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記外部電極は、前記中央部と前記外周部の構成の違いとして前記中央部に樹脂層を有し、前記中央部の表面から前記外周部の表面に連なる金属層を有することを特徴とする請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記外部電極は、前記第1面に直交する方向に見て前記第1面の外周以内に設けられることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記外部電極は、前記外周部の表面の表面粗さが前記中央部の表面の表面粗さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のコイル部品と、
前記コイル部品が実装された基板と、を備えることを特徴とする回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品および回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高性能な電子機器の代表的なものとして携帯電話が知られている。携帯電話に用いられる電子部品は、高性能化だけでなく小型化も求められる。また、一部の電子機器では、より部品点数を増やすことが必要となるため、部品を高い密度で実装する高密度実装が行われている。高密度実装の実現には、部品の小型化と、部品間隔の狭ピッチ化とが求められる。
【0003】
部品間隔の狭ピッチ化に対応した電子部品の設計では、実装面のみに外部電極が設けられる構造が採用されることが多く、この構造に関する技術検討が従来行われている。
例えば、特許文献1には、端面と上面と底面と側面の端部とに外部電極が設けられ、少なくとも下面を除く素体外周を、絶縁性樹脂で被覆する下面電極構造の表面実装インダクタが開示されている。特許文献1の技術は、比較的容易な方法により、確実に底面のみを露出させることができる。
【0004】
また、例えば特許文献2には、磁性体材料としてNi-Cu-Zn系フェライトが用いられるコイル部品が開示されているが、小型のコイル部品における高性能化として、フェライトに替えて金属磁性材料を磁性体材料に用いる技術的動向が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-201466号公報
【特許文献2】特開2015-39026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、絶縁性の確保のために絶縁性樹脂の十分な厚みが必要となることや、底面側の電極に対する絶縁性樹脂の付着防止が必要となることなどが、電子部品の小型化の制約となり、延いては高密度実装を阻害する。
また、金属磁性材料が用いられるコイル部品の場合には、フェライトが用いられるコイル部品の場合より、絶縁体層の重さは同体積で約1.5倍となる。このため、高密度実装に対応した電極面積が小さい小型のコイル部品であっても実装強度を確保することが求められる。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、金属磁性材料が用いられるとともに高密度実装が可能なコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、金属磁性粒子と樹脂を含む磁性基体と、上記磁性基体の内部あるいは表面に設けられる導体部と、上記磁性基体の表面のうち第1面に設けられて上記導体部と接続され、上記第1面に直交する方向に見て、中央部と、上記中央部の外側の少なくとも一部に設けられる外周部とを有し、上記第1面から上記外周部の表面までの距離が上記第1面から上記中央部の表面までの距離よりも小さい外部電極と、を備える。
【0009】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は、上記外周部が上記中央部の外側の全周に設けられる。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は、上記中央部における構成の積み重ねが上記外周部における構成の積み重ねよりも多い。
【0010】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は、上記中央部と上記外周部の構成の違いとして上記中央部に樹脂層を有し、上記中央部の表面から上記外周部の表面に連なる金属層を有する。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は、上記第1面に直交する方向に見て上記第1面の外周以内に設けられる。
【0011】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は、上記外周部の表面の表面粗さが上記中央部の表面の表面粗さよりも大きい。
また、本発明の一態様に係る回路基板によれば、上述したいずれかのコイル部品と、上記コイル部品が実装された基板と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属磁性材料が用いられるとともに高密度実装が可能なコイル部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るコイル部品を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るコイル部品の底面図である。
【
図5】外部電極の微視的構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。
【0015】
本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。先に説明した図面に示された構成要素については、後の図面の説明で適宜に参照する場合がある。
【0016】
<第1実施形態>
図1および
図2は、本発明の第1実施形態に係るコイル部品を示す図であり、
図1には斜視図が示され、
図2には、
図1のA-A線に沿った断面が示されている。
コイル部品1は、基板2aに実装されている。基板2aには、例えば2つのランド部3が設けられている。コイル部品1は、1つの磁性基体11と2つの外部電極12とを有する。コイル部品1は各外部電極12とランド部3とが半田で接合されることで基板2aに実装される。H軸方向に見た場合、ランド部3の面積は、外部電極12の面積の1.6倍以下である。より望ましくは、H軸方向に見た場合、ランド部3の面積は、外部電極12の面積の1.3倍以下である。
【0017】
本発明の一実施形態による回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装された基板2aと、を備える。回路基板2は、様々な電子機器に備えられる。回路基板2を備えた電子機器としては、自動車の電装品、サーバ、ボードコンピュータおよびこれら以外の様々な電子機器が想定される。
コイル部品1は、インダクタ、フィルタ、リアクトルおよびこれら以外の様々なコイル部品であってもよい。コイル部品1は、カップルドインダクタ、トランス、チョークコイルおよびこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品であってもよい。コイル部品1は、例えば、DC/DCコンバータに用いられるインダクタであってもよい。
【0018】
本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、方向の説明は、
図1の「L軸」方向、「W軸」方向および「H軸」方向を基準に用い、それぞれ、「長さ」方向、「幅」方向および「高さ」方向と称する。
コイル部品1は、直方体形状の外形を有する。即ちコイル部品1は、長さ方向Lの両端に端面1a、1bを有し、高さ方向Hの両端に上面1cおよび底面1dを有し、幅方向Wの両端に前面1eおよび後面1fを有する。底面1dは、コイル部品1が基板2aに実装される際に基板2aと対向する実装面である。
【0019】
直方体形状のコイル部品1における各辺の寸法は、外形寸法における最大の1辺が5.0mmより小さく、または2.5mmより小さく、更には2.0mmより小さくてもよい。コイル部品1の外部電極は、コイル部品1の表面積の20%より小さく、更には10%よりちいさくてもよい。コイル部品1の単位体積当たりの重量は、0.6g/mm3より大きく、または0.65g/mm3より大きく、更には0.70g/mm3より大きくてもよい。また、コイル部品1の外部電極12の単位面積当たりの重量は、0.025g/mm2より大きく、または0.027g/cm2より大きく、更には0.029g/cm2より大きくてもよい。
【0020】
コイル部品1の外面はいずれも、平坦な平面であってもよいし湾曲した湾曲面であってもよい。また、コイル部品1の8つの角部および12の稜線部は、丸みや面取りを有していてもよい。
本明細書においては、コイル部品1の外面の一部が湾曲している場合や、コイル部品1の角部や稜線部が丸みを有している場合にも、かかる形状を「直方体形状」と称することがある。つまり、本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」を意味するものではない。
【0021】
<コイル部品の構造>
本発明の第1実施形態におけるコイル部品1は、磁性基体11と外部電極12を有し、磁性基体11の内部に導体14を有する。
磁性基体11は直方体形状を有し、磁性基体11の端面1a、1b、上面1c、底面1d、前面1eおよび後面1fは、実質的にコイル部品1の端面1a、1b、上面1c、底面1d、前面1eおよび後面1fとなっている。
【0022】
本実施形態における磁性基体11は、金属磁性材料と結合材とから形成される磁性体である。結合材は、金属磁性材料の相互間を結合させるものであり、また電気的な導通を防ぐため、絶縁性の高いものでもある。結合材は、磁性基体11の表面抵抗が105Ω/sq以上となるものが用いられる。Feを主成分とする金属磁性材料自体は抵抗が低いことから、金属磁性材料に合わせて結合材の成分や配合割合等の調整が行われることが望ましい。結合材としては、例えば比抵抗が108Ωcm以上であるものが選ばれ、また絶縁性を高める目的から、結合材としては、樹脂が含まれ、また樹脂に追加される成分としてガラス、金属酸化物が選択され得る。
【0023】
磁性基体11は、内部の比抵抗が非常に高く、また表面でも同様であり、表面にも結合材が存在している。金属磁性材料は、Fe、Ni、Coのうちの1以上の成分を含む金属磁性粒子である。また、金属磁性材料は金属磁性粒子に加えて、Mg、Mn、Niのうちの1以上の成分を含むセラミックの磁性粒子やシリカなどの非磁性粒子を含んでもよい。金属磁性粒子としては、Fe、Ni、Coの成分に加えてSi、Cr、Al、B、Pのうちの1以上の成分を含んでもよく、また複数種の金属磁性粒子が組み合わされてもよい。
【0024】
磁性材料は、粒子の大きさが1μm以上60μm以下である。また、金属磁性材料が金属磁性粒子以外に、金属微粒子、金属酸化物、セラミック材料などの他の材料を更に含む場合、当該他の材料の粒径は平均で0.01~1μmであり、金属磁性粒子より粒径が小さい。金属磁性粒子以外の材料を含む場合は、磁性としての機能を高めることよりも、例えば空隙を減らす、または機械的強度を補うことができる。
磁性基体11は、金属磁性材料の充填率が80vol%以上88vol%以下であり、残部が金属磁性材料以外のものであり、絶縁物または空隙を含んでいる。
【0025】
導体14は、導電性に優れた金属材料から成る。導体14用の金属材料としては、例えば、Cu、Al、Ni、もしくはAgのうちの1以上の金属、又はこれらの金属のいずれかを含む合金が用いられ得る。導体14は、表面に絶縁物の皮膜が設けられた金属の導線が巻回されたものでもよいし、基板やシートなどの表面にめっきや印刷などによって形成されたものでもよい。
【0026】
本実施形態の導体14は、1ターン以上周回した周回部41を有する。周回部41の周回数は、例えば1.5ターン以上10.5ターン以下である。また、コイル部品1の長さ方向Lの寸法が例えば1.0~2.5mmのような場合、周回部41の周回数は、例えば、1.5ターン以上6.5ターン以下である。周回部41の形状は平面状でもよく螺旋状でもよい。周回部41は、例えば、2つの周回が上側と下側で対向した1つの集合体となっていてもよい。更に、導体14は、周回部41を持たない直線状や階段状のものでもよい。
【0027】
導体14は、複数個の素子に分かれていてもよい。複数個の素子とは、それぞれが互いに絶縁の関係にあり、それぞれの素子がコイルとして機能することを意味する。導体14が複数個の素子に分かれたコイル部品1としては、例えば、素子が並列に並ぶアレイタイプや、素子が互いに磁気的に結合するタイプ、などがある。また、導体14が複数個の素子に分かれたコイル部品1は、具体的には、トランス、コモンモードチョークコイル、カップルドインダクタなどである。
【0028】
導体14は、外部との電気的な導通を取るための引き出し部42を有する。引き出し部42は周回部41の両端に設けられており、外部電極12を導体14と接続するものである。導体14の作製には、巻線、薄膜、積層のいずれかのプロセスが用いられ、特に制限されることはない。
【0029】
図2には、導線が磁性基体11の底面1dと上面1cに沿って周回した、いわゆる水平巻きの周回部41が例示されている。導体14は、導線が磁性基体11の端面1a、1bに沿って周回した、いわゆる垂直巻きの周回部を有してもよい。
コイル部品1は、磁性基体11の第1面に相当する底面1dに少なくとも一対の外部電極12を備えている。本明細書において「面に設けられる」、「面に備えられる」とは、その面を見た場合に見える箇所に存在することを意味し、この面は、2つの面が組み合わさるような同一面でない場合でも、一部に湾曲面を含むような場合でもよい。また例えば面よりも外側に突き出して外部電極12が設けられる場合も、あるいは磁性基体11が面に突起を有し、当該突起を覆うように外部電極12が設けられる場合も「面に設けられる」、「面に備えられる」ことに相当する。
【0030】
外部電極12は、一般的な金属材料が用いられて形成され、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Snのうちの1以上の金属からなる金属層を有する。金属層は例えば厚みが0.01~5μmの層である。また、外部電極12は、複数の金属層が組み合わせられてもよく、合わせた厚みが5~10μmとなる。また、外部電極12は、樹脂を含む導電性の樹脂層が一部に組み合わせられてもよく、合わせた厚みが10~30μmとなる。樹脂層は、樹脂の含有比率が60vol%より小さく、更には10vol%より大きい。金属層と樹脂層は、抵抗値として樹脂層が金属層の10倍以上の抵抗を持っている。
【0031】
コイル部品1は、例えば、成形工程や加工工程を経て製造される。即ち、磁性基体11となる成形体が、例えば、圧粉、シート成形、またはモールド成形などの成形工程を経て成形される。導体14は、例えば成形工程中で成形体と一体化されて形成される。あるいは導体14は、成形工程の前に形成されたものが成形工程で成形体と一体化されてもよい。
【0032】
外部電極12は、成形体の一部に加工を施す加工工程によって形成される第1面(例えば底面1a)に設けられる。加工工程における加工は、研磨や切断などで導体14の端面を露出させる加工である。外部電極12は、例えば前駆体が成形体の外形寸法の内側に収まる範囲に設けられ、前駆体に電気めっきが施されて形成される。前駆体は、金属材料のスパッタリング、蒸着、無電解めっきによって形成される。前駆体は、導電性の樹脂材料の印刷、塗布によって形成されてもよい。
【0033】
<外部電極の構造>
外部電極12の詳細構造について以下説明する。
図3~
図5は、外部電極12の構造を示す図である。
図3にはコイル部品1の底面が示され、
図4には、
図2中の領域Rに相当する部分が拡大して示され、
図5には、外部電極12の微視的構造が模式的に示されている。
【0034】
外部電極12は、コイル部品1の外形寸法、若しくは底面1dの外周寸法に見合った面積を有し、基板2aへの実装に必要な面積を有する。例えば、コイル部品1の外形寸法から求められる底面1dの面積に対して外部電極12の面積割合は80%以下である。本実施形態では一対の外部電極12が設けられているので、1つの外部電極12の面積は、底面1dの面積の40%以下である。
【0035】
外部電極12は、底面1dの外周以内に設けられ、端面1a、1b、前面1e、後面1fには突き出していない。このため、外部電極12の存在によるコイル部品1の外形寸法の拡大が抑制され、磁性基体11の最大化が可能となる。外部電極12は、コイル部品1の外形寸法に影響を与えることなく、端面1a、1b、前面1e、後面1fと同一面まで設けられ得るので、底面1dにおいて外部電極12の最大化が可能となる。
【0036】
外部電極12は、外周部21と中央部22とを有し、底面1dを見る視点で外周部21が中央部22の外側に位置する。また、本実施形態の外部電極12は、外周部21が中央部22の外側を取り囲んでいる。中央部22は、底面1dを見る視点において、外部電極12の中央を含んでおり、外周部21は、外部電極12の中央を含まず、外部電極12の外周の少なくとも一部を含んでいる。
【0037】
また、外部電極12は、底面1dを見る視点で中央部22の面積が外周部21の面積より大きい。外部電極12に占める中央部22の面積と外周部21の面積の割合としては、中央部22の面積の割合が50%より大きく、90%以下であり、外周部21の面積の割合が50%より小さく、10%以上である。更には、中央部22の面積の割合が60%より大きく、80%以下であり、外周部21の面積の割合が40%より小さく、20%以上である。中央部22の面積の割合が外周部21の面積の割合より大きいことで、実装前および実装時におけるコイル部品1の姿勢が安定する。なお、外部電極12の厚みは中央部22の厚みで代表する。
【0038】
また、外周部21の幅(即ち、底面1dを見る視点で中央部22から離れる方向の寸法)は、磁性基体11を構成する金属磁性粒子の直径の3個分以上となっている。外周部21の幅が金属粒子の直径の3個分未満になると、外周部21によって得られる実装強度の効果が低下する虞がある。
【0039】
本実施形態において、外部電極12は一対で設けられ、一対の外部電極12における中央部22と外周部21が対称の位置関係となっている。即ち、L方向に延びる対称軸L1に対して中央部22および外周部21が線対称となっており、W方向に延びる対称軸L2に対しても中央部22および外周部21が線対称となっている。中央部22および外周部21における上記位置関係により、実装時におけるコイル部品1の位置精度を高めるセルフアライメント効果が得られる。
【0040】
外周部21は中央部22よりも厚みが薄く、底面1dから外周部21の表面までの距離D1は、底面1dから中央部22の表面までの距離D2よりも小さい。言い換えると、外周部21の厚さは中央部22の厚さよりも小さく、外周部21の表面と中央部22の表面とではこの厚みの差に相当する分の段差がある。このため、基板2aへのコイル部品1の実装に際してランド部3と外周部21との間に半田フィレット4が形成され、半田フィレット4の外面は、基板2aの面に対する角度が45°より大きい角度となる。更には、半田フィレット4は、外面と基板2aの面との角度が60°より大きく90°より小さい範囲内に収まるようにも形成可能である。この結果、底面1dの外周に対する半田フィレット4の食み出しが抑制され、コイル部品1の高密度実装が可能となる。
【0041】
外周部21の上記距離D1が10μmより小さい場合、外周部21の一端が端面1a、1bなどと同一面に位置しても、基板2aへの実装時の半田は、端面1a、1bなどから外側に食み出す量が抑制される。これは、外周部21の上記一端に付着する半田が少なくなることで、一端から外側に半田が広がる力よりも、表面張力によって外周部21と基板2aの間に挟まれた領域に半田を引き込む力の方が大きく働くためである。
【0042】
外部電極12は、複数の構成の積み重なりによって形成され、厚み方向に層構造として見たとき、外周部21に較べて中央部22は構成としての層構造の数が多い。具体的には、例えば、中央部22は3層以上で外周部21は2層以上となっている。中央部22には、導電性の樹脂材料から作られる樹脂層26が存在し、この樹脂層26の外側を覆う金属層27も存在する。一方、外周部21は樹脂層26を含まず、外周部21の表面には中央部22の表面から連続した金属層27が存在する。中央部22から外周部21まで連続的につながっている金属層27は、中央部22と外周部21とで厚みの差が10%以内である。この結果、外部電極12の各部間での抵抗変化が抑制され、外部電極12に電流が印加された場合、外部電極12における発熱集中が抑制される。
【0043】
外部電極12は、外部電極12の一部として、底面1dに接した金属膜25を有してもよく、金属膜25の厚みは樹脂層26および金属層27それぞれの厚みより薄い。金属膜は、1μmよりも厚みが小さい場合、連続した膜として存在してもよいし、点在する膜として存在してもよいし、両方が混在してもよい。
【0044】
中央部22に樹脂層26が存在する場合、中央部22の厚みにおける樹脂層26の割合は金属層27の割合より大きいことが望ましく、外部電極12に掛かる応力を樹脂層26が緩和する効果が大きくなる。一方、外周部21は樹脂層26を有さず、金属膜25および金属層27で形成されるので外周部21の機械的強度は高く、機械的な強度向上の効果は中央部22にも波及する。
【0045】
外部電極12は、磁性基体11の底面1dの表面粗さに見合った層構造および必要な厚みを有するが、厚みの薄いものが求められる。例えば、外周部21における最も厚みの小さな部分では4μm以上となっており、中央部22における最も厚みの大きな部分では30μm以下となっている。また、外部電極12は、外周部21の表面の方が中央部22の表面より表面粗さが大きい。これにより、外周部21では、基板2aへの実装時における半田との接触面積が大きくなり、半田との接合強度を高めることができる。
【0046】
例えば、中央部22は底面1dの表面粗さの50%より小さくなる厚みに形成され、外周部22は底面1dの表面粗さの50%より大きくなる厚みに形成されて、それぞれの表面粗さが調整される。外周部21と中央部22の表面粗さは、磁性基体11の表面粗さが大きいと大きく、層数および厚みが大きいと小さい。このため、外周部21は中央部22より層数が少なくまたは厚みが小さく設けられる。
【0047】
例えば、磁性基体11の底面1dにおける表面粗さがSa2μmより大きい場合(但しコイル部品1の小型化のためSa5μm以下である。)、外周部21が10μm以下の厚みで設けられることで、外周部21の表面粗さは、底面1dの表面粗さより小さくかつSa2μm以上となる。
【0048】
これに対し、中央部22は、外周部21より層数が多いまたは厚みが大きいことで、外周部21より表面粗さが小さくなる。例えば、磁性基体11の底面1dにおける表面粗さがSa2μmより大きい場合でも、中央部22が20μm以上の厚みで設けられることで、中央部22の表面粗さは外周部21の表面粗さより小さくかつSa1μm以上となる。これにより、コイル部品1は、基板2aへの実装時に基板2aに最も近くなる中央部22の表面の平滑性を得ることができる。このため、基板2aに対するコイル部品1の距離、傾きなどの位置関係は安定し、より精度のよい高密度実装が可能となる。
【0049】
<他の実施形態>
他の実施形態について以下説明する。但し、以下では第1実施形態との相違に着目した説明を行い、第1実施形態の要素と同様の要素については同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0050】
図6は、第2実施形態における底面図である。
第2実施形態では、外部電極12が底面1dの外周から離れた位置に設けられている。即ち、外部電極12は、端面1a、1b、前面1eおよび後面1fに達していない。
図6に示す外部電極12の配置により、実装時の半田は底面1dの外周内に収まることになり、高密度実装に寄与する。
【0051】
図7は、第3実施形態における底面図である。
第3実施形態では、外部電極12の外周部21が中央部22を取り囲んでおらず、一対の外部電極12の内側には外周部21が存在しない。第3実施形態の場合でも、一対の外部電極12における中央部22と外周部21が対称の位置関係となっている。即ち、L方向に延びる対称軸L1に対して中央部22および外周部21が線対称となっており、W方向に延びる対称軸L2に対しても中央部22および外周部21が線対称となっている。なお、外周部21は、一対の外部電極12の内側に設けられて、外側には設けられない配置でもよい。
【0052】
図8は、第4実施形態における底面図である。
第4実施形態では、第3実施形態とは逆に、一対の外部電極12の外側には外周部21が存在しない。第3実施形態と第4実施形態のいずれの場合でも、基板2aへの実装時の安定性と機械的強度を得ることができる。特に、第3実施形態の場合、外周部21が部分的に設けられることにより、コイル部品1の更なる小型化が実現される。
【0053】
コイル部品1における各部の寸法については、断面観察により求めることができる。例えば、外部電極12の厚みは、磁性基体11の第1面を基準とし、第1面と直交する方向で厚みが求められる。また、第1面が異なる面を持つ場合や第1面の表面にうねりなどを含む場合は、対象範囲について等間隔で5点の測定が行われ、測定値が平均されることによって寸法が求められる。また、表面粗さについても、断面観察によって求められる。
【0054】
また、コイル部品1は、外部電極12が、第1面と、第1面に隣り合う第2面とにつながって存在してもよい。また、コイル部品1は、高密度実装の用途以外の基板実装、樹脂モールドや基板内蔵などに用いられてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 コイル部品
1a、1b 端面
1c 上面
1d 底面
1e 前面
1f 後面
2 回路基板
2a 基板
3 ランド部
4 半田フィレット
11 磁性基体
12 外部電極
14 導体
21 外周部
22 中央部
25 金属膜
26 樹脂層
27 金属層
41 周回部
42 引き出し部
【手続補正書】
【提出日】2024-03-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
直方体形状のコイル部品1における各辺の寸法は、外形寸法における最大の1辺が5.0mmより小さく、または2.5mmより小さく、更には2.0mmより小さくてもよい。コイル部品1の外部電極は、コイル部品1の表面積の20%より小さく、更には10%よりちいさくてもよい。コイル部品1の単位体積当たりの重量は、0.006g/mm3より大きく、または0.0065g/mm3より大きく、更には0.0070g/mm3より大きくてもよい。