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  • 特開-浸漬ノズル 図1
  • 特開-浸漬ノズル 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131466
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】浸漬ノズル
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/10 20060101AFI20240920BHJP
   B22D 41/50 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B22D11/10 330C
B22D41/50 520
B22D11/10 330A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041738
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】新妻 宏泰
【テーマコード(参考)】
4E004
4E014
【Fターム(参考)】
4E004FB02
4E014DB04
(57)【要約】
【課題】内管径が小さい浸漬ノズルにも適用可能であって、ノズル内での溶鋼の偏流の発生を抑えつつ、さらに鋳型内での偏流をも抑えることのできる浸漬ノズルを提供すること。
【解決手段】スライディングプレート30のスライド移動によって開口量を調節して溶鋼Sの流量を制御するスライドバルブ3に設けられる浸漬ノズル1において、略円筒形状のノズル本体10を備え、ノズル本体10の底部付近の側面に一対の吐出孔2が対向配置されており、側面の周方向における吐出孔2の一端側20の上下方向の長さが他端側21の上下方向の長さよりも長く、一対の吐出孔2の形状が、ノズル本体10の軸心を含み且つスライディングプレート30のスライド方向Dに平行な面を鏡映面として互いに鏡映対称性を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライディングプレートのスライド移動によって開口量を調節して溶鋼の流量を制御するスライドバルブに設けられる浸漬ノズルにおいて、
略円筒形状のノズル本体を備え、該ノズル本体の底部付近の側面に一対の吐出孔が対向配置されており、前記側面の周方向における前記吐出孔の一端側の上下方向の長さが他端側の上下方向の長さよりも長く、前記一対の吐出孔の形状が、前記ノズル本体の軸心を含み且つ前記スライディングプレートのスライド方向に平行な面を鏡映面として互いに鏡映対称性を有することを特徴とする浸漬ノズル。
【請求項2】
前記吐出孔における前記一端側の上下方向の長さと前記他端側の上下方向の長さとの比が、0.5より大きく且つ0.9より小さいことを特徴とする請求項1に記載の浸漬ノズル。
【請求項3】
前記吐出孔における前記一端側の上端の高さと、前記他端側の上端の高さとが同じであることを特徴とする請求項1に記載の浸漬ノズル。
【請求項4】
前記スライディングプレートのスライド方向のうちの開口量が大きくなる方向に沿って、前記吐出孔の一端側と他端側がこの順序で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の浸漬ノズル。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライディングプレートのスライド移動によって開口量を調節して溶鋼の流量を制御するスライドバルブに設けられる浸漬ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
浸漬ノズルを使用した鋼の連続鋳造プロセスにおいて、タンディッシュから鋳型への溶鋼の供給量を調整するために、スライディングプレートによる流量の制御を実施した場合、どうしても浸漬ノズル内の流れに偏流が発生する。特にスライディングプレートのスライド方向が鋳型の厚み方向であって、浸漬ノズルの吐出孔の向きと平面視にて90度異なる場合、一つの吐出孔の水平方向における一端側と他端側とで吐出状況が大きく異なり、吐出状況のアンバランスを生じさせている。このアンバランスによって、メニスカスの流動状況がスライディングプレートのスライド方向で不均一となり、湯面変動の増加や溶鋼の不均一凝固の要因となっていると考えられる。
【0003】
スライドバルブによる流量制御において偏流の発生を抑えるための従来の技術としては、例えば、以下の特許文献1~3に示されるような技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4-6351号公報
【特許文献2】特開2005-297022号公報
【特許文献3】特開平11-57955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される浸漬ノズルでは、その内壁面に複数の段差が設けられている。また、特許文献2に記載される浸漬ノズルでは、その内壁面に複数の凸構造が設けられている。
【0006】
しかしながら、浸漬ノズルの内壁面に段差や凸構造を設ける上述の構成は、内管径が小さいブルーム用などの浸漬ノズルには適用が物理的に困難な場合がある。また、浸漬ノズル内管へのアルミナ閉塞が顕著な場合には、そのような構成そのものが埋まってしまい効果が発揮されなくなる場合がある。
【0007】
また、特許文献3に記載される浸漬ノズルは、スライドバルブの流量調整部での溶鋼流れの偏りに起因するノズル吐出流の偏りに対し反対方向の吐出孔角度をもつ吐出孔を備えるものであるが、鋳型厚み方向に一時的に極端な偏流が発生してしまう場合がある。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、内管径が小さい浸漬ノズルにも適用可能であって、ノズル内での溶鋼の偏流の発生を抑えつつ、さらに鋳型内での偏流をも抑えることのできる浸漬ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る浸漬ノズルの特徴は、スライディングプレートのスライド移動によって開口量を調節して溶鋼の流量を制御するスライドバルブに設けられる浸漬ノズルにおいて、
略円筒形状のノズル本体を備え、該ノズル本体の底部付近の側面に一対の吐出孔が対向配置されており、前記側面の周方向における前記吐出孔の一端側の上下方向の長さが他端側の上下方向の長さよりも長く、前記一対の吐出孔の形状が、前記ノズル本体の軸心を含み且つ前記スライディングプレートのスライド方向に平行な面を鏡映面として互いに鏡映対称性を有する点にある。
【0010】
本構成のごとく、吐出孔の水平方向における一端側の上下方向の長さを他端側の上下方向の長さよりも長く設定し、そのような形状を有する吐出孔の一対が鏡映対称性を有することによって、ノズル内での溶鋼の偏流の発生を抑えつつ、さらに鋳型内での溶鋼の偏流、特にメニスカスにおける編流の発生を抑えることができる。
【0011】
従って、本発明によれば、浸漬ノズルの内壁面に段差や凸構造等を設ける必要がなく、内管径が小さい浸漬ノズルにも適用することができる。
【0012】
本発明に係る浸漬ノズルにおいては、前記吐出孔における前記一端側の上下方向の長さと前記他端側の上下方向の長さとの比が、0.5より大きく且つ0.9より小さいと好適である。
【0013】
本構成によれば、上下方向の長さが短い側に熱的な応力が集中することを抑制できるため、その短い側からの亀裂の発生を防止することができる。
【0014】
本発明に係る浸漬ノズルにおいては、前記吐出孔における前記一端側の上端の高さと、前記他端側の上端の高さとが同じであると好適である。
【0015】
本構成によれば、吐出孔の中の上側部分からも溶鋼が流れ易くなり、当該上側部分においてアルミナ等が付着し難くなるため、溶鋼の偏流の発生をより一層生じ難くすることができる。
【0016】
本発明に係る浸漬ノズルにおいては、前記スライディングプレートのスライド方向のうちの開口量が大きくなる方向に沿って、前記吐出孔の一端側と他端側がこの順序で設けられていると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】浸漬ノズルの縦断面図である。
図2】浸漬ノズルの平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る浸漬ノズルの実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
【0019】
一般的な連続鋳造設備においては、取鍋(図示せず)の溶鋼SがタンディッシュTを介して鋳型4内に供給される。そして、タンディッシュTから鋳型4内への溶鋼Sの供給は、図1に示すように、中間に設けたスライドバルブ3の開口量によって溶鋼Sの流量を調整しつつ、浸漬ノズル1を介して鋳型4内へ注入される。
【0020】
本実施形態におけるスライドバルブ3は、3層式スライドバルブであって、中間プレート30(スライディングプレートの一例)の横方向へのスライド移動によって開口量を調節して溶鋼Sの流量を制御するように構成されている。
【0021】
図2に示すように、鋳型4は、互いに対向する短辺鋼板40と、互いに対向する長辺鋼板41とを備える。スライドバルブ3の中間プレート30は、短辺鋼板40に沿う方向に移動するように構成されており、浸漬ノズル1の一対の吐出孔2のそれぞれは、短辺鋼板40の側に向けて開口するように設けられている。
【0022】
本実施形態における浸漬ノズル1は、略円筒形状のノズル本体10を備え、ノズル本体10の底部付近の側面に一対の吐出孔2が対向配置されている。一対の吐出孔2の形状は、ノズル本体10の軸心Aを含み且つ中間プレート30のスライド方向Dに平行な面を鏡映面Mとして互いに鏡映対称性を有する。
【0023】
図1に示すように、吐出孔2の形状は、ノズル本体10の側面の周方向における吐出孔2の一端側20の上下方向の長さ(HL)が、他端側21の上下方向の長さ(HS)よりも長く設定されている。そして本実施形態においては、中間プレート30のスライド方向Dのうちの開口量が大きくなる方向に沿って、吐出孔2の一端側20と他端側21がこの順序で設けられているが(図1紙面の左側に一端側20、右側に他端側21)、この構成に限定されるものではない。
【0024】
吐出孔2における一端側20の上下方向の長さと他端側21の上下方向の長さとの比は、0.5より大きく且つ0.9より小さいことが好ましい。
【0025】
本実施形態においては、吐出孔2における一端側20の上端の高さと、他端側21の上端の高さとが同じである。即ち、本実施形態における吐出孔2の形状は略台形状であって、吐出孔2の上辺は水平となっており、吐出孔2の下辺は傾斜している。
【0026】
尚、吐出孔2の形状については、上述の実施形態に限定されるものではなく、吐出孔2を外側から正対視した際に左右非対称な形状であって、尚且つ、一対の吐出孔2が互いに鏡映対称性を有するものであればよい。
【0027】
また、基本的には、吐出孔2の一端側の上下方向の長さとは、当該一端側の最も端の部分の上下方向の長さを意味するものであり、吐出孔2の他端側の上下方向の長さとは、当該他端側の最も端の部分の上下方向の長さを意味するものである。ただし、吐出孔2の隅部には、熱的な応力の集中を抑制するために、溶鋼の流れに影響を及ぼさない程度の丸みを持たせるような加工処理が施される場合がある。この場合、吐出孔2の一端側の上下方向の長さ及び他端側の上下方向の長さとは、そのような丸みを想定しない仮想的な寸法での長さを意味する。例えば、一端側の最も端の部分が鉛直方向に延びる直線部分である場合、吐出孔2の一端側の上下方向の長さとは、当該直線部分に連設する丸み部分の鉛直方向の長さを、当該直線部分の鉛直方向の長さに加えた長さを意味する。他端側も同様に、例えば、他端側の最も端の部分が鉛直方向に延びる直線部分である場合、吐出孔2の他端側の上下方向の長さとは、当該直線部分に連設する丸み部分の鉛直方向の長さを、当該直線部分の鉛直方向の長さに加えた長さを意味する。
【0028】
〔その他の実施形態〕
1.上述の実施形態では、本発明に係る浸漬ノズルを3層式スライドバルブに適用した例を示したが、この構成に限定されるものではなく、本発明に係る浸漬ノズルを2層式スライドバルブに適用しても良い。
【0029】
尚、上述のように図面を参照しつつ本発明を説明したが、本発明は当該図面の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る浸漬ノズルは、例えば、鋼の連続鋳造設備において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1:浸漬ノズル
10:ノズル本体
2:吐出孔
20:一端側
21:他端側
3:スライドバルブ
30:中間プレート(スライディングプレートの一例)
4:鋳型
40:短辺鋼板
41:長辺鋼板
A:ノズル本体の軸心
M:鏡映面
T:タンディッシュ
S:溶鋼
D:スライド方向



図1
図2