IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

特開2024-131468車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置
<>
  • 特開-車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置 図1
  • 特開-車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置 図2
  • 特開-車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置 図3
  • 特開-車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置 図4
  • 特開-車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置 図5
  • 特開-車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置 図6
  • 特開-車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置 図7
  • 特開-車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131468
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240920BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240920BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240920BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20240920BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20240920BHJP
   B60W 50/10 20120101ALI20240920BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G08G1/16 A
G06T7/00 650A
G06T7/60 200J
B60W30/06
B60W50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041740
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】溝口 雅人
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
3D241BA12
3D241BB02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE02
3D241CE05
3D241DA12Z
3D241DA23Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB14Z
3D241DB16Z
3D241DC18Z
3D241DC34Z
3D241DC35Z
3D241DC44Z
3D241DC59Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC24
5H181FF05
5H181FF13
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5L096BA04
5L096DA02
5L096FA03
5L096FA66
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】車両の走行を遠隔的に制御するサーバ装置を改善する。
【解決手段】サーバ装置は、道路を走行する車両の位置情報を受信する通信部と、受信した位置情報を用いて走行制御情報を生成して送信する遠隔制御部と、を有する。遠隔制御部は、停止後の車両の車載カメラにより道路の停止線を撮像可能となる位置で車両を停止させるための走行制御情報を生成する停止線処理と、停止後の車両の車載カメラの撮像画像における停止線の撮像位置に基づいて車両の位置を補正するための補正情報を生成する補正情報生成処理と、を実行する。遠隔制御部は、通信部が受信する車両の位置情報を補正情報により補正して走行制御情報を生成する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を走行しながら車載カメラにより進路を撮像可能な車両と通信して、前記車両の位置情報を受信する通信部と、
前記通信部が受信する前記車両の位置情報を用いて、前記車両が走行制御に使用可能な走行制御情報を生成して前記通信部から前記車両へ送信する遠隔制御部と、
を有する、車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置であって、
前記遠隔制御部は、
停止後の前記車両の前記車載カメラにより道路の停止線を撮像可能となる位置で前記車両を停止させるための走行制御情報を生成する停止線処理と、
停止後の前記車両の前記車載カメラの撮像画像における前記停止線の撮像位置に基づいて、停止後の前記車両の位置から前記停止線までの距離により前記車両の位置を補正するための補正情報を生成する補正情報生成処理と、
を実行し、
前記補正情報を生成した後は、前記通信部が受信する前記車両の位置情報を前記補正情報により補正して、前記車両の前記走行制御情報を生成する、
車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置。
【請求項2】
前記通信部は、
前記停止線処理での前記走行制御情報にしたがって停止した前記車両から、前記車両の停止後の位置情報、を受信し、
前記遠隔制御部は、
前記車載カメラにより撮像されている前記停止線の位置情報と、
停止後の前記車両の前記車載カメラの撮像画像に基づく、前記車両から前記停止線までの距離と、
停止後の前記車両の停止後の位置情報とに基づいて、前記車両の位置を補正するための補正情報を生成する、
請求項1記載の、車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置。
【請求項3】
前記通信部は、
前記停止線処理での前記走行制御情報にしたがって停止した前記車両から、前記車両の停止後の位置情報とともに、前記停止線処理での減速停止に関する情報、を受信し、
前記遠隔制御部は、
前記車両から取得した前記停止線処理での減速停止に関する情報に基づいて、前記停止線処理の下での前記車両の減速停止を評価し、
前記停止線処理の下での減速停止の評価の結果に応じて、前記補正情報生成処理の実行可否を制御する、
請求項1または2記載の、車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置。
【請求項4】
前記通信部は、
前記車両の減速停止に関する情報として、停止線処理の実行の有無、停止線処理で停止後の前記車両の先行車の有無、停止線処理中の操作介入の有無、停止線処理での減速度についての情報、についての情報を取得し、
前記遠隔制御部は、
前記車両が停止線処理を実行し、停止後の前記車両の先行車がなく、停止線処理中の操作介入がなく、且つ、停止線処理での減速度が閾値以上ではないと評価した場合に、前記補正情報生成処理を実行する、
請求項3記載の、車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置。
【請求項5】
前記遠隔制御部は、
前記車両が走行する道路の信号機が前記車両の通過を許可する状態から変化した場合に、または、前記車両を交差点で停止させる場合に、前記停止線処理により前記車両が、前記車載カメラにより道路の停止線を撮像可能となる位置で停止可能であるか否かを判断し、
前記停止線処理による停止が可能である場合には、前記停止線処理を実行させるための走行制御情報を生成し、
前記停止線処理による停止が可能でない場合には、前記停止線処理によらない走行制御情報を生成する、
請求項4記載の、車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置。
【請求項6】
前記サーバ装置は、
前記車両が走行する道路についての高精度地図データとして、交差点の停止線の位置情報を含む高精度地図データを記録するメモリ、を有し、
前記遠隔制御部は、
前記車両が走行する道路についての高精度地図データに前記車両の位置をマッピングし、
マッピングにより生成される走行環境に基づいて、前記車両の走行制御情報を生成する、
請求項5記載の、車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両では、ドライバの運転操作を支援して走行を制御したり、自動運転により走行を制御したり、するための研究開発が進んでいる(特許文献1、2)。
この場合、車両は、基本的に、ドライバの運転操作による制御値や、自動運転による制御値を生成し、その制御値に基づいて駆動装置などの動作を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-148850号公報
【特許文献2】特表2018/092298号公報
【特許文献3】特開2006-151014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような車両の走行制御は、たとえば特許文献3のようにサーバ装置において実行することが考えられる。たとえば、車両は、自車の位置を検出してサーバ装置へ送信する。サーバ装置は、車両などから取得した情報を用いて上述した制御値などの走行制御情報を生成し、車両へ送信する。車両は、サーバ装置から受信した上述した制御値などの走行制御情報を用いて、自車の走行を制御する。
このようなサーバ装置による遠隔的な車両の走行制御では、車両がサーバ装置へ送信する車両の位置の精度が高いことが大切である。車両の位置の精度が低い場合、サーバ装置は、該車両の位置の存在範囲を広く推定し、その推定の下で他の車両などと干渉しないように、走行制御情報を生成する必要がある。
【0005】
しかしながら、その一方で、車両がサーバ装置へ送信する車両の位置の精度は、必ずしも高いとは言えない。たとえば車両に設けられる位置検出装置が高度なGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機でない場合、位置検出装置が生成する位置は、数メートルから数十メートルの位置誤差が生じている可能性がある。また、GNSS受信機などが衛星からの電波を受信できない場合、位置検出装置は、自車に設けられるたとえば車速センサ、車輪速センサ、舵角センサといった車載センサの検出情報に基づいて、位置を演算する必要がある。このような演算により推定される位置の精度は、演算する距離などに応じて低下してゆく。
このため、サーバ装置は、車両からその位置情報を受信したとしても、道路を走行する車両の位置を確からしく把握できていると仮定し難い可能性があり、その結果として車両の存在可能範囲を広くとって、車両の走行を遠隔的に制御しなければならない。
たとえば対向車が右折している交差点へ向けて車両が走行している場合、サーバ装置は、右折している対向車との干渉を抑制するために、車両が交差点を通過して干渉してしまう可能性がある期間または距離の範囲として長いものを確保し、その条件の下で車両の走行制御情報を生成しなければならない。
【0006】
このように車両の走行を遠隔的に制御するサーバ装置には、改善が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態に係る車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置は、道路を走行しながら車載カメラにより進路を撮像可能な車両と通信して、前記車両の位置情報を受信する通信部と、前記通信部が受信する前記車両の位置情報を用いて、前記車両が走行制御に使用可能な走行制御情報を生成して前記通信部から前記車両へ送信する遠隔制御部と、を有する、車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置であって、前記遠隔制御部は、停止後の前記車両の前記車載カメラにより道路の停止線を撮像可能となる位置で前記車両を停止させるための走行制御情報を生成する停止線処理と、停止後の前記車両の前記車載カメラの撮像画像における前記停止線の撮像位置に基づいて、停止後の前記車両の位置から前記停止線までの距離により前記車両の位置を補正するための補正情報を生成する補正情報生成処理と、を実行し、前記補正情報を生成した後は、前記通信部が受信する前記車両の位置情報を前記補正情報により補正して、前記車両の前記走行制御情報を生成する、ものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明において、車両の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置は、道路を走行しながら車載カメラにより進路を撮像可能な車両と通信して、車両の位置情報を受信する通信部と、通信部が受信する車両の位置情報を用いて、車両が走行制御に使用可能な走行制御情報を生成して通信部から車両へ送信する遠隔制御部と、を有する。
そして、サーバ装置の遠隔制御部は、停止した車両の車載カメラにより道路の停止線を撮像可能となる位置で車両を停止させるための走行制御情報を生成する停止線処理と、停止後の車両の車載カメラの撮像画像における停止線の撮像位置に基づいて、停止後の車両の位置から停止線までの距離により車両の位置を補正するための補正情報を生成する補正情報生成処理と、を実行する。そして、補正情報を生成した後は、遠隔制御部は、通信部が受信する車両の位置情報を補正情報により補正して、車両の走行制御情報を生成する。
これにより、サーバ装置は、車両から受信できる位置情報の精度が高いとは言えない場合であっても、その位置精度を改善して高めて、車両の走行制御情報を生成することができる。
サーバ装置は、道路を走行する車両の位置を確からしく把握できていると仮定して、その結果として各車両の存在可能範囲を最小限に抑えて、車両の走行を遠隔的に制御するための走行制御情報を生成することができる。
このように本発明では、車両の走行を遠隔的に制御するサーバ装置を改善することができる。車両は、サーバ装置の遠隔的な走行制御の下で、安全性を確保したスムースな走行制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、遠隔的な走行制御により走行可能な自動車が交差点へ向けて走行している状態の一例の説明図である。
図2図2は、図1の自動車に設けられる自動車の制御系の説明図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る、自動車の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置の基本的な構成図である。
図4図4は、図3のサーバ装置による自動車の遠隔的な走行制御を示すタイミングチャートである。
図5図5は、図3のサーバ装置のCPUが、遠隔制御部として、自動車の遠隔的な走行制御のために実行する走行制御情報生成制御のフローチャートである。
図6図6は、図3のサーバ装置のCPUが、遠隔制御部として、自動車の遠隔的な走行制御のために実行する自動車の位置の補正情報生成制御のフローチャートである。
図7図7は、停止線処理の下で停止した自動車についての、位置の補正情報の生成方法の一例の説明図である。
図8図8は、図3のサーバ装置のCPUが、遠隔制御部として、位置の補正情報に対応して、自動車の遠隔的な走行制御のために実行するマッピング制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、遠隔的な走行制御により走行可能な自動車1が交差点2へ向けて走行している状態の一例の説明図である。
図1の自動車1は、車両の一例である。車両には、この他にもたとえば、トラック、バス、モータサイクル、パーソナルモビリティ、などがある。
【0012】
図1において、自動車1は、交差点2へ向かう道路の車線を走行している。
そして、交差点2では、信号機4が通過可能を示す青に点灯しており、対向車3が右折しようとしている。
この場合、自動車1は、右折しようとしている対向車3と干渉しないように、交差点2を通過することが求められる。
【0013】
図2は、図1の自動車1に設けられる自動車1の制御系10の説明図である。
図2の制御系10は、複数の制御装置と、複数の制御装置が接続される車ネットワーク18を有する。車ネットワーク18は、たとえばCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)といった規格に準拠した車ネットワーク18でよい。複数の制御装置は、車ネットワーク18を通じて互いに情報を送受できる。
そして、図2には、複数の制御装置として、操作制御装置11、走行制御装置12、駆動制御装置13、制動制御装置14、操舵制御装置15、センサ制御装置16、外通信装置17、が例示されている。制御系10は、これ以外の制御装置を備えてよい。
【0014】
操作制御装置11には、自動車1において乗員が操作する各種の操作部材が接続される。乗員により操作される乃至複数の操作部材は、自動車1の走行を操作するために自動車1に設けられるものでよい。このような操作部材には、たとえば、不図示のステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、がある。操作制御装置11は、各操作部材に対する乗員の操作入力を取得し、操作情報を、車ネットワーク18を通じて他の制御装置へ出力する。
【0015】
駆動制御装置13には、自動車1を加速させるための駆動装置21が接続される。駆動装置21は、たとえばエンジン、モータ、トランスミッション、などで構成されてよい。駆動制御装置13は、車ネットワーク18から駆動についての制御情報を取得し、駆動装置21の動作を制御する。これにより、自動車1は、加速したり、速度を維持したり、できる。
【0016】
制動制御装置14には、自動車1を減速させて最終的には停止させるための制動装置22が接続される。制動装置22は、自動車1の車輪の回転を抑えるブレーキ、駆動装置21に回生動作を指せる回生装置、などで構成されてよい。制動制御装置14は、車ネットワーク18から制動についての制御情報を取得し、制動装置22の動作を制御する。これにより、自動車1は、減速したり、停止したり、できる。
【0017】
操舵制御装置15には、操舵装置23、が接続される。操舵装置23は、自動車1の操舵輪の向きを変えるアクチュエータを有してよい。操舵制御装置15は、車ネットワーク18から操舵についての制御情報を取得し、操舵装置23の動作を制御する。これにより、自動車1の進行方向は、直進方向、右方向、または左方向に切り替わる。
【0018】
センサ制御装置16には、自動車1に設けられる各種の車載センサが接続される。ここでは、車載センサとして、車外カメラ24、加速度センサ25、舵角センサ26、GNSS受信機27、が例示されている。センサ制御装置16には、この他にもたとえば、車外をスキャンして車外の空間情報を生成する車外Lidarなどが接続されてよい。空間情報は、車外カメラ24の車外画像の替わり、または補間するものとして使用することが可能である。
【0019】
車外カメラ24は、自動車1の前側を含む周囲を撮像するカメラでよい。車外カメラ24には、たとえば、単眼カメラ、ステレオカメラ、360度カメラを用いることができる。車外カメラ24は、図1に破線で示すように、自動車1の前側を広角で撮像するものを用いることができる。この場合、車外カメラ24の撮像画像には、自動車1の前側に存在する交差点2、信号機4、停止線5、および対向車3についての像成分が含まれる。
【0020】
加速度センサ25は、走行している自動車1の加速度を検出する。加速度センサ25は、直交三軸方向での加速度を検出してよい。
【0021】
舵角センサ26は、自動車1の操舵輪の舵角を検出する。自動車1の操舵輪の舵角は、自動車1の進行方向に対応し得る。
【0022】
GNSS受信機27は、GNSS衛星からの電波を受信して、自動車1の現在位置および現在時刻の情報を生成する。
【0023】
そして、センサ制御装置16は、自動車1に設けられる各種の車載センサから検出情報を取得し、車ネットワーク18を通じて他の制御装置へ出力する。また、センサ制御装置16は、車載センサの検出情報を処理して、その処理結果を検出情報として車ネットワーク18を通じて他の制御装置へ出力してよい。たとえば、センサ制御装置16は、加速度センサ25が検出した加速度に基づいて、自動車1の走行についての速度の大きさや方向の情報や、自動車1の挙動を示すロー、ピッチおよびロールの情報を生成し、その生成による検出情報を、車ネットワーク18を通じて他の制御装置へ出力してよい。これにより、センサ制御装置16は、位置検出装置として、たとえば、自動車1の現在位置を含む走行状態の情報を、車ネットワーク18を通じて他の制御装置へ出力することができる。
また、センサ制御装置16は、自動車1において車外を撮像するように設けられる車外カメラ24の車外画像を解析して、たとえば図1に示す交差点2、信号機4、停止線5、または対向車3などの各種の情報を生成し、その生成による検出情報を、車ネットワーク18を通じて他の制御装置へ出力してよい。これにより、センサ制御装置16は、たとえば、交差点2までの残距離、信号機4の点灯状態、交差点2の停止位置である停止線5までの残距離、対向車3が交差点2を通過するタイミングなどについての情報を、車ネットワーク18を通じて他の制御装置へ出力することができる。
【0024】
外通信装置17は、自動車1の外にある基地局30との間で無線通信路を確立し、確立してる無線通信路を用いてサーバ装置31との間で情報を送受する。サーバ装置31は、たとえば自動車1の遠隔的な走行制御のためのものでよい。
外通信装置17は、たとえば自車の検出情報を、自動車1の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置31へ送信し、サーバ装置31から、自車の走行を制御するために使用可能な走行制御情報を受信してよい。
【0025】
走行制御装置12は、基本的に、自車で生成される走行制御情報にしたがって自動車1を走行させるための制御値を生成して、駆動制御装置13、制動制御装置14、操舵制御装置15へ出力してよい。
この場合、走行制御装置12は、自動車1のドライバによる操作部材の操作にしたがう制御値を生成しても、ドライバの運転操作を支援する制御値を生成しても、ドライバの操作によらない自動運転のための制御値を生成しても、よい。
自動運転は、レベル1からレベル5まで類別されている。たとえばレベル1の自動運転は、ドライバの運転操作を支援する自動運転である。レベル5は、完全自動運転と呼ばれるものであり、自動車1のドライバの操作によらずに自動車1を走行させる自動運転である。現段階において多くのメーカは、レベル2からレベル3に対応可能な市販車両を開発している。
たとえば、レベル2以上に対応する走行制御装置12は、基本的には、先行車追従制御、レーンキープ制御、干渉抑制制御といった複数の走行制御を組み合わせて実行して、駆動制御装置13、制動制御装置14、または操舵制御装置15へ出力する制御値を生成している。
レーンキープ制御とは、自動車1が走行している道路の車線からはみ出さないように、操舵装置23の制御値などを生成して出力する制御である。
先行車追従制御とは、自動車1の前を走行する先行車との間で車速に応じた車間を確保しながら追従して走行させるように、駆動装置21の制御値などを生成して出力する制御である。先行車が近づくと、走行制御装置12は、自車を先行車の速度に合わせて減速させる制動装置22の制御値を生成する。先行車が停止すると、走行制御装置12は、自車を先行車の後に停止させる制動装置22の制御値を生成する。なお、自動車1が走行している道路の車線において近くの先行車がない場合、走行制御装置12は、基本的に、道路の制限速度で自動車1を走行させる、駆動装置21の制御値を生成して出力する。先行車追従制御を実行する走行制御装置12は、たとえばACC(Adaptive Cruise Control)として、自動車1に組み込まれることがある。
干渉抑制制御とは、自動車1の進路に走行障害物がある場合、または予想される場合に、その走行障害物との干渉を抑制するように、制動装置22の制御値を生成して出力する制御である。走行障害物には、たとえば先行車、対向車3、歩行者、サイクリスト、縁石、などがある。走行制御装置12は、たとえば自動車1に設けられる車外カメラ24の車外画像を解析して進路での走行障害物の有無と干渉の可能性とを予測し、走行障害物との干渉が予測される場合には、その干渉を回避または抑制するための制動装置22の制御値を生成する。
このような自律的な自動運転制御により、走行制御装置12は、自動車1に設けられる車外カメラ24の車外画像などに基づいて、自動車1を、信号機4のある交差点2を含む道路において安全を確保しながらスムースに走行することができる。
【0026】
さらに、本実施形態の走行制御装置12は、サーバ装置31から走行制御情報を受信している場合、上述した自車での自律的な制御ではなく、サーバ装置31による遠隔的な走行制御を実行して、サーバ装置31の遠隔的な制御の下で自動車1を走行させるように、駆動制御装置13、制動制御装置14、および操舵制御装置15へ出力する制御値を生成してもよい。
サーバ装置31から受信して取得可能な走行制御情報が、駆動制御装置13、制動制御装置14、または操舵制御装置15へ出力可能な制御値である場合、走行制御装置12は、取得した制御値をそのまま駆動制御装置13、制動制御装置14、または操舵制御装置15へ出力してよい。また、走行制御装置12は、サーバ装置31から取得した制御値を、自車の情報に応じて調整して、駆動制御装置13、制動制御装置14、または操舵制御装置15へ出力してもよい。この場合、サーバ装置31は、自動車1の走行を遠隔的に管制制御することができる。
サーバ装置31から受信して取得可能な走行制御情報が、制御値を生成するためのたとえば進行可能範囲や推奨進路の情報である場合、走行制御装置12は、自車の情報とサーバ装置31からの走行制御情報とを組み合わせて用いて、駆動制御装置13、制動制御装置14、または操舵制御装置15へ出力する制御値を生成してよい。この場合、サーバ装置31は、自動車1の走行を遠隔的に支援制御することができる。
これにより、自動車1は、サーバ装置31による遠隔的な制御の下においても、自律的な自動運転により走行する場合と同様に、信号機4のある交差点2を含む道路において安全を確保しながらスムースに走行することが可能である。
【0027】
図3は、本発明の実施形態に係る、自動車1の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置31の基本的な構成図である。
図3のサーバ装置31は、通信部32、タイマ33、メモリ35、CPU(Central Processing Unit)34、および、これらが接続されるサーババス36、を有する。
【0028】
通信部32は、たとえばインターネット、キャリア回線網などの通信網に接続される。通信部32は、図1に示すように、通信網に接続されているたとえば基地局30を通じて、道路を走行する自動車1の外通信装置17との間で、情報を送受する。
たとえば、通信部32は、道路を走行しながら車載カメラにより進路を撮像可能な自動車1と通信して、自動車1の位置情報を受信することができる。
【0029】
タイマ33は、時刻または時間を計測する。
【0030】
メモリ35は、CPU34が実行するプログラムおよびデータを記録する。図3には、メモリ35に記録されているデータとして、高精度地図データ37が例示されている。高精度地図データ37は、自動車1の自動運転に用いるための、現実空間の道路の車線などの構造、交差点2の構造、信号機4の有無、停止線5の位置などの情報を含む地図データとしてよい。これにより、メモリ35は、自動車1が走行する道路についての高精度地図データ37として、交差点2の停止線5の位置情報を含む高精度地図データ37を記録することができる。メモリ35は、たとえば不揮発性の半導体メモリ、HDD、RAM、などで構成されてよい。
【0031】
CPU34は、メモリ35に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、サーバ装置31には、図4に後述するように、自動車1の走行を遠隔的に制御する遠隔制御部38が実現される。また、CPU34は、サーバ装置31の動作を管理する。
たとえば、CPU34は、遠隔制御部38として、通信部32が受信する自動車1の位置情報を用いて、自動車1が走行制御に使用可能な走行制御情報を生成して、通信部32から自動車1へ送信する、ことができる。
【0032】
図4は、図3のサーバ装置31による自動車1の遠隔的な走行制御を示すタイミングチャートである。
図4には、自動車1の制御系10と、基地局30と、サーバ装置31のCPU34に実現される遠隔制御部38と、が示されている。同図において、時間は上から下へ流れる。
【0033】
ステップST1において、自動車1の制御系10のたとえば走行制御装置12は、自車の検出情報を収集する。検出情報には、たとえば、センサ制御装置16が出力する自動車1の位置情報、位置の精度情報、自動車1の進行方向および速度、自動車1に設けられる車外カメラ24の撮像画像、サーバ装置31の制御の下で走行する自動車1の走行状態の情報、などが含まれてよい。
ステップST2において、自動車1の制御系10のたとえば走行制御装置12は、収集した自車の検出情報を、サーバ装置31へ送信する。検出情報は、自動車1の外通信装置17から、基地局30を経由して、サーバ装置31の通信部32へ送信される。サーバ装置31は、自動車1から受信した情報を、メモリ35に記録してよい。
【0034】
ステップST3において、サーバ装置31の遠隔制御部38は、通信部32が受信している自動車1の検出情報から、自動車1の位置情報などを取得する。
【0035】
ステップST4において、サーバ装置31の遠隔制御部38は、高精度地図データ37による高精度地図についての、取得した位置情報の位置に、自動車1をマッピングする。これにより、自動車1が走行する道路についての高精度地図データ37に、自動車1の位置がマッピングされる。また、遠隔制御部38は、さらに、高精度地図データ37に含まれる信号の点灯状態の情報を、高精度地図データ37にマッピングしてもよい。
【0036】
ステップST5において、サーバ装置31の遠隔制御部38は、自動車1がマッピングされた高精度地図に基づいて、自動車1が安全に走行するための走行制御情報を生成する。遠隔制御部38は、マッピングに生成される現実に対応する仮想的な走行環境に基づいて、自動車1の走行制御情報を生成する。
【0037】
ステップST6において、サーバ装置31の遠隔制御部38は、生成した走行制御情報を、自動車1へ送信する。走行制御情報は、サーバ装置31の通信部32から、基地局30を経由して、自動車1の外通信装置17へ送信される。
【0038】
ステップST7において、自動車1の制御系10のたとえば走行制御装置12は、サーバ装置31から受信した走行制御情報を用いて、自動車1の走行制御処理を実行する。
【0039】
ところで、このようなサーバ装置31による遠隔的な自動車1の走行制御では、自動車1がサーバ装置31へ送信する自動車1の位置の精度が高いことが大切である。自動車1の位置の精度が低い場合、サーバ装置31は、自動車1が存在する可能性が想定される位置の存在範囲を広く推定し、その推定の下で他の自動車1などと干渉しないように、走行制御情報を生成する必要がある。
しかしながら、その一方で、自動車1がサーバ装置31へ送信する自動車1の位置の精度は、必ずしも高いとは言えない。
たとえば自動車1に設けられるGNSS受信機27が高度なものではない場合、自動車1が生成する位置は、数メートルから数十メートルの位置誤差が生じている可能性がある。
また、GNSS受信機27などが衛星からの電波を受信できない場合、位置検出装置としてのセンサ制御装置16は、自車に設けられるたとえば車速センサ、車輪速センサ、舵角センサ26といった車載センサの検出情報に基づいて、位置を演算する必要があるこのような演算により生成される位置の精度は、演算する距離などに応じて低下する。
このため、サーバ装置31は、自動車1からその位置情報を受信したとしても、道路を走行する自動車1の位置を確からしく把握できていると仮定し難い可能性があり、その結果として自動車1の存在可能範囲を広くとって、その広い存在可能範囲の下で自動車1の走行を遠隔的に制御する必要がある。
【0040】
たとえば図1で実線で示す自動車1の位置情報の精度が高くない場合、サーバ装置31の遠隔制御部38は、その自動車1がP1の位置に存在する可能性をも考慮して、自動車1の走行制御情報を生成する必要がある。この場合、図1で実線で示す自動車1が図中のP2の位置まで移動するような走行制御情報を生成する場合には、サーバ装置31の遠隔制御部38は、移動後の自動車1がP3の位置に存在する可能性をも考慮して、自動車1の走行制御情報を生成する必要がある。そして、移動後の自動車1が実際にP3の位置に存在することになってしまうと、自動車1は、交差点2で右折しようとしている対向車3と干渉してしまう。
このように自動車1の現実の位置と情報の位置との間での位置ずれが大きい場合、サーバ装置31の遠隔制御部38は、そのような位置ずれがない場合と比べて、自動車1の安全でスムースな移動を実現することが難しくなる。
このように自動車1の走行を遠隔的に制御するサーバ装置31には、改善が求められる。
【0041】
図5は、図3のサーバ装置31のCPU34が、遠隔制御部38として、自動車1の遠隔的な走行制御のために実行する走行制御情報生成制御のフローチャートである。
サーバ装置31のCPU34は、遠隔制御部38として、図4のステップST5において、図5の走行制御情報生成制御を繰り返しに実行してよい。
【0042】
ステップST11において、遠隔制御部38は、自動車1の走行環境の情報を取得する。遠隔制御部38は、図4のステップST4において、高精度地図データ37に、自動車1の位置や信号機4の点灯状態の情報をマッピングしている。遠隔制御部38は、この自動車1の位置などをマッピングした高精度地図の情報を、自動車1の走行環境の情報を取得してよい。また、遠隔制御部38は、自動車1の検出情報を、別途取得してよい。
【0043】
ステップST12において、遠隔制御部38は、自動車1の位置精度が高いものであるか否かを判断する。センサ制御装置16が出力する自動車1の位置が高度なGNSS受信機27によるものである場合、遠隔制御部38は、自動車1の位置精度が高いものであると判断してよい。遠隔制御部38は、図4のステップST2で自動車1から取得する検出情報に含まれる位置の精度情報を、判断に使用してよい。そして、自動車1の位置精度が高いものである場合、遠隔制御部38は、処理をステップST13へ進める。自動車1の位置精度が高いものでない場合、遠隔制御部38は、処理をステップST15へ進める。
【0044】
ステップST13において、遠隔制御部38は、自動車1が存在し得る範囲について、高い位置精度に対応する狭い存在可能範囲を設定する。存在可能範囲は、たとえば、マッピングされている自動車1の位置を基準にして、位置精度に対応する長さとなる範囲としてよい。
【0045】
ステップST14において、遠隔制御部38は、ステップST13で生成した狭い存在可能範囲の下での、通常の走行制御情報を生成する。
たとえば、遠隔制御部38は、自動車1をその位置にマッピングした高精度地図において、狭い存在可能範囲を自動車1の車速で移動させた後の状態を推定し、その仮想的な走行の下での干渉の有無などを判断する。先行車との車間が車速に応じた閾値以下とならない場合、対向車3などの他の移動体と進路が重ならない場合、遠隔制御部38は、推定した移動をさせるための走行制御情報を生成してよい。遠隔制御部38は、先行車追従制御、レーンキープ制御、干渉回避制御についての走行制御情報を生成してよい。または、遠隔制御部38は、走行制御情報として、駆動装置21、制動装置22、および操舵装置23の制御値の情報を、走行制御情報を生成してもよい。
その後、遠隔制御部38は、本制御を終了する。
【0046】
ステップST15において、遠隔制御部38は、自動車1の位置精度が高いものではないと判断しているため、自動車1が存在し得る範囲として、広い存在可能範囲を設定する。遠隔制御部38は、図4のステップST2で自動車1から取得する検出情報に含まれる位置の精度情報に応じて、ステップST13で設定する存在可能範囲より広いものを、設定してよい。
【0047】
ステップST16において、遠隔制御部38は、自動車1の進行方向において、次回の制御までに移動する距離範囲内に、交差点2があるか否かを判断する。遠隔制御部38は、自動車1をその位置にマッピングした高精度地図において、自動車1の進行方向に交差点2があるか否かを判断してよい。または、遠隔制御装置は、自動車1の撮像画像を解析して、自動車1の進行方向に交差点2があるか否かを判断しても、これらを組み合わせて判断してもよい。自動車1の進行方向に交差点2がある場合、遠隔制御部38は、処理をステップST16へ進める。自動車1の進行方向に交差点2がない場合、遠隔制御部38は、処理をステップST19へ進める。
【0048】
ステップST17において、遠隔制御部38は、自動車1の進行方向にある交差点2の信号機4が、自動車1の交差点2の通過を許可できない点灯状態であるか否かを判断する。遠隔制御部38は、自動車1をその位置にマッピングした高精度地図、または自動車1の撮像画像に基づいて、交差点2の信号機4の点灯状態の情報を取得して判断してよい。交差点2の信号機4が青色以外に点灯していて通過を許可できる点灯状態である場合、遠隔制御部38は、処理をステップST19へ進める。交差点2の信号機4が通過を許可できない点灯状態である場合、遠隔制御部38は、処理をステップST18へ進める。この場合、遠隔制御部38は、基本的に、交差点2の信号機4の点灯状態にしたがって、交差点2において停止するための走行制御情報を生成することになる。
【0049】
ステップST18において、遠隔制御部38は、自動車1を交差点2で停止させる場合に、単に交差点2において停止するのではなく、自動車1の位置精度を高めるための停止線処理が実行可能であるか否かを判断する。
たとえば、遠隔制御部38は、自動車1をその位置にマッピングした高精度地図において、自動車1から交差点2の停止線5までの残距離を得ることができる。この場合、遠隔制御部38は、自動車1を現在の車速から減速させて停止した場合に、残距離で停止できるか否かを判断することができる。また、遠隔制御部38は、さらに、停止後の自動車1の車載カメラにより道路の停止線5を撮像可能となる位置で停止可能であるか否かについても判断することができる。
そして、停止後の自動車1の車載カメラにより道路の停止線5を撮像可能となる位置で停止できる場合、遠隔制御部38は、停止線処理が実行可能であると判断し、処理をステップST20へ進める。
これに対し、停止後の自動車1の車載カメラにより道路の停止線5を撮像可能となる位置で停止できない場合、遠隔制御部38は、停止線処理が実行可能でないと判断し、処理をステップST19へ進める。
また、遠隔制御部38は、さらに、車載カメラにより道路の停止線5を撮像可能となる位置で停止させる場合の減速度についても、判断してよい。この場合、遠隔制御部38は、残距離で停止させる場合の減速度を、遠隔的な自動車1の走行制御において通常使用可能な自動車1の最大減速度と比較するとよい。そして、車載カメラにより停止線5を撮像可能となる位置で停止させる場合の減速度が、最大減速度以下である場合には、遠隔制御部38は、停止線処理が実行可能であると判断し、処理をステップST20へ進めてよい。これ以外の場合、遠隔制御部38は、処理をステップST19へ進める。この場合、自動車1の乗員は、停止線処理を実行する際の自動車1の遠隔的な制御について、違和感を得にくくなる。
また、停止線処理で使用可能な最大減速度には、遠隔的な自動車1の走行制御において通常使用可能な自動車1の最大減速度より小さいものを別途設定してもよい。停止線処理で生じる減速度を抑えることにより、停止した後の自動車1の位置は、所望の位置に対する誤差を抑えた高精度なものになることが期待できる。
このように遠隔制御部38は、現実に対応するようにマッピングにより生成される仮想的な走行環境に基づいて、停止線処理による停止が可能であるか否かを判断する、ことができる。
【0050】
ステップST19において、遠隔制御部38は、停止線処理によらない、通常の走行制御による走行制御情報を生成する。ただし、遠隔制御部38は、ステップST15で生成した広い存在可能範囲の下での、通常の走行制御情報を生成する。
その後、遠隔制御部38は、本制御を終了する。
【0051】
ステップST20において、遠隔制御部38は、停止線処理のための走行制御情報を生成する。遠隔制御部38は、停止後の自動車1の車載カメラにより道路の停止線5を撮像可能となる位置で自動車1を停止させるための走行制御情報を生成する。
停止線処理での減速度は、基本的に、遠隔的な自動車1の走行制御において通常使用可能な自動車1の最大減速度としてもよい。停止線処理での減速度は、好ましくは、自動車1のセンサ制御装置16が出力する自動車1の位置の精度が高く保たれ得るような減速度より、小さいものとするとよい。
その後、遠隔制御部38は、本制御を終了する。
【0052】
このように、本実施形態のサーバ装置31の遠隔制御部38は、通常の走行制御のための走行制御情報を生成している間において、所定の条件が成立した場合に、停止線処理を実行する。遠隔制御部38は、自動車1の走行中において、停止線処理を実行することができる。自動車1のドライバは、停止線処理を実行するために、自動車1を特別に走行させる必要はない。
【0053】
図6は、図3のサーバ装置31のCPU34が、遠隔制御部38として、自動車1の遠隔的な走行制御のために実行する自動車1の位置の補正情報生成制御のフローチャートである。
サーバ装置31のCPU34は、遠隔制御部38として、図4の処理とは別に、図6の自動車1の位置の補正情報生成制御を繰り返しに実行してよい。
【0054】
ステップST21において、遠隔制御部38は、図5のステップST20の停止線処理を実行したか否かを判断する。停止線処理を実行していた場合、遠隔制御部38は、本制御を終了する。停止線処理を実行していない場合、遠隔制御部38は、処理をステップST22へ進める。
【0055】
ステップST22において、遠隔制御部38は、停止線処理を実行した自動車1から、停止線処理による減速停止に関する情報を受信して取得しているか否かを判断する。
自動車1の制御系10のたとえば走行制御装置12は、たとえば図4のステップST1において自車の検出情報を収集して、ステップST2において自車の検出情報をサーバ装置31へ送信する。走行制御装置12は、停止線処理を実行して自動車1が停止した場合、検出情報の一部として、停止線処理による減速停止に関する情報を収集してサーバ装置31へ送信する。これにより、サーバ装置31の通信部32は、検出情報の一部として、停止線処理による減速停止に関する情報を受信できる。
ここで、自動車1の減速停止に関する情報には、たとえば、停止線処理の実行の有無、自動車1の停止後の位置情報、停止線処理で停止後の自動車1の先行車の有無、停止線処理中の操作介入の有無、停止線処理での最大の減速度についての情報、などで構成されてよい。
停止線処理を実行した自動車1から、停止線処理による減速停止に関する情報を受信していない場合、遠隔制御部38は、本処理を繰り返す。そして、減速停止に関する情報を受信すると、遠隔制御部38は、処理をステップST23へ進める。
【0056】
ステップST23から、遠隔制御部38は、停止線処理の下での自動車1の減速停止についての評価判断を開始する。遠隔制御部38は、まず、停止線処理の実行の有無を判断する。そして、停止線処理を適切に実行していない場合、遠隔制御部38は、本制御を終了する。停止線処理を適切に実行している場合、遠隔制御部38は、処理をステップST24へ進める。
【0057】
ステップST24において、遠隔制御部38は、停止している自動車1から、停止線5が確認できるか否かを判断する。遠隔制御部38は、停止している自動車1の車外カメラ24の撮像画像を解析し、撮像画像に停止線5が含まれているか否かを判断する。そして、たとえば停止線5の全体が抽出できる場合、遠隔制御部38は、停止線5が確認できるとして、処理をステップST25へ進める。停止線5の全体が抽出できない場合、遠隔制御部38は、本制御を終了する。
【0058】
ステップST25において、遠隔制御部38は、停止している自動車1についての先行車の有無を判断する。遠隔制御部38は、停止している自動車1の車外カメラ24の撮像画像を解析し、撮像画像に停止している先行車が含まれているか否かを判断する。そして、たとえば先行車が抽出できる場合、遠隔制御部38は、先行車がいるとして、本制御を終了する。先行車が抽出されない場合、遠隔制御部38は、処理をステップST26へ進める。
【0059】
ステップST26において、遠隔制御部38は、停止線処理中の介入の有無を判断する。自動車1は、その走行中に、停止線処理中であったとしても、ドライバの緊急的な操作による介入や、干渉回避制御による介入が生じ得る。遠隔制御部38は、停止線処理中のこれらの介入の有無を判断してよい。停止線処理中の介入がある場合、遠隔制御部38は、サーバ装置31側で望む停止線処理により停止することができなかったものとして、本制御を終了する。介入がない場合、遠隔制御部38は、処理をステップST27へ進める。
【0060】
ステップST27において、遠隔制御部38は、自動車1が実行した停止線処理そのものを、停止線処理中の減速度に基づいて評価する。遠隔制御部38は、停止線処理中に自動車1に生じた最大の減速度と、閾値とを比較してよい。そして、最大の減速度が閾値以下である場合、遠隔制御部38は、サーバ装置31側で望む停止線処理により停止することができたとして、処理をステップST28へ進める。最大の減速度が閾値以下でない場合、遠隔制御部38は、本制御を終了する。
これらステップST23からステップST27の評価判断により、遠隔制御部38は、自動車1から取得した停止線処理での減速停止に関する情報に基づいて、停止線処理の下での減速停止を評価することができる。そして、すべての項目の評価が良好である場合に、遠隔制御部38は、処理をステップST28へ進めて補正情報生成処理を実行することになる。遠隔制御部38は、自動車1が停止線処理を実行し、停止後の自動車1の先行車がなく、停止線処理中の操作介入がなく、且つ、停止線処理での減速度が閾値以上ではないと評価する場合に、補正情報生成処理を実行する。これに対し、いずれか1つの項目でも評価が良好でない場合には、遠隔制御部38は、ステップST28の補正情報生成処理を実行することなく、本制御を終了する。
【0061】
ステップST28において、遠隔制御部38は、停止後の自動車1の位置から停止線5までの距離に基づいて、自動車1の位置を補正するための補正情報を生成する。
ここで、遠隔制御部38は、停止後の自動車1の車載カメラの撮像画像における停止線5の撮像位置に基づいて、停止後の自動車1の位置から停止線5までの距離を取得してよい。停止線5は、自動車1に対する相対的な位置に応じた位置で画像に撮像される。遠隔制御部38は、撮像画像における停止線5の撮像位置に基づいて、自車の車載カメラを基準とした、停止線5の相対的な距離および方向を取得することができる。
また、遠隔制御部38は、生成した位置の補正情報を、メモリ35に記録してよい。
その後、遠隔制御部38は、本制御を終了する。
【0062】
このように本実施形態では、通信部32は、停止線処理での走行制御情報にしたがって停止した自動車1から、自動車1の減速停止に関する情報、を受信する。また、遠隔制御部38は、自動車1から取得した自動車1の減速停止に関する情報に基づいて、停止線処理での減速停止を評価し、良好な評価結果である場合にのみ、ステップST28の補正情報の生成処理を実行する。
これにより、遠隔制御部38は、自動車1の位置を補正するための補正情報として、高精度なものが得られる可能性が高い場合においてのみ、補正情報の生成処理を実行することができる。
【0063】
図7は、停止線処理の下で停止した自動車1についての、位置の補正情報の生成方法の一例の説明図である。
図7では、停止線5の手前である位置PRにおいて停止している実際の自動車1が、実線で示されている。自動車1には、車外カメラ24と、GNSS受信機27と、を有する。
また、図7の破線は、GNSS受信機27に基づいてセンサ制御装置16が生成する位置PCにいる仮定される自動車である。サーバ装置31は、この破線の位置を、自動車1の位置情報として受信することになる。
【0064】
この場合、遠隔制御部38は、高精度地図データ37から、車載カメラにより撮像されている停止線5の位置PLの情報を取得できる。
遠隔制御部38は、停止後の自動車1の車載カメラの撮像画像での停止線5の位置から、車外カメラ24と停止線5との相対的な位置関係を特定できる。
したがって、遠隔制御部38は、停止線5から、停止線5の手前で停止線5を撮像可能に停止している自動車1のたとえばGNSS受信機27の位置までの距離Dを、演算することができる。
また、遠隔制御部38は、高精度地図データ37での停止線5の位置PLを基準して、停止線5の手前で停止線5を撮像可能に停止している自動車1のたとえばGNSS受信機27の位置PRを演算することができる。
その一方で、遠隔制御部38は、自動車1から、自動車1で生成される位置PCの情報を取得している。
遠隔制御部38は、自動車1の位置情報の位置PCと、高精度地図データ37での停止線5の位置PLを基準にして得られる位置PRとの差分を、停止線処理の下で停止した自動車1についての、位置の補正情報として生成することができる。
遠隔制御部38は、たとえば上述した順番で情報を処理することにより、停止後の自動車1の車載カメラの撮像画像に基づく自動車1から停止線5までの距離と、停止後の自動車1から取得する停止後の位置情報とに基づいて、自動車1の位置を補正するための補正情報を生成することができる。
【0065】
図8は、図3のサーバ装置31のCPU34が、遠隔制御部38として、位置の補正情報に対応して、自動車1の遠隔的な走行制御のために実行するマッピング制御のフローチャートである。
サーバ装置31のCPU34は、遠隔制御部38として、図4のステップST3およびステップST4において、図8のマッピング制御を繰り返しに実行してよい。
【0066】
ステップST31において、遠隔制御部38は、サーバ装置31の通信部32が自動車1から受信している位置情報を取得する。
【0067】
ステップST32において、遠隔制御部38は、位置情報を取得した自動車1についての、位置の補正情報の有無を判断する。位置の補正情報がある場合、遠隔制御部38は、処理をステップST33へ進める。位置の補正情報がない場合、遠隔制御部38は、処理をステップST35へ進める。
【0068】
ステップST33において、遠隔制御部38は、通信部32が受信する自動車1の位置情報を、補正情報により補正する。
【0069】
ステップST34において、遠隔制御部38は、位置の補正情報により補正した自動車1の位置情報についての位置精度を、高に更新する。
【0070】
ステップST35において、遠隔制御部38は、高精度地図データ37による高精度地図に、自動車1をマッピングする。これにより、位置の補正情報により自動車1の補正情報が補正されている場合、その自動車1は、補正後の位置にマッピングされる。
【0071】
その後、遠隔制御部38は、本制御を終了して、図4のステップST5において、図5の走行制御情報生成制御を実行する。これにより、遠隔制御部38は、補正後の位置に基づいて、自動車1の走行制御情報を生成することができる。また、補正された自動車1の位置精度は、高に更新されている。したがって、遠隔制御部38は、自動車1から受信する位置情報の精度が低い場合であっても、補正後の位置の精度が高いことに基づいて、図5のステップST19による広い存在可能範囲の下での走行制御情報ではなく、ステップST14による狭い存在可能範囲の下での走行制御情報を生成することができる。
たとえば図1で実線で示す自動車1が送信する位置情報の精度が高くない場合であっても、サーバ装置31の遠隔制御部38は、その自動車1がP1の位置に存在する可能性を考慮することなく、自動車1の走行制御情報を生成することができる。その結果、図1で実線で示す自動車1が図中のP2の位置まで移動するような走行制御情報を生成する場合には、サーバ装置31の遠隔制御部38は、移動後の自動車1がP3の位置に存在する可能性を考慮することなく、自動車1の走行制御情報を生成することができる。また、その走行制御情報に基づいて走行する自動車1は、交差点2で右折しようとしている対向車3と干渉する可能性がない。
【0072】
以上のように、本実施形態において、自動車1の遠隔的な走行制御のためのサーバ装置31は、道路を走行しながら車載カメラにより進路を撮像可能な自動車1と通信して、自動車1のセンサ制御装置16による位置情報を受信する通信部32と、通信部32が受信する自動車1の位置情報を用いて、自動車1が走行制御に使用可能な走行制御情報を生成して通信部32から自動車1へ送信する遠隔制御部38と、を有する。
そして、サーバ装置31の遠隔制御部38は、停止した自動車1の車載カメラにより道路の停止線5を撮像可能となる位置で自動車1を停止させるための走行制御情報を生成する停止線処理と、停止後の自動車1の車載カメラの撮像画像における停止線5の撮像位置に基づいて、停止後の自動車1の位置から停止線5までの距離により自動車1の位置を補正するための補正情報を生成する補正情報生成処理と、を実行する。そして、補正情報を生成した後は、遠隔制御部38は、通信部32が受信する自動車1のセンサ制御装置16による位置情報を補正情報により補正して、自動車1の走行制御情報を生成する。
たとえば、遠隔制御部38は、停止後の自動車1の車載カメラの撮像画像に基づく停止線5から自動車1の所定位置までの距離と、車載カメラにより撮像されている停止線5の位置情報と、停止後の自動車1の停止後のセンサ制御装置16による位置情報とに基づいて、自動車1の位置を補正する補正情報を生成する、ことができる。
これにより、サーバ装置31は、自動車1から受信できる位置情報の精度が高いとは言えない場合であっても、その位置精度を改善して高めて、自動車1の走行制御情報を生成することができる。
サーバ装置31は、道路を走行する自動車1の位置を確からしく把握できていると仮定して、その結果として各自動車1の存在可能範囲を最小限に抑えて、自動車1の走行を遠隔的に制御するための走行制御情報を生成することができる。
たとえば対向車3が右折している交差点2へ向けて自動車1が走行している場合、自動車1の位置誤差が少ないものとして必要最低限な期間において対向車3の干渉する可能性があるとして、自動車1の走行制御情報を生成できる。
このように本実施形態では、自動車1の走行を遠隔的に制御するサーバ装置31を改善することができる。自動車1は、サーバ装置31の遠隔的な走行制御の下で、安全性を確保したスムースな走行制御を実行することができる。
また、停止している自動車1の乗員は、車外カメラ24と同等の視野において自ら停止線5を確認することができる。自動車1の乗員は、停止線処理について違和感を得にくいと考えられる。
【0073】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…自動車(車両)、2…交差点、3…対向車、4…信号機、5…停止線、10…制御系、11…操作制御装置、12…走行制御装置、13…駆動制御装置、14…制動制御装置、15…操舵制御装置、16…センサ制御装置、17…外通信装置、18…車ネットワーク、21…駆動装置、22…制動装置、23…操舵装置、24…車外カメラ、25…加速度センサ、26…舵角センサ、27…GNSS受信機、30…基地局、31…サーバ装置、32…通信部、33…タイマ、34…CPU、35…メモリ、36…サーババス、37…高精度地図データ、38…遠隔制御部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8