特開 2024-131494 継手構造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024131494

(43)【公開日】2024-09-30

(54)【発明の名称】継手構造

(51)【国際特許分類】

   E21D 11/04 20060101AFI20240920BHJP

【ＦＩ】

E21D11/04 A

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023041783

(22)【出願日】2023-03-16

(71)【出願人】

【識別番号】000230010

【氏名又は名称】ジオスター株式会社

(71)【出願人】

【識別番号】502092958

【氏名又は名称】株式会社芳賀技研工業

(71)【出願人】

【識別番号】500243808

【氏名又は名称】阪部工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100101557

【弁理士】

【氏名又は名称】萩原 康司

(74)【代理人】

【識別番号】100096389

【弁理士】

【氏名又は名称】金本 哲男

(74)【代理人】

【識別番号】100167634

【弁理士】

【氏名又は名称】扇田 尚紀

(74)【代理人】

【識別番号】100187849

【弁理士】

【氏名又は名称】齊藤 隆史

(74)【代理人】

【識別番号】100212059

【弁理士】

【氏名又は名称】三根 卓也

(72)【発明者】

【氏名】三浦 拓巳

(72)【発明者】

【氏名】姉歯 浩平

(72)【発明者】

【氏名】尾上 聡

(72)【発明者】

【氏名】芳賀 真

(72)【発明者】

【氏名】千葉 崇

(72)【発明者】

【氏名】酒井 隆夫

(72)【発明者】

【氏名】阪部 一史

(72)【発明者】

【氏名】阪部 貴教

【テーマコード（参考）】

2D155

【Ｆターム（参考）】

2D155BA01

2D155BB01

2D155GC05

(57)【要約】

【課題】コンクリート部材同士を連結させるに際し、連結状態を確実に維持することに加え、簡易な構造で施工精度や調心機能の向上を図る。
【解決手段】一対のコンクリート部材を連結させる継手構造であって、前記雄継手の突出部の外面には雄ネジ加工が施され、前記雌継手は、内孔を有するケーシングと、前記内孔の底部に収容されるバックアップ部材と、前記ケーシングの内孔の開口端部内面に固着される前蓋と、前記バックアップ部材と前記前蓋とに挟まれて収容される割ゴマと、を含み、前記バックアップ部材は、前記ケーシングの内孔底面に接し前記割ゴマを前記ケーシングの内孔開口部側に向けて付勢する第１の弾性部材と、前記割ゴマの外周面を覆い当該割ゴマの芯ずれを吸収する第２の弾性部材と、を含む。
【選択図】図５

【特許請求の範囲】

【請求項1】

一方のコンクリート部材の接続面から突出する棒状の突出部を含む雄継手と、他方のコンクリート部材の接続面に開口して埋設され、前記雄継手の突出部を収容する収容部を備えた雌継手と、から構成される一対のコンクリート部材を連結させる継手構造であって、
前記雄継手の突出部の外面には雄ネジ加工が施され、
前記雌継手は、内孔を有するケーシングと、前記内孔の底部に収容されるバックアップ部材と、前記ケーシングの内孔の開口端部内面に固着される前蓋と、前記バックアップ部材と前記前蓋とに挟まれて収容される割ゴマと、を含み、
前記前蓋は、前記収容部の一部を構成し前記割ゴマ側に向かって拡がる内面テーパー形状である内孔を有し、
前記割ゴマは、周方向に分割された複数の分割部材から構成され、雌ネジ加工を施され前記収容部の一部を構成する内孔を有し、且つ、当該割ゴマの外面は前記前蓋の内孔の内面テーパー形状に対応した外面テーパー形状を有し、
前記バックアップ部材は、前記ケーシングの内孔底面に接し前記割ゴマを前記ケーシングの内孔開口部側に向けて付勢する第１の弾性部材と、前記割ゴマの外周面を覆い当該割ゴマの芯ずれを吸収する第２の弾性部材と、を含み、
前記雄継手と前記雌継手が連結している状態では前記雄ネジと前記雌ネジが螺合していることを特徴とする、継手構造。

【請求項2】

前記第１の弾性部材の硬度は、前記第２の弾性部材の硬度より大きいことを特徴とする、請求項１に記載の継手構造。

【請求項3】

前記バックアップ部材は、前記第１の弾性部材の中心に設けられた貫通孔と前記割ゴマの内孔に収容される第３の弾性部材を更に含み、
前記第３の弾性部材は、前記雄継手の突出部が前記収容部に挿入される前において、前記貫通孔と前記割ゴマの内孔に収容されることで当該割ゴマの姿勢を安定化させ、
前記雄継手の突出部が前記雌継手の収容部に挿入された際には、前記ケーシングの内孔底面に圧縮されることで、当該雄継手の突出部の収容空間を確保することを特徴とする、請求項１又は２に記載の継手構造。

【請求項4】

前記ケーシングの内孔底面には、前記雄継手の突出部が前記雌継手の収容部に挿入される際に前記第３の弾性部材が押し込まれる退避孔が設けられることを特徴とする、請求項３に記載の継手構造。

【請求項5】

前記第２の弾性部材が前記割ゴマの外周面及び内周面に接することで前記割ゴマの位置及び姿勢が安定化され、当該割ゴマの芯ずれが吸収されることを特徴とする、請求項１又は２に記載の継手構造。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、構造物の構築に用いる部材同士の連結に用いられ、例えば、プレキャストコンクリート部材同士を連結させるために用いられる継手構造に関する。

【背景技術】

【0002】

近年、各種地下構造物等を建築する場合等にチューブ状あるいはトンネル状の構造物の構築が行われ、それらの構築においては、複数のセグメント同士を周方向に隣接させて連結させると共に、セグメントの端面同士をトンネル長手方向において連結させて構造物を構築するような施工が行われる（図１参照）。その際、セグメントとして、例えば工場などで予め製作されたコンクリート製の部材、いわゆるプレキャストコンクリート部材が用いられることが知られている。

【0003】

セグメントの端面同士の連結には種々の連結手段が用いられる。例えば、特許文献１には、狭着保持手段を介して一方のセグメントから突出する雄ユニットと他方のセグメントに配設される雌ユニットとを締結させて構成される継手構造が開示されている。また、例えば、特許文献２には、雄型継手と雌型継手を接合させる際に、雌型継手の接合用凹部をセグメント接合面から突出させると共に、雄型継手の接合用凹部をセグメント接合面から引っ込ませた構造とした接合構造が開示されている。また、例えば、特許文献３には、一方のセグメントに固定した雄型継手金具と他方のセグメントに固定した雌型継手金具とを互いに嵌合して接合するような継手金具が開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１５－０１７３５９号公報

【特許文献2】特開２００７－１３２１６４号公報

【特許文献3】特開２０１６－６１０３８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

上記特許文献１～３に代表されるように、例えばセグメントの端面同士を連結させる手段においては、連結（締結）状態を確実に維持することに加え、構造の簡素化、施工性の向上、コスト縮減等といった複数の効能が求められる。構造の簡素化や施工性の向上のため、例えば、特許文献１では雌ユニットのケーシングに弾性部材が配設されている。同様に、特許文献２では付勢部としてのばね部材、特許文献３では弾性変形可能なワッシャを用いた構造としている。

【0006】

ところで、例えばセグメントの端面同士を連結させるといった構造物の構築に用いる部材同士の連結においては、施工誤差により必ずしも正確な施工（連結）が実施できるとは限らない。そのため、連結手段には施工誤差を吸収するための遊びを設けておくことが重要である。上記特許文献１～３に開示された技術においても、ばね部材等の弾性体を用いて施工誤差の吸収を行っているが、更なる位置決め精度の向上や連結のための部材の調心機能の向上などが求められている。また、施工誤差を吸収するための構造では、上記特許文献２のように二重管構造とするなど、部品点数の増加や構造の複雑化が懸念され、更なる構造の簡略化が求められている。

【0007】

上記事情に鑑み、本発明の目的は、コンクリート部材同士を連結させるに際し、連結状態を確実に維持することに加え、簡易な構造で施工精度や調心機能の向上を図ることが可能な継手構造を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0008】

前記の目的を達成するため、本発明によれば、一方のコンクリート部材の接続面から突出する棒状の突出部を含む雄継手と、他方のコンクリート部材の接続面に開口して埋設され、前記雄継手の突出部を収容する収容部を備えた雌継手と、から構成される一対のコンクリート部材を連結させる継手構造であって、前記雄継手の突出部の外面には雄ネジ加工が施され、前記雌継手は、内孔を有するケーシングと、前記内孔の底部に収容されるバックアップ部材と、前記ケーシングの内孔の開口端部内面に固着される前蓋と、前記バックアップ部材と前記前蓋とに挟まれて収容される割ゴマと、を含み、前記前蓋は、前記収容部の一部を構成し前記割ゴマ側に向かって拡がる内面テーパー形状である内孔を有し、前記割ゴマは、周方向に分割された複数の分割部材から構成され、雌ネジ加工を施され前記収容部の一部を構成する内孔を有し、且つ、当該割ゴマの外面は前記前蓋の内孔の内面テーパー形状に対応した外面テーパー形状を有し、前記バックアップ部材は、前記ケーシングの内孔底面に接し前記割ゴマを前記ケーシングの内孔開口部側に向けて付勢する第１の弾性部材と、前記割ゴマの外周面を覆い当該割ゴマの芯ずれを吸収する第２の弾性部材と、を含み、前記雄継手と前記雌継手が連結している状態では前記雄ネジと前記雌ネジが螺合していることを特徴とする、継手構造が提供される。

【0009】

前記第１の弾性部材の硬度は、前記第２の弾性部材の硬度より大きくても良い。

【0010】

前記バックアップ部材は、前記第１の弾性部材の中心に設けられた貫通孔と前記割ゴマの内孔に収容される第３の弾性部材を更に含み、前記第３の弾性部材は、前記雄継手の突出部が前記収容部に挿入される前において、前記貫通孔と前記割ゴマの内孔に収容されることで当該割ゴマの姿勢を安定化させ、前記雄継手の突出部が前記雌継手の収容部に挿入された際には、前記ケーシングの内孔底面に圧縮されることで、当該雄継手の突出部の収容空間を確保しても良い。

【0011】

前記ケーシングの内孔底面には、前記雄継手の突出部が前記雌継手の収容部に挿入される際に前記第３の弾性部材が押し込まれる退避孔が設けられても良い。

【0012】

前記第２の弾性部材が前記割ゴマの外周面及び内周面に接することで前記割ゴマの位置及び姿勢が安定化され、当該割ゴマの芯ずれが吸収されても良い。

【発明の効果】

【0013】

本発明によれば、コンクリート部材同士を連結させるに際し、連結状態を確実に維持することに加え、簡易な構造で施工精度や調心機能の向上を図ることが可能となる。

【0014】

なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、又は、本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。

【図面の簡単な説明】

【0015】

【図1】セグメントの連結についての概略説明図である。

【図2】継手構造の概略断面図である。

【図3】雄継手の概略説明図である。

【図4】雄継手の概略断面図である。

【図5】雌継手の概略説明図である。

【図6】雌継手の概略断面図である。

【図7】バックアップ部材の概略説明図である。

【図8】割ゴマの概略説明図である。

【図9】雌継手の組み立て工程を示す概略説明図である。

【図10】雄継手と雌継手の連結工程を示す概略説明図であ

【図11】一対のコンクリート部材に予め埋設された雄継手と雌継手の連結工程を示す概略説明図である。

【図12】本発明の他実施形態に係るバックアップ部材の構成を示す概略説明図である。

【図13】本発明の他実施形態に係るバックアップ部材と割ゴマとの一体化についての概略説明図である。

【発明を実施するための形態】

【0016】

以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。なお、本明細書及び図面では、説明のために、部材の一部図示を省略する場合や、あるいは、部材内部の構成を図示する場合がある。

【0017】

＜セグメントの連結＞
図１は本発明の実施の形態に係る継手構造１を用いたセグメントの連結についての概略説明図である。図１に示すように、チューブ状あるいはトンネル状の構造物の構築においては、複数のセグメント同士を周方向に隣接させて連結させると共に、セグメントの端面同士を長手方向において連結させて構造物を構築するような施工が行われる。一方の既設セグメントＳ１に対し、他方の未設セグメントＳ２が連結される際には、未設セグメントＳ２の接続面から突出する複数の雄継手１０が、既設セグメントＳ１の接続面に開口して埋設される雌継手２０に挿入されることで連結が行われる。

【0018】

なお、ここでは一方の既設セグメントＳ１に雌継手２０が埋設され、他方の未設セグメントＳ２に雄継手１０が設けられる場合を図示したが、これに限られるものではなく、一方のコンクリート部材としてのセグメントに雄継手１０が設けられ、他方のコンクリート部材としてのセグメントに雌継手２０が設けられれば良い。即ち、図示の構成と逆であり、既設セグメントＳ１に雄継手１０が設けられ、未設セグメントＳ２に雌継手２０が埋設される構成でも良い。以下、この雄継手１０と雌継手２０から構成される継手構造１について説明する。

【0019】

＜雄継手・雌継手の構成＞
図２は本実施形態に係る継手構造１の概略断面図である。図示のように、継手構造１は一対の対向するコンクリート部材Ｃ１、Ｃ２同士を連結させるものである。継手構造１は、一方のコンクリート部材Ｃ１に設けられる雄継手１０と、他方のコンクリート部材Ｃ２に設けられる雌継手２０から構成される。各継手の詳細な構成については図面を参照して以下に説明する。

【0020】

図３は雄継手１０の概略説明図であり、（ａ）は一体化した状態図、（ｂ）は分解図である。また、図４は雄継手１０の概略断面図であり、（ａ）は一体化した状態図、（ｂ）は分解図である。図３、４に示すように、雄継手１０は、例えば異形鉄筋からなるオスインサート１２と、オスインサート１２から一部が突出するように構成されるオスピン１５と、を含む。

【0021】

オスインサート１２の一方の端部には挿入孔１６が形成され、オスピン１５の一方の端部１５ｂが挿入孔１６に挿入される。オスピン１５の一方の端部１５ｂには例えば並目ネジ等の固定手段が施され、挿入孔１６に挿入されることでオスインサート１２の端部に固着される。オスピン１５の他方の端部１５ａは、オスピン１５がオスインサート１２の端部に固着された状態においてその端部から突出する突出部として構成される。突出部としての端部１５ａには雄ネジ加工が施され、雌継手２０との連結手段として用いられる（図２参照）。なお、オスピン１５の他方の端部１５ａにおいては、調心機能のために先端にテーパー形状を有しても良い。

【0022】

また、図５は雌継手２０の概略説明図であり、（ａ）は一体化した状態図、（ｂ）は分解図である。図６は雌継手２０の概略断面図であり、（ａ）は一体化した状態図、（ｂ）は分解図である。

【0023】

雌継手２０は、一方の端部において開口する内孔２２を有するケーシング２５と、内孔２２の底部に収容されるバックアップ部材３０と、内孔２２の開口端部内面に固着される前蓋４０と、バックアップ部材３０と前蓋４０との間に挟まれるように収容される割ゴマ５０と、を含む。

【0024】

内孔２２の内周面の少なくとも一部（例えば開口端部内面）には細目ネジが施され、前蓋４０の外周面にも細目ネジが施されている。前蓋４０には、当該前蓋４０にピン刺しを行い回転させるためのピン孔４１が形成されても良く、内孔２２の開口端部から前蓋４０を回転させながら収容させることで前蓋４０を内孔２２の開口端部内面に固着させることが可能な構成となっている。

【0025】

前蓋４０は中空の円筒形状を有する部材であり、その中空部分において割ゴマ５０側に向かって拡がる内面テーパー形状である内孔４２が形成されている。割ゴマ５０は、周方向に分割された複数の分割部材（例えば後述する分割部材５０ａ～５０ｃ）から構成され、これら分割部材を組み合わせて中空の円筒形状を構成し、その中空部分に内孔５２が構成される。割ゴマ５０の外面は、前蓋４０の内孔４２の内面テーパー形状に対応した外面テーパー形状を有するように構成される。

【0026】

なお、ケーシング２５の内孔２２の底部には、バックアップ部材３０の一部の部材（後述する第３の弾性部材３９）が押し込まれて収容される退避孔６０が設けられても良い。また、ケーシング２５の他方の端部にはコンクリート部材に埋設する際のアンカーとして機能する定着部２７が設けられても良い。

【0027】

＜バックアップ部材・割ゴマの構成＞
図７はバックアップ部材３０の概略説明図である。図７に示すように、バックアップ部材３０は複数の部材から構成されても良い。一例として、雌継手２０として一体化させた場合に、上述したケーシング２５の内孔２２の底面に接するように収容される第１の弾性部材３２と、その第１の弾性部材３２に隣接するように配置される第２の弾性部材３４を含んでも良い。第１の弾性部材３２は割ゴマ５０を雌継手２０の開口部側に向けて付勢するように構成される。第２の弾性部材３４は割ゴマ５０の外周面を覆うように構成され、割ゴマ５０の位置ずれを吸収し調心する機能を有する。

【0028】

第１の弾性部材３２は、中心には貫通孔３７が設けられた中空形状を有しても良い。同様に、第２の弾性部材３４は、中心に貫通孔３８が設けられた中空形状を有しても良い。そして、バックアップ部材３０は、雌継手２０として一体化させた場合にこれら貫通孔３７、３８を貫通し、割ゴマ５０の内孔５２に収容されるように設けられる円柱形状の第３の弾性部材３９を含んでも良い。第３の弾性部材３９は、割ゴマ５０の内孔５２に収容されることで、割ゴマ５０の姿勢の安定化を図る。また、後述するように雄継手１０と雌継手２０の連結を行う場合に、雄継手１０の端部１５ａ（突出部）により第３の弾性部材３９は内孔２２の底部に押し付けられて弾性変形し、端部１５ａの収容空間を確保する機能を有する。

【0029】

第１の弾性部材３２は割ゴマ５０を雌継手２０の開口部側に向けて付勢するように構成される反力部材であり、その硬度は７０°～９０°（デュロメータタイプＡに基づく）が好ましい。また、第２の弾性部材３４は割ゴマ５０を外周側から拘束すると共に、その位置を中心に寄せる調心機能を有する部材であり、その硬度は３０°～７０°（デュロメータタイプＡに基づく）が好ましい。また、第３の弾性部材３９は割ゴマ５０の安定性確保のための芯材として機能する部材であり、且つ、オスピン１５（端部１５ａ）の収容空間確保のための部材であり、その硬度は５°～５０°（デュロメータタイプＡに基づく）が好ましい。第１の弾性部材３２、第２の弾性部材３４は例えばゴムからなり、第３の弾性部材３９は例えばゴム又はスポンジからなる。第１の弾性部材３２の硬度は第２の弾性部材３４の硬度より大きいことが好ましい。第３の弾性部材３９の硬度は第２の弾性部材３４の硬度と同じでも良く、あるいは小さくても良い。

【0030】

また、図８は割ゴマ５０の概略説明図である。図８に示すように、割ゴマ５０は周方向に分割された複数の分割部材５０ａ～５０ｃから構成される。これら分割部材５０ａ～５０ｃを円環状となるように組み合わせて中空の円筒形状が構成される。そして、割ゴマ５０の中空部分には内孔５２が構成される。この内孔５２の内周面には雌ネジ加工が施される。この内孔５２の内周面の雌ネジ加工と、上述したオスピン１５の突出部としての端部１５ａの雄ネジ加工とは対応関係にあり、内孔５２にオスピン１５の端部１５ａが挿入され螺合することで連結可能に構成される。ここでの螺合に伴う耐力は、１０．９高強度ボルト相当以上の強度区分としても良い。

【0031】

割ゴマ５０は複数の分割部材５０ａ～５０ｃにより構成されており、各部材間には微細なスリット５５が形成される。この構成により割ゴマ５０は拡径可能に構成され、例えば、内孔５２にオスピン１５の端部１５ａが挿入された際に螺合に応じて拡径する場合がある。

【0032】

なお、本実施形態では、割ゴマ５０が３つの分割部材５０ａ～５０ｃにより構成される場合（いわゆる三ツ割ゴマ）を一例として図示し説明したが、割ゴマ５０の構成はこれに限られるものではない。例えば、割ゴマ５０を４以上の分割部材からなる構成としても良い。

【0033】

＜雌継手の組み立て工程＞
図９は雌継手２０の組み立て工程を示す概略説明図であり、（ａ）～（ｄ）の順で組み立てが進むものとして図示したものである。先ず、図９（ａ）、（ｂ）に示すように、第１の弾性部材３２、第２の弾性部材３４、及び第３の弾性部材３９が一体化されてバックアップ部材３０が構成され、そこに割ゴマ５０が取り付けられる。その際、割ゴマ５０の内孔５２に第３の弾性部材３９が挿入され、第３の弾性部材３９を芯材として割ゴマ５０が取り付けられる。

【0034】

図９（ａ）のように、第３の弾性部材３９の径Ｌ１は、割ゴマ５０の内孔５２の径Ｌ２よりも大きく構成され、弾性体である第３の弾性部材３９の反力により割ゴマ５０の姿勢の安定化が図られる。また、第１の弾性部材３２、第２の弾性部材３４、及び第３の弾性部材３９と、割ゴマ５０を一体的にユニット化させることで、ケーシング２５の内孔２２への挿入作業が容易となる。

【0035】

続いて、図９（ｂ）、（ｃ）に示すように、割ゴマ５０が取り付けられた状態のバックアップ部材３０が、ケーシング２５の内孔２２に挿入され、内孔２２の底部に収容される。そして、図９（ｄ）に示すように、前蓋４０がケーシング２５の内孔２２に挿入され、内孔２２の開口端部内面と前蓋４０の外周面との螺合により固着される。例えば、内孔２２の開口端部から前蓋４０を回転させながら挿入することで前蓋４０を内孔２２の開口端部内面に固着させる。

【0036】

上述したように、前蓋４０の内孔４２は割ゴマ５０側に向かって拡がる内面テーパー形状を有し、割ゴマ５０の外面は、前蓋４０の内孔４２の内面テーパー形状に対応した外面テーパー形状を有するように構成される。これにより、前蓋４０がケーシング２５の内孔２２の開口端部内面に固着された際に、割ゴマ５０の姿勢の安定化が図られる。

【0037】

図９（ｄ）に示すように組み立てられた雌継手２０にあっては、内孔２２の内部に、前蓋４０の内孔４２と割ゴマ５０の内孔５２が連通してなる空間が存在する。この空間が後述する雄継手１０との連結時に雄継手１０の突出部（端部１５ａ）を収容するための収容部Ｕとして構成される。

【0038】

＜雄継手と雌継手の連結工程＞
図１０は雄継手１０と雌継手２０の連結工程を示す概略説明図であり、（ａ）～（ｄ）の順で連結が進むものとして図示したものである。先ず、図１０（ａ）、（ｂ）に示すように、雌継手２０に構成された収容部Ｕにおいて開口部側から雄継手１０の突出部（端部１５ａ）が挿入される。

【0039】

ここで、割ゴマ５０の内孔５２には雌ネジ加工が施されており、一方で雄継手１０の突出部（端部１５ａ）には雄ネジ加工が施されている。即ち、雄継手１０の突出部（端部１５ａ）を収容部Ｕに挿入させることで、雌ネジ加工と雄ネジ加工との干渉により螺合が進み、雄継手１０と雌継手２０との連結が促進される。その際、上述したように、割ゴマ５０は複数の分割部材（ここでは５０ａ～５０ｃ）からなり、拡径可能に構成されている。雄継手１０の突出部（端部１５ａ）の挿入時には、雌ネジ加工と雄ネジ加工との間のネジ山の干渉により割ゴマ５０の内孔５２に加工した雌ネジが拡径され、当該突出部の挿入は容易に行われる。

【0040】

一方、雄継手１０の突出部（端部１５ａ）を引き抜こうとする力が働いた場合には、割ゴマ５０は拡径せず、雌ネジ加工と雄ネジ加工との螺合により引き抜くことは難しい。このような特性に伴い、雄継手１０の突出部（端部１５ａ）の挿入が進むにつれて雄継手１０と雌継手２０との連結が実施される。

【0041】

続いて、図１０（ｂ）、（ｃ）に示すように、収容部Ｕに雄継手１０の突出部（端部１５ａ）の挿入が進むにつれて、第３の弾性部材３９に接触し、第３の弾性部材３９を押し込む。第３の弾性部材３９がケーシング２５の内孔２２底面方向に押し込まれる。その際、第３の弾性部材３９が弾性圧縮することにより雄継手１０の突出部（端部１５ａ）の収容空間が確保される。

【0042】

ここで、図示の構成のように、ケーシング２５の内孔２２底部に退避孔６０が設けられている場合には、第３の弾性部材３９が内孔２２底面方向に押し込まれた際に、弾性圧縮と併せて退避孔６０に押し込まれ、雄継手１０の突出部（端部１５ａ）の収容空間が確保される。但し、ケーシング２５の内孔２２底部において、退避孔６０は必ず設けられる必要は無く、第３の弾性部材３９の弾性圧縮のみによって雄継手１０の突出部（端部１５ａ）の収容空間が確保される構成であっても良い。

【0043】

そして、図１０（ｄ）に示すように、雄継手１０の突出部（端部１５ａ）が完全に収容部Ｕに収容され、雄継手１０と雌継手２０の連結が完了する。なお、図１０では、雄継手１０と雌継手２０に注視して図示し説明したが、実際の施工においては、これら雄継手１０と雌継手２０は例えばセグメント等のコンクリート部材に予め埋設される。

【0044】

＜コンクリート部材同士の連結＞
図１０を参照して上述した雄継手１０と雌継手２０の連結工程を用いて、一対のコンクリート部材Ｃ１、Ｃ２の接続面同士の連結が以下のように行われる。図１１は、一対のコンクリート部材Ｃ１、Ｃ２に予め埋設された雄継手１０と雌継手２０の連結工程の概略説明図であり、（ａ）～（ｃ）の順で連結が進むものとして図示したものである。

【0045】

図１１（ａ）に示すように、それぞれの接続面が対向するように一対のコンクリート部材Ｃ１、Ｃ２が配置される。一方のコンクリート部材Ｃ１には、その接続面から突出する棒状の突出部としての端部１５ａを含む雄継手１０が、当該端部１５ａを突出させた構成で埋設される。他方のコンクリート部材Ｃ２には、その接続面に開口する収容部Ｕが備えられた雌継手２０が埋設される。

【0046】

図１１（ｂ）、（ｃ）に示すように、一方のコンクリート部材Ｃ１の接続面から突出する突出部（端部１５ａ）が、収容部Ｕに挿入される。その際、突出部（端部１５ａ）の外面に施された雄ネジ加工と、割ゴマ５０の内孔５２に施された雌ネジ加工とのネジ山の干渉により割ゴマ５０が拡径されて挿入が進む。図１１（ｃ）のように連結された継手構造１において、突出部（端部１５ａ）が収容部Ｕから引き抜かれる際には、割ゴマ５０が拡径せずに雄ネジ加工と雌ネジ加工との螺合により連結が維持される。即ち、雄継手１０と雌継手２０は容易に連結解除されず、一対のコンクリート部材Ｃ１、Ｃ２同士は強固に連結される。

【0047】

＜本実施形態の作用効果＞
以上説明した本実施形態に係る継手構造１によれば、一対のコンクリート部材Ｃ１、Ｃ２を連結させるに際し、雄継手１０と雌継手２０の強固な連結により、両者の連結状態を確実に維持することができる。また、簡易な構造で施工精度や調心機能の向上が図られる。

【0048】

特に、本実施形態に係る構成においては、バックアップ部材３０を第１の弾性部材３２、第２の弾性部材３４、第３の弾性部材３９からなる構成としている。第１の弾性部材３２は割ゴマ５０を雌継手２０の開口部側に向けて付勢する反力部材として機能する。また、第２の弾性部材３４は割ゴマ５０を外周側から拘束すると共に、その位置を中心に寄せる調心機能を有する。また、第３の弾性部材３９は割ゴマ５０の安定性確保のための芯材として機能する部材であり、且つ、オスピン１５（端部１５ａ）の収容空間確保のための部材である。このように、各弾性部材がそれぞれ特有の機能を有し、それに合わせた硬度を有する部材として構成される。これにより、確実な雄継手１０と雌継手２０の連結と、施工精度や調心機能の向上が同時に実現される。

【0049】

また、本実施形態に係る継手構造１において、第１の弾性部材３２、第２の弾性部材３４、第３の弾性部材３９からなるバックアップ部材３０と、割ゴマ５０と、を施工前に予め一体的にユニット化させて施工を行うことができる。これにより従来に比べ大幅な作業性の向上が図られる。

【0050】

以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

【0051】

また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。

【0052】

＜本発明の他実施形態＞
上記実施の形態では、雌継手２０を構成するバックアップ部材３０の一例として、第１の弾性部材３２、第２の弾性部材３４、及び第３の弾性部材３９を含む場合を図示して説明した。しかしながら、バックアップ部材３０の構成はこれに限定されるものではない。そこで、本発明の他実施形態に係るバックアップ部材３０ａの構成について説明する。なお、上記実施形態で説明した構成と同様の機能構成を有する構成要素については同一の符号を付して図示し、その説明は省略する場合がある。

【0053】

図１２は、本発明の他実施形態に係るバックアップ部材３０ａの構成を示す概略説明図である。図１２に示すように、バックアップ部材３０ａは第１の弾性部材３２と、その第１の弾性部材３２に隣接するように配置される第２の弾性部材７０から構成される。第２の弾性部材７０は、中央の円柱部７０ａと、その周囲を囲う環状部７０ｂと、が一体化されて構成されても良い。円柱部７０ａと環状部７０ｂとの間には割ゴマ５０が挿入される溝部７１が形成された構成となる。

【0054】

図１３は本発明の他実施形態に係るバックアップ部材３０ａと割ゴマ５０との一体化についての概略説明図であり、（ａ）は分解図、（ｂ）は一体化した状態図である。図１３に示すように、第１の弾性部材３２と第２の弾性部材７０は、第１の弾性部材３２の貫通孔３７と円柱部７０ａとが同軸となり、第１の弾性部材３２と第２の弾性部材７０が一体化した際に外周面が繋がる円柱形状となるように一体化される。併せて、割ゴマ５０の底端部が第２の弾性部材７０の溝部７１に挿入されると共に、割ゴマ５０の内孔５２に円柱部７０ａが挿入され、円柱部７０ａが芯材として機能する。

【0055】

このように一体化されたバックアップ部材３０ａ及び割ゴマ５０からなるユニットを用いて、上記実施形態と同様に雄継手１０と雌継手２０との連結が行われても良い。本形態に係る構成によれば、上記実施形態に比べ更なる部品点数の削減や構造の簡略化が図られ、上記実施形態と同様の効果に加え、製造コストの縮減が実現される。

【産業上の利用可能性】

【0056】

本発明は、構造物の構築に用いる部材同士の連結に用いられ、例えば、プレキャストコンクリート部材同士を連結させるために用いられる継手構造に適用できる。

【符号の説明】

【0057】

１…継手構造
１０…雄継手
１２…オスインサート
１５…オスピン
１６…挿入孔
２０…雌継手
２２…（雌継手の）内孔
２５…ケーシング
２７…定着部
３０…バックアップ部材
３２…第１の弾性部材
３４…第２の弾性部材
３７…貫通孔
３９…第３の弾性部材
４０…前蓋
４２…（前蓋の）内孔
５０…割ゴマ
５２…（割ゴマの）内孔
５５…スリット
６０…退避孔
７０…（他の実施形態に係る）第２の弾性部材
Ｓ１、Ｓ２…セグメント
Ｕ…収容部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】